(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】傾き調整機構
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/64 20060101AFI20231114BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231114BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231114BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231114BHJP
【FI】
B23Q1/64 B
H01L21/68 N
H01L21/304 622H
H01L21/304 622R
B24B41/06 L
(21)【出願番号】P 2020004273
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山端 一郎
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012539(JP,A)
【文献】特開平02-083112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76;
B24B 41/00-51/00;
H01L 21/304,21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置の基台と、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルとの間に配置し、該保持面の傾きを調整する傾き調整機構であって、
該チャックテーブルを連結させる上面と、該上面に対し傾斜した下面と、を有する環状の上リングプレートと、
該上リングプレートの下面に平行な上面と、該上リングプレートの上面に平行で該基台の上面に対面する下面と、を有する環状の下リングプレートと、
該上リングプレートの中心を通り傾斜した該上リングプレートの下面に垂直な上回転軸を軸として該上リングプレートを回転させる上回転手段と、
該上リングプレートの中心を通り該下リングプレートの下面に垂直な下回転軸を軸として該下リングプレートを回転させる下回転手段と、
該上リングプレートの下面と該下リングプレートの上面との間に備える第1ベアリングと、
該下リングプレートの下面と該基台の上面との間に備える第2ベアリングと、
該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する連結手段と、を備え、
該第1ベアリングと該第2ベアリングとを、エアベアリングで構成し、
該連結手段は、該エアベアリングを形成させるための流路を吸引源に連通させ、
該上リングプレート又は該下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ該保持面の傾きを調整した後、該連結手段で該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する傾き調整機構。
【請求項2】
加工装置の基台と、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルとの間に配置し、該保持面の傾きを調整する傾き調整機構であって、
該チャックテーブルを連結させる上面と、該上面に対し傾斜した下面と、を有する環状の上リングプレートと、
該上リングプレートの下面に平行な上面と、該上リングプレートの上面に平行で該基台の上面に対面する下面と、を有する環状の下リングプレートと、
該上リングプレートの中心を通り傾斜した該上リングプレートの下面に垂直な上回転軸を軸として該上リングプレートを回転させる上回転手段と、
該上リングプレートの中心を通り該下リングプレートの下面に垂直な下回転軸を軸として該下リングプレートを回転させる下回転手段と、
該上リングプレートの下面と該下リングプレートの上面との間に備える第1ベアリングと、
該下リングプレートの下面と該基台の上面との間に備える第2ベアリングと、
該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する連結手段と、を備え、
該連結手段は、
該上リングプレート、
該下リングプレート、及び
該基台を磁着可能に電磁石を配置して構成され
、
該上リングプレート又は該下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ該保持面の傾きを調整した後、該連結手段で該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する傾き調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの保持面の傾きを調整する傾き調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
チャックテーブルの保持面によって保持される半導体ウェーハ等の被加工物を研削砥石で研削する研削装置は、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されているように、研削砥石の下面に対し、保持面の平行度を調整することができる傾き調整機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-082291号公報
【文献】特開2008-238341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の傾き調整機構は、チャックテーブルの下面を周方向に均等間隔を空けた3点で支持している。そのため、研削砥石でチャックテーブルに保持された被加工物を上から押しながら研削すると、傾き調整機構に大きな荷重が掛かるため、傾き調整機構が縮むことによって研削砥石の下面に対する保持面の傾き、言い換えると、平行度が変わってしまうという問題が有る。
【0005】
よって、傾き調整機構を備えた研削装置を用いて例えば大きな荷重を掛けながら保持面で保持された被加工物を研削する場合には、研削砥石の下面に対する保持面の平行度が変わってしまうことが無いようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、加工装置の基台と、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルとの間に配置し、該保持面の傾きを調整する傾き調整機構であって、該チャックテーブルを連結させる上面と、該上面に対し傾斜した下面と、を有する環状の上リングプレートと、該上リングプレートの下面に平行な上面と、該上リングプレートの上面に平行で該基台の上面に対面する下面と、を有する環状の下リングプレートと、該上リングプレートの中心を通り傾斜した該上リングプレートの下面に垂直な上回転軸を軸として該上リングプレートを回転させる上回転手段と、該上リングプレートの中心を通り該下リングプレートの下面に垂直な下回転軸を軸として該下リングプレートを回転させる下回転手段と、該上リングプレートの下面と該下リングプレートの上面との間に備える第1ベアリングと、該下リングプレートの下面と該基台の上面との間に備える第2ベアリングと、該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する連結手段と、を備え、該第1ベアリングと該第2ベアリングとを、エアベアリングで構成し、該連結手段は、該エアベアリングを形成させるための流路を吸引源に連通させ、該上リングプレート又は該下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ該保持面の傾きを調整した後、該連結手段で該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する傾き調整機構である。
【0007】
また、上記課題を解決するための本発明は、加工装置の基台と、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルとの間に配置し、該保持面の傾きを調整する傾き調整機構であって、該チャックテーブルを連結させる上面と、該上面に対し傾斜した下面と、を有する環状の上リングプレートと、該上リングプレートの下面に平行な上面と、該上リングプレートの上面に平行で該基台の上面に対面する下面と、を有する環状の下リングプレートと、該上リングプレートの中心を通り傾斜した該上リングプレートの下面に垂直な上回転軸を軸として該上リングプレートを回転させる上回転手段と、該上リングプレートの中心を通り該下リングプレートの下面に垂直な下回転軸を軸として該下リングプレートを回転させる下回転手段と、該上リングプレートの下面と該下リングプレートの上面との間に備える第1ベアリングと、該下リングプレートの下面と該基台の上面との間に備える第2ベアリングと、該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する連結手段と、を備え、該連結手段は、該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を磁着可能に電磁石を配置して構成され、該上リングプレート又は該下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ該保持面の傾きを調整した後、該連結手段で該上リングプレート、該下リングプレート、及び該基台を連結する傾き調整機構である。
【発明の効果】
【0009】
チャックテーブルの保持面の傾きを調整する本発明に係る傾き調整機構は、上リングプレート又は下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ保持面の傾きを調整した後、連結手段で上リングプレート、下リングプレート、及び基台を連結することで、従来のチャックテーブルの下方に配設された3本の上下動可能な柱や、3つの上下動可能なブロックでチャックテーブルを支持し、かつ保持面の傾きを調整可能とする傾き調整機構よりも、チャックテーブルを支持する面積が広くなったことにより、高剛性でチャックテーブルを支持することができる。そのため、高荷重をかけて研削砥石で被加工物を研削する研削加工を実施した際においても、研削中に研削砥石の下面に対する保持面の平行度が変わってしまうことが無いため、研削後の被加工物の厚み精度を均一にすることが可能となる。
【0010】
本発明に係る傾き調整機構において、第1ベアリングと第2ベアリングとを、エアベアリングで構成し、連結手段は、エアベアリングである第1ベアリング及び第2ベアリングを形成させるための流路を吸引源に連通させる構成とすることで、上リングプレート又は下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ保持面の傾きを調整した後、エアベアリングとして形成されている第1ベアリングと第2ベアリングとを容易に消失させることができ、さらに、上リングプレート、下リングプレート、及び基台を吸引源が生み出す吸引力によって容易に連結させることが可能となる。
【0011】
本発明に係る傾き調整機構において、連結手段は、上リングプレート、下リングプレート、及び基台を磁着可能に電磁石を配置して構成されることで、上リングプレート又は下リングプレートの少なくともいずれか一方を回転させ保持面の傾きを調整した後、連結手段で上リングプレート、下リングプレート、及び基台を容易に連結(磁着)させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】保持面を水平面に対して傾けていない状態の傾き調整機構の一例を示す断面図である。
【
図2】上リングプレート及び下リングプレートの一例を示す斜視図である。
【
図3】保持面を水平面に対して傾けた状態の傾き調整機構の一例を示す断面図である。
【
図4】エアベアリングである第1ベアリングを形成させるための第1流路、及びエアベアリングである第2ベアリングを形成させるための第2流路を備える傾き調整機構の一例を示す断面図である。
【
図5】連結手段によって、磁力で上リングプレート、下リングプレート、及び基台を連結した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す本発明に係る傾き調整機構2は、加工装置の基台10と、半導体ウェーハ等の被加工物を保持する保持面3001を有するチャックテーブル30との間に配置し、保持面3001の傾きを調整することができる。
傾き調整機構2は、例えば、回転する研削砥石で被加工物を研削して薄化する研削加工装置、又は不織布等からなる研磨パッドでウェーハを研磨してウェーハの抗折強度を高める研磨加工装置等に配設される。
【0014】
本実施形態において、傾き調整機構2が配設される加工装置は、例えば、図示しない粗研削手段と仕上げ研削手段とを備え、回転するターンテーブルである基台10で、基台10の中心を中心として基台10上に複数周方向に均等間隔を空けて配設されたチャックテーブル30を公転させて、該粗研削手段又は該仕上げ研削手段の下方にチャックテーブル30を位置づけ可能となっている。
基台10には円形の開口100が形成されており、また、基台10は、開口100を囲むようにして配置される平面視環状のベースプレート101を備えている。本実施形態においては、ベースプレート101の上面1011が、基台10の上面1011となる。基台10の上面1011は、水平面(X軸Y軸平面)に対して平行な水平面となっている。
【0015】
チャックテーブル30は、ポーラス部材等からなり被加工物を吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。チャックテーブル30の吸着部300は、テーブル側吸引源59に連通し、テーブル側吸引源59が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部300の露出面と枠体301の上面とで構成される保持面3001に伝達されることで、チャックテーブル30は保持面3001上で被加工物を吸引保持することができる。
保持面3001は、例えば、チャックテーブル30の回転中心を頂点とし肉眼では目視できない程度の極めて緩やかな円錐面となっている。
【0016】
チャックテーブル30は円形板状のテーブルベース32の上面に図示しない固定ボルト等によって着脱可能に装着されている。
テーブルベース32は、チャックテーブル30を回転させるテーブル回転手段5によって、回転可能に支持されている。そして、本実施形態において、チャックテーブル30は、テーブル回転手段5を介して傾き調整機構2の後述する上リングプレート20の上面200に連結されている。
【0017】
図1に示す傾き調整機構2は、チャックテーブル30の保持面3001を水平面(X軸Y軸平面)に対して傾けていない状態(水平面に対して略平行な状態)を示している。傾き調整機構2は、チャックテーブル30を連結させる上面200と、上面200に対し傾斜した下面202と、を有する環状の上リングプレート20と、上リングプレート20の下面202に平行な上面220と、上リングプレート20の上面200に平行で基台10の上面1011に対面する下面222と、を有する環状の下リングプレート22と、上リングプレート20の中心を通り傾斜した上リングプレート20の下面202に垂直な上回転軸2411を軸として上リングプレート20を回転させる上回転手段24と、上リングプレート20の中心を通り下リングプレート22の下面222に垂直な下回転軸2611を軸として下リングプレート22を回転させる下回転手段26と、上リングプレート20の下面202と下リングプレート22の上面220との間に備える第1ベアリング27と、下リングプレート22の下面222と基台10の上面1011との間に備える第2ベアリング28と、上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を連結する連結手段4と、を備えている。
【0018】
図1に示すように、傾き調整機構2がチャックテーブル30の保持面3001を水平面に対して傾けていない状態において、高剛性を備える金属等で形成された円環状の上リングプレート20の上面200は、例えば、水平面(X軸Y軸平面)と平行になっており、
図1において上面200に対して所定角度で傾斜した下面202は、水平面に対して所定角度で傾斜している。
上リングプレート20の中央に形成された開口209内には、テーブル回転手段5のスピンドル50が挿通されている。
【0019】
図1に示すように、傾き調整機構2がチャックテーブル30の保持面3001を水平面に対して傾けていない状態において、高剛性を備える金属等で形成された円環状の下リングプレート22の上面220は、例えば、上リングプレート20の下面202と平行になっており、水平面に対して所定角度で傾斜している。下リングプレート22の下面222は、上リングプレート20の上面200と平行な水平面となっている。
下リングプレート22の中央に形成された開口229内には、テーブル回転手段5のスピンドル50が挿通されている。なお、先に説明した下回転軸2611は、下リングプレート22の中心も通過している。
【0020】
上記のように、上リングプレート20は、下面202が傾斜した傾斜リングであり、
図1における-X方向側の外周から中央を基準とする+X方向側の外周に向かって厚みが連続的に薄くなっている。また、下リングプレート22は、上面220が傾斜した傾斜リングであり、
図1における+X方向側の外周から中央を基準とする-X方向側の外周に向かって厚みが連続的に厚くなっている。
【0021】
例えば、下リングプレート22の開口229の直径は、上リングプレート20の開口209の直径よりも小径となっている。そして、下リングプレート22の上面220の開口229の周囲には、環状の段差が一段上方に突き出るようにズレ規制部228として形成されている。該ズレ規制部228の外側面は、上面220に垂直に形成されていて、上リングプレート20と下リングプレート22とが連結手段4によって連結された際に、上リングプレート20の内側面に当接可能となっており、上リングプレート20と下リングプレート22とが相対的に横方向(水平面方向)にズレることを規制する。なお、上リングプレート20または下リングプレート22を回転させる際に、後述する
図1に示す上面エア噴射路2201から噴出させたエアが上リングプレート20の内側面と下リングプレート22の該ズレ規制部228の外側面との間を進入することで、上リングプレート20の内側面と下リングプレート22の該ズレ規制部228の外側面とを非接触で支持することで、横方向にズレることを規制する。また、回転時のゴミの噴出、回転時のかじり(固着)防止が可能になる。
【0022】
下リングプレート22の下面222の開口229の周囲には、環状の段差が一段下方に突き出るようにズレ規制部227として形成されている。該ズレ規制部227の外側面は、下リングプレート22の下面222に対し垂直に形成されていて、例えば下リングプレート22を回転させている際に、後述する
図1に示す下面エア噴射路2221から噴出させたエアが下リングプレート22の該ズレ規制部227の外側面と、基台10のベースプレート101の内側面との間に進入することで、下リングプレート22の該ズレ規制部227の外側面とベースプレート101の内側面とを非接触で支持し下リングプレート22の横方向のズレを規制している。また、下リングプレート22と基台10とが連結手段4によって連結された際に、基台10のベースプレート101の内側面に当接可能となっており、下リングプレート22が基台10に対して横方向にズレることを規制する。
【0023】
例えば、上リングプレート20の外側面には従動ギア244(
図2参照)が形成されており、従動ギア244には、
図1に示す上回転手段24を構成する主動平ギア241が噛合している。主動平ギア241は、上リングプレート駆動モータ243のシャフトに取り付けられている。なお、従動ギア244は、
図2に示す例においては上リングプレート20の外側面の一部に周方向に弧状に形成されているが、上リングプレート20の外側面全周に渡って形成されていてもよい。
上リングプレート駆動モータ243は、例えば、ベースプレート101上に配設されている。なお、主動平ギア241は、下リングプレート22を回転させたことによって変化した上回転軸2411の傾きに応じて変化する上リングプレート20の外側面の傾きに対応するように、主動平ギア241の外側面を側面視円弧になるように形成するとよい。なお、
図2に示す従動ギア244を上リングプレート20の外側面全周に形成させ、主動平ギア241と従動ギア244とを無端ベルトで連結させてもよい。
【0024】
下リングプレート22の外側面には従動ギア264(
図2参照)が形成されており、従動ギア264には、
図1に示す下回転手段26を構成する主動平ギア261が噛合している。主動平ギア261は、下リングプレート駆動モータ263のシャフトに取り付けられている。なお、従動ギア264は、
図2に示す例においては下リングプレート22の外側面の一部に周方向に弧状に形成されているが、下リングプレート22の外側面全周に渡って形成されていてもよい。
なお、下リングプレート22の外側面全周に形成された従動ギア264と主動平ギア261とを無端ベルトで連結させてもよい。
図1に示す下リングプレート駆動モータ263は、例えば、ベースプレート101上に固定されている。なお、下リングプレート駆動モータ263は、例えば、後述する防水カバー107の天板106に固定されていてもよい。
【0025】
例えば、
図1に示す基台10上の外周側の領域には、円筒状の側板105が立設しており、側板105の上端からは、径方向内側に向かって天板106が延在している。そして天板106及び側板105によって、研削加工時に加工装置の研削ホイール等からなる加工手段に供給される加工水がチャックテーブル30上から下方に流下した際に、該加工水から上リングプレート駆動モータ243及び下リングプレート駆動モータ263を防水したり、加工水からテーブル回転手段5のモータ51を防水したりする防水カバー107が構成される。
【0026】
図1に示すように、テーブル回転手段5は、例えば、上リングプレート20の中央の開口209、下リングプレート22の中央の開口229、ベースプレート101の中央の開口、及び基台10の中央の開口100で形成される略円柱空間に収容されるように配設されている。
【0027】
テーブル回転手段5は、例えば、該略円柱状の空間を上下方向に延在するスピンドル50を備えており、該スピンドル50は、上リングプレート20に支持されスピンドル回転軸5000(
図1においては、下回転軸2611と同軸)を軸にモータ51によって回転可能となっている。該略円柱状の空間は、
図1においては水平面に直交するようにZ軸方向に延在するスピンドル50が、
図3に示すように傾くことを許容する大きさに設定されている。そして、スピンドル50の上端には、テーブルベース32の下面が接続されている。
【0028】
モータ51は、例えば、DDモータ(ダイレクトドライブモータ)であり、減速機構が無いため高速性、及び高応答性に優れ、また、テーブル回転手段5全体を小型化することができる。なお、モータ51はDDモータに限定されるものではない。
【0029】
図1に示すように、枠体301の凹部の底面からテーブル回転手段5のスピンドル50の下部側にかけては、吸着部300に連通する吸引流路590が形成されている。該吸引流路590は、スピンドル50の下部側に配設されたテーブル側ロータリージョイント591を介して、エジェクター機構又は真空発生装置等のテーブル側吸引源59に連通している。テーブル側ロータリージョイント591は、テーブル側吸引源59が生み出す吸引力を遺漏無く回転するスピンドル50側に移送する。
【0030】
テーブル回転手段5は、スピンドル50を回転可能に支持するベアリング機構58、及びベアリング機構58を支持する支持プレート57を備えている。
図1に示す例においては、ベアリング機構58は、スラストボールベアリング機構となっているが、ローラーベアリング機構や、エアベアリング機構であってもよい。
ベアリング機構58は、例えば、図示しない外輪、スピンドル50が挿通される挿通孔を備える内輪、転動体保持器、及びボール等の転動体582等で構成されている。図示の例において、ベアリング機構58は、スピンドル50の上部側に上下に2つ配設されているが、これに限定されるものではない。
【0031】
例えば、平面視略円形の板状の支持プレート57の外周側の領域には、固定ボルト577が挿通される図示しないボルト挿通孔が周方向に等間隔をおいて複数厚み方向に貫通形成されている。該ボルト挿通孔と上リングプレート20の上面200に形成された雌ネジ穴2001(
図2参照)とを重ね合わせて固定ボルト577をボルト挿通孔に通して雌ネジ穴2001に螺合させることにより、支持プレート57が上リングプレート20の上面200に固定される。
【0032】
本実施形態においては、
図1に示す上リングプレート20の下面202と下リングプレート22の上面220との間に備える第1ベアリング27、及び下リングプレート22の下面222と基台10の上面1011との間に備える第2ベアリング28は、エアベアリングで構成される。そして、連結手段4は、エアベアリングである第1ベアリング27及び第2ベアリング28を形成させるための流路40を、
図1に示す吸引源49に連通させる構成となっている。以下、連結手段4を実施形態1の連結手段4とする。
【0033】
例えば、
図1に示すように、下リングプレート22の上面220には、上方に向かってエアを噴射する上面エア噴射路2201が周方向に均等間隔を空けて開口している。また、下リングプレート22の下面222には、下方に向かってエアを噴射する下面エア噴射路2221が周方向に均等間隔を空けて開口している。上面エア噴射路2201及び下面エア噴射路2221は、例えば、下リングプレート22の内部において合流した後、下リングプレート22の内側面に複数開口しており、ホースニップル、継手、及びロータリージョイント421等を介して、下リングプレート22の回転を妨げないように可撓性を備える樹脂チューブ423に連通している。
なお、
図2においては、上面エア噴射路2201及び下面エア噴射路2221の下リングプレート22の内側面における開口を一か所だけ図示しているが、一か所だけでなく複数個所開口しており、各開口にそれぞれ樹脂チューブ423の一端側が、上記ロータリージョイント421等を介して連通している。
【0034】
樹脂チューブ423の他端側は、図示しない三方管を介して分岐して、
図1に示す吸引管490の一端及びエア供給管480の一端に連通している。
吸引管490のもう一端側は、真空発生装置、又はエジェクター機構等の吸引源49に接続されている。例えば、吸引管490内には、流路40と吸引源49との連通を開閉するソレノイドバルブ等の吸引開閉弁491が配設されている。
【0035】
エア供給管480のもう一端側は、コンプレッサー等からなるエア源48に接続されている。例えば、エア供給管480内には、流路40とエア源48との連通を開閉するソレノイドバルブ等のエア供給開閉弁481が配設されている。
【0036】
本実施形態においては、以上説明した上面エア噴射路2201、下面エア噴射路2221、ロータリージョイント421等、樹脂チューブ423、及びエア供給管480によってエアベアリングである第1ベアリング27及び第2ベアリング28を形成させるための流路40が形成される。
【0037】
以下に、
図1に示す傾き調整機構2を用いてチャックテーブル30の保持面3001の傾きを調整して、被加工物を吸引保持して研削加工を行える状態とする場合について説明する。
例えば、保持面3001上には、図示しない被加工物が載置されており、テーブル側吸引源59が生み出す吸引力が保持面3001に伝達されることで、チャックテーブル30は保持面3001で被加工物を吸引保持した状態になっている。
【0038】
例えば、まず、
図1に示すように、上リングプレート20の下面202と下リングプレート22の上面220との間にエアベアリングである第1ベアリング27が形成されるとともに、下リングプレート22の下面222と基台10の上面1011との間にエアベアリングである第2ベアリング28が形成される。即ち、エア供給開閉弁481が開かれた状態になり、エア源48が送り出す圧縮エアが、エア供給管480、樹脂チューブ423、上面エア噴射路2201、及び下面エア噴射路2221を通り、上リングプレート20の下面202、及び基台10のベースプレート101の上面1011に向かって噴射される。
【0039】
その結果、上リングプレート20の下面202と下リングプレート22の上面220との間に、第1ベアリング27がエアベアリングとして形成されるとともに、下リングプレート22の下面222と基台10の上面1011との間に、第2ベアリング28がエアベアリングとして形成される。即ち、上リングプレート20が第1ベアリング27によって非接触で浮動支持され回転可能となり、また、下リングプレート22が第2ベアリング28によって非接触で浮動支持され回転可能となる。
第1ベアリング27及び第2ベアリング28を形成したエアは、逐次下リングプレート22の外側及び開口229側へと抜けて行く。
【0040】
次いで、上リングプレート20又は下リングプレート22の少なくともいずれか一方を回転させる。本実施形態においては、例えば、上リングプレート20のみを回転させるが、下リングプレート22のみを回転させてもよいし、上リングプレート20及び下リングプレート22の両方を回転させてもよい。
なお、下リングプレート22を回転させる事によって、下リングプレート22の上面220に対する上回転軸2411の傾き方向が変化する。上回転軸2411の傾きに応じて、上リングプレート20の下面202の傾きも変化する。
図1に示す上リングプレート駆動モータ243の生み出す回転駆動力が、主動平ギア241及び従動ギア244(
図2参照)に伝達されることで、上リングプレート20と共にテーブル回転手段5の支持プレート57が回転する。したがって、下リングプレート22の周方向の各位置において、対向する上リングプレート20の厚みが変化していく。
【0041】
上リングプレート20が、保持面3001を所望の角度だけ水平面に対して傾斜できるように所定角度回転された後に、上リングプレート20の回転が停止される。
さらに、
図3に示すように、エア供給開閉弁481が閉じられることで、流路40とエア源48との連通が遮断されて、エアベアリングである
図1に示す第1ベアリング27及び第2ベアリング28が消失する。その結果、下リングプレート22の下面222が基台10の上面1011に着座する。さらに、下リングプレート22の上面220と面一になるように上リングプレート20の下面202が上面220に着座する。そして、上リングプレート20にテーブル回転手段5の支持プレート57及びベアリング機構58を介して連結されたスピンドル50が、
図1に示す水平面に直交する状態(Z軸方向に平行に延在している状態)から、水平面に対して所定角度傾いた状態となる。また、スピンドル50の上端にテーブルベース32を介して連結されたチャックテーブル30の保持面3001の角度も、
図1に示す水平面に対して平行な状態から、
図3に示すように所望の角度だけ傾斜した状態になる。
【0042】
さらに、
図3に示すように、吸引開閉弁491が開かれて、吸引源49が生み出す吸引力が、吸引管490、樹脂チューブ423、上面エア噴射路2201、及び下面エア噴射路2221を通り、下リングプレート22の上面220及び下面222に伝達され、該吸引力によって上リングプレート20と下リングプレート22とが吸着固定され、かつ、下リングプレート22と基台10とが吸着固定された状態になる。即ち、連結手段4によって、上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10が連結された状態になる。
【0043】
本実施形態においては、
図3に示すズレ規制部228によって上リングプレート20と下リングプレート22との横ズレが防止される状態になり、また、ズレ規制部227によって下リングプレート22と基台10との横ズレが防止される状態になる。
【0044】
図3に示すように、保持面3001の傾きが所望の角度に調整されたチャックテーブル30によって被加工物を保持して図示しない加工手段で研削する場合は、モータ51がベアリング機構58によって回転可能に支持されているスピンドル50を回転させることで、スピンドル50に連結されたチャックテーブル30も回転する。
【0045】
チャックテーブル30の保持面3001の傾きを調整する本発明に係る傾き調整機構2は、上リングプレート20又は下リングプレート22の少なくともいずれか一方を回転させ保持面3001の傾きを調整した後、連結手段4で上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を連結することで、従来のチャックテーブルの下方に配設された3本の上下動可能な柱や、3つの上下動可能なブロックでチャックテーブルを支持し、かつ保持面の傾きを調整可能とする傾き調整機構よりも、チャックテーブル30を支持する面積が広くなったことにより、高剛性でチャックテーブル30を支持することができる。そのため、高荷重をかけて研削砥石等を備える加工手段でチャックテーブル30に保持された被加工物を例えば研削する際においても、研削中に研削砥石の下面に対する保持面3001の平行度が変わってしまうことが無いため、研削後の被加工物の厚み精度を均一にすることが可能となる。
【0046】
本発明に係る傾き調整機構2において、第1ベアリング27と第2ベアリング28とを、
図1に示すようにエアベアリングで構成し、連結手段4は、エアベアリングである第1ベアリング27及び第2ベアリング28を形成させるための流路40を吸引源49に連通させる構成とすることで、上リングプレート20又は下リングプレート22の少なくともいずれか一方を回転させチャックテーブル30の保持面3001の傾きを調整した後、エアベアリングとして形成されている第1ベアリング27と第2ベアリング28とを
図3に示すように容易に消失させることができ、さらに、上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を吸引源49が生み出す吸引力によって容易に連結させることが可能となる。
【0047】
本発明に係る傾き調整機構2は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている加工装置の基台10やチャックテーブル30の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、実施形態1の連結手段4において、エアベアリングである第1ベアリング27や第2ベアリング28を形成するための流路は、
図1、3に示す流路40に代えて、
図4に示す第2流路401及び第1流路402で形成されていてもよい。なお、
図4における傾き調整機構2は、チャックテーブル30の保持面3001を水平面に対して傾ける前の状態を示している。
【0049】
例えば、
図4に示す例において、第2流路401は、エアベアリングである第2ベアリング28を形成するための流路であり、エア供給管480、樹脂チューブ423、継手424、及びベースプレート101内に形成され上面1011上で開口する第2エア噴射路425で構成されている。そして、第2エア噴射路425の上面1011における開口から、下リングプレート22の下面222に対して圧縮エアを噴射して、下リングプレート22の下面と基台10の上面1011との間に下リングプレート22を浮動支持する第2ベアリング28を形成する。
【0050】
図4に示す第1流路402は、エアベアリングである第1ベアリング27を形成するための流路であり、以下に説明するように構成されている。
例えば、エア源48には、
図4に示す第1エア供給管483の一端が連通しており、第1エア供給管483上には第1エア供給開閉弁484が配設されている。第1エア供給管483の他端側は、例えば、テーブル側ロータリージョイント591を介してスピンドル50内に形成されたスピンドル内供給路500の下端側(一端側)に連通している。
【0051】
例えば、スピンドル内供給路500は、スピンドル50の上部においてスピンドル50の径方向外側に向かって複数分岐しており、該複数に分岐したスピンドル内供給路500の他端側は、支持プレート57及び上リングプレート20を通り、上リングプレート20の下面202においてそれぞれ第1エア噴射口5001として開口している。そして、第1エア噴射口5001から、下リングプレート22の上面220に対して圧縮エアを噴射して、上リングプレート20を浮動支持する第1ベアリング27を形成する。
【0052】
なお、第1流路402は、スピンドル50内等を通さず、例えば樹脂チューブ等で構成される第1エア供給管483がロータリージョイント等を介して直に接続され、上リングプレート20の下面202の第1エア噴射口5001から圧縮エアを噴射できるようになっていてもよい。
【0053】
例えば、第1エア供給管483の第1エア供給開閉弁484よりも下流側には、第1エア吸引管494が図示しない三方管等を介して連通しており、第1エア吸引管494は、吸引源49と連通している。そして、第1エア吸引管494には第1エア開閉弁495が配設されている。
【0054】
図4に示す傾き調整機構2において、上リングプレート20又は下リングプレート22の少なくともいずれか一方を回転させチャックテーブル30の保持面3001の傾きを調整した後、連結手段4で上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を連結する場合には、吸引源49が生み出す吸引力が、第1エア吸引管494、第1エア供給管483の第1エア供給開閉弁484よりも下流側の部分、スピンドル内供給路500を通り、上リングプレート20の下面202に伝達され、また、吸引源49が生み出す吸引力が、吸引管490、樹脂チューブ423、及び第2エア噴射路425を通り、基台10の上面1011に伝達される。
【0055】
傾き調整機構2の連結手段4は、例えば、
図3に示す構成に限定されるものではない。傾き調整機構2は、例えば、
図5に示す連結手段41を備えていてもよい。以下、連結手段41を実施形態2の連結手段41とする。
【0056】
実施形態2の連結手段41は、
図3に示す実施形態1の連結手段4が、流路40を吸引源49に連通させて、吸引源49の生み出す吸引力で上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を連結させる構成であるのに対して、上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を磁着可能に電磁石45を配置して構成される。
【0057】
例えば、少なくとも下リングプレート22は、高剛性でかつ磁力で引きつけられる材質(例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の金属又はフェライト等のセラミックス)で構成されている。
電磁石45は、例えば、軟鉄心にコイルを巻きつけて構成されており、上リングプレート20の内部の下面202側に周方向に均等間隔を空けて複数配設されている。また、電磁石45は、基台10のベースプレート101の内部の上面1011側に周方向に均等間隔を空けて複数配設されている。なお、電磁石45は、例えば、上リングプレート20(基台10のベースプレート101)の内部において、上リングプレート20(ベースプレート101)を一周するように環状に形成されていてもよい。
各電磁石45のコイルには、電力供給源46が接続されている。
【0058】
図5に示す傾き調整機構2は、チャックテーブル30の保持面3001を水平面に対して傾ける調整をした後に、連結手段41の各電磁石45に電力供給源46から電力が供給されることで、各電磁石45が磁力を発生させる。そして、上リングプレート20を下リングプレート22に磁着させるとともに、下リングプレート22を基台10に磁着させている。即ち、連結手段41で上リングプレート20、下リングプレート22、及び基台10を、容易に連結した状態にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10:基台 100:基台の開口 101:ベースプレート 1011:基台の上面
107:防水カバー 105:側板 106:天板
2:傾き調整機構
20:上リングプレート 200:上リングプレートの上面 2001:雌ネジ穴 202:上リングプレートの下面
22:下リングプレート 220:下リングプレートの上面 222:下リングプレートの下面 2201:上面エア噴射路 2221:下面エア噴射路
24:上回転手段 244:従動ギア 241:主動平ギア 243:上リングプレート駆動モータ 2411:上回転軸
26:下回転手段 264:従動ギア 261:主動平ギア 263:下リングプレート駆動モータ 2611:下回転軸
27:第1ベアリング
28:第2ベアリング
30:チャックテーブル 300:吸着部 301:枠体 3001:保持面
32:テーブルベース
4:実施形態1の連結手段 40:流路 423:樹脂チューブ 421:ロータリージョイント
48:エア源 49:吸引源
5:テーブル回転手段 50:スピンドル 51:モータ 5000:スピンドル回転軸
590:吸引流路 591:テーブル側ロータリージョイント 59:テーブル側吸引源
58:ベアリング機構 582:転動体 57:支持プレート 577:固定ボルト
402:第1流路 483:第1エア供給管 500:スピンドル内供給路 5001:第1エア噴射口
401:第2流路 425:第2エア噴射路
41:実施形態2の連結手段 45:電磁石 46:電力供給源