(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231114BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231114BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021562373
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2020013421
(87)【国際公開番号】W WO2021066576
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122544
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ソク・シン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヨル・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・グン・リム
(72)【発明者】
【氏名】スン・シク・シン
(72)【発明者】
【氏名】スン・チョル・ハ
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106920960(CN,A)
【文献】特開2018-085198(JP,A)
【文献】特開2014-144894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101809(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0214628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/505
H01M 4/525
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応器に、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくともいずれか一つを含む遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液を投入して反応溶液を形成し、第1pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を生成する第1ステップと、
前記第1反応器の反応溶液を第2反応器に移送しながら第2pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を成長させる第2ステップと、
前記第2反応器の反応溶液を第3反応器に移送しながら第3pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物粒子を成長させる第3ステップと、
前記第3反応器から遷移金属水酸化物粒子を回収する第4ステップと、を含み、
前記第1反応器、前記第2反応器および前記第3反応器の反応条件が下記式1および式2を満たす、リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法:
式1:第1pH>第2pH>第3pH
式2:4≦反応溶液の温度[℃]/反応溶液のpH≦6。
【請求項2】
前記第1pH条件は、pH11~13である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記第2pH条件は、pH10~12である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記第3pH条件は、pH10.5~11.5である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記第1反応器で生成された遷移金属水酸化物核(seed)の
平均粒径(D
50
)が3.0μm以上になると、前記第2反応器に反応溶液を移送する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記第2反応器内の遷移金属水酸化物核の平均粒径(D
50)が3.5μm~8μmになると、前記第3反応器に反応溶液を移送する、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記第3反応器から回収された遷移金属水酸化物粒子の平均粒径(D
50)が9μm~15μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項8】
前記第1反応器、前記第2反応器および前記第3反応器の反応温度が下記式3を満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法:
式3:第1反応器の反応温度≧第2反応器の反応温度≧第3反応器の反応温度。
【請求項9】
前記第1反応器、前記第2反応器および前記第3反応器の反応溶液の撹拌速度が下記式4を満たす、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法:
式4:第1反応器の撹拌速度≧第2反応器の撹拌速度>第3反応器の撹拌速度。
【請求項10】
前記第2ステップおよび前記第3ステップにおいて、前記第2反応器および前記第3反応器に遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液をさらに投入する、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項11】
前記第1反応器、前記第2反応器および前記第3反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量が下記式5を満たす、請求項10に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法:
式5:第1反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量≦第2反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量<第3反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量。
【請求項12】
前記第1反応器、前記第2反応器および前記第3反応器のサイズが相違する、請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により製造された正極活物質前駆体をリチウム含有原料物質と混合した後、焼成するステップを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を含む、リチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法を含む、リチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法、前記で製造したリチウム二次電池用正極活物質前駆体を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、前記で製造したリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。かかる二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoO2などのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に使用されている。しかし、LiCoO2は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため、熱的特性が非常に劣っており、高価であるため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0004】
前記LiCoO2の代わりに使用するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4など)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiO2など)などが開発されている。中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有することで大容量の電池の具現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に関する研究開発がより活発になされている。しかし、前記LiNiO2は、LiCoO2と比較して、熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じると、正極活物質そのものが分解し、電池の破裂および発火を引き起こす問題があった。したがって、前記LiNiO2の優れた可逆容量は維持し、且つ低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCoと金属元素M(この際、前記Mは、MnまたはAlの少なくともいずれか一つである)で置換したリチウムニッケルコバルト金属酸化物が開発されている。
【0005】
このような正極活物質を製造する方法としては、代表的に、連続反応器(CSTR)を使用して正極活物質前駆体を製造する方式と、バッチ(batch)式反応器を使用して正極活物質前駆体を製造する方式が挙げられる。連続反応器(CSTR)は、原料を投入して共沈するとともに粒子として形成された前駆体を排出する方式であり、バッチ(batch)式は、所定の時間、反応器の体積に合わせて原料を投入して反応させ、反応終了の後、前駆体を排出する方式である。
【0006】
一般的に、連続反応器(CSTR)方式は、金属組成比の調節が容易であるという利点があるが、原料の投入と生成物の排出が同時に連続して行われるため、反応器内で生成される正極活物質前駆体の反応器内での滞留時間および反応時間にバラツキが存在する可能性があり、それによって、生成される粒子のサイズおよび成分なども均一でないという問題がある。
【0007】
そのため、粒子径の制御が容易であり、粒度が均一な正極活物質前駆体を製造することができるバッチ(batch)式の方式を採択する傾向にあるが、バッチ(batch)式反応器を使用しても、均一な粒度分布を有する正極活物質前駆体を製造するには不都合があり、連続反応器(CSTR)方式に比べて生産性が著しく低下する問題があった。
【0008】
したがって、粒度均一性に優れるだけでなく、生産性にも優れた正極活物質前駆体の製造方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1技術的課題は、複数の反応器を用いて、多段共沈方式により粒度分布が均一なだけでなく、生産性を著しく増加させることができるリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の第2技術的課題は、前記正極活物質前駆体を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の第3技術的課題は、前記正極活物質の製造方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供することである。
【0013】
本発明の第4技術的課題は、前記正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、本発明は、第1反応器に、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくともいずれか一つを含む遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液を投入して反応溶液を形成し、第1pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を生成する第1ステップと、前記第1反応器の反応溶液を第2反応器に移送しながら第2pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を成長させる第2ステップと、前記第2反応器の反応溶液を第3反応器に移送しながら第3pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物粒子を成長させる第3ステップと、前記第3反応器から遷移金属水酸化物粒子を回収する第4ステップと、を含み、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器の反応条件が下記式1および式2を満たすリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法を提供する。
式1:第1pH>第2pH>第3pH
式2:4≦反応溶液の温度/反応溶液のpH≦6
【0015】
また、本発明は、上述の正極活物質前駆体の製造方法により製造された正極活物質前駆体をリチウム含有原料物質と混合した後、焼成するステップを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、既存のバッチ式(batch type)単一反応器で製造する時よりも粒子の形状および粒子のサイズの制御がより容易であり、粒度が均一な二次電池用正極活物質前駆体を製造することができる。
【0019】
また、本発明のように、3つの反応器を使用する場合、前駆体製造ステップに応じて反応器のサイズを調節することができる。したがって、各製造ステップに応じて反応器のサイズおよび原料物質の投入量を調節することで、前駆体の生産量を著しく増加させることができる。例えば、反応時間が長い粒子成長ステップが行われる反応器として大容量反応器を使用し、遷移金属溶液の投入量を増加させることで、生産性を著しく増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による正極活物質前駆体の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0023】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に相当する粒径として定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般的に、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0024】
正極活物質前駆体の製造方法
本発明者らは、正極活物質前駆体の製造時に、複数のバッチ式反応器を用いて、各反応器のpHおよび温度を特定の条件で制御することで、粒度が均一な正極活物質前駆体粒子を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
具体的には、本発明のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法は、第1反応器に、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくともいずれか一つを含む遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液を投入して反応溶液を形成し、第1pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を生成する第1ステップと、前記第1反応器の反応溶液を第2反応器に移送しながら第2pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を成長させる第2ステップと、前記第2反応器の反応溶液を第3反応器に移送しながら第3pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物粒子を成長させる第3ステップと、前記第3反応器から遷移金属水酸化物粒子を回収する第4ステップと、を含み、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器の反応条件が下記式1および式2を満たすことをその特徴とする。
式1:第1pH>第2pH≧第3pH
式2:4≦反応溶液の温度/反応溶液のpH≦6
【0026】
本発明のように、3つの反応器を用いて、前駆体粒子形成ステップにしたがって反応溶液を移送しながら共沈反応を行う場合、原料投入量を増加させて生産性を向上させることができるだけでなく、各反応器内部のpH条件および/または温度条件を個別に制御することができ、各反応ステップに応じて最適条件で共沈反応を行うことができる。
【0027】
また、本発明者の研究によると、式1のように、前駆体粒子の形成過程でpHが徐々に低くなるように各反応器のpHを調節し、反応溶液の温度と反応溶液のpHの比が式2の特定の条件を満たす場合、前駆体の粒度均一性が著しく増加することが分かった。
【0028】
以下、本発明による正極活物質前駆体の製造方法についてより詳細に説明する。
【0029】
先ず、第1反応器に、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくともいずれか一つを含む遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液を投入して反応溶液を形成し、第1pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核(seed)を生成する(第1ステップ)。
【0030】
前記遷移金属含有溶液は、ニッケル、マンガン、コバルトからなる群から選択された少なくとも一つ以上の遷移金属の陽イオンを含むことができる。
【0031】
例えば、前記遷移金属含有溶液は、50~95モル%のニッケル、2.5~25モル%のコバルトおよび2.5~25モル%のマンガンを含むことができ、好ましくは、60~90モル%のニッケル、5~20モル%のコバルトおよび5~20モル%のマンガンを含むものであり得る。
【0032】
前記遷移金属含有溶液は、前記遷移金属の硫酸塩、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などを含むことができ、水に溶解可能なものであれば、特に限定されない。
【0033】
例えば、前記ニッケル(Ni)は、前記遷移金属含有溶液に、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiSO4またはNiSO4・6H2Oなどとして含まれることができ、これらのうち少なくとも一つ以上が使用されることができる。
【0034】
また、前記コバルト(Co)は、前記遷移金属含有溶液に、Co(OH)2、CoOOHまたはCo(SO4)2・7H2Oなどとして含まれることができ、これらのうち少なくとも一つ以上が使用されることができる。
【0035】
また、前記マンガン(Mn)は、前記遷移金属含有溶液に、Mn2O3、MnO2、およびMn3O4などのマンガン酸化物;MnCO3、MnSO4;オキシ水酸化物などとして含まれることができ、これらのうち少なくとも一つまたは以上が使用されることができる。
【0036】
また、前記遷移金属含有溶液は、ニッケル、マンガンおよびコバルト以外に、他の金属元素(M)をさらに含むことができる。この際、前記Mは、Al、Zr、Ti、W、NbおよびMoからなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0037】
前記遷移金属含有溶液が前記金属(M)をさらに含む場合、前記遷移金属含有溶液の製造時に、前記金属元素(M)含有原料物質が選択的にさらに添加されることもできる。
【0038】
前記金属元素(M)含有原料物質としては、金属元素(M)を含む酢酸塩、硫酸塩、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物からなる群から選択される少なくとも一つ以上が使用されることができる。
【0039】
前記塩基性水溶液は、NaOH、KOH、Ca(OH)2およびNa2CO3からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むことができ、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。この際、前記塩基性水溶液の濃度は、2M~6M、好ましくは3M~5Mであり得る。前記塩基性水溶液の濃度が2M~6Mの場合、均一なサイズの前駆体粒子を形成することができ、前駆体粒子の形成時間が速く、取得率にも優れることができる。
【0040】
前記アンモニウムイオン含有溶液は、NH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4およびNH4CO3からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むことができる。この際、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0041】
一方、前記第1反応器内の反応溶液の温度(単位:℃)と反応溶液のpHは、下記式2の条件を満たすように調節される。
【0042】
式2:4≦反応溶液の温度/反応溶液のpH≦6
【0043】
好ましくは、前記第1反応器において、反応溶液の温度/反応溶液のpHは、4.5~6.0であり得る。
【0044】
反応溶液のpHに対する反応溶液の温度比が前記範囲から逸脱する場合には、共沈反応がスムーズに行われないか、核生成反応よりも成長反応が優勢になり、前駆体粒子の取得率が低下し、粒子径の制御が難しくて、粒度均一性が高い前駆体を得ることができない。
【0045】
具体的には、前記第1反応器内部の反応溶液pH(以下、「第1pH」とする)は、pH11~13、好ましくはpH11.5~pH12.5の範囲であり得る。また、第1反応器の反応溶液温度は、50℃~65℃、好ましくは55℃~65℃であり得る。
【0046】
前記第1pHおよび反応溶液の温度が前記範囲を満たす時に、遷移金属水酸化物核(seed)がスムーズに生成されることができる。第1pHおよび反応溶液の温度が前記範囲から逸脱する場合、共沈反応がスムーズに行われないか、核生成反応よりも成長反応が優勢になり、前駆体粒子の取得率が低下し、粒子径制御が難しくなり得る。
【0047】
具体的には、前記第1反応器に、先ず、塩基性水溶液およびアンモニウムイオン含有溶液を投入して、第1反応器の内部をpH11~pH13、好ましくはpH11.5~pH12.5の範囲になるようにし、以降、反応器内に遷移金属含有溶液を投入しながら粒子の核を形成することができる。この際、前記遷移金属含有溶液の投入によって粒子核が生成されることで第1反応器内のpH値が変化するため、遷移金属含有溶液の投入とともに塩基性水溶液およびアンモニウムイオン含有溶液を連続して投入し、第1pHがpH11~pH13を維持するように制御することができる。
【0048】
前記過程により反応溶液内に前駆体粒子の核が生成されると、前駆体粒子の核を含む反応溶液を第2反応器に移送しながら第2pH条件で共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核を成長させる(第2ステップ)。
【0049】
この際、前記移送は、第1反応器内の前駆体粒子の核が所定のサイズに逹した時に行う。具体的には、前記第1反応器で生成された遷移金属水酸化物核(seed)のうち50%以上の平均粒径(D50)が3.0μm以上になった時に、第1反応器内の反応溶液を第2反応器に移送し始める。遷移金属水酸化物核が小さすぎる状態で第2反応器に反応溶液を移送し始めると、前駆体粒子の核生成量が減少し、生産性が低下し得る。
【0050】
一方、前記第1反応器の反応溶液を第2反応器に移送することは、第1反応器と第2反応器を連結する連結管および連結管の外部に位置するポンプを駆動させて行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0051】
次いで、前記第2反応器の反応溶液のpHを調節して共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核の粒子を成長させる。この際、前記第2反応器の反応溶液のpH(以下、「第2pH」とする)は、第1pHより低く調節され(すなわち、第1pH>第2pH)、前記第2反応器内の反応溶液の温度(単位:℃)と反応溶液のpHは、下記式2の条件を満たすように調節される。
【0052】
式2:4≦反応溶液の温度/反応溶液のpH≦6
【0053】
具体的には、前記第2pHは、pH10~pH12、好ましくはpH10.5~pH12.0、より好ましくはpH11.0~pH12.0の範囲であり得る。
【0054】
また、前記第2反応器内の反応溶液の温度は、第1反応器の反応溶液の温度以下の温度であることが好ましい。例えば、前記第2反応器内の反応溶液の温度は、45℃~60℃、好ましくは50℃~60℃であり得る。
【0055】
第2反応器内の第2pHおよび反応溶液温度が前記範囲を満たす場合、前駆体粒子核生成および粒子核成長反応が適切に発生し、前駆体粒子の取得率および粒度均一性を向上させることができる。また、第2反応器の反応溶液の温度を第1反応器の反応溶液の温度以下に制御することで、遷移金属水酸化物核を所望のサイズまで成長させることができる。一方、前記第1反応器から移送される反応溶液とは別に、第2反応器に遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液をさらに投入することができる。この際、第2反応器に投入される遷移金属含有溶液、塩基性水溶液およびアンモニウムイオン含有溶液の投入量を調節することで、第2反応器内の反応溶液のpHを第2pH範囲に調節することができる。
【0056】
前記のような過程により第2反応器で遷移金属水酸化物核が所定のサイズまで成長すると、第2反応器の反応溶液を第3反応器に移送し、共沈反応を行って、遷移金属水酸化物粒子を成長させる(第3ステップ)。
【0057】
この際、前記移送は、第2反応器内の前駆体粒子の核が所定のサイズに成長した時に行う。具体的には、前記第2反応器で生成された遷移金属水酸化物核の平均粒径(D50)が3.5μm~8μmになると、第2反応器内の反応溶液を第3反応器に移送し始める。遷移金属水酸化物核が小さすぎる状態で反応溶液を移送すると、目的とする粒径を有する前駆体粒子を得ることが難しい。
【0058】
一方、前記第2反応器の反応溶液を第3反応器に移送することは、第2反応器と第3反応器を連結する連結管および連結管の外部に位置するポンプを駆動させて行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
次いで、前記第3反応器の反応溶液のpH(以下、「第3pH」とする)を調節して共沈反応を行って、遷移金属水酸化物核の粒子を成長させる。
【0060】
この際、前記第3pHは、前記第2pH以下に調節され(すなわち、第2pH≧第3pH)、第3反応器内の反応溶液の温度(単位:℃)と反応溶液のpHは、下記式2の条件を満たす。
【0061】
式2:4≦反応溶液の温度/反応溶液のpH≦6
【0062】
具体的には、第3pHは、pH10.5~pH11.5、好ましくはpH10.5~pH12.0、より好ましくはpH11.0~pH12.0の範囲であり得る。また、前記第3反応器内の反応溶液の温度は、第2反応器の反応溶液の温度以下の温度であることが好ましい。例えば、前記第3反応器内の反応溶液の温度は、45℃~60℃、好ましくは50℃~60℃であり得る。第3反応器内の第3pHおよび反応溶液温度が前記範囲を満たす場合、所望のサイズまで前駆体粒子を成長させることができ、粒度均一性に優れた前駆体粒子を得ることができる。
【0063】
一方、前記第2反応器から移送される反応溶液とは別に、第3反応器に遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液および塩基性水溶液をさらに投入することができる。この際、第3反応器に投入される遷移金属含有溶液、塩基性水溶液およびアンモニウムイオン含有溶液の投入量を調節することで、第3反応器内の反応溶液のpHを第3pH範囲に調節することができる。
【0064】
前記のような過程により、第3反応器で遷移金属水酸化物粒子が所定のサイズまで成長すると、第3反応器から遷移金属水酸化物粒子を回収する(第4ステップ)。
【0065】
前記遷移金属水酸化物粒子の回収は、反応溶液の撹拌を停止し静置することで生成物を沈殿させ、上澄み液を外部に排出させることで、沈殿された遷移金属水酸化物粒子を回収するか、またはフィルタを用いて、反応が完了した反応溶液を前記第3反応器の外部に排出する方法で行われることができる。
【0066】
前記第3反応器で回収された正極活物質前駆体の平均粒径(D50)は、8μm~20μm、好ましくは9μm~16μmであり、粒度分布(D90-D10)/D50が0.2~0.6、好ましくは0.3~0.5であり得る。
【0067】
一方、本発明によると、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器の反応溶液の撹拌速度が互いに異なり得る。例えば、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器の反応溶液の撹拌速度が、下記式4を満たし得る。
【0068】
式4:第1反応器の撹拌速度≧第2反応器の撹拌速度>第3反応器の撹拌速度
【0069】
前記式4のように、第1反応器の撹拌速度が最も速く、以降のステップで撹拌速度を遅く調節する場合、粒子形状の制御および粒子成長速度の制御を極大化することができ、これにより、粒度分布が均一な前駆体粒子を得ることができる。具体的には、前記第1反応器での反応溶液の撹拌速度は、約600~1,600rpmであり、前記第2反応器での反応溶液の撹拌速度は、約500~1,400rpmであり、前記第3反応器での反応溶液の撹拌速度は、約400~1,000rpmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0070】
また、本発明によると、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器に投入される反応溶液のうち遷移金属含有溶液の投入量が各反応器別に相違し得る。例えば、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量は、下記式5を満たし得る。
【0071】
式5:第1反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量≦第2反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量<第3反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量
【0072】
前記式5に示されているように、遷移金属含有溶液の投入量を調節する場合、遷移金属水酸化物粒子の成長を促進し、全反応時間を短縮する効果を得ることができる。
【0073】
例えば、前記第1反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量:第2反応器に投入される遷移金属含有溶液の投入量:第3反応器に投入される遷移金属水溶液の投入量は、80~160:160~300:320~800の重量比であり得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
一方、本発明によると、前記第1反応器、第2反応器および第3反応器は、それぞれそのサイズが相違し得る。例えば、前記第3反応器のサイズが最も大きく、前記第1反応器のサイズが最も小さくてもよい。反応時間が長い粒子成長ステップが行われる第3反応器として容量が大きい反応器を使用する場合、遷移金属含有溶液の投入量を増加させることができ、粒子成長反応時間を短縮することができ、前駆体の生産量も増加させることができる。
【0075】
正極活物質の製造方法
一方、本発明は、上述のように製造された正極活物質前駆体をリチウム含有原料物質と混合した後、焼成するステップを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0076】
前記リチウム含有原料物質としては、例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)または水酸化リチウム(LiOH)などを使用することができ、前記正極活物質前駆体およびリチウム含有原料物質は、遷移金属:Liのモル比が1:1.0~1:1.10になるように混合することができる。リチウム含有原料物質が前記範囲未満で混合される場合、製造される正極活物質の容量が低下する恐れがあり、リチウム含有原料物質が前記範囲を超えて混合される場合、焼成過程で粒子が焼結してしまい、正極活物質の製造が難しくなり得、容量低下および焼成後の正極活物質粒子の分離(正極活物質の含浸現象誘発)が発生し得る。
【0077】
前記焼成は、750℃~950℃の温度で行うことができる。焼成温度が750℃未満の場合、不十分な反応によって粒子内に原料物質が残留し、電池の高温安定性を低下させる可能性があり、体積密度および結晶性が低下して構造的安定性が低下し得る。一方、焼成温度が950℃を超える場合、粒子の不均一な成長が発生し得、粒子径が過剰に大きくなって単位面積当たり含まれ得る粒子量が減少するため、電池の体積容量が低下し得る。一方、製造される正極活物質の粒子径の制御、容量、安定性およびリチウム含有副生成物の減少を考慮すると、前記焼成温度は、より好ましくは800℃~900℃であり得る。
【0078】
前記焼成は、12~30時間行われることができる。焼成時間が12時間未満の場合、反応時間が短すぎて、高結晶性の正極活物質が得られ難い可能性があり、30時間を超える場合、粒子のサイズが過剰に大きくなり得、生産効率が低下し得る。
【0079】
正極
また、本発明は、上述の方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0080】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、上記の正極活物質を含む正極活物質層と、を含む。
【0081】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~50μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で使用されることができる。
【0082】
前記正極活物質層は、正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0083】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して、80~99重量%、より具体的には90~98重量%の含量で含まれることができる。上述の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0084】
この際、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1~10重量%含まれることができる。
【0085】
前記バインダーは、正極活物質粒子の間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1~10重量%含まれることができる。
【0086】
前記正極は、上記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上記の正極活物質、および、選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集全体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造することができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0087】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0088】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0089】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0090】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータおよび電解質と、を含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0091】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータを含む電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器をシールするシール部材を選択的にさらに含むことができる。
【0092】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層と、を含む。
【0093】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0094】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的にバインダーおよび導電材を含む。
【0095】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質の材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質の材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0096】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量100重量部に対して、90重量部~99重量部含まれることができる。
【0097】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量100に対して、0.1重量部~10重量部添加される。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0098】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量100に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下で添加されることができる。かかる導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0099】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し、乾燥することで製造されるか、または、前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0100】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し、乾燥するか、または、前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0101】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタルレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0102】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0103】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0104】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、優れた電解液の性能を示すことができる。
【0105】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されることができる。前記リチウム塩は、0.1~2.0Mの濃度範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0106】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の全重量100に対して0.1~5重量部含まれることができる。
【0107】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定的に示すことから、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0108】
したがって、本発明の他の一具現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0109】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0110】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであり得る。
【0111】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されることができるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好適に使用されることができる。
【0112】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0113】
実施例1
容量が5Lである第1反応器、前記第1反応器と連結された第2反応器および前記第2反応器と連結された第3反応器を準備し、それぞれの反応器内の雰囲気は以下に記載されたように調整した。
【0114】
先ず、60℃に設定され、容量が5Lであるバッチ式第1反応器に脱イオン水1.5Lを入れた後、窒素ガスを4L/分の速度でパージして水中の溶存酸素を除去し、第1反応器内を非酸化雰囲気に調整し、15重量%濃度のNH4OH水溶液25~40mLを前記第1反応器に投入し、第1反応器内のpHをpH12.2になるように20重量%濃度のNaOH水溶液を投入した。
【0115】
一方、ニッケル:コバルト:マンガンのモル比が7:1:2になるようにする量で蒸留水の中で混合し、2.2M濃度の遷移金属含有溶液を準備した。
【0116】
次いで、第1反応器に前記で準備した遷移金属含有溶液を200mL/hrの速度で投入しながら、15重量%濃度のNH4OH水溶液を25mL/hrの速度で投入した。また、第1反応器に20重量%濃度のNaOH水溶液を投入して、第1反応器の反応溶液のpHを12になるように調整した。その後、前記反応溶液を1,600rpmの撹拌速度で撹拌しながら反応を行って、遷移金属水酸化物核を生成した。
【0117】
所定の時間間隔で前記第1反応器内の反応溶液をサンプリングし、反応溶液中の遷移金属水酸化物粒子(核)の平均粒径を確認し、遷移金属水酸化物粒子(核)のうち50%以上の平均粒径(D50)が3.0μmに逹した時に、前記第1反応器内の反応溶液を、55℃~60℃に設定され、容量が10Lであるバッチ式第2反応器に1L/分の速度で移送した。
【0118】
第1反応器と同じ雰囲気を維持するために、第2反応器に窒素ガスを8L/分の速度でパージして水中の溶存酸素を除去し、第2反応器内を非酸化雰囲気に調整した。次いで、第2反応器に遷移金属含有溶液を500mL/hrの速度で投入しながら、15重量%濃度のNH4OH水溶液を44~55mL/hrの速度で投入した。また、第2反応器に20重量%濃度のNaOH水溶液を投入して、第2反応器内の反応溶液のpHがpH11.4~12.0になるように調整した。
【0119】
前記第2反応器の反応溶液を1,000~1,200rpmの撹拌速度で撹拌しながら反応を行って、前駆体粒子核を成長させた。第2反応器内の場合、粒子の形状を調節するために、時間の経過に伴いpHが徐々に低くなるように設定した。
【0120】
所定の時間間隔で前記第2反応器内の反応溶液をサンプリングし、反応溶液中の遷移金属水酸化物粒子(核)の平均粒径を確認し、遷移金属水酸化物粒子の平均粒径が7μmになった時に、前記第2反応器の反応溶液を、50~55℃に設定され、容量が40Lであるバッチ式第3反応器に1.5L/分の速度で移送した。前記第2反応器と前記第3反応器を同じ雰囲気に維持するために、前記第3反応器に16L/分の速度で窒素ガスパージして水中の溶存酸素を除去し、前記第3反応器内を非酸化雰囲気に調整した。
【0121】
次いで、遷移金属含有溶液を1,000~1,500mL/hrの速度で前記第3反応器に投入しながら、15重量%濃度のNH4OH水溶液を80~140mL/hrの速度で投入した。また、第3反応器に20重量%濃度のNaOH水溶液を投入して、第3反応器内の反応溶液のpHが10.8~11.4になるように調整した。
【0122】
その後、前記第3反応器の反応溶液を600~800rpmで撹拌しながら反応を行って、遷移金属水酸化物粒子を成長させた。
【0123】
所定の時間間隔で前記第3反応器内の反応溶液をサンプリングし、反応溶液中の遷移金属水酸化物粒子の平均粒径を確認し、遷移金属水酸化物粒子の平均粒径が9.5μmに逹した時に、反応を終了し、遷移金属水酸化物粒子を回収して、正極活物質前駆体粒子を取得した。
【0124】
実施例2
第3反応器で遷移金属含有溶液を1,500~2,000mL/hrの速度で投入し、15重量%濃度のNH4OH水溶液を140~180mL/hrの速度で投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0125】
実施例3
第1反応器、第2反応器および第3反応器に投入されるNaOH水溶液の量を調節して、第1反応器内のpHを11.8、第2反応器内のpHを11.0~11.6、第3反応器内のpHを10.4~11.0になるように調整した以外は、前記実施例1と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0126】
比較例1
反応溶液を移送せず、容量が40Lである1個のバッチ式反応器で遷移金属水酸化物の核生成、遷移金属水酸化物の核成長および遷移金属水酸化物の粒子成長をすべて実施した以外は、前記実施例1と同じ条件で正極活物質前駆体を製造した。
【0127】
比較例2
第1反応器、第2反応器および第3反応器の温度を45℃に設定した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0128】
比較例3
第2反応器の温度を65℃に設定し、pHを10.8に調節した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0129】
比較例4
第3反応器のpHを11.8に調節した以外は、実施例3と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0130】
比較例5
第1反応器のpHを11.4に調節した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質前駆体を製造した。
【0131】
【0132】
実験例1:粒度分布の確認
前記実施例1~3および比較例1~5で製造した正極活物質前駆体粒子の粒度分布を確認するために、粒度分布測定装置(Microtrac S3500、Microtrac社製)を用いて、実施例1~3および比較例1~5で生成した正極活物質前駆体の粒度を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0133】
【0134】
前記表2に示されているように、本発明実施例1~3で製造した正極活物質前駆体粒子の場合、比較例1~5に比べて粒度均一性に優れることを確認することができた。
【0135】
実験例2:正極活物質前駆体の取得率の確認
前記実施例1~3および比較例1~5で製造した正極活物質前駆体の生産性を比較するために、同一時間の間に実施例1~3および比較例1~5で製造された前駆体の含量を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0136】
【0137】
前記表3に示されているように、実施例2で製造した正極活物質前駆体粒子は、比較例1で製造した正極活物質前駆体粒子に比べて、同一時間の間に生成された前駆体の含量が多いことを確認することができた。また、実施例1および3で製造した正極活物質前駆体粒子は、比較例1および4と類似する生産量を取得しているが、前記表2のように、比較例1および4に比べて粒度分布が均一な前駆体を取得することを確認することができた。比較例2、3および5の場合、比較例1に比べて生産量が多少減少した。