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特許7384577位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20231114BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20231114BHJP
   G01P 15/02 20130101ALI20231114BHJP
【FI】
G01P15/00 D
G01D5/12 K
G01P15/02 C
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019106954
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2019215340
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10 2018 209 136.6
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・ヨアヒムスタラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ソイアー
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表昭62-501234(JP,A)
【文献】特開昭56-103326(JP,A)
【文献】特開2017-54330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
B23Q17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定装置であって、
測定用目盛(40)を有する目盛キャリア(30)と、
測定用目盛(40)を走査することによって位置信号(PS)を生成するための走査装置(50)と、
位置信号(PS)をデジタル位置値(POS)として処理するための処理ユニット(60)と、
後続電子機器(80)と通信するためのインタフェースユニット(70)と
を含み、
アナログまたはデジタル式の測定値(MA、M)を生成する少なくとも1つの衝突センサ(100)が位置測定装置(5)に割り当てられており、これらのアナログまたはデジタル式の測定値(MA、M)の時間波形から衝突発生が確定可能であり、測定値(MA、M)が評価ユニット(110,210,310)に供給され、該評価ユニットで測定値(MA、M)の時間波形を評価することによって制御ユニット(150)で衝突発生が確定可能であり、
前記評価ユニット(210,310)に、測定値(MA、M)が供給されるフィルタユニット(130)がさらに設けられており、前記フィルタユニット(130)が帯域遮断フィルタとして構成されており、フィルタ処理したい少なくとも1つの周波数帯域が調整可能である、位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測定装置において、
前記測定値(MA,M)の時間波形の評価を走査周期信号(TA)の時間枠内で行う位置測定装置。
【請求項3】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記衝突センサ(100)がアナログ式のセンサであり、前記評価ユニット(110、210)に、アナログ式の前記測定値(MA)からデジタル式の前記測定値(M)を形成するA/D変換器(120)が設けられており、前記制御ユニット(150)から前記A/D変換器(120)に供給される前記走査周期信号(TA)によって前記デジタル式の測定値(M)の形成が制御される位置測定装置。
【請求項4】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記衝突センサ(100)がデジタル式のセンサであり、前記評価ユニット(310)に、前記評価ユニット(310)に前記衝突センサ(100)のデジタル式の測定値(M)を供給するセンサインターフェース(160)が設けられている位置測定装置。
【請求項5】
請求項から4までのいずれか1項に記載の位置測定装置において、
前記評価ユニット(110,210,310)に、リングメモリとして作動するメモリユニット(140)がさらに設けられており、該メモリユニット(140)に前記デジタル式の測定値(M)が供給され、前記メモリユニット(140)に複数のデジタル式の測定値(M)を記憶することができ、前記走査周期信号(TA)の時間枠内に前記デジタル式の測定値(M)が前記メモリユニット(140)に連続モードで順次に記憶可能である位置測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の位置測定装置において、
衝突発生が確定した後に、第2の期間(T2)にメモリユニット(140)にデジタル式の測定値(M)を記憶し続け、衝突時点(K)の前の第1の期間(T1)および衝突時点(K)の後の第2の期間(T2)を含む、衝突発生の信号波形がメモリユニット(140)に記憶可能である位置測定装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の位置測定装置において、
前記フィルタユニット(130)がノッチフィルタである、位置測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の位置測定装置において、
前記位置測定装置(5)が角度測定装置であり、前記処理ユニット(60)が、前記フィルタユニット(130)に供給される回転速度(N)を決定し、フィルタ処理したい前記フィルタユニット(130)の少なくとも1つの周波数帯域が前記回転速度(N)の関数として設定可能である位置測定装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の位置測定装置において、
少なくとも1つの衝突センサ(100)が加速度センサまたは個体伝搬音センサである位置測定装置。
【請求項10】
位置測定装置を作動する方法であって、位置測定装置が、
測定用目盛(40)を有する目盛キャリア(30)、
測定用目盛(40)を走査することによって位置信号(PS)を生成するための走査装置(50)、
位置信号(PS)をデジタル位置値(POS)として処理するための処理ユニット(60)、および
後続電子機器(80)と通信するためのインタフェースユニット(70)を含む、位置測定装置を作動する方法において、
アナログまたはデジタル式の測定値(MA,M)を生成する少なくとも1つの衝突センサ(100)を位置測定装置(5)に割り当て、アナログ式またはデジタル式の前記測定値(MA,M)の時間波形から衝突発生を確定し、測定値(MA,M)を評価ユニット(110,210,310)に供給し、該評価ユニットで前記測定値(MA,M)の時間波形を評価することによって制御ユニット(150)で衝突発生を確定する各工程を備え、
前記評価ユニット(210、310)に、測定値(MA、M)が供給されるフィルタユニット(130)をさらに設け、前記フィルタユニット(130)を帯域遮断フィルタとして構成し、フィルタ処理したい少なくとも1つの周波数帯域が調整可能である、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
走査周期信号(TA)の時間枠内で前記測定値(MA,M)の時間波形を評価する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記衝突センサ(100)がアナログ式のセンサであり、アナログ式の測定値(MA)からデジタル式の測定値(M)を形成するためのA/D変換器(120)を前記評価ユニット(110、210)内に設け、前記制御ユニット(150)から前記A/D変換器(120)に供給される前記走査周期信号(TA)によって前記デジタル式の測定値(M)の形成を制御する方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、
前記衝突センサ(100)がデジタル式のセンサであり、前記評価ユニット(310)にセンサインタフェース(160)を設け、該センサインタフェース(160)を介して、前記評価ユニット(310)の前記衝突センサ(100)のデジタル式の測定値(M)を供給する方法。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法において、
前記評価ユニット(110,210,310)に、前記デジタル式の測定値(M)が供給されるリングメモリとして作動するメモリユニット(140)をさらに設け、該メモリユニット(140)に前記デジタル式の測定値(M)を供給し、前記メモリユニット(140)に複数のデジタル式の測定値(M)を記憶し、前記走査周期信号(TA)の時間枠内に前記デジタル式の測定値(M)を前記メモリユニット(140)に連続モードで順次に記憶する方法。
【請求項15】
請求項10から14までのいずれか1項に記載の方法において、
衝突発生が確定した後に、第2の期間(T2)にデジタル式の測定値(M)をメモリユニット(140)に記憶し続け、衝突時点(K)の前の第1の期間(T1)および衝突時点(K)の後の前記第2の期間(T2)を含む、衝突発生の信号波形をメモリユニット(140)に記憶する方法。
【請求項16】
請求項10から15までのいずれか1項に記載の方法において、
前記フィルタユニット(130)がノッチフィルタである、方法。
【請求項17】
請求項10から16までのいずれか1項に記載の方法において、
前記位置測定装置(5)が角度測定装置であり、前記処理ユニット(60)が、前記フィルタユニット(130)に供給される回転速度(N)を決定し、フィルタ処理したい少なくとも1つの周波数帯域を前記速度(N)の関数として設定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の位置測定装置および請求項10に記載の位置測定装置を作動する方法に関する。特に、本発明は、位置測定装置における衝突発生の確定に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化技術における多くのプロセスは、電気モータによって制御される機械部品の移動に基づいている。この場合、機械部品の位置は位置測定装置によって決定される。ロータリエンコーダまたは角度測定装置は、例えば回転シャフトの回転運動を測定する。これに対して、リニアエンコーダは互いに対して移動可能に配置された機械部品の線形の変位を測定する。
【0003】
特に、幾つかの運動軸における運動が可能である、例えば工作機械または生産ロボットなどの複雑なシステムの場合には衝突の危険性がある。衝突は、可動部が予定外の障害物に衝突した場合に起こる。工作機械の場合の一般的な例は、工作機械を配置した工具スピンドルが、位置決めプロセスで、加工したいワークピースまたはクランプ手段に衝突する場合である。ワークピースまたはクランプ手段が、加工プログラムにしたがって位置していなければならない位置に位置していないこと、または加工プログラムのプログラミング時に、誤った運動経路が衝突をもたらすことが原因となる場合もある。生産ロボットの場合も同様であり、例えば、ロボットアームの誤った動き、または移動経路内に位置している、加工しようとする部品(または他の障害物)が衝突の引き金となることもある。
【0004】
衝突時には、衝突に関与する構成要素を損傷するかもしれない大きい加速度が生じる。機械または障害物への直接的な損傷に加えて、当初は気づかれない機械の損傷が、ある程度の時間の後にはじめて機械の故障につながることもある。しかしながら、もはや故障と衝突との間の関連性を証明することはできない。このような理由で、損傷が発生した場合にエラーの原因または起因を特定することができるように、衝突を検出し、記録することが試みられる。同様に、衝突の検出は機械の予防的な保守を可能にし、これにより後の故障が防止される。
【0005】
したがって、国際公開第03/023528A2号パンフレットは、センサデータを評価することによって衝突を検出し、次いで、持続的に記憶するためにセンサデータを機械制御装置に送信する別個の監視装置を設けることを提案している。追加の機器に加えて、この解決策は、追加のケーブル配線コストおよび機械制御装置への適切なインタフェースも必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第03/023528A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、衝突発生を確定するための簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の位置測定装置によって解決される。
【0009】
位置測定装置であって、
測定用目盛を有する目盛キャリアと、
測定用目盛を走査することによって位置信号を生成するための走査装置と、
位置信号をデジタル位置値として処理するための処理ユニットと、
後続電子機器と通信するためのインタフェースユニットと
を含み、
アナログ式またはデジタル式の測定値を生成する少なくとも1つの衝突センサが位置測定装置に割り当てられており、これらのアナログ式またはデジタル式の測定値の時間波形から衝突発生が確定可能であり、測定値が評価ユニットに供給され、評価ユニットで測定値の時間波形を評価することによって制御ユニットで衝突発生が確定可能である位置測定装置が提案される。
【0010】
本発明による位置測定装置の有利な実施形態が、請求項1に従属する請求項から明らかである。
【0011】
本発明の別の課題は、衝突発生を確定するための簡略化された方法を示すことである。
【0012】
この課題は、請求項10に記載の位置測定装置を作動する方法によって達成される。
【0013】
位置測定装置を作動する方法であって、
測定用目盛を有する目盛キャリア、
測定用目盛を走査することによって位置信号を生成するための走査装置、
位置信号をデジタル位置値として処理するための処理ユニット、および
後続電子機器と通信するためのインタフェースユニットを含み、
アナログまたはデジタル式の測定値を生成する少なくとも1つの衝突センサが位置測定装置に割り当てられており、これらのアナログまたはデジタル式の測定値の時間波形から衝突発生を確定することができ、測定値が評価ユニットに供給され、評価ユニットで測定値の時間波形を評価することによって制御ユニットで衝突発生が確定される。
【0014】
本発明による方法の有利な実施形態が、請求項10に従属する請求項から明らかである。
【0015】
さらなる利点が、以下の実施形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】工作機械のモータスピンドルを示す概略図である。
図2】本発明による位置測定装置のブロック図である。
図3】衝突発生の加速度波形を示す時間線図である。
図4】評価ユニットの第1の実施形態を示す図である。
図5】評価ユニットの別の実施形態を示す図である。
図6】評価ユニットの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、工作機械のモータスピンドル10を簡略的に示している。中央の構成要素は、シャフト2を有するスピンドルモータ1である。シャフト2の一端には、工具4(例えば、フライス加工工具)を収容するための工具収容部3が設けられている。角度測定装置(ロータリエンコーダ)として構成された位置測定装置5が同様に機械的にシャフト2に結合されている。結合は、位置測定装置5の回転可能なシャフトをシャフト2に結合する機械的結合部(図示せず)を介して行われる。このようにして、位置測定装置5によってシャフト2の角度位置および/または回転数を測定することができる。
【0018】
ワークピース6の加工時にシャフト2は回転速度Nで回転し、工具4は、モータスピンドル10を幾つかの駆動軸線X,Y,Zにおいて移動させることによってワークピース6と接触させられる。したがって、例えば、フライス加工時にワークピース6から所望の外形がフライス加工される。図示の線形の駆動軸線X,Y,Zに加えて、2つまでの旋回軸線を設けることもでき、したがって、5つの運動軸線におけるモータスピンドル10(したがって工具4)の運動が可能である。それぞれの駆動軸線の位置を確定するために、さらなる位置測定装置が設けられている。図1には、移動方向である駆動軸線Xにおける位置を決定するための位置測定装置5’が例示されている。位置測定装置5’は、ここでは、例えば線形の駆動軸線X,Y,Zの位置を決定するために、好ましくは、長さ測定装置として構成されている。これに対して、角度測定装置は、好ましくは、旋回軸線の位置を決定するために使用される。
【0019】
特に、工具4を加工の初期位置に位置決めする場合には衝突の危険性がある。このことは、位置決め時にはワークピース6の加工時間を最小にするために高い移動速度で作業が行われる、特に重要である。工具4またはモータスピンドル10の外側輪郭の任意の点とワークピース6、またはワークピース6を工作機械の機械テーブルに固定するために用いるクランプ手段(図示しない)との間で衝突が起こる場合がある。
【0020】
位置測定装置5,5と可動機械構成要素との機械的結合(例えば、シャフト2と位置測定装置5との間)により、衝突発生が位置測定装置5,5’にも伝動する。
【0021】
図2は、本発明による位置測定装置5のブロック図を示す。位置測定装置5は、測定用目盛40を有する目盛キャリア30、走査装置50、処理ユニット60、およびインタフェースユニット70を含む。
【0022】
目盛キャリア30は、環状に、または円形ディスクとして構成されており、回転中心Dを中心として位置測定装置5を作動させるために回転可能に支承され、シャフト2に回転不能に結合されており、シャフト2の角度位置、および必要に応じて回転数が位置測定装置5によって測定される。測定用目盛40は、回転中心Dを中心として半径方向に配置されており、少なくとも1つの目盛トラックを有し、目盛トラックの走査によって位置決定(角度決定)が可能になる。
【0023】
走査装置50は目盛キャリア30に対して定置で配置されており、目盛キャリア30上の測定用目盛40を走査し、目盛キャリア30の回転角度の関数として、位置に依存した(角度に依存した)位置信号PSを生成するように適切に構成されている。位置信号PSは、アナログまたはデジタル式に符号化された信号を含むことができる。
【0024】
本発明は、物理的な走査原理に限定されていない。したがって、既知の誘導式、光電式、磁気式、または容量式の走査原理を使用することができる。
【0025】
位置信号PSは処理ユニット60に供給され、処理ユニット60は位置信号PSを位置値POSとして処理し、インタフェースユニット70に出力する。この処理についてはここではさらに説明しないが、信号補正、復調、デジタル化などの処理ステップを実施することができる。
【0026】
位置値POSに加えて、処理ユニット60では位置信号PSから回転速度N(角速度)、加速度または衝撃などのさらに他の移動値を導くことも可能である。これらの移動値は、インタフェースユニット70を介して供給してもよく、または、図5および図6に基づいて後に示すように、位置測定装置5の内部で使用するために用いてもよい。
【0027】
インタフェースユニット70は、データ伝送チャネル90を介して後続電子機器80と通信する役割を果たす。インタフェースユニット70は、シリアルインタフェースとして構成されていてもよい。すなわち、データ伝送チャネル90を介したデータ伝送は、シリアル・データストリームまたはデータパケットの形式で行われる。有利には、インタフェースユニット70は双方向性に構成されており、データD、特に位置値POS、および必要に応じてさらなる移動値を後続電子機器80に送信することができ、データD、特にパラメータPARを後続電子機器80から受信することができる。
【0028】
本発明によれば、少なくとも1つの衝突センサ100と、少なくとも1つの衝突センサ100の測定値に基づいて衝突発生を確定するための評価ユニット110とが、位置測定装置5に割り当てられている。
【0029】
衝突は常に自然発生的な変化、特に移動速度の減少(負の加速度)をもたらすので、加速度を測定することができる加速度センサまたは個体伝搬音センサ、すなわち衝突センサ100が、衝突発生を確定するためには、特に適している。
【0030】
駆動軸線X,Y,Zすなわちそれぞれの空間方向に対して衝突センサ100が設けられている場合には、個々のセンサの測定値から衝突の衝突角度を推定することが可能なので、特に有利な構成が得られる。
【0031】
衝突センサ100は、破線で示すように、位置測定装置5の外側の、有利には、衝突センサ100がシャフト2に機械的に堅固に結合される点、例えばスピンドルモータ1の回転軸受に配置することができる。この場合、衝突センサ100の電気的接続は、位置測定装置5のケーシングに設けられた適切な接続ユニット105を介して、差込み、ねじ込み、クランプ、またははんだ付け結合部によって行うことができる。
【0032】
位置測定装置5とシャフト2との機械的結合により、衝突発生が常に位置測定装置5にも直接に影響を及ぼすという事実により、位置測定装置5のケーシング内に衝突センサ100を配置することが特に有利であると考えられる。これにより、衝突センサ100を位置測定装置5に接続し、スピンドルモータ1のシャフト2(またはモータスピンドル10の他の適切な機械的構成要素)に結合するための衝突センサ100の取り付けが不要になる。位置測定装置5のケーシング内には、衝突センサ100が、例えば、他の電子的および電気機械的な構成要素と共にプリント回路基板上に配置されていてもよい。同様に、衝突センサ100を、シャフト2との機械的に特に堅固な連結部、例えば回転軸受または連結部を有する機械的な構成要素に配置することも可能である。
【0033】
評価ユニット110は、このために、少なくとも1つの衝突センサ100の測定値を検出し、衝突発生の少なくとも1つの特性の発生に関連して評価する役割を果たす。衝突発生のパラメータは、例えば、
加速度の自然発生的な発生または加速度の限界値を超えること、または
加速度の自然発生的な変化、または加速度の変化の限界値を超えることである。
【0034】
代替的には、長さ測定装置(図1の位置測定装置5’)を本発明にしたがって構成することもできる。角度測定装置(ロータリエンコーダ)と比較して、長さ測定装置の場合には、目盛キャリアは、測定用目盛を配置したまっすぐな測定器である。位置測定のために、走査ヘッドは、測定器または測定用目盛に沿って線形に案内され、走査装置50、処理ユニット60、インタフェースユニット70、少なくとも1つの衝突センサ100、および評価ユニット110は、走査ヘッドのハウジング内に配置してもよい。
【0035】
図3は、例として、衝突発生の時間波形を示す。この場合、第1の期間T1には衝突前の信号波形が示され、第2の期間T2には衝突後の信号波形が示されている。
【0036】
衝突は衝突時点Kで起こり、評価ユニット110によって検出される。検出は、衝突発生のパラメータが生じたかどうか、および/または衝突発生のパラメータを超えたかどうかについて、例えば最大加速度Aを過えたかどうかについて行われる。衝突の実際の時点(すなわち、最初の機械的な接触の時点)と衝突発生の検出時点とが極めて短時間に続くので、これらの時点は、以下では区別せず、単に「衝突時点K」と呼ぶ。
【0037】
衝突前の第1の期間T1には、信号は加速度(信号ノイズ)の統計的変化のみを示す。衝突は加速度を自然発生的に増大させ、加速度は衝突時点Kで最大加速度Aを超え、衝突発生が評価ユニット110によって検出される。
【0038】
第2の期間T2には、衝突によって生じた振動は、第2の期間T2の終わり頃に信号が衝突前の特性を再び示すまで、再び減衰する。
【0039】
図4は、このために評価ユニット110の第1の実施形態を示す。評価ユニット110は、アナログ式の衝突センサ100の測定値を処理し、評価するために適している。
【0040】
衝突センサ100のアナログ測定値MAは、アナログ測定値MAをデジタル化するA/D変換器120に供給される。得られたデジタル式の測定値Mは、一方ではメモリユニット140に、他方では制御ユニット150に供給される。
【0041】
制御ユニット150は、評価ユニット110における実質的なプロセスを制御する。したがって、制御ユニット150はアナログ測定値MAをデジタル化する走査率を確定する走査周期信号TAをA/Dを変換器120に供給する。同様に制御ユニット150はメモリユニット140におけるデジタル式の測定値Mの記憶を制御する。さらに制御ユニット150は衝突発生を検出するように適切に構成されている。
【0042】
評価ユニット110の連続モードでは、衝突センサ100のアナログ測定値MAは、走査周期信号TAの時間枠内に連続的にデジタル化され、メモリユニット140に順次に記憶される。これにより、メモリユニット140では、衝突センサ100が出力した信号波形のデジタル式の再現が得られる。記憶は、メモリユニット140のRAMメモリ領域142内で行われる。記憶容量は、少なくとも衝突発生の信号波形を記憶できるように選択される。この場合、RAMメモリ領域142はリングメモリとして作動し、このことは、衝突発生の信号波形のために設けられたRAMメモリ領域142の最後のメモリセルに到達し、最初のメモリセルに戻った場合に、それぞれ最も古い測定値が上書きされることを意味する。
【0043】
連続モードは、機械のスイッチオン(したがって、位置測定装置5または5’のスイッチオン)によって開始することができる。しかしながら、有利には、連続的な作動の開始または停止は、後続電子機器80から位置測定装置5および5’に送信されるコマンドを介して行われる。
【0044】
制御ユニット150は、衝突発生の少なくとも1つのパラメータ値に関して、到着するデジタル式の測定値Mを評価し、このデジタル式の測定値Mの関数としてメモリユニット140内のデジタル式の測定値Mの記憶を制御する。評価は、同様に走査周期信号TAの時間枠内に行う。この場合、到着する測定値Mが限界値を超えるかどうかが点検される。この場合、走査周期信号TAの周波数は、衝突発生を確実に検出できるように選択される。例えば、通常モードで発生する最高速度、加速度、衝突の可能性のある機械構成要素の重量および重量分布などの機械パラメータを考慮することができる。
【0045】
代替的には、衝突センサ100のアナログ測定値MAを衝突発生に関する評価のために制御ユニット150に供給してもよい。この場合、限界値を超えたかどうかについての点検は、比較器によってアナログ測定値MAと限界値とを比較することによって行うことができる。
【0046】
必要に応じて、大きさの異なる衝突発生を区別することができるように、幾つかの限界値を設けてもよい。
【0047】
制御ユニット150が衝突時点Kにおいて衝突発生を確定した場合には、制御ユニット150は第2の期間T2にわたってデジタル式の測定値Mを記憶し続け、次いで記録を停止する。衝突発生の信号波形のために設けられたRAMメモリ領域142は、衝突前の第1の期間T1と衝突後の第2の期間T2とを含むように寸法決めされている。さらに制御ユニット150は、検出された衝突発生をインタフェースユニット70およびデータ伝送チャネル90を介して後続電子機器80に知らせるためのエラーメッセージERRを生成する。エラーメッセージERRの伝送は、連続モードで位置値POSを伝送する役割を果たすデータフレームに含まれている少なくとも1つの状態ビットの形で行うことができる。しかしながら、このために別個のラインが設けられていてもよい。後続電子機器80への衝突発生の知らせを衝突発生が確定された直後に行うことが重要であり、記憶された付属の信号波形のデータDの伝送は、後の随意の時点で開始することができる。このようにして、後続電子機器80は、発生した衝突に直ちに対応することができるが、しかしながら、衝突の分析を後の時点に延期することができる。
【0048】
衝突発生をさらにより包括的に分析するために、少なくとも1つの衝突センサ100のデジタル式の測定値Mの信号波形に加えて、利用可能な測定値のさらなる信号波形を記憶することが有利である。したがって、メモリユニット140に位置値POSを供給し、デジタル式の測定値Mと並列に記憶することもできる。このようにして、後続電子機器80で測定値Mの波形と位置値POSとの間の相関関係を確定することができる。
【0049】
RAMメモリ領域142が、電源なしでメモリ内容を失う揮発性メモリとして構成されている場合には、RAMメモリ領域142に記憶された信号波形を記録の終了後に記憶できるにプログラム可能な不揮発性のメモリ領域144(EEPROM、フラッシュメモリ)を設けることが有利である。衝突は工作機械の緊急停止につながることが多いので、検出されたデータは後の評価のために保持される。
【0050】
メモリユニット140のRAMメモリ領域142および/またはプログラム可能なメモリ領域144の記憶容量は、衝突発生の複数の信号波形を記憶できるように有利に寸法決めされている。
【0051】
上述した衝突発生のパラメータは、特に工作機械の場合には一義的ではなく、すなわち、衝突以外の他の原因を有することもある。例えば、ワークピースを加工する場合には、衝突時に発生するのと同じ大きさの加速度が発生することもある。このような大きい加速度の原因としては、いわゆる「ガタガタ振動」が考えられる。このようなガタガタ振動は、例えば、ワークピースをフライス加工する場合に、フライスの切れ刃がワークピースに衝突した場合に生じる力によって生じるものであり、必ずしも加工時の誤動作を意味しない。実際の衝突時のパルス状の加速度波形(図3)と比較して、フライスの回転およびフライスの円周にわたる切れ刃の規則的な配置に起因するガタガタ振動は、振動の波形を有し、多くの場合には、振動は数周期にわたって振動する。
【0052】
大きい加速度の発生する別の原因は、工作機械の装置共振である。この場合にも振動の周期的な信号波形が生じる。
【0053】
一般に後続電子機器80に設けられている高い計算能力に基づいて、実際の衝突により生じる衝突発生の信号波形は、後続電子機器80において、他の原因を有する信号波形と容易に区別される。したがって、上述のパラメータのうちの少なくとも1つを超えたことに基づいて記録され、記憶された衝突発生のすべての信号波形を後続電子機器80に伝送することが有意義な場合もある。しかしながら、不要なエラーメッセージまたは工作機械の緊急停止を回避するために、衝突発生のパラメータを超える大きい加速度による振動の発生が考慮されないように評価ユニット110を構成することが特に有利である。このために、例えば、制御ユニット150は、このような発生(加速度限界値を周期的に超えること)を検出することができ、このような場合に測定値の記憶が継続されるように適宜に構成しもよい。このことは、特徴的なパラメータを超えたことに基づいて検出された衝突発生が実際の衝突の結果である確率を高める。衝突が発生したことの最終的な確認は、この場合にも、記録された信号波形を後続電子機器80で評価することによって行う。
【0054】
有利には、制御ユニット150はパラメータ設定可能に構成されており、以下のパラメータPARのうちの少なくとも1つが設定可能である:
考慮される衝突発生の少なくとも1つの特性、
少なくとも1つのパラメータの限界値、
測定値をデジタル化し、記憶する走査率、
期間T1、
期間T2。
【0055】
パラメータPARの設定は、有利にはデータ伝送チャネル90およびインタフェースユニット70を介して後続電子機器80によって行う。
【0056】
位置測定装置5,5’に2つ以上の衝突センサ100が設けられている場合には、評価ユニット110の構成要素を必要に応じて複数設けてもよい。個々のセンサのデジタル式の測定値Mを広範に並列に処理し、記憶することができる。同様に、衝突センサ毎のパラメータPARを設けてもよい。さらに、幾つかの衝突センサ100が設けられている場合には、少なくとも1つの衝突センサ100の測定値Mが衝突発生の限界値を超えたらすぐに、すべての衝突センサ100の信号波形を記憶することが有利である。
【0057】
図5は、評価ユニット210の別の実施形態を示す。この実施形態は、アナログ式の衝突センサ100を使用する場合にも適している。図4に関連して既に説明した構成要素は同じ符号を有する。
【0058】
先の実施例に加えて、評価ユニット210は、A/D変換器120と制御ユニット150またはメモリユニット140との間に配置されたフィルタユニット130を含む。フィルタユニット130は、測定値の周波数スペクトルの少なくとも1つの周波数帯域の周波数成分が減衰または抑制されるように、帯域遮断フィルタ、特にノッチフィルタとして構成されている。このようにして、加速度限界値(ガタガタ振動、装置共振)を周期的に超える衝撃を除去することができる。図3に示すように、衝突センサの測定値のパルス状の波形は、制御ユニット150におけるフィルタ処理にもかかわらず、極めて広い周波数スペクトルを含むので、上述の加速度限界値を超えた証明に基づいて衝突発生を点検することができる。あるいは、振動加速度がフィルタユニット130によって既に除去されているので、場合によっては、振動加速度を検出するように制御ユニット150を構成しなくてもよい。
【0059】
有利には、フィルタ処理されるべき周波数帯域は調整可能である。この調整は、制御ユニット150からフィルタユニット130に供給することができる適切なパラメータPARを介して行うことができる。
【0060】
フィルタ処理したい周波数帯域と位置測定装置5,5’の位置値POSの波形との間に関連性がある場合には、この関連性に応じて、フィルタ処理したい少なくとも1つの周波数帯域を自動的に設定することが特に有利である。これは、例えば、工作機械のモータスピンドル10のシャフト2の角度位置を測定する位置測定装置5の場合である。上述のように、ガタガタ振動の周波数は、スピンドルモータ1の回転速度Nおよび使用する工具4の切り刃の数から生じる。ガタガタ振動をフィルタ処理したい場合には、フィルタ処理したい周波数帯域の決定は、乗数による回転速度Nの乗算によって行う。決定した周波数帯域は、制御ユニット150からフィルタユニット130に供給することができる。
【0061】
したがって、制御ユニット150の可能なパラメータPARの上記リストには、
フィルタ処理したい少なくとも1つの周波数帯域のパラメータ(例えば、周波数帯域の上限および下限周波数または中心周波数および幅)の特性、および
乗数
を補足することができる。
【0062】
図5のフィルタユニット130はデジタルフィルタである。代替的には、A/D変換器120の前にアナログ式のフィルタユニットを配置してもよい。
【0063】
図6は、評価ユニット310の別の実施形態を示す。この実施形態は、デジタル式の衝突センサ100を使用する場合に適している。図4または図5に関連して既に説明した構成要素は、同じ符号を有する。
【0064】
この実施形態では、衝突センサ100のデジタル式の測定値Mを直接に検出するために、A/D変換器の代わりにデジタル式のセンサインタフェース160が設けられている。センサインタフェース160は、好ましくはシリアルインタフェース、例えばI2Cインタフェースである。幾つかの衝突センサ100が設けられている場合には、これらの衝突センサ100は、バスモードで1つのみのセンサインタフェース160で動作させることができるが、センサインタフェース160を各衝突センサ100に設けることもできる。
【0065】
センサインタフェース160を介した衝突センサ100のデジタル式の測定値Mの要求は、この実施例でも、有利には制御ユニット150の走査周期信号TAの時間枠内に開始される。上述の実施例と同様に、到着するデジタル式の測定値Mは制御ユニット150で評価される前に、またはメモリユニット140に記憶される前に、まずフィルタユニット130に供給される。
【0066】
図4と同様に、フィルタユニット130なしにこの実施形態を実施することもできることに留意されたい。この場合、ガタガタ振動または装置共振に起因する振動加速度の検出は、後続電子機器80または制御ユニット150で行うことができる。
【0067】
もちろん、本発明は、上述した実施形態に限定されておらず、当業者は特許請求の範囲内で代替的に構成することができる。特に、衝突発生を検出することができる加速度センサまたは個体伝搬音センサに加えて、またはこれらのセンサの代わりに、他のセンサ、例えば、衝突の結果として機械部品の歪みまたは変位を検出することができるセンサを使用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 スピンドルモータ
2 シャフト
3 工具収容部
4 工具
5 位置測定装置
6 ワークピース
10 モータスピンドル
30 目盛キャリア
40 測定用目盛
50 走査装置
60 処理ユニット
70 インタフェース部
70 インタフェースユニット
80 電子機器
80 後続電子回路
80 後続電子機器
90 データ伝送チャネル
100 衝突センサ
100 各衝突センサ
105 接続ユニット
110 評価ユニット
120 変換器
130 フィルタユニット
140 メモリユニット
142 メモリ領域
144 メモリ領域
150 制御ユニット
160 センサインタフェース
210 評価ユニット
310 評価ユニット
A 最大加速度
D 回転中心
D データ
K 衝突時点
M デジタル式の測定値
MA アナログ式の測定値
N 回転速度
PS 位置信号
POS 位置値
T1 第1の期間
T2 第2の期間
TA 走査周期信号
X 駆動軸線、
ERR エラーメッセージ
PAR パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6