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特許7383852環状オレフィン共重合体、及び環状オレフィン共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】環状オレフィン共重合体、及び環状オレフィン共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/04 20060101AFI20231113BHJP
   C08F 210/14 20060101ALI20231113BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C08F232/04
C08F210/14
C08F4/6592
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023535609
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003404
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2022015136
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宮城 雄
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 樹
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145425(JP,A)
【文献】特開平11-070624(JP,A)
【文献】国際公開第2020/204188(WO,A1)
【文献】TANAKA Ryo et al.,Synthesis of high-molecular weight block copolymers of norbornene and propylene with methyl methacrylate initiated by a fluorenylamido titanium complex,Polymer Chemistry,2013年,Vol. 4, No. 14,p.3974-3980,DOI: 10.1039/c3py00400g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00-4/58;4/72-4/82
C08F 6/00-246/00;301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの付加型重合体である環状オレフィン共重合体であって、
前記環状オレフィンモノマーが、ノルボルネンであり、
前記α-オレフィンが、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンからなる群より選択される1種以上であり、
全構造単位のモル数に対する、前記α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が10モル%以上50モル%以下であり、
前記環状オレフィン共重合体に関する、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線が一次ピークを有し、前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にあり、
ただし、散乱ベクトルq=(4πsinθ)/λであり、πは円周率、2θは散乱角、λは入射X線の波長を示す、環状オレフィン共重合体。
【請求項2】
前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.20~0.40の範囲にある、請求項1に記載の環状オレフィン共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
下記式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンとを付加重合させることを含み、
前記助触媒が、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含み、
前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンモノマーとが、それぞれ2回以上に分けて付加重合を行う反応系内に分割添加される、製造方法。
【化1】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。)
【請求項4】
請求項1又は2に記載の前記環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
下記式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンとを付加重合させることを含み、
前記助触媒が、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含み、
前記付加重合が10℃以上60℃以下の範囲内の温度で行われる、製造方法。
【化2】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン共重合体、及び環状オレフィン共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン重合体及び環状オレフィン共重合体(それぞれ「COP」及び「COC」等とも呼ばれる。)は、低吸湿性及び高透明性を有する。このため、COP及びCOCは、光ディスク基板、光学フィルム、光学ファイバー等の光学材料の分野をはじめ、様々な用途に使用されている。代表的なCOCとして環状オレフィンとエチレンとの共重合体がある。かかる共重合体のガラス転移温度(Tg)は、環状オレフィンとエチレンとの共重合組成で変えることが可能である。このため、環状オレフィンとエチレンとの共重合体は、COPのTgより高いTgを有する共重合体として製造することができ、COPでは困難な200℃超のTgを実現することも可能である。しかし、かかる共重合体は硬くて脆い性質を有している。このため、かかる共重合体には、機械的強度が低く、ハンドリング性及び加工性が悪いという問題点があった。
【0003】
高TgCOCの機械的強度を改善する方法の1つとして、環状オレフィンとエチレン以外のα-オレフィン(以下、「特定α-オレフィン」という)とを共重合させる方法がある。環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合については、種々の研究がなされている。
【0004】
環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合は、環状オレフィンとエチレンとの共重合とは大きく異なる。環状オレフィンとエチレンとの共重合で高分子量体が得られる条件で環状オレフィンと特定α-オレフィンとを共重合する場合、これまで高分子量の共重合体が得られにくかった。環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合において、特定α-オレフィンに起因する連鎖移動反応が生じるためである。よって、環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合体は、成形材料には適さないとされていた(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
このため、環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合体について、成形加工性の改良について種々の検討がなされている。例えば、ある程度高い分子量を有しフィルムに成形可能な環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重合体の製造法方法として、特定の構造のチタノセン触媒と、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの共存下に、環状オレフィンと特定α-オレフィンとを共重合させる方法が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-56275号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jung, H. Y.ら、Polyhedron、2005年、第24巻、p.1269-1273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によっても、環状オレフィンと特定α-オレフィンとの共重体であって、破断歪みに優れる環状オレフィン共重合体を製造することが困難である。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体であって、引張強度、及び破断歪みに優れる環状オレフィン共重合体と、当該環状オレフィン共重合体を良好に製造し得る環状オレフィン共重合体の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体において、α-オレフィンに由来する構造単位の量を、全構造単位に対して10モル%以上50モル%以下とし、環状オレフィン共重合体が、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線において一次ピークを有し、一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にあることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(I) 環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの付加型重合体である環状オレフィン共重合体であって、
全構造単位のモル数に対する、前記α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が10モル%以上50モル%以下であり、
環状オレフィン共重合体に関する、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線が、一次ピークを有し、前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にあり、
ただし、散乱ベクトルq=(4πsinθ)/λであり、πは円周率、2θは散乱角、λは入射X線の波長を示す、環状オレフィン共重合体。
【0012】
(II) 前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.20~0.40の範囲にある、(I)に記載の環状オレフィン共重合体。
【0013】
(III) (I)又は(II)に記載の前記環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
下記式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンとを付加重合させることを含み、
前記助触媒が、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含み、
前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンとが、それぞれ2回以上に分けて付加重合を行う反応系内に分割添加される、製造方法。
【化1】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。)
【0014】
(IV) (I)又は(II)に記載の前記環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
下記式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、前記環状オレフィンモノマーと、前記α-オレフィンとを付加重合させることを含み、
前記助触媒が、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含み、
前記付加重合が10℃以上60℃以下の範囲内の温度で行われる、製造方法。
【化2】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体であって、引張強度、及び破断歪みに優れる環状オレフィン共重合体と、当該環状オレフィン共重合体を良好に製造し得る環状オレフィン共重合体の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
≪環状オレフィン共重合体≫
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの付加型重合体である。環状オレフィン共重合体において、全構造単位のモル数に対する、α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が10モル%以上50モル%以下である。また、環状オレフィン共重合体に関する、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線が一次ピークを有し、前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にある。
前記一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値は、0.20~0.40の範囲にあるのが好ましい。
【0018】
小角X線散乱測定より得られた、散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線の1次ピークに対して、ガウス分布を仮定した近似曲線の半値幅(以下、FWHMとする)とピークトップのq値(以下、q*とする)を算出することで、FWHMをq*で除した数値であるFWHM/q*を算出できる。
ここで、散乱ベクトルq=(4πsinθ)/λであり、πは円周率、2θは散乱角、λは入射X線の波長を示す。
【0019】
共重合体の機械強度は共重合された各成分の相分離の有無や相構造のサイズとその存在比の影響を受けることが知られている。例えば相分離しない場合、単一の機械強度を示すが、相分離する場合は、存在する各成分の機械強度が反映され、各成分のサイズや存在比によって成分毎の影響度が変わると考えられる。このことから、引張強度、及び破断歪みに優れる材料を得るためには共重合体の相分離挙動を制御することが必要であると言える。環状オレフィン共重合体の相分離挙動の評価は、小角X線散乱測定により得られる散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線によって評価することができる。
小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における、一次ピークの存在は、環状オレフィン共重合体において相分離が生じていることを示す。また、一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値は、相分離の秩序性の高さを示す。
【0020】
上記の環状オレフィン共重合体は、引張強度、及び破断歪みに優れる。
具体的には、環状オレフィン共重合体は、ISO527-3に準拠した方法により、23℃にて、厚さ50μmの2号ダンベル試験片を用いて行われる引張試験による測定値として、好ましくは25MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上の引張強度を示す。
また、環状オレフィン共重合体は、上記の方法による引張試験により測定値として、好ましくは3.5%以上、より好ましく5%以上の破断歪みを示す。
さらに、環状オレフィン共重合体は、上記の方法による引張試験により測定値として、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1100MPa以上、さらに好ましくは1500MPa以上の引張弾性率を示す。
【0021】
環状オレフィン共重合体において、全構造単位のモル数に対する、α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が10モル%以上50モル%以下であり、15モル%以上45モル%以下が好ましく、20モル%以上40モル%以下がより好ましく、20モル%以上35モル%以下がさらに好ましく、20モル%以上30モル%以下が特に好ましい。α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が高すぎると、引張強度や引張弾性率の高い環状オレフィン共重合体を得にくい。α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が高すぎると、高いガラス転移温度を有し、耐熱性に優れる環状オレフィン共重合体を得にくい。
α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率は、13C-NMRスペクトルを測定することにより算出できる。
【0022】
環状オレフィン共重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、環状オレフィンモノマーに由来する構造単位、及び炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンに由来する構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位としては、環状オレフィンモノマー、及び炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンと共重合可能であって、炭素-炭素不飽和二重結合を有する化合物に由来する構造単位を採用し得る。典型的には、エチレンに由来する構造単位が、他の構造単位として好ましい。
【0023】
環状オレフィン共重合体において、全構造単位のモル数に対する、環状オレフィンモノマーに由来する構造単位のモル数の比率と、α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率との合計は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%が最も好ましい。
【0024】
環状オレフィン共重合体は、粘弾性測定によるガラス転移温度を、0℃~300℃の範囲内に2つ以上有するのが好ましい。
ガラス転移温度は、厚さ50μmのフィルム状の成形品を用いて、固体レオメータによる-100℃~300℃での粘弾性挙動観測を行うことにより測定できる。具体的には、前述の測定により得られたtan δチャートにおけるピークについて、ピークトップの温度をガラス転移温度とする。
【0025】
上記の引張試験により測定される機械的特性が良好であることから、環状オレフィン共重合体は、0℃~100℃の範囲内と、160℃~300℃の範囲内とに、それぞれ少なくとも1つのガラス転移温度を有するのが好ましい。
特に、上記の引張試験により測定される破断歪みが大きいことから、環状オレフィン共重合体は、0℃未満の範囲内と、0℃~100℃の範囲内と、160℃~300℃の範囲内とに、それぞれ少なくとも1つのガラス転移温度を有するのが好ましい。
上記の0℃~100℃の範囲の中では、30℃~80℃の範囲が好ましく、40℃~70℃の範囲がより好ましい。
上記の160℃~300℃の範囲の中では、170℃~280℃が好ましく、180℃~270℃がより好ましい。
上記の0℃未満の範囲の中では、-50℃~0℃が好ましく、-40℃~-10℃がより好ましい。
【0026】
典型的には、環状オレフィン共重合体は、0℃~100℃の範囲内と、160℃~300℃の範囲内とに、それぞれガラス転移温度を1つずつ有するか、0℃未満の範囲内と、0℃~100℃の範囲内と、160℃~300℃の範囲内とに、それぞれガラス転移温度を1つずつ有するのが好ましい。
【0027】
環状オレフィン共重合体の分子量は特に限定されない。環状オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値として、5,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上100,000以下がより好ましい。
環状オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値として、5,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上100,000以下がより好ましい。
分散比(Mw/Mn)は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。
【0028】
<環状オレフィンモノマー>
環状オレフィンモノマーとしては、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、環状オレフィンモノマーとして、ノルボルネン及び置換ノルボルネンが好ましく用いられる。環状オレフィンモノマーとしては、コスト、重合性、及び得られる環状オレフィン共重合体の物性のバランスが良い点で、ノルボルネンが特に好ましい。環状オレフィンモノマーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
置換ノルボルネンは特に限定されない。置換ノルボルネンが有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基が挙げられる。置換ノルボルネンの具体例としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0030】
【化3】
【0031】
式(I)中、Ra1~Ra12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれる原子又は基である。
a9とRa10、Ra11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。
a9又はRa10と、Ra11又はRa12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数である。
nが2以上の場合、Ra5~Ra8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、nが0である場合、Ra1~Ra4及びRa9~Ra12の少なくとも1個は、水素原子ではない。
【0032】
a1~Ra8の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、及び臭素等のハロゲン原子;炭素原子数1以上20以下のアルキル基等が挙げられる。Ra1~Ra8は、全てが異なる原子又は基からなってもよい。Ra1~Ra8のうちの一部、又は全部が同一の原子又は基であってもよい。
【0033】
a9~Ra12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、及び臭素等のハロゲン原子;炭素原子数1以上20以下のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、及びフェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。Ra9~Ra12は、全てが異なる原子又は基からなってもよい。Ra9~Ra12のうちの一部、又は全部が同一の原子又は基であってもよい。
【0034】
a9とRa10、又はRa11とRa12とが一体化することにより形成され得る2価の炭化水素基の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、及びイソプロピリデン基等のアルキリデン基等が挙げられる。
【0035】
a9又はRa10と、Ra11又はRa12とが、互いに結合して環を形成する場合、形成される環は単環でも多環であってもよい。形成される環は、架橋を有する多環であってもよい。形成される環は、二重結合を有してもよい。形成される環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0036】
式(I)で示される置換ノルボルネンの具体例としては、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環の環状オレフィン;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン;5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンといった4環の環状オレフィン;
8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ-4,9,11,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-へキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]-14-エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、例えば、1個以上のアルキル基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンのようなアルキル置換ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンのような1個以上のアルキリデン基で置換されたアルキリデン置換ノルボルネンが好ましい。5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:5-エチリデン-2-ノルボルネン、又は、単にエチリデンノルボルネン)が特に好ましい。
【0038】
<α-オレフィン>
α-オレフィンは、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンである。
かかるα-オレフィンとしては、無置換のα-オレフィンだけではなく、ハロゲン原子等の置換基を有する置換α-オレフィンを用いることができる。α-オレフィンの炭素原子数は、3以上20以下であり、4以上12以下が好ましく、6以上10以下がより好ましい。
【0039】
炭素原子数3以上12以下のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセン等が挙げられる。これらの中では、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンが好ましい。
【0040】
上記の環状オレフィン共重合体は、必要に応じて、種々の添加剤と混合された後、例えば、フィルム、シート等に成形されたうえで、包装用途、光学用途等の種々の用途において広く使用され得る。環状オレフィン共重合体に加え得る添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、その種類に応じた一般的な使用量を勘案した量で、環状オレフィン共重合体に加えられる。
【0041】
≪環状オレフィン共重合体の製造方法≫
以下、前述の環状オレフィン共重合体の製造方法について説明する。
環状オレフィン共重合体の製造方法は、下記式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを付加重合させることを含む。助触媒は、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含む。
上記の製造方法において、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとが、それぞれ2回以上に分けて付加重合を行う反応系内に分割添加される。
【化4】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。)
【0042】
この方法によれば、前述の(I)~(III)のいずれかに記載の構成要件を満たす環状オレフィン共重合体を提供できる。以下のこの方法について、「第1の製造方法」とも記す。
【0043】
また、以下の製造方法も、環状オレフィン共重合体の製造方法として好ましい。この方法によれば、前述の(I)又は(II)に記載の構成要件を満たす環状オレフィン共重合体を提供できる。
具体的には、この方法は、式(1)で表されるチタノセン触媒と、助触媒との存在下に、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを付加重合させることを含む。助触媒は、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含む。付加重合は、10℃以上60℃以下の範囲内の温度で行われる。式(1)で表されるチタノセン触媒については、第1の製造方法についての前述のチタノセン触媒と同様である。
以下、この方法について、「第2の製造方法」とも記す。
【0044】
<第1の製造方法>
第1の製造方法において、前述の環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを含む単量体が用いられる。環状オレフィンモノマーの種類、α-オレフィンの種類、及びこれらの共重合比率については、環状オレフィン共重合体について説明した通りである。
【0045】
第1の製造方法において、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとは、それぞれ2回以上に分けて付加重合を行う反応系内に分割添加される。
環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを、このように添加することにより、機械的特性が良好な環状オレフィン共重合体を得やすい。また、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを、このように添加することにより、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線において、一次ピークを有し、一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にある環状オレフィン共重合体を得やすい。
【0046】
分割添加を行う場合、分割回数は特に限定されない。分割回数は、例えば、2回以上5回以下が好ましく、2回又は3回がより好ましく、2回がさらに好ましい。
分割添加を行う場合、1回あたりの環状オレフィンモノマー、又はα-オレフィンの添加量は、添加量全体の質量をTAとし、分割回数をNとする場合に、TA/N×0.5以上TA/N×1.5以下が好ましく、TA/N×0.7以上TA/N×1.3以下がより好ましく、TA/N×0.9以上TA/N×1.1以下がさらに好ましい。
【0047】
分割回数が2回である場合、環状オレフィンモノマー、又はα-オレフィンの1回あたりの添加量は、添加量全体の質量に対して、25質量%以上75質量%以下が好ましく、35質量%以上65質量%以上がより好ましく、45質量%以上55質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
分割添加を行う場合、付加重合の開始時又は開始前に、反応容器に、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとの少なくとも一方が添加される。次いで、付加重合の開始後の任意のタイミングで、環状オレフィンモノマー、又はα-オレフィンの2回目以降の添加が行われる。
分割添加を行う場合、各添加間の時間は3分以上20分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。
分割添加を行う場合、環状オレフィンモノマーの添加のタイミングと、α-オレフィンの添加のタイミングとは、同時であっても異なっていてもよい。
また、環状オレフィンモノマーの添加の分割回数と、α-オレフィンの添加の分割回数とが異なっていてもよい。
【0049】
前述の通り、環状オレフィン共重合体を製造する際に、上記式(1)で表されるチタノセン触媒が使用される。
式(1)において、R~Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、上記アルキル基を置換基として有するフェニル基又はビフェニル基、ナフチル基、上記アルキル基を置換基として有するナフチル基等のアリール基を挙げることができる。
【0050】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又はハロゲン原子であり、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、上記ハロゲン原子を置換基として有するこれらのアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、上記ハロゲン原子又はアルキル基を置換基として有するこれらのアリール基を挙げることができる。
【0051】
~R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数6以上12以下のアリール基、又は炭素原子数1以上12以下の1価炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。炭素原子数1以上12以下のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。また、炭素原子数6以上12以下のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、上記アルキル基を置換基として有するこれらのアリール基等を挙げることができる。さらに、炭素原子数1以上12以下の1価炭化水素基を置換基として有するシリル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1以上12以下のアルキル基を置換基として有するシリル基を挙げることができる。
【0052】
一般式(1)で示されるチタノセン触媒の具体例としては、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジメチル、(イソブチルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジメチル、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-(3,6-ジメチルフルオレニル)シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジクロリド、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-(3,6-ジメチルフルオレニル)シランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-(3,6-ジメチルフルオレニル)シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-(3,6-ジメチルフルオレニル)シランチタンジメチル、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(i-プロピル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(i-プロピル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(i-プロピル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-[3,6-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-[2,7-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-[2,7-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-[2,7-ジ(t-ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(イソプロピルアミド)ジメチル-9-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレニル)シランチタンジクロリド、(イソブチルアミド)ジメチル-9-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレニル)シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル-9-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレニル)シランチタンジメチル等を挙げることができる。好ましくは(t-ブチルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジメチル((t-BuNSiMeFlu)TiMe)である。(t-BuNSiMeFlu)TiMeは、下記式(2)で表されるチタニウム錯体であり、例えば、「Macromolecules、第31巻、3184頁、1998年」の記載に基づき、容易に合成することができる。
【0053】
【化5】
(式中、Meはメチル基を、t-Buはtert-ブチル基を示す。)
【0054】
上記のチタノセン触媒の使用量は、付加重合反応が良好に進行する限り特に限定されない。チタノセン触媒の使用量は、環状オレフィンモノマー及びα―オレフィンの総量100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.01質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
【0055】
環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとを含む単量体の付加重合は、上記のチタノセン触媒と、助触媒との共存下に行われる。助触媒は、ボレート化合物、及びヒンダードフェノールを含む。
上記のチタノセン触媒と、助触媒との共存下に、前述の所定の条件を満たすように付加重合を行うことにより、優れた破断歪みと優れた靭性とを兼ね備える環状オレフィン共重合体が得られる。
【0056】
ボレート化合物としては、従来より、環状オレフィンモノマーの単独重合、又は共重合において助触媒として使用されているボレート化合物を特に限定なく使用できる。ボレート化合物の好ましい具体例としては、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びN-メチルジノルマルデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0057】
ヒンダードフェノールとしては、従来より、環状オレフィンモノマーの単独重合、又は共重合において助触媒として使用されているヒンダードフェノールを特に限定なく使用できる。
ここで、ヒンダードフェノールとは、フェノール性水酸基の2つの隣接位の少なくとも一方に、かさ高い置換基を有するフェノール類である。かさ高い置換基としては、例えば、メチル基以外のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環式基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基等が挙げられる。メチル基以外のアルキル基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。
【0058】
ヒンダードフェノールの具体例としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-p-クレゾール、3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’,4”-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、及び1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)2,4,6-トリメチルベンゼン等が挙げられる。
これらの中では、分子量が小さく、少量の使用によりヒンダードフェノールの使用による所望する効果を得やすいことから、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、及び2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが好ましい。
【0059】
また、ヒンダードフェノールは、重合系内でアルキルアルミニウム化合物と反応することにより、環状オレフィン共重合体の収量を増加させ得る。このため、助触媒が、さらにアルキルアルミニウム化合物を含むのが好ましい。
アルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0060】
上記のボレート化合物の使用量は、付加重合反応が良好に進行し、所望する性質の環状オレフィン共重合体が得られる限り特に限定されない。ボレート化合物の使用量は、環状オレフィンモノマー及びα-オレフィンの総量100質量部に対して、0.01質量部以上100質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
【0061】
上記のヒンダードフェノールの使用量は、付加重合反応が良好に進行し、所望する性質の環状オレフィン共重合体が得られる限り特に限定されない。ヒンダードフェノールの使用量は、環状オレフィンモノマー及びα-オレフィンの総量100質量部に対して、0.001質量部以上100質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
【0062】
上記のアルキルアルミニウム化合物の使用量は、付加重合反応が良好に進行し、所望する性質の環状オレフィン共重合体が得られる限り特に限定されない。アルキルアルミニウム化合物の使用量は、環状オレフィンモノマー及びα-オレフィンの総量100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.01質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
【0063】
付加重合は溶媒の存在下に行われてもよい。溶媒としては、重合反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。好ましい溶媒としては、例えば炭化水素溶媒や、ハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられ、取り扱い性や熱安定性、化学的安定性に優れることから炭化水素溶媒が好ましい。好ましい溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、ミネラルオイル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素溶媒や、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0064】
溶媒は、溶媒単独で重合容器内に仕込まれてもよく、単量体溶液、触媒溶液、又は助触媒溶液の形態で重合容器に仕込まれてもよい。
【0065】
溶媒を用いる場合、その使用量は、特に限定されない。溶媒の使用量は、環状オレフィンモノマー及びα-オレフィンの総量100質量部に対して、100質量部以上100000質量部以下が好ましく、500質量部以上10000質量部以下がより好ましく、1000質量部以上5000質量部以下がさらに好ましい。
【0066】
付加重合の温度は特に限定されない。付加重合の温度は、例えば、-20℃以上200℃以下が好ましく、-10℃以上10℃以下がより好ましく、-5℃以上5℃以下がさらに好ましい。
付加重合の時間は特に限定されない。付加重合の時間は、例えば、5分以上30分以下が好ましく、8分以上20分以下がより好ましく、10分以上15分以下がさらに好ましい。
【0067】
上記の付加重合反応が行われる雰囲気は特に限定されないが、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスやヘリウムガスを用いることができる。
【0068】
上記のようにして付加重合を行い、環状オレフィン共重合体を生成させた後、常法に従い、環状オレフィン共重合体が反応容器内から回収される。
【0069】
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、環状オレフィンモノマー、及びα-オレフィンの仕込み方法が特に限定されないことと、付加重合が10℃以上60℃以下の範囲内の温度で行われることを除いて、第1の製造方法と同様である。
【0070】
第2の製造方法における、環状オレフィンモノマー、及びα-オレフィンの仕込み方法は、第1の製造方法と同様であってもよい。仕込み操作が簡単であることから、第2の製造方法における環状オレフィンモノマー、及びα-オレフィンの仕込み方法としては、付加重合反応の開始時又は開始前に、環状オレフィンモノマー、及びα-オレフィンを一括で反応容器に仕込む方法が好ましい。
【実施例
【0071】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0072】
[実施例1~4]
実施例1~4において、それぞれ表1に記載の比率の2-ノルボルネン(Nb)と、1-オクテン(Oct)とを、2-ノルボルネン、及び1-オクテンの総量が118.8mmolとなる量用いた。窒素雰囲気に置換された、容量500mLのナス型フラスコに、2-ノルボルネン、及び1-オクテンの半量と、トリ-n-オクチルアルミニウム0.198mmolと、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン0.396mmolとを加えた。その後、トルエンを用いて、フラスコの内容物を体積258mLとなるように希釈した。次いで、フラスコの内容物を0℃に冷却した。冷却後、チタノセン触媒の量が、0.22mmolとなるように、チタノセン触媒の濃度0.04mmol/Lのトルエン溶液を反応液に加えた。チタノセン触媒としては、前述の式(2)で表される化合物を用いた。次いで、ボレート化合物の量が、0.22mmolとなるように、ボレート化合物の濃度0.008mmol/Lのトルエン溶液を反応液に加えた。ボレート化合物としては、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いた。チタノセン触媒とボレート化合物とを添加して付加重合を開始させた後、反応液をマグネチックスターラーで撹拌しながら、0℃で10分反応を行った。10分の反応後、それぞれ残りの半分の量の2-ノルボルネン及び1-オクテンと、トリ-n-オクチルアルミニウム0.022mmol及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン0.044mmolをナス型フラスコに加えた。その後、15分間、付加重合反応を継続させた。
計25分の反応後、反応液に、少量の2-プロパノールを添加し、付加重合反応を停止させた。反応液に、塩酸を加えて10分間撹拌した後、イオン交換水を用いて有機層を洗浄した。水層が中性になるまで、イオン交換水による洗浄を繰り返し行った後、洗浄された有機層を回収した。回収された有機層を、多量のアセトンに滴下して、生成した環状オレフィン共重合体を沈殿させた。沈殿した共重合体をろ過により回収した後、共重合体をメタノールとアセトンとで2回以上洗浄した。洗浄された共重合体を110℃で16時間以上減圧乾燥して、乾燥した環状オレフィン共重合体を得た。
【0073】
得られた環状オレフィン共重合体について、α-オレフィン(1-オクテン)に由来する構造単位のモル数の比率(α-オレフィンの比率)を、以下の方法で特定した。
得られた環状オレフィン共重合体約50mgをクロロホルム-d0.6mLに溶解し、BRUKER社製AVANCE III 400+クライオプローブを用いて、300K、90°パルスで繰り返し時間30秒、積算1000回の条件で、13C-NMRスペクトルを測定した。
得られたスペクトルから、Macromolecules2010,43,4527-4531に記載の方法に準拠し、下記の式に基づき、α-オレフィンの比率を算出した。結果を樹脂中Oct比率として表1に記す。
α-オレフィンの比率(mol%)=[α-オレフィン由来炭素の積分値/(α-オレフィン由来炭素の積分値+環状オレフィンモノマー由来炭素の積分値)]×100
【0074】
得られた環状オレフィン共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定と、前述の方法による小角X線散乱(SAXS)の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における一次ピークの半値幅及びピークトップのq値の測定と、前述の方法によるガラス転移温度の測定と、前述の方法による引張試験とを行った。これらの測定結果を表1及び表2に記す。なお、引張試験は、以下の方法で得られたフィルムから2号ダンベル試験片を切り出して測定試料とし、ISO527-3に準拠し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機RTM-100)を用い、温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/分で行った。
【0075】
以下の方法で得られたフィルムから4cm×1cm×50μmのサイズに切り出された測定試料を用いた。小角X線散乱装置「大型放射光施設 SPring-8 BL-19B2」(公益財団法人 高輝度光科学研究センタ)を用いてX線をフィルムサンプル面に垂直な方向から入射して測定を行った。測定条件は以下の通りである。測定で得られた散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線の1次ピークを評価した。
検出器:DECTRIS社製のPILATUS 2M
入射X線の波長:0.69Å
測定試料から検出器までの距離:3m
露光時間:420秒
【0076】
ガラス転移温度の測定と、引張試験と、小角X線散乱測定とにおいて試料として用いたフィルムを、以下の方法で作製した。
10cm×10cm×50μmのサイズのカプトン(登録商標)フィルムを用いて、深さ50μmの型枠を作製した。型枠内に得られた環状オレフィン共重合体を充填した後、熱真空プレス機を用いて、圧力15MPa、温度320~340℃、時間15分の条件で型枠内に充填された環状オレフィン共重合体を真空プレスした。プレス後、プレスされた環状オレフィン共重合体を室温の金属板に挟み込むことにより急速に冷却した。冷却後、金属板を外して、膜厚約50μmの環状オレフィン共重合体のフィルムを得た。
【0077】
[実施例5~8]
付加重合反応を開始させる前に、ノルボルネン及び1-オクテンの全量を一括で仕込むことと、反応温度を25℃に変えることと、反応時間を10分に変えることとの他は、実施例1と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。なお、ノルボルネン及び1-オクテンの仕込み比率は、表1に記載の通りである。
得られた環状オレフィン共重合体について、実施例1と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定と、樹脂中Oct比率の測定と、前述の方法による小角X線散乱(SAXS)の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における一次ピークの半値幅及びピークトップのq値の測定と、前述の方法によるガラス転移温度の測定と、前述の方法による引張試験とを行った。これらの測定結果を表1及び表2に記す。
【0078】
[比較例1]
反応温度を0℃に変えることの他は、実施例5と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。なお、ノルボルネン及び1-オクテンの仕込み比率は、表1に記載の通りである。
得られた環状オレフィン共重合体について、実施例1と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定と、樹脂中Oct比率の測定と、前述の方法による小角X線散乱(SAXS)の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における一次ピークの半値幅及びピークトップのq値の測定と、前述の方法によるガラス転移温度の測定と、前述の方法による引張試験とを行った。これらの測定結果を表1及び表2に記す。
【0079】
[比較例2]
助触媒として、下記CC1を0.97mmolと、下記CC2を0.68mmolとを用いたことと、反応温度を40℃に変えることと、重合時間を4時間に変えることとの他は、実施例5と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。なお、ノルボルネン及び1-オクテンの仕込み比率、仕込み方法は、表1に記載の通りである。
得られた環状オレフィン共重合体について、実施例1と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定と、樹脂中Oct比率の測定と、前述の方法による小角X線散乱(SAXS)の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における一次ピークの半値幅及びピークトップのq値の測定と、前述の方法によるガラス転移温度の測定と、前述の方法による引張試験とを行った。これらの測定結果を表1及び表2に記す。
CC1:6.5質量%(Al原子の含有量として)MMAO-3Aトルエン溶液([(CH0.7(iso-C0.3AlO]で表されるメチルイソブチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して6mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)
CC2:9.0質量%(Al原子の含有量として)TMAO-211トルエン溶液(メチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して26mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)
【0080】
[比較例3]
助触媒として、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.22mmolのみを用いることと、反応温度を25℃に変えることと、反応温度2時間に変えることとの他は、実施例5と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。なお、ノルボルネン及び1-オクテンの仕込み比率は、表1に記載の通りである。
得られた環状オレフィン共重合体について、実施例1と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定と、樹脂中Oct比率の測定と、前述の方法による小角X線散乱(SAXS)の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線における一次ピークの半値幅及びピークトップのq値の測定と、前述の方法によるガラス転移温度の測定と、前述の方法による引張試験とを行った。これらの測定結果を表1及び表2に記す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表1、及び表2によれば、全構造単位のモル数に対する、α-オレフィンに由来する構造単位のモル数の比率が10モル%以上50モル%以下であり、環状オレフィン共重合体に関する小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線において、一次ピークの半値幅をピークトップのq値で除した値であるFWHM/q*が、0.15~0.45の範囲にある、実施例の環状オレフィン共重合体が、高い引張強度を維持している一方で、ノルボルネン及び1-オクテンの仕込み比率が同程度である比較例の環状オレフィン共重合体よりも、破断歪みに優れることが分かる。
【要約】
環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体であって、引張強度、及び破断歪みに優れる環状オレフィン共重合体と、当該環状オレフィン共重合体を良好に製造し得る環状オレフィン共重合体の製造方法とを提供すること。
環状オレフィンモノマーと、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体において、α-オレフィンに由来する構造単位の量を、全構造単位に対して10モル%以上50モル%以下とし、環状オレフィン共重合体について、小角X線散乱の散乱ベクトルqに対する1次元散乱曲線において、一次ピークの半値幅をそのピークトップのq値で除した値が、0.15~0.45の範囲にあるようにする。