IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

特許7383983ラテックス組成物、成形体およびフォームラバー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ラテックス組成物、成形体およびフォームラバー
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/02 20060101AFI20231114BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20231114BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20231114BHJP
   C08J 3/07 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08L21/02
C08L23/22
C08K3/06
C08J3/07 CES
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019197021
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070734
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 友哉
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-138282(JP,A)
【文献】特公昭34-004833(JP,B1)
【文献】特開2006-219609(JP,A)
【文献】特開2002-121406(JP,A)
【文献】特開2006-206677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子と、水と、架橋剤とを含むラテックス組成物であって、前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、0.5~10重量部の架橋剤が、前記重合体粒子内に含有されているラテックス組成物であって、
前記重合体粒子の体積累積粒径d50が400~2500nmであるラテックス組成物
【請求項2】
前記架橋剤が、硫黄系架橋剤である請求項1に記載のラテックス組成物。
【請求項3】
前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、2~15重量部の架橋促進剤が、前記重合体粒子内にさらに含有されている請求項1または2に記載のラテックス組成物。
【請求項4】
前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、1~10重量部の架橋助剤が、前記重合体粒子内にさらに含有されている請求項1~3のいずれかに記載のラテックス組成物。
【請求項5】
固形分濃度が、50重量%以上である請求項1~のいずれかに記載のラテックス組成物。
【請求項6】
前記重合体粒子が、重合体成分として、ブチルゴムを含む請求項1~のいずれかに記載のラテックス組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のラテックス組成物を用いて得られる成形体。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバー。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のラテックス組成物を製造する方法であって、
乳化剤の存在下、重合体が溶媒に溶解してなる重合体溶液と、架橋剤と、水とを混合することで、乳化液を得る工程と、
前記乳化液から前記溶媒を除去する工程と、を備えるラテックス組成物の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒が、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、および、超臨界状態にある二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項に記載のラテックス組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られる成形体、およびフォームラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体粒子と水とを含む重合体ラテックスは、制振材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材などに用いられる他、各種成形体を得るためなど、幅広い分野で用いられている。
【0003】
このような重合体ラテックスとして、たとえば、ブチルゴムのラテックスが知られている。たとえば、特許文献1では、ブチルゴムが、ロジン石鹸と、炭素数6~30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤とにより乳化されていることを特徴とするブチルゴムのラテックスが開示されている。
【0004】
この特許文献1の技術では、ブチルゴムを有機溶剤に溶解して得られたゴム溶液と、ロジン石鹸、および、炭素数6~30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤を混合し撹拌することにより乳化させ、次いで、水にて希釈した後に、有機溶剤を留去することにより、ブチルゴムのラテックスを得ている。
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されたブチルゴムのラテックスに、架橋剤を添加し、成形体を得た際に、成形性に劣るという課題や、得られる成形体の耐油性が不十分であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-219609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、成形性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られる成形体、およびフォームラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、重合体粒子と、水と、架橋剤とを含むラテックス組成物において、このようなラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、特定量の架橋剤を含有させたものとすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、重合体粒子と、水と、架橋剤とを含むラテックス組成物であって、前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、0.5~10重量部の架橋剤が、前記重合体粒子内に含有されているラテックス組成物が提供される。
【0010】
本発明のラテックス組成物において、前記架橋剤が、硫黄系架橋剤であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、2~15重量部の架橋促進剤が、前記重合体粒子内にさらに含有されていることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、1~10重量部の架橋助剤が、前記重合体粒子内にさらに含有されていることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記重合体粒子の体積累積粒径d50が400~2500nmであることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、固形分濃度が、50重量%以上であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記重合体粒子が、重合体成分として、ブチルゴムを含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物を用いて得られる成形体が提供される。
あるいは、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーが提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物の製造方法であって、乳化剤の存在下、重合体が溶媒に溶解してなる重合体溶液と、架橋剤と、水とを混合することで、乳化液を得る工程と、前記乳化液から前記溶媒を除去する工程と、を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
本発明のラテックス組成物の製造方法において、前記溶媒が、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、および、超臨界状態にある二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形性に優れ、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られる成形体、およびフォームラバーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ラテックス組成物>
本発明のラテックス組成物は、重合体粒子と、水と、架橋剤とを含むラテックス組成物であって、前記重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、0.5~10重量部の架橋剤が、前記重合体粒子内に含有されているものである。
【0015】
重合体粒子を構成する重合体成分としては、特に限定されず、種々の重合体を制限なく用いることができるが、たとえば、天然ゴム;合成ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、合成ポリクロロプレン等の共役ジエン単量体の単独重合体もしくは共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレン共重合体、ブチルアクリレート-ブタジエン共重合体等の共役ジエン単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体;アクリレート系(共)重合体;ブチルゴム;等が挙げられる。これらのなかでも、成形性の向上効果および耐油性の向上効果が高いという点より、ブチルゴムが好ましい。なお、重合体粒子を構成する重合体成分としては、1種単独でも、複数種を併用してもよく、たとえば、ブチルゴムを用いる場合には、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体を組み合わせて用いることが好適である。
【0016】
本発明で用いられるブチルゴムは、イソブチレン(イソブテン)由来の繰り返し単位を有する重合体からなるゴムであり、より具体的には、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体からなるゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)である。また、ブチルゴムとしては、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体の一部をハロゲン化してなるハロゲン化ブチルゴムであってもよい。
【0017】
ブチルゴム中における、イソブチレン単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは95モル%以上、100モル%未満であり、より好ましくは97~99.9モル%である。また、ブチルゴム中における、イソプレン単位の含有割合(不飽和度)は、特に限定されないが、好ましくは0モル%超、5モル%以下、より好ましくは0.1~3モル%である。イソブチレン単位およびイソプレン単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる成形体の耐油性をより適切に高めることができる。
【0018】
ブチルゴムとしては、ムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは20~65、さらに好ましくは25~60である。ブチルゴムとして、ムーニー粘度が上記範囲にあるものを使用することにより、ラテックス組成物の成形性をより適切に高めることができる。
【0019】
ブチルゴムの製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、触媒として塩化アルミニウムを使用し、塩化メチレン中で、-100~-90℃にて、イソブチレンおよびイソプレンをスラリー重合する方法などが挙げられる。また、ブチルゴムが、ハロゲン化ブチルゴムである場合には、ハロゲン化剤として臭素(Br)または塩素(Cl)を使用して、ヘキサン中で、4~60℃にて、スラリー重合により得られたブチルゴムをハロゲン化する方法等により製造することができる。
【0020】
架橋剤としては、特に限定されず、非水溶性の架橋剤であればよく、たとえば、硫黄系架橋剤、過酸化物系架橋剤、樹脂架橋剤、ポリアミン系架橋剤、ポリオール系架橋剤などが挙げられるが、これらのなかでも、架橋性の観点より、硫黄系架橋剤が好適に用いられる。
【0021】
硫黄系架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。硫黄系架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
過酸化物系架橋剤としては、たとえば、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ビス-(t-ブチル-ペルオキシ)-n-ブチルバレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシベンゾエートなどの有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物;などが挙げられる。
【0023】
樹脂架橋剤としては、たとえば、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、トリアジン-ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノール・スルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂などが挙げられる。
【0024】
ポリアミン系架橋剤としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(-CONHNH で表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(o-クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0025】
ポリオール架橋剤としては、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン[ビスフェノールAF]、1,3-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン等のポリヒドロキシ芳香族化合物や、これらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、ビスフェノールA、ビスフェノールAF等のビスフェノール類や、これらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0026】
本発明のラテックス組成物は、重合体粒子と、水と、架橋剤とを含むものであるが、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、特定量の架橋剤が含有されてなる(取り込まれてなる)ものである。具体的には、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、0.5~10重量部の架橋剤が、重合体粒子内に含有されてなる(取り込まれてなる)ものである。
【0027】
本発明によれば、このような特定量の架橋剤が、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、含有されてなる(取り込まれてなる)ような態様とすることにより、ラテックス組成物を成形性に優れ、しかも、得られる成形体を耐油性に優れるものとすることができるものである。特に、本発明者らが、ラテックス組成物中における架橋剤の存在状態と、架橋性との関係に着目し、鋭意検討を行った結果、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、特定量の架橋剤を含有させることにより、ラテックス組成物を良好な架橋性を示すものとすることができ、結果として、成形性の向上、および成形体とした際の耐油性の向上が可能となることを見出したものである。重合体粒子内に含まれる架橋剤の量は、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、好ましくは0.5~10重量部であり、より好ましくは1~5重量部、さらに好ましくは1~3.5重量部である。重合体粒子内に含まれる架橋剤の量が少なすぎると、成形性および耐油性の向上効果を得ることができず、一方、多すぎても、成形性が悪化してしまう。
【0028】
なお、本発明のラテックス組成物において、架橋剤が重合体粒子内に含まれているか否かは、たとえば、ラテックス組成物について、3000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置により遠心分離を行うことで調べることができる。すなわち、架橋剤が重合体粒子内に含まれておらず(取り込まれておらず)、遊離した状態であるか、あるいは、重合体粒子表面近傍に存在した状態である場合には、架橋剤は、比重が比較的高いため、遠心分離により分離された重液中に含まれることとなり、軽液中に含まれる重合体粒子から分離された状態となる。そのため、このような遠心分離操作を行うことで、重合体粒子内に含まれる架橋剤の存在やその量を測定することができる。なお、たとえば、ラテックス組成物を製造する際に、遠心分離による濃縮工程を経て製造する場合には、このような濃縮工程において生じる重液について、このような測定を行うような態様とすることができる。
【0029】
本発明のラテックス組成物においては、重合体粒子内に含まれる架橋剤の量が、上記した範囲であればよいが、ラテックス組成物全体に含まれる架橋剤の量(すなわち、重合体粒子内に含まれる架橋剤と、重合体粒子内に含まれない架橋剤との合計量)としては、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、好ましくは1~15重量部、より好ましくは1.5~10重量部、さらに好ましくは2~5重量部、さらにより好ましくは2~3.5重量部である。
【0030】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋促進剤をさらに含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系架橋促進剤;TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチラウム系化合物;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;などが挙げられる。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明のラテックス組成物においては、架橋促進剤は、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に含まれている(取り込まれている)ような態様であってもよいし、重合体粒子内に含まれておらず、遊離した状態であるか、あるいは、重合体粒子表面近傍に存在した状態であってよいが、少なくとも一部は、重合体粒子内に含まれているような態様であることが好ましい。より具体的には、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、1~15重量部の架橋促進剤が、重合体粒子内に含有されてなることが好ましく、より好ましくは1.5~10重量部、さらに好ましくは2~10重量部、特に、3~9重量部の架橋促進剤が、重合体粒子内に含有されてなることがさらにより好ましい。上述した特定量の架橋剤に加えて、このような特定量の架橋促進剤が、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、含有されてなるような態様とすることにより、成形性および耐油性の向上効果をより高めることができる。なお、重合体粒子内に含まれる架橋促進剤の存在やその量は、上述した架橋剤の場合と同様にして測定することができる。
【0032】
本発明のラテックス組成物において、ラテックス組成物全体に含まれる架橋促進剤の量(すなわち、重合体粒子内に含まれる架橋促進剤と、重合体粒子内に含まれない架橋促進剤との合計量)としては、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、好ましくは2~20重量部、より好ましくは2.5~15重量部、さらに好ましくは3~10重量部、さらにより好ましくは4~9重量部である。
【0033】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋助剤をさらに含有することが好ましい。
架橋助剤としては、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、酸化亜鉛、ステアリン酸およびその亜鉛塩等が挙げられる。
【0034】
本発明のラテックス組成物においては、架橋助剤は、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に含まれている(取り込まれている)ような態様であってもよいし、重合体粒子内に含まれておらず、遊離した状態であるか、あるいは、重合体粒子表面近傍に存在した状態であってよいが、少なくとも一部は、重合体粒子内に含まれているような態様であることが好ましい。より具体的には、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、1~10重量部の架橋助剤が、重合体粒子内に含有されてなることが好ましく、より好ましくは1~8重量部、特に、1.5~6重量部の架橋助剤が、重合体粒子内に含有されてなることがさらに好ましい。上述した特定量の架橋剤に加えて、このような特定量の架橋助剤が、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、含有されてなるような態様とすることにより、成形性および耐油性の向上効果をより高めることができる。なお、重合体粒子内に含まれる架橋助剤の存在やその量は、上述した架橋剤の場合と同様にして測定することができる。
【0035】
本発明のラテックス組成物において、ラテックス組成物全体に含まれる架橋助剤の量(すなわち、重合体粒子内に含まれる架橋助剤と、重合体粒子内に含まれない架橋助剤との合計量)としては、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、好ましくは1~10重量部、より好ましくは1~8重量部、さらに好ましくは2~6重量部である。
【0036】
また、本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤をさらに含有していてもよい。気泡安定剤を含有させることにより、本発明のラテックス組成物を、成形体の一例としてのフォームラバー用途に用いた場合に、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、これにより、柔軟性および強度の向上が可能となる。
【0037】
気泡安定剤としては、たとえば、塩化エチルなどの塩化アルキルを、ホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、アルキルの炭素数が4以下であるものが好ましく、その具体例としては、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。また、アルキル第四級アンモニウムクロリド、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキルアリールスルホン酸塩;および高級脂肪酸アンモニウム、好ましくはアルキルの炭素数が4以下の高級脂肪酸アンモニウム;ヘキサフルオロケイ酸塩;なども、気泡安定剤として使用できる。これらのなかでも、その添加効果が高いという観点より、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が好ましく、アルキルの炭素数が4以下の塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物がより好ましく、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が特に好ましい。エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、商品名「トリメンベース」(Crompton Corp社製)などの市販品を用いることができる。
【0038】
気泡安定剤の含有量は、重合体粒子を構成する重合体成分100重量部に対し、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体に含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度をより向上させることができる。
【0039】
また、本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、着色剤等、あるいは、上記の各種配合剤をラテックス組成物中に安定して分散させるための分散剤(たとえば、NASF(ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)等)、増粘剤(たとえば、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール等)を、必要に応じて配合することができる。
【0040】
本発明のラテックス組成物の製造方法としては、特に限定されないが、乳化剤の存在下、重合体が溶媒に溶解してなる重合体溶液と、架橋剤と、水とを混合することで、乳化液を得る工程と、得られた乳化液から溶媒を除去する工程とを経て製造する方法が好適である。特に、このような製造方法によれば、乳化前の重合体溶液中に架橋剤が含有された状態で、重合体の強制乳化を行うこととなるため、重合体の乳化を、架橋剤を含んだ状態で進行させることができ、これにより、生成する重合体粒子内に、好適に架橋剤を含有させる(取り込ませる)ことができる。
【0041】
重合体溶液としては、重合体がスラリー重合により得られたものである場合には、スラリー重合により得られた重合溶液をそのまま用いてもよいし、あるいは、スラリー重合により得られた重合溶液から固形の重合体を取り出した後、再度、溶媒に溶解させることにより得られたものを用いてもよい。この際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、超臨界状態にある二酸化炭素が好適に挙げられ、これらの中でも、本発明のラテックス組成物をより適切に得ることができるという観点より、シクロヘキサンが好ましい。
【0042】
乳化剤の存在下、重合体溶液と、架橋剤と、水と混合することにより乳化させ、乳化液を得る方法としては、特に限定されないが、重合体溶液中に予め架橋剤を含有させ、架橋剤を溶解させた重合体溶液と、乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法や、重合体溶液と、架橋剤とを、それぞれ乳化剤を含有する水溶液に添加し、これらを混合する方法や、重合体溶液中に予め架橋剤および乳化剤を含有させ、これを水と混合する方法などが挙げられる。これらを混合し、乳化する際には、乳化装置を用いることができ、乳化装置としては、乳化機または分散機として一般に市販されているものを制限なく用いることができる。
【0043】
また、この際において、ラテックス組成物を構成する重合体粒子内に、架橋剤に加えて、架橋促進剤や架橋助剤を含ませる(取り込ませる)ような態様とする場合には、重合体溶液と、架橋剤と、水とに加えて、架橋促進剤および/または架橋助剤をも用い、これらを乳化剤の存在下に混合することにより乳化させ、乳化液を得る方法を採用することが好ましい。すなわち、乳化剤の存在下、重合体溶液と、架橋剤と、架橋促進剤および/または架橋助剤と、水と混合することにより乳化させ、乳化液を得る方法を採用することが好ましい。この場合における具体的な混合および乳化方法としては、特に限定されないが、重合体溶液中に予め架橋剤と、架橋促進剤および/または架橋助剤とを含有させ、架橋剤と、架橋促進剤および/または架橋助剤とを溶解させた重合体溶液と、乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法や、重合体溶液と、架橋剤と、架橋促進剤および/または架橋助剤とを、それぞれ乳化剤を含有する水溶液に添加し、これらを混合する方法や、重合体溶液中に予め架橋剤と、架橋促進剤および/または架橋助剤と、乳化剤とを含有させ、これを水と混合する方法などが挙げられる。これらを混合し、乳化する際においても、乳化装置を用いることができ、乳化装置としては、乳化機または分散機として一般に市販されているものを制限なく用いることができる。
【0044】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0045】
乳化剤としては、特に限定されず、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤のいずれを用いてもよいが、得られる成形体の耐油性を高めることができるという観点より、アニオン性乳化剤が好ましい。
【0046】
アニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;等が挙げられる。これらの中でも、得られるラテックスの保存安定性をより高めることができるという点より、炭素数6~30の脂肪酸塩(すなわち、環構造を有さない鎖状炭化水素のカルボン酸塩)が好ましく、炭素数10~24の脂肪酸塩が好ましく、炭素数13~21の脂肪酸塩がより好ましく、オレイン酸カリウムが特に好ましい。なお、アニオン性乳化剤は、本発明のラテックス組成物中において、ブチルゴムを乳化分散させる作用に加えて、成形体を製造する際に、起泡剤としても作用するため、成形体の一例としてのフォームラバーを得る場合には、このような観点からもアニオン性乳化剤を用いることが好ましい。
【0047】
次いで、得られた乳化液について、溶媒を除去する操作を行うことにより、本発明のラテックス組成物を得ることができる。乳化液から溶媒を除去する方法としては、得られるラテックス組成物中における、溶媒の含有量を500重量ppm以下とすることができるような方法であれば、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0048】
減圧蒸留は、乳化液を、好ましくは500~900hPaの減圧下にて、加温することにより行うことができる。減圧蒸留における温度は、用いる溶媒の種類に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは50~90℃である。
【0049】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機などの遠心分離装置を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000Gの範囲内、より好ましくは2,000~8,000Gの範囲内として行うことができる。また、連続遠心分離機を用いる場合には、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。遠心分離操作により、遠心分離後の軽液として、ブチルゴム、アニオン性乳化剤、および水を含むラテックスを得ることができる。
【0050】
また、溶媒を除去することにより得られたラテックス組成物について、必要に応じて、濃縮処理を行い、固形分濃度を調整してもよい。濃縮処理は、たとえば、減圧により、水を一部蒸発させる方法や、遠心分離による方法などが挙げられる。
【0051】
さらに、溶媒を除去することにより得られたラテックス組成物について、必要に応じて、各種配合剤を添加してもよい。この際においては、ラテックス組成物全体に含まれる架橋剤の量(すなわち、重合体粒子内に含まれる架橋剤と、重合体粒子内に含まれない架橋剤との合計量)を調整するために、架橋剤を追加添加してもよい。また、同様に、乳化液を得る際に、架橋促進剤および/または架橋助剤を使用した場合においても、ラテックス組成物全体に含まれる架橋促進剤および/または架橋助剤の量(すなわち、重合体粒子内に含まれる架橋促進剤および/または架橋助剤と、重合体粒子内に含まれない架橋促進剤および/または架橋助剤との合計量)を調整するために、架橋促進剤および/または架橋助剤を追加添加してもよい。
【0052】
本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。ラテックス組成物の固形分濃度を上記範囲とすることにより、成形性をより高めることができる。なお、ラテックス組成物の固形分濃度は、たとえば、ラテックス組成物を調製する際における溶媒を除去する操作における条件を調整する方法や、濃縮処理により調整することができる。
【0053】
本発明のラテックス組成物中における、乳化剤の含有量は、重合体粒子を構成する重合体100重量部に対して、好ましくは2~10重量部である。乳化剤の含有量を上記範囲とすることにより、ラテックス組成物の成形性をより高めることができる。
【0054】
また、本発明のラテックス組成物中に含有される、重合体粒子の体積累積粒径d50(体積基準の粒子径分布において累積体積が50%となる粒子径)は、好ましくは400~2500nm、より好ましくは500~2000nm、さらに好ましくは500~1800nm、特に好ましくは600~1600nmである。重合体粒子の体積累積粒径d50を、上記範囲とすることにより、ラテックス組成物の保存安定性をより適切に高めることができる。なお、重合体粒子の体積累積粒径d50は、たとえば、使用する乳化剤の種類や使用量、乳化時における乳化条件等により制御することができる。重合体粒子の体積累積粒径d50は、たとえば、光散乱回折粒子測定装置を用いて測定することができる。
【0055】
<成形体>
本発明の成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られる。
本発明の成形体としては、特に限定されないが、ラテックス組成物を基材上に塗布する方法などにより膜状に成形することにより得られる膜状成形体や、ラテックス組成物をディップ成形することにより得られるディップ成形体、あるいは、ラテックス組成物を凝固させ、得られた凝固後のゴムを所望の形状に成形してなる各種成形体などが挙げられるが、本発明においては、フォームラバーが好適に挙げられる。以下、本発明の成形体が、フォームラバーである場合を例示して説明を行うが、本発明の成形体は、フォームラバーに特に限定されるものではない。
【0056】
本発明のフォームラバーは、上述したラテックス組成物を用いて得られる。具体的には、本発明のフォームラバーは、上述したラテックス組成物を、所望の発泡倍率で発泡および凝固させることにより得ることができる。
【0057】
発泡には通常空気が用いられるが、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を使用することもできる。空気を用いる場合には、ラテックス組成物を攪拌し、空気を巻き込むことで泡立てることができる。この際、たとえば、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。
【0058】
ラテックス組成物を発泡させた後、発泡状態を固定化するために、発泡させたラテックス組成物を、凝固させる。凝固方法は、ラテックスをゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡させたラテックス組成物に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡させたラテックス組成物に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、ラテックス組成物を構成するラテックス中のブチルゴム100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8である。
【0059】
そして、発泡させたラテックス組成物について、凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、ラテックス組成物を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0060】
得られたフォームラバーについては、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0061】
本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。特に、本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、化粧料として用いられる複数の成分に対する耐油性、特に、化粧料の成分として用いられる、パラフィン、および外線吸収剤(たとえば、パラメトキシケイ皮酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)等)に対する耐油性に優れることから、液体化粧料などを含浸させるパフ(化粧用スポンジ)として好適に用いることができる。
【0062】
また、本発明のラテックス組成物を用いて、膜状成形体を得る場合には、ラテックス組成物を基材上に所望の厚みにて塗布し、必要に応じて乾燥を行うことで、膜状成形体を得ることができる。また、乾燥を行った後、ラテックス組成物を架橋させるために、加熱してもよく(すなわち、膜状の架橋成形体としてもよく)、架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0063】
あるいは、本発明のラテックス組成物を用いて、ディップ成形体を得る場合には、凝固剤水溶液に浸漬させたディップ成形型を、ラテックス組成物中に浸漬させた後、引き上げることで、ディップ成形層を形成し、必要に応じて乾燥を行うことで、ディップ成形体を得ることができる。また、乾燥を行った後、ラテックス組成物を架橋させるために、加熱してもよく(すなわち、ディップ成形体を架橋成形体としてもよく)、架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【実施例
【0064】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性および特性については、以下の方法に従って評価した。
【0065】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0066】
<重合体粒子の体積累積粒径d50>
ラテックス組成物について、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2200、島津製作所製)を用いて粒子径分布の測定を行い、測定結果から、50%体積累積粒径d50を求めた。
【0067】
<フィルム成形性>
ラテックス組成物をガラス基材上に塗布し、25℃で120時間乾燥し、次いで、110℃、120分間加熱し、架橋させることで、厚み0.4mmのフィルム成形体(フィルム状の架橋成形体)を得た。そして、得られたフィルム成形体の表面(ガラス基材側の面、およびガラス基材と反対側の面の二面)について、目視にて観察を行い、下記の基準にて、フィルム成形性を評価した。
A:ガラス基材側の面、およびガラス基材と反対側の面のいずれも、平坦であり、凹凸が確認されなかった。
B:ガラス基材と反対側の面は、平坦であり、凹凸が確認されないものの、ガラス基材側の面については、若干の凹凸が確認された。
C:ガラス基材側の面、およびガラス基材と反対側の面のいずれも、明らかな凹凸が確認された。
【0068】
<流動パラフィンに対する引張強度の変化>
上記フィルム成形性の評価と同様にして、フィルム成形体(フィルム状の架橋成形体)を得た。そして、得られたフィルム成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK-100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、これを試験片とした。そして、得られた試験片を流動パラフィンに、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフィルム成形体の引張強度に対する、浸漬後のフィルム成形体の引張強度の変化率(引張強度の変化率(%)=[{(浸漬後のフィルム成形体の引張強度)-(浸漬前のフィルム成形体の引張強度)}/(浸漬前のフィルム成形体の引張強度)]×100)を算出した。引張強度の測定は、テンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、オリエンテック社製)を用い、引張速度500mm/minで引っ張った際における、破断直前の引張強度(単位:MPa)を求めることにより行った。引張強度の変化率の絶対値が低いほど、ラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーなどの成形体は、流動パラフィンに対する耐油性に優れると判断できる。
【0069】
<紫外線吸収剤に対する引張強度の変化>
上記フィルム成形性の評価と同様にして、フィルム成形体(フィルム状の架橋成形体)を得た。そして、得られたフィルム成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK-100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、これを試験片とした。そして、得られた試験片を、直径33mm、厚さ0.4mmの円柱状に打ち抜き、これを紫外線吸収剤(4-メトキシけい皮酸2-エチルヘキシル、東京化成工業社製)に、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフィルム成形体の引張強度に対する、浸漬後のフィルム成形体の引張強度の変化率(引張強度の変化率(%)=[{(浸漬後のフィルム成形体の引張強度)-(浸漬前のフィルム成形体の引張強度)}/(浸漬前のフィルム成形体の引張強度)]×100)を算出した。引張強度の測定は、上記した流動パラフィンに対する引張強度の変化の測定と同様にして行った。引張強度の変化率の絶対値が低いほど、ラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーなどの成形体は、紫外線吸収剤に対する耐油性に優れると判断できる。
【0070】
<実施例1>
(ラテックス組成物(A-1)の調製)
ブチルゴム(製品名「JSR BUTYL365」、JSR社製、ムーニー粘度(ML1+8、125℃):33、不飽和度2.3モル%)100部を、シクロヘキサン550部と混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温させることで、ブチルゴムを溶解させて、ブチルゴムの溶液を得た。
そして、得られたブチルゴムの溶液に、ブチルゴムの溶液中に含まれるブチルゴム100部に対して、架橋剤としての硫黄2部、架橋促進剤としての2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(製品名「ノクセラーMZ」、大内新興化学工業社製)2部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(製品名「ノクセラーEZ」、大内新興化学工業社製)4部、およびジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(製品名「ノクセラーBZ」、大内新興化学工業社製)2部、ならびに、架橋助剤としての酸化亜鉛3部を添加し、これらをブチルゴムの溶液に溶解させることにより、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を得た。
また、これとは別に、オレイン酸カリウム(アニオン性乳化剤)と水とを混合することで、2.25重量%のオレイン酸カリウム水溶液を得た。
【0071】
そして、上記にて得られた架橋剤成分含有ブチルゴム溶液(架橋剤、架橋促進剤および架橋助剤を溶解させた、ブチルゴムの溶液)と、上記にて調製したオレイン酸カリウム水溶液とを、重量比で1:1となるように、マルチラインミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、これに続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用い、15,000rpmにて混合および乳化させる強制乳化処理を行うことで、乳化液を得た。
【0072】
次いで、得られた乳化液を700~800hPaの減圧下で75℃に加温することで、シクロヘキサンを留去し、次いで、800hPaの減圧条件下で、80℃にて濃縮処理を行うことで、固形分濃度15重量%の遠心分離前ラテックス組成物を得た。次いで、遠心分離前ラテックス組成物について、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮を行うことで、遠心分離の軽液として、固形分濃度61重量%のラテックス組成物(A-1)を得た。なお、遠心分離後の重液中には、架橋剤、架橋促進剤および架橋助剤としての、硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、および、酸化亜鉛のいずれも実質的に含まれておらず、そのため、実施例1においては、強制乳化処理前の、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液中に含有させた架橋剤、架橋促進剤および架橋助剤が、そのまま、得られた軽液としてのラテックス組成物を構成するブチルゴムの粒子に含まれている(取り込まれている)と判断された。また、ラテックス組成物(A-1)中に含まれる、ブチルゴムの粒子の体積累積粒径d50は、1440nmであった。
【0073】
そして、得られたラテックス組成物(A-1)を用いて、上記した方法にしたがって、フィルム成形性、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
<実施例2>
(ラテックス組成物(A-2)の調製)
架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を調製する際に、架橋助剤としての酸化亜鉛を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を得た。
【0075】
次いで、上記にて得られた架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、強制乳化処理を行うことで乳化液を得て、実施例1と同様の条件にて、シクロヘキサンの留去および濃縮処理を行うことで、固形分濃度15重量%の遠心分離前ラテックス組成物を得た。次いで、遠心分離前ラテックス組成物について、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮を行うことで、遠心分離の軽液として、固形分濃度62重量%のラテックス組成物(a-2)を得た。なお、遠心分離後の重液中には、架橋剤、架橋促進剤としての、硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、および、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛のいずれも実質的に含まれておらず、そのため、実施例2においても、強制乳化処理前の、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液中に含有させた架橋剤および架橋促進剤が、そのまま、得られた軽液としてのラテックス組成物を構成するブチルゴムの粒子に含まれている(取り込まれている)と判断された。そして、得られたラテックス組成物(a-2)に、ラテックス組成物中に含まれるブチルゴム100部に対して、酸化亜鉛3部を添加することで、ラテックス組成物(A-2)を得た。得られたラテックス組成物(A-2)中に含まれる、ブチルゴムの粒子の体積累積粒径d50は、1350nmであった。
【0076】
そして、得られたラテックス組成物(A-2)を用いて、上記した方法にしたがって、フィルム成形性、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例3>
(ラテックス組成物(A-3)の調製)
架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を調製する際に、硫黄の使用量を1部に、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩の使用量を1部に、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛の使用量を2部に、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛の使用量を1部に、それぞれ変更し、かつ、架橋助剤としての酸化亜鉛を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を得た。
【0078】
次いで、上記にて得られた架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、強制乳化処理を行うことで乳化液を得て、実施例1と同様の条件にて、シクロヘキサンの留去および濃縮処理を行うことで、固形分濃度15重量%の遠心分離前ラテックス組成物を得た。次いで、遠心分離前ラテックス組成物について、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮を行うことで、遠心分離の軽液として、固形分濃度61重量%のラテックス組成物(a-3)を得た。なお、遠心分離後の重液中には、架橋剤、架橋促進剤としての、硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、および、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛のいずれも実質的に含まれておらず、そのため、実施例3においても、強制乳化処理前の、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液中に含有させた架橋剤、および架橋促進剤が、そのまま、得られた軽液としてのラテックス組成物を構成するブチルゴムの粒子に含まれている(取り込まれている)と判断された。そして、得られたラテックス組成物(a-3)に、ラテックス組成物中に含まれるブチルゴム100部に対して、硫黄1部、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩1部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛2部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛1部、および酸化亜鉛3部を添加することで、ラテックス組成物(A-3)を得た。得られたラテックス組成物(A-3)中に含まれる、ブチルゴムの粒子の体積累積粒径d50は、1250nmであった。
【0079】
そして、得られたラテックス組成物(A-3)を用いて、上記した方法にしたがって、フィルム成形性、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<実施例4>
(ラテックス組成物(A-4)の調製)
架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を調製する際に、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛2部に代えて、テトラメチルチウラムジスルフィド(製品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製)2部を使用するとともに、架橋助剤としての酸化亜鉛を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を得た。
【0081】
次いで、上記にて得られた架橋剤成分含有ブチルゴム溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、強制乳化処理を行うことで乳化液を得て、実施例1と同様の条件にて、シクロヘキサンの留去および濃縮処理を行うことで、固形分濃度15重量%の遠心分離前ラテックス組成物を得た。次いで、遠心分離前ラテックス組成物について、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮を行うことで、遠心分離の軽液として、固形分濃度61重量%のラテックス組成物(a-4)を得た。なお、遠心分離後の重液中には、架橋剤、架橋促進剤としての、硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、および、テトラメチルチウラムジスルフィドのいずれも実質的に含まれておらず、そのため、実施例4においても、強制乳化処理前の、架橋剤成分含有ブチルゴム溶液中に含有させた架橋剤、および架橋促進剤が、そのまま、得られた軽液としてのラテックス組成物を構成するブチルゴムの粒子に含まれている(取り込まれている)と判断された。そして、得られたラテックス組成物(a-4)に、ラテックス組成物中に含まれるブチルゴム100部に対して、酸化亜鉛3部を添加することで、ラテックス組成物(A-4)を得た。得られたラテックス組成物(A-4)中に含まれる、ブチルゴムの粒子の体積累積粒径d50は、1600nmであった。
【0082】
そして、得られたラテックス組成物(A-4)を用いて、上記した方法にしたがって、フィルム成形性、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<比較例1>
(ラテックス組成物(A-5)の調製)
ブチルゴムの溶液に対し、硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛および酸化亜鉛のいずれも添加せず、ブチルゴムの溶液をそのまま使用した以外は、実施例1と同様にして、強制乳化処理を行うことで乳化液を得て、実施例1と同様の条件にて、シクロヘキサンの留去および濃縮処理を行った。次いで、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮を行うことで、遠心分離の軽液として、固形分濃度62重量%のラテックス組成物(a-5)を得た。そして、得られたラテックス組成物(a-5)に、ラテックス組成物中に含まれるブチルゴム100部に対して、硫黄2部、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩2部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛4部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛2部、および酸化亜鉛3部を添加することでラテックス組成物(A-5)を得た。得られたラテックス組成物(A-5)中に含まれる、ブチルゴムの粒子の体積累積粒径d50は、1650nmであった。
なお、得られたラテックス組成物(A-5)について、水を添加して希釈し、5000rpm、30分間の条件で、遠心分離装置を用いた遠心分離による濃縮操作を行ったところ、遠心分離後の重液中には、強制乳化処理後に添加した硫黄2部、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩2部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛4部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛2部、および酸化亜鉛3部がそのまま含まれており、そのため、比較例1においては、これらの成分は、得られたラテックス組成物を構成するブチルゴムの粒子に含まれていない(取り込まれていない)と判断された。
【0084】
そして、得られたラテックス組成物(A-5)を用いて、上記した方法にしたがって、フィルム成形性、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示すように、強制乳化前のブチルゴムの溶液中に、特定量の架橋剤としての硫黄を含有させた場合には、いずれも、得られるラテックス組成物を構成するブチルゴム粒子内に、ブチルゴム100部に対して、0.5~10部の架橋剤としての硫黄が含まれており、フィルム成形性に優れ、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化も低く、耐油性に優れるものであった(実施例1~4)。
【0087】
一方、強制乳化前のブチルゴムの溶液中に、架橋剤としての硫黄を含有させなかった場合には、得られるラテックス組成物を構成するブチルゴム粒子内に、架橋剤としての硫黄が含まれないものとなり、フィルム成形性に劣り、また、流動パラフィンに対する引張強度の変化、および紫外線吸収剤に対する引張強度の変化も大きく、耐油性に劣るものであった(比較例1)。