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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/12 20060101AFI20231114BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B25J15/12
B25J15/08 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019158139
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035710
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松本 盛清
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240840(JP,A)
【文献】特開2019-038063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072572(US,A1)
【文献】特開2017-001113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の対象物を把持する把持装置であって、
前記対象物が載置される載置面から離間する向きに凹む凹部、および前記凹部に連続し前記載置面から離間するように延在する側壁を備えるとともに、前記対象物を把持可能な薄肉状の本体部と、
前記載置面に対して接近離間することによって、前記凹部の大きさを調整可能な調整部と、を有し、
前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした状態において、前記対象物の延在方向に沿って貫通する溝部が形成され
前記調整部が前記載置面に接近して前記凹部の大きさが小さい状態において、
前記延在方向から視て、鉛直方向および水平方向が対角線となる矩形状の孔部を有し、
前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした際に、前記孔部が変形することによって、前記溝部を形成する、把持装置。
【請求項2】
前記調整部が前記載置面に接近して前記凹部の大きさが小さい状態において、
前記孔部の前記水平方向に沿う対角線から前記載置面までの高さは、前記対象物の高さよりも高い、請求項に記載の把持装置。
【請求項3】
長尺状の対象物を把持する把持装置であって、
前記対象物が載置される載置面から離間する向きに凹む凹部、および前記凹部に連続し前記載置面から離間するように延在する側壁を備えるとともに、前記対象物を把持可能な薄肉状の本体部と、
前記載置面に対して接近離間することによって、前記凹部の大きさを調整可能な調整部と、を有し、
前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした状態において、前記対象物の延在方向に沿って貫通する溝部が形成され
前記調整部が前記載置面に接近して前記凹部の大きさが小さい状態において、
前記延在方向から視て、前記側壁の下部まで貫通するように設けられ、前記載置面に連れて幅広となる三角形状の貫通孔を有し、
前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした際に、前記貫通孔が変形することによって、前記溝部を形成する、把持装置。
【請求項4】
前記三角形状の前記貫通孔の上部における頂点は、鉛直方向の上方まで切り抜かれてなる請求項に記載の把持装置。
【請求項5】
少なくとも前記凹部の内方に設けられ、前記対象物に接触可能な突起部をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記載置面から視たときに、前記延在方向の長さに対して、前記延在方向に直交する直交方向の長さが短い、請求項1~5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記側壁の内方には、空気層が形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状を含む対象物を把持するための把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小さな食品惣菜等の対象物を把持するための把持装置が知られている。このような把持装置としては、複数の爪(指)によって対象物を挟んで把持するフィンガー型グリッパや、吸着パッドによって対象物を吸着して把持する吸盤型ハンドが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-215285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィンガー型グリッパでは、爪(指)の動きを精密に制御することが困難であるため、対象物を適切につかむことが非常に困難である。また、吸盤型ハンドでは、把持する際に吸引配管に対象物が詰まってしまい衛生上好ましくなく、また次工程で新たに対象物を把持する際に適切に把持することができない虞がある。
【0005】
一方、長尺状の対象物を把持することのできる把持装置も求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、衛生的に長尺状を含む対象物を適切に把持することのできる把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る把持装置は、長尺状の対象物を把持する。把持装置は、前記対象物が載置される載置面から離間する向きに凹む凹部、および前記凹部に連続し前記載置面から離間するように延在する側壁を備えるとともに、前記対象物を把持可能な薄肉状の本体部と、前記載置面に対して接近離間することによって、前記凹部の大きさを調整可能な調整部と、を有する。前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした状態において、前記対象物の延在方向に沿って貫通する溝部が形成され
前記調整部が前記載置面に接近して前記凹部の大きさが小さい状態において、前記延在方向から視て、鉛直方向および水平方向が対角線となる矩形状の孔部を有し、前記調整部を前記載置面から離間して前記凹部の大きさを大きくした際に、前記孔部が変形することによって、前記溝部を形成する。
【発明の効果】
【0008】
上述のように構成した把持装置によれば、調整部を載置面から離間して凹部の大きさを大きくした状態において、対象物の延在方向に沿って貫通する溝部が形成されるため、調整部において凹部の大きさを調整することによって、本体部において適切に長尺状を含む対象物を把持することができる。また、本体部によって機械的に把持するため衛生的である。したがって、衛生的に長尺状を含む対象物を適切に把持することのできる把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る把持装置を示す正面図であって、調整部が載置面に接近して凹部の大きさが小さい状態を示す図である。
図2】第1実施形態に係る把持装置を示す正面図であって、調整部を載置面から離間して凹部の大きさを大きくした状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係る把持装置が対象物を把持した様子を示す正面図である。
図4】第1実施形態に係る把持装置が対象物を把持した様子を示す側面図である。
図5】第1実施形態に係る把持装置が対象物を把持した様子を示す下面図である。
図6】第2実施形態に係る把持装置を示す概略図である。
図7】第2実施形態に係る把持装置の使用方法を説明するための図であって、図7(A)は、凹部を対象物の上方に位置させたときの様子を示す図であって、図7(B)は、本体部を対象物に接触させたときの様子を示す図であって、図7(C)は、調整部を上方に移動させるとともに本体部の側壁を下方に向けて移動させて対象物を把持したときの様子を示す図であって、図7(D)は、把持装置が対象物を把持している様子を示す図であって、図7(E)は、把持装置が対象物を移動した後の様子を示す図であって、図7(F)は、把持装置が対象物を配置する様子を示す図である。
図8】第3実施形態に係る把持装置を示す正面図であって、調整部が載置面に接近して凹部の大きさが小さい状態を示す図である。
図9】第3実施形態に係る把持装置を示す正面図であって、調整部を載置面から離間して凹部の大きさを大きくした状態を示す図である。
図10】変形例に係る把持装置の図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を、図1図5を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る把持装置1を示す正面図であって、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態を示す図である。図2は、第1実施形態に係る把持装置1を示す正面図であって、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態を示す図である。図3は、第1実施形態に係る把持装置1が対象物Fを把持した様子を示す正面図である。図4は、第1実施形態に係る把持装置1が対象物Fを把持した様子を示す側面図である。図5は、第1実施形態に係る把持装置1が対象物Fを把持した様子を示す下面図である。
【0012】
把持装置1は、食品惣菜等の長尺状の対象物F(図4図5参照)を把持する。対象物Fとしては、例えば、パン、揚げ物等さまざまなものを挙げることができる。以下の説明において、図1の左右方向をX方向(直交方向)と称し、図4の上下方向をY方向(延在方向)と称し、鉛直方向をZ方向と称する。
【0013】
把持装置1は、図1図4に示すように、内方に空気層Aを形成する本体部10と、本体部10に形成される凹部11の大きさを調整可能な調整部20と、凹部11の内方および側壁12の外方に設けられる突起部18と、Y方向(延在方向)から視て、鉛直方向(Z方向)および水平方向(X方向)が対角線となる略矩形状の孔部14と、を有する。また、把持装置1は、上方が開口するように構成されている。
【0014】
本明細書において、凹部11の大きさとは、把持装置1を載置面Pに配置したときの凹部11および載置面Pによって形成される領域R(図1参照)の大きさとして定義する。
【0015】
本体部10は、略一定の厚みを備える薄肉状に形成されている。本体部10の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5~2mmであることが好ましい。例えば、本体部10の厚みが厚すぎると、後述するように凹部11の大きさを大きくする際に、凹部11が変形しにくくなる虞がある。一方、本体部10の厚みが薄すぎると、後述するように凹部11において対象物Fを把持する際に、凹部11が形状を維持することができず、対象物Fを把持することができない虞がある。
【0016】
本体部10は、図1図2に示すように、上方に凹む凹部11と、凹部11に連続する側壁12と、を有する。
【0017】
凹部11は、対象物Fが載置される載置面P(図3参照)から離間する向き(図1の上向き)に凹むように形成されている。凹部11の内表面には、図1図2に示すように、対象物Fを把持する突起部18が形成されている。
【0018】
凹部11は、図5に示すように、載置面P側から視たときに、長円形状を備えている。なお、凹部11を載置面P側から視たときの形状は楕円形状であってもよい。すなわち、凹部11を載置面P側から視たときの形状は、Y方向(延在方向)の長さに対してX方向(延在方向に直交する直交方向)の長さが短い構成であることが好ましい。このように構成された凹部11によれば、X方向に沿って対象物Fを挟んで把持することができる(図5参照)。したがって、X方向の幅狭部を用いて対象物Fを把持することで、円周の長さが同じである略真円形状を備える凹部と比較して、様々なサイズの対象物Fを把持することができ、把持装置1としての汎用性が向上する。
【0019】
例えば、凹部11の大きさが対象物Fよりも小さすぎると、後述するように突起部18を対象物Fに接触させる際に、対象物Fが凹部11を拡大する力が大きくなる。この結果、当該力は反力として対象物Fに作用して、対象物Fを変形または傷つけてしまう虞がある。一方、凹部11の大きさが、対象物Fよりも大きすぎると、後述するように突起部18によって対象物Fを把持する際に、対象物Fが突起部18に接触しなくなるため、対象物Fを把持することができなくなる。以上から、上記の不具合が発生しないように、対象物Fに対する凹部11の大きさを設定することが好ましい。
【0020】
側壁12は、凹部11に連続して形成される。また、側壁12は、載置面Pから離間する向き(図1の上向き)に向けて延在する。側壁12は、載置面Pから離れるにつれて、すなわち上方に向けて、径が大きくなるようにテーパ形状に構成されている。
【0021】
鉛直方向からの傾斜角度として定義される側壁12のテーパ角度θは、特に限定されないが、例えば、20~30度であることが好ましい。テーパ角度θをこのような角度にすることによって、後述するように凹部11の大きさを大きくする際に、適切な把持力を得ることができる。
【0022】
また、側壁12の内方には、空気層Aが形成されている。このため、側壁12の内方に液体(例えば水)が充填されている構成と比較して、把持装置1の重さを低減することができ、把持装置1の操作性が向上する。
【0023】
側壁12は、Z方向の上方から視たときに、略真円形状を備えている。なお、側壁12は、Z方向の上方から視たときに、延在方向に沿って楕円形状を備えていてもよい。
【0024】
本体部10を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、シリコンゴム、テフロンゴム等を用いることができる。このような材料は、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、電気特性(絶縁性)に優れており、また生理的に不活性であることから、本体部10を構成する材料として好ましい。また、本体部10として柔軟性に富むこのような材料を用いることによって、図3図5に示すように、凹部11および孔部14は、対象物Fの外形に沿って変形して、対象物Fを包み込むように適切に把持することができる。
【0025】
突起部18は、図1図2に示すように、凹部11の内方および側壁12の外方において、鉛直方向に沿って複数設けられている。突起部18は、図4図5に示すように、長円形状に形成されている凹部11のY方向に沿って延在して形成されている。
【0026】
このように突起部18が凹部11の内方に設けられていることによって、突起部18の対象物Fに対する当接力(接触力)が向上し、結果的に把持装置1の把持力が向上する。なお、突起部18が設けられない構成であっても、把持力は低減するが、凹部11および側壁12によって対象物Fを把持することができるため、当該構成も本発明に含まれるものとする。
【0027】
本実施形態において突起部18は、本体部10と一体的に構成されている。突起部18が本体部10と一体的に構成されていることによって、突起部18が離脱する虞がなく、さらに製造が容易である。なお、突起部は、本体部と別体として構成されていてもよい。
【0028】
調整部20は、凹部11の大きさを調整可能に構成されている。調整部20は、凹部11の載置面P側に対する反対側(図1の上側)において、凹部11に固定されている。調整部20の凹部11に対する固定方法は、特に限定されないが、例えば接着剤による接着である。この構成によれば、調整部20が上方に移動することによって(載置面Pから離間することによって)、凹部11の大きさが大きくなり(図2の状態)、調整部20が下方に移動することによって(載置面Pに接近することによって)、凹部11の大きさが小さくなる(図1の状態)。
【0029】
調整部20を構成する材料は、特に限定されないが、シリコン等を用いることができる。
【0030】
孔部14は、図1に示すように、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態(図1の状態)において、Z方向およびX方向が対角線となるように矩形形状を備えている。
【0031】
調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態(図1の状態)において、孔部14のX方向に沿う対角線Cから載置面Pまでの高さH1は、対象物Fの高さH2(図4参照)よりも高い。このように構成された把持装置1によれば、把持装置1が対象物Fを把持した際に、対象物Fを包み込むように把持することができるため、把持力が向上する。
【0032】
孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の上部14Aまでの距離L1は、孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の下部14Bまでの距離L2よりも、長くなるように構成されている。このように構成された把持装置1によれば、対象物Fを把持する際に、孔部14がX方向に拡大しやすくなるため、より高さのある対象物Fを把持することができる。
【0033】
孔部14の上部14Aは、R形状を備えていることが好ましい。この構成によれば、孔部14の上部14Aを起点にして、孔部14の上方の側壁12が裂けることを好適に抑制することができる。
【0034】
孔部14は、上部に位置する上孔部141と、下部に位置する下孔部142と、を有する。調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさ大きくした際に、図2に示すように、孔部14が変形することによって、上孔部141および下孔部142は、溝部15を形成する。
【0035】
調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした際に、図5に示すように、下孔部142は変形して、載置面Pから視たときに、上孔部141の内方に位置する。
【0036】
溝部15は、図2図3に示すように、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態(図2の状態)において、延在方向(Y方向)に沿って貫通するように構成されている。溝部15は、長尺状の対象物Fが挿通されるように構成されている。
【0037】
次に、図3図6を参照して、第1実施形態に係る把持装置1の使用方法について説明する。第1実施形態では、把持装置1を手動で使用する場合を例に挙げて説明する。
【0038】
まず、使用者は、載置面Pに対象物Fが載置された状態で、把持装置1の凹部11を対象物Fの上方に位置させる。
【0039】
次に、使用者は、本体部10を載置面Pに向けて移動させて、本体部10の突起部18を対象物Fに接触させる。
【0040】
次に、使用者は、調整部20を上方に移動させるとともに、本体部10の側壁12を下降させることによって、凹部11の大きさを大きくして、凹部11の突起部18により対象物Fを巻き込むように把持する。
【0041】
このとき、Y方向から視て矩形状に構成されていた孔部14は変形することによって、Y方向に沿って貫通する溝部15を形成する。このため、把持装置1は、対象物Fが側壁12に接触することなく、長尺状の対象物Fを好適に把持することができる。
【0042】
次に、使用者は、調整部20の本体部10に対する相対的な高さを維持したまま、把持装置1を上方に移動させる。このとき、図3に示すように、突起部18において、上方に向けて摩擦力F1が発生するとともに、対象物Fに対して押圧力F2が発生する。また、変形した孔部14において、図6に示すように、対象物Fを把持する把持力F3が発生する。これらの力によって、突起部18は対象物Fを把持することができる。
【0043】
次に、使用者は、把持装置1を所望の場所に移動させた後、調整部20の本体部10に対する相対的な高さを維持したまま、把持装置1を下降させる。そして、使用者は、調整部20を本体部10に対して下降させ、凹部11の大きさを小さくして、対象物Fを所望の位置に配置する。
【0044】
以上説明したように、第1実施形態に係る把持装置1は、対象物Fを把持する。把持装置1は、対象物Fが載置される載置面Pから離間する向きに凹む凹部11、および凹部11に連続し載置面Pから離間するように延在する側壁12を備える、薄肉状の本体部10と、載置面Pに対して接近離間することによって、凹部11の大きさを調整可能な調整部20と、を有する。また、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態において、対象物Fの延在方向に沿って貫通する溝部15が形成される。このように構成された把持装置1によれば、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態において、対象物Fの延在方向に沿って溝部15が形成されるため、調整部20において凹部11の大きさを調整することによって、本体部10において適切に長尺状の対象物Fを把持することができる。また、本体部10によって機械的に把持するため衛生的である。したがって、衛生的に長尺状の対象物Fを適切に把持することのできる把持装置1を提供することができる。
【0045】
また、把持装置1は、少なくとも凹部11の内方に設けられ、対象物Fに接触可能な突起部18をさらに有する。このように構成された把持装置1によれば、調整部20において凹部11の大きさを調整することによって、突起部18において適切に対象物Fを把持することができる。したがって、対象物Fに対する把持力を向上させることができ、より好適に長尺状の対象物Fを把持することができる。
【0046】
また、凹部11は、載置面Pから視たときに、延在方向(Y方向)の長さに対して、延在方向(Y方向)に直交する直交方向(X方向)の長さが短い。このように構成された把持装置1によれば、X方向に沿って対象物Fを挟んで把持することができる(図5参照)。したがって、X方向の幅狭部を用いて対象物Fを把持することで、円周の長さが同じである略真円形状を備える凹部と比較して、様々なサイズの対象物Fを把持することができ、把持装置1としての汎用性が向上する。
【0047】
また、側壁12の内方には、空気層Aが形成されている。このように構成された把持装置1によれば、側壁12の内方に液体(例えば水)が充填されている構成と比較して、把持装置1の重さを低減することができ、把持装置1の操作性が向上する。
【0048】
また、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態において、延在方向から視て、鉛直方向および水平方向が対角線となる矩形状の孔部14を有し、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態において、孔部14が変形することによって、溝部15を形成する。このように構成された把持装置1によれば、変形した孔部14によっても対象物Fを把持する把持力F3が発生するため、より好適に対象物Fを把持することができる。
【0049】
また、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さくされた状態において、孔部14の水平方向に沿う対角線Cから載置面Pまでの高さH1は、対象物Fの高さH2よりも高い。このように構成された把持装置1によれば、対象物Fを把持する際に、孔部14がX方向に拡大しやすくなるため、より高さのある対象物Fを把持することができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、図6図7を参照して、第2実施形態に係る把持装置2の構成および使用方法について説明する。図6は、第2実施形態に係る把持装置2を示す概略図である。図8は、第2実施形態に係る把持装置2の使用方法を説明するための図である。図6図7では理解の容易のため、本体部10を断面図にて示し、それ以外の構成は正面図にて示す。
【0051】
第2実施形態に係る把持装置2は、上述した第1実施形態に係る把持装置1と比較して、本体部10および調整部20を自動的に操作する点が異なる。以下、第2実施形態に係る把持装置2の構成について説明する。
【0052】
把持装置2は、図6に示すように、本体部10と、突起部18と、調整部20と、孔部14(図6図7では不図示)と、本体部10および調整部20を水平方向および上下方向に移動させる移動部30と、調整部20を上下方向に移動させる昇降シリンダ40と、を有する。
【0053】
本体部10はその上方において、フランジ50に固定されている。
【0054】
移動部30は、水平方向に移動可能な第1移動部31と、上下方向に移動可能な第2移動部32と、を有する。移動部30は、第1接続部51を介して、昇降シリンダ40と接続されている。
【0055】
昇降シリンダ40は、固定部41と、固定部41に対して相対的にスライド可能なスライド部42と、を有する。固定部41は、第2接続部52を介して、フランジ50と接続されている。スライド部42の下端は、調整部20と固定されている。
【0056】
このように構成された把持装置2によれば、第1移動部31がロボット本体機構(不図示)によって水平方向に移動することによって、本体部10および調整部20は水平方向に移動する。また、第2移動部32が第1移動部31に対して相対的に上下方向に移動することによって、本体部10および調整部20は上下方向に移動する。さらに、昇降シリンダ40において、スライド部42が固定部41に対して相対的に上方に移動することによって、調整部20が上方に移動し、凹部11の大きさを大きくする。
【0057】
次に、図7(A)~図7(F)を参照して、第2実施形態に係る把持装置2の使用方法について説明する。
【0058】
まず、3Dカメラ(不図示)によって、載置面Pに載置されている対象物Fの位置を確認する。
【0059】
次に、図7(A)に示すように、移動部30の第1移動部31によって、本体部10および調整部20を対象物Fの上方に位置させる。
【0060】
次に、図7(B)に示すように、移動部30の第2移動部32によって、本体部10および調整部20を対象物Fに向けて下降させて、凹部11を対象物Fに接触させる。
【0061】
次に、図7(C)に示すように、昇降シリンダ40のスライド部42を固定部41に対して上方にスライドさせて、調整部20を上方に移動させるとともに、移動部30の第2移動部32によって本体部10の側壁12を下降させることによって、凹部11で対象物Fを把持する。このとき、孔部14は変形することによって、延在方向に貫通する溝部15を形成するため、長尺状の対象物Fを好適に把持することができる。
【0062】
次に、図7(D)に示すように、移動部30および昇降シリンダ40によって、調整部20の本体部10に対する相対的な高さを維持したまま、把持装置1を上方に移動させる。このとき、上述したように押圧力F2および把持力F3によって、把持装置2は対象物Fを把持する。
【0063】
次に、図7(E)に示すように、移動部30の第1移動部31によって、把持装置2を所望の場所に移動させた後、調整部20の本体部10に対する相対的な高さを維持したまま、把持装置2を下降させる。
【0064】
次に、図7(F)に示すように、昇降シリンダ40によって、調整部20を本体部10に対して下降させ、凹部11の大きさを小さくして、対象物Fを所望の位置に配置する。
【0065】
<第3実施形態>
次に、図8図9を参照して、第3実施形態に係る把持装置3の構成について説明する。図8は、第3実施形態に係る把持装置3を示す正面図であって、調整部20が載置面Pに接近して凹部211の大きさが小さい状態を示す図である。図9は、第3実施形態に係る把持装置3を示す正面図であって、調整部20を載置面Pから離間して凹部211の大きさを大きくした状態を示す図である。
【0066】
第3実施形態に係る把持装置3は、上述した第1実施形態に係る把持装置1と比較して貫通孔214の構成が異なる。以下、第3実施形態に係る把持装置3の構成について説明する。
【0067】
把持装置3は、図8に示すように、本体部10と、調整部20と、突起部18と、貫通孔214と、を有する。本体部10、調整部20、および突起部18の構成は、上述した第1実施形態に係る把持装置1と同様の構成であるため、説明は省略する。
【0068】
貫通孔214は、図8に示すように、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態において、Y方向から視て、側壁12の下部まで貫通するように設けられ、下方に連れて幅広となる三角形状を備える。
【0069】
貫通孔214は、図9に示すように、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした際に、変形することによって、溝部215を形成する。
【0070】
貫通孔214の上部における頂点214Aは、図8に示すように、鉛直方向の上方まで切り抜かれている。頂点214Aにおいて、周方向に沿って不連続となるように構成されており、固定手段によって端部同士が固定されている。固定手段としては特に限定されないが、接着剤や金具等が挙げられる。なお、図8では、端部同士が互いに当接するように図示されているが、これに限定されず、端部同士が互いに重なり合った状態で固定されていてもよい。さらに、端部同士が互いに離間して、それぞれの端部が上述のフランジ50に対して固定される構成であってもよい。このように構成された把持装置3によれば、比較的高さの高い対象物Fを好適に把持することができる。また、1枚のシートを巻回して厳密に位置合わせすることなく端部同士を接続することによって製造することができるため、製造が容易となる。
【0071】
以上説明したように、第3実施形態に係る把持装置3は、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態において、延在方向から視て、側壁12の下部まで貫通するように設けられ、載置面Pに連れて幅広となる三角形状の貫通孔214を有し、調整部20を載置面Pから離間して凹部11の大きさを大きくした状態において、貫通孔214は変形することによって溝部215を形成する。このように構成された把持装置3によれば、比較的高さの高い対象物Fを好適に把持することができる。
【0072】
また、貫通孔214の上部における頂点214Aは、鉛直方向の上方まで切り抜かれてなる。このように構成された把持装置3によれば、1枚のシートから製造することができるため、製造が容易となる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、調整部は、本体部と別体として構成されていた。しかしながら、調整部は本体部と一体的に構成されていてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、突起部18は、凹部11の長軸方向に沿って延在していたが、突起部は、凹部11の周方向に沿って全周延在して設けられていてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、調整部は凹部に固定されていた。しかしながら、凹部の大きさを調整可能である限りにおいて、調整部の構成は特に限定されない。
【0077】
また、上述した実施形態では、把持装置は、上方が開口するように構成されていた。しかしながら、把持装置は上方が閉じるように構成されていてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、把持装置が把持する対象物として、食品惣菜等を例に挙げた。しかしながら、把持装置が把持する対象物は、食品惣菜等に限定されず、機械部品等であってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、調整部20が載置面Pに接近して凹部11の大きさが小さい状態(図1の状態)において、孔部14のX方向に沿う対角線Cから載置面Pまでの高さH1は、対象物Fの高さH2(図4参照)よりも高かった。しかしながら、孔部14のX方向に沿う対角線Cから載置面Pまでの高さは、対象物Fの高さよりも低くてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の上部14Aまでの距離L1は、孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の下部14Bまでの距離L2よりも、長くなるように構成されていた。しかしながら、孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の上部14Aまでの距離は、孔部14のX方向に沿う対角線Cから孔部14の下部14Bまでの距離よりも、短くなるように構成されていてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、把持装置1は、長尺状の対象物Fを把持したが、把持装置1が把持する対象物Fの形状は長尺状に限定されない。
【0082】
また、図10に示すように、把持力F3が発生する4か所の部位に突起部118が設けられてもよい。この構成によれば、突起部118によって対象物Fを把持するため、把持力F3が高くなり、より好適に対象物Fを把持することができる。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3 把持装置、
10 本体部、
11、211 凹部、
12 側壁、
14 孔部、
15、215 溝部、
18 突起部、
20 調整部、
214 貫通孔、
A 空気層、
F 対象物、
P 載置面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10