(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】承認後の変更の影響に基づいたグローバルな製造及び供給の自動追跡と最適化のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0631 20230101AFI20231114BHJP
【FI】
G06Q10/0631
(21)【出願番号】P 2020566953
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019034181
(87)【国際公開番号】W WO2019231917
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレア・エリザベス・ボーンスタイン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ラム・ラガ・アンガラ・マークリー
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-518145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358578(US,A1)
【文献】増田 和久,改正薬事法の概要とその改正ポイント,フレグランスジャーナル ,第32巻,第11号,フレグランスジャーナル社,2004年11月15日,第65-75頁,ISSN:0288-9803
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
承認後の変更(PAC)の影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化のためのコンピューティングデバイス実装方法であって、前記コンピューティングデバイスは、1つまたは複数のプロセッサを含み、
1つまたは複数のデータハンドラを用いて、異なるデータソースからデータを取得することであって、前記データソースは、少なくとも在庫データベース、規制データベース、及びPAC情報データベースを含み、前記在庫データベースは、医薬品、原薬、またはその両方に関連するロット情報を保持し、前記PAC情報データベースは、1つまたは複数のPACによって影響を受ける製造プロセスまたは材料供給の制御情報を保持し、前記規制データベースは、前記1つまたは複数のPACの複数の国の規制当局による規制認可に関する情報を保持する、前記データソースからデータを取得することと、
前記データハンドラによって取得された前記データを標準化されたフォーマットにフォーマットすることと、
前記データハンドラによって、グローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化(ATOMS)モジュールによる前記1つまたは複数のPACの追跡及び最適化を可能にする均一なデータ構造に前記標準化されたフォーマット内の前記データを記憶することと、
前記ATOMSモジュールと、各ロットに実施された変更を決定するためのルールセットとを使用して、1つまたは複数の医薬品または原薬に対する少なくとも1つのPACの1つまたは複数の影響を特定することと、
前記影響を調整するために、前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響に応答して、製造プロセスまたは材料供給プロセスのうちの少なくとも1つを変更することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響のリストを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の国のそれぞれにおける医薬品または原薬に関する消費データを分析することと、
前記分析することに基づいて、医薬品または原薬の在庫が枯渇状態に近づいている前記複数の国のうちの少なくとも1つの国を特定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記製造プロセスまたは前記材料供給プロセスのうちの少なくとも1つを変更することが、
前記医薬品または原薬の製造に使用される
少なくとも1つの上流の成分ロットに対する前記少なくとも1つのPACの前記影響を事前に確認するために、人工知能または機械学習モジュールを実行すること、
製造のために下流への出荷を加速する前記少なくとも1つの上流の成分ロットを特定すること、および/または、
製造ロットのための原材料を注文すること、および/または、
少なくとも1つの国における近づいている在庫の枯渇状態にことに基づいて、前記少なくとも1つの国に特定のロットを展開すること、および/または、
PACに関連する規制申請ステータスのタイミングをスケジュールすること、および/または
原薬または医薬品の生産を開始するための命令を生成すること
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記均一なデータ構造が、内部ロット番号に従う各ロットへの参照、製造日、製造拠点、材料タイプ、または生産された製品の数量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
表示面に視覚的なダッシュボードとして提供されるグラフィカルユーザインタフェースを介して、前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響の前記リストを表示すること
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記1つまたは複数の影響の前記リストは、前記1つまたは複数のPACのそれぞれに関連付けられた国を特定し、かつ/または、
前記特定された1つまたは複数の影響の前記リストは、前記特定された国のそれぞれについてのPAC承認ステータスまたは申請ステータスを示し、かつ/または、
前記1つまたは複数の影響の前記リストは、医薬品、原薬、医薬品有効成分、または他の成分のロットが、前記特定された国のそれぞれの前記PAC承認ステータスに基づいて出荷できる国を特定し、かつ/または、
前記リストが、前記医薬品、原薬、医薬品有効成分、または他の成分のロットに貼付されるバーコードに変換される、
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の国のうちの1つまたは複数の特定の国で医薬品ロットが消費されるまでの時間を決定することと、
前
記医薬品ロットが消費されるまでの予測時間に基づいて、前記1つまたは複数の特定の国でPACを申請する最も早い日と最も遅い日を決定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前
記特定された影響に基づいて、製造プロセスまたはラベリングプロセスを実行するように、製造デバイスまたは在庫管理デバイスを制御する命令を送信すること、および/または、
前記1つまたは複数のPACの少なくとも1つの結果として原薬または医薬品が無効になる日を特定すること
をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製薬規制当局によって規制されている国への医薬品の供給に対する前記少なくとも1つのPACの将来の影響を予測するために、人工知能または機械学習モジュールを実行することであって、前記少なくとも1つのPACの将来の影響が、前記少なくとも1つのPACの規制ステータスまたは規制要件である、ことと、
前記少なくとも1つのPACの前記将来の影響に基づいて、前記国の患者に前記医薬品を供給するための行動を開始することであって、前記行動は、原材料の規制当局への申請、出荷、調達、DSまたはDPの製造、及び国固有のパッケージングまたはラベリングからなる群から選択される少なくとも1つのアクティビティを含む、ことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記データソースが、在庫データベース、規制データベース、及びPAC情報データベースからなる群から選択され、前記在庫データベースは、医薬品、原薬、またはその両方に関連付けられたロット情報を保持し、前記PAC情報データベースは、1つまたは複数のPACによって影響される製造プロセスもしくは材料供給の制御情報を保持し、前記規制データベースは、1つまたは複数の国の規制当局による規制認可に関する情報を保持する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのPACの前記影響を特定することは、
前記医薬品の各ロットに対して実施された変更を決定するための前記ルールセットを使用して、前記取得したデータを分析することを含み、かつ/または、
前記ルールセットが、各ロットが製造された拠点、製造中に使用された機器、および製造中に使用されたプロセスを評価することのうちの1つまたは複数を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのPACの前記将来の影響を確認することは、
前記医薬品
の在庫が枯渇状態に近づいている前記国の需要に対処するように、製造のために下流への出荷を加速する必要がある上流の成分ロットを特定すること
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
承認後の変更(PAC)の影響に基づいて、グローバルな製造及び供給を自動追跡及び最適化するためのシステムであって、
医薬品、原薬、またはその両方に関連するロット情報を保持する在庫データベースと、
前記1つまたは複数のPACの複数の国の規制当局による規制認可に関する情報を保持する規制データベースと、
前記1つまたは複数のPACによって影響を受ける原薬及び医薬品の少なくとも1つの製造プロセスまたは材料供給の制御情報を保持するPAC情報データベースと、
1つまたは複数のプロセッサを備え、グローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化(ATOMS)モジュールを実行するように構成されたコンピューティングデバイスと
を含み、前記ATOMSモジュールは、実行されると、
1つまたは複数のデータハンドラを用いて、データを前記在庫データベース、規制データベース、PAC情報データベースを含む異なるデータソースから取得することと、
1つまたは複数の医薬品または原薬に対する少なくとも1つのPACの1つまたは複数の影響と前記データハンドラによって取得された前記データを標準化されたフォーマットにフォーマットすることと、
前記データハンドラによって、前記ATOMSモジュールによる前記1つまたは複数のPACの追跡及び最適化を可能にする均一なデータ構造に前記標準化されたフォーマット内の前記データを記憶することと、
1つまたは複数の医薬品または原薬に対する少なくとも1つのPACの影響と、各ロットに実施された変更を決定するための事前に規定されたルールセットとを特定することと、
前記影響を調整するために、前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響に応答して、製造プロセスまたは材料供給プロセスのうちの少なくとも1つを変更することと
を行う、システム。
【請求項15】
前記ATOMSモジュールは、実行されると、さらに、
前記複数の国のそれぞれにおける医薬品または原薬に関する消費データを分析することと、
前記分析することに基づいて、医薬品または原薬の在庫が枯渇状態に近づいている前記複数の国のうちの少なくとも1つの国を特定することと、
前記医薬品または原薬の製造に使用される上流の成分ロットに対する前記少なくとも1つのPACの前記影響を事前に確認するために、人工知能または機械学習モジュールを実行することと、
医薬品または原薬の前記在庫が枯渇状態に近づいている前記少なくとも1つの国の需要に対処するように、製造のために下流への出荷を加速する少なくとも1つの上流の成分ロットを特定することと
を行う、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ATOMSモジュールは、実行されると、
前記少なくとも1つの国における在庫が枯渇状態に近付いていることに基づいて、出荷スケジュールを変更する命令を生成すること、および/または、
PACに関連する規制当局への申請のタイミングをスケジュールすること、および/または、
原薬または医薬品の製造を開始する命令を生成すること
のうちの1つまたは複数を含む、前記製造プロセスまたは前記材料供給プロセスを変更することを行う、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記ATOMSモジュールは、実行されると、さらに、
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響のリストを生成し、
表示面に視覚的なダッシュボードとして提供されるグラフィカルユーザインタフェースを介して、前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された1つまたは複数の影響の前記リストの表示を生成する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記ATOMSモジュールは、実行されると、さらに、
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響のリストを生成し、
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された1つまたは複数の影響の前記リストは、前記1つまたは複数のPACのそれぞれに関連付けられた国を特定し、
前記特定された1つまたは複数の影響の前記リストは、前記特定された国のそれぞれについてのPAC承認ステータスまたは申請ステータスを示し、かつ/または、
前記特定された影響の前記リストは、前記特定された国のそれぞれの前記PAC承認ステータスに基づいて、医薬品、原薬、医薬品有効成分、または他の成分のロットを出荷できる場所を特定する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記リストは、前記医薬品、原薬、医薬品有効成分、または他の成分のロットに貼付されるバーコードに変換される、請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記ATOMSモジュールは、実行されると、さらに、 (i)前記複数の国のうちの1つまたは複数の特定の国で医薬品ロットが消費されるまでの時間および(ii)前
記医薬品ロットが消費されるまでの予測時間に基づいて、前記1つまたは複数の特定の国でPACを申請する最も早い日と最も遅い日を決定すること、および/または、
前
記特定された影響に基づいて、製造プロセスまたはラベリングプロセスを実行するように、製造デバイスまたは在庫管理デバイスを制御すること、および/または、
前記1つまたは複数のPACの少なくとも1つの結果として原薬または医薬品が無効になる日を特定すること
を行う、請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
承認後の変更(PAC)の影響に基づいて、グローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化のための命令を記憶する非一時的媒体であって、前記命令は、1つまたは複数のプロセッサを備えた少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって実行可能であり、前記命令は、実行されると、前記少なくとも1つのコンピューティングデバイスに、
1つまたは複数のデータハンドラを用いて、異なるデータソースからデータを取得することであって、前記データソースは、少なくとも在庫データベース、規制データベース、及びPAC情報データベースを含み、前記在庫データベースは、医薬品、原薬、またはその両方に関連するロット情報を保持し、前記PAC情報データベースは、1つまたは複数のPACによって影響を受ける製造プロセスまたは材料供給の制御情報を保持し、前記規制データベースは、前記1つまたは複数のPACの複数の国の規制当局による規制認可に関する情報を保持する、前記データソースからデータを取得することと、
前記データハンドラによって取得された前記データを標準化されたフォーマットにフォーマットすることと、
前記データハンドラによって、グローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化(ATOMS)モジュールによる前記1つまたは複数のPACの追跡及び最適化を可能にする均一なデータ構造に前記標準化されたフォーマット内の前記データを記憶することと、
前記ATOMSモジュールと、各ロットに実施された変更を決定するための事前に規定されたルールセットとを使用して、1つまたは複数の医薬品または原薬に対する少なくとも1つのPACの1つまたは複数の影響を特定することと、
前記1つまたは複数の医薬品または原薬に対する前記特定された影響に基づいて製造プロセスまたは材料供給プロセスのうちの少なくとも1つを変更することと
を行わせる、前記非一時的媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月28日出願の米国仮特許出願番号第62/677,163号の優先権と利益を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
製薬及びバイオテクノロジー企業は、医薬品の最初の規制当局の承認に続いて、承認後の変更(PAC)及び医薬品の製造プロセスの更新を定期的に行う。変更は、最初の規制当局の承認後にメーカーによって開始された変更の場合もあれば、最初の規制当局の承認の一部として必要な義務の場合もある。一部のPACは、企業が変更されたプロセスを使用して製造した製品を供給する前に、各国の国内規制当局による変更後の承認を必要とする。
【発明の概要】
【0003】
PACの自動追跡及び最適化のシステムと、関連する方法とを作成及び使用する当業者を助けるために、添付の図面を参照する。添付の図面は、この明細書の一部に組み込まれ、これを構成し、1つまたは複数の実施形態を示し、明細書の記載と併せて、実施形態の説明を助ける。例示的な実施形態は、添付の図面に例として示されているものであり、限定的なものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】例示的な実施形態による、承認後の変更の自動追跡及び最適化のシステムに適した例示的なネットワーク環境を示す。
【
図2】例示的な実施形態による、ATOMSモジュールを使用して、データベースから取得したデータを処理し、ダッシュボードに結果を表示する例示的な方法を示す。
【
図3】例示的な実施形態による、申請推定を決定する方法を示す。
【
図4】例示的な実施形態による、出荷リストを生成する方法を示す。
【
図5】例示的な実施形態によって提供される方法の1つまたは複数のステップを行うために使用できるコンピューティングデバイスの例のブロック図である。
【
図6】例示的な実施形態による、PACの影響に基づいたグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化の方法である。
【
図7】例示的な実施形態による、製造中に実施された変更の結果として将来の日に無効になるロットを表示する第1のサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図8】例示的な実施形態による、製造中に実施された変更の結果として将来の日に無効になるロットを表示する第2のサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図9】例示的な実施形態による、ロットが消費されるまでの時間を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図10】例示的な実施形態による、承認後の変更によって影響を受けるロットを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図11】例示的な実施形態による、選択された国における保留中の承認後の変更を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図12】例示的な実施形態による、選択された国における承認後の変更のステータスを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図13】例示的な実施形態による、選択された国における変更実施の日付が欠落している承認後の変更を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図14】例示的な実施形態による、ATOMSモジュールによって行われる分析プロセスの実行を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【
図15】例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化の方法である。
【
図16】例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化の方法である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
医薬品不足の問題は世界的に認識されており、不足の要因の1つは、承認後の変更(PAC)管理という課題である。PACは、製品需要の増加に対応するための新しい製造拠点の追加や、製品の歩留まりを向上させるための製造プロセスの修正など、製品ライフサイクル管理活動によって必要になる。これらの課題は、PAC承認プロセスが6か月未満から18か月を超える場合があるグローバルな規制環境の複雑さによって推進される。PACにより、スポンサは、患者中心の価値を提供する、後に開発された製造戦略を前進させることができるのが理想的である。しかしながら、様々なグローバルな提出タイムラインに関連する規制の不確実性を考えると、継続的な改善の環境をサポートすることは困難である。
【0006】
さらに、PACが製品に対して承認されると、PACを用いて生産されたロットは、所与の市場の規制当局によって、ロットの生産に使用された実施された変更が、そのロットが供給される市場で承認されていることを確認するために製薬組織内の品質保証グループによって評価されることが必要とされる。
【0007】
医薬品不足に寄与する追加の要因は、PACの影響を受けるロットの追跡である。ロットは、特定の量の医薬品または原薬であり、通常は単一の製造業者からのものであり、ロット番号で識別される。ロット番号は、医薬品または原薬の特定のロットに割り当てられた識別子である。PACの影響を受けるロットが、様々な市場内の各PACの承認ステータスに関する情報を保持するTrackwise Quality Management Software(商標)またはCATSWeb Quality ManagementSoftware(商標)とLiquentInSight Regulatory Information Management Software(商標)の組み合わせなど、品質管理システム(QMS)に入力されたロットに関する規制当局の承認の更新後に、対象の市場にリリースされる場合がある。製造量とPAC量が増えると、影響を受けるロットをリリースするために必要なPAC評価の総数が幾何学的に増加する。
【0008】
供給計画担当者は、ある国に配分された所与のロットがその市場のPAC規制ステータスによって禁止されているかどうかを判断する必要があるため、並行した課題に直面する。ある国へのロットのリリースを禁止するPAC規制ステータスは、「提出書類が不完全」、「提出書類の審査中」、「提出書類が拒否された」、「変更実施不可」、または類似の用語のステータスカテゴリを含み得る。PACがその市場の規制当局によって承認されていない場合、製品を販売することはできない。Liquent InSight Regulatory Information Management Software(商標)を含むが、これに限らない、規制更新を保持するデータベースと、CATSWeb Quality Management Software(商標)やTrackwise Quality Management Software(商標)を含むが、これらに限らない、PAC情報を保持するデータベース、SAP Enterprise Resource Planner(商標)やOracle Enterprise Resource Planner(商標)を含むが、これらに限らない、製品在庫データを保持するデータベースの間には、情報のギャップが存在し、情報のギャップは、様々なシステムがリンクされていない結果である。PAC関連の情報を保持するデータベースなど、リンクされていない他のデータベースに依存する場合にも、同様の問題が存在する。その結果、各医薬品または原薬のロットのPAC評価の総数は、承認された市場の数とともに幾何学的に増加する。PACシステム、規制システム、及びサプライチェーンシステム間の透明性が不十分なとき、様々な国の承認を通じて製品がコンプライアンスを維持することを保証することは、大きなリスクになる。その結果、製品が、コモンテクニカルドキュメント(CTD)及び適応を有する単一の製造プロセス、サプライチェーンを有する製品から、そのライフサイクルを通して、複数の製造プロセス、多角的サプライチェーン、複数のCTD、及び、場合によっては、複数の適応を有する製品に移行するにつれて、製品に対するコンプライアンスの圧力は、増加する。CTDは、処方情報、医薬品文書、薬理学及び毒物学データ、安全性及び有効性データを含む、販売される所与の製品の仕様を詳述する。CTDは、製品が所与の国で販売用に登録されるときに、市場ごとに作成される。製品のライフサイクルにわたって、製品は、更なる適応症に対して、または追加の病気や状態の治療法として登録されてよい。時間の経過とともに、製品が販売される市場の数が増えるため、CTDと適応症の数は大幅に増加する。
【0009】
例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化のためのシステム及び方法が本明細書で提供される。一実施形態では、システムは、ストレージデバイスに通信可能に結合されたプロセッサを備えたコンピューティングデバイスを含む。コンピューティングデバイスは、グローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化(ATOMS)モジュールを実行するように構成される。一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、人工知能(AI)及び/または機械学習モジュール(以下、AI/ML)をさらに含み得る。一実施形態では、ATOMSモジュールを実行するコンピューティングデバイスは、3つ以上のデータベースまたはデータリポジトリに通信可能に結合される。例示的な実施形態では、コンピューティングデバイスは、製品在庫データを記憶するデータベース、PACを生産プロセスに実装する変更制御プロセスのデータを含むPAC関連データを記憶するデータベース、及び規制データを記憶するデータベースに結合される。一実施形態では、記憶されたデータは、様々な正式なソフトウェアシステム、静的ファイル入力、または非公式のアドホックデータリポジトリ間で分散される。
【0010】
ATOMSモジュールに接続されたデータソースは、分析対象の製品を所有する組織によって一元的に維持される。在庫、規制、及びPACのデータベースは全て、内部で管理、維持、及び更新される。在庫データは、組織内のサプライチェーン及び品質グループによって維持及び更新される。外部在庫データは、他のソースの外部製造拠点によって個別に維持される場合があるが、データは内部データベースに複製される。PACデータは、組織内のサプライチェーン、品質及び技術運用グループによって維持及び更新される。規制データは、国の関連する規制当局からデータを取得する組織内の規制関連グループによって維持及び更新される。
【0011】
実施形態では、PACが原薬及び/または医薬品のロットの既存の及び計画された製造に関するとき、ATOMSモジュールは、PAC及び規制データベース、ならびに在庫データベースから重要な情報を抽出することによってPACを追跡するプロセスを改善する。事前に規定されたルールセットを使用して、ATOMSモジュールは各ロットの製造中に実施されたPACを決定する。ATOMSモジュールは、在庫データベースまたはデータソースから、ロット番号、製造日、製造施設などのロット情報を抽出する。ATOMSモジュールは、PACデータベースまたはデータソースから、製造受託機関(CMO)または影響を受ける内部製造拠点、影響を受ける材料、影響を受ける機器、及び実施日に関する情報など、製造プロセスまたは材料供給のPAC情報を抽出する。内部製造能力が利用できない場合、CMOまたは外部メーカーが、製造サプライチェーンで使用するために契約されてよい。ATOMSモジュールはまた、PACの規制申請ステータス、規制発送日、規制提出日、規制認可日などの規制情報を規制データベースまたはデータソースから抽出する。ATOMSモジュールは、3つのデータセットから取得した情報を比較し、本明細書に記載するように、適用可能な承認後PACのリストを生成する。
【0012】
一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、国ごとに、グローバルサプライチェーンに関して適用可能なPACを追跡及び評価する。例えば、ATOMSモジュールは、各グローバル市場で、所与のロットの製造中に実施された各PACの規制申請ステータスを評価してよい。ATOMSモジュールは、適切な国内規制当局が各PACを承認したかどうかを判断及び追跡する。ATOMSモジュールは、製造中に実施されたPACの規制当局の評価に基づいて、原薬及び/または医薬品を受け入れることができる国をさらに確認する。
【0013】
一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、サプライチェーンの各ステップでのPACの影響について完成医薬品のロットを評価する。医薬品有効成分(API)やバルク原薬(BDS)など、完成医薬品ロットの各成分は、PACの影響と、その後の規制順守について、本書に記載されている方法で評価される。ATOMSモジュールは、下流の製造プロセスで組み合わされる各成分に実施されたPACを集約する。ATOMSコンピューティングモジュールは、個々の成分バッチと1つまたは複数の成分を組み合わせた下流のバッチの両方に適用可能なPACを報告する。
【0014】
一実施形態では、ATOMSモジュールは、事前に規定されたルールセットを使用して、製品のサプライチェーンの様々な段階で製造された様々な材料に対するPACの影響を評価する。これらのルールは、ロットが生産された製造拠点、製造中に使用された機器、及び製造中に使用されたプロセスを評価することと、この情報をPACによって修正または提案されたとして示される情報と比較することとを含むが、これらに限定されない。PACは、1つまたは複数のCMO、内部製造拠点、機器、またはプロセスに影響を与え得る。PACは、各製造拠点の製造プロセスに実施され、実施日が記録される。ATOMSモジュールは、バルク原薬や医薬品など、分析材料の物質に関する系統情報を収集する。この系統は、PACによる影響について評価されるロットを構成する各材料の製造日、製造拠点、及び適用可能な機器またはプロセスを規定している。ATOMSモジュールは、所与のPACによって示される影響を受ける製造拠点、機器、及びプロセスと、分析されるロットの系統情報を照合することにより、影響を判定する。材料の製造日より前に示された拠点でPACが実施された場合、ATOMSモジュールは、PACが分析対象のロットのメーカーに影響を与えたことを確認する。この事前に規定されたルールセットが、本出願明細書全体に記載されている実施形態で活用されて、適用可能なPACを決定してよい。
【0015】
一実施形態では、ATOMSモジュールは、集合表記法を使用して、各ロットに影響を与える変更を、各国で承認された変更と比較する。集合表記法は、所与のロットを所与の国に出荷できるかどうかを確認する比較機構である。例えば、集合表記法では、{‘アクティブ(Active)’:(31377、31380、32797)}-{‘承認(Approved)’:(31377、31380、31642、31682、32797、33342)}={}となり、選択された市場向けの製品のリリースを禁止しているPACは無いことを示す。逆の例では、集合表記法は、{‘アクティブ(Active)’:(31377、31380、32797、52398)}-{‘承認(Approved)’:[31377、31380、31642、31682、32797、33342]}={52398}となり、PAC番号52398が選択された市場向けの製品のリリースを禁止していることを示す。結果は、規制の観点から、どのロットの医薬品が完全に準拠しているかを判定する。所与の国で変更が実施されているが承認されていない場合、ATOMSモジュールは、未承認のPACを、市場固有の準拠医薬品の数量と共に特定して、規制当局への新しい提出戦略を通知し、医薬品不足のリスクを低減する。ある実施形態では、集合表記法の結果は、ロットのバーコードに変換される。ある実施形態では、集合表記法の結果は、ある国に送ることができるロットのリストに入力される。
【0016】
実施形態では、ATOMSモジュールは、製品が承認された各国で分析を実行し、集計結果を使用して、製品がグローバル市場全体で準拠しているかどうかを判断してよい。ATOMSモジュールはまた、グローバル市場全体で未処理の(つまり、まだ承認されていない)PACを決定し、それによって規制当局への新しい提出戦略を通知してよい。例示的な実施形態では、ATOMSモジュールは、30秒未満で情報の分析を完了して、追跡された製品または物質を提供するエンティティの機能的ビジネスユニット全体の利害関係者がタイムリーなコンプライアンスステータス情報を有することを保証する。
【0017】
コンプライアンスの追跡と決定に加えて、一実施形態では、ATOMSモジュールは、新しい変更が承認されると、変更前の材料を禁止している国でPACを申請するべき時を推定する。ATOMSモジュールは、在庫の減少時間と平均承認期間を推定することによって、新しい在庫を導入する前に古い在庫を完全に使い果たすことを可能にする新しいPACの最適な申請期間を決定する。
【0018】
一実施形態では、ATOMSモジュールは、インテリジェントな配分を使用して、信頼値を示すことによる月間消費率及び利用可能な在庫に基づいて、有効な医薬品を出荷すべき場所を最適化する。所与の国について、ATOMSモジュールは、医薬品(DP)単位(u)を消費率(c)で割ることにより、単純な消費時間(t)を決定し得る。インテリジェントな配分プロセスは、予測リスク要因に関して、有効な国々全体で単純な消費時間を均等化するのに役立つ。所与の国について、ATOMSモジュールは単純な消費時間を延長して、予測リスク要因に関して製品を消費する時間を決定してよく、ここで、消費時間(t)=DP単位(u)/(消費率(c)*消費誤差(Ec))である。ATOMSモジュールは、消費時間が等しくなるように、利用可能な医薬品ユニットを各PAC準拠国に配分する。ここで、全てのPAC準拠国について、(p):Eq(t):={u/(c*EC),c∈p}である。したがって、ATOMSモジュールは、消費時間が予測リスク要因に関して等しくなるように、各PAC準拠国に医薬品ユニットを配分し得る。
【0019】
ATOMSモジュールは、消費率と承認時間を含む予測リスク要因評価を行ってよい。消費率の予測リスク要因は、記録されたデータセットの履歴の不一致の平均であってよく、ここで、消費誤差
【数1】
である。承認時間の予測リスク要因は、記録されたデータセットの履歴の不一致の平均であってよく、ここで、承認誤差
【数2】
である。予測リスク要因は、ハイリスク要因を有する各市場での申請日及び在庫の調整を決定するために使用されてよい。
【0020】
ある実施形態では、消費率の予測リスク要因は、市場で医薬品の配分を消費する時間を計算するときに使用されてよく、これは主に、各国の消費予測の精度が異なるためである。ある国の市場で慢性的に過大評価または過小評価が行われている場合、消費時間はその傾向に基づいて計算されてよい。同様に、最適な申請日を計算するとき、消費予測リスクと承認時間予測リスクが考慮される。ある国がPACを承認するのにかかる時間に関して過大評価または過小評価が慢性的に行われる場合、消費時間予測リスクに加えて、その傾向に基づいて申請期間が計算されてよい。
【0021】
ある実施形態では、ATOMSモジュールはさらに、インテリジェント申請を使用して、所与の国の市場における医薬品の配分を前提として、変更の承認を申請するための最も早い日及び最も遅い日を決定してよい。インテリジェント申請は、消費の予測リスク要因と承認の予測リスク要因に関して、国別の目標申請日と国別の申請期間を確立する。国別の目標申請日は、完全な消費予測を想定した最良のシナリオの申請日を決定する。ここで、目標申請日は(d0)=t-(a0*Ea)として表されてよい。国別の申請期間は、申請する最も早い日と最も遅い日を見つけ、最小申請日(d1)=t-(a0*Ea)-(Ec*猶予期間(g))、及び最大申請日(d2)=t-(a0*Ea)+(Ec*g)として表される最適期間を確立する。
【0022】
一実施形態では、ATOMSモジュールは、(AI/MLモジュールを使用して)、下流の患者用成果物になるようにまだ処理されていない在庫成分ロットを分析する。ATOMSモジュールは、AI/MLモジュールを使用して、PACが上流の成分ロットに与える影響を事前に確認し、在庫切れに近い国の需要に対応するように、製造のために下流への出荷を加速する必要がある上流の成分ロットを決定する。さらに、特に在庫切れに近い、または在庫切れが予測される国では、完成医薬品の各原料のPAC申請ステータスを特定することにより、原料を医薬品に製造する前に、ATOMSモジュールが、人工知能と機械学習を使用して、新しいバッチのリリースに必要な規制措置の量を最小限にする最適な成分ロットを選択することができる。一実施形態では、ATOMSモジュール(特にAI/MLモジュール)は、予測モデリング及び最適化を使用してPACコンプライアンスを確実にするために、将来のロットをインテリジェントに計画及びスケジュールする。
【0023】
例えば、ある実施形態では、AI/MLモジュールからの予測は、一部の原材料は季節的であるため、及び/または複雑な出荷要件があるため、材料を受け取るのにかかる時期及び時間を考慮して、製造ロットの原材料を注文すべき時を制御するために利用される。別の実施形態では、AI/MLモジュールからの予測は、出荷スケジュールを制御するために利用される。さらなる実施形態では、AI/MLモジュールからの予測は、規制当局への申請のタイミングを制御するために利用される。別の実施形態では、AI/MLモジュールからの予測は、国固有のパッケージング及びラベリングを制御するためにATOMSモジュールによって利用される。一実施形態では、AI/MLモジュールからの予測は、原薬及び/または医薬品の製造を開始するコマンドを実行するために、ATOMSモジュールによって利用されてよい。
【0024】
ATOMSモジュールは、製品のリリースを禁止するPACの影響を受ける成分ロットの規制当局への提出戦略をさらに生成する。これは、上流の成分が患者に送られる下流の製品に前方処理される時を決定することによって達成されてよい。その結果、規制当局への提出戦略の改善、潜在的な不足の早期発見、製造ライフサイクル管理の決定の結果に対する見通しの拡大が可能になる。
【0025】
ATOMS AI/MLモジュールモデルは、所与のタイプのPACの製品消費率の履歴、製品流通の履歴、承認タイムラインの履歴、及び製造における材料の前方処理率について訓練される。「前方処理」とは、原薬や医薬品などの下流材料を製造する際の原料として成分ロットを利用することを指す。このモデルは、PACの承認に関して、需要と需要を満たす能力の両方を正確に記述する履歴から確立されたデータセットを生成する。製品需要に対応するように製造のために下流への出荷を加速すべき材料を決定するために、AI/MLモジュールは、需要と製造スケジュールの両方を考慮して、市場に出荷される製品に成分が存在するまでに、各入手可能な上流の成分のPACが各グローバル市場で承認される可能性を確認し、各市場で承認のチャンスが最も大きい成分を選択する。これにより、PACが流通前に承認されるような製造スケジュールが通知される。このモデル出力を使用して、流通前に申請する必要のあるPACの数が最も少ない成分ロットを特定することもできる。さらに、このモデル出力は、所与の市場での潜在的な「在庫切れ」を特定するように同様の方法で利用することができる(「在庫切れ」とは、製品の在庫を使い果たすことを意味する)。モデルが、流通前に全てのPACが承認される可能性が十分にある上流成分を特定できない場合、アラートが生成される。同じモデル出力を使用することにより、ATOMS AI/MLモジュールは、製品のリリースを禁止する多数のPACを有する成分ロットの規制当局への提出戦略を生成する。モデルを使用して、市場に出荷される製品に成分が現れる時と、承認期間の履歴を確立することにより、AI/MLモジュールは、流通前にPACが承認されることを保証するために、PACの理想的な申請期間を提案する。
【0026】
製造受託機関(CMO)及び内部製造拠点は、承認後の変更(PAC)の影響を直接受ける可能性がある。一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、PACがCMOまたは内部製造拠点に関係するときに、PACの影響を確立する。ATOMSモジュールは、品質管理システムから情報を収集し、その情報を製品固有のフォーマットで出力して、バーコードヘッダを生成する。例えば、表1に示すように、1はPACが(ID番号で識別される)製造拠点に影響を与えることを示し、0は製造拠点に影響を与えないことを示す。表1に示すように、製造拠点には、原薬の製造拠点(DS-CMO A、B、C、及びD)と医薬品の製造拠点(DP-CMO A、B、C、D、E、及びF)が含まれる。
表1.影響バーコードの実例
【表1】
【0027】
他の実施形態では、集合表記法の結果またはルールセットから導出されたロットのリストに、バーコードに変換することができる参照番号を割り当てることができる。
【0028】
ATOMSモジュールは、所与の変更によって影響を受けるCMOまたは製造拠点を記述するバーコードヘッダを生成する。物理的なバーコードは、様々なCMOまたは製造拠点での製造を通して成分に添付されてよい。特定のCMOまたは製造拠点はまた、個別の規制措置を必要とする様々なスイート/部屋を実装している。各医薬成分は異なる施設で製造される。各成分は、多くの異なる施設またはスイートの1つで製造することができる(例えば、成分Aは2つの施設の1つで製造でき、成分Bは4つの施設の1つで製造できる)。変更は施設の1つまたは一部のみに影響することが多く、1つまたは複数の成分に影響を与え得る。物理的なバーコードは、上記の事前に規定されたルールセットで確認される。
【0029】
別の実施形態では、ATOMSモジュールは、CMOによる製造で使用されるPACに基づいてバッチ製造記録(例えば、プロセスプロトコル)を生成する。バッチ製造記録には、バッチ製造プロセスのデータが含まれる。ATOMSモジュールは、特定の国のPACを含むように、バッチ製造記録を修正する。1つまたは複数のCMOがバッチ製造記録に従って、特定の国の在庫レベルを補充するために必要な医薬成分を生成する。完成したロットには、その国の関連するPACが組み込まれている。
【0030】
一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、第1の製造デバイスに通信可能に結合される。一実施形態では、第1の製造デバイスは、製品ラベラーである、及び/または製品ラベラーを含む。そのような実施形態では、ATOMSモジュールによって判定されたPAC影響に基づいて、ATOMSモジュールは、バーコードまたはバーコードヘッダなどの影響ラベルを生成し、1つまたは複数のロットに追加するように第1の製造デバイスに命令を送信してよい。他のCMOにわたって、成分ロットが組み合わされて下流の医薬品ロットになるので、製品がサプライチェーンを移動するときに影響ラベルが集約され、患者に送られる最終製品は、製造中に実施されたPACの記録と共に購買組織にリリースされる。このラベルは、世界市場でのPAC申請コンプライアンスを決定するために、内部及び外部の規制グループによって使用することができる。
【0031】
別の実施形態では、ATOMSモジュールは、第2の製造デバイスに通信可能に結合される。一実施形態では、第2の製造デバイスは、製品ラベラーである、及び/または製品ラベラーを含む。そのような実施形態では、ATOMSモジュールは、バーコードまたはバーコードヘッダなどの系統ラベルを生成し、1つまたは複数のロットに追加するように第2の製造デバイスに命令してよい。系統は、例えば、製造拠点、製造拠点で使用されている処理スイート、製造日、及び使用された成分の量を含み得る。他のCMOにわたって、成分ロットが組み合わされて下流の医薬品ロットになるので、製品がサプライチェーンを移動するときに系統ラベルが集約され、患者に送られる最終製品は、完全な系統及び製造日スタンプの記録と共に購買組織にリリースされる。
【0032】
さらなる実施形態では、ATOMSモジュールはまた、第3の製造デバイスに通信可能に結合される。一実施形態では、第3の製造デバイスは、在庫管理システムである、及び/または在庫管理システムを含む。ATOMSモジュールによって決定されたPACの影響に基づくそのような実施形態では、ATOMSモジュールは、消費によって在庫切れに近い市場または国に対応するように、在庫の特定のロットを特定の市場または国に前方展開するように第3の製造デバイスに命令してよい。
【0033】
別の実施形態では、ATOMSモジュールはまた、在庫管理デバイスに通信可能に結合されている。一実施形態では、在庫デバイスは、SAP Enterprise Resource Plannerなどの在庫数量集約システムである、及び/またはそれを含む。ATOMSモジュールによって決定されたPAC影響に基づくそのような実施形態では、ATOMSモジュールは、各市場における成分及び医薬品ごとの有効な在庫レベルを報告し、ATOMSモジュールによって決定された配分に基づいて利用可能な在庫量を更新するように在庫管理デバイスに命令してよい。一部の実施形態では、ATOMSモジュールは、在庫管理デバイスから成分、賦形剤、及び/または医薬品を、認定または製造ストリームに組み込むのに間に合うように自動的に注文することによって、利用可能な在庫量を更新してよい。例えば、ATOMSモジュールは、消費と在庫切れのリスクに基づいて特定の医薬品を注文してよい。
【0034】
別の実施形態では、ATOMSモジュールは、原薬及び/または医薬品の有効期限を含む成分の有効期限をデータベースから取得して、国の供給が使用率及び製品の有効期限を考慮に入れることを確実にする。ATOMSモジュールは、成分の有効期限が事前に規定されたしきい値を超えているかどうかを、有効期限を事前に規定されたしきい値(例えば、有効期限まで60日未満である)と比較することにより判断することができる。ATOMSモジュールは、有効期限が近づいている成分の製造を促すアラート、または在庫が期限切れに近づいている国への成分の迅速な出荷供給を促すアラートを送信することができる。
【0035】
記載の方法とシステムは、様々な薬剤タイプに移植可能であり、様々なサプライチェーンに適応できる。この方法及びシステムは、(単一成分の)小分子及び生物学的製品、並びに、抗体薬物複合体などの多成分製品に有用であるが、これらに限定されない。
【0036】
図7~
図13に示されるように、一部の実施形態では、上記の情報は、ユーザコンピューティングデバイス上のダッシュボードに表示されてよい。この情報は、製造中に実施された変更の結果として将来の日に無効になるロット、ロットが消費されるまでの時間、PACの影響を受けるロット、選択した国で保留中のPAC、選択した国でのPACステータス、及び/または実施日と申請ステータスが欠落したPACが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
図1は、例示的な実施形態による、承認後の変更の自動追跡及び最適化のシステム100に適した例示的なネットワーク環境を示す。システム100は、ATOMSモジュール104を実行する少なくとも1つのコンピューティングデバイス102、第1のデータベース107を含む少なくとも1つのストレージデバイス106、第2のデータベース109を含む少なくとも1つのストレージデバイス108、第3のデータベース111を含む少なくとも1つのストレージデバイス110、少なくとも1つのユーザコンピューティングデバイス112、及び少なくとも1つの製造デバイス113を含む。ATOMSモジュール104は、承認後の変更の自動追跡及び最適化のための本明細書に記載する機能を備えた1つまたは複数のアプリケーション、プロセス、または他の形式の実行可能コードを含む。
【0038】
一実施形態では、第1のデータベース107は、成分の製造日など、薬物系統を含む、医薬品及び/または原薬の情報を保持する在庫データベースである。第1のデータベース107の例示的なタイプは、SAP Enterprise Resource Plannerを含み得る。第1のデータベース107はさらに、完成医薬品の系統(有効成分(API)、バルク原薬(BDS)等、完成医薬品を構成する全ての成分)、各成分の製造拠点、及び各成分の製造日の1つまたは複数をさらに含んでよい。ATOMSモジュール104は、データベース107から、薬物系統及び供給量の形でデータを抽出する。ATOMSモジュール104はまた、自動化されたフォーマットでデータベース107から必要な情報を抽出し、処理のために必要な情報を中継する。
【0039】
一実施形態では、第2のデータベース109は、PACの影響、PACの実施日、及びPACの承認を含むPACデータベースである。第2のデータベース109の例示的なタイプは、Trackwise Quality Management Systemを含み得る。第2のデータベース109は、PACによって影響を受ける成分タイプもしくは材料、PACによって影響を受ける製造拠点、PACによって影響を受ける製造スイート、PACによって影響を受ける製造機器、PACによって影響を受ける製造仕様、PACの実施日(複数可)、及び世界市場でのPACの規制当局の承認に関するデータをさらに含んでよい。ATOMSモジュール104は、自動化されたフォーマットでデータベース109から必要な情報を抽出し、処理のために必要な情報を中継する。
【0040】
一実施形態では、第3のデータベース111は、PACの規制申請ステータス、規制発送日、規制提出日、及び規制認可日を含む規制データベースである。ATOMSモジュール104は、自動化されたフォーマットでデータベース109から必要な情報を抽出し、その必要な情報を処理のために中継する。
【0041】
ATOMSモジュール104は、データベース107、109、及び111からデータを取得するために1つまたは複数のデータハンドラを利用する。データハンドラは、個別のデータベースからデータを取得し、標準化された方法でデータをフォーマットして、本明細書に記載するように、PACの追跡と最適化を可能にする。標準化されたフォーマットは、PACの追跡と最適化を容易にするように設計された専用のデータ構造である。データ構造によって可能になる追跡と最適化は、製品流通への影響に応じた規制申請ステータスの並べ替え、下流の製品によって消費された製品ロットを判定するためのロット系統の生成、及び製品流通への影響に応じたPAC関連データの並べ替えを含む。
【0042】
ATOMSモジュール104は、均一なデータ構造を使用して、様々なソースからの追跡及び最適化を可能にする。在庫データの均一なデータ構造は、内部ロット番号に従って各ロットを参照することと、製造日、製造拠点、材料タイプ、及び生産された製品の数量を収集することとを含む。他の材料を消費する在庫ロットごとに、各入力材料のロット番号も収集されて、薬剤系統が形成される。PACデータの均一なデータ構造は、各PACをそのオリジンデータベースの識別番号で参照することと、材料タイプ、製造拠点、PACの実施日を収集することとを含む。PAC規制当局申請データの均一なデータ構造は、各申請をそのオリジンデータベースの識別番号で参照することと、申請が行われているPAC識別番号、申請が行われる国、行われる申請のタイプ、規制当局の申請ステータス、及び申請の最新更新日を収集することとを含む。一部の実施形態では、上記の全てのデータ構造について、モジュールは、使用されるデータハンドラに応じて、データベースのこの情報を単一のインベントリテーブルの記録、またはデータベースクエリ内の単一の記録として記憶または表示する。
【0043】
さらなる実施形態では、ATOMSモジュール104は、データベース107、109、及び111以外のデータベースからデータを取得するための追加のデータハンドラを含み得る。一実施形態では、データハンドラは、異なるフォーマットまたはソースからPACを追跡及び最適化するために必要なデータを取得するようにカスタマイズされる。必要なデータは、PACデータ、規制データ、及び在庫データが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、必要なデータは、データハンドラによってデータソースからコピーされ、ATOMSモジュール内の均一な集約データベースに記憶され、PACの追跡及び最適化を可能にするために使用される。ATOMSモジュール内の集約データベースは、ATOMSモジュールの分析機能を有効にするように、様々なソースからのデータを標準化されたフォーマットで記憶する。一部の実施形態では、必要なデータは、データハンドラによってデータソースからメモリにコピーされ、ATOMSモジュールが実行されると、メモリ内の均一なデータ構造で記憶され、そこでPACの追跡及び最適化を可能にするために使用される。ATOMSモジュールの実行が終了すると、データはメモリから解放される。一部の実施形態では、必要なデータは、データベースビューを使用してデータハンドラによってデータソースで永続的にアクセスされ、ATOMSモジュール内の均一な集約データベースで閲覧され、PACの追跡及び最適化を可能にするために使用される。データハンドラによって取得された全てのデータは標準化されたフォーマットで組み合わされるため、ATOMSモジュールの分析機能は、任意のデータソースを使用したPACの追跡と最適化に利用できる。
【0044】
一旦検索されフォーマットされると、データベース107、109、及び111からの情報は、ATOMSモジュール104によって比較されてよく、適用可能なPACのリストが生成されてよい。
【0045】
一部の実施形態では、ATOMSモジュール104は、SQL(構造化照会言語)クエリを使用して、データベース107、109、及び111からデータを取得する。ATOMSモジュール104はまた、SQLを使用して、必要な情報について他のデータソースに直接、クエリしてよい。
【0046】
一実施形態では、ATOMSモジュール104は、データベースから情報を取得するために特定の方法を利用してよい。一部の実施形態では、ATOMSモジュール104は、薬剤系統に対するPACの影響を確認する。これは、系統の各成分の製造日(DOM)を成分が作成されたCMO/プロセスに影響を与えるPACの実施日(DOI)と比較して、PACがその特定のロットの成分に影響を与えるかどうかを判断するプロセスによって達成されてよい。
【0047】
一部の実施形態では、ATOMSモジュール104は、第1のデータベース107を含む在庫管理システム、第2のデータベース109を含むPAC情報システム、及び/または第3のデータベース111を含む規制管理システムから直接、報告を実行するためのアプリケーション拡張を含む。ATOMSモジュール104は、追加のSQLクエリを他の在庫データベースにさらに統合して、薬剤系統と成分の製造日を取得してよい。
【0048】
一実施形態では、ATOMSモジュール104は、SAPから直接報告を実行するSAP ERP拡張を含む。ATOMSモジュールは、追加のSQLクエリを他の在庫データベースにさらに統合して、薬剤系統と成分の製造日を取得してよい。
【0049】
例示的な実施形態では、ユーザコンピューティングデバイス112は、従業員または顧客によって使用されるデスクトップ、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、または他のコンピューティングデバイスである。ユーザコンピューティングデバイス112は、ユーザコンピューティングデバイス112にインストールされたアプリケーション、及び/または通信ネットワーク114を介してコンピューティングデバイス102及びATOMSモジュール104と通信するウェブブラウザ内に表示されたウェブページを含み得る。ユーザコンピューティングデバイス112は、アプリケーション及び/またはウェブページ内に表示されるダッシュボード116を含む。
【0050】
通信ネットワーク114は、ネットワークに通信可能に結合されたデバイス間で情報を送信することができる任意のネットワークであってよい。例えば、通信ネットワーク114の1つまたは複数の部分は、アドホックネットワーク、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベートネットワーク(VPN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイヤレスLAN(WLAN)、広域エリアネットワーク(WAN)、ワイヤレス広域ネットワーク(WWAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、インターネットの一部、公衆交換電話ネットワーク(PSTN)の一部、携帯電話ネットワーク、ワイヤレスネットワーク、WiFiネットワーク、WiMaxネットワーク、その他のタイプのネットワーク、または2つ以上のこのようなネットワークの組み合わせであってよい。
【0051】
図2は、第1のデータベース107、第2のデータベース109、及び/または第3のデータベース111から取得されたデータを処理し、ATOMSモジュール104を使用してダッシュボード116に結果を表示するための例示的な方法200を示す。第1のデータベース107は、薬物系統、及び成分の製造日を含む。第1のデータベース107は、例えば、SAP Enterprise Resource Plannerであってよい。第2のデータベース109は、PACの影響、PACの実施日、及び国によるPACの承認を含む。第2のデータベース109は、Trackwise(商標)プラットフォームを含み得る。第2のデータベース109はまた、CATSWeb Quality Management System及びLiquent Insight Regulatory Management System(商標)を含むリンクされたデータベースプラットフォームとして機能し得る。第3のデータベース111は、PACの規制申請ステータス、規制発送日、規制提出日、及び規制認可日などの規制データを含む。
【0052】
図2の説明を続けると、ATOMSモジュール104は、第1のデータベース107、第2のデータベース109、及び/または第3のデータベース111から情報を取得する。ATOMSモジュール104は、本明細書に記載されているように情報を分析する。ATOMSモジュール104は、分析の結果を、ユーザコンピューティングデバイス112上に表示されたATOMSダッシュボード116に送信する。ATOMSダッシュボード116は、例えば、出荷先リスト、ロットごとのPACの影響、ロット/国ごとの保留中のPAC、PACステータス、PACによって影響を受ける最初のロット、新しいPACのための最適な申請期間、及びインテリジェントな配分を含み得る。
【0053】
一部の実施形態では、ATOMSモジュール104は、データ整合性アラートをATOMSダッシュボード116に送信する。データ整合性アラートは、例えば、PACの実施日の欠落、PACの材料指示の欠落、一貫性のない申請/承認ステータス、承認日が必要な申請/承認日を有する申請、無効な申請ステータス、及び申請ステータスの欠落を含み得る。
【0054】
図3は、例示的な実施形態による、申請推定を決定する方法を示す。この方法は、PAC分析302、除外分析304、在庫分析306、及び申請推定308を含む。PAC分析302において、ATOMSモジュール104は、PACの影響に基づいて、利用可能なロットを受け入れることができる市場または国を決定する。除外分析304において、変更前の材料を禁止している国に対して適格と見なされている全てのロットについて、ATOMSモジュール104は、市場で承認された全てのPACを用いて、または、現在市場で必要とされているが製造中に実施されていないPACに対する猶予期間内に、ロットが製造されたかどうかを判断する。在庫分析306では、除外分析304に合格した全てのロットについて、ATOMSモジュール104は、国が利用可能な在庫を消費するのにかかる時間を決定する。申請推定308では、ATOMSモジュール104は、消費期間と推定承認期間を使用して、全ての変更前の材料を、国が申請ごとにその変更前材料を禁止する前に、消費するように、新しい変更をいつ申請するかを推定する。さらなる実施形態では、ATOMSモジュール104は、例えば、変更前の供給の消費と調整するために、その国で新しい変更を申請するコマンドを実行する。
【0055】
図4は、例示的な実施形態による、出荷リストを生成する方法を示す。402で、ATOMSモジュール104は、影響を受ける材料、機器、及び製造拠点を含むPAC情報を、品質データを含む必要なデータソースから収集する。404で、ATOMSモジュール104は、規制データを含む必要なデータソースから、全ての国の各PACの規制当局申請ステータスを収集する。
【0056】
406で、ATOMSモジュールは、全ての成分のロット系統と製造日を収集する。408で、ATOMSモジュールは、(本明細書に記載する事前に規定されたルールセットを使用して)各PACがロット系統に影響を与えるかどうかを判断する。410で、ATOMSモジュールは国ごとにPAC承認ステータスを決定する。412で、ATOMSモジュールは、適用可能なPACの承認に基づいて、分析された製品ロットを受け入れることができる国の出荷リストを生成する。
【0057】
図5は、例示的な実施形態によって提供される方法の1つまたは複数のステップを実行するために使用できる例示的なコンピューティングデバイス500のブロック図である。例示的な実施形態では、コンピューティングデバイス500は、ATOMSモジュール104を実行する
図1に示すようなコンピューティングデバイス102、及び/または
図1に示すユーザコンピューティングデバイス112である。コンピューティングデバイス500は、本明細書に記載する例示的な実施形態を実施するための1つまたは複数のコンピュータ実行可能命令またはソフトウェアを記憶するための1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体を含む。非一時的コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のタイプのハードウェアメモリ、非一時的有形媒体(例えば、1つまたは複数の磁気記憶ディスク、1つまたは複数の光ディスク、1つまたは複数のUSBフラッシュドライブ)などを含み得るが、これらに限定されない。例えば、コンピューティングデバイス500に含まれるメモリ506は、本明細書に記載の例示的な実施形態を実施するためのコンピュータ可読の及びコンピュータ実行可能な命令またはソフトウェアを記憶することができる。コンピューティングデバイス500はまた、メモリ506に記憶されたコンピュータ可読の及びコンピュータ実行可能な命令もしくはソフトウェア、及び、システムハードウェアを制御する他のプログラムを実行するために、プロセッサ502及び関連するコア504と、任意選択で、(例えば、複数のプロセッサ/コアを有するコンピュータシステムの場合)1つまたは複数の追加のプロセッサ(複数可)502’及び関連するコア(複数可)504’を含む。プロセッサ502及びプロセッサ(複数可)502’は、それぞれ、シングルコアプロセッサまたはマルチコア(504及び504’)プロセッサであってよい。コンピューティングデバイス500はまた、ユーザがコンピューティングデバイス500に関する情報を取得できるように、ブラウザアプリケーション515及びブラウザキャッシュ517を含んでよい。
【0058】
仮想化をコンピューティングデバイス500で採用して、コンピューティングデバイスのインフラストラクチャとリソースを動的に共有することができる。複数のプロセッサで実行されているプロセスを処理するために仮想マシン1414を備えることができ、それによって、プロセスが複数のコンピューティングリソースではなく1つのコンピューティングリソースのみを使用しているように見える。1つのプロセッサで複数の仮想マシンを使用することもできる。
【0059】
メモリ506は、DRAM、SRAM、EDO RAMなどのコンピュータシステムメモリまたはランダムアクセスメモリを含み得る。メモリ506は、他のタイプのメモリ、またはそれらの組み合わせも含み得る。一部の実施形態では、顧客は、タッチスクリーンディスプレイまたはコンピュータモニタなどの視覚的ディスプレイデバイス518に関連付けられたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)522を介してコンピューティングデバイス500と対話することができる。視覚的ディスプレイデバイス518はまた、例示的な実施形態に関連付けられた他の態様、要素、及び/または情報またはデータを表示してよい。コンピューティングデバイス500は、顧客からの入力を受信するための他のI/Oデバイス、例えば、キーボードまたは任意の適切なマルチポイントタッチインタフェース508、ポインティングデバイス510(例えば、ペン、スタイラス、マウス、またはトラックパッド)を含み得る。キーボード508及びポインティングデバイス510は、視覚的ディスプレイデバイス518に結合されてよい。コンピューティングデバイス500は、他の適切な従来型I/O周辺機器を含み得る。
【0060】
コンピューティングデバイス500はまた、本明細書に記載のシステム、または、その一部の実施形態を実施する、データ及びコンピュータ可読命令及び/またはソフトウェアを記憶するための、ハードドライブ、CD-ROM、または他のコンピュータ可読媒体などの1つまたは複数のストレージデバイス524を含むことができる。例示的なストレージデバイス524はまた、例示的な実施形態を実施するために必要な任意の適切な情報を記憶するための1つまたは複数のストレージデバイスを記憶することができる。
【0061】
コンピューティングデバイス500は、標準的な電話回線、LANまたはWANリンク(例えば、802.11、T1、T3、56kb、X.25)、ブロードバンド接続(例えば、ISDN、フレームリレイ、ATM)、ワイヤレス接続、コントローラエリアネットワーク(CAN)、または、これらのいずれかまたは全ての何らかの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な接続を通して、1つまたは複数のネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、または、インターネットと1つまたは複数のネットワークデバイスを介してインタフェースするように構成されたネットワークインタフェース512を含み得る。ネットワークインタフェース512は、ビルトインネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、PCMCIAネットワークカード、カードバスネットワークアダプタ、ワイヤレスネットワークアダプタ、USBネットワークアダプタ、モデム、または、コンピューティングデバイス500を、通信可能な任意のタイプのネットワークにインタフェースし、本明細書に記載の動作を実行することができる任意の他のデバイスを含むことができる。さらに、コンピューティングデバイス500は、ワークステーション、デスクトップコンピュータ、サーバ、ラップトップ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイルコンピューティングもしくは通信デバイス、または、通信可能で、本明細書に記載の動作を実行するのに十分なプロセッサ能力及びメモリ容量を有する他の形態のコンピューティングまたはテレコミュニケーションデバイスのなどの任意のコンピュータシステムであってよい。
【0062】
コンピューティングデバイス500は、Microsoft(登録商標)Windows(登録商標)オペレーティングシステムの任意のバージョン、Unix及びLinux(登録商標)オペレーティングシステムの様々なリリース、Macintoshコンピュータ用のMacOS(登録商標)の任意のバージョン、任意の組み込みオペレーティングシステム、任意のリアルタイムオペレーティングシステム、任意のオープンソースオペレーティングシステム、任意の独自オペレーティングシステム、モバイルコンピューティングデバイスの任意のオペレーティングシステム、またはコンピューティングデバイスで実行でき、本明細書に記載の動作を実行することができる任意の他のオペレーティングシステムなど、任意のオペレーティングシステム516を実行することができる。例示的な実施形態では、オペレーティングシステム516は、ネイティブモードまたはエミュレートされたモードで実行することができる。例示的な実施形態では、オペレーティングシステム516は、1つまたは複数のクラウドマシンインスタンス上で実行することができる。
【0063】
図6は、例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化のための方法600である。ステップ602において、ATOMSモジュール104は、PACの規制ステータスに従って、国ごとにPACを追跡する。ステップ604において、ATOMSモジュール104は、DP及びDPの規制承認ステータスに影響を与えるPACに基づいて、DP及び成分ロットを出荷できる場所を決定する。ステップ606において、ATOMSモジュール104は、インテリジェント配分を使用して、消費率及び利用可能な在庫に基づいて、DPを出荷することができる場所を最適化する。ステップ608において、ATOMSモジュール104は、インテリジェント申請を使用して、承認後変更の申請の最も早い日及び最も遅い日を決定する。ステップ610において、ATOMSモジュール104は、データベース(品質管理システム、規制管理システム、及び在庫管理システムなど)からエクスポートされた情報に基づいて、所与の製品ロットに影響を与えるPACの包括的なリストを生成する。ステップ614において、ATOMSモジュール104は、市場固有の準拠医薬品の量とともに、未承認のPACを特定する。ステップ616において、ATOMSモジュール104は、製品が承認されている国ごとに分析を実行して、製品がグローバル市場全体で準拠しているかどうかを判断する。
【0064】
図7は、例示的な実施形態による、製造中に実施された承認後の変更の結果として将来の日に無効になるロットのリストを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース700を示す。例えば、暫定猶予期間の無い国が、4月25日にPAC番号33344及び34357を承認している場合があり、そうすると、市場が、その市場の規制当局によって現在承認されている全てのPACを有する製品の製造を要求するため、ロット103552、22300、224221、224222、及び224223は無効になる。
【0065】
図8は、例示的な実施形態による、製造中に実施された変更の結果として将来の日に無効になるロットを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース800を示す。例えば、6ヶ月の暫定猶予期間を有する国が、4月25日にPAC番号33344及び34357を承認している場合がある。そうすると、市場が、その市場の規制当局によって現在承認されている全てのPACを有する製品の製造を要求するため、ロット103552、22300、224221、224222、及び224223は、10月25日までしか、このサンプル市場に出荷することができない。
【0066】
図9は、ロットが消費されるまでの時間、及び新しい変更のための最適な申請日を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース900を示す。この例では、消費の予測リスク要因に関する現在の需要予測に従って、変更前の材料の利用可能な在庫を消費するのに特定の国で9か月かかる。日本で新しい変更を申請する時を決定するために、日付が2018年4月24日で、新しい材料を送る必要のある時が9か月後の2019年1月24日の場合、承認の予測リスク要因に関する現在の承認予測に従って、日本が変更を承認するのに3か月かかる場合、新しい変更のための目標申請日は2018年10月24日である。
【0067】
図10は、承認後の変更によって影響を受けるロットを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース1000を示す。グラフィカルユーザインタフェース1000は、指定されたロット番号(1004に示されている)に影響を与える承認後の変更のリスト(1002に示されている)を表示する。例えば、インタフェース1000は、指定されたロット番号(1008に示される)に関連する承認後の変更のリスト(1006に示される)を含む。承認後の変更の影響に基づいて、ATOMSモジュール104は、ロット番号に関連付けられたロットが出荷されてよい1つまたは複数の国を決定する(1006に示されている)。
【0068】
図11は、例示的な実施形態による、選択された国の指定されたロットの保留中のPACを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース1100を示す。さらなる実施形態では、グラフィカルユーザインタフェース1200は、より多くのまたはより少ない国及びより多いまたはより少ないロットを表示してよい。
【0069】
図12は、例示的な実施形態による、選択された国におけるPACステータスを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース1200を示す。例えば、インタフェース1200は、少なくとも1つの国について、その国に関連付けられたPAC、その国に関連付けられた承認されたPAC、その国に関連付けられた未承認のPAC、その国で申請する必要があるPAC、その国で既に申請されたもしくはその国で申請の必要が無いPAC、及び/またはその国で実施できないPACを表示する。さらなる実施形態では、グラフィカルユーザインタフェース1200は、より多くのまたはより少ない国を表示してよい。
【0070】
所与の市場でPACが規制当局によって審査されている間、PACの影響を受ける製品をその市場で販売できないことを理解する必要がある。同様に、PACが所与の市場でまだ申請されていない場合、PACの影響を受ける製品をその市場で販売することはできない。審査プロセスの最後に、規制当局がPACの申請を却下し、PACを承認しない場合、規制当局は、申請の内容をサポートする追加情報を要求するか、または永久に申請を却下する場合がある。PACが市場で未承認のままである場合、PACの影響を受ける製品をその市場で販売することはできない。規制当局は、PACに記載されている変更をサポートするデータが不十分であること、PACに記載されている変更の性質に関して提供された情報が不十分であること、またはPACに記載されている変更の性質に関する疑問が未解決であることを含む、幾つかの理由で申請を却下する場合がある。
【0071】
図13は、例示的な実施形態による、選択された国におけるPACの申請ステータスを表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース1300を示す。インタフェース1300は、選択された国ごとに、1つまたは複数のPACの申請ステータスを表示する。申請ステータスは、指定されたPACはその国で申請する必要がある、指定されたPACはその国で申請する必要がない、指定されたPACはその国で承認されている、指定されたPACはその国で実施できない、または指定されたPACはその国で申請されていない、を含み得る。さらなる実施形態では、グラフィカルユーザインタフェース1200は、より多くのまたはより少ない国を表示してよい。
【0072】
図14は、例示的な実施形態による、ATOMSコンピューティングデバイスによって実行される分析プロセスの実行を表示するサンプルのグラフィカルユーザインタフェース1400を示す。
【0073】
一部の実施形態においては、製造される医薬品は、ブレンツキシマブベドチン、ベドリズマブ、及びイキサゾミブからなる群から選択される。一実施形態では、医薬品はブレンツキシマブベドチンである。ブレンツキシマブベドチンは、その商品名ADCETRIS(登録商標)(Seattle Genetics社)でも知られており、古典的ホジキンリンパ腫及びT細胞リンパ腫の治療薬として承認されている。ブレンツキシマブベドチンは、ペプチドリンカーを介してモノメチルオーリスタチンEに結合したキメラIgG1抗CD30抗体を含む抗体薬物複合体である。一実施形態では、医薬品はベドリズマブである。ベドリズマブも、商品名ENTYVIO(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals, Inc.)によって知られており、中等度から重度の活動潰瘍性大腸炎とクローン病の治療薬として承認されている。ベドリズマブは、α4β7インテグリンを結合させるヒト化抗体である。一実施形態では、医薬品はイキサゾミブである。イキサゾミブも、その商品名NINLARO(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals, Inc.)によって知られており、例えば、レナリドマイド及びデキサメタゾンとの併用など、多発性骨髄腫の治療薬として承認されている。20Sプロテアソームの経口阻害剤であるイキサゾミブはペプチドボロン酸である。
【0074】
図15は、例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化の方法1500である。ステップ1502において、ATOMSモジュールは、1つまたは複数のPACによって影響を受ける製造プロセスまたは材料供給のための制御情報を保持するPAC情報データベースからデータを取得する。ステップ1504において、ATOMSモジュールは、1つまたは複数のPACによって影響を受ける国の規制当局による規制認可に関する情報を保持する規制データベースからデータを取得する。ステップ1506において、ATOMSモジュールは、医薬品、原薬、またはその両方に関連するロット情報を保持する在庫データベースからデータを取得する。一部の実施形態では、ステップ1502、1504、及び1506は、並行して、同時に、及び/または異なる順序で行われてよい。ステップ1508において、取得されたデータは、各ロットに実施された変更を決定するために事前に規定されたルールセットを使用してATOMSモジュールによって分析されて、1つまたは複数の医薬品または原薬に対する少なくとも1つのPACの1つまたは複数の影響を特定する。ステップ1510において、ATOMSモジュールは、1つまたは複数の医薬品または原薬に対する特定された1つまたは複数の影響のリストを生成する。
【0075】
図16は、例示的な実施形態による、PACの影響に基づくグローバルな製造及び供給の自動追跡及び最適化の方法1600である。ステップ1602において、ATOMSモジュールは、少なくとも1つのデータソースからPAC関連データを取得する。ステップ1604において、ATOMSモジュールは、医薬品の製造または供給に対する少なくとも1つのPACの1つまたは複数の影響を特定する。ステップ1606において、ATOMSモジュールは、人工知能または機械学習モジュールを実行して、その国への医薬品の供給に対する少なくとも1つのPACの将来の影響を予測する。ステップ1608において、ATOMSモジュールは、PACの影響に基づいて、その国の患者に医薬品を供給するための行動を開始する。
【0076】
本明細書の説明は、当業者が、PACの自動追跡及び最適化のためのコンピュータシステム構成及び関連する方法及びシステムを作成及び使用できるようにするために提示されている。これらの例示的な実施形態に対する様々な修正は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書で規定された一般的な原理は、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく他の実施形態及び用途に適用されてよい。また、以下の記載では、説明のために多くの詳細が記載されている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細を使用せずに実施されてよいことを、当業者は認識されよう。他の例では、不必要な詳細で本発明の説明を曖昧にしないために、周知の構造及びプロセスは、ブロック図の形で示されている。したがって、本開示は、示される実施形態に限定されず、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を許容する。例えば、実施形態は、PACデータ、在庫データ、及び規制当局データを別々に保持する3つのデータベースと相互作用するATOMSモジュールに関して本明細書に記載したが、3つのデータベースに含まれる情報は、本発明の範囲を逸脱することなく、より多いまたはより少ない数のデータベースに結合または分離されてよい。
【0077】
例示的な実施形態の説明では、明確にするために、特定の用語が使用される。説明の目的で、各特定の用語は、少なくとも、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的及び機能的同等物を含むことを意図している。さらに、特定の例示的な実施形態が複数のシステム要素、デバイスコンポーネント、または方法ステップを含む一部の例では、それらの要素、コンポーネント、またはステップは、単一の要素、コンポーネント、またはステップで置き換えることができる。同様に、単一の要素、コンポーネント、またはステップは、同じ目的を果たす複数の要素、コンポーネント、またはステップで置き換えることができる。さらに、例示的な実施形態をその特定の実施形態を参照して示し、記載したが、本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細の様々な置換及び変更を行うことができることを当業者は理解されよう。さらに、他の態様、機能、及び利点も、本発明の範囲内にある。
【0078】
本発明の実施形態の一部または全ては、1つまたは複数の非一時的媒体上またはその中に具体化された1つまたは複数のコンピュータ可読プログラムまたはコードとして提供されてよい。媒体は、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、フラッシュメモリ、PROM、RAM、ROM、または磁気テープであってよいが、これらに限定されない。一般に、コンピュータ可読プログラムまたはコードは、多くのコンピューティング言語で実装されてよい。
【0079】
例示的なフローチャートは、例示の目的で本明細書に提供され、方法の非限定的な例である。例示的な方法が、例示的なフローチャートに示されるものよりも多いまたは少ないステップを含むことができ、例示的なフローチャートのステップが、例示的なフローチャートに示される順序とは異なる順序で実行できることを、当業者は認識されよう。