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特許7385003光フィルタリングデバイス、光学顕微鏡及び欠陥観察装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】光フィルタリングデバイス、光学顕微鏡及び欠陥観察装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/02 20060101AFI20231114BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20231114BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G02B26/02 B
G01N21/956 A
B81B3/00
H01L21/66 J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022509817
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012940
(87)【国際公開番号】W WO2021192017
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 保廣
(72)【発明者】
【氏名】青野 宇紀
(72)【発明者】
【氏名】大谷 祐子
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-039239(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0046844(KR,A)
【文献】国際公開第2012/105055(WO,A1)
【文献】特開昭62-289807(JP,A)
【文献】特開2014-010371(JP,A)
【文献】特開平11-271650(JP,A)
【文献】米国特許第05784190(US,A)
【文献】特開2010-113067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 - 26/08
G01N 21/956
B81B 3/00
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡に用いられる光フィルタリングデバイスであって、
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、閉状態では集光された光の光軸と斜めに交わる構成を有し、複数個が隣り合うように配置され、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有する、光フィルタリングデバイス。
【請求項2】
前記複数個の前記シャッタは、それぞれが独立に開閉可能な構成を有する、請求項1記載の光フィルタリングデバイス。
【請求項3】
前記シャッタの前記開き角は、85度から60度までの範囲に調整される構成を有する、請求項1記載の光フィルタリングデバイス。
【請求項4】
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有し、
前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイと、
前記シャッタアレイを設置するラックと、を含み、
前記ラックは、前記基板と電気的に接続するラック配線を有し、
前記ラックには、ラック開口部が設けられている、光フィルタリングデバイス。
【請求項5】
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有し、
前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイと、
前記シャッタアレイを設置するラックと、を含み、
前記ラックは、前記基板と電気的に接続するラック配線を有し、
前記ラックには、ラック開口部が設けられ、
前記シャッタアレイは、前記ラックの斜面に設置され、
前記シャッタ開口部と前記ラック開口部とは連通している、光フィルタリングデバイス。
【請求項6】
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有し、
前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイと、
前記シャッタアレイを設置するラックと、を含み、
前記ラックは、前記基板と電気的に接続するラック配線を有し、
前記ラックには、ラック開口部が設けられ、
前記シャッタアレイは、前記ラックの斜面に設置され、
前記シャッタ開口部と前記ラック開口部とは連通し、
前記シャッタ開口部は、前記ラック開口部に対して屈曲している、光フィルタリングデバイス。
【請求項7】
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有し、
前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイと、
前記シャッタアレイを設置するラックと、を含み、
前記ラックは、前記基板と電気的に接続するラック配線を有し、
前記ラックには、ラック開口部が設けられ、
前記シャッタアレイは、前記ラックの斜面に設置され、
前記シャッタ開口部と前記ラック開口部とは連通し、
前記シャッタ開口部と前記ラック開口部とは、略平行に連通している、光フィルタリングデバイス。
【請求項8】
軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、
シャッタ開口部を有する基板と、を備え、
前記シャッタと前記基板との間に電圧を印加する構成を有し、
前記シャッタは、前記軸部の周りに回転し前記シャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、
前記シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有し、
前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイと、
前記シャッタアレイを設置するラックと、を含み、
前記ラックは、前記基板と電気的に接続するラック配線を有し、
前記ラックには、ラック開口部が設けられ、
前記シャッタアレイは、前記ラックの斜面に設置され、
前記シャッタ開口部と前記ラック開口部とは連通し、
隣り合う前記シャッタアレイは、部分的に重なるように配置されている、光フィルタリングデバイス。
【請求項9】
前記軸部は、ミアンダ棒で構成されている、請求項1記載の光フィルタリングデバイス。
【請求項10】
電極アレイを更に含み、
前記電極アレイは、前記ラックに設置されている、請求項4記載の光フィルタリングデバイス。
【請求項11】
請求項1記載の光フィルタリングデバイスと、
マイクロレンズアレイと、を備え、
前記光フィルタリングデバイスは、前記シャッタ、シャッタ支持部及び前記基板を含むシャッタアレイを含む、光学顕微鏡。
【請求項12】
請求項11記載の光学顕微鏡と、
走査型電子顕微鏡と、を備えた、欠陥観察装置。
【請求項13】
請求項4記載の光フィルタリングデバイスと、
マイクロレンズアレイと、を備えた、光学顕微鏡。
【請求項14】
請求項5記載の光フィルタリングデバイスと、
マイクロレンズアレイと、を備えた、光学顕微鏡。
【請求項15】
請求項13記載の光学顕微鏡と、
走査型電子顕微鏡と、を備えた、欠陥観察装置。
【請求項16】
請求項14記載の光学顕微鏡と、
走査型電子顕微鏡と、を備えた、欠陥観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルタリングデバイス、光学顕微鏡及び欠陥観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欠陥観察装置は、半導体製造ライン等において半導体の基板であるウエハの表面に生じる各種の欠陥、異物等(以下「欠陥等」という。)のレビュー、分類等を行う走査型電子顕微鏡(SEM)等を備えている。
【0003】
欠陥観察装置は、光学顕微鏡を更に備えていることが望ましい。欠陥観察装置は、光学顕微鏡を制御し、ウエハ表面の欠陥等を効率よく自動的に検出し、座標アライメントを行う機能を有する。光学顕微鏡により検出した微小な欠陥等については、SEMを制御することにより、その形状を詳しく観察し、成分分析することができる。光学顕微鏡は、暗視野光学顕微鏡(DFOM:Dark Field Optical Microscope)として使用可能なものが望ましい。
【0004】
また、欠陥観察装置は、SEM像、欠陥等の分類データ、元素分析データ等を自動的に出力する機能を有し、出力されたデータから欠陥マップを作成することもできる。さらに、欠陥観察装置は、作成した欠陥マップを元に、欠陥等の観察、分類及び分析を行うこともできる。このため、欠陥観察装置は、レビューSEMとも呼ばれている。また、欠陥レビューSEM(Defect Review-SEM)又はウエハ検査SEMとも呼ばれている。
【0005】
言い換えると、欠陥観察装置において、光学顕微鏡とSEMとは共通のステージを有し、このステージに載置したウエハについて、光学顕微鏡で観察し、検出した欠陥等の位置を特定し、その欠陥等をSEMにより観察することができる。例えば、数十μmの精度を有する欠陥マップに従って、欠陥観察装置の暗視野顕微鏡を用いて数百nmの範囲で欠陥等を探索し、数μm以下の精度で欠陥等の位置を特定することができる。
【0006】
これにより、光学顕微鏡とSEMとの座標系の乖離を補正し、欠陥観察の成功率を向上させ、高いスループットを維持することができる。また、半導体デバイスの製造工程において、配線の絶縁不良や短絡等の不良の原因になる欠陥等を早期に検出し、その発生源を突き止め、歩留まり低下を防ぐことができる。
【0007】
特許文献1には、第一撮像部(光学顕微鏡)及び第二撮像部(SEM)を備えた欠陥観察装置において、第一撮像部の複数の撮像手段の中から第一撮像部の次の撮像手段又は第二撮像部の撮像条件を設定し、第二撮像部の撮像条件として、積算フレーム枚数、加速電圧、プローブ電流、撮像倍率又は撮像視野を設定し、第一撮像部によって検出された欠陥の位置情報と第一撮像部による画像取得により得られた情報に基づいて座標補正式を算出し、補正された位置情報に基づいて第二撮像部を用いて欠陥を撮像するものが開示されている。
【0008】
特許文献2には、SOIウェハに2次元状に配列する孔部と、孔部を覆う光学的に不透明な薄膜であってSOIウェハ上に2次元状に配列したシャッタパターンと、SOIウェハに形成された動作電極と、を有するシャッタアレイを備えた、光学フィルタリングデバイスが開示されている。ここで、SOIは、Silicon on Insulatorの略称であり、SOIウェハは、Si基板の上に、酸化絶縁膜(BOX層:Buried Oxide 層)、表面Si膜(SOI部)が形成された構造を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-132637号公報
【文献】特許第5867736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
暗視野顕微鏡においては、欠陥等の種類に応じた瞳フィルタが必要であり、多種類の欠陥等に対応する1mm以下の寸法を有する微小なシャッタが求められている。このようなシャッタを開閉させることにより、多様な空間フィルタを形成することができると考えられる。
【0011】
このようなシャッタを使わない従来の暗視野光学系による欠陥検出においては、各種の欠陥散乱光の瞳面における空間特性及び偏光特性を利用して、欠陥と、検出ノイズとなるウエハラフネスとの判別可能性を空間フィルタ及び偏光フィルタにより高めていた。
【0012】
欠陥等の種類によって検出に有利な空間フィルタの形状が異なるため、複数種の欠陥の検出感度向上のためには、複数種の空間フィルタとフィルタ切り替え機構とが必要である。フィルタ切り替え機構を用いることにより、シャッタの開閉箇所を選択することができ、複数種の空間フィルタを構成することができるからである。
【0013】
シャッタの開閉動作の際には、弾性変形する軸部であるサスペンション部に発生する変形量が大きくなる。このため、開閉動作の繰り返しにより、シャッタの軸部及びその周辺部における疲労破壊が発生しやすくなり、シャッタの寿命の短くなることが懸念される。
【0014】
本発明は、欠陥観察装置の構成要素である光学顕微鏡に用いるシャッタアレイデバイス(光フィルタリングデバイス)のシャッタの疲労破壊を防止し、シャッタアレイデバイスの寿命を長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光フィルタリングデバイスは、軸部を有し開閉可能な構成を有するシャッタと、シャッタ開口部を有する基板と、を備え、シャッタと基板との間に電圧を印加する構成を有し、シャッタは、軸部の周りに回転しシャッタ開口部に移動することにより開状態となる構成を有し、シャッタの開き角は、90度未満に調整される構成を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、欠陥観察装置の構成要素である光学顕微鏡に用いる光フィルタリングデバイスのシャッタの疲労破壊を防止し、シャッタアレイデバイスの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る欠陥観察装置を示す模式構成図である。
図2図1の欠陥観察装置の欠陥検出部である光学顕微鏡を示す模式構成図である。
図3A】シャッタアレイデバイス及びマイクロレンズアレイを示す模式拡大図である。
図3B図3Aのシャッタアレイデバイスを構成するシャッタが一部を除き閉じた状態を示す模式拡大図である。
図3C図3Aのシャッタアレイデバイスを構成するシャッタの全てが閉じた状態を示す模式拡大図である。
図3D図3Aのシャッタアレイデバイスの状態に対応する空間フィルタを示す図である。
図3E図3Bのシャッタアレイデバイスの状態に対応する空間フィルタを示す図である。
図3F図3Cのシャッタアレイデバイスの状態に対応する空間フィルタを示す図である。
図4A】実施例1のシャッタアレイデバイスを示す斜視図である。
図4B】1個のシャッタアレイを示す斜視図である。
図4C】1個の電極アレイを示す斜視図である。
図5図4AのB-B断面図である。
図6図4AのA-A断面図である。
図7図4Aのラックの上面図である。
図8】実施例2のシャッタアレイデバイスを示す断面図である。
図9】実施例3のシャッタアレイデバイスを示す断面図である。
図10A】比較例のシャッタアレイを示す断面図である。
図10B】実施例4のシャッタアレイを示す断面図である。
図10C】実施例4のシャッタアレイを示す上面図である。
図11】実施例5のシャッタアレイを示す断面図である。
図12A】実施例6のシャッタアレイを示す断面図である。
図12B】実施例6のシャッタアレイをラックに設置した状態を示す断面図である。
図13】実施例7のシャッタアレイの詳細を示す上面図である。
図14】実施例8のシャッタアレイの詳細を示す上面図である。
図15】一実施形態のシャッタアレイを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、欠陥観察装置を示す模式構成図である。
【0019】
本図において、欠陥観察装置10は、走査型電子顕微鏡1002(SEM)と、光学顕微鏡1003(欠陥検出部)と、制御部1006と、端末1007と、記録装置1008と、ネットワーク1009と、を備えている。
【0020】
走査型電子顕微鏡1002は、ステージ1004とともに、真空槽1005に設置されている。ステージ1004には、ウエハ1001が載置されるようになっている。ウエハ1001は、X軸及びY軸について移動可能なステージ1004とともに移動させることができる。これにより、ウエハ1001の任意の表面について、走査型電子顕微鏡1002及び光学顕微鏡1003による観察が可能となっている。
【0021】
光学顕微鏡1003は、レーザー光源1010と、対物レンズ1013と、結像レンズ1015と、撮像素子1016と、を備えている。対物レンズ1013は、真空槽1005に設置されている。このため、対物レンズ1013を通過した光が撮像素子1016に到達するように、真空封止窓1014が設けられている。真空封止窓1014と結像レンズ1015との間には、真空封止窓1014側から順に、マイクロレンズアレイ1103、シャッタアレイデバイス1101及びマイクロレンズアレイ1102が設置されている。レーザー光源1010から照射された光線は、真空封止窓1011を通過し、ミラー1012を介してウエハ1001の上面に照射されるように構成されている。
【0022】
ウエハ1001の上面で反射した光は、対物レンズ1013及び真空封止窓1014を順に通過し、マイクロレンズアレイ1103、シャッタアレイデバイス1101及びマイクロレンズアレイ1102を順に通過し、結像レンズ1015で結像されて、撮像素子1016により検出される。撮像素子1016としては、2次元CCDセンサ、ラインCCDセンサ、複数のTDIを平行に配置したTDIセンサ群、フォトダイオードアレイ等が用いられる。ここで、CCDは、Charge-Coupled Deviceの略称である。また、TDIは、Time Delay Integrationの略称である。
【0023】
走査型電子顕微鏡1002と光学顕微鏡1003とは、正確な距離を保つように固定されている。
【0024】
制御部1006は、ステージ制御回路1018と、SEM撮像系制御回路1019と、画像処理回路1020と、外部入出力インターフェース1021と、中央演算部1022(CPU)と、メモリ1023と、を有する。ステージ制御回路1018、SEM撮像系制御回路1019及び画像処理回路1020は、バス1024を介して、外部入出力インターフェース1021、中央演算部1022及びメモリ1023と接続されている。ステージ制御回路1018、SEM撮像系制御回路1019及び画像処理回路1020は、ウエハ1001の移動、ウエハ1001の表面の欠陥等の観察その他の操作をするための回路である。画像処理回路1020は、撮像素子1016で取得した画像の信号を積算し、データ変換等を行って、欠陥等の種類の判別、その位置及び寸法の特定等を行う。判別、特定等の結果に関する情報は、本明細書においては「欠陥情報」と呼ぶことにする。
【0025】
欠陥情報は、記録装置1008又はメモリ1023に入力される。メモリ1023は、主として、一時的な保存に用いられる。一方、記録装置1008は、取得された欠陥情報を蓄積し保管するために用いることができる。
【0026】
制御部1006においては、欠陥情報に基づいて、ステージ制御回路1018がステージ1004を、SEM撮像系制御回路1019が走査型電子顕微鏡1002を制御する。そして、制御部1006においては、光学顕微鏡1003により検出された欠陥等のいくつか又は全てを詳細に観察し、欠陥等の分類、その発生原因の分析等を行う。また、制御部1006においては、SEM像の焦点や出力の制御、分析の制御、走査型電子顕微鏡1002で得られたデータの解析、光学顕微鏡1003で得られた欠陥等の位置補正等も行う。さらに、制御部1006においては、端末1007への表示、ネットワーク1009経由のデータ転送等も行うことができる。
【0027】
端末1007においては、欠陥等の観察に関する条件設定を行う。また、端末1007においては、走査型電子顕微鏡1002、光学顕微鏡1003及びステージ1004を制御するためのパラメータ設定を行う。また、端末1007においては、シャッタアレイデバイス1101のシャッタ(後述)の開閉動作に関する設定も行う。さらに、端末1007においては、シャッタ開のときの角度(開き角)を適正な値に調整することもできるようになっている。この場合においては、撮像素子1016で得られた画像から瞳像に変換した画像を端末1007で確認しながら、シャッタアレイデバイス1101に印加する電圧の調整を行う方法を採用してもよい。これにより、シャッタの開き過ぎにより生じる基板への付着、シャッタの軸部の破損等の故障を防止することができる。
【0028】
シャッタの軸部においては、シャッタの開状態における応力に対抗して閉状態に戻ろうとする弾性体としての力が働く。この力と、上記の電圧印加によって発生するシャッタを開こうとする静電力との釣り合いにより、開き角が決定される。よって、上記の電圧を調整することにより、開き角を調整することができる。シャッタの開き角の上限値は、上記の電圧により定められる。
【0029】
図2は、欠陥観察装置の欠陥検出部である光学顕微鏡を示す模式構成図である。
【0030】
本図において、光学顕微鏡20は、撮像素子100(センサ)と、結像レンズ101と、対物レンズ102と、を備えている。結像レンズ101と対物レンズ102との間には、マイクロレンズアレイ106、107が設置されている。マイクロレンズアレイ106、107の間には、シャッタアレイデバイス200(光フィルタリングデバイス)が設置されている。マイクロレンズアレイ106、107及びシャッタアレイデバイス200は、光学顕微鏡20の瞳面の近傍に設置されている。
【0031】
対物レンズ102は、レーザー光源103からウエハ104に照射された光線300がウエハ104の表面で反射し、その反射光301が入射するように構成されている。対物レンズ102を通過した光は、瞳面(フーリエ変換面)及び結像レンズ101を通過し、撮像素子100に到達し、電気的な信号として検出される。なお、レーザー光源103から照射される光線300は、真空封止窓351を透過し、ミラー352で反射し、ウエハ104に照射されるようになっている。
【0032】
ウエハ104に欠陥108が存在する場合は、欠陥108に当たった光線300が反射し、通常と異なる反射光301が発生する。この反射光301を撮像素子100により検出し、図1の画像処理回路1020により欠陥108の像に対応するデータを取得することができる。ステージ105を移動することにより、ウエハ104の表面に存在する欠陥108を見つけることができる。
【0033】
図3Aは、シャッタアレイデバイス及びマイクロレンズアレイを示す模式拡大図である。
【0034】
本図においては、マイクロレンズアレイ106、107の間にシャッタアレイデバイス200が設置されている。シャッタアレイデバイス200のシャッタ220はすべて開となっている。このため、シャッタアレイデバイス200を通過する反射光302は、シャッタ開口部304において収束して焦点を結び、光303となる。
【0035】
図3Bは、一部のシャッタ220以外が閉じた状態を示したものである。また、図3Cは、全てのシャッタ210が閉じた状態を示したものである。このように、複数個のシャッタ210、220は、それぞれが独立に開閉可能な構成を有する。
【0036】
図3D、3E及び3Fはそれぞれ、図3A、3B及び3Cに示す状態に対応する空間フィルタを示したものである。図3D、3E及び3Fは、シャッタ220の上方又は下方から見た図である。
【0037】
これらの図において、シャッタ閉状態211は黒色で表し、シャッタ開状態221は白色で表している。シャッタアレイデバイス200の画素ごとに個別にON/OFF制御することにより、複数種の空間フィルタ(空間マスク)を構成することができる。なお、図3A、3B及び3Cにおいては、シャッタアレイデバイス200のシャッタ210、220及びマイクロレンズアレイ106、107のレンズは、3行3列で配置されているが、これは一例であって、必要に応じて、更に大規模なマトリクスを形成してもよい。
【0038】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例1】
【0039】
図4Aは、実施例1のシャッタアレイデバイスを示す斜視図である。
【0040】
本図に示すシャッタアレイデバイス200は、シャッタアレイ205と、電極アレイ206と、ラック260(台座)と、を有している。シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、基板201を有し、ラック260に固定されている。シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、それぞれが直方体形状であり、ラック260に設けられた凹凸構造の斜面に設置されている。言い換えると、シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、ラック260の斜面に設置されている。これにより、シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、ラック260の底面に対して傾斜した構成となる。
【0041】
基板201は、基板分割スリット202で分割されている。
【0042】
シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、接着面250で導電性接着剤により接着固定され、電気的導通が確保されている。シャッタアレイ205及び電極アレイ206はそれぞれ、ラック260及び接着面251に設けられたラック配線261に導電性接着剤で接着固定され、電気的導通が確保されている。なお、導電性接着剤の代わりに、導電性接着フィルム、はんだ等を用いてもよいし、Au-Au、Cu-Cu、Cu-Sn等を用いたメタル接合等を利用してもよい。
【0043】
本図においては、シャッタ212(開閉板)が3行3列のマトリクス状に配置され、その両側にそれぞれ3個ずつの電極アレイ206が配置されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、多数の電極アレイ206とともに、シャッタ212が30行30列のマトリクス状に配置された構成であってもよい。まとめると、シャッタ212は、複数個が隣り合うように配置されている。
【0044】
シャッタアレイ205及び電極アレイ206は、1個の寸法(縦、横、高さのそれぞれ)がおおよそ1mm×3mm×1mmの直方体形状である。
【0045】
図4Bは、1個のシャッタアレイを示したものである。
【0046】
本図において、シャッタアレイ205は、3つのシャッタ212が一列に配置された1つのシャッタ支持部203と、3つの基板201と、シャッタ支持部203と基板201との間に設けられた絶縁層270と、を有している。隣り合う基板201の間には、基板分割スリット202a、202bが設けられている。言い換えると、基板201は、基板分割スリット202a、202bで分割されている。絶縁層270は、シャッタ支持部203と同様に一体となっている。絶縁層270により、シャッタ支持部203と基板201とは絶縁され、それぞれに対して異なる電圧を印加することができるようなっている。
【0047】
本実施例においては、シャッタ212、シャッタ支持部203及び基板201は、シリコン(Si)で形成されている。一方、絶縁層270は、シリカ(SiO)で形成されている。
【0048】
図4Cは、1個の電極アレイを示したものである。
【0049】
本図に示すように、電極アレイ206は、シャッタを有していない3つの電極板207と、3つの基板201と、を有している。隣り合う基板201の間には、基板分割スリット202a、202bが設けられている。言い換えると、基板201は、基板分割スリット202a、202bで分割されている。電極板207も、スリット204a、204bで分割されている。電極アレイ206には、絶縁層が設けられていない。基板201と電極板207とは、電気的に接続された構成となっている。すなわち、基板201及び電極板207は、基板分割スリット202a、202b及びスリット204a、204bにより3つに分割され、これらの3つに対して異なる電圧を印加することができるようなっている。なお、隣接する基板201は、絶縁性の接着剤で連接されている。これにより、電極板207が基板201と外部とを接続するための端子として用いることができるようになっている。
【0050】
図4Aに示すように、シャッタ支持部203の端部には、ワイヤ240が接続されている。また、電極板207には、ワイヤ241が接続されている。ワイヤ240、241は、ワイヤボンディング等により固定されている。これにより、シャッタ212の開閉動作のために電圧をON又はOFFに設定して印加することができる。
【0051】
図5は、図4AのB-B断面を示したものである。
【0052】
図5において、ラック260には、ラック260の底面に垂直なラック開口部263が複数設けられている。そして、それぞれのラック開口部263にシャッタ開口部264が連通するように、シャッタアレイ205が設置されている。シャッタ開口部264は、シャッタ支持部203の上面に対して垂直に設けられている。
【0053】
本実施例においては、ラック開口部263の幅は、700μmとした。ラック開口部263の幅は、100~1000μmが望ましい。
【0054】
シャッタ212は、閉じている状態(シャッタ閉223)では、シャッタ支持部203の上面に平行となっている。一方、シャッタ212が開いた状態(シャッタ開213)では、シャッタ角度280(開き角)が90度よりも小さくなっている。
【0055】
ラック260の上面には、ラック絶縁層262が設けられ、ラック絶縁層262の表面にラック配線261が形成されている。ラック配線261及びラック絶縁層262は、シャッタアレイ205とラック260との間及び電極アレイ206とラック260との間にも設けられている。ラック配線261と基板201との電気的接続は、導電性接着剤を用いて、基板底面232及び基板側面233を介してなされている。言い換えると、ラック260は、基板201と電気的に接続するラック配線261を有する。
【0056】
これにより、それぞれの基板201に電圧を印加することができるようになっている。また、ラック260とラック配線261との間にラック絶縁層262を設けているため、隣り合うラック配線261の間で導通が生じることを防止することができる。
【0057】
本図に示すように、シャッタ開213の状態においては、開き角が90度未満のシャッタ212の下端部と、シャッタ212の上面(図中右側の面)に対向する基板201の内壁面との間の距離が、シャッタ開口部264において最も小さくなっている。
【0058】
さらに、シャッタアレイ205の基板201が傾きを有するため、シャッタ212の軸部がラック開口部263の上方にせり出している。言い換えると、シャッタ212の軸部側の基板201の内壁面がラック開口部263を部分的に覆う構成をなっている。そして、シャッタ212の上面を下方に延長した面と、シャッタ212の上面に対向する基板201の内壁面の下端部との間の距離(シャッタ212と基板201の内壁面との最小距離)が、ラック開口部263及びシャッタ開口部264の幅に比べて小さくなっている。すなわち、シャッタアレイ205の有効開口率が低くなっている。ここで、有効開口率は、シャッタ開口部264の幅を分母とし、上記の最小距離を分子として算出した割合(百分率)と定義する。
【0059】
よって、ラック開口部263及びシャッタ開口部264を通過する光は、上記の最小距離以下に収束して、ラック開口部263又はシャッタ開口部264の幅が小さい領域で焦点を結ぶように調整されることが望ましい。光が収束する際の角度(図3Aの反射光302及び光303の縦断面における角度)は、反射光302及び光303が基板201の内壁面及びシャッタ212に衝突しない角度とすることが望ましい。
【0060】
したがって、有効開口率の観点からは、基板201の傾きが小さいこと、すなわち、シャッタ開口部264のラック開口部263に対する傾きが小さいことが望ましい。
【0061】
一方、シャッタ212の軸部における応力の低減の観点からは、シャッタ角度280が小さくなるように調整することが望ましい。
【0062】
上記の2つの観点から、シャッタ角度280は、85度から60度までの範囲が望ましく、80度から60度までの範囲が更に望ましく、75度から60度までの範囲が特に望ましい。ここで、上記の範囲における下限値「60度」の意味は、基板201の傾きを0度とした構成、すなわちラック開口部263及びシャッタ開口部264の内壁面を平行とした構成において有効開口率が50%以上であることが望ましいことに対応している。有効開口率が50%未満となると、ラック開口部263及びシャッタ開口部264を通過する光の収束の程度が問題となること、隣り合うシャッタ開口部264の間隔が大きくなること等の観点から望ましくない。
【0063】
なお、図5に示すように、シャッタ角度280は、シャッタ212の上面がラック開口部263の内壁面に平行となれば十分であり、それよりも大きくする必要はない。よって、シャッタ角度280は、90度から基板201の傾きを引いた値を上限値とすることができる。
【0064】
図6は、図4AのA-A断面を示したものである。
【0065】
図6においては、シャッタ開213及びシャッタ閉223の状態を示している。
【0066】
図7は、図4Aのラック260の上面図である。
【0067】
本図においては、ラック260に設けられた凹凸構造の斜面を含め、図中横方向に隣り合うラック開口部263の上面縁部を電気的に接続するように、ラック配線261が形成されている。隣り合うラック配線261に間には、ラック配線261に平行に絶縁部265が設けられ、電気的に導通しないように構成されている。
【実施例2】
【0068】
図8は、実施例2のシャッタアレイデバイスを示す断面図である。
【0069】
本図に示すシャッタアレイデバイス200においては、図5に示す実施例1よりも、基板201の高さを低くしている。この他の構成は、図5と同様である。
【0070】
基板201の高さを低くした構成により、ラック開口部263に対して屈曲しているシャッタ開口部264の長さが短くなり、シャッタ開213において光軸が通過する開口面積を広くすることができる。また、シャッタ212の開き角を更に小さくしても、開口面積を確保することができる。
【0071】
なお、ラック配線261を適切な回路となるように形成し、かつ、シャッタ支持部203及びシャッタ212の電位を変化させるためにワイヤ等の配線をシャッタ支持部203に接続することにより、電極アレイ206を省略することは可能である。
【実施例3】
【0072】
図9は、実施例3のシャッタアレイデバイスを示す断面図である。
【0073】
本図に示すシャッタアレイデバイス200においては、図8に示す実施例2と同様に、基板201の高さを低くしている。
【0074】
本図においては、隣り合うシャッタアレイ205の端部が重なるように配置されている。言い換えると、シャッタアレイ205の基板201が隣のシャッタアレイ205のシャッタ支持部203の上方を部分的に覆うように配置されている。基板201とシャッタ支持部203とが重なる部分には、隙間290が設けられている。電極アレイ206も、同様に重なるように配置している。隙間290が設けられているため、基板201と下方のシャッタ支持部203とは接触しない構成となっている。これにより、絶縁を確保し、ショートを防止することができる。なお、隙間290を設ける代わりに、絶縁材料を挟み込んでもよい。
【0075】
以上の構成により、隣り合うシャッタ開口部264の間隔を狭く設定することができる。その結果、シャッタアレイ205の集積度を高めることができ、空間フィルタのパターンも増やすことが可能となる。
【0076】
(比較例)
図10Aは、比較例のシャッタアレイを示したものである。
【0077】
本図に示すシャッタ212は、開き過ぎた状態であり、基板201の内壁面282に密着している。この場合、付着したシャッタ212が内壁面282から離脱しなくなり、開閉機能が得られなくなる懸念がある。
【実施例4】
【0078】
図10Bは、実施例4のシャッタアレイを示したものである。
【0079】
本図においては、基板201の内壁面282に凸部281を設けることにより、シャッタ212の接触が一部分となるようにしている。これにより、シャッタ212が開いた状態で固定されないようにすることができる。また、凸部281により、シャッタ212の開き角の上限値が設定されている。
【0080】
なお、図5等においては、シャッタアレイの上面が、シャッタ212の閉状態では光軸と斜めに交わる構成を示しているが、本発明は、図10Bに示すように、シャッタアレイの上面が、シャッタ212の閉状態では光軸と略垂直に交わる構成としてもよい。
【0081】
図10Cは、本実施例のシャッタアレイを上面から見た図である。
【0082】
本図に示す凸部281は、鉛直方向に2本設けられ、シャッタ開213においてシャッタ212を小さい面積で支持するようになっている。これにより、過剰な電圧によるシャッタ212の開き過ぎ、装置のステージのトラブルによる衝撃や振動、地震等による振動その他の異常事態が発生し、シャッタ212の開き角が設定範囲を超えても、シャッタ212が基板201に付着して動かなくなることを防止し、長期の信頼性を確保することができる。
【実施例5】
【0083】
図11は、実施例5のシャッタアレイを示したものである。
【0084】
本図においては、シャッタ212の下面の一部に凸部283を設けている。これにより、シャッタ212が開き過ぎた場合に、シャッタ212が基板201に付着して動かなくなることを防止する。
【実施例6】
【0085】
図12Aは、実施例6のシャッタアレイを示したものである。
【0086】
本図においては、シャッタ支持部203の底面に対して基板201のシャッタ開口部264を傾けて形成している。
【0087】
図12Bは、本実施例のシャッタアレイをラックに設置した状態を示したものである。
【0088】
本図に示すように、基板201のシャッタ開口部264は、傾斜した形状を有するため、シャッタアレイ205をラック260に所定の角度で設置した状態では、ラック開口部263の内壁面がシャッタ開口部264の内壁面と略平行になっている。言い換えると、ラック開口部263とシャッタ開口部264とが略平行に連通している。これにより、ラック開口部263及びシャッタ開口部264を光軸に対して略平行に配置することができる。
【0089】
これにより、光軸を基準として、基板201の内壁面がラック開口部263を覆うような構造になることを避けることができ、シャッタアレイ205の有効開口率を向上させることができる。また、シャッタ212の開き角を小さくすることができる。
【0090】
本実施例においては、シャッタ開口部264の内壁面とシャッタ支持部203の内壁面とが平行でないため、シャッタ212の開き角が最大となった状態においてもシャッタ212がシャッタ開口部264の内壁面に密着することはないと考えられるが、図10Bの凸部281又は図11の凸部283を設けて、密着を確実に防止する構成としてもよい。
【0091】
本実施例の構成により、マイクロレンズアレイによりそれぞれのシャッタ212に集光されるスポット径を大きくすることができ、マイクロレンズの設計裕度を高めることができる。また、このことは、マイクロレンズのコスト削減にも寄与する。
【0092】
なお、本実施例のシャッタアレイは、ドライエッチング装置を用いて基板201のシリコンをエッチング除去する際に、基板201を傾けてドライエッチング装置にセットすることにより形成することができる。
【実施例7】
【0093】
図13は、実施例7のシャッタアレイの詳細を示す上面図である。
【0094】
本図において、開閉動作をするシャッタ2001は、同一平面を構成するシャッタ支持部2002にねじり棒284(軸部)を介して支持されている。シャッタ2001は、ねじり棒284の中央部付近で接続されている。シャッタ2001とシャッタ支持部2002との間には、スリット2003が設けられている。また、シャッタ支持部2002とねじり棒284との間には、スリット2004が設けられている。
【0095】
ねじり棒284は、中心軸が直線状であり、断面が正方形状、長方形状、円形状、楕円形状等である。力学的には円形状が望ましいが、製造の容易さの観点からは正方形状又は長方形状が望ましい。
【0096】
シャッタ2001が開く際には、ねじり棒284にねじり応力が生じる。電圧の印加に伴う静電力が作用すると、シャッタ2001が開くため、ねじり応力が生じる。電圧の印加を停止すると、静電力がなくなり、シャッタ2001が閉じ、ねじり応力がなくなる。このように、ねじり棒284は、ねじり棒ばね(弾性体)として機能する。
【0097】
まとめると、本図に示すように、シャッタ2001は、ねじり棒284を軸部とする片開き扉の構造を有する。
【0098】
シャッタ2001の開き角が90度になると、ねじり応力が最大となる。このため、ねじり棒284及びその周辺の疲労破壊等を考慮すると、シャッタ2001の開き角は、90度よりも小さいことが望ましい。
【実施例8】
【0099】
図14は、実施例8のシャッタアレイの詳細を示す上面図である。
【0100】
本図において、開閉動作をするシャッタ2001は、同一平面を構成するシャッタ支持部2002にミアンダ棒285(軸部)を介して支持されている。シャッタ支持部2002とミアンダ棒285との間には、スリット2004が設けられている。ミアンダ棒285は、例えば、正弦波形状等であり、断面が正方形状、長方形状、円形状、楕円形状等である。
【0101】
シャッタ2001が開く際には、シャッタ2001の回転軸方向(軸部の長手方向)に対して交差するミアンダ棒285の屈曲部が伸びる方向に応力が生じる。
【0102】
この構成により、図13のねじり棒284を用いる場合に比べて、局所的な応力が低減され、シャッタアレイとしての信頼性を向上させることができる。
【0103】
つぎに、シャッタの駆動方式について説明する。
【0104】
図15は、シャッタアレイの断面を模式的に示したものである。
【0105】
本図において、シャッタ212にはシャッタ支持部203を介して正の電位(V1)となるように、基板201には負の電位(V2)となるように、電圧が印加される。これにより生じる電位差により静電力が生じ、シャッタ212が開く。
【0106】
本図に示すように、シャッタ212の下面が正に帯電し、基板201の内壁面282が負に帯電する。これにより、シャッタ212が軸部の周りに回転し、その結果としてシャッタ開となる。
【0107】
電圧の印加を停止すると、軸部の復元力により、シャッタ閉の状態に戻る。
【0108】
例えば、V1が正の電位として+10~100V、V2が負の電位として-10~-100Vとなるようにする場合、印加する電圧は、20~200Vである。ただし、シャッタ212の大きさによっても変わるものであり、本発明が上記の例に限定されるものではない。
【0109】
なお、上述の実施例においては、シャッタアレイ、電極アレイ、ラック等の部品を組み立てることにより作製したシャッタアレイデバイスを示しているが、本発明は、このような実施例に限定されるものではなく、シャッタアレイ、電極アレイ、ラック等に該当する部分を、半導体製造工程で用いられるシリコンの表面酸化処理、フォトリソグラフィ、エッチング、蒸着、イオン注入等を組み合わせることにより形成し、部品の組み立てをすることなく、一体物としてのシャッタアレイデバイスを作製してもよい。
【符号の説明】
【0110】
10:欠陥観察装置、20:光学顕微鏡、100:撮像素子、101:結像レンズ、102:対物レンズ、103:レーザー光源、104:ウエハ、106、107、1102:マイクロレンズアレイ、108:欠陥、200、1101:シャッタアレイデバイス、201:基板、202、202a、202b:基板分割スリット、203、2002:シャッタ支持部、204a、204b:スリット、205:シャッタアレイ、206:電極アレイ、207:電極板、211:シャッタ閉状態、212、220、2001:シャッタ、221:シャッタ開状態、240、241:ワイヤ、250、251:接着面、260:ラック、261:ラック配線、263:ラック開口部、264:シャッタ開口部、265:絶縁部、270:絶縁層、281、283:凸部、282:内壁面、284:ねじり棒、285:ミアンダ棒、290:隙間、303:光、304:シャッタ開口部、300:光線、301、302:反射光、351:真空封止窓、352:ミラー、1001:ウエハ、1002:走査型電子顕微鏡、1003:光学顕微鏡、1004:ステージ、1005:真空槽、1006:制御部、1007:端末、1008:記録装置、1009:ネットワーク、1010:レーザー光源、1013:対物レンズ、1015:結像レンズ、1016:撮像素子、1018:ステージ制御回路、1019:SEM撮像系制御回路、1020:画像処理回路、1021:外部入出力インターフェース、1022:中央演算部、1023:メモリ、2003、2004:スリット。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15