(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20231113BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231113BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/205
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2022551477
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035872
(87)【国際公開番号】W WO2022064578
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三部 誠
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 賢卓
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209668(JP,A)
【文献】特開2011-258787(JP,A)
【文献】特開2005-57079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が閉塞され、下端が開口した筒状のアウタチューブと、
前記アウタチューブの内部に設けられ、上端が閉塞され、下端が開口した筒状に形成され、内部で基板を処理可能とするインナチューブと、
前記アウタチューブ及び前記インナチューブの下方に設けられ、前記インナチューブの内部空間と連通し、前記インナチューブと前記アウタチューブとの間の環状空間とは隔離された排気空間を備えた筒状に形成されたマニホールドと、
前記インナチューブの内部に前記基板の処理を行う処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記環状空間にパージガスを供給するパージガスノズルと、
前記環状空間と前記排気空間との間の隔壁部に設けられ、前記環状空間と前記排気空間との間で気体を通過可能とし、かつ前記気体の通過のコンダクタンスを可変可能なコンダクタンス可変部と、
を備え、
前記コンダクタンス可変部は、前記隔壁部に貫通して設けられた少なくとも1つの螺子孔と、前記螺子孔に螺合する螺子とを有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記インナチューブの下端には、前記インナチューブを筒状の前記マニホールドの開口から挿入可能とし、かつ前記マニホールドの内周部に形成された環状の内向きフランジに着脱可能に取り付けられる取付部材が設けられている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記内部空間の圧力を検知する第1圧力計と、
前記環状空間の圧力を検知する第2圧力計と、
を有する、請求項1
又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記インナチューブは、前記処理ガスにより前記基板を処理した際に、前記インナチューブの内側の表面に堆積する堆積物の線膨張係数に対して、±8%以下の線膨張係数を有する材料で形成されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記インナチューブは、前記堆積物の線膨張係数と実質的に等しい線膨張係数を有する材料で形成されている、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記堆積物はシリコンであり、前記インナチューブは、炭化シリコンを主原料とする焼結体である請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記内向きフランジ及び前記取付部材が、前記隔壁部を構成する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記コンダクタンス可変部は、前記内向きフランジ又は前記取付部材の一方に形成された前記螺子孔と、前記内向きフランジ又は前記取付部材の他方に前記螺子孔に対向させて形成された貫通孔とを有する、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記コンダクタンス可変部
の前記螺子孔は、複数設けられ、1つ以上の前記螺子が前記複数の螺子孔の何れかに螺合する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記螺子は、軸心に沿って気体が通過可能な通気孔が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記複数の螺子孔のそれぞれには、軸心に沿って気体が通過可能な通気孔を有する通気孔付螺子と、前記通気孔を有しない前記螺子の何れかが螺合する請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記インナチューブの内部空間である処理室の目標圧力パターンに連動して、パージガスノズルに供給するパージガスの圧力を制御可能に構成された圧力制御器を更に備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記取付部材は、
前記内向きフランジと前記インナチューブの下端の間に挟まれて設けられるリング状のインナチューブサポートと、
前記インナチューブのフランジを挟んで前記インナチューブサポートの反対側に設けられるリング状のインナチューブフィッティングリングと、
前記インナチューブフィッティングリングとインナチューブサポートとを互いに連結する複数の第1固定螺子と、
前記内向きフランジを挟んで前記インナチューブサポートの反対側に設けられるリング状のシールフランジと、
前記シールフランジとインナチューブサポートとを互いに連結する複数の第2固定螺子と、を有する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記インナチューブサポートは、外周部に、径方向外側へ突出する複数の突出部が、周方向に間隔を開けて形成され、
前記内向きフランジは、前記複数の突出部を通過させる複数の切欠を有する、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記マニホールドは、筒部の一端に設けられ前記アウタチューブと第1シール材を介して接続される上フランジと、前記筒部の他端に設けられ前記アウタチューブを支持する筐体と第2シール材を介して接続され下フランジと、前記筒部の内周に設けられ前記インナチューブを支持する内向きフランジと、を備え、
前記コンダクタンス可変部は、前記内向きフランジまたは前記取付部材に設けられている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記マニホールドの前記排気空間は、前記環状空間を介さずに前記インナチューブの前記内部空間と直接連通しており、
前記マニホールドには、前記インナチューブ内の気体を排出する排気ポートが設けられている、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記インナチューブの内部に収容された前記基板に対し、2μm以上の膜を堆積させる処理を行う請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項18】
請求項1に記載の基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記基板が配置された前記インナチューブに処理ガスを供給して前記基板の処理を行うと共に、前記環状空間にパージガスを供給し、前記インナチューブに供給された前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出すると共に、前記環状空間内の前記パージガスを前記コンダクタンス可変部及び前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出させる基板処理工程と、
前記基板処理工程の終了後、前記処理ガスノズルから前記内部空間にパージガスを供給すると共に前記パージガスノズルから前記環状空間にパージガスを供給し、前記内部空間の前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出する排気工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項19】
請求項1に記載の基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記基板が配置された前記インナチューブに処理ガスを供給して前記基板の処理を行うと共に、前記環状空間にパージガスを供給し、前記インナチューブに供給された前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出すると共に、前記環状空間内の前記パージガスを前記コンダクタンス可変部及び前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出させる基板処理工程と、
前記基板処理工程の終了後、前記処理ガスノズルから前記内部空間にパージガスを供給すると共に前記パージガスノズルから前記環状空間にパージガスを供給し、前記内部空間の前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出する排気工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項1に記載の基板処理装置を用いて、
前記基板が配置された前記インナチューブに処理ガスを供給して前記基板の処理を行うと共に、前記環状空間にパージガスを供給し、前記インナチューブに供給された前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出すると共に、前記環状空間内の前記パージガスを前記コンダクタンス可変部及び前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出させる基板処理手順と、
前記基板処理手順の終了後、前記処理ガスノズルから前記内部空間にパージガスを供給すると共に前記パージガスノズルから前記環状空間にパージガスを供給し、前記内部空間の前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出する排気手順と、
を行うことで基板を処理する手順とを、前記基板処理装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置(以下、IC(Integrated Circuit)という。)の製造方法において、シリコンウエハに多結晶若しくは単結晶のシリコンやシリコンゲルマニウムを成膜するのに、例えば、バッチ式縦形ホットウオール形CVD成膜装置(以下、基板処理装置という。)が使用されている。
この種の基板処理装置において、アウタチューブと、アウタチューブの内側に配置されるインナチューブとを備え、インナチューブにシリコンウエハを搬入し、インナチューブ内に処理ガスを供給すると共に、該インナチューブ内をヒータで加熱することにより、シリコンウエハに成膜を行う基板処理装置がある(例えば、特開2003-203868号公報、特開2006-5198号公報参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような基板処理装置においては、インナチューブとアウタチューブとの間の空間に処理ガスが流入すると、該空間に面するアウタチューブの内面に反応生成物の膜(例えば、シリコンやシリコンゲルマニウムの堆積膜)が生成されてしまい、アウタチューブにおける反応生成物の除去に手間が掛かる。
【0004】
本開示の目的は、アウタチューブの内面に反応生成物の膜が生成することを抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、例えば、上端が閉塞され、下端が開口した筒状のアウタチューブと、アウタチューブの内部に設けられ、上端が閉塞され、下端が開口した筒状に形成され、内部で基板を処理可能とするインナチューブと、アウタチューブ及びインナチューブの下方に設けられ、インナチューブの内部空間と連通し、インナチューブとアウタチューブとの間の環状空間とは隔離された排気空間を備えた筒状に形成されたマニホールドと、インナチューブの内部に基板の処理を行う処理ガスを供給する処理ガスノズルと、環状空間にパージガスを供給するパージガスノズルと、環状空間と排気空間との間の隔壁部に設けられ、環状空間と排気空間との間で気体を通過可能とし、かつ気体の通過のコンダクタンスを可変可能なコンダクタンス可変部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように本開示の基板処理装置、基板処理方法によれば、アウタチューブの内面に反応生成物の膜が生成することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置を示す縦断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置を示す水平断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のコンダクタンス可変部を示す斜視図である。
【
図4】インナチューブフィッティングリングとインナチューブサポートとの連結状態を示す斜視図である。
【
図5】インナチューブを内向きフランジに取り付けた状態を示すインナチューブの下端付近を示す斜視図である。
【
図6A】通気孔付きセットスクリューを示す軸線に沿った断面図である。
【
図6B】通常のセットスクリューを示す軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図6を用いて、本開示の一実施形態に係る基板処理装置10について説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
図1には、本開示に係る基板処理装置10の概略構成が断面図にて示されている。基板処理装置10は、例えば、ICなどの製造に用いられ、シリコンウエハ(以下、基板という。)にポリシリコン膜を堆積する縦形CVD成膜装置(バッチ式縦形ホットウオール形CVD成膜装置)として構成されている。
【0010】
図1に示された基板処理装置10は、中心軸が垂直に配置された縦形のアウタチューブ11を備えており、アウタチューブ11の内部にはインナチューブ12が同軸に収納されている。なお、アウタチューブ11とインナチューブ12との間は、環状空間18とされている。
【0011】
本実施形態のアウタチューブ11は、石英からなり、上端が閉塞した円筒形状に形成されている。インナチューブ12は、炭化シリコン(SiC)からなり、上端が閉塞しアウタチューブ11よりも小径の円筒形状に形成されている。アウタチューブ11は、耐圧容器であり、後述の第1シール材としてのシール材33によって密封される必要がある。なお熱伝導率が高い炭化シリコンは、炉内の熱をシール材33に伝えやすくシール材33を高温にさらすことになるため、アウタチューブ11に使用することが難しい。インナチューブ12は、アウタチューブ11に比べて肉厚が薄く形成され、大気圧と真空の圧力差に耐える強度を必ずしも有しない。
【0012】
なお、炭化シリコン(SiC)の線膨張係数は、4H-SiC粉末を主原料とする反応焼結法による一般的な形成品では例えば4.2×10-6/Kであり、後述する多結晶シリコン膜の線膨張係数は3.9×10-6/Kであり、多結晶シリコンの線膨張係数に対して炭化シリコン(SiC)の線膨張係数は+7.6%であることが知られる。ちなみに、石英(SiO2)の線膨張係数は、0.5×10-6/Kである。
【0013】
インナチューブ12の内部空間は、ボート25によって積層された複数枚の基板1が搬入される処理室13とされている。また、インナチューブ12の下端開口はボート25を出し入れするための炉口14を構成している。
【0014】
アウタチューブ11は、基板処理装置10の筐体2に取り付けられた短尺の円筒形状に形成されたマニホールド16の上部に固定されている。
【0015】
マニホールド16の上端には、径方向外側へ突出する上フランジ16Aが設けられており、マニホールド16の下端には、径方向外側へ突出する下フランジ16Bが設けられており、マニホールド16の内周には、径方向内側に突出するリング形状に形成された隔壁としての内向きフランジ(リブ)17が設けられている。なお、内向きフランジ17は環状に構成されている。
【0016】
マニホールド16の内部空間において、内向きフランジ17と筐体2の上面との間の空間は、排気空間ESとされている。
【0017】
マニホールド16の上フランジ16Aには、シール材33を介してアウタチューブ11の下端が支持されている。マニホールド16の下フランジ16Bは、第2シール材としてのシール材34を介して筐体2の上面に支持されている。
【0018】
マニホールド16の外壁には、内向きフランジ17よりも下側に、排気空間ESに連通した排気ポートとしての排気管19が設けられている。この排気管19には、排気空間ESの内部の気体を排気する図示しない排気装置が接続されている。
【0019】
図1、
図3~
図5に示すように、インナチューブ12の下端には、径方向外側に突出するフランジ(リップ)12Aが一体的に形成されている。フランジ12Aの外径は、内向きフランジ17の内径よりも小径とされており、マニホールド16の内向きフランジ17の内側を軸方向(上下方向)に通過可能となっている。
【0020】
フランジ12Aの下側には、リング状のインナチューブサポート35が配置され、インナチューブサポート35の下側には、取付部材としてのリング状のシールフランジ36が配置されている。また、フランジ12Aの上側には、リング状のインナチューブフィッティングリング37が配置されている。
【0021】
インナチューブサポート35は、リング形状であるが、外周部に、径方向外側へ突出する複数の突出部35Aが、周方向に間隔を開けて形成されている。突出部35Aを除いたインナチューブサポート35の外径は、内向きフランジ17の内径よりも小径とされている。
【0022】
また、インナチューブフィッティングリング37は、リング形状であるが、外周部には、インナチューブサポート35の突出部35Aと対向する位置に、径方向外側へ突出する突出部37Aが形成されている。突出部37Aを除いたインナチューブフィッティングリング37の外径は、内向きフランジ17の内径よりも小径とされている。
【0023】
内向きフランジ17の内周部には、インナチューブサポート35の突出部35A、及びインナチューブフィッティングリング37の突出部37Aを軸方向(上下方向)に通過可能とするための切欠17Aが複数形成されている。
【0024】
これにより、インナチューブフィッティングリング37の突出部37A、及びインナチューブサポート35の突出部35Aを、内向きフランジ17の切欠17Aに対向させると、インナチューブフィッティングリング37、及びインナチューブサポート35を内向きフランジ17に対して軸方向(上下方向)に通過させることができる。
【0025】
図4に示すように、インナチューブフィッティングリング37とインナチューブサポート35との間にインナチューブ12のフランジ12Aを挟んだ状態で、インナチューブフィッティングリング37とインナチューブサポート35とが複数の螺子38によって互いに連結されている。これにより、インナチューブ12のフランジ12Aに、インナチューブフィッティングリング37とインナチューブサポート35とが固定されている。なお、インナチューブサポート35には、螺子38を螺合する螺子孔35Bが形成されており、インナチューブフィッティングリング37には、螺子38を挿通する孔37Bが形成されている。
【0026】
図5に示すように、シールフランジ36は、内向きフランジ17の内径よりも大径に形成され、内向きフランジ17の下面に当接している。シールフランジ36が複数の螺子40によってインナチューブサポート35に固定され、内向きフランジ17がインナチューブサポート35とシールフランジ36とで挟持されることで、インナチューブ12が内向きフランジ17に取り付けられている。これにより、もし処理室13の圧力が環状空間18の圧力より高まることがあっても、インナチューブ12が浮き上がったり動いたりすることが無い。なお、インナチューブサポート35には、螺子40を螺合する螺子孔35Cが形成されており、シールフランジ36には、螺子40を挿通する孔36Bが形成されている。
【0027】
なお、インナチューブフィッティングリング37、インナチューブ12、インナチューブサポート35、及びシールフランジ36の各々の外径は、マニホールド16の内径よりも小径とされている。
【0028】
図3に示すように、シールフランジ36には、複数個(本実施形態では8個)の螺子孔41が周方向に間隔を開けて形成されており、内向きフランジ17には、複数個(本実施形態では8個。
図2参照。)の貫通孔42が螺子孔41と同じ間隔で形成されている。
【0029】
なお、インナチューブフィッティングリング37の突出部37A、及びインナチューブサポート35の突出部35Aを、内向きフランジ17の切欠17Aに対向させてインナチューブ12、インナチューブフィッティングリング37、及びインナチューブサポート35を内向きフランジ17に対して上方に通過させた後、インナチューブ12を回転させることで、シールフランジ36の螺子孔41と内向きフランジ17の貫通孔42とを対向させることができる。また、螺子孔41と貫通孔42とを対向させた状態で、前述したようにインナチューブ12が内向きフランジ17に取り付けられている。
【0030】
これらの螺子孔41には、
図6Aに示す6角穴の形成された通気孔付きセットスクリュー43、または
図6Bに示す6角穴の形成された通常のセットスクリュー44が螺合可能となっている。通気孔付きセットスクリュー43の軸心には、気体が通過可能な、例えば、径が0.8mmの通気孔43Aが形成されている。
【0031】
通気孔付きセットスクリュー43、及びセットスクリュー44、例えば、M4~M6のメートル螺子である。
【0032】
基板処理装置10では、複数の螺子孔41の内の少なくとも一つに通気孔付きセットスクリュー43が螺合され、残りの螺子孔41にセットスクリュー44或いは通常のビスが螺合される。これにより、処理室13と環状空間18とが、通気孔付きセットスクリュー43の通気孔43Aのみで連通している。
【0033】
なお、複数の螺子孔41、通気孔付きセットスクリュー43、及びセットスクリュー44によって、本開示のコンダクタンス可変部が構成されている。コンダクタンスは、環状空間18から排気空間ESへ気体が流れる際の気体の通過抵抗の逆数である。例えば、通気孔付きセットスクリュー43の数を多くすると、通過抵抗は少なくなり、コンダクタンスは大となる。
【0034】
(処理ガスノズル)
図1、及び
図2に示すように、マニホールド16の側壁には、内向きフランジ17よりも下側の位置に複数本の処理ガスノズル21が挿通されており、処理ガスノズル21の開口端は処理室13の上端部或いは基板1の側方に配置されている。つまり処理ガスノズル21は、パイプの先端が、パイプの空洞と同じ形状および面積の開口を、先端に1つだけ有する。大きな開口は、ピンホール開口のように堆積物によって詰まることは無い。これら複数本の処理ガスノズル21は、処理室13の内部における高さが各々異なっており、各基板1の表面における膜厚や膜質(グレインサイズ)の均一性を確保するように、各々の処理ガスノズル21から排出される原料ガス50の流量が制御される。処理ガスノズル21は、アウタチューブ11と同一の素材または異なる素材によって構成されうる。なお、処理ガスノズル21は、本開示の処理ガスノズルの一例である。
【0035】
処理ガスノズル21には、図示しないガス供給装置が接続されており、ガス供給装置から処理ガス(原料ガス50、前処理ガスとしての水素(H2 )ガス、またはパージガスとしての窒素ガス)が供給され、これらのガスが、処理ガスノズル21の開口端から処理室13の内部に噴出するようになっている。処理ガスノズル21によって処理室13内に導入されたガスは、処理室13を流下し、排気空間ES、及び排気管19を介して外部へ排気されるようになっている。
【0036】
(パージガスノズル)
マニホールド16の側壁には、パージガスノズルとしてのパージガスノズル20が挿通されており、パージガスノズル20の開口端は環状空間18の上端部側に配置されている。パージガスノズル20には、不活性ガスとしての窒素ガスを供給するガス供給装置が接続されている。パージガスノズル20によって環状空間18の上端部に導入された窒素ガスは、環状空間18を流下して通気孔付きセットスクリュー43の通気孔43Aから排気空間ESに排気可能となっている。
【0037】
ガス供給装置は、制御弁53と、流量制御器54とを直列に接続して構成され、窒素ガス源からの窒素ガスを、所定の質量流量でパージガスノズル20に供給する。なお、窒素ガス源からの配管には、分岐を介して2本の配管が接続されており、一方の配管は、ガス供給装置を介してパージガスノズル20に接続され、他方の配管は、図示しない同様のガス供給装置を介して処理ガスノズル21に接続されている。
【0038】
図1に示すように、マニホールド16には、配管45、及び配管46が貫通している。
配管45の一端は処理室13に配置され、配管45の他端側には、開閉バルブ47を介して第1圧力計48が取り付けられている。第1圧力計48によって処理室13の内圧を検知することができる。なお、開閉バルブ47は、第1圧力計48を使用する場合など、必要に応じて開ければよい。
【0039】
また、配管46の一端は環状空間18に配置され、配管46の他端側には、開閉バルブ51を介して第2圧力計52が取り付けられている。第2圧力計52によって環状空間18の内圧を検知することができる。なお、開閉バルブ51は、第2圧力計52を使用する場合など、必要に応じて開ければよい。
【0040】
また、筐体2のマニホールド16に対向した位置にはボート搬入搬出口3が開設されている。筐体2の下面には、ボート搬入搬出口3を塞ぐように、ボートエレベータ(図示せず)によって昇降されるシールキャップ22が垂直方向下側から当接されるようになっている。
【0041】
シールキャップ22はボート搬入搬出口3の内径よりも大きい外径を有する円盤形状に形成されており、アウタチューブ11の下方に筐体2によって形成されたボート搬入搬出室4をボートエレベータによって昇降されるようになっている。
【0042】
シールキャップ22の中心軸上には、ロータリーアクチュエータ23によって回転される回転軸24が配置されており、回転軸24の上端にはボート25が垂直に立脚されて支持されている。
【0043】
ボート25は、上下で一対の端板26、27と、端板26と端板27との間に架設されて垂直に配設された三本の保持部材28とを備えている。三本の保持部材28には、多数の保持溝29が長手方向に等間隔に配されて互いに対向して開口するように刻設されている。
【0044】
ボート25は三本の保持部材28の保持溝29間に基板1を挿入されることにより、複数枚の基板1を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。ボート25は、アウタチューブ11と同一の素材または異なる素材によって構成されうる。
【0045】
アウタチューブ11の外側は、断熱カバー31によって全体的に被覆されており、断熱カバー31の内側には、アウタチューブ11の内部を加熱するヒータ32がアウタチューブ11の周囲を包囲するように同心円に設備されている。
【0046】
断熱カバー31およびヒータ32は、筐体2の上に構築された架台5によって垂直に支持されている。ヒータ32は複数のヒータ部に分割されており、これらヒータ部は温度コントローラ(図示せず)によって互いに連携および独立してシーケンス制御されるように構成されている。
【0047】
(前準備)
先ず、本実施形態の基板処理装置10で基板1の処理を行う前の前準備(基板処理装置10の初期設定)について説明する。
この基板処理装置10では、原料ガス50でインナチューブ12内に収容した基板1を処理する際に、窒素ガスを環状空間18へ供給し、インナチューブ12に供給した原料ガス50が環状空間18に流入しないようにする必要がある。また、環状空間18へ供給する窒素ガスも、無駄にならないように環状空間18へ供給する量を抑えることが好ましい。
【0048】
そのため、処理室13の内圧よりも環状空間18の圧力がわずかに高くなり、かつ窒素ガスの使用量(即ち、環状空間18からマニホールド16の排気空間ESに排出される量)を抑えるように、基板1を実際に処理する前に、通気孔付きセットスクリュー43を取り付ける数を調整する。
【0049】
前準備では、処理ガスノズル21から窒素ガスを処理室13へ供給しながら、排気装置によって処理室13内が実際の処理条件に即した圧力となるように排気する。また、窒素ガスを環状空間18へ供給し、処理室13の内圧を第1圧力計48で検知すると共に、環状空間18の内圧を第2圧力計52で検知する。なお、前準備では、基板1をインナチューブ12に収容する必要はない。
【0050】
そして、通気孔付きセットスクリュー43の数を変えて処理室13の内圧の検知、環状空間18の内圧の検知、及び窒素ガスの流量を確認し、処理室13の内圧よりも環状空間18の内圧がわずかに高くなるように、若しくは、通気孔43aにおけるガス流速が所定以上となるように、処理室13の内圧と環状空間18の内圧との差圧を一定とし、かつ窒素ガスの使用量を抑制できるように、必要な通気孔付きセットスクリュー43の数を事前に決定する。なお、処理室13の圧力が大きく変動するプロセスでは、差圧は少なくともインナチューブの耐圧力未満に保たれることが望ましい。例えば、圧力変動に伴う通気孔43aの流通(一時的な逆流を含む)を許容することによって差圧を小さく保つならば、通気孔43aの合計のコンダクタンスの最小値は、環状空間18の容積と、最大圧力変動レートによって決定される。
この前準備が終了することで、基板1の実際の処理を進めることができる。なおこの前準備は机上計算によっても行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態の基板処理装置10は、パージガスノズル20から最も遠い位置にある螺子孔41に通気孔付きセットスクリュー43が螺合され、その他の螺子孔41に通常のセットスクリュー44が螺合された状態にしている。
【0052】
(作用、及び効果)
次に、上記のように前準備が整った基板処理装置10の作用、及び効果について、基板1に多結晶シリコンを成膜する場合について説明する。
【0053】
図1に示されているように、複数枚の基板1を整列保持したボート25は、シールキャップ22の上に、基板1群が並んだ方向が垂直になる状態で載置される。基板1群は、ボートエレベータによって押し上げられてインナチューブ12の炉口14から処理室13に搬入(ボートローディング)されて行き、シールキャップ22に支持されたままの状態で処理室13に配置される。
【0054】
続いて、アウタチューブ11の内部が所定の圧力(例えば、0.1~100Pa)となるように、内部の空気が排気管19によって排気され、ヒータ32によってアウタチューブ11の内部が所定の温度(例えば、650°C前後(500~750°C))に昇温される。
【0055】
次いで、前処理ガスとしての水素(H2 )ガスが処理室13の上端部に処理ガスノズル21によって所定の流量(0.1~10L/分)をもって導入される。処理ガスノズル21によって処理室13の上端部に導入された水素ガスは、処理室13を流下し、マニホールド16の排気空間ES、及び排気管19を介して基板処理装置10の外部へ排出される。
そして、水素ガスは、処理室13を流下する間にボート25に保持された基板1に接触することにより、基板1に対して還元処理等の前処理を施す。
【0056】
所定時間が経過すると、例えば、モノシラン(SiH4 )および0.1%希釈の三塩化ボロン(BCl3 )がシリコン成膜用の原料ガス50として、処理室13の上端部に処理ガスノズル21から導入される。
【0057】
なお、SiH4 ガスの流量は、例えば、0.5~3L/分、BCl3 ガスの流量は0.02L/分以下である。
処理ガスノズル21によって処理室13に導入された原料ガス50は、処理室13を流下し、マニホールド16の排気空間ES、及び排気管19を介して基板処理装置10の外部へ排出される。
【0058】
そして、原料ガス50は、処理室13を流下する間にボート25に保持された基板1に接触することによって熱CVD反応を起こし、基板1に多結晶シリコンを堆積(デポジション)してエピタキシャルシリコン膜を形成する。
【0059】
また、原料ガス50を処理室13へ供給する際には、アウタチューブ11とインナチューブ12との間の環状空間18に、パージガスノズル20から窒素ガス(N2)を供給する。
【0060】
環状空間18の内圧は、インナチューブ12の内部、及びインナチューブ12の内部に連通しているマニホールド16の排気空間ESの内圧よりも高くなっているため、環状空間18に供給された窒素ガスは、通気孔付きセットスクリュー43の通気孔43Aを介してマニホールド16の排気空間ESへ排出される。
【0061】
なお、窒素ガスはパージガスノズル20内を流通する間に昇温され、開口端から流出する際には処理室13の温度に近づいているので、窒素ガスに起因する温度若しくは膜厚のむらが抑制される。また、パージガスノズル20からは上向きに窒素ガスが排出され、環状空間18内を上部から下部へ向けて周回して、通気孔付きセットスクリュー43の通気孔43Aから排出されるので、環状空間18内で窒素ガスが淀むことが抑制される。
【0062】
このようにしてインナチューブ12に供給された原料ガス50が環状空間18に流入及び拡散することが抑制されるので、環状空間18に面したアウタチューブ11の内面、及びインナチューブ12の外面にシリコン膜が堆積することが抑制される。
【0063】
なお、マニホールド16の排気空間ESへ排出された窒素ガスは、インナチューブ12の内部を流下した原料ガス50と共に、排気管19を介して基板処理装置10の外部へ排出される。
【0064】
所定の成膜時間が経過すると、原料ガス50の導入が停止された後に、パージガスとしての窒素ガスが処理室13に処理ガスノズル21から導入されると共に、処理室13、及び排気空間ESの原料ガス50が排気管19によって外部へ排気される。原料ガス50が十分排気されたのち、排気管19から排気装置への流路を閉塞し、処理室13内を大気圧へ復帰させる。なお大気復帰を早めるため、図示しない拡散ノズル(ブレイクフィル板)からも窒素ガスが処理室13又は排気空間ESに導入されうる。
【0065】
この際、アウタチューブ11とインナチューブ12との間の環状空間18にも窒素ガスがパージガスノズル20によって導入され、差圧が一定以下に保たれる。またインナチューブ12、及びマニホールド16の排気空間ESに残存している原料ガス50が環状空間18に流入及び拡散することが抑制される。
【0066】
処理室13、及び排気空間ESが窒素ガスによってパージ及び大気復帰されると、シールキャップ22に支持されたボート25がボートエレベータによって下降され、ボート25はインナチューブ12の炉口14から搬出(ボートアンローディング)される。
【0067】
以降、前記工程が繰り返されることにより、基板処理装置10によって基板1に対する多結晶シリコン成膜がバッチ処理されて行く。前記工程では、1回あたり、基板1に2μm以上の膜厚の多結晶シリコンを堆積させることができる。
【0068】
以上の成膜工程において、原料ガス50は処理室13を流下して行く間に基板1だけでなくインナチューブ12の内面に接触するため、インナチューブ12の内面にもエピタキシャルシリコンが堆積することになる。
【0069】
インナチューブ12を形成している炭化シリコン(SiC)の線膨張係数と、インナチューブ12の内面に堆積するエピタキシャルシリコンの線膨張係数とは値が近似しているので、インナチューブ12、及びインナチューブ12の内面に堆積するエピタキシャルシリコンが温度変化した際のインナチューブ12とエピタキシャルシリコンとの膨張(寸法の変化)の差が小さい。このため、温度変化時(例えば、基板1の搬入~基板1の処理~基板1の搬出)において、エピタキシャルシリコンに作用する機械的応力が小さく抑えられ、インナチューブ12の内面に累積したエピタキシャルシリコンの堆積膜が剥離するのを抑制することができる。この目的において、これらの線膨張係数は、常温と処理温度の間、若しくは最も低温となる基板1搬入中のインナチューブ12やボート25の温度と処理温度の間の、平均線膨張係数として定義され、比較されるべきである。
炭化シリコン等の焼結体は、焼結条件によって線膨張係数が異なり、3.1~4.4×10-6/Kの線膨張係数が得られることが知られ、例えば放電プラズマ焼結法では、Siと略等しい3.9×10-6/Kの線膨張係数を有する焼結体が得られることが知られる。放電プラズマ焼結法は、ナノサイズのSiC超微粉末を加圧しながらパルス状大電流を流すことで焼結が行われ、焼結助剤を使用しない。また大型の成形には技術的な困難を伴う。なお焼結体の線膨張係数は、炭化シリコンを基材としつつ、公知の助剤(バインダー)や、ZrO2、Al2
O
3
,SiO2,TiO2,TiC、WC,B4C,MoSi2,Si
3
N
4
,AlN,TiN,BN,TiB2,ZrB2,LaB
6
,等添加剤の選択によっても変更されうる。本例のインナチューブ12やボート25、処理ガスノズル21は、このような方法で得られるSiと略等しい線膨張係数を有する焼結体で構成することができる。
【0070】
インナチューブ12の内面に累積した堆積膜が剥離するのが抑制されることにより、パーティクルの発生を未然に防止することができる。このため、インナチューブ12を洗浄する頻度を低減でき、ダウンタイムが減るので、基板処理装置10の稼働率を向上させることができる。
【0071】
例えば、従来の石英製のインナチューブに対しては、例えば累積膜厚において10μm毎にインナチューブ12のウェット又はドライ洗浄が推奨されていた。1回の処理で、2μmの堆積を行う場合、僅か5回の成膜で洗浄が必要となっていた。それに対して、基板の表面に堆積する堆積物の線膨張係数に対して、±8%以下の線膨張係数を有する材料で形成されたインナチューブ12では、理想的な条件において約100μmの累積膜厚までパーティクルを発生させずに成膜を行うことが可能となる。±8%を超える線膨張係数では、許容される累積膜厚が100μmよりも著しく低下し、長期間のメンテナンスフリー化は達成できない。
【0072】
また、本例の基板処理装置10は、インナチューブをマニホールドの開口から挿入することができ、また、挿入したインナチューブを取付部材でマニホールドの内向きフランジに容易に着脱することができる。即ち、アウターチューブを取り外すことなく、インナチューブを取り外すことができる。したがって、洗浄のためにインナチューブを交換する作業が容易かつ短時間化され、基板処理装置の稼働率を向上させることができる。
【0073】
[その他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0074】
なお、本開示は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0075】
上記実施形態では、通気孔付きセットスクリュー43、またはセットスクリュー44を螺合するシールフランジ36に螺子孔41を形成し、内向きフランジ17に貫通孔42を形成したが、シールフランジ36に貫通孔42を形成し、内向きフランジ17に螺子孔41を形成してもよい。
【0076】
前記実施の形態においては、多結晶シリコンを成膜する場合について説明したが、基板処理装置10はこれに限らず、多結晶シリコンゲルマニウムを成膜する場合等にも適用することができる。
例えば、多結晶シリコンゲルマニウムを成膜する場合のプロセス条件は、次の通りである。
【0077】
原料ガス(括弧内は流量を示す。)は、例えば、SiH4 (0.5~3L/分)、10%希釈のGeH4 (3L/分以下)、0.1%希釈のBCl3 (0.02L/分以下)である。
前処理ガスは、例えば、H2 (0.1~10L/分)である。前処理ガスの圧力は、例えば、0.1~100Paである。例えば、前処理温度は、700~1000℃であり、成膜温度は、450~700℃である。
【0078】
なお、インナチューブ12の内面に付着する多結晶シリコンゲルマニウムの線膨張係数(4.2×10-6/K)も、インナチューブ12を形成している炭化シリコン(SiC)の線膨張係数(4.2×10-6/K)とほぼ一致しているので、インナチューブ12、及びインナチューブ12の内面に付着したエピタキシャルシリコンゲルマニウムが温度変化をした際にも、インナチューブ12の内面に付着したエピタキシャルシリコンゲルマニウムはインナチューブ12から剥離し難い。
【0079】
本開示の基板処理装置は、縦形CVD成膜装置に限らず、処理室の内壁の温度が変化しうる成膜装置全般に適用することができる。
【0080】
上記実施形態では、インナチューブ12が炭化シリコン(SiC)で形成され、インナチューブ12に堆積する膜が、多結晶シリコンや多結晶シリコンゲルマニウムであったが、インナチューブ12を形成する材料の線膨張係数と、インナチューブ12に堆積する膜の材料の線膨張係数が近似していれば、インナチューブ12、及びインナチューブ12に堆積する膜の材料は上記実施形態のものに限らない。
【0081】
上記実施形態では、コンダクタンス可変部として通気孔付きセットスクリュー43の数を予め調整しておき、基板1の処理時に、環状空間18に原料ガス50が流入せず、かつ環状空間18に供給させる窒素ガスの使用量を抑えるようにしたが、それに限るものではなく、コンダクタンスを可変可能な構成であればよい。例えば、処理ガスを供給するガス供給装置、および窒素ガスを供給するガス供給装置の各々のガス供給量を調整して、環状空間18と環状空間18の差圧を適切に保つようにしてもよい。つまり、通気孔43aにパージガスが流れることにより生じる圧力差は、パージガスの流量によって直接的に制御することができる。また、処理中に原料ガスの供給や停止を繰り返し、処理室13の圧力が首記的に変動するような成膜を行う場合、流量制御器54を圧力制御器に変更し、処理室13の目標圧力パターンに連動して圧力制御器が供給するパージガスの圧力をフィードフォワード制御するようにしてもよい。
【0082】
第1圧力計48は、例えば、基板1の処理中に処理室13の内圧を検知してもよく、第2圧力計52も基板1の処理中に環状空間18の内圧を検知してもよく、例えば、基板1の処理中の各々の圧力を検知し、装置の稼働状況を監視して稼働状況を記録したり、圧力が規定の範囲を外れた場合など、装置の異常を発見して装置を停止することにも利用できる。
【0083】
以下、本開示の望ましい形態について付記する。
【0084】
(付記1)
上端が閉塞され、下端が開口した筒状のアウタチューブと、
前記アウタチューブの内部に設けられ、上端が閉塞され、下端が開口した筒状に形成され、内部で基板を処理可能とするインナチューブと、
前記アウタチューブ及び前記インナチューブの下方に設けられ、前記インナチューブの内部空間と連通し、前記インナチューブと前記アウタチューブとの間の環状空間とは隔離された排気空間を備えた筒状に形成されたマニホールドと、
前記インナチューブの内部に前記基板の処理を行う処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記環状空間にパージガスを供給するパージガスノズルと、
前記環状空間と前記排気空間との間の隔壁部に設けられ、前記環状空間と前記排気空間との間で気体を通過可能とし、かつ前記気体の通過のコンダクタンスを可変可能なコンダクタンス可変部と、
を有する基板処理装置。
【0085】
(付記2)
前記インナチューブの下端には、前記インナチューブを筒状の前記マニホールドの開口から挿入可能とし、かつ前記マニホールドの内周部に形成された環状の内向きフランジに着脱可能に取り付けられる取付部材が設けられている、付記1に記載の基板処理装置。
【0086】
(付記3)
前記内部空間の圧力を検知する第1圧力計と、
前記環状空間の圧力を検知する第2圧力計と、
を有する、付記1または付記2に記載の基板処理装置。
【0087】
(付記4)
前記インナチューブは、前記処理ガスにより前記基板を処理した際に、前記インナチューブの内側の表面に堆積する堆積物の線膨張係数に対して、±8%以下の線膨張係数を有する材料で形成されている、付記1~付記3の何れかに記載の基板処理装置。
【0088】
(付記5)
前記インナチューブは、前記堆積物の線膨張係数と実質的に等しい線膨張係数を有する材料で形成されている、付記1~付記4の何れかに記載の基板処理装置。
【0089】
(付記6)
前記堆積物はシリコンであり、前記インナチューブは、炭化シリコンを主原料とする焼結体である付記4に記載の基板処理装置。
【0090】
(付記7)
前記コンダクタンス可変部は、前記隔壁部に貫通して設けられた複数の螺子孔と、前記複数の螺子孔のいずれかに螺合する少なくとも1つの螺子とを有する付記1~付記4の何れかに記載の基板処理装置。
【0091】
(付記8)
前記マニホールドは、前記筒部の一端に設けられ前記アウタチューブと第1シール材を介して接続される上フランジと、前記筒部の他端に設けられ前記アウタチューブを支持する筐体と第2シール材を介して接続され下フランジと、前記筒部の内周に設けられ前記インナチューブを支持する内向きフランジと、を備え、
前記コンダクタンス可変部は、前記内向きフランジまたは前記取付部材に設けられている、付記2に記載の基板処理装置。
【0092】
(付記9)
前記マニホールドの前記排気空間は、前記環状空間を介さずに前記インナチューブの前記内部空間と直接連通しており、
前記マニホールドには、前記インナチューブ内の気体を排出する排気ポートが設けられている、付記1~付記4の何れかに記載の基板処理装置。
【0093】
(付記10)
前記インナチューブの内部に収容された前記基板に対し、2μm以上の膜を堆積させる処理を行う付記2に記載の基板処理装置。
【0094】
(付記11)
付記1に記載の基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記基板が配置された前記インナチューブに処理ガスを供給して前記基板の処理を行うと共に、前記環状空間にパージガスを供給し、前記インナチューブに供給された前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出すると共に、前記環状空間内の前記パージガスを前記コンダクタンス可変部及び前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出させる基板処理工程と、
前記基板処理工程の終了後、前記処理ガスノズルから前記内部空間にパージガスを供給すると共に前記パージガスノズルから前記環状空間にパージガスを供給し、前記内部空間の前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出する排気工程と、
を有する基板処理方法。
【0095】
(付記12)
付記1に記載の基板処理装置を用いて、
前記基板が配置された前記インナチューブに処理ガスを供給して前記基板の処理を行うと共に、前記環状空間にパージガスを供給し、前記インナチューブに供給された前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出すると共に、前記環状空間内の前記パージガスを前記コンダクタンス可変部を介して前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出させる基板処理手順と、
前記基板処理工程の終了後、前記処理ガスノズルから前記内部空間にパージガスを供給すると共に前記パージガスノズルから前記環状空間にパージガスを供給し、前記内部空間の前記処理ガスを前記排気空間を介して前記マニホールドの外部へ排出する排気手順と、
を行うことで基板を処理する手順とを、前記基板処理装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。