(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】画像制御装置、表示装置、移動体、画像制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20231114BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0969
(21)【出願番号】P 2019045258
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018063761
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘史
(72)【発明者】
【氏名】齊所 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】草▲なぎ▼ 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友規
(72)【発明者】
【氏名】片桐 敬太
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203934(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118859(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072019(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141829(WO,A1)
【文献】特開2008-128827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
B60K 35/00 - 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される画像制御装置であって、
前記移動体の搭乗者から見て、少なくとも前記移動体の移動する方向の路面を含む所定の位置に重畳されて見えるように表示される画像のデータを生成する制御部を備え、
前記制御部は、予め生成された予定経路に進路の変化が含まれている場合であって、前記移動体の搭乗者から見て前記所定の位置よりも遠方に前記進路の変化位置がある場合に、前記所定の位置に表示されるパターンを生成し、当該パターンは複数のマークを含み、
前記パターンは、前記搭乗者から見たときに、当該パターンを構成する
前記複数のマーク
のそれぞれが前記進路の変化位置に至るまでの前記移動体の
進路変化の方向を示すように表示され
、前記進路変化の方向を示す前記複数のマークは、前記進路の変化位置に向かうにつれて水平軸に対する角度が小さくなる、
画像制御装置。
【請求項2】
前記パターンは、少なくとも前記進路の変化位置での
前記進路変化の方向を示すマークを含む、請求項1に記載の画像制御装置。
【請求項3】
前記複数のマークの配置間隔は、前記進路の変化位置に近づくほど狭くなる、請求項1又は
2に記載の画像制御装置。
【請求項4】
前記複数のマークの大きさ、もしくは所定方向の長さは、前記進路の変化位置に近づくほど小さくなる、
請求項1
乃至3の何れか1項に記載の画像制御装置。
【請求項5】
前記パターンを構成する少なくとも一部のマークは前記複数のマークそれぞれの中心位置を示すこと、を特徴とする請求項1
乃至4の何れか1項記載の画像制御装置。
【請求項6】
前記パターンを構成する少なくとも一部のマークは前記複数のマークのそれぞれの端部位置を示すこと、を特徴とする請求項
1乃至
4の何れか1項記載の画像制御装置。
【請求項7】
前記パターンは線分を含み、前記パターンを構成する
前記複数のマークは、当該線分であること、を特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項記載の画像制御装置。
【請求項8】
前記進路の変化位置が前記パターンが重畳して見える範囲に入った場合、前
記進路変化
の方向を示す画像のデータを生成し、前記
複数のマークの延長線上に前記進路の変化位置があるように前記画像を表示する、
請求項1乃至6の何れか1項記載の画像制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8の何れか1項記載の画像制御装置と、
前記画像のデータに基づく光像を前記移動体の所定の投射エリアに投射する光学装置と、
を備える表示装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の表示装置を搭載した移動体。
【請求項11】
移動体に搭載される表示装置における画像制御方法であって、
移動体の搭乗者から見て、少なくとも移動体が移動する方向の路面を含む所定に位置に重畳されて見えるように表示される画像のデータを生成し、前記画像のデータは複数のマークを含むパターンを含み、
予め生成された予定経路に進路の変化が含まれている場合であって、前記移動体の搭乗者から見て前記所定の位置よりも遠方に前記進路の変化位置がある場合に、前記所定の位置に前記パターンを重畳表示し、
前記パターンは、前記搭乗者から見たときに、前記パターンを構成する
前記複数のマーク
のそれぞれが前記進路の変化位置位置に至るまでの前記移動体
の進路変化の方向を示すように表示さ
れ、前記進路変化の方向を示す前記複数のマークは、前記進路の変化位置に向かうにつれて水平軸に対する角度が小さくなるように表示されることを特徴とする画像制御方法。
【請求項12】
移動体に搭載される画像制御装置に以下の手順を実行させるプログラムであって、
移動体の搭乗者から見て、少なくとも移動体が移動する方向の路面を含む所定に位置に重畳されて見えるように表示される画像のデータを生成する手順において、予め生成された予定経路に進路の変化が含まれている場合であって、前記移動体の搭乗者から見て前記所定の位置よりも遠方に前記進路の変化位置がある場合に、前記所定の位置に表示されるパターンを生成する手順を実行させ、前記画像のデータは複数のマークを含むパターンを含み、
前記パターンは、前記搭乗者から見たときに、前記パターンを構成する
前記複数のマーク
のそれぞれが前記進路の変化位置位置に至るまでの前記移動体
の進路変化の方向を示すように表示され
、前記進路変化の方向を示す前記複数のマークは、前記進路の変化位置に向かうにつれて水平軸に対する角度が小さくなるように表示される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像制御装置、表示装置、移動体、画像制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)の開発が進められている。HUDは、人間の視野に直接情報を映し出すものであり、搭乗者に種々の情報を提供する。HUDでは、生成された光像をフロントガラスやコンバイナ等によって搭乗者の方向に回折させ、搭乗者の視線の前方の虚像位置に画像が存在するかのように表示する。画像は、虚像位置で前方の走行路に重畳されて表示される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
重畳表示される画像として、自車両の移動予定の進路を示す進路情報を生成し、前方の路面に進路情報を重畳して表示するHUD装置が知られている。進路情報の中にカーブ情報が含まれているにもかかわらずそのカーブ情報が所定の表示エリアに入らないときに、カーブ情報の少なくとも一部が表示エリアに入るようにカーブ情報をシフトさせる手法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、進路変化情報をシフトさせる公知の手法を説明する図である。公知の手法は、
図1の(A)のように曲がるべき進路が近くにあり、進路情報の画像が表示エリアの手前、すなわち、運転者の視点からみて表示エリアの下側にはみ出す場合の修正に関する。
図2の(B)のように、当初表示するはずであった進路情報のマークM1~M7を、運転者の視点からみて上方のM1s~M7sの位置にシフトさせ、シフト後のマークM1s~M7sの少なくとも一部が表示エリア内に収まるように制御する。
【0005】
この手法では、カーブ情報が生成されてからそのカーブ情報が表示エリア内に入るか否かを判断し、表示エリア内に入らないと判断された場合に、カーブ情報を表示エリア内に入るようにシフトさせる。判断自体が進路を変える直前になり、運転者にとって進路の変化がわかりにくく、余裕をもって運転状況を把握することが難しい。
【0006】
また、一般的に、経路画像でカーブ等を表示する場合は、表示エリア内に実道路のカーブが存在する状態でカーブを表わす経路画像を表示するので、この場合も、余裕をもった運転状況の把握が困難である。
【0007】
本発明は、進路の変化を含む進路情報を周囲環境に重畳表示する際に、進路の変化を移動体の搭乗者に分かりやすく表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、移動体に搭載される画像制御装置は、
前記移動体の搭乗者から見て、少なくとも前記移動体の移動する方向の路面を含む所定の位置に重畳されて見えるように表示される画像のデータを生成する制御部を備え、
前記制御部は、予め生成された予定経路に進路の変化が含まれている場合であって、前記移動体の搭乗者から見て前記所定の位置よりも遠方に前記進路の変化位置がある場合に、前記所定の位置に表示されるパターンを生成し、
前記パターンは、前記搭乗者から見た際に、当該パターンを構成する少なくとも一部の情報の延長線上に、実際の前記進路の変化位置があるように表示される。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、進路の変化を含む進路情報を周囲環境に重畳表示する際に、進路の変化を移動体の搭乗者に分かりやすく表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の進路変化情報のシフト方法を説明する図である。
【
図2】表示装置を搭載した移動体の一例として、HUDを搭載した自動車を示す模式図である。
【
図4】実施形態の表示装置のハードウェア構成図である。
【
図5】表示装置と、移動体に搭載されるその他の電子機器との接続関係を示す模式図である。
【
図6】実施形態の表示装置の画像制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】進路変化を表わす経路案内情報の一例を示す図である。
【
図8】進路変化を示す経路案内情報の別の例を示す図である。
【
図9】進路変化を表わす経路案内情報のさらに別の例を示す図である。
【
図10】進路変化を表わす経路案内情報のさらに別の例を示す図である。
【
図11】進路変化を表わす経路案内情報のさらに別の例を示す図である。
【
図12】実施形態の表示制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は、表示装置1を搭載した移動体の一例として、自動車300を模式的に示す。表示装置1は、この例では車載ヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」と省略する)である。表示装置1が搭載される移動体は、自動車300に限定されず、車両、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体に表示装置1を搭載することができる。自動車300は、アダプティブクルーズコントロール(ACC:半自動走行)の機能を有していてもよい。
【0012】
表示装置1は、例えば自動車300のダッシュボード上、またはダッシュボード内に設置され、運転者または搭乗者(以下、単に「搭乗者」とする)Pの前方のフロントガラス310の所定の投射エリア311に、光像を投射する。
【0013】
表示装置1は、光学装置10と画像制御装置20を有する。画像制御装置20は主として、フロントガラス310に投射する画像のデータを生成し表示の制御を行う。光学装置10は、生成された画像データに基づいた光像をフロントガラス310の投射エリア311に投射する。光学装置10の構成は、本発明と直接関連しないので詳細な構成は図示しないが、たとえば、後述するようにレーザ光源と、レーザ光源から出力されるレーザ光を二次元走査して中間像を生成してフロントガラス310に投射する走査光学系を用いてもよい。光像の投射は、走査方式に限定されず、パネル方式で光像を投射エリア311に投射してもよい。
【0014】
フロントガラス310の投射エリア311は、光の一部の成分を反射し、他の一部を透過させる透過反射部材で形成されている。光学装置10によって描画された光像は、投射エリア311で反射されて、搭乗者Pの方向に向かう。反射光が破線で示す光路で搭乗者Pの瞳に入射したときに、搭乗者Pはフロントガラス310の投射エリア311に投影された画像を視認する。このとき、搭乗者Pは、光像があたかも虚像位置Iから点線の光路を通って瞳に入射しているかのように感じる。表示された画像は、虚像位置Iに存在するかのように認識される。
【0015】
虚像位置Iにおける虚像は、自動車300の前方の現実環境、たとえば走行路上に重畳されて表示される。この意味で、形成される画像をAR(Augmented Reality:拡張現実)画像と呼んでもよい。
【0016】
図3は、投射エリア311の配置例を示す図である。投射エリア311は、たとえば運転席から見てフロントガラス310の正面位置よりもやや下方に配置される比較的小さな領域である。搭乗者Pの視点と虚像位置Iを結ぶ線分は、投射エリア311の範囲内に含まれ、虚像位置Iで拡大された画像が視認される。
【0017】
投射エリア311は、後述する画像が重畳表示される表示エリアと同じではない。投射エリア311は、生成された中間像が投射される領域であるのに対し、表示エリアは投射エリア311よりも外側で搭乗者Pの視野内にあり、重畳表示される光像が結像する虚像位置Iを含む一定のエリアをいう。表示エリアは、たとえば搭乗者Pの視点から前方に十数メートルほど離れた位置に設定される。
【0018】
自動車300には、自動車300の周囲環境の情報を取得するカメラ5が搭載されていてもよいが、カメラ5は必須ではない。カメラ5は、たとえば自動車300の前方、側方等の外部環境の画像を撮影する。カメラ5は、外部情報取得用のセンサの一例であり、カメラ5に替えて、またはカメラ5と組み合わせて超音波レーダ、レーザレーダ等を用いてもよい。
【0019】
図4は、実施形態の表示装置1のハードウェア構成例である。表示装置1の光学装置10は、光源としてのレーザダイオード(LD)101と、光走査デバイスとしてのMEMS(Micro Electro Mechanical System)102を有する。LD101は、たとえば、赤(R)、緑(G)、青(B)の光を出力するレーザ素子を含む。MEMS102は、LD101から出力されるレーザ光を、図示しないスクリーンに二次元走査して中間像を描画する。光走査デバイスとしては、MEMSの他にポリゴンミラー、カルバノミラー等を用いてもよい。
【0020】
スクリーンに形成された中間像は、ミラー等を介して投射エリア311に入射し、搭乗者の方向に反射される。スクリーンは、マイクロレンズアレイ、マイクロミラーアレイ等で構成することができる。
【0021】
画像制御装置20は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)201、CPU(Central Processing Unit)202、ROM(Read Only Memory)203、RAM(Random Access Memory)204、インターフェース(以下、「I/F」という)205、バスライン206、LDドライバ207、MEMSコントローラ208、及び補助記憶装置としてのSSD(Solid State Drive)209を備えている。また、着脱可能に配置される記録媒体211を有していてもよい。
【0022】
FPGA201は、LDドライバ207とMEMSコントローラ208の動作を制御する。LDドライバ207は、FPGA201の制御の下で、LD101を駆動するドライブ信号を生成し、出力する。ドライブ信号によって、R,G,Bの光を出色する各レーザ素子の発光タイミングが制御される。MEMSコントローラ208は、FPGA201の制御の下でMEMS制御信号を生成して出力し、MEMS102の走査角度と走査タイミングを制御する。FPGA201に替えて、PLG(Programmable Logic Device)等のその他のロジックデバイスを用いてもよい。
【0023】
CPU202は、表示装置1の画像データ処理の全般を制御する。ROM203は、CPU202が表示装置1の各機能を制御するために実行するプログラムを含む各種のプログラムを記憶している。ROM203は、経路画像の重畳表示に用いられる各種の画像オブジェクトを保存していてもよい。RAM204は、CPU202のワークエリアをして使用される。
【0024】
I/F205は、外部コントローラ等と通信するためのインターフェースであり、例えば、自動車300のCAN(Controller Area Network)を介して、カメラ5、車両ナビゲーション装置、各種センサ装置等に接続される。
【0025】
表示装置1は、I/F205を介して記録媒体211の読み取りや書き込みを行うことができる。表示装置1での処理を実現する画像処理プログラムは、記録媒体211によって提供されてもよい。この場合、画像処理プログラムは、記録媒体211からI/F205を介してSSD209にインストールされる。画像処理プログラムのインストールは必ずしも記録媒体211よって行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータからダウンロードするようにしてもよい。SSD209は、インストールされた画像処理プログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0026】
記録媒体211の一例としては、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVDディスク、SDメモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置としてはSSD209に替えて、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等を用いてもよい。SDD209等の補助記憶装置と、記録媒体211は、いずれもコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0027】
図5は、実施形態の表示装置1と、自動車300に搭載されるその他の電子機器との接続関係を示す模式図である。表示装置1は、光学部230と画像制御部250を有する。光学部230は、大まかには光学装置10に対応するが、FPGA201、LDドライバ207、及びMEMSコントローラ208を光学部230に含めてもよい。画像制御部250は、画像制御装置20の少なくとも一部によって実現される。
【0028】
表示装置1は、I/F205及びCANを介して、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)600、車両ナビゲーション装置400、センサ群500等の電子機器に接続されている。自動車300にカメラ5が設置される場合は、カメラ5もI/F205を介して表示装置1に接続されていてもよい。
【0029】
表示装置1は、車両ナビゲーション装置400、センサ群500、カメラ5等から外部情報を取得して、自車両が走行する経路の前方に進路の変化をもたらす要因が存在するか否かを判断する。より、具体的には、画像が重畳表示される表示エリアの上端よりも上方(遠方)に進路が変化する箇所があるか否かを判断する。表示エリアの上端よりも上方、すなわち表示エリアのさらに前方に交差点、分岐路など、進路が変化する箇所が検知される場合に、進路変化を表わす予定経路の画像データを生成して(または読み出して)、出力する。予定経路の画像の生成と出力の具体例は、
図7以降を参照して説明する。
【0030】
センサ群500は、ハンドルの角度センサ、タイヤの角度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーザレーダ装置、明るさセンサ等を含み、自動車300の挙動、状態、周囲の状態、前方の走行車両との間の距離等を検知する。センサ群500で得られた情報は画像制御部250に供給され、センサ情報の少なくとも一部が、進路変化を含む予定経路の生成に用いられる。
【0031】
車両ナビゲーション装置400は、道路地図、GPS情報、交通規制情報、各道路の工事情報等を含むナビゲーション情報を有している。画像制御部250は、予定経路の判断に、車両ナビゲーション装置400が有するナビゲーション情報の少なくとも一部を用いてもよい。予定経路の生成は、画像制御部250で行われてもよいし、車両ナビゲーション装置400で行われてもよい。
【0032】
図6は、画像制御部250の機能ブロック図である。画像制御部250は、情報入力部800と、経路情報タイミング算出部810と、画像データ生成部820と、画像描画部840を有する。情報入力部800は、I/F205で実現され、車両ナビゲーション装置400、センサ群500、ECU600、カメラ5等からの情報を入力する。
【0033】
情報入力部800は、外部情報入力部8001と内部情報入力部8002を有する。内部情報は、自動車300自体の状態を表わす情報である。内部情報入力部8002は、センサ群500、及びECU600からCAN等を介して自動車300の現在の速度、ハンドル角度、タイヤの角度等の情報を取得する。
【0034】
外部情報は、内部情報以外の自動車300の外部の状況等を示す情報である。外部情報入力部8001は、車両ナビゲーション装置400からナビゲーション情報、地図情報などを取得する。また、カメラ5から撮像情報を取得してもよい。
【0035】
車両ナビゲーション装置400で予定経路が生成される場合は、情報入力部800は車両ナビゲーション装置400から生成された予定経路情報を受け取ってもよい。
【0036】
経路情報タイミング算出部810は、情報入力部800で取得された外部情報と内部情報に基づいて、進行の変化を含む予定経路の画像データの生成・出力タイミングを算出する。一般的な予定経路の重畳表示では、カーブ、右左折など、進路の変化を示す経路のAR画像は、実道路のカーブ、交差点等が表示エリア内に入っている状態で道路に重畳表示される。カーブ、交差点等の進路の変化位置が表示エリアの上端よりも上方、すなわち、搭乗者の視点から見て表示エリアを超えて前方に位置する区間では、カーブ等の情報を含まない通常の走行経路が重畳表示される。
【0037】
これに対し、実施形態では、進路の変化位置が表示エリアの上端よりも上方、すなわち搭乗者の視点から見て表示エリアの向こう側にある区間で、進路変化を示す予定経路の画像を重畳表示する。これによって、搭乗者は右左折等の予定を事前に把握することができる。
【0038】
経路情報タイミング算出部は、車両ナビゲーション装置400から得られる地図情報、センサ群500又はECU600から得られる車速情報等に基づいて、どのくらい手前から進路変化を表わす予定経路の画像データを出力するかを計算する。
【0039】
画像データ生成部820の経路情報生成部8210は、経路情報タイミング算出部810によって算出されたタイミングで、進路変化を表わす予定経路の画像データのオブジェクトをROM204から読出して、現在の車両位置に応じた経路画像に加工する。すなわち、実際の右左折等の位置が表示エリアの上側にある状態で、表示エリアよりもさらに前方に進路の変化があることを表わす経路案内情報が走行路面に遠近的に重畳表示され得る画像データを生成する。
【0040】
画像描画部840は制御部8410を有し、画像データ生成部820によって生成された画像データに基づいて、光学装置10による画像の投射動作を制御する。画像描画部840は、FPGA201、LDドライバ207、及びMEMSコントローラ208によって実現され得る。以下で、予定経路と補助画像の具体例を説明する。
【0041】
<進路変化を示す経路案内情報の例>
図7は、進路変化を表わす経路案内情報の一例を示す図である。一定の表示エリア30内で、走行路33の路面に経路案内パターン35Aを構成する経路案内マークM1~M3が重畳的に表示されている。自車両が曲がるべき左折路は、表示エリア30の上端よりも上方に位置する。表示装置1は、左折路が表示エリア30に入るよりも手前から、事前に進路変化の存在を示す経路案内画像を出力し、走行路33に重畳表示する。
【0042】
進路変化を表わす経路案内画像を出力するタイミングは、道路の種類、制限速度、自車両の速度等によって、表示装置1の画像制御部250によって計算される。
【0043】
図7の例では、経路案内マークM1~M3は、進路変化が生じる予定の方向に向かって延びる3つの平行な矢印で、遠近的に重畳表示されている。左折路が存在する左斜め上に向かって、経路案内マークM1~M3の矢印の長さは徐々に短くなり、かつ配置間隔が徐々に狭くなるように重畳表示される。また、経路案内パターン35Aを構成する経路案内マークM1~M3の配列の延長線上の先に左折路が存在することを、直感的に把握できる配置となっている。
【0044】
なお、経路案内マークM1~M3の配列の延長線を示す一点鎖線は、発明を理解しやすくするために描かれているものであり、重畳表示されるオブジェクトには含まれない。
【0045】
表示エリア30内で左折を示す矢印の数、長さ、表示間隔は、自車両の走行速度に応じて適切に選択される。比較的高速で走っているときは、矢印の数を少なくして間隔を広げてもよい。比較的低速で走っているときは、矢印の数を増やして間隔を狭くしてもよい。実際の左折路が搭乗者から見て表示エリア30よりも上方にある状態で、連続的に変化する矢印のパターンで進路変化を表わす経路案内情報を重畳表示することで、搭乗者は、視線を前方に向けたまま進路変化の予定を事前に把握することができる。
【0046】
図8は、進路変化を表わす経路案内情報の別の例を示す。
図7では、経路案内パターン35Aを、長さの異なる平行な矢印で経路案内マークM1~M3を形成した。
図8のように、進路変化が予定されている方向に向かって、矢印の角度を変化させてもよい。この場合も、経路案内パターン35Bを構成する経路案内マークM11~M15の配列の延長線上に進路の変化位置が存在するように遠近的に重畳表示される。
【0047】
経路案内マークM11は、走行路33上で最も手前に重畳され、長さが最も長く、表示エリア30の水平軸に対する角度が大きい。表示エリア30の上側に向かうにつれて矢印の長さが短くなり、かつ水平軸に対する角度が小さくなる。表示エリア30の上端に最も近い経路案内マークM15は、矢印の長さが最も短くかつほぼ水平になっている。
【0048】
なお、経路案内マークM11~M15の配列の延長線を示す一点鎖線は発明を理解しやすくするために描かれているものであり、重畳表示されるオブジェクトには含まれない。
【0049】
左折路が表示エリア30の上端よりも上側にある場合に、連続的に変化する経路案内マークM11~M15を出力し、走行路33に重畳表示することで、搭乗者は進路の変化を事前に把握して余裕をもって運転することができる。
【0050】
図9は、進路変化を表わす経路案内の別の例を示す図である。
図9の(A)の経路案内パターン35Cは、帯状のパターン31と、帯状のパターン31の中に配置される複数の矢印32
1~32
kで形成される。帯状のパターン31は、表示エリア30の右下のコーナーから、左折路が存在する方向に向かって遠近的に延びている。矢印32
1~32
kは、表示エリア30の右下のコーナーから連続して配置され、徐々に形状が小さく、かつ徐々に配置間隔が狭くなるように配置されている。
【0051】
図9の(A)のように、左折路が搭乗者から見て表示エリア30の上方にある場合に、経路案内パターン35Cを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は視線を前方に向けたまま、進路変化を事前に知ることができ、余裕をもって運転することができる。
【0052】
図9の(B)のように、左折路が表示エリア30の中に入ると、自車両の進行につれて重畳表示されるパターンを経路案内パターン35Dのように変更してもよい。帯状のパターン31は、表示エリア30内で左折路に沿って左側に湾曲する。複数の矢印32
i~32
rは、帯状のパターン31の中で、左折路に向かって徐々に間隔が狭く、小さくなるように重畳表示される。
【0053】
図9の(A)及び(B)の経路案内パターン35B、35Dを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は前方に存在する進路変化を事前に予測し、進路変化位置では、自車両の進行の軌跡を視覚的に把握しながら運転することができる。
【0054】
図10は、進路変化を表わす経路案内のさらに別の例を示す図である。
図10の(A)のように、左折路が表示エリア30の上方にある場合に、左折路の存在を示す経路案内パターン35Eが表示エリア30に重畳表示される。経路案内パターン35Eは、一連の矢印36
1~36
kで形成される。経路案内パターン35Eは、表示エリア30の右下のコーナーから、左折路が存在する方向に向かって遠近的に延びている。搭乗者の視点から見たときに表示エリア30の下端に最も近い矢印32
1が最も大きく表示され、表示エリア30の上端に向かうにつれて、矢印32の大きさが小さくなり、かつ間隔が狭くなる。一連の矢印36
1~36
kの延長線上に、現実の左折路が位置するように経路案内パターン36Cは形成されている。
【0055】
経路案内パターン35Eを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は視線を前方に向けたまま、進路変化を事前に知ることができ、余裕をもって運転することができる。
【0056】
図10の(B)のように、左折路が表示エリア30の中に入ると、自車両の進行につれて重畳表示されるパターンを経路案内パターン35Fのように変更してもよい。矢印32
i~32
rの配列は、表示エリア30内で左折路に沿って左側に湾曲する。
【0057】
図10の(A)及び(B)の経路案内パターン35E、35Fを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は前方に存在する進路変化を事前に予測し、進路変化位置では、自車両の進行の軌跡を視覚的に把握しながら運転することができる。
【0058】
図11は、進路変化を表わす経路案内の別の例を示す図である。
図11の(A)に示す経路案内パターン35Gは、帯状のパターン31と、帯状のパターン31の中に配置される矢印42で形成される。帯状のパターン31は、表示エリア30の右下のコーナーから左折路が存在する方向に向かって遠近的に延びている。矢印42は、進路を変えるべき方向を示している。矢印42の表示位置は、搭乗者にとって見づらくなければ帯状のパターン31または帯状のパターン31を形成する線分と重なって表示されてもよい。
【0059】
図11の(A)のように、左折路が搭乗者から見て表示エリア30の上方にある場合に経路案内パターン35Gを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は視線を前方に向けたまま、進路変化を事前に知ることができ、余裕をもって運転することができる。
【0060】
図11の(B)のように、左折路が表示エリア30の中に入ると、自車両の進行につれて重畳表示されるパターンを、
図11の(B)の経路案内パターン35Hに変更してもよい。帯状のパターン31は、表示エリア30内で左折路に沿って湾曲し、矢印42は左折路を示して重畳表示される。
【0061】
図11の(A)及び(B)の経路案内パターン35G及び35Hを走行路33に重畳表示することで、搭乗者は前方に存在する進路変化を事前に予測し、進路変化位置では、自車両の進行の軌跡を視覚的に把握しながら運転することができる。
【0062】
図7~
図11で、経路案内マークまたはパターンを形成する1つ以上の矢印の色、濃さ、透明度等を変えてよい。進路変化位置に近い矢印ほど、すなわち搭乗者の視点から遠い矢印ほど、色を濃く表示する、あるいは赤色などの目立つ色で表示してもよい。表示エリア30の下端に近い矢印は、サイズも大きく手前に表示されるため、色が薄く、透明度を高くすることで、搭乗者の視界の妨げにならないようにする。
図11のように、単一の矢印42を用いる場合も、進路変化位置に入る前と入った後で、矢印42の色、大きさなどを変えてもよい。
【0063】
上述した例では、ほぼ90度に曲がる左折路を例にとって説明したが、本発明は上記の適用例に限定されず、右折路や、Y字路等の進路変化が生じる位置に先立って、進路変化を示す経路案内マークを重畳表示してもよい。
【0064】
図11は、表示装置1で行われる表示制御のフローチャートである。この制御フローは表示装置1の画像制御部250によって実施される。
【0065】
画像制御部250は、自車両の内部情報と外部情報を取得する(S11)。内部情報はセンサ群500、ECU600から取得される速度情報、ハンドル角度情報、タイヤ角情報、自車両で推定した位置情報などである。外部情報は、車両ナビゲーション装置400、カメラ5、センサ群500(レーザレーダ等)、GPS等から取得される地図情報、撮像情報、周囲の環境情報、測距情報等である。車両ナビゲーション装置400で走行の予定経路が生成される場合は、車両ナビゲーション装置400から予定経路情報を取得してもよい。
【0066】
画像制御部250は、取得した情報に基づいて、進路変化がある位置の手前の所定の位置、たとえば、進路変化の位置よりも100~200メートル手前の位置に車両が到達したか否かを判断する(S12)。進路変化位置の手前に到達していない場合は(S12でNO)、進路情報の表示を行わなくとも良いし、前方を示す進路情報の表示を行ってもよい。進路変化位置の手前の所定の位置に到達したときは(S12でYES)、進路変化を含む経路案内情報を出力するタイミングを計算する(S13)。経路案内情報の出力タイミングは、進路変化が生じる位置、現在の車両の位置と速度等から計算される。より具体的には、進路変化の位置が搭乗者の視点から見て表示エリア30の上方にある状態で、その進路変化を示す経路案内が走行路に重畳表示されるように、タイミングが計算される。そして、経路案内情報を生成し(S14)、出力する(S15)。
【0067】
出力タイミングの計算(S13)と、経路案内情報の生成(S14)は、同時に行われてもよいし、順番が逆であってもよい。
【0068】
生成された経路案内情報の出力の後に、進路変化位置が表示エリア内に入ったか否かを判断してもよい(S16)。進路変化位置が表示エリア内に入らないうちは、S13~S15を繰り返して、表示エリアに経路案内情報を重畳表示する。
【0069】
進路変化位置が表示エリア内に入ったときは(S16でYES)、
図9の(B)、
図10の(B)、あるいは
図11の(B)のように、経路案内情報のパターンを進路の変更に合せて調整してもよい(S17)。
【0070】
ステップS11~S17は、表示制御が終了するまで繰り返し行われる(S22でNO)。車両の走行が終了したとき(エンジンが切られたとき)、あるいは表示制御OFFの指示が入力されたときに、表示制御が終了し(S18でYES)、処置を終了する。
【0071】
この表示制御をプログラムで実行する場合は、表示制御用のプログラムをROM203またはSSD209に格納しておき、CPU202でプログラムを読み出して実行してもよい。この場合、CPU202は少なくとも、
(a)移動体の搭乗者から見て、少なくとも移動体が移動する方向の路面を含む所定に位置に重畳されて見えるように表示される画像のデータを生成する手順と、
(b)予め生成された予定経路に進路の変化が含まれている場合であって、前記移動体の搭乗者から見て前記所定の位置よりも遠方に前記進路の変化位置がある場合に、前記所定の位置にパターンを重畳表示する手順、
とを実行させ、前記パターンは、前記搭乗者から見たときに、前記パターンを構成する少なくとも一部の情報の延長線上に実際の前記進路の変化位置があるように表示される。
【0072】
上述した構成と手法により、表示エリア30の面積が限られ、進路の変化を路面に重畳表示できない場合も、進路変化位置の手前から連続して進路変化の存在を示す経路案内を出力することで、搭乗者は進路の変化を事前に想定することができる。
【0073】
本発明の構成と手法は、たとえば、交差点や分岐点が連続し、ナビゲーションシステムによる「次の角を左に曲がってください」という音声案内で、「次の角」がどの角を指すのか判断が困難な場合に、特に有用である。進路変化の手前から進路変化を表わす経路案内が出力され、連続的に並べられるマークまたはパターンの配列の延長線上に、曲がるべき実際のコーナーが位置するように、経路案内情報が走行路に重畳表示される。搭乗者は、視点を前方においたまま、正しい位置で曲がることができ、余裕をもって運転できる。
【0074】
本発明は上述した実施形態に限定されない。たとえば、進路変化を表わす経路案内パターンは矢印以外に、連続する複数の三角形の配列など、進路の変化を視覚的に示す任意のパターンを用いることができる。また、配列されるマークの色、濃淡、透明度などを段階的に変化させて、進路変化の視認性を高めてもよい。
【0075】
光学装置10として、レーザ走査方式に替えてパネル方式を採用してもよい。パネル方式として、液晶パネルDMD(Digital Mirror Device:デジタルミラーデバイス)パネル、ドット蛍光表示管(VFD:Vacuum Fluorescent Display)等のイメージングデバイスを用いてもよい。
【0076】
フロントガラス310の投射エリア311に、ハーフミラー、ホログラム等で形成されるコンバイナが設けられていてもよい。フロントガラス310の表面または層間に光透過・反射型の反射膜が蒸着されていてもよい。
【0077】
表示装置1の各機能の少なくとも一部を、1以上のコンピュータで構成されるクラウドコンピューティングによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 表示装置
5 カメラ
10 光学装置
20 画像制御装置
30 表示エリア
321~32k、32i~32r、361~36k、36i~36r
35A~35H 経路案内パターン
230 光学部
250 画像制御部
300 自動車(移動体)
310 フロントガラス
311 投射エリア
400 車両ナビゲーション装置
500 センサ群
600 ECU
800 情報入力部
810 経路情報タイミング算出部
820 画像データ生成部
8210 経路情報生成部
840 画像描画部
8410 制御部
M1~M3、M11~M15 経路案内マーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【文献】特開2016-145783号
【文献】特開2017-211370号