(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】検査指示情報生成装置、基板検査システム、検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20231114BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01R31/54
H05K3/00 U
(21)【出願番号】P 2020556018
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042765
(87)【国際公開番号】W WO2020095810
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018211079
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】椹木 雅也
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/001651(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101234(WO,A1)
【文献】特開2005-326193(JP,A)
【文献】特開平06-207963(JP,A)
【文献】特開2018-087754(JP,A)
【文献】特開平03-100475(JP,A)
【文献】特開2012-117991(JP,A)
【文献】特開2019-007880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報を記憶する記憶部と、
前記導電構造情報に基づいて、前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する検査指示情報生成部とを備え、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の計算上の抵抗値が小さい対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であ
る検査指示情報生成装置。
【請求項2】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報を記憶する記憶部と、
前記導電構造情報に基づいて、前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する検査指示情報生成部とを備え、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の、前記基板面上での距離が短い対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であ
る検査指示情報生成装置。
【請求項3】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報を記憶する記憶部と、
前記導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する検査指示情報生成部とを備え、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が少ない対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であ
る検査指示情報生成装置。
【請求項4】
前記検査指示情報生成部は、さらに、
前記検査指示情報生成処理において組み合わされた各対の一方の導電部から他方の導電部に至る導電経路上に位置しないビアを、前記導電構造情報に基づいて探索する探索処理と、
前記探索処理において前記導電経路上に位置しないビアが見つかった場合、当該見つかったビアを含む導電経路の両端に位置する一対の導電部を前記導電構造情報に基づき選択し、当該一対の導電部を示す情報を、前記検査指示情報に追加する導電部追加処理とを実行する請求項
1~3のいずれか1項に記載の検査指示情報生成装置。
【請求項5】
前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、当該導電部対間の計算上の抵抗値が最小である条件を満たす導電部対を選択する処理である請求項
4に記載の検査指示情報生成装置。
【請求項6】
前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、前記基板面上での距離が最短である条件を満たす導電部対を選択する処理である請求項
4に記載の検査指示情報生成装置。
【請求項7】
前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、当該導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が最少である条件を満たす導電部対を選択する処理である請求項4に記載の検査指示情報生成装置。
【請求項8】
前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち同一の基板面に形成された導電部同士の導電部対の中で、前記条件を満たす導電部対を優先して選択する処理である請求項
5~7のいずれか1項に記載の検査指示情報生成装置。
【請求項9】
請求項
1~8のいずれか1項に記載の検査指示情報生成装置と、
前記検査指示情報生成装置によって生成された検査指示情報に基づいて、前記ビアの検査を実行する基板検査装置とを含む基板検査システム。
【請求項10】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行し、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の計算上の抵抗値が小さい対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成方法。
【請求項11】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行し、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の、前記基板面上での距離が短い対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成方法。
【請求項12】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行し、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が少ない対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成方法。
【請求項13】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を、コンピュータに実行させ、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の計算上の抵抗値が小さい対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成プログラム。
【請求項14】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を、コンピュータに実行させ、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の、前記基板面上での距離が短い対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成プログラム。
【請求項15】
複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記複数の導電部とを接続するビアとを備える基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、
前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記複数の導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を、コンピュータに実行させ、
前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が少ない対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理である検査指示情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を検査する際の検査箇所を指示するための検査指示情報を生成する検査指示情報生成装置、この検査指示情報を用いて検査を行う基板検査システム、検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に設けられたスルーホールに対し、基板の表裏に跨がってスルーホールの一端と他端とにそれぞれプローブを接触させ、スルーホールの抵抗測定を行う検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上述の検査装置のように、基板の表裏の間で電圧を測定するためには、プローブを電圧計に接続する配線を、基板の表裏に跨がって引き回す必要がある。そのため、測定配線のループが大きくなり、ノイズを拾いやすくなる結果、抵抗測定精度が低下するおそれがある。また、基板の表裏に跨がって、基板の表面と裏面とにそれぞれプローブを接触させると、基板の両面間で外来ノイズの影響に差が生じるために、プローブの検出電圧にノイズが重畳されて抵抗測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ビアの抵抗測定精度を向上することが容易な検査箇所を示す検査指示情報を生成する検査指示情報生成装置、この検査指示情報生成装置を含む基板検査システム、検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成プログラムを提供することである。
【0006】
本発明の一例に係る検査指示情報生成装置は、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成装置であって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報を記憶する記憶部と、前記導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する検査指示情報生成部とを備える。
【0007】
また、本発明の一例に係る検査指示情報生成方法は、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成方法であって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する。
【0008】
また、本発明の一例に係る検査指示情報生成プログラムは、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成プログラムであって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を、コンピュータに実行させる。
【0009】
また、本発明に係る基板検査システムは、上述の検査指示情報生成装置と、前記検査指示情報生成装置によって生成された検査指示情報に基づいて、前記ビアの検査を実行する基板検査装置とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板検査システムの構成を概念的に示す模式図である。
【
図2】
図1に示す測定部の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】検査対象となる基板の一例を示す断面図である。
【
図4】検査対象となる基板の一例を示す平面図である。
【
図5】簡素化導電構造情報の一例を図示したものである。
【
図6】木構造導電構造情報の一例を図示したものである。
【
図7】検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図1に示す基板検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1に示す基板検査システム1は、検査指示情報生成装置3と、基板検査装置2とを含んでいる。
【0012】
図1に示す検査指示情報生成装置3は、簡素化処理部31、木構造データ変換部32、検査指示情報生成部33、及び記憶部34を備えている。検査指示情報生成装置3は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成されており、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置、通信回路、及びこれらの周辺回路等を備えている。
【0013】
そして、検査指示情報生成装置3は、例えば不揮発性の記憶装置に記憶された、本発明の一実施形態に係る検査指示情報生成プログラムを実行することによって、簡素化処理部31、木構造データ変換部32、及び検査指示情報生成部33として機能する。記憶部34は、例えば上述の不揮発性の記憶装置を用いて構成されている。
【0014】
記憶部34には、導電構造情報D1が記憶される。導電構造情報D1は、外部から例えば図略の通信回路を介して検査指示情報生成装置3へ送信されることによって、当該送信された導電構造情報D1を記憶部34に記憶してもよく、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記憶媒体に記憶された導電構造情報D1を検査指示情報生成装置3が読み取ることによって、導電構造情報D1を記憶部34に記憶してもよく、種々の方法で導電構造情報D1を記憶部34に記憶させることができる。
【0015】
導電構造情報D1は、後述する基板Bの、導電部P、各配線層Lの配線W又は面状導体IP、及びビアVが、どのように導通接続されているかを示す情報である。導電構造情報D1としては、例えば基板の製造に用いられるいわゆるガーバーデータ、及び/又はネットリスト等を用いることができる。
【0016】
簡素化処理部31は、導電構造情報D1に基づいて並列接続された配線やビアを簡素化し、簡素化導電構造情報D1’を生成する。簡素化導電構造情報D1’は導電構造情報の一例に相当する。
【0017】
木構造データ変換部32は、ビアVをノード、配線Wを枝、面状導体IPを根ノードに対応させることによって、簡素化導電構造情報D1’を木構造のデータ構造に変換し、木構造導電構造情報D1"を生成する。木構造導電構造情報D1"は導電構造情報の一例に相当する。
【0018】
検査指示情報生成部33は、導電構造情報D1(D1’,D1")に基づいて、基板検査装置2に対して検査のために電流を流すべき導電部Pの対を指示するための検査指示情報D2を生成する。検査指示情報生成部33は、例えば図略の通信回路を介して検査指示情報D2を基板検査装置2へ送信してもよい。あるいは検査指示情報生成部33は、検査指示情報D2を記憶媒体に書き込んでもよい。そして、ユーザがその記憶媒体から検査指示情報D2を基板検査装置2に読み込ませるようにしてもよい。検査指示情報生成部33の動作の詳細については後述する。
【0019】
図1に示す基板検査装置2は、検査対象の被検査基板である基板Bを検査するための装置である。
【0020】
基板Bは、例えば中間基板や多層基板であり、プリント配線基板、フィルムキャリア、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、半導体チップ及び半導体ウェハ等の半導体基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及びこれらの基板を製造する過程の中間基板や、いわゆるキャリア基板であってもよい。
【0021】
図1に示す基板検査装置2は、筐体112を有している。筐体112の内部空間には、基板固定装置110と、測定部121と、測定部122と、移動機構125と、制御部20とが主に設けられている。基板固定装置110は、基板Bを所定の位置に固定するように構成されている。
【0022】
測定部121は、基板固定装置110に固定された基板Bの上方に位置する。測定部122は、基板固定装置110に固定された基板Bの下方に位置する。測定部121,122は、基板Bに設けられた複数の導電部にプローブを接触させるための測定治具4U,4Lを備えている。
【0023】
測定治具4U,4Lには、複数のプローブPrが取り付けられている。測定治具4U,4Lは、基板Bの表面に設けられた測定対象の導電部の配置と対応するように複数のプローブPrを配置、保持する。移動機構125は、制御部20からの制御信号に応じて測定部121,122を筐体112内で適宜移動させ、測定治具4U,4LのプローブPrを基板Bの各導電部に接触させる。
【0024】
なお、基板検査装置2は、測定部121,122のうちいずれか一方のみを備えてもよく、基板Bは、片面のみに導電部が設けられていてもよい。また、基板検査装置2は、いずれか一方の測定部によって、被検査基板を表裏反転させてその両面の測定を行うようにしてもよい。
【0025】
制御部20は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、所定の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶部22と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。そして、制御部20は、例えば記憶部22に記憶された制御プログラムを実行することにより、検査処理部21として機能する。
【0026】
図2に示す測定部121は、スキャナ部13、複数の測定ブロック12、及び複数のプローブPrを備えている。なお、測定部122は、測定部121と同様に構成されているのでその説明を省略する。
【0027】
測定ブロック12は、電源部CS,CMと、電圧検出部VMとを備えている。電源部CS,CMは、制御部20からの制御信号に応じた電流Iを出力する定電流回路である。電源部CSはスキャナ部13へ供給する方向に電流Iを流し、電源部CMはスキャナ部13から引き込む方向に電流Iを流す。電圧検出部VMは電圧を測定し、その電圧値を制御部20へ送信する電圧検出回路である。
【0028】
なお、測定ブロック12は、必ずしも電源部CS,CMを両方とも備える必要はない。測定ブロック12は、電源部CS,CMのうちいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0029】
スキャナ部13は、例えばトランジスタやリレースイッチ等のスイッチング素子を用いて構成された切り替え回路である。スキャナ部13は、基板Bに抵抗測定用の電流Iを供給するための電流端子+F,-Fと、電流Iによって基板Bの導電部間に生じた電圧を検出するための電圧検出端子+S,-Sとを、複数の測定ブロック12に対応して複数備えている。また、スキャナ部13には、複数のプローブPrが電気的に接続されている。スキャナ部13は、制御部20からの制御信号に応じて電流端子+F,-F及び電圧検出端子+S,-Sと、複数のプローブPrとの間の接続関係を切り替える。
【0030】
電源部CSは、その出力端子の一端が回路グラウンドに接続され、他端が電流端子+Fに接続されている。電源部CMは、その出力端子の一端が回路グラウンドに接続され、他端が電流端子-Fに接続されている。電圧検出部VMは、その一端が電圧検出端子+Sに接続され、他端が電圧検出端子-Sに接続されている。
【0031】
そして、スキャナ部13は、制御部20からの制御信号に応じて、電流端子+F,-F及び電圧検出端子+S,-Sを任意のプローブPrに導通接続可能にされている。これにより、スキャナ部13は、制御部20からの制御信号に応じて、プローブPrが接触している任意の導電部間に電流Iを流し、その導電部間に生じた電圧Vを電圧検出部VMによって測定させることが可能にされている。
【0032】
測定ブロック12は、複数設けられているので、複数の導電部間に対して、並行して電流供給と電圧測定とを実行可能にされている。
【0033】
なお、電源部CS,CMは、スキャナ部13を介して基板Bに電流Iを流すことができればよく、電源部CS,CMの一端が回路グラウンドに接続される例に限らない。例えば、電源部CSの一端と電源部CMの一端とが接続されて電流ループが形成される構成であってもよい。
【0034】
これにより、制御部20は、スキャナ部13へ制御信号を出力することで、複数の電源部CS,CMにより電流Iを任意の複数対のプローブPr間に流させ、任意の複数対のプローブPr間の電圧を、複数の電圧検出部VMによって検出させることが可能にされている。
【0035】
なお、測定ブロック12は、必ずしも複数設けられている例に限らない。一つの測定ブロック12によって、複数の導電部間に対して順次、電流供給と電圧測定とを実行する構成であってもよい。
【0036】
図3は、基板Bの断面図と、基板Bの導電構造情報D1を図示した説明図とを兼ねている。導電構造情報D1は、必ずしも画像で表されたデータではないが、以下の説明では理解を容易にするために、導電構造情報D1で表される構造を図面で表して説明する。
【0037】
図3に示す基板Bは、5枚の基板B1~B5が積層された多層基板である。基板Bの一方の表面が基板面F1、他方の表面が基板面F2とされている。基板B1,B2の間に配線層L1が設けられ、基板B2,B3の間に配線層L2が設けられ、基板B3,B4の間に配線層Lcが設けられ、基板B4,B5の間に配線層L4が設けられている。
【0038】
基板面F1には導電部P1~P7が設けられ、基板面F2には導電部P11~P17が設けられている。導電部P1~P7,P11~P17は、パッド、バンプ、配線、電極等の、プローブPrが当接される検査点となる。
【0039】
配線層Lcには、配線の一例として、面状又はメッシュ状に拡がる導体である面状導体IPが設けられている。配線層L1には配線W11,W12が設けられ、配線層L2には配線W21,W22が設けられ、配線層L4には配線W41,W42,W43と配線W44,W45とが設けられている。面状導体IPは、一枚のシート状、すなわち面状に拡がる形状であってもよく、規則的又は不規則なメッシュ状(網目状)に配線等の導体パターンが組み合わされて、同一層内に全体として面状に拡がるような形状を有する導体であってもよい。
【0040】
なお、
図3では、面状導体IPが基板Bの略全域に拡がっている例を示したが、面状導体IPは、必ずしも基板Bの略全域に拡がっている例に限られない。面状導体IPは、基板Bの一部の領域のみに設けられていてもよい。例えば、配線層Lcにおける基板Bの面状導体IPが設けられていない領域に、配線Wが設けられていてもよい。
【0041】
図4に示す基板Bは、互いに電気的に分離された面状導体IPaと、面状導体IPdとを備えている。面状導体IPaは例えばアナロググラウンドとして用いられ、面状導体IPdは例えばデジタルグラウンドとして用いられる。
図4に示すように、基板Bは、互いに絶縁された複数の面状導体IPを備えていてもよい。
【0042】
配線W41,W42,W43は、配線層L4の配線W41、配線W42、及び配線W43が連なった一本の配線であるが、説明の便宜上、一本の配線W41,W42,W43の各部分を配線W41、配線W42、及び配線W43と称する。同様に、配線W44,W45は、配線W44と配線W45とが連なった一本の配線であり、配線W44及び配線W45は、それぞれ配線W44,W45の一部分である。
【0043】
また、基板Bには、基板B1を貫通するビアV11~V17が設けられ、基板B2を貫通するビアV21~V27が設けられ、基板B3を貫通するビアV31~V36が設けられ、基板B4を貫通するビアV41~V45が設けられ、基板B5を貫通するビアV51~V57が設けられている。
【0044】
記憶部22に記憶された導電構造情報D1には、これら導電部P1~P7,P11~P17、配線W11,W12,W21,W22,W41~W45、ビアV11~V17,V21~V27,V31~V36,V41~V45,V51~V57、及び面状導体IPが、どのように導通接続されているかを示す情報、例えば
図3に図示された接続関係を示す情報が含まれている。
【0045】
以下、導電部P1~P7,P11~P17等の導電部を総称して導電部Pと称し、配線W11,W12,W21,W22,W41~W45等の配線を総称して配線Wと称し、ビアV11~V17,V21~V27,V31~V36,V41~V45,V51~V57等を総称してビアVと称し、配線層L1,L2,Lc,L4を総称して配線層Lと称する。
【0046】
導電構造情報D1には、さらに、各配線W、各ビアV、及び各面状導体IPの厚さ、幅、長さ、及び電気抵抗率を示す情報、及び/又は、各ビアVの抵抗値、各配線W及び各面状導体IPのシート抵抗値を示す情報が含まれている。これにより、検査指示情報生成部33は、導電構造情報D1に基づき任意の導電経路の抵抗値を算出可能とされている。
【0047】
なお、導電構造情報D1のデータ形式は、種々の形式を取りうる。導電構造情報D1は、例えば単一のデータファイルであってもよく、複数のデータファイルから構成されていてもよく、ファイル形式を取らないデータ構造であってもよい。
【0048】
各導電部Pは、ビアVや配線Wを介して面状導体IPと導通接続されている。このように、各導電部Pが面状導体IPと導通接続される配線構造は、一般的に、回路グラウンドや電源パターンの接続用に用いられている。なお、基板Bは、回路グラウンドや電源パターンに接続されない配線やパッド等を含んでいてもむろんよい。
【0049】
基板固定装置110に基板Bが取り付けられると、移動機構125によって、測定部121の各プローブPrが導電部P1~P7に当接され、測定部122の各プローブPrが導電部P11~P17に当接される。これにより、測定部121,122は、任意の一対の導電部P間に電流Iを流し、その一対の導電部P間の電圧を検出可能にされている。
【0050】
測定部121,122は、いわゆる四端子抵抗測定法による抵抗測定のために、一つの導電部Pに、電流供給用のプローブPrと電圧測定用のプローブPrとを接触させてもよく、いわゆる二端子抵抗測定法による抵抗測定のために、一つの導電部Pに、電流供給と電圧測定とを兼ねた一つのプローブPrを接触させてもよい。
【0051】
検査処理部21は、測定部121,122を制御して、後述するように選択された一対の導電部Pのうち、一方に電源部CS(
図2参照)からの電流Iを供給させ、他方から電源部CM(
図2参照)によって電流Iを引き抜かせることによって、導電部P間に電流Iを供給させ、その導電部P間の電圧を検出させ、その電流と電圧とに基づいて基板Bを検査する。検査処理部21は、例えば、その電流と電圧とに基づいて、四端子抵抗測定法又は二端子抵抗測定法による抵抗測定を行い、その抵抗値に基づき、基板Bの検査を行うことができる。
【0052】
以下、検査処理部21が測定部121,122を制御することによって電流供給及び電圧検出を行わせることを、単に、検査処理部21が、電流を供給する、電圧を検出する、というように記載する。検査処理部21の動作の詳細については後述する。
【0053】
次に、上述の検査指示情報生成装置3の動作について説明する。
図3に示す基板Bに対応する検査指示情報を生成する場合を例に説明する。以下、
図5~
図8を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る検査指示情報生成プログラムに基づいて検査指示情報生成方法を実行する検査指示情報生成装置3の動作を説明する。
【0054】
なお、以下のフローチャートにおいて、同一の処理には同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0055】
まず、簡素化処理部31は、前処理として、導電構造情報D1によって示される接続構造を単純化する処理を行う。具体的には、簡素化処理部31は、複数の配線層Lの配線Wが並列に接続されている場合、当該並列接続された配線Wを、一つの配線Wに置き換えるように、導電構造情報D1を複製、変更し、簡素化導電構造情報D1’を生成する(ステップS1:簡素化処理)。
【0056】
具体的には、
図3に示す導電構造情報D1では、複数の配線層L1,L2の配線W11,W21が、ビアV21,V22によって並列接続されている。この場合、導電構造情報D1に対して、
図5に示すように、二本の配線W11,W21を、配線W11,W21のうち、例えば最も基板面F1に近い一本の配線W11に置き換え、簡素化導電構造情報D1’を生成する。このとき、ビアV22の一端がオープンになるので、データ上は、ビアV22が存在しない扱いとしてもよい。これにより、基板Bの配線構造が単純化されるので、以降の処理が容易になる。
【0057】
次に、簡素化処理部31は、配線Wと面状導体IPとによって、ビアV又はビアVの列が並列接続されている場合、当該並列接続されたビアV又はビアVの列を、一つ又は一列のビアに置き換えるように、簡素化導電構造情報D1’を変更する(ステップS2:簡素化処理)。
【0058】
具体的には、
図3に示す導電構造情報D1では、ビアV24,V33が直列接続されて列をなし、ビアV25,V34が直列接続されて列をなしている。そして、配線W12と面状導体IPとによって、ビアV24,V33の列と、ビアV25,V34の列とが並列接続されている。また、配線W22と面状導体IPとによって、ビアV32とビアV33とが並列接続されている。
【0059】
この場合、例えば
図5に示すように、簡素化導電構造情報D1’に対して、ビアV24,V33の列と、ビアV25,V34の列とをいずれか一方の列、例えばビアV24,V33の列に置き換え、ビアV32とビアV33とを一つのビアV、例えばビアV32に置き換える。
【0060】
また、
図3に示す導電構造情報D1では、配線W41,W42,W43の直列配線と面状導体IPとによって、ビアV41とビアV42とが並列接続されている。この場合、例えば
図5に示すように、簡素化導電構造情報D1’において、ビアV41,V42を一つのビアV、例えばビアV41に置き換える。また、
図3に示す導電構造情報D1では、配線W44,W45と面状導体IPとによって、ビアV43,V44,V45が並列接続されている。この場合、例えば
図5に示すように、簡素化導電構造情報D1’において、ビアV43,V44,V45を一つのビアV、例えばビアV44に置き換える。これにより、基板Bの配線構造が単純化されるので、以降の処理が容易になる。
【0061】
なお、必ずしも簡素化処理部31を備える必要はなく、ステップS1,S2を実行することなく
図3に示す基板Bの実際の配線構造を表すデータ形式の導電構造情報D1を、以後の処理において簡素化導電構造情報D1’の代わりに用いてもよい。
【0062】
次に、木構造データ変換部32は、簡素化導電構造情報D1’のデータ構造を、木構造に変換する(ステップS3)。木構造に変換された簡素化導電構造情報D1’を、木構造導電構造情報D1”と称する。
図6に示すように、木構造導電構造情報D1”では、一つの配線Wが一つのノードNで表現され、面状導体IPは根ノードNRで表現され、ビアVは、導電部Pとノード間をつなぐ枝M、又はノード相互間をつなぐ枝Mとして表現される。
【0063】
なお、必ずしも木構造データ変換部32を備える必要はなく、ステップS3を実行することなく、基板Bの配線構造を表すデータ形式の導電構造情報D1又は簡素化導電構造情報D1’を用いて以後の処理を実行してもよい。以下の説明において、ノードNに対する処理は、そのノードNに対応する配線Wに対する処理と同等であり、根ノードNRに対する処理は、面状導体IPに対する処理と同等であり、枝Mに対する処理は、そのノードNに対応する配線Wに対する処理と同等である。
【0064】
図6に示す木構造の木構造導電構造情報D1”の例では、ノードN11が配線W11(W21)に対応し、ノードN12が配線W12に対応し、ノードN21が配線W22に対応し、ノードN41が配線W41,W42,W43に対応し、ノードN42が配線W44,W45に対応している。また、枝M11がビアV11(V21)、枝M12がビアV12(V22)、枝M13がビアV14、枝M14がビアV15、枝M22がビアV24(V25)、枝Mr1がビアV31、枝Mr2がビアV32(V33)、枝Mr3がビアV16,V26,V35、枝Mr4がビアV17,V27,V36、枝M41がビアV51、枝M42がビアV52、枝M43がビアV53、枝M44がビアV54、枝M45がビアV55、枝M46がビアV56、枝M47がビアV57、枝Mr5がビアV41(V42)、枝Mr6がビアV43(V44,V45)にそれぞれ対応している。
【0065】
次に、検査指示情報生成部33は、基板面F1上の導電部P同士、すなわち同一の基板面に形成された導電部P同士を対にする全ての組合せについて、その一対の導電部P間の抵抗値を、導電構造情報D1に基づいて算出する(ステップS4)。なお、ステップS4において、基板Bの全ての導電部Pの、全ての組合せについて、その一対の導電部P間の抵抗値を計算し、後述するステップS11において、この計算値を利用してもよい。
【0066】
また、導電部P同士を対にする全ての組合せについて、その一対の導電部P間の抵抗値を算出しなくてもよい。例えば、一対の導電部P間が所定の距離以下の組合せについて抵抗値を算出してもよい。抵抗値を算出する組合せを削減することにより、処理時間の短縮効果が得られる。
【0067】
次に、検査指示情報生成部33は、ステップS4で得られた計算上の抵抗値が小さい組合せから順に、導電部Pが重複しないように導電部対を選択し、検査指示情報に記録する(ステップS5:検査指示情報生成処理)。以下、導電部P1,P2間の抵抗値をR(P1,P2)、導電部P3,P4間の抵抗値をR(P3,P4)・・・のように表記する。
【0068】
例えば
図3に示す導電構造情報D1において、R(P1,P2)、R(P4,P5)、R(P6,P7)の順に抵抗値が小さい場合、導電部P1,P2、導電部P4,P5、導電部P6,P7の各対が選択され、検査指示情報に記録される。
【0069】
次に、検査指示情報生成部33は、基板面F1上の導電部Pの数が奇数の場合、最後に残った導電部Pを含む組合せの中で、抵抗値が最小になる導電部対を選択し、検査指示情報に追加記録する(ステップS6)。
【0070】
図3に示す導電構造情報D1では最後に導電部P3が残るので、導電部P3を含む組合せの中で抵抗値が最小になる導電部対として、例えば導電部P3,P4が選択され、検査指示情報に追加記録される。
【0071】
次に、検査指示情報生成部33は、基板面F2上の導電部P同士、すなわち同一の基板面に形成された導電部P同士を対にする全ての組合せについて、その一対の導電部P間の抵抗値を、導電構造情報D1に基づいて算出する(ステップS11)。
【0072】
次に、検査指示情報生成部33は、ステップS11で得られた計算上の抵抗値が小さい組合せから順に、導電部Pが重複しないように導電部対を選択し、検査指示情報に記録する(ステップS12:検査指示情報生成処理)。
【0073】
例えば
図3に示す導電構造情報D1において、R(P11,P12)、R(P13,P14)、R(P15,P16)の順に抵抗値が小さい場合、導電部P11,P12、導電部P13,P14、導電部P15,P16の各対が選択され、検査指示情報に記録される。
【0074】
次に、検査指示情報生成部33は、基板面F2上の導電部Pの数が奇数の場合、最後に残った導電部Pを含む組合せの中で、抵抗値が最小になる導電部対を選択し、検査指示情報に追加記録する(ステップS13)。
【0075】
図3に示す導電構造情報D1では最後に導電部P17が残るので、導電部P17を含む組合せの中で抵抗値が最小になる導電部対として、例えば導電部P16,P17が選択され、検査指示情報に追加記録される。
【0076】
次に、検査指示情報生成部33は、ステップS5,S6,S12,S13で選択された各導電部対の、一方の導電部Pから他方の導電部Pに至る導電経路上に位置しない検出漏れビアを、木構造の木構造導電構造情報D1”に基づいて探索する(ステップS14:探索処理)。
【0077】
図9を参照して、導電部P1,P2、導電部P4,P5、導電部P6,P7、及び導電部P3,P4の各導電部対における一方の導電部Pから他方の導電部Pに至る導電経路a1~a4と、導電部P11,P12、導電部P13,P14、導電部P15,P16及び導電部P16,P17の各導電部対における一方の導電部Pから他方の導電部Pに至る導電経路b1~b4との中には枝Mr1,Mr2,Mr5,Mr6が含まれていない。
【0078】
従って、検査指示情報生成部33によって、枝Mr1,Mr2,Mr5,Mr6、すなわちビアV31,V32,V41(V42),ビアV43(V44,V45)が、検出漏れビアとして探し出される。
【0079】
次に、検査指示情報生成部33は、ステップS14で探索された検出漏れビアを導電経路に含む導電部対を、同一基板面内を優先しつつ、抵抗値が小さい組合せ順に選択し、検査指示情報に記録する(ステップS15:導電部追加処理)。
【0080】
具体的には、検査指示情報生成部33は、まず最初に、同一基板面内で検出漏れビアを導電経路に含む導電部対を探索し、同一基板面内で見つからなかった場合に基板両面に跨がって探索することにより、同一基板面内を優先する。
【0081】
例えば枝Mr1、すなわちビアV31を導電経路に含む導電部対を選択する場合、検査指示情報生成部33は、
図9に示す木構造導電構造情報D1”に基づいて、まず基板面F1上の導電部P1~P7を優先して導電部対を選択する。
【0082】
具体的には、一方を導電部P1,P2のいずれかとし、他方を導電部P3~P7のいずれかとする導電部対を、枝Mr1を導電経路に含む導電部対の候補として選択する。次に、検査指示情報生成部33は、候補として選択された導電部対の中から最も抵抗値の小さな導電部対、例えば導電部P1,P6を選択し、検査指示情報に記録する。同様に、枝Mr2を導電経路に含む導電部対として、例えば導電部P3,P6が選択される。
【0083】
次に、枝Mr5,Mr6を導電経路に含む導電部対として、基板面F2上の導電部P11~P17が優先され、例えば導電部P14,P15が選択されて、検査指示情報に記録される。
【0084】
これにより、導電部P1,P6間の導電経路c1には枝Mr1が含まれ、導電部P3,P6間の導電経路c2には枝Mr2が含まれ、導電部P14,P15間の導電経路d1には枝Mr5,Mr6が含まれるので、このようにして得られた検査指示情報に基づいて、後述する基板検査装置2が検査を行うことによって、全てのビアVを検査することが可能となる。
【0085】
ステップS15において、同一の基板面内には、検出漏れビアを含む導電部対が存在しなかった場合、検査指示情報生成部33は、基板面F1の導電部Pと、基板面F2の導電部Pとからなる導電部対であって、検出漏れビアを含む導電部対のうち、最も抵抗値が小さい導電部対を選択する。以上、ステップS1~S15によって
図14に示す検査指示情報D2が完成し、処理を終了する。
【0086】
ステップS5,S6,S12,S13によれば、同一の基板面上の導電部P同士で組み合わされて導電部対が選択される。また、ステップS15によれば、同一基板面内の導電部対が優先的に選択される。その結果、このようにして得られた検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合、以下に説明するように、その抵抗測定精度が向上する。
【0087】
すなわち、基板Bの同一面内の導電部同士で抵抗測定する場合、
図1に示すように、測定治具4U又は測定治具4Lのいずれか一方の測定治具に設けられたプローブPrのみで行うことができ、従って、測定部121,122のうちいずれか一方の測定部のみで測定用電流の供給及び電圧検出を行うことができる。
【0088】
一方、基板Bの両面に跨がって一対の導電部間の同士で抵抗測定する場合、測定治具4UのプローブPrと測定治具4LのプローブPrとを用い、測定部121と測定部122とに跨がって、測定用電流の供給及び電圧検出を行う必要がある。この場合、基板Bの同一面内の導電部同士で抵抗測定する場合と比べて、測定部121,122における電流供給用の配線及び電圧検出用の配線が作るループが大きくなる。配線ループが大きいと、その配線ループ内を通過する電磁ノイズが増加し、かつ配線ループのインピーダンスが増大する。
【0089】
また、基板Bの一対の導電部Pの間に電流を流してその導電部対間の電圧を検出することにより、その電流と測定電圧からオームの法則により抵抗値を測定する場合、検出電圧には、外来電磁界がノイズとして重畳される。基板Bの一方の面内では外来電磁界が略同じように印加されるため、基板Bの一方の面側で外来電磁界により誘起されるノイズ電圧は、略一定となる。そのため、基板Bの一方の面内の一対の導電部Pの間の電圧を測定する場合、その測定電圧に重畳されるノイズはコモンモードとなる結果、測定電圧に与えるノイズの影響が低減される。
【0090】
一方、基板Bの両面間では、基板Bの表裏で印加される電磁界強度に差が生じ、基板Bの一方の面と他方の面とで外来電磁界により誘起されるノイズ電圧に差が生じる。そのため、基板Bの両面に跨がって一対の導電部Pの間の電圧を測定する場合、その測定電圧に重畳されるノイズはノーマルモードとなる結果、測定電圧にそのままノイズ電圧が重畳される。その結果、基板Bの一方の面内の一対の導電部Pの間の電圧を測定する場合よりも、基板Bの両面に跨がって一対の導電部Pの間の電圧を測定する方がノイズの影響が大きくなる。
【0091】
従って、ステップS5,S6,S12,S13において同一の基板面上の導電部P同士で組み合わされて導電部対が選択され、ステップS15において同一基板面内の導電部対が優先的に選択されることによって、このようにして得られた検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合に、その抵抗測定精度が向上する。
【0092】
また、ステップS5,S6,S12,S13,S15によれば、導電部対間の抵抗値の理論値が小さい組合せから順に、導電部対の組合せが選択される。その結果、このようにして得られた検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアVの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0093】
すなわち、ビアVの検査を行う場合、理想的にはビアVそのものの抵抗値を測定することが望ましい。しかしながら、
図3に示すように、ビアVの両端が基板Bの表面に露出することはないため、ビアVそのものの抵抗値を直接測定することはできない。そのため、ビアVを含む導電経路で互いに接続された導電部対を選択し、その導電経路全体の抵抗値を測定することによって、ビアVの検査を行っている。
【0094】
このような検査を行う場合、導電経路全体の抵抗値が小さいほど、導電経路全体の抵抗値に占めるビアVの抵抗値の比率が増大する確率が高くなり、ビアV以外の配線抵抗の影響が小さくなる。従って、ステップS5,S6,S12,S13,S15において、導電部対間の抵抗値が小さいほど優先されるように導電部対の組合せを選択することによって、このようにして得られた検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアVの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0095】
なお、ステップS5,S6,S12,S13において、必ずしも同一の基板面上の導電部P同士の組み合わせにより導電部対を選択する例に限られない。しかしながら、ステップS5,S6,S12,S13において同一の基板面上の導電部P同士の組み合わせにより導電部対を選択することは、ビアVの検査精度を向上させることが容易な検査指示情報を生成できる点で、より好ましい。
【0096】
また、ステップS15において、同一基板面内の導電部対を優先的に選択する例に限らない。しかしながら、ステップS15において同一基板面内の導電部対を優先的に選択することは、ビアVの検査精度を向上させることが容易な検査指示情報を生成できる点で、より好ましい。
【0097】
ところで、例えば四つのビアと、それらのビアに接続された導電部X1~X4を備えた基板のビアを検査する場合、検査対象の導電部対のうち一方を固定し、導電部X1-X2、導電部X1-X3、導電部X1-X4のように、三回の抵抗測定で四つのビアを検査する方法がある。
【0098】
しかしながら、ステップS5,S12によれば、複数の導電部Pが、二つずつ重複しないように組み合わされて、検査箇所となる導電部対を示す検査指示情報が生成される。その結果、このようにして得られた検査指示情報に基づきビアの検査を行った場合、上記方法よりも、検査回数が減少する。従って、ビアの検査時間を短縮することが容易となる。
【0099】
すなわち、複数の導電部Pを、二つずつ重複しないように組み合わせると、上記導電部X1~X4は、導電部X1-X2と、導電部X3-X4の二組となり、二回の抵抗測定で四つのビアを検査することができるので、上記方法よりも検査回数が減少し、ビアの検査時間が短縮されることがわかる。
【0100】
また、ステップS3を実行せず、ステップS14の探索処理、及びステップS15の導電部追加処理を、木構造の木構造導電構造情報D1”に基づくことなく導電構造情報D1又は簡素化導電構造情報D1’に基づいて実行してもよい。しかしながら、ステップS3を実行し、木構造の木構造導電構造情報D1”に基づきステップS14,S15を実行するようにすれば、ステップS14,S15の処理を簡素化できる点でより好ましい。
【0101】
また、ステップS1を実行しなくてもよく、ステップS2を実行しなくてもよい。そして、ステップS3において、導電構造情報D1を木構造の木構造導電構造情報D1”に変換してもよい。しかしながら、ステップS1,S2の簡素化処理を実行することによって、ステップS3における木構造の木構造導電構造情報D1”への変換処理が簡素化され、かつ木構造導電構造情報D1”も単純化される。その結果、木構造導電構造情報D1”に基づくステップS14,S15の処理が簡素化される点でより好ましい。
【0102】
なお、
図10、
図11に示すように、ステップS4,S11を実行せず、ステップS5a,S12aにおいて抵抗値が小さい組合せ順ではなく、基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順に導電部対を選択してもよい。また、ステップS5a,S12aの代わりに、
図12、
図13に示すステップS5b,S12bを実行し、組合せ順に関わりなく同一基板面上の導電部対の中から、導電部Pが重複しないように導電部対を選択してもよい。また、ステップS6a,S13aにおいて抵抗値が最小になる導電部対ではなく基板面上における導体部対間の距離が最短になる導電部対を選択してもよい。
【0103】
この場合、ステップS4,S11における抵抗値の計算処理が不要となるので、検査指示情報生成処理のデータ処理量を低減することができる。また、基板面上における導体部対間の距離が短いほど、当該導電部対間の導電経路長が短い可能性が高く、従って抵抗値が低い可能性が高い。
【0104】
従って、ステップS6a,S13aにおいて、ステップS6,S13における抵抗値が小さい組合せ順の代わりに基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順とすることによって、ステップS4,S11を実行することなく抵抗値が小さい組合せ順を近似した優先順位で導電部対を選択することができる。
【0105】
また、導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ないほど、当該導電部対間の導電経路長が短い可能性が高く、従って抵抗値が低い可能性が高い。配線の数は、木構造導電構造情報D1"におけるノードN(ビアVとビアVの間)の数に対応している。
【0106】
従って、ステップS15aにおいて、ステップS15における抵抗値が小さい組合せの代わりに導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ない組合せを優先することによって、ステップS4,S11を実行することなく抵抗値が小さい組合せ順を近似した優先順位で導電部対を選択することができる。
【0107】
なお、
図7、
図8に示すステップS1~S14を実行後、ステップS15の代わりにステップS15aを実行してもよい。また、
図10、
図11に示すステップS1~S14を実行後、ステップS15aの代わりにステップS15を実行してもよい。
【0108】
また、ステップS15aにおいて、導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ない組合せの代わりに、ステップS5a,S12aと同様、基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順に導電部対を選択してもよい。
【0109】
しかしながら、検出漏れビアは、多層基板における表層から遠い配線層の層間のビアである可能性が高い。表層から遠い配線層の層間のビアを含む導電経路の長さは、表層に近い層間のビアよりも、基板面上における導体部対間の距離との相関が弱い。
【0110】
そのため、検出漏れビアを導電経路に含む導電部対を選択する際には、基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順よりも、導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ない組合せ順に導電部対を選択する方が、対間の抵抗値が小さな導電部対を選択できる可能性が増大するのでより好ましい。
【0111】
また、ステップS5a,S12aにおいて基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順ではなく、ステップS15aと同様、導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ない組合せ順としてもよい。しかしながら、ステップS5a,S12aにおいて、基板面上における導体部対間の距離が短い組合せ順に導電部対を選択する方が、導体部対間の導電経路を探索する処理が不要となる点でより好ましい。
【0112】
また、ステップS6a,S13aにおいて基板面上における導体部対間の距離が最短になる導電部対ではなく、導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が最少になる導電部対を選択してもよい。しかしながら、ステップS6a,S13aにおいて、基板面上における導体部対間の距離が最短になる導電部対を選択する方が、導体部対間の導電経路を探索する処理が不要となる点でより好ましい。
【0113】
図14は、上述のようにして記録された検査指示情報D2の一例を示す表形式の説明図である。このようにして得られた検査指示情報D2を、例えば図略の通信回路によって基板検査装置2に送信させたり、検査指示情報D2をUSBメモリ等の記憶媒体に記憶させ、この記憶媒体を基板検査装置2に読み込ませたりすることによって、記憶部22に記憶させることができる。
【0114】
次に、上述の基板検査装置2の動作について、
図15を参照しつつ説明する。以下、記憶部22に、
図14に示す検査指示情報D2が記憶されている場合を例に、説明する。
【0115】
まず、検査処理部21は、検査指示情報D2から、導電部対を示す情報を、一対分読み出す(ステップS21)。次に、検査処理部21は、読み出された一対の導電部間に電流値Iの測定用電流を供給しつつ、その導電部対間の電圧Vを測定する(ステップS22)。次に、検査処理部21は、電流値Iと電圧Vとに基づいて、検査対象の導電部対間の抵抗Rを、R=V/Iとして算出する(ステップS23)。
【0116】
例えば、検査処理部21は、
図14に示す検査指示情報D2から最初の導電部対P1,P2を読み出して、導電部対P1,P2間の導電経路a1に測定用電流を流し、導電部対P1,P2間の抵抗Rを算出する(ステップS21~S23)。
【0117】
次に、検査処理部21は、抵抗Rが、予め設定された判定基準の範囲内であるか否かをチェックする(ステップS24)。判定基準は、例えば検査対象の導電部対間の計算上の抵抗値の、-10%~+10%の範囲とすることができる。
【0118】
抵抗Rが判定基準の範囲内であれば(ステップS24でYES)、検査処理部21は、検査対象の導電部対間のビアVは正常と判定し(ステップS25)、ステップS27へ移行する。例えば、導電部対P1,P2が検査対象であれば、検査処理部21は、導電経路a1上の枝M11,M12に対応するビアV11,V21,V12,V22が正常と判断する。なお、必ずしもビアVを特定する必要はなく、検査対象の導電部対間を正常と判断するだけでよい。
【0119】
一方、抵抗Rが判定基準の範囲外であれば(ステップS24でNO)、検査処理部21は、検査対象の導電部対間の導電経路は不良と判定し(ステップS26)、ステップS27へ移行する。例えば、導電部対P1,P2が検査対象であれば、検査処理部21は、導電経路a1が不良と判断する。
【0120】
ステップS27において、検査処理部21は、検査指示情報D2の全ての導電部対が検査済か否かをチェックする(ステップS27)。まだ検査していない導電部対が残っていれば(ステップS27でNO)、検査処理部21は、検査指示情報D2から新たな導電部対を読み出して(ステップS28)、再びステップS22~S27を繰り返す。
【0121】
これを繰り返して検査指示情報D2の全ての導電部対が検査済になれば(ステップS27でYES)、検査処理部21は、検査処理を終了する。
【0122】
ステップS21~S28の処理によれば、
図14に示す全ての導電部対に対応する導電経路a1~a4,b1~b4,c1,c2,d1の抵抗値Rが測定され、その抵抗値Rに基づき導電経路a1~a4,b1~b4,c1,c2,d1に含まれるビアVを検査することができる。
【0123】
すなわち、 本発明の一例に係る検査指示情報生成装置は、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成装置であって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報を記憶する記憶部と、前記導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する検査指示情報生成部とを備える。
【0124】
また、本発明の一例に係る検査指示情報生成方法は、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成方法であって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を実行する。
【0125】
また、本発明の一例に係る検査指示情報生成プログラムは、複数の導電部が設けられた表裏一対の基板面と、前記一対の基板面の間に積層された層である配線層と、前記配線層の配線と前記導電部とを接続するビアとを備える基板を検査するための、検査指示情報生成プログラムであって、前記基板における前記導電部、前記配線、及び前記ビアが、どのように導通接続されているかを示す導電構造情報に基づいて、同一の前記基板面に形成された前記導通部同士を対にして前記導電部を二つずつ組合せ、当該組み合わされた一対の導電部を示す情報を、検査指示情報として生成する検査指示情報生成処理を、コンピュータに実行させる。
【0126】
これらの装置、方法、及びプログラムによれば、同一基板面内での検査により、背景技術に記載の方法よりも、ビアの抵抗測定精度を向上することが容易な検査箇所を示す検査指示情報を生成することができる。
【0127】
また、前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の計算上の抵抗値が小さい対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であることが好ましい。
【0128】
検査箇所となる一対の導電部間の抵抗値が小さいほど、その導電部間の抵抗値に占めるビアの抵抗値の比率が増大する確率が高くなり、ビア以外の配線抵抗の影響が小さくなる。従って、導電部対間の抵抗値が小さいほど優先されるように導電部対の組合せを選択することによって、このようにして得られた検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0129】
また、前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の、前記基板面上での距離が短い対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であることが好ましい。
【0130】
基板面上における導体部対間の距離が短いほど、当該導電部対間の導電経路長が短い可能性が高く、従って抵抗値が低い可能性が高い。また、基板面上での距離が短い対から順に導電部を組み合わせる処理は、導電部対間の導電経路の抵抗値を計算する必要がないので、処理量を低減できる。従って、この構成によれば、処理量を低減しつつ、抵抗値が小さい組合せ順を近似した優先順位で導電部対を選択することができる。
【0131】
また、前記検査指示情報生成処理は、前記複数の導電部を二つずつ組合せる際に、当該組み合わされる一対の導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が少ない対から順に組み合わせることによって、前記検査指示情報を生成する処理であることが好ましい。
【0132】
導電部対における導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計が少ないほど、当該導電部対間の導電経路長が短い可能性が高く、従って抵抗値が低い可能性が高い。また、導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数の合計を数える処理は、導電部対間の導電経路の抵抗値を計算する必要がないので、処理量を低減できる。従って、この構成によれば、処理量を低減しつつ、抵抗値が小さい組合せ順を近似した優先順位で導電部対を選択することができる。
【0133】
また、前記検査指示情報生成部は、さらに、前記検査指示情報生成処理において組み合わされた各対の一方の導電部から他方の導電部に至る導電経路上に位置しないビアを、前記導電構造情報に基づいて探索する探索処理と、前記探索処理において前記導電経路上に位置しないビアが見つかった場合、当該見つかったビアを含む導電経路の両端に位置する一対の導電部を前記導電構造情報に基づき選択し、当該一対の導電部を示す情報を、前記検査指示情報に追加する導電部追加処理とを実行することが好ましい。
【0134】
この構成によれば、検査指示情報に基づく検査において、検査されないビアが生じるおそれが低減される。
【0135】
また前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、当該導電部対間の計算上の抵抗値が最小である条件を満たす導電部対を選択する処理であることが好ましい。
【0136】
この構成によれば、導電部追加処理によって追加される導電部対についても、当該導電部対間の計算上の抵抗値が小さい導電部対が選択されるので、検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0137】
また、前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、前記基板面上での距離が最短である条件を満たす導電部対を選択する処理であることが好ましい。
【0138】
この構成によれば、導電部追加処理によって追加される導電部対についても、当該導電部対間の計算上の抵抗値が小さい導電部対が近似的に選択されるので、検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0139】
また、前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち、当該導電部間の導電経路に含まれるビアの数と配線の数との合計が最少である条件を満たす導電部対を選択する処理であることが好ましい。
【0140】
この構成によれば、導電部追加処理によって追加される導電部対についても、当該導電部対間の計算上の抵抗値が小さい導電部対が近似的に選択されるので、検査指示情報によって指示される導電部対間の抵抗測定を行ってビアの検査を行う場合に、その検査精度が向上する。
【0141】
また、前記導電部追加処理は、前記両端に位置する一対の導電部のうち同一の基板面に形成された導電部同士の導電部対の中で、前記条件を満たす導電部対を優先して選択する処理であることが好ましい。
【0142】
基板の両面に跨がって抵抗測定するよりも、基板の一方の面内で抵抗測定する方が、ノイズの影響を受けにくく、従って抵抗測定の精度が向上する。この構成によれば、同一の基板面に形成された導電部同士の導電部対が優先的に選択されるので、このようにして得られた検査指示情報に基づく検査の精度を向上させることが容易である。
【0143】
また、前記基板は、前記配線層を複数と、前記複数の配線層間を接続する複数のビアとをさらに備え、前記複数の配線層の配線が並列に接続されている場合、当該並列接続された複数の配線を、一つの配線に置き換えるように、前記導電構造情報を変更する簡素化処理を実行する簡素化処理部をさらに備え、前記検査指示情報生成部は、前記簡素化処理が実行された導電構造情報に基づいて、前記探索処理を実行することが好ましい。
【0144】
この構成によれば、導電構造情報が簡素化され、簡素化された導電構造情報に基づいて探索処理が実行されるので、探索処理が容易となる。
【0145】
また、前記簡素化処理は、前記複数の配線層の配線によって、前記ビア又はビアの列が並列接続されている場合、当該並列接続されたビア又はビアの列を、一つ又は一列のビアに置き換えるように、前記導電構造情報を変更する処理をさらに含むことが好ましい。
【0146】
この構成によれば、導電構造情報が簡素化され、簡素化された導電構造情報に基づいて探索処理が実行されるので、探索処理が容易となる。
【0147】
また、前記ビアをノード、前記配線を枝、前記面状導体を根ノードに対応させることによって、前記簡素化処理が実行された導電構造情報を木構造のデータ構造に変換する木構造データ変換部をさらに備え、前記検査指示情報生成部は、前記木構造のデータ構造に変換された導電構造情報に基づいて、前記探索処理を実行することが好ましい。
【0148】
この構成によれば、導電構造情報が木構造データに変換されて簡素化され、簡素化された導電構造情報に基づいて探索処理が実行されるので、探索処理が容易となる。
【0149】
また、本発明に係る基板検査システムは、上述の検査指示情報生成装置と、前記検査指示情報生成装置によって生成された検査指示情報に基づいて、前記ビアの検査を実行する基板検査装置とを含む。
【0150】
この構成によれば、背景技術に記載の方法よりもビアの抵抗測定精度を向上することが容易な検査箇所を示す検査指示情報に基づいてビアの検査が実行されるので、ビアの抵抗測定精度を向上することが容易である。
【0151】
このような構成の検査指示情報生成装置、検査指示情報生成方法、及び検査指示情報生成プログラムは、ビアの抵抗測定精度を向上することが容易な検査箇所を示す検査指示情報を生成することができる。また、このような構成の基板検査システムは、ビアの抵抗測定精度を向上することが容易である。
【0152】
この出願は、2018年11月9日に出願された日本国特許出願特願2018-211079を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0153】
1 基板検査システム
2 基板検査装置
3 検査指示情報生成装置
4U,4L 測定治具
12 測定ブロック
13 スキャナ部
20 制御部
21 検査処理部
22 記憶部
31 簡素化処理部
32 木構造データ変換部
33 検査指示情報生成部
34 記憶部
110 基板固定装置
112 筐体
121,122 測定部
125 移動機構
a1~a4,b1~b4,c1,c2,d1 導電経路
B,B1~B5 基板
CS,CM 電源部
D1 導電構造情報
D1’簡素化 導電構造情報
D1” 木構造導電構造情報
D2 検査指示情報
F1,F2 基板面
I 電流値
IP,IPa,IPd 面状導体
L,L1,L2,Lc,L4 配線層
M,M11~M14,M22,M41~M47,Mr1,Mr2,Mr5,Mr6 枝
N,N11,N12,N21,N41,N42 ノード
NR 根ノード
P,P1~P7,P11~P17 導電部
Pr プローブ
V,V11~V17,V21~V27,V31~V36,V41~V45,V51~V57 ビア
VM 電圧検出部
W,W11,W12,W21,W22,W41~W45 配線