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特許7384165スチレン系ブロック共重合体のラテックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】スチレン系ブロック共重合体のラテックス
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/14 20060101AFI20231114BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231114BHJP
   C08J 3/26 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B29C41/14
C08L53/02
C08J3/26 CET
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020539339
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 JP2019032022
(87)【国際公開番号】W WO2020045102
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018158076
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出村 順司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉隆
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061867(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159534(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/049725(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135144(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135146(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/099501(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00-53/02
C08K 3/00-13/08
C08F 293/00-297/08
C08F 8/00
B29C 41/14
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含む、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得る工程と、
得られた前記スチレン系ブロック共重合体のラテックスにpH調整剤を含む添加剤を配合して、ディップ成形用ラテックス組成物を得る工程と、
得られた前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形する工程とを備えるディップ成形体の製造方法
【請求項2】
前記スチレン系ブロック共重合体が、下記一般式(1)で表されるスチレン系ブロック共重合体である請求項1に記載のディップ成形体の製造方法
A-B-Y-(B-A) (1)
(上記一般式(1)中、Aは、それぞれ独立して、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、Yは単結合または官能性を有するカップリング剤の残基であり、Bは、それぞれ独立して、共役ジエンに由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、nは0~5である。)
【請求項3】
前記スチレン系ブロック共重合体が、スチレン-イソプレンブロック共重合体である請求項1または2に記載のディップ成形体の製造方法
【請求項4】
固形分濃度を55重量%とした時の、温度25℃における粘度が10~300cpsである、請求項1~3のいずれかに記載のディップ成形体の製造方法
【請求項5】
前記ディップ成形体が手袋である請求項1~4のいずれかに記載のディップ成形体の製造方法。
【請求項6】
前記スチレン系ブロック共重合体のラテックスの固形分濃度が50~75重量%である請求項1~5のいずれかに記載のディップ成形体の製造方法。
【請求項7】
原料となる架橋前のスチレン系ブロック共重合体のラテックスに、ラジカル重合開始剤を添加して、ラテックス状態で、前記原料となる架橋前のスチレン系ブロック共重合体を架橋させることで、トルエン不溶分を形成させて前記スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得る、請求項1~6のいずれかに記載のディップ成形体の製造方法
【請求項8】
架橋温度10~60℃、架橋時間10分~5時間の条件で前記架橋反応を進行させる請求項7に記載のディップ成形体の製造方法。
【請求項9】
前記ラジカル重合開始剤が、過酸化物重合開始剤である請求項7または8に記載のディップ成形体の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル重合開始剤に加えて、活性剤を添加して、前記架橋反応を進行させる請求項7~のいずれかに記載のディップ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れ、かつ、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有するディップ成形体などの膜成形体を与えることができる、スチレン系ブロック共重合体のラテックス、ならびに、このようなスチレン系ブロック共重合体のラテックスを用いた膜成形体、包装構造体および接着剤層形成基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物を膜状に成形して得られる膜成形体が知られている。たとえば、膜成形体としては、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して得られ、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギー症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜または臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ゴムのラテックスを用いる検討がされてきている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、カルボキシル基を含有してなる合成ポリイソプレンのラテックスおよび/またはカルボキシル基を含有してなるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のラテックスに、アルミニウム化合物水溶液を添加してなるラテックス組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載のラテックスを用いた場合には、ディップ成形などの膜成形を行った際における成形性が十分でなく、得られる成形体は、膜厚の均一性に劣るものなってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/130889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、成形性に優れ、しかも、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有するディップ成形体などの膜成形体を与えることができる、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、トルエン不溶解分量が特定の範囲に制御されたスチレン系ブロック共重合体のラテックスによれば、上記課題を解決できることを見出し、このような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含む、スチレン系ブロック共重合体のラテックスが提供される。
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスにおいて、前記スチレン系ブロック共重合体が、下記一般式(1)で表されるスチレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
A-B-Y-(B-A) (1)
(上記一般式(1)中、Aは、それぞれ独立して、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、Yは単結合または官能性を有するカップリング剤の残基であり、Bは、それぞれ独立して、共役ジエンに由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、nは0~5である。)
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスにおいて、前記スチレン系ブロック共重合体が、スチレン-イソプレンブロック共重合体であることが好ましい。
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスにおいて、固形分濃度を55重量%とした時の、温度25℃における粘度が10~300cpsであることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、上記のスチレン系ブロック共重合体のラテックスからなる膜成形体が提供される。
また、本発明によれば、第1のシート基材の少なくとも一部と第2のシート基材の少なくとも一部とが、上記のスチレン系ブロック共重合体のラテックスからなる塗膜により接着積層されてなり、前記第1のシート基材と前記第2のシート基材との間に被包装物を収容可能な包装構造体が提供される。
さらに、本発明によれば、上記のスチレン系ブロック共重合体のラテックスからなる接着剤層が、基材表面に形成されてなる接着剤層形成基材が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを製造する方法であって、
原料となる架橋前のスチレン系ブロック共重合体のラテックスに、ラジカル重合開始剤を添加して、ラテックス状態で、前記原料となる架橋前のスチレン系ブロック共重合体を架橋させることで、トルエン不溶分を形成させる、スチレン系ブロック共重合体のラテックスの製造方法が提供される。
本発明の製造方法において、前記ラジカル重合開始剤が、過酸化物重合開始剤であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記ラジカル重合開始剤に加えて、活性剤を添加して、前記架橋反応を進行させることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記の製造方法により、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得る工程と、
得られた前記スチレン系ブロック共重合体のラテックスをディップ成形する工程とを備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形性に優れ、かつ、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有するディップ成形体などの膜成形体を与えることができる、スチレン系ブロック共重合体のラテックス、ならびに、このようなスチレン系ブロック共重合体のラテックスを用いた膜成形体、包装構造体および接着剤層形成基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<スチレン系ブロック共重合体のラテックス>
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含む。
【0013】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含むものであり、たとえば、原料となる架橋前のスチレン系ブロック共重合体のラテックス(以下、適宜、「架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックス」とする。)を、架橋させることで製造することができる。
【0014】
本発明で用いられる、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスは、架橋前スチレン系ブロック共重合体と、水とを含有する。
【0015】
架橋前スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン単位を主成分とする重合体ブロック(たとえば、スチレン単位の含有量が50重量%以上である重合体ブロック)を少なくとも含有するブロック共重合体であればよく、たとえば、スチレン単位を主成分とする重合体ブロックと、スチレン単位以外の単量体単位を主成分として含有する重合体ブロックとの共重合体などが挙げられる。
【0016】
本発明においては、架橋前スチレン系ブロック共重合体としては、たとえば、下記一般式(1)で示されるA-B-Y-(B-A)で表されるブロック共重合体を例示することができる。
A-B-Y-(B-A) (1)
(上記一般式(1)中、Aは、それぞれ独立して、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、Yは単結合または官能性を有するカップリング剤の残基であり、Bは、それぞれ独立して、共役ジエンに由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、nは0~5である。)
【0017】
上記一般式(1)中、Aは、それぞれ独立して、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位の含有割合は、95重量%であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが特に好ましい。
【0018】
アルケニル芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらのアルケニル芳香族炭化水素は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
なお、上記一般式(1)中、Aで表される重合体ブロックは、アルケニル芳香族炭化水素に由来の単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよく、このような他の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン,1,3-ペンタジエンなどの共役ジエン単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体などが挙げられる。
【0020】
また、上記一般式(1)中、Bは、それぞれ独立して、共役ジエンに由来の単位を90重量%以上含有する重合体ブロックであり、共役ジエンに由来の単位の含有割合は、95重量%であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが特に好ましい。
【0021】
共役ジエンとしては、特に限定されないが、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、ファルネセンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンが好ましく、イソプレンが特に好ましい。これらの共役ジエンは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、共役ジエンに由来の単位の不飽和結合の一部に対し、水素添加反応が行われたものであってもよい。
【0022】
なお、上記一般式(1)中、Bで表される重合体ブロックは、共役ジエンに由来の単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよく、このような他の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどのアルケニル芳香族炭化水素、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。
【0023】
また、上記一般式(1)中、Yは、単結合、または官能性を有するカップリング剤の残基である。官能性を有するカップリング剤の残基としては、n+1価のカップリング剤の残基であればよく、特に限定されないが、後述する各種カップリング剤の残基などが挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)中、nは、0~5であり、n=1~3であることが好ましい。なお、架橋前スチレン系ブロック共重合体が、nの値が異なる複数の共重合体の混合物である場合には、複数の共重合体のnの値の平均値がこの範囲にあればよい。
【0025】
本発明においては、架橋前スチレン系ブロック共重合体としては、上記一般式(1)で表される共重合体を用いることができるが、本発明の作用効果をより高めることができるという観点より、スチレン重合体ブロックと、イソプレン重合体ブロックとを備えるブロック共重合体である、スチレン-イソプレンブロック共重合体を好適に用いることができる。スチレン-イソプレンブロック共重合体としては、スチレン重合体ブロックと、イソプレン重合体ブロックとを備えるブロック共重合体であればよく、たとえば、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、イソプレン-スチレン-イソプレントリブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン-イソプレインテトラブロック共重合体などが挙げられるが、引裂強度、応力保持率、および風合いにより優れたディップ成形体などの膜成形体を得ることができるという観点より、一般式Ar-D-Ar(Arは、スチレン重合体ブロックであり、Dは、イソプレン重合体ブロックである。)で表されるスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を主成分として含有するものが好適に用いられる。たとえば、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を主成分として含有し、これに加えて、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、および、Ar-D-Y-(D-Ar)(Arは、スチレン重合体ブロックであり、Dは、イソプレン重合体ブロックであり、Yはカップリング剤の残基、n=2~5)で表される分岐共重合体を含有するものが好適に用いられる。
【0026】
架橋前スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは50,000~500,000、さらに好ましくは100,000~300,000である。架橋前スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度および引張強度と柔軟性のバランスが向上するとともに、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
【0027】
また、架橋前スチレン系ブロック共重合体が、スチレン-イソプレンブロック共重合体である場合には、スチレン-イソプレンブロック共重合体を構成するスチレン重合体ブロックは、スチレン単位を主たる構成単位とする重合体ブロックであればよく、スチレン単位以外の単量体単位を含有するものであってもよく、このようなスチレン以外の単量体としては、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン類;4-クロロスチレン、2-ブロモスチレン、3,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン類;4-メトキシスチレン、3,5-ジメトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類;1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン,1,3-ペンタジエン等の共役ジエン単量体;などが挙げられる。スチレン重合体ブロック中におけるスチレン単位の含有量は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが特に好ましい。
【0028】
また、架橋前スチレン系ブロック共重合体が、スチレン-イソプレンブロック共重合体である場合には、スチレン-イソプレンブロック共重合体を構成するイソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位を主たる構成単位とする重合体ブロックであればよく、イソプレン以外の単量体単位を含有するものであってもよく、このようなイソプレン単位以外の単量体としては、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン類;4-クロロスチレン、2-ブロモスチレン、3,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン類;4-メトキシスチレン、3,5-ジメトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類;1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン,1,3-ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;α,ω-ビス(ビニルフェニル)アルカン、1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン等のジビニルモノマー;などが挙げられる。イソプレン重合体ブロック中におけるイソプレン単位の含有量は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが特に好ましい。
【0029】
スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(以下、適宜、「架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス」とする。)を含む架橋前スチレン系ブロック共重合体は、従来公知の方法、たとえばn-ブチルリチウムなどの活性有機金属を開始剤として、不活性重合溶媒中で、共役ジエンとアルケニル芳香族炭化水素をブロック共重合して得ることができる。そして、得られた架橋前スチレン系ブロック共重合体の重合体溶液は、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスの製造にそのまま用いてもよいが、該重合体溶液から固形の架橋前スチレン系ブロック共重合体を取り出した後、その固形の架橋前スチレン系ブロック共重合体を有機溶媒に溶解して、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスの製造に用いることもできる。架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスの製造方法としては、特に限定されないが、有機溶媒に溶解または微分散した架橋前スチレン系ブロック共重合体の溶液または微細懸濁液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去して、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスを製造する方法が好ましい。
この際、合成した後に重合体溶液中に残った重合触媒の残渣などの不純物を取り除いてもよい。また、重合中または重合後の溶液に、後述する老化防止剤を添加してもよい。また、市販の固形の架橋前スチレン系ブロック共重合体を用いることもできる。
【0030】
また、架橋前スチレン系ブロック共重合体は、従来公知の方法、たとえばn-ブチルリチウムなどの活性有機金属を開始剤として、不活性重合溶媒中で、共役ジエンとアルケニル芳香族炭化水素をブロック共重合することで、活性末端を有する、アルケニル芳香族炭化水素-共役ジエンのジブロック体を得た後、得られたジブロック体について、カップリング剤を用いて、カップリング反応を行うことで得てもよい。
【0031】
カップリング剤としては、特に限定されず、2官能以上の任意のカップリング剤を用いることができる。2官能のカップリング剤としては、たとえば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2-クロロプロペンなどが挙げられる。3官能のカップリング剤としては、たとえば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。4官能のカップリング剤としては、たとえば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。5官能以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2-ペンタクロロエタン、パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
なお、カップリング剤として、3官能以上のカップリング剤を使用することにより、得られる架橋前スチレン系ブロック共重合体を、上記一般式(1)において、nが2以上である多分岐構造を有する共重合体とすることができる。なお、このような多分岐構造を有する共重合体は、後述する架橋反応を行うものであるため、通常は、ゲル分(トルエン不溶解分量)をほとんど含有しないもの(たとえば、10重量%以下程度)となる。
【0033】
また、カップリング剤によるカップリング反応を行う際には、重合停止剤の存在下でカップリング反応を行ってもよく、これにより、得られる架橋前スチレン系ブロック共重合体を、カップリングしていないジブロック体を所定量含有するものとすることができる。重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
【0034】
重合反応やカップリング反応に用いる有機溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、芳香族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒が好ましく、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびトルエンが特に好ましい。
【0035】
有機溶媒の使用量は、架橋前スチレン系ブロック共重合体100重量部に対して、通常50~2,000、好ましくは80~1,000重量部、より好ましくは10~500重量部、さらに好ましくは150~300重量部である。
【0036】
重合体溶液を乳化させる際に用いる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤を好適に用いることができ、アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等が挙げられる。
【0037】
これらアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ロジン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0038】
なお、上述したように、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることにより、得られるラテックスは、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを含有するものとなる。
【0039】
また、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β-不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β-不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
【0040】
さらに、ディップ成形などの膜成形体を得る際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
【0041】
界面活性剤の使用量は、架橋前スチレン系ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは0.5~30重量部である。この量が少なすぎると、ラテックスの安定性が劣る傾向にあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、ディップ成形時に問題が起きる可能性がある。
【0042】
架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得る際に使用する水の量は、架橋前スチレン系ブロック共重合体の有機溶媒溶液100重量部に対して、好ましくは10~1,000重量部、より好ましくは30~500重量部、特に好ましくは50~100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
【0043】
架橋前スチレン系ブロック共重合体の有機溶媒溶液または微細懸濁液を、界面活性剤の存在下、水中で乳化する装置は、一般に乳化機または分散機として市販されているものであれば特に限定されず使用できる。架橋前スチレン系ブロック共重合体の有機溶媒溶液または微細懸濁液に、性界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは架橋前スチレン系ブロック共重合体の有機溶媒溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
【0044】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0045】
架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスの製造に際しては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去して、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得ることが好ましい。乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックス中における、有機溶媒(好ましくは脂環族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0046】
そして、このようにして得られる架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、ラテックス状態で、架橋前スチレン系ブロック共重合体の架橋を行うことにより、トルエン不溶分を形成させ、これにより、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含む、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを得ることができる。
【0047】
たとえば、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスとして、上記一般式(1)で示されるA-B-Y-(B-A)で表されるブロック共重合体のラテックスを使用した場合には、架橋を行うことにより、トルエン不溶解分量が30~95重量%である、上記一般式(1)で示されるA-B-Y-(B-A)で表されるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含むスチレン系ブロック共重合体のラテックスを得ることができる。
また、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスとして、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスを使用した場合には、架橋を行うことにより、トルエン不溶解分量が30~95重量%である、スチレン-イソプレンブロック共重合体と、水とを含むスチレン系ブロック共重合体のラテックスを得ることができる。
【0048】
架橋反応に際しては、公知の重合開始剤を用いることができるが、長期安定性に優れたディップ成形体などの膜成形体を好適に得ることができるという観点より、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0049】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの中でも、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度、引裂強度および応力保持率をより高めることができるという点より、無機過酸化物および有機過酸化物を含む過酸化物重合開始剤が好ましく、有機過酸化物がより好ましく、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが特に好ましい。
【0050】
また、ラジカル重合開始剤として、過酸化物重合開始剤を使用する際には、活性剤を組み合わせてもよく、たとえば、活性剤として還元剤を用い、還元剤と組み合わせることで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物重合開始剤100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~1重量部、特に好ましくは0.4~1重量部である。
【0051】
また、活性剤として還元剤を用いる場合には、還元剤の分散性を高めるという観点より、さらにキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、特に限定されないが、エチレンジアミン4酢酸の2ナトリウム塩(EDTA・2H・2Na)、エチレンジアミン4酢酸の3ナトリウム塩(EDTA・H・3Na)、エチレンジアミン4酢酸の4ナトリウム塩(EDTA・4Na)などのエチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩が挙げられる。なお、エチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩は、通常、水和物として添加される。
【0052】
架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、ラテックス状態で、架橋を行う際における架橋温度は、特に限定されないが、好ましくは10~60℃であり、より好ましくは30~50℃である。また、架橋時間は、特に限定されないが、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~1時間である。
【0053】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、このようにして、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、ラテックス状態で、架橋前スチレン系ブロック共重合体の架橋を行うことにより得ることができ、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体と、水とを含むものである。なお、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、ラテックス状態で、架橋を行うことにより好適に得ることができるが、このような方法により得られるものに特に限定されるものではない。
【0054】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン系ブロック共重合体のトルエン不溶解分量は、30~95重量%であり、好ましくは50~95重量%、より好ましくは70~95重量%である。本発明によれば、スチレン系ブロック共重合体のラテックスに含まれる、スチレン系ブロック共重合体のトルエン不溶解分量を30~95重量%の範囲にするものであり、これにより、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを、成形性に優れ、しかも、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有するディップ成形体などの膜成形体を与えることができるものとすることができるものである。トルエン不溶解分量が少なすぎると、得られるディップ成形体などの膜成形体が、引裂強度に劣るものとなってしまい、一方、トルエン不溶解分量が多すぎると、スチレン系ブロック共重合体のラテックスとしての成形性が低下してしまい、得られるディップ成形体などの膜成形体が、膜厚の均一性に劣るものとなってしまう。なお、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン系ブロック共重合体は、トルエン不溶解分量が過度に高くなることを抑制するために、カルボキシル基はスチレン系ブロック共重合体に対して0.3重量%以下が好ましく、0.05重量%以下がより好ましく、実質的に含有しないものであることが特に好ましい。
【0055】
本発明において、トルエン不溶解分量は、スチレン系ブロック共重合体のラテックスに含まれる、スチレン系ブロック共重合体(固形分)を、トルエンに浸漬して25℃で24時間放置した後の不溶解分量の、トルエン浸漬前のスチレン系ブロック共重合体の量に対する重量百分率である。
【0056】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン系ブロック共重合体のトルエン不溶解分量を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、ラテックス状態で、架橋を行う際における、用いるラジカル重合開始剤の種類、ラジカル重合開始剤の使用量、活性剤の種類および使用量、架橋温度および架橋時間を制御する方法などが挙げられる。
【0057】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスの固形分濃度は、特に限定されないが、好ましくは10~75重量%、より好ましくは30~70重量%、さらに好ましくは50~65重量%である。固形分濃度が低すぎると、得られるディップ成形体などの膜成形体の膜厚が薄くなり破れ易くなるおそれがあり、逆に固形分濃度が高すぎると、スチレン系ブロック共重合体のラテックスの粘度が高くなり、配管での移送や調合タンク内での撹拌が困難になる場合がある。
【0058】
なお、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスの固形分濃度を調整する方法としては、特に限定されないが、架橋反応を行う前の架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックス、あるいは、架橋反応後のスチレン系ブロック共重合体のラテックスについて、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を行う方法が挙げられる。これらの中でも、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックス中の界面活性剤の残留量を低減することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
【0059】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000G、遠心分離前のラテックスの固形分濃度を、好ましくは2~15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを得ることができる。
【0060】
また、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、固形分濃度を55重量%とした時の、温度25℃における粘度が、10~300cpsであることが好ましく、より好ましくは10~200cps、さらに好ましくは100~200cpsである。なお、固形分濃度を55重量%とした時の、温度25℃における粘度は、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを固形分濃度55重量%に調整し、B型粘度計を用いて、測定することができる。また、スチレン系ブロック共重合体のラテックスの固形分濃度を55重量%に調整する方法としては、特に限定されないが、固形分濃度が55重量%よりも高い場合には、水を添加して、固形分濃度を調整すればよいし、あるいは、固形分濃度が55重量%よりも低い場合には、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を行えばよい。固形分濃度を55重量%とした時の、温度25℃における粘度が低すぎると、得られるディップ成形体などの膜成形体の膜厚が薄くなりすぎてしまい、十分な機械特性が得られない場合があり、一方、粘度が高すぎると、スチレン系ブロック共重合体のラテックスの取り扱い性が低下してしまう場合がある。
【0061】
なお、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスとしては、引裂強度、応力保持率、および風合いにより優れたディップ成形体などの膜成形体を得ることができるという観点より、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスとして、架橋前スチレン系ブロック共重合体のラテックスを用いて得られる、スチレン系ブロック共重合体のラテックスであることが好ましい。
【0062】
また、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスが、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスである場合には、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン系ブロック共重合体中のスチレン重合体ブロックは、スチレン単位を主たる構成単位とする重合体ブロックであればよく、スチレン単位以外の単量体単位を含有するものであってもよく、このようなスチレン以外の単量体としては、上述したものが挙げられ、スチレン重合体ブロック中のスチレン単位量も上述した範囲であることが好ましい。また、本発明のスチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン-イソプレンブロック共重合体中のイソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位を主たる構成単位とする重合体ブロックであればよく、イソプレン単位以外の単量体単位を含有するものであってもよく、このようなイソプレン以外の単量体としては、上述したものが挙げられ、イソプレン重合体ブロック中のイソプレン単位量も上述した範囲であることが好ましい。なお、イソプレン重合体ブロックを構成するイソプレン単位は、不飽和結合の一部が、水素添加反応により水素添加されたものであってもよい。
【0063】
また、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスが、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスである場合における、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスを構成する、スチレン-イソプレンブロック共重合体中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99~90:10、好ましくは3:97~70:30、より好ましくは5:95~50:50、さらに好ましくは10:90~30:70の範囲である。
【0064】
本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~3μm、さらに好ましくは0.5~2.0μmである。
【0065】
また、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合して、ラテックス組成物としてもよい。
【0066】
架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド(N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。
【0067】
架橋促進剤としては、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホニリル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。
【0068】
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられる。
【0069】
老化防止剤としては、2,6-ジ-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’-メチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’―(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。
【0070】
<膜成形体>
本発明の膜成形体は、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスからなる膜状の成形体である。本発明の膜成形体の膜厚は、好ましくは0.03~0.50mm、より好ましくは0.05~0.40mm、特に好ましくは0.08~0.30mmである。
【0071】
本発明の膜成形体としては、特に限定されないが、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスをディップ成形して得られるディップ成形体であることが好適である。ディップ成形は、スチレン系ブロック共重合体のラテックスに型を浸漬し、型の表面に当該スチレン系ブロック共重合体のラテックスを沈着させ、次に型を当該スチレン系ブロック共重合体のラテックスから引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該スチレン系ブロック共重合体のラテックスを乾燥させる方法である。なお、スチレン系ブロック共重合体のラテックスに浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をスチレン系ブロック共重合体のラテックスに浸漬する前、または、型をスチレン系ブロック共重合体のラテックスから引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0072】
凝固剤の使用方法の具体例としては、スチレン系ブロック共重合体のラテックスに浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0073】
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0074】
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~30重量%である。
【0075】
型をスチレン系ブロック共重合体のラテックスから引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させ、ディップ成形体を得る。乾燥条件は適宜選択すればよい。
【0076】
乾燥後、必要に応じて、型上に形成された沈着物を架橋させてもよい。なお、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスは、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン系ブロック共重合体を含むものであるため、このような架橋操作を行わなくても、十分な機械特性を実現できるものである。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60~150℃、より好ましくは100~130℃の加熱温度で、好ましくは10~120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
【0077】
また、スチレン系ブロック共重合体のラテックスを沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃~80℃であり、より好ましくは50℃~70℃である。
【0078】
このようにして得られるディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。
【0079】
本発明の膜成形体、およびその一態様であるディップ成形体は、上述した本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを用いて得られるものであるため、該ラテックスによる優れ成形性により、膜厚の均一性に優れ、さらには、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有するものであり、たとえば、手袋として特に好適に用いることができる。膜成形体が手袋である場合、膜成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
【0080】
また、本発明の膜成形体、およびその一態様であるディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【0081】
<包装構造体>
本発明の包装構造体は、上述した本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを、それぞれ塗布した第1のシート基材および第2のシート基材を接着積層してなり、被包装物を収容可能な構造を有するものである。具体的には、本発明の包装構造体において、第1のシート基材および第2のシート基材は、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスが塗布された面(ラテックス塗布面)が対向するようにして、必要に応じて被包装物を挟み、第1のシート基材および第2のシート基材のラテックス塗布面同士が互いに接触した状態で、押圧することにより、第1のシート基材と第2のシート基材とが互いに接着し、これにより、被包装物を包装可能な構造となっている。被包装物としては、特に限定されないが、たとえば、絆創膏等の医療品のように、滅菌をすることが望まれる各種被包装物が挙げられる。第1のシート基材および第2のシート基材としては、特に限定されないが、たとえば、グラシン紙等の紙材、高密度ポリエチレン不織布、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらのなかでも、取り扱い性が優れている点(適度な折れ曲がり易さを有している点)および安価であるという点から、紙材が好ましく、グラシン紙が特に好ましい。
【0082】
<接着剤組成物>
また、本発明においては、上述した本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスを、接着剤組成物として用いることができる。
【0083】
接着剤組成物中における本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスの含有量(固形分量)は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~30重量%である。
【0084】
接着剤組成物は、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスに加えて、接着剤樹脂を含有してなることが好ましい。接着剤樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びイソシアネート樹脂を好適に使用することができ、これらのなかでも、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂は、公知のもの(例えば、特開昭55-142635号公報に開示のもの)が使用できる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの反応比率は、「レゾルシン:ホルムアルデヒド」のモル比で、通常、1:1~1:5、好ましくは1:1~1:3である。
【0085】
また、接着剤組成物の接着力をさらに高めるために、接着剤組成物には、従来から使用されている2,6-ビス(2,4-ジヒドロキシフェニルメチル)-4-クロロフェノール又は類似の化合物、イソシアネート、ブロックイソシアネート、エチレン尿素、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル樹脂等を含有させることができる。
【0086】
さらに、接着剤組成物には、加硫助剤を含有させることができる。加硫助剤を含有させることにより、接着剤組成物を用いて得られる後述する複合体の機械的強度を向上させることができる。加硫助剤としては、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム;ラウリルメタクリレートやメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)等のアリル化合物;ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N,N-m-フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物;硫黄;等を挙げることができる。
【0087】
<接着剤層形成基材>
本発明の接着剤層形成基材は、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスまたは接着剤組成物を用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成して得られる。
【0088】
基材としては、特に限定されないが、たとえば繊維基材を用いることができる。繊維基材を構成する繊維の種類は、特に限定されず、たとえば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド繊維、ガラス繊維、綿、レーヨン等が挙げられる。これらは、その用途に応じて、適宜選定することができる。繊維基材の形状は特に限定されず、たとえば、ステープル、フィラメント、コード状、ロープ状、織布(帆布等)等を挙げることができ、その用途に応じて適宜選定することができる。たとえば、接着剤層形成基材は、接着剤層を介して、ゴムと接着することにより、基材-ゴム複合体として用いることができる。基材-ゴム複合体としては、特に限定されないが、たとえば、繊維基材としてコード状のものを用いた芯線入りのゴム製歯付きベルト、帆布等の基布状の繊維基材を用いたゴム製歯付きベルト等が挙げられる。
【0089】
基材-ゴム複合体を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、浸漬処理等により、本発明のスチレン系ブロック共重合体のラテックスまたは接着剤組成物を基材に付着させて接着剤層形成基材を得て、接着剤層形成基材をゴム上に載置し、これを加熱および加圧する方法が挙げられる。加圧は、圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行なうことができる。加圧の圧力は、好ましくは0.5~20MPa、より好ましくは2~10MPaである。加熱の温度は、好ましくは130~300℃、より好ましくは150~250℃である。加熱および加圧の処理時間は、好ましくは1~180分、より好ましくは5~120分である。加熱および加圧する方法により、ゴムの成形、および接着剤層形成基材とゴムとの接着を、同時に行なうことができるようになる。なお、加圧に用いる圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とする基材-ゴム複合体のゴムに所望の表面形状を付与するための型を形成させておくことが好ましい。
【0090】
また、基材-ゴム複合体の一態様として、基材-ゴム-基材複合体を挙げることができる。基材-ゴム-基材複合体は、たとえば、基材(2種以上の基材の複合体であってもよい。)と基材-ゴム複合体とを組み合わせて形成することができる。具体的には、基材としての芯線、ゴムおよび基材としての基布を重ね(このとき、芯線および基布には、接着剤組成物を適宜付着させて接着剤層形成基材としておく)、加熱しながら加圧することにより、基材-ゴム-基材複合体を得ることができる。
【0091】
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材-ゴム複合体は、機械的強度、耐摩耗性および耐水性に優れたものであり、そのため、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルト等のベルトとして好適に用いることができる。また、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材-ゴム複合体は、耐油性に優れ、油中ベルトなどの各種ベルト、ホース、チューブ、ダイアフラム等にも好適に使用できる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホース等が挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラム等が挙げられる。
【0092】
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材-ゴム複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロール等の工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動等の運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータ等が挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケット等が挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器等のOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロール等の繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロール等の製鉄用ロール;等が挙げられる。
【実施例
【0093】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
【0094】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0095】
<トルエン不溶解分量>
ポリテトラフルオロエチレン製シャーレにラテックス15gを入れ、25℃で2日間風乾後、40℃で24時間真空乾燥することで得られたゴム300mgを精秤し、100メッシュのステンレス鋼金網製の籠に入れて、ゴムを入れた籠を100mlのトルエンに浸漬して25℃で24時間静置した。そして、浸漬させた籠をトルエンから引き上げ、風乾した後、籠ごと60℃で一晩真空乾燥させた。乾燥後、籠に残った不溶解分量を精秤し、トルエンに浸漬する前のゴム重量に対する割合(重量%)を算出することで、トルエン不溶解分量を求めた。
【0096】
<固形分濃度55重量%、温度25℃における粘度>
ラテックスの固形分濃度を55重量%に調整し、B型粘度計 型式BH(東京計器社製)を使用して、温度25℃にて、粘度測定を行った。具体的には、300mLのガラスビーカーに、ラテックス200mLを入れ、次いで、ロータNo.1~6の任意のロータを、ロータに刻印されている線まで浸漬させて、温度25℃にて、粘度測定を行った。
【0097】
<ディップ成形性>
得られたディップ成形体の膜厚を測定することで、ディップ成形性の評価を行った。ディップ成形性は、ディップ成形体について、任意の5箇所の膜厚測定を行い、膜厚のバラツキが平均値に対して5%以内(すなわち、5箇所の膜厚の値のうち全てが、5箇所の膜厚を平均して求めた値の±5%以内)であったものを「〇」と評価し、膜厚のバラツキが平均値に対して5%超かつ10%以内(すなわち、5箇所の膜厚の値のうち少なくとも1つが、5箇所の膜厚を平均して求めた値の±5%超かつ±10%以内であり、±10%超となる値が観測されない状態)であったものを「△」と評価し、膜厚のバラツキが平均値に対して10%超(すなわち、5箇所の膜厚の値のうち少なくとも1つが、5箇所の膜厚を平均して求めた値の±10%超)であったものを「×」と評価した。
【0098】
<ディップ成形体の引張強度および伸び>
ASTM D412に基づいて、ディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK-100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)および破断時の伸び(単位:%)を測定した。
【0099】
<ディップ成形体の引裂強度>
ASTM D624-00に基づいて、ディップ成形体を、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室で24時間以上放置した後、ダンベル(商品名「Die C」、ダンベル社製)で打ち抜き、引裂強度測定用の試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、A&D社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、引裂強度(単位:N/mm)を測定した。
【0100】
<応力保持率>
ディップ成形体を、テンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、A&D社製)を用いて、伸び率100%にした直後の引張応力と、伸び率100%で6分間保持した後の引張応力とを測定して、応力保持率(伸び率100%で6分間保持した後の引張応力/伸び率100%にした直後の引張応力×100)(単位:%)を求めた。応力保持率が高いほど、手袋として使用した際に、使用に伴うへたり(緩みやたるみ)が起きにくいため好ましい。
【0101】
<ディップ成形体の500%引張応力>
ASTM D412に基づいて、ディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK-100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張応力測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、伸び率が500%の時の引張応力(単位:MPa)を測定した。500%引張応力の値が低いほど、柔軟な風合いを有するディップ成形体であると判断できる。
【0102】
<実施例1>
(スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックスの調製)
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(商品名「QUINTAC 3620」、日本ゼオン社製、スチレン単位量14重量%、スチレン-イソプレンジブロック共重合の含有量12重量%、線状重合体と放射状重合体との混合物でであり、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を主成分として含むもの)のシクロヘキサン溶液400部(架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体100部、シクロヘキサン300部)を調製した。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部を含有する界面活性剤水溶液400部を準備した。
【0103】
次いで、上記架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のシクロヘキサン溶液全量、および上記界面活性剤水溶液全量を、SUS304製の容器に入れて撹拌混合し、続いてホモジナイザー(商品名「マイルダーMDN-303V」、太平洋機工社製)によって乳化処理を施し、乳化液を得た。
【0104】
その後、乳化液を溶剤除去用タンク内に移し、溶剤除去用タンク内で乳化液からシクロヘキサンを留去して、乳化液の固形分濃度を10重量%に調整した。次いで、200メッシュステンレス製金網を用い、乳化液中の凝集物を除去することで、架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックスを得た。
【0105】
次いで、上記とは別の容器を用い、蒸留水2部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(商品名「SFS」、三菱ガス化学社製、還元剤)0.3部、および硫酸第一鉄(商品名「キレストFe」、中部キレスト社製、還元剤)0.08部からなる溶液を調製した。そして、架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックスに、ラテックス中の架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体100部に対し、上記にて調製した溶液全量を添加した後、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(商品名「パーオクタH」、日本油脂社製、有機過酸化物系ラジカル重合開始剤)0.5部を添加して、不活性ガス雰囲気下、50℃で1時間反応を行うことで、架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行った。
【0106】
次いで、冷却遠心分離機(型式「H-2000B」、コクサン社製)にロータMNをセットし、架橋後のラテックスを、冷却遠心分離機に備えられた容量500mlの遠沈管に移し、設定温度20℃、回転数4,000Gの条件で、20分間遠心分離操作を行った。遠心分離操作の回転が止まった後、直ちに遠沈管内から軽液を掻き出し、この軽液を、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-1)として得た。得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-1)の固形分濃度は65重量%であった。そして、得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-1)について、トルエン不溶解分量および固形分濃度55重量%、温度25℃における粘度の測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-1)を構成する、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体は、実質的にカルボキシル基を有しないものであった(後述する実施例2~4においても同様。)。
【0107】
(ディップ成形体の製造)
上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-1)154部(スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体換算で100部)を攪拌しながら、pH10になるように水酸化カリウム水溶液で調整した。
【0108】
上記とは別に、市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)を含有する凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、凝固剤水溶液から取り出した。次いで、手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥させることで、手型に凝固剤を付着させて、手型を凝固剤により被覆した。
【0109】
その後、凝固剤で被覆された手型を、オーブンから取り出し、上記にて得られたラテックスに10秒間浸漬した。次いで、この手型を、室温で10分間風乾してから、60℃の温水中に5分間浸漬して水溶性不純物を溶出させて、手型にディップ成形層を形成した。その後、手型に形成したディップ成形層を、オーブンにより温度110℃、20分間の条件で加熱することにより乾燥させた後、室温まで冷却し、タルクを散布してから手型から剥離して、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、上記方法にしたがって、ディップ成形性、引張強度、伸び、引裂強度、応力保持率、および500%引張応力の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0110】
<実施例2>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行う際における、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)の使用量を0.2部に、硫酸第一鉄の使用量を0.05部に、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドの使用量を0.3部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-2)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
<実施例3>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行う際における、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)の使用量を0.1部に、硫酸第一鉄の使用量を0.02部に、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドの使用量を0.1部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-3)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
<実施例4>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行う際に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)、硫酸第一鉄、および1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドを使用せず、代わりに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、アゾ化合物系ラジカル重合開始剤)1部を使用した以外は、実施例1と同様にして、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-4)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
<比較例1>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行う際に、メタクリル酸5部をさらに使用した以外は、実施例2と同様にして、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-5)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
<比較例2>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の架橋反応を行う際における、反応温度を30℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-6)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られたスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のラテックス(A-6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
<比較例3>
架橋前スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(商品名「QUINTAC 3620」、日本ゼオン社製)に代えて、合成ポリイソプレン(商品名「IR2200L」、日本ゼオン社製)を使用し、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに代えて、ロジン酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム=2/1(重量比)のもの使用した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンのラテックス(A-7)を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
そして、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(A-7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示すように、トルエン不溶解分量が30~95重量%であるスチレン-イソプレンブロック共重合体と、水とを含む、スチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスは、成形性に優れ、また、これを用いて得られるディップ成形体は、引裂強度および応力保持率が高く、柔軟な風合いを有する(500%引張応力が低い)ものであった(実施例1~4)。
【0118】
一方、架橋前スチレン-イソプレンブロック共重合体を架橋させる際に、メタクリル酸を使用した場合には、架橋反応とともに、メタクリル酸のグラフト反応が起こり、トルエン不溶解分量が95重量%を超えるものとなり、成形性に劣るものであった(比較例1)。
また、トルエン不溶解分量が30重量%未満であるスチレン-イソプレンブロック共重合体を含むスチレン-イソプレンブロック共重合体のラテックスを用いた場合には、得られるディップ成形体は、引裂強度に劣る結果となった(比較例2)。
さらに、スチレン-イソプレンブロック共重合体の代わりに、トルエン不溶解分量が30~95重量%の範囲にある合成イソプレンを含有するラテックスを用いた場合には、得られるディップ成形体は、引張強度および引裂強度に劣る結果となった(比較例3)。