(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】熱化学気相堆積(CVD)における均一性を改善するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/46 20060101AFI20231114BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20231114BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231114BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C23C16/46
C23C16/44 Z
C23C16/455
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2020506157
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 US2018046344
(87)【国際公開番号】W WO2019033052
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-03
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, ツーピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナキラマン, カーティック
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-142329(JP,A)
【文献】特開2002-299240(JP,A)
【文献】特開2017-112371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108066(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0164948(US,A1)
【文献】特表2015-529395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0334344(US,A1)
【文献】特開昭52-111470(JP,A)
【文献】特開平06-283431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0099147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に膜を堆積させるための装置であって、
処理容積室を内側に画定するチャンバ本体及びチャンバリッドと、
前記処理容積室内に配置された基板支持体と、
前記処理容積室内において前記基板支持体と対向して配置された遮蔽板であって、前記遮蔽板にはそれを貫通する複数の孔が形成されている、遮蔽板と、
複数の孔がそれを貫通して形成された面板であって、前記面板は、前記処理容積室において前記遮蔽板と前記基板支持体との間に配置され、前記面板は、前記面板と前記遮蔽板との間に容積室を少なくとも部分的に画定し、前記面板は、第1の表面領域と、前記第1の表面領域を取り囲む第2の表面領域と、を有し、前記第1の表面領域は、前記第2の表面領域に対して相対的に凹状とされている、面板と
を含む、基板に膜を堆積させるための装置。
【請求項2】
前記第1の表面領域は第1の放射率を有し、前記第2の表面領域は第2の放射率を有し、前記第2の放射率は前記第1の放射率とは異なる、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の表面領域は第1の厚さを有し、前記第2の表面領域は第2の厚さを有し、前記第2の厚さは、前記第1の厚さとは異なる、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記
遮蔽板は、
前記第1の表面領域を貫通して形成された第1の複数のガス分配孔であって、前記第1の複数のガス分配孔は第1の密度を有し、前記第1の複数のガス分配孔の各々は第1の直径を有する、第1の複数のガス分配孔と、
前記第2の表面領域を貫通して形成された第2の複数のガス分配孔であって、前記第2の複数のガス分配孔は第2の密度を有し、前記第2の密度は前記第1の密度とは異なり、前記第2の複数のガス分配孔の各々は第2の直径を有し、前記第2の直径は前記第1の直径とは異なる、第2の複数のガス分配孔と
をさらに含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
複数の孔がそれを貫通して形成された放射遮蔽体をさらに含み、前記放射遮蔽体は、前記処理容積室内において、前記基板支持体が前記面板と前記放射遮蔽体との間に存在するように、前記面板に対向して配置され、前記放射遮蔽体は、前記基板支持体のシャフトの周りに配置されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記放射遮蔽体の前記複数の孔は、第1の環状パターン、第2の環状パターン、及び第3の環状パターンで配置され、前記第1の環状パターン及び前記第2の環状パターンは、第1の密度による孔を有し、前記第3の環状パターンは、第2の密度による孔を有し、前記第1の環状パターン、前記第2の環状パターン、及び前記第3の環状パターンは各々、前記放射遮蔽体の共通軸の周囲に形成される、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記シャフトは、径方向にガスを流すために、前記基板支持体に隣接する前記シャフトの上端に、貫通して形成された複数の孔を含む、請求項
5に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の放射率は前記第2の放射率より高い、請求項
2に記載の面板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、特に、熱化学気相堆積(CVD:chemicalvapordeposition)プロセスにおける堆積の均一性を改善するための装置及び方法に関する。具体的には、本開示は、面板、遮蔽板、放射遮蔽体、及び基板支持アセンブリ、並びにこれらを利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、様々な技法により堆積された材料の複数の層を含んでおり、上記技法の1つが、化学気相堆積(CVD)である。CVDを介して基板に堆積された材料の不均一性は、装置の性能に影響を与える可能性があり、完成した集積回路のエラーの可能性を下げるために、更なる処理の前に平坦化を行うことが必要となりうる。堆積された材料の不均一性は、基板に亘る温度差に起因しうる。
【0003】
図1は、処理チャンバ内での流体の流れの概略図である。上記の流体の流れの図は元々、PrasadN.Gadgil著による「Single Wafer Processing in Stagnation Point Flow CVD Reactor: Prospects,Constraints and Reactor Design」というタイトルで、Journal of Electronic Materials(第22巻、No. 2、1993年)に開示されている。本図に示すように、ガスの流れのパターンによって、基板の表面に亘って、軸方向に均一な境界層が生まれ、上記流れの中央によどみ点が存在する。基板が載置される基板支持体には、基板の温度を調整するためのヒータが具備されている。
【0004】
図1では、
は、基板の上方の熱境界層の厚さを示している。ガスが流れている間に、基板上で堆積層が成長する。堆積層の成長率は、熱境界層の厚さ
に比例している。
【0005】
速度境界層の厚さ
は、以下の数式が示すように、流入速度と、面板と基板との間の間隙と、動粘性率(ガス特性と温度との関数)とに依存する。
但し、
は動粘性率を示し、
は間隙を示し、
は流入速度を示す。
【0006】
熱境界層の厚さ
は、速度境界層の厚さ
に比例し、以下の数式で示すように、プラントル数(Pr:Prandtl Number)(大抵のガスについて0.7)と等しい。
【0007】
よどみ点の流れが理想的であると、境界層は、基板/基板支持体の表面に亘って均一である。しかしながら、基板/ヒータの温度プロファイルの不均一性によって、薄膜の堆積の厚さが不均一となる。従って、基板及び/又は基板支持体の温度プロファイルの均一性を向上させるための改良された装置に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
1の態様において、本体を含む面板が提供される。本体は、第1の表面領域と、第1の表面領域を取り囲む第2の表面領域と、を含む。第1の表面領域は、第2の表面領域に対して相対的に凹状とされている。第1の複数の孔は、第1の表面領域内の面板を貫通して形成されている。第2の複数の孔は、第2の表面領域内の面板を貫通して形成されている。
【0009】
他の実施形態では、本体を含む遮蔽板が提供される。本体は、第1の表面領域と、第1の表面領域を取り囲む第2の表面領域と、を含む。第1の表面は第1の放射率を有し、第2の表面は第2の放射率を有する。第2の放射率は、第1の放射率とは異なっている。複数のガス分配孔が、第1の表面領域内及び第2の表面領域内に遮蔽板を貫通して形成されている。第1の表面領域内のガス分配孔は、第1の密度を有する。第2の表面領域内のガス分配孔は、第1の密度とは異なる第2の密度を有する。第1の表面領域内のガス分配孔は、第1の流れプロファイルを有し、第2の表面領域内のガス分配孔は、第2の流れプロファイルを有する。第2の流れプロファイルは、第1の流れプロファイルとは異なっている。
【0010】
更に別の実施形態では、基板上に膜を堆積させるための方法が提供される。装置は、処理容積室を内側に画定するチャンバ本体及びチャンバリッドを含む。基板支持体は、処理容積室内に配置されている。複数の孔が貫通して形成された遮蔽板が、処理容積室内において、基板支持体に対向して配置されている。複数の孔が貫通して形成された面板が、処理容積室内において、遮蔽板と基板支持体との間に配置されている。面板と遮蔽板との間の容積室は、少なくとも部分的に面板によって画定される。面板は、第1の表面領域と、第1の表面領域を取り囲む第2の表面領域と、を有する。第1の表面領域は、第2の表面領域に対して相対的に凹状とされている。
【0011】
本開示の上述の特徴が詳細に理解出来るように、上記で簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、態様を参照することによって得られる。一部の態様は、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は例示的な態様を示すものであり、従って、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、本開示は、他の等しく有効な態様も許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】処理チャンバ内の流体の流れの概略図である。
【
図2】基板持体の表面の例示的なヒータのIR(infrared)マッピングを示す。
【
図3】本開示に係る、ガス分配アセンブリ及び基板支持アセンブリを備えるCVD処理チャンバの一実施形態の断面図である。
【
図4A】本開示の一実施形態に係る面板の一例を示す。
【
図4B】従来の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示す。
【
図4C】本開示の態様に係る面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示す。
【
図5B】従来の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示す。
【
図5C】本開示の態様に係る面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示す。
【
図6B】堆積層の2つの例示的な直径の走査輪郭を示しており、一方は、従来の遮蔽板を用いて形成され、他方は、本開示の態様に係る遮蔽板を用いて形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一態様の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の態様に有益に組み込まれうると想定される。
【0014】
本開示は、均一な熱プロファイル及び処理ガスの均一な分配を提供する処理チャンバ、処理チャンバの構成要素、及びプロセスに関する。本開示の態様によって、基板上のより均一な堆積輪郭が促進される。
【0015】
図2は、基板支持体の表面の例示的なヒータのIR(infrared)マッピングを示している。図に示されるIRマッピングは、基板支持体の表面に亘る均一な温度プロファイルというよりは、基板支持体の表面には、上記表面に亘る様々な位置で温度差があることを示している。このような温度差は、ヒータの性能変動により引き起こされうる。CVDプロセスは、処理温度に影響を受けやすい。さらに、基板支持体の表面に亘る温度むらは、熱CVDプロセスに不均一性をもたらす可能性があり、結果として、例えば堆積が不均一となる。
【0016】
本開示は、基板の表面及び基板支持体の表面に亘る温度分布をより均一にするための装置を提供する。
【0017】
図3は、ガス分配アセンブリ及び基板支持アセンブリを備える処理チャンバ100の一実施形態の断面図である。処理チャンバ100は入口103を備え、この入口103を通って、処理ガスが、液体及び/又は気体の状態で処理薬品を貯蔵するガスパネル(図示せず)から、処理チャンバ100に進入することが可能である。処理チャンバ100の壁部106は、実質的に円筒形状をしており、チャンバの内部を画定する。しかしながら、他の形状も想定される。処理チャンバ100は、遮蔽板104、面板200、及び、チャンバ100の中に配置された基板支持体110をさらに備える。
【0018】
遮蔽板104は、処理ガスをガス混合容積室102へと伝達するための複数の孔を有しており、ガス混合容積室102では、処理ガスが互いに混合されて、混合ガスが形成される。幾つかの実施形態において、処理チャンバ100は、混合容積室をその間で画定する2つの遮蔽板を含む。遮蔽板104は、径方向に外側のその端部が、アダプタリング部107により構造的に支持されている。ガス混合容積室102によって、主処理チャンバ容積室108に入る前に処理ガスを混合するための空間が提供される。
【0019】
面板200には、貫通する複数の孔が形成されている。ガス混合容積室102からの混合ガスは、面板200に形成された複数の孔を通って、主処理チャンバ108へと分配され、基板支持体110により支持される基板の上面での材料の堆積が促進される。主処理チャンバ容積室108は、面板200の底部側と、基板支持体110の上面(例えば、基板支持表面)と、の間に配置されている。面板200を貫通して形成された複数の孔によって、主処理チャンバ容積室108のための均一なガス入口の分散が創出される。
【0020】
基板を支持する基板支持体110は、シャフト114を備える。底板118がシャフト114を取り囲んでおり、下方チャンバ壁部120の開口部をシールしている。基板支持体110には、基板の温度を調整するヒータ112が具備されている。一実施形態において、ヒータ112が、処理チャンバ100内の主処理チャンバ容積室108の温度を調整する。
【0021】
一実施形態において、処理チャンバ100は複数のヒータを備え、各々に、以下に記載するように、温度、ガス流、又は堆積の均一性の1つ以上を改善するために、様々な面板の輪郭及びパターン、並びに、遮蔽板の輪郭及びパターンが設けられる。
【0022】
他の実施形態において、処理チャンバ100は、温度プロファイルに基づいてグループ化された複数のヒータを備える。各ヒータ群が、或る温度プロファイルについて、本開示に記載する放射率のパターン、面板の輪郭及びパターン、並びに、遮蔽板の輪郭及びパターンにより補償する。
【0023】
処理ガスは、入口103を通って処理チャンバ100に進入する。処理ガスは、第1の遮蔽板104に設けられた複数の孔を通過して、ガス混合容積室102の中に入る。処理ガスは、シリコン前駆体及び/又は窒素前駆体を含みうる。シリコン前駆体は、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサクロロジシラン(HCD)、ビス・ターシャル・ブチル・アミノ・シラン(BTBAS)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、及び、他の多くを含みうる。他の処理ガス及びその成分も想定される。
【0024】
処理ガスは、ここで、第1の遮蔽板104の下方に配置されたガス混合容積室102を通って進む。第1の遮蔽板104は、アダプタリング部107によって構造的に支持されうる。ガス混合容積室102によって、主処理チャンバ容積室108に入る前に処理ガスを追加的に混合するための空間が提供される。
【0025】
ガス混合容積室102の下流では、ガスは面板200を通って流れて、主処理容積室108に進入する。先に言及したように、主処理容積室108は、チャンバ壁部106と、面板200と、基板支持体110と、によって画定される。主処理容積室108の内部で、処理ガスが、熱的及び/又は化学的に分解されて、材料が基板の表面上に堆積させられる。未反応の処理ガス、及び反応の副生成物は、排気口(図示せず)を通って処理チャンバ100を出る。幾つかの実施形態において、処理チャンバ100は、基板の処理を促進するために、ガス供給入口、ガスミキサ、プラズマ源、及び、1つ以上のガス分配アセンブリをさらに備えうる。
【0026】
図4Aは、本開示に係る面板200を示している。面板200は本体202を含み、本体202には、貫通する複数のガス分配孔201が形成されている。ガス分配孔201によって、混合容積室102が、
図3で示した主処理チャンバ容積室108へと流体的に接続される。本体202は円筒形状で示されているが、矩形を含む他の形状も想定される。本体202は、石英、窒化ケイ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、及び、ステンレス鋼といった1つ以上の物質から形成されうる。
【0027】
面板200は、その底面での放射率が様々な複数の領域を含んでいる。一実施形態において、面板200は、第1の領域205及び第2の領域210を含む。第1の領域205は、第1の放射率を有する、面板200の中央領域であり、第2の領域210は、第1の領域205を取り囲む周辺領域であり、第1の放射率とは異なる第2の放射率を有している。例えば、第1の領域は、第2の領域の半径の約20%から40%の範囲内の半径を有している。
【0028】
面板の放射率は、熱放射としてのエネルギー放出時の面板の効率を指している。例えば、放射率がより高い表面は、放射率がより低い他の表面より多量の熱を反射する。一実施形態において、第1の領域と第2の領域との間の放射率の差は、約0.1%から20%の範囲内にある。
【0029】
様々な放射率を獲得するために、面板200の表面は、様々な領域が様々な滑らかさ又は質感により仕上げられ(例えば、研磨され)うる。上記領域の様々な表面仕上げによって、結果的に、放射率が様々になる。様々な放射率によって、結果的に、各それぞれの領域から基板の表面に向かって反射される熱量に相対的差異が生じるようになる。様々な放射率を有する複数の領域を有する面板200によって、面板200の各領域の大きさ、位置、及び放射率に従った、基板の様々な位置での基板の温度の制御が可能となる。面板200上の領域の位置及び大きさ、並びに、このような領域の放射率の値は、基板及び/又は基板支持体110での温度変動を低減するよう設定されうる。例えば、面板200上の放射率がより高い1の領域の位置及び大きさが、基板及び/又は基板支持体110上のより冷たいエリアの位置及び大きさに対応するよう設定されうる。放射率がより高い領域の放射率の値は、基板及び/又は基板支持体110上のより冷たいエリアの温度に従って、かつ当該温度に応じて決定されうる。温度均一性は、基板上の材料の堆積率に関係しており当該堆積率に影響を与えるため、基板に亘る温度均一性の改善によって、対応して結果的に、基板上での堆積の均一性が改善されることになる。
【0030】
図4Bは、従来の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示している。
図4Bでは、横軸が、面板の中心からの径方向の距離を表し、縦軸が、基板上の堆積層の、規格化された厚さを示している。従来の面板を用いた直径の走査輪郭は、堆積層の規格化された厚さが、基板の中央領域(約0mm~50mm)では、おおよそ0.87から0.95まで変動することを示している。
【0031】
図4Cは、
図4Aの面板200といった、本開示の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示している。面板から得られた直径の走査輪郭では、堆積層の規格化された厚さが、基板の中央領域内では、0.98から1まで変動することが示されている。
【0032】
図4B及び
図4Cの上記2つの走査輪郭を比較すると、面板の中央領域の放射率を調整することで、基板の中央領域内の膜堆積の厚さの変動が、0.13(1-0.87)から約0.02(1-0.98)に著しく減少しており、堆積層の均質性が約11%上がっていることが分かる。
【0033】
先に示したように、面板の様々な領域の放射率が、基板及び/又は基板支持体の熱的な不均一性を補償して改善するために調整されうる。熱的な均一性が改善されることによって、対応して結果的に、堆積の均一性が改善されることになる。しかしながら、本明細書における態様は、面板の同心的な領域に関して説明しているが、放射率を変える様々な他のパターン又は構成が、面板の下面で利用されうると想定されることに注意されたい。
【0034】
図5Aは、本開示の態様に係る、面板300の他の例を示している。面板300は、複数のガス分配孔301がそれを貫通して形成された本体302を含み、複数のガス分配孔301が、
図3に示したように、ガス混合容積室102を主チャンバ処理容積室108へと流体的に接続する。本体302は、円筒形状で示されているが、矩形を含む他の形状も想定される。本体302は、石英、窒化ケイ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、及び、ステンレス鋼といった1つ以上の物質から形成されうる。
【0035】
一実施形態において、面板300は、第1の領域305、及び第2の領域310を含んでいる。面板300は、厚さプロファイルが様々な複数の領域を含んでおり、従って、その底面は非平面的である。例えば、第1の領域305の厚さと第2の領域310の厚さとの差は、約5%から45%の範囲内にありうる。第1の領域305は、第1の厚さを有する面板300の中央領域である。第2の領域310は、第1の領域305を取り囲む周辺領域であり、第1の厚さとは異なる第2の厚さを有する。
【0036】
一実施形態において、第1の領域305の厚さは、第2の領域310の厚さよりも薄い。本実行形態では、第1の領域305は、第2の領域310に対して相対的に凹状とされている。上記凹部は、浅い円筒形状、又は、基板及び/又は基板支持体110に向かって反射される熱の調整を促進する他の適切な形状を含む様々な形状を有することが可能である。
【0037】
面板300の様々な厚さによって、熱を分散させる代わりに、より長い期間の間面板300より下方で熱を保つ空間(例えば、凹部)が提供されうる。熱を保持することによって、互いに近隣に配置された基板の温度調整が促進され、従って、基板の温度の均一性の改善が可能となる。従って、厚さが様々な複数の領域を有する面板300によって、面板300の表面に形成された領域(例えば、凹部)の大きさ、位置、及び形状に従った、特定のエリアでの基板の温度の制御が可能となる。
【0038】
一実施形態において、面板300は、その底面が、放射率が様々な複数の領域を含みうる。例えば、第1の領域305は、放射率がより高くなるよう表面が仕上げられた凹部を有することが可能であり、第2の領域310は、放射率がより低くなるよう表面が仕上げられてよい。本実施例では、非平面的な表面の特徴と、変更される放射率と、を組み合わせることによって、面板300が、基板の温度に対するより規模が大きな制御を提供する。
【0039】
図5Bは、従来の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の直径の走査輪郭の一例を示している。
図5Bでは、横軸が、遮蔽板の中心からの径方向の距離を表し、縦軸が、基板上の堆積層の、規格化された厚さを示している。従来の遮蔽板を用いた直径の走査輪郭は、堆積層の規格化された厚さが、基板の中央領域(約0mm~50mm)では、おおよそ0.87から0.95まで変動することを示している。
【0040】
図5Cは、
図5Aの面板300といった、本開示の面板を用いたCVDプロセスから生成された堆積層の例示的な直径の走査輪郭を示している。面板300から得られた直径の走査輪郭では、堆積層の規格化された厚さが、基板の中央領域では、0.97から1まで変動することが示されている。
【0041】
図5B及び
図5Cの上記2つの走査輪郭を比較すると、面板300の中央領域305の放射率及び/又は相対的な位置を調整することで、基板の中央領域での膜堆積の厚さの変動が、0.13(1-0.87)から約0.03(1-0.97)に著しく減少しており、堆積層の均質性が約10%上がっていることが分かる。
【0042】
図6Aは、本開示の態様に係る遮蔽板400を示している。遮蔽板400は、
図3に示す処理チャンバ100の遮蔽板104の代わりに使用されうる。
【0043】
本開示の態様に係る遮蔽板400は、流れプロファイルが様々な複数の領域を有する本体402を含んでいる。本体402は、円筒形状で示されているが、矩形を含む他の形状も想定される。本体402は、石英、窒化ケイ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、及び、ステンレス鋼といった1つ以上の物質から形成されうる。一実施形態において、遮蔽板400は、第1の領域405及び第2の領域410を含む。第1の領域405は、第1の流れプロファイルを有する遮蔽板400の中央領域であり、第2の領域410は、第1の領域405を取り囲む周辺領域であり、第1の流れプロファイルとは異なる第2の流れプロファイルを有している。
【0044】
様々な流れプロファイルを獲得するために、遮蔽板400の各領域は、様々な密度及び様々な直径による、遮蔽板400を貫通して形成された孔を含みうる。一実施形態において、第1の領域405は、孔の密度がより高く、第2の領域410は、孔の密度がより低い。代替的に、第1の領域405は、孔の密度がより低くてよく、第2の領域410は、孔の密度がより高くてよい。他の実施形態において、第1の領域405が、直径がより大きい孔を有し、第2の領域410が、直径がより小さい孔を有している。代替的に、第1の領域405は、直径がより小さい孔を有してよく、第2の領域410は、直径がより大きい孔を有してよい。
【0045】
概して、遮蔽板に設けられた密度がより高い孔又は直径がより大きい孔によって、より大きな流れプロファイルが生成され、遮蔽板に設けられた密度がより低い孔又は直径がより小さい孔によって、より小さな流れプロファイルが生成される。直径がより大きい孔又は密度がより高く配置された孔を通るガス流が増加すると、結果的に、前駆体材料の比較的より大きなガス流量を受け取る領域での、基板上の材料の堆積が増大することになる。従って、堆積の均一性が、ガス流量の調節を通じて改善されうる。同様に、遮蔽板の領域を通るガス流量が増大すると、結果的に、遮蔽板400(又はその近傍の面板)が局所的に冷却されることになり、堆積プロファイルの調整がさらに促進される。
【0046】
遮蔽板400は、孔の大きさ/密度が異なる領域に加えて、放射率が異なる又は相対的厚さが様々な複数の領域も含みうることが想定される。従って、温度及び堆積の均一性が、遮蔽板の表面に亘る複数の変更を通じてさらに調整されうる。
【0047】
流れプロファイルが様々な複数の領域を含む遮蔽板400によって、各領域内に形成された孔の数、大きさ、及び位置に従った、基板の温度の制御が可能となる。その結果、基板の温度が制御されることによって、基板の表面の堆積の均一性が改善される。
【0048】
図6Bは、2つの例示的な直径の走査輪郭を示しており、一方は、従来の(即ち、旧型の)遮蔽板についての堆積層の直径の走査輪郭であり、他方は、
図6Aに示した遮蔽板400といった、本開示に係る遮蔽板の直径の走査輪郭である。2つの直径の走査輪郭の比較によって、選択された領域内での遮蔽板の表面に亘る遮蔽板の流れプロファイルを調整することによって、中央領域と周辺領域との間で膜堆積の厚さを調整することが可能であることが示されている。
【0049】
図7は、本開示の実施形態に係る遮蔽部500を示している。放射遮蔽体500は、本体502を含んでおり、本体502には、直径が同じ又は異なる複数の孔501が貫通して形成されている。本体502は、円筒形状で示されているが、矩形を含む他の形状も想定される。本体502は、石英、窒化ケイ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、及び、ステンレス鋼といった1つ以上の物質から形成されうる。複数の孔501が、共通軸の周囲に環状に配置されうる。各環状パターンにおける孔501の密度及び孔501の直径は、様々でありうる。結果的に、隣り合う孔501の間の間隔が様々であり、孔501の流れプロファイルが、孔501の位置及び大きさに従って様々である。
【0050】
一実施形態において、複数の孔501が、共通の中心を有する3つの環状パターン505、510、及び515で配置されている。環状パターン505及び515の孔501の密度は、環状パターン510の孔501の密度よりも高い。しかしながら、本開示の範囲はこれには限定されず、環状パターン505、510、又は515のいずれも、他の環状パターン505、510、及び515よりも密度が高い孔を有しうる。幾つかの実施形態において、環状パターン510の孔501の直径は、環状パターン505及び515の孔501の直径よりも大きい。代替的に、いずれの環状パターン505、510、又は515の孔501の直径も、他の環状パターン505、510、及び515の孔501の直径よりも大きくてよい。
【0051】
放射遮蔽体500は、孔501の大きさ、位置、及び数に従って、様々なパターンによる孔501を有しうる。放射遮蔽体500は、基板支持体110の底面の下方に配置されうる。従って、放射遮蔽体500に様々なパターンの孔501を作ることによって、基板支持体110の底面での放射熱の損失を調節することが可能であり、基板支持体110のいかなる温度の不均一性も補償され、従って、基板支持体110に載置された基板の不均一性が補償される。
【0052】
他の実施形態において、シャフト114は、例えば基板支持体110の底部の近傍のシャフト114の上端に、(
図1に示した)複数の孔115を有する。熱伝導性のガス又は混合ガス、即ち例えば、He/H
2又はArが、基板支持体110のシャフトに設けられた複数の孔から、主処理チャンバ容積室108の中へと流れうる。幾つかの実施形態において、熱伝導性のガスが、外部のガス源(図示せず)から、シャフトの内部管を通じて供給される。流量が様々であり混合ガスが様々であると、基板支持体110と底部の熱伝導性ガスとの間の対流熱損失が、径方向における基板支持体110の温度プロファイルを調節することが可能である。
【0053】
先に記載した実施形態を、面板及び遮蔽板の特性を局所的に調整することによって薄膜の堆積の均一性を改善するために、個別に又は組み合わせて利用することが可能である。さらに、本明細書の実施形態は、概して、放射率、相対的位置、又は流量密度が変更される2つの領域によって記載されたが、本明細書に記載の面板及び遮蔽板は、2つの各領域より多くの領域を含みうることが想定される。2つより多くの領域を含むことによって、均一性及び/又は同調性がさらに改善される。
【0054】
以上の説明は本開示の態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱しなければ、本開示の他の態様及び更なる態様が考案されてよく、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって決まる。