(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】色素組成物、インクジェット記録方法、画像記録物、及び色素化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20231114BHJP
C09B 23/01 20060101ALI20231114BHJP
C09B 23/14 20060101ALI20231114BHJP
C09B 23/08 20060101ALI20231114BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20231114BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20231114BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231114BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C09B67/20 F CSP
C09B23/01
C09B23/14
C09B23/08
C09B67/46 A
C09D11/32
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2022546898
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022899
(87)【国際公開番号】W WO2022049862
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020147010
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 博道
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-348520(JP,A)
【文献】特開2004-67870(JP,A)
【文献】特開2000-141898(JP,A)
【文献】特開2000-292758(JP,A)
【文献】特開2002-90521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
C09D 1/00-201/10
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される色素化合物と、媒体と、を含む色素組成物。
【化1】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
式2-1中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、E
11、及びE
12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、及びR
1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A
21、A
22、及びA
23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
21及びB
22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G
21は、A
21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
22は、A
23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A
31及びA
32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
31は、2価の連結基を表す。R
3a及びR
3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G
31は、A
31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
32は、A
32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A
41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E
41及びE
42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cのうち1つはE
41又はE
42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【請求項2】
前記式2-1、式2-2、及び式2-3中、B
11、B
21、B
22、及びB
31はそれぞれ独立に、炭素数2~8の2価の連結基である、請求項1に記載の色素組成物。
【請求項3】
前記式2-1、式2-2、式2-3、及び式2-4中、A
11、A
12、A
21、A
22、A
23、A
31、A
32、及びA
41は、窒素原子である、請求項1又は請求項2に記載の色素組成物。
【請求項4】
前記式1中、X
1は、前記式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項5】
前記式1中、Cyは下記式4で表される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の色素組成物。
【化6】
式4中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、CR
3R
4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR
5-を表す。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。A
1及びA
2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。また、L
2はそれぞれ独立に1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表し、L
2は置換基を有さない。R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R
6及びR
7は、互いに連結して環を形成してもよい。R
8は下記式Aで表される。
-S
A-T
A 式A
式A中、S
Aは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NR
L1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
L1-、-S(=O)
2-、-OR
L2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、R
L1はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R
L2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、T
Aは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。
【請求項6】
前記式4中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する非金属原子群を表す、請求項5に記載の色素組成物。
【請求項7】
前記媒体は、液体である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項8】
前記媒体は、水を含む液体である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項9】
前記媒体は、水と、沸点が100℃以上の有機溶剤とを含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項10】
インクである、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項11】
インクジェット記録用である、請求項10に記載の色素組成物。
【請求項12】
基材上に、請求項11に記載の色素組成物を付与する工程を含むインクジェット記録方法。
【請求項13】
基材と、
前記基材上に配置された、請求項10又は請求項11に記載の色素組成物の固化物である赤外線吸収画像と、を含む画像記録物。
【請求項14】
基材と、
前記基材上に配置された赤外線吸収画像と、を含み、
前記赤外線吸収画像は、下記式1で表される色素化合物を含み、前記赤外線吸収画像の極大吸収波長が700nm~1,300nmの範囲にある、画像記録物。
【化7】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
式2-1中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、E
11、及びE
12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、及びR
1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A
21、A
22、及びA
23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
21及びB
22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G
21は、A
21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
22は、A
23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A
31及びA
32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
31は、2価の連結基を表す。R
3a及びR
3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G
31は、A
31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
32は、A
32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A
41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E
41及びE
42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cのうち1つはE
41又はE
42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【請求項15】
下記式1で表される色素化合物。
【化12】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
式2-1中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、E
11、及びE
12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、及びR
1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A
21、A
22、及びA
23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
21及びB
22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G
21は、A
21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
22は、A
23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A
31及びA
32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
31は、2価の連結基を表す。R
3a及びR
3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G
31は、A
31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
32は、A
32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A
41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E
41及びE
42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cのうち1つはE
41又はE
42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【請求項16】
前記式2-1、式2-2、及び式2-3中、B
11、B
21、B
22、及びB
31はそれぞれ独立に、炭素数2~8の2価の連結基である、請求項15に記載の色素化合物。
【請求項17】
前記式2-1、式2-2、式2-3、及び式2-4中、A
11、A
12、A
21、A
22、A
23、A
31、A
32、及びA
41は、窒素原子である、請求項15又は請求項16に記載の色素化合物。
【請求項18】
前記式1中、X
1は、前記式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す、請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の色素化合物。
【請求項19】
前記式1中、Cyは下記式4で表される、請求項15~請求項18のいずれか1項に記載の色素化合物。
【化17】
式4中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、CR
3R
4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR
5-を表す。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。A
1及びA
2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。また、L
2はそれぞれ独立に1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表し、L
2は置換基を有さない。R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R
6及びR
7は、互いに連結して環を形成してもよい。R
8は下記式Aで表される。
-S
A-T
A 式A
式A中、S
Aは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NR
L1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
L1-、-S(=O)
2-、-OR
L2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、R
L1はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R
L2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、T
Aは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。
【請求項20】
前記式4中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する非金属原子群を表す、請求項19に記載の色素化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色素組成物、インクジェット記録方法、画像記録物、及び色素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外線吸収色素の特性を活かした様々な用途への展開が提案されている。例えば、近赤外線吸収色素は、プラズマディスプレイパネル用又はCCD(撮像素子)用の赤外線カットフィルム、熱線遮蔽フィルム等の光学フィルム用途;追記型光ディスク又はフラッシュ溶融定着材料の光熱変換材料用途;セキュリティーインク、不可視バーコードインク等の情報表示材料用途;診断用マーカー、光線力学療法の薬剤等の医療材料用途といった多種多様の用途に用いられている。この近赤外線吸収色素に特長的な性能として、赤外又は赤外領域に強い吸収を有することと併せて、可視光領域に吸収をなるべく有しないこと(不可視性)が要求されている。また、赤外線吸収能が長く維持されることも要求されている。
【0003】
例えば、特開2000-292758号公報には、スルホ基を有するシアニン色素部分と、ビピリジンとからなる化合物が記載されている。特開2002-90521号公報には、スルホ基を有するシアニン色素部分と、カリウムカチオンとが、分子内塩を形成しているシアニン染料が記載されている。特開2000-141898号公報には、シアニンカチオンと、アニオンとからなる化合物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近赤外線吸収色素において、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持されることが要求されている。
【0005】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物を得ることが可能な色素組成物、及びインクジェット記録方法が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物を得ることが可能な新規な色素化合物が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む。
<1>下記式1で表される色素化合物と、媒体と、を含む色素組成物。
【0007】
【化1】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
式2-1中、A11及びA12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R1a、R1b、R1c、R1d、E11、及びE12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A21、A22、及びA23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B21及びB22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R2a及びR2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G21は、A21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G22は、A23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A31及びA32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B31は、2価の連結基を表す。R3a及びR3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G31は、A31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G32は、A32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R4a、R4b及びR4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E41及びE42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R4a、R4b及びR4cのうち1つはE41又はE42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【0013】
<2>式2-1、式2-2、及び式2-3中、B11、B21、B22、及びB31はそれぞれ独立に、炭素数2~8の2価の連結基である、<1>に記載の色素組成物。
【0014】
<3>式2-1、式2-2、式2-3、及び式2-4中、A11、A12、A21、A22、A23、A31、A32、及びA41は、窒素原子である、<1>又は<2>に記載の色素組成物。
【0015】
<4>式1中、X1は、式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す、<1>~<3>のいずれか1つに記載の色素組成物。
【0016】
<5>式1中、Cyは下記式4で表される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の色素組成物。
【化6】
式4中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、CR
3R
4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR
5-を表す。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。A
1及びA
2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。また、L
2はそれぞれ独立に、1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表し、L
2は置換基を有さない。R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R
6及びR
7は、互いに連結して環を形成してもよい。R
8は下記式Aで表される。
-S
A-T
A 式A
式A中、S
Aは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NR
L1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
L1-、-S(=O)
2-、-OR
L2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、R
L1はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R
L2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、T
Aは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。
<6>式4中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する非金属原子群を表す、<5>に記載の色素組成物。
<7>媒体は、液体である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の色素組成物。
<8>媒体は、水を含む液体である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の色素組成物。
<9>媒体は、水と、沸点が100℃以上の有機溶剤とを含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の色素組成物。
<10>インクである、<1>~<9>のいずれか1つに記載の色素組成物。
<11>インクジェット記録用である、<10>に記載の色素組成物。
<12>基材上に、<11>に記載の色素組成物を付与する工程を含むインクジェット記録方法。
<13>基材と、基材上に配置された、<10>又は<11>に記載の色素組成物の固化物である赤外線吸収画像と、を含む画像記録物。
<14>基材と、基材上に配置された赤外線吸収画像と、を含み、赤外線吸収画像は、下記式1で表される色素化合物を含み、赤外線吸収画像の極大吸収波長が700nm~1,300nmの範囲にある、画像記録物。
【0017】
【化7】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【化11】
式2-1中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、E
11、及びE
12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、及びR
1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A
21、A
22、及びA
23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
21及びB
22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G
21は、A
21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
22は、A
23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A
31及びA
32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
31は、2価の連結基を表す。R
3a及びR
3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G
31は、A
31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
32は、A
32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A
41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E
41及びE
42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cのうち1つはE
41又はE
42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【0022】
<15>下記式1で表される色素化合物。
【0023】
【化12】
式1中、L
1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T
1及びT
2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X
1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【化16】
式2-1中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、E
11、及びE
12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R
1a、R
1b、R
1c、及びR
1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
式2-2中、A
21、A
22、及びA
23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
21及びB
22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R
2a及びR
2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G
21は、A
21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
22は、A
23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-3中、A
31及びA
32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
31は、2価の連結基を表す。R
3a及びR
3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G
31は、A
31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G
32は、A
32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
式2-4中、A
41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B
41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E
41及びE
42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R
4a、R
4b及びR
4cのうち1つはE
41又はE
42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
<16>式2-1、式2-2、及び式2-3中、B
11、B
21、B
22、及びB
31はそれぞれ独立に、炭素数2~8の2価の連結基である、<15>に記載の色素化合物。
<17>式2-1、式2-2、式2-3、及び式2-4中、A
11、A
12、A
21、A
22、A
23、A
31、A
32、及びA
41は、窒素原子である、<15>又は<16>に記載の色素化合物。
<18>式1中、X
1は、式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す、<15>~<17>のいずれか1つに記載の色素化合物。
<19>式1中、Cyは下記式4で表される<15>~<18>のいずれか1つに記載の色素化合物。
【0028】
【化17】
式4中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、CR
3R
4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR
5-を表す。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。A
1及びA
2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。また、L
2はそれぞれ独立に、1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表し、L
2は置換基を有さない。R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R
6及びR
7は、互いに連結して環を形成してもよい。R
8は下記式Aで表される。
-S
A-T
A 式A
式A中、S
Aは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NR
L1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
L1-、-S(=O)
2-、-OR
L2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、R
L1はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R
L2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、T
Aは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。
<20>式4中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する非金属原子群を表す、<19>に記載の色素化合物。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物を得ることが可能な色素組成物、及びインクジェット記録方法が提供される。
また、本開示によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物が提供される。
また、本開示によれば、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物を得ることが可能な新規な色素化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の色素組成物、インクジェット記録方法、画像記録物、及び色素化合物について詳細に説明する。
【0031】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0032】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0033】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。
本明細書において、一価のヘテロ環基とは、ヘテロ環式化合物から1つの水素原子を除いた基をいい、二価のヘテロ環基とは、ヘテロ環式化合物から2つの水素原子を除いた基をいう。
【0034】
[色素化合物]
本開示の色素化合物は、下記式1で表される。
【0035】
【0036】
式1中、L1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R1及びR2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T1及びT2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
式2-1中、A11及びA12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R1a、R1b、R1c、R1d、E11、及びE12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
【0042】
式2-2中、A21、A22、及びA23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B21及びB22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R2a及びR2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G21は、A21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G22は、A23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
【0043】
式2-3中、A31及びA32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B31は、2価の連結基を表す。R3a及びR3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G31は、A31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G32は、A32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
【0044】
式2-4中、A41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R4a、R4b及びR4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E41及びE42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R4a、R4b及びR4cのうち1つはE41又はE42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【0045】
式1で表される色素化合物は、赤外線吸収能に優れ、かつ、可視域の吸収が少ないため、不可視性に優れる。また、式1で表される色素化合物は、赤外線吸収能を従来より長く維持することができる。
【0046】
シアニン色素は会合体を形成しやすい。シアニン色素が会合体を形成すると、長波長の光を吸収するため、不可視性に優れ、かつ、耐光性、耐湿熱性等の耐久性に優れる。式1で表される色素化合物は、シアニン色素構造と、式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンと、を有している。これらの有機カチオンは柔軟な分子構造を有するため、適切に会合体を形成できる位置でシアニン色素同士をつなぎとめる効果が高いと推定される。その結果、本願の有機カチオンを用いたシアニン色素は色素組成物中における会合形成能が向上し、赤外線吸収能を従来より長く維持することができると考えられる。
【0047】
従来、カチオン部であるシアニン色素構造と、対アニオンとが塩を形成している色素化合物;及び、アニオン部であるシアニン色素構造と、金属カチオンとが塩を形成している色素化合物が知られている(例えば、特開2002-90521号公報及び特開2000-141898号公報)。しかし、これらの色素化合物では、色素組成物中において会合体が形成されにくく、赤外線吸収能の維持は期待できない。
【0048】
また、特開2000-292758号公報には、アニオン部であるシアニン色素構造と、ビピリジン骨格を有する有機カチオンとが塩を形成している色素化合物が記載されている。しかし、ビピリジン骨格は剛直な分子構造を有するため、適切に会合体を形成できる位置でシアニン色素同士をつなぎとめる効果が低いと推定される。その結果、ビピリジン骨格を有する有機カチオンを用いたシアニン色素は、色素組成物中において会合体が形成されにくく、赤外線吸収能の維持は期待できない。
【0049】
以下、式1で表される色素化合物について、具体的に説明する。
【0050】
【0051】
式1中、L1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。R1及びR2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。T1及びT2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。Cyはアニオン部であり、X1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。
【0052】
[L1]
式(1)中、L1は奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。L1は5個、7個、又は9個のメチン基からなるメチン鎖を表すことが好ましく、5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表すことがより好ましい。
【0053】
メチン鎖の中央のメチン基は式Aで表される置換基を有することが好ましい。式A中のSA及びTAについては後述する。
*-SA-TA 式A
【0054】
メチン鎖の中央のメチン基以外のメチン基は、置換基を有していてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0055】
メチン鎖は任意の位置で架橋構造を有していてもよい。例えば、メチン鎖は、メチン鎖を構成する炭素原子同士が結合して環構造を形成していてもよい。環構造は、特に限定されないが、脂肪族環が好ましく、5員環の脂肪族環又は6員環の脂肪族環がより好ましい。
【0056】
具体的には、L1は下記式L1-1、L1-2、L2-1又はL2-2で表される基であることが好ましく、下記式L1-2又は式L2-2で表される基であることがより好ましい。
【0057】
【0058】
式L1-1、式L1-2、式L2-1、及び、式L2-2中、Aは、上記式Aで表される置換基を表し、波線部は、それぞれ独立に、式1中のL1以外の構造との結合位置を表す。
【0059】
式L2-1、及び、式L2-2中、YLは脂肪族環、又は、ヘテロ環を形成する非金属原子群を表し、脂肪族環を形成する非金属原子群を表すことが好ましい。YLは、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、例えば、-CH2CH2-、及び-CH2C(Z)2-CH2-が挙げられる。脂肪族環は、5員環の脂肪族環又は6員環の脂肪族環であることが好ましい。Zはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Zは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。2つのZは結合して環構造を形成していてもよい。
【0060】
上記式L2-1又はL2-2で表される基は、下記式L3-1~式L3-4で表される基であることが好ましい。
【0061】
【0062】
式L3-3及び式L3-4中、Zはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Zは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。2つのZは結合して環構造を形成していてもよい。
【0063】
式L3-1~式L3-4中、Aは、上記式Aで表される置換基を表し、波線部は、それぞれ独立に、式1中のL1以外の構造との結合位置を表す。
【0064】
式A中、SAは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)2-、-ORL2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。不可視性の観点から、SAは単結合、アルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0065】
アルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0066】
アルケニレン基は、炭素数2~10のアルケニレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルケニレン基であることがより好ましく、炭素数2又は3のアルケニレン基であることがさらに好ましい。
【0067】
アルキニレン基は、炭素数2~10のアルキニレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキニレン基であることがより好ましく、炭素数2又は3のアルキニレン基であることがさらに好ましい。
【0068】
アルキレン基、アルケニレン基、及び、アルキニレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、それぞれの基に含まれる炭素原子の一部又は全部が環状構造を形成していてもよい。
【0069】
以下、上記内容は、本開示におけるアルキレン基、アルケニレン基、及び、アルキニレン基の記載において、特別の記載がない限り、同様である。
【0070】
-C(=O)O-は、炭素原子がL1と結合し、酸素原子がTAと結合していてもよく、酸素原子がL1と結合し、炭素原子がTAと結合していてもよい。
【0071】
-C(=O)NRL1-は、炭素原子がL1と結合し、窒素原子がTAと結合していてもよく、窒素原子がL1と結合し、炭素原子がTAと結合していてもよい。
【0072】
式A中、SAが-NRL1-又は-C(=O)NRL1-である場合、RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0073】
ハロゲン原子としては、フッ素原子(F原子)、塩素原子(Cl原子)、臭素原子(Br原子)及びヨウ素原子(I原子)が挙げられる。中でも、ハロゲン原子は、Cl原子又はBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
【0074】
アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0075】
アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。
【0076】
一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
【0077】
ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0078】
式A中、SAが-ORL2-である場合、RL2は、アルキレン基、アリーレン基又は二価のヘテロ環基を表し、アルキレン基であることが好ましい。
【0079】
アルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がさらに好ましい。
【0080】
アリーレン基は、炭素数6~20のアリーレン基が好ましく、フェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
【0081】
二価のヘテロ環基は、RL1における一価のヘテロ環基からさらに一つの水素を除いた構造であることが好ましい。
【0082】
式A中、TAは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。中でも、TAは、アリール基、一価のヘテロ環基又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0083】
ハロゲン原子としては、フッ素原子(F原子)、塩素原子(Cl原子)、臭素原子(Br原子)及びヨウ素原子(I原子)が挙げられる。中でも、ハロゲン原子は、Cl原子又はBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0084】
式A中、TAがアルキル基を表す場合、TAはメチン鎖中の他の炭素原子と環構造を形成していてもよい。環構造としては、5員環又は6員環が好ましい。
【0085】
アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0086】
一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
【0087】
ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
【0088】
ヘテロ環としては、ピリジン環、トリアジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、メルドラム酸環、バルビツール酸環、スクシンイミド環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、チオモルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0089】
ヘテロ環は塩構造を形成していてもよい。例えば、ピリジン環はピリジニウム塩を形成していてもよく、ピリジニウムイオンとして存在してもよい。
【0090】
アリール基及び一価のヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORT、-C(=O)RT、-C(=O)ORT、-OC(=O)RT、-N(RT)2、-NHC(=O)RT、-C(=O)N(RT)2、-NHC(=O)ORT、-OC(=O)N(RT)2、-NHC(=O)N(RT)2、-SRT、-S(=O)2RT、-S(=O)2ORT、-NHS(=O)2RT、及び、-S(=O)2N(RT)2が挙げられる。
【0091】
RTはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基、又は、アリール基が好ましい。
【0092】
RTにおけるアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
【0093】
RTにおけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0094】
RTにおける一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
【0095】
ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
【0096】
ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、フラン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0097】
RTにおける一価のヘテロ環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、RTで表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0098】
アミノ基としては、例えば、無置換アミノ基、及び置換アミノ基が挙げられ、ジアリールアミノ基、又は、ジヘテロアリールアミノ基が好ましい。
【0099】
置換アミノ基における置換基としては、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基が挙げられる。置換アミノ基におけるアルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基は、TAにおけるアルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基と同義であり、好ましい態様も同様である
【0100】
トリアルキルシリル基としては、アルキル基の炭素数が1~10のトリアルキルシリル基が好ましく、アルキル基の炭素数が1~4のトリアルキルシリル基がより好ましい。トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルブチルシリル基、トリエチルシリル基、及びトリイソプロピルシリル基が挙げられる。
【0101】
トリアルコキシシリル基は、アルコキシ基の炭素数が1~10のトリアルコキシシリル基であることが好ましく、アルコキシ基の炭素数が1~4のトリアルコキシシリル基であることがより好ましい。トリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、及びトリエトキシシリル基が挙げられる。
【0102】
SAが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、TAがアルキル基を表す場合、SAとTAに含まれる炭素数の総和は、不可視性の観点から、3以上であることが好ましく、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0103】
また、炭素数の総和は、分散性の観点から、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。中でも、分散性の観点から、式A中、TAは窒素原子を含むヘテロ環基、アリール基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0104】
式Aで表される置換基(置換基A)の具体例としては、下記置換基A-1~A-55が挙げられる。ただし、本開示における置換基Aは、これに限定されるものではない。下記置換基A-1~A-55中、i-C10はイソデシル基を表し、i-C8はイソオクチル基を表し、*は式1におけるL1との結合部位を示している。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
置換基A-1~A-55のうち、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、置換基A-1、A-4、A-5、A-8、A-10、A-24、A-34、A-39、A-41~43、A-48、又はA49~A55が好ましい。
【0109】
以下、L1表されるメチン鎖の具体例を示すが、L1で表されるメチン鎖は、以下の具体例に限定されるものではない。以下の具体例において、波線部は、それぞれ独立に、式1中のL1以外の構造との結合位置を表す。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0110】
【0111】
【0112】
L1で表されるメチン鎖は、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、LA1~LA8、LA11~19、LA21~24、又はLA27~30が好ましい。
【0113】
[R1及びR2]
R1及びR2はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。脂肪族基及び芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、及びSO2NR26R27が挙げられる。R10~R27はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基は、脂肪族基、芳香族基、-OR10、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、芳香族基、-SO2OR24であることがより好ましい。なお、-COOR12のR12が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボキシレート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0114】
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
【0115】
R1及びR2のそれぞれで表されるアルキル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8がさらに好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、2-ヒドロキシエチル基、2-カルボキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-フェノキシエチル基、2-(1-ナフトキシ)エチル基、2-ジエチルアミノエチル基、2-スルホエチル基、2-メトキシプロピル基、3-メトキシプロピル基、3-スルホプロピル基、3-スルホブチル基、及び4-スルホブチル基が挙げられる。
【0116】
R1及びR2のそれぞれで表されるアルケニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルケニル基は、直鎖状アルケニル基であってもよく、分岐鎖状アルケニル基であってもよい。アルケニル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8がさらに好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基及び2-ヘキセニル基が挙げられる。
【0117】
R1及びR2のそれぞれで表されるアルキニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキニル基は、直鎖状アルキニル基であってもよく、分岐鎖状アルケニル基であってもよい。アルキニル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8がさらに好ましい。アルキニル基としては、エチニル基及び2-プロピニル基が挙げられる。
【0118】
R1及びR2のそれぞれで表されるアラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。置換基を有してもよいアラルキル基のアリール部分は、後述するアリール基と同様である。アラルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0119】
R1及びR2のそれぞれで表されるアリール基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、6~25が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0120】
置換基を有するアリール基としては、4-カルボキシフェニル基、4-アセトアミドフェニル基、3-メタンスルホンアミドフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、3,5-ジカルボキシフェニル基、4-メタンスルホンアミドフェニル基及び4-ブタンスルホンアミドフェニル基が挙げられる。
【0121】
[T1及びT2]
T1及びT2はそれぞれ独立に、縮環していてもよい5員環又は6員環である含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。
【0122】
含窒素複素環には、他の複素環、芳香族環又は脂肪族環が縮合してもよい。
【0123】
含窒素複素環は、5員環であることが好ましい。5員の含窒素複素環にベンゼン環又はナフタレン環が縮合していることがより好ましい。
【0124】
含窒素複素環としては、例えば、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、オキサゾロカルバゾール環、オキサゾロジベンゾフラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環、及びキノキサリン環が挙げられる。中でも、含窒素複素環は、キノリン環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾイミダゾール環が好ましく、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾイミダゾール環であることがより好ましい。
【0125】
含窒素複素環及びそれに縮合している環は、置換基を有していてもよい。
【0126】
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、及びSO2NR26R27が挙げられる。R10~R27はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。なお、-COOR12のR12が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボキシレート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。中でも、置換基は、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、-SO2OR24であることがより好ましい。
【0127】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0128】
R10~R27のそれぞれで表される脂肪族基及び芳香族基としては、R1及びR2のそれぞれで表される脂肪族基及び芳香族基と同様のものが挙げられる。
【0129】
ヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した脂肪族基が有してもよい置換基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0130】
ヘテロ環基のヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ環は、単環であってもよく縮合環であってもよい。ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環基、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0131】
中でも、置換基は、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、-SO2OR24であることがより好ましい。
【0132】
[Cy]
Cyはアニオン部である。Cyはアニオン部全体として電荷が負になるように、アニオン性基を1つ以上有する。アニオン性基が1価のアニオン性基である場合には、Cyはアニオン性基を2つ以上有する。アニオン性基の位置は特に限定されない。アニオン性基は、L1、R1、及びR2に含まれていてもよく、T1及びT2の置換基に含まれていてもよい。アニオン性基は、スルホ基又はカルボキシ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
【0133】
Cyは、下記式3で表されるアニオン部であることが好ましい。
【0134】
【0135】
式3中、Y1及びY2は、それぞれ独立に、CR3R4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR5-を表す。R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R3及びR4は、互いに結合して環を形成してもよい。A1及びA2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。L1、R1、及びR2は、式1におけるL1、R1、及びR2と同義である。
【0136】
[Y1及びY2]
Y1及びY2は、それぞれ独立に、CR3R4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR5-を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に、CR3R4-、-O-、-S-であることが好ましく、CR3R4-であることがさらに好ましい。
【0137】
R3、R4、及びR5のそれぞれで表される脂肪族基及び芳香族基としては、R1及びR2のそれぞれで表される脂肪族基及び芳香族基と同様のものが挙げられる。
【0138】
中でも、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び環状アルキル基のいずれでもよい。中でも、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0139】
[A1及びA2]
A1及びA2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。芳香族環及び芳香族複素環は、置換基を有してもよい。
【0140】
A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族環及び芳香族複素環が有してもよい置換基としては、式1におけるT1及びT2のそれぞれによって形成される含窒素複素環及びそれに縮合している環が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0141】
中でも、置換基は、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、-SO2OR24であることがより好ましい。
【0142】
A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族環としては、ベンゼン環、及びナフタレン環が挙げられる。
【0143】
A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族複素環は、環を形成する原子の少なくとも1つが窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である芳香族複素環が好ましい。A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族複素環は、他の環(脂肪族環、芳香族環、又は複素環)と縮合していてもよい。
【0144】
A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族複素環は、5員環~10員環であることが好ましい。
【0145】
A1及びA2のそれぞれによって形成される芳香族複素環としては、ピリジン環、ジベンゾフラン環、及びカルバゾール環が挙げられる。
【0146】
シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、A1及びA2はそれぞれ独立に、芳香族環を形成する非金属原子群であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する非金属原子群であることがより好ましい。
【0147】
式3で表されるアニオン部は、下記式3A又は式3Bで表されるアニオン部であることが好ましい。
【0148】
【0149】
【0150】
式3A中、R1、R2、Y1、及びY2は、式3におけるR1、R2、Y1、及びY2と同義である。
【0151】
V1A及びV2Aは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0152】
V1A及びV2Aのそれぞれで表される置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、及びSO2NR26R27が挙げられる。R10~R27はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。なお、-COOR12のR12が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボキシレート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0153】
中でも、V1A及びV2Aのそれぞれで表される置換基は、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、-SO2OR24であることがより好ましい。
【0154】
V1A及びV2Aは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0155】
V1Aが置換基である場合に、ベンゼン環に対するV1Aの結合位置は特に限定されないが、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、R1と結合する窒素原子から最も離れた位置であることが好ましい。同様に、V2Aが置換基である場合に、ベンゼン環に対するV2Aの結合位置は特に限定されないが、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、R2と結合する窒素原子から最も離れた位置であることが好ましい。
【0156】
式3B中、R1、R2、Y1、及びY2は、式3におけるR1、R2、Y1、及びY2と同義である。V1B及びV2Bは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0157】
V1B及びV2Bのそれぞれで表される置換基としては、V1A及びV2Aのそれぞれで表される置換基と同様のものが挙げられる。
【0158】
中でも、V1B及びV2Bのそれぞれで表される置換基は、-COOR12又は-SO2OR24であることが好ましく、-SO2OR24であることがより好ましい。
【0159】
V1B及びV2Bは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0160】
V1Bが置換基である場合に、ナフタレン環に対するV1Bの結合位置は特に限定されないが、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、R1と結合する窒素原子から最も離れた位置であることが好ましい。同様に、V2Bが置換基である場合に、ナフタレン環に対するV2Bの結合位置は特に限定されないが、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、R2と結合する窒素原子から最も離れた位置であることが好ましい。
【0161】
シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、Cyは、下記式4で表されるアニオン部であることがより好ましい。
【0162】
【化34】
式4中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、CR
3R
4-、-O-、-S-、-Se-、又は-NR
5-を表す。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、又は芳香環基を表す。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。A
1及びA
2はそれぞれ独立に、芳香族環又は芳香族複素環を形成する非金属原子群を表す。また、L
2はそれぞれ独立に、1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表し、L
2は置換基を有さない。R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R
6及びR
7は、互いに連結して環を形成してもよい。R
8は下記式Aで表される。
-S
A-T
A 式A
式A中、S
Aは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NR
L1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
L1-、-S(=O)
2-、-OR
L2-、又は、これらの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、R
L1はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R
L2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、T
Aは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。
【0163】
式4中、R1、R2、R3、R4、R5、Y1、及びY2は、式3におけるR1、R2、R3、R4、R5、Y1、及びY2と同義である。
【0164】
L2はそれぞれ独立に、1個、2個、又は3個のメチン基からなるメチン鎖を表す。L2はそれぞれ独立に、1個又は2個のメチン基からなるメチン鎖であることが好ましい。
【0165】
2つのL2は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0166】
R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基を表す。R6及びR7は水素原子であるか、又は、脂肪族基であって、互いに連結して環を形成することが好ましい。R6及びR7が互いに連結して形成される環は、5員環の脂肪族環又は6員環の脂肪族環であることが好ましい。また、R6及びR7が互いに連結した-R6R7-としては、例えば、-CH2CH2-、及び-CH2C(Z)2-CH2-が挙げられる。Zは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。2つのZは結合して環構造を形成していてもよい。
【0167】
R8は式Aで表される置換基を表す。式Aで表される置換基の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0168】
以下、式1中、L1で表されるメチン鎖と結合する塩基性核1及び塩基性核2の具体例を示す。式1において、便宜上、塩基性核1を、窒素原子がカチオン性を帯びたカチオン性構造とし、塩基性核2を、窒素原子が電荷を帯びていない中性構造として記載している。塩基性核1に含まれる窒素原子と塩基性核2に含まれる窒素原子間は、共役炭素鎖であるため、実際には、電子が非局在化していると考えられる。そのため、式1において、塩基性核1を、中性構造とし、塩基性核2を、カチオン性構造として記載することも可能である。以下の具体例ではいずれも、カチオン性構造として記載するが、式1で表される色素化合物において、一方の塩基性核がカチオン性構造である場合には、他方の塩基性核は中性構造として記載される。なお、塩基性核1及び塩基性核2は、以下の具体例に限定されるものではない。以下の具体例において、波線部は、それぞれ独立に、式1中のL1との結合位置を表す。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
Cyにおいて、製造容易性の観点から、塩基性核1と塩基性核2とは同じ構造を有していることが好ましい。なお、塩基性核1と塩基性核2とが同じ構造を有しているとは、構成する原子が同じであり、骨格が同じであることを意味する。上記のとおり、塩基性核1と塩基性核2とが同じ構造を有している場合にも、構造式としては、一方がカチオン性構造として記載され、他方が中性構造として記載される。
【0173】
塩基性核1及び塩基性核2は、シアニン色素がより会合体を形成しやすいという観点から、TA1~TA13、TA16、TA28、TA29、又はTA31~TA36が好ましい。
【0174】
[X1]
X1は下記式2-1、式2-2、若しくは式2-3で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンを表す。
【0175】
<式2-1>
【0176】
【0177】
式2-1中、A11及びA12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R1a、R1b、R1c、R1d、E11、及びE12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dは、互いに結合して環を形成してもよい。m1は1以上の整数である。
【0178】
A11及びA12はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。A11及びA12は窒素原子であることが好ましい。
【0179】
A11及びA12は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0180】
B11はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。B11で表される2価の連結基は、炭素数が2以上の基であることが好ましく、2~8の基であることがより好ましい。炭素数が2以上であると、分子構造がより柔軟になるため、適切に会合体を形成できる位置でシアニン色素同士をつなぎとめる効果が高いと推定される。その結果、シアニン色素同士で会合体が形成されやすくなり、長期にわたって赤外線吸収能が維持される傾向にある。
【0181】
B11で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数が1~30のアルキレン基、炭素数が6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0182】
中でも、B11で表される2価の連結基は、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましい。アルキレン基は、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
【0183】
R1a、R1b、R1c、R1d、E11、及びE12はそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。
【0184】
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
【0185】
中でも、R1a、R1b、R1c、及びR1dはアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0186】
また、E11及びE12はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。アリール基はフェニル基であることが好ましい。
【0187】
m1は1以上の整数である。m1は1~3であることが好ましく、1又は2であることが好ましい。
【0188】
中でも、式2-1で表される有機カチオンは、A11及びA12が窒素原子であり、B11がアルキレン基であり、R1a、R1b、R1c及びR1dがアルキル基であり、E11及びE12がアルキル基である有機カチオンがより好ましい。
【0189】
以下、式2-1で表される有機カチオンの具体例を示すが、式2-1で表される有機カチオンは、以下の具体例に限定されるものではない。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0190】
【0191】
<式2-2>
【0192】
【0193】
式2-2中、A21、A22、及びA23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B21及びB22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。R2a及びR2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。m2は0以上の整数である。G21は、A21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G22は、A23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
【0194】
A21、A22、及びA23はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。A21、A22、及びA23は窒素原子であることが好ましい。
【0195】
A21、A22、及びA23は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0196】
B21及びB22はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。B21及びB22で表される2価の連結基は、炭素数が2以上の基であることが好ましく、2~8の基であることがより好ましい。炭素数が2以上であると、分子構造がより柔軟になるため、適切に会合体を形成できる位置でシアニン色素同士をつなぎとめる効果が高いと推定される。その結果、シアニン色素同士で会合体が形成されやすくなり、長期にわたって赤外線吸収能が維持される傾向にある。
【0197】
B21及びB22で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数が1~30のアルキレン基、炭素数が6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0198】
中でも、B21及びB22で表される2価の連結基はそれぞれ独立に、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましい。アルキレン基は、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
【0199】
R2a及びR2bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。
【0200】
R2a及びR2bで表される脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
【0201】
中でも、R2a及びR2bはそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0202】
m2は0以上の整数である。m2は0~2の整数であることが好ましい。
【0203】
G21は、A21を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G22は、A23を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。A21を環中に含む芳香族環は、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環であることが好ましい。また、A21を環中に含む芳香族環は、他の環(脂肪族環、芳香族環、又は複素環)と縮合していてもよい。同様に、A23を環中に含む芳香族環は、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環であることが好ましい。また、A23を環中に含む芳香族環は、他の環(脂肪族環、芳香族環、又は複素環)と縮合していてもよい。
【0204】
中でも、式2-2で表される有機カチオンは、A21、A22及びA23が窒素原子であり、B21及びB22がそれぞれ独立に、アルキレン基であり、m2が0又は1であり、G21及びG22がピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環である場合がより好ましい。
【0205】
以下、式2-2で表される有機カチオンの具体例を示すが、式2-2で表される有機カチオンは、以下の具体例に限定されるものではない。なお、Meはメチル基を表す。
【0206】
【0207】
<式2-3>
【0208】
【0209】
式2-3中、A31及びA32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B31は、2価の連結基を表す。R3a及びR3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。G31は、A31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G32は、A32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。
【0210】
A31及びA32はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。A31及びA32は窒素原子であることが好ましい。
【0211】
A31及びA32は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、製造容易性の観点から、同じであることが好ましい。
【0212】
B31は、2価の連結基を表す。B31で表される2価の連結基は、炭素数が2以上であることが好ましく、2~8であることがより好ましい。炭素数が2以上であると、シアニン色素同士によって形成される会合体が適切な位置に保持され、長期にわたって赤外線吸収能が維持される傾向にある。
【0213】
B31で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数が1~30のアルキレン基、炭素数が6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0214】
中でも、B31で表される2価の連結基は、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましい。アルキレン基は、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
【0215】
R3a及びR3bはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。
【0216】
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
【0217】
中でも、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0218】
G31は、A31を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。G32は、A32を環中に含む芳香族環を形成する非金属原子群を表す。A31を環中に含む芳香族環は、ピリジン環であることが好ましい。また、A31を環中に含む芳香族環は、他の環(脂肪族環、芳香族環、又は複素環)と縮合していてもよい。同様に、A32を環中に含む芳香族環は、ピリジン環であることが好ましい。また、A32を環中に含む芳香族環は、他の環(脂肪族環、芳香族環、又は複素環)と縮合していてもよい。
【0219】
式2-3で表される有機カチオンは、A31及びA32が窒素原子であり、B31がアルキレン基であり、R3a及びR3bがそれぞれ独立に、アルキル基であり、G31及びG32がピリジン環である有機カチオンがより好ましい。
【0220】
以下、式2-3で表される有機カチオンの具体例を示すが、式2-3で表される有機カチオンは、以下の具体例に限定されるものではない。
【0221】
【0222】
<式2-4>
【0223】
【0224】
式2-4中、A41は、それぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。B41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。R4a、R4b及びR4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。E41及びE42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。R4a、R4b及びR4cのうち1つはE41又はE42と結合して環を形成してもよい。m4は2以上の整数である。
【0225】
式2-4で表される構造を有する有機カチオンは、柔軟な分子構造を有しており、かつカチオン部位が規則正しく配列されていることから、シアニン色素が適切な位置に規則正しく配列し、会合体を形成すると考えられる。その結果、長期にわたって赤外線吸収能が維持される傾向にある。
【0226】
A41はそれぞれ独立に、窒素原子又はリン原子を表す。A41は窒素原子であることが好ましい。
【0227】
B41はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。B41で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数が1~30のアルキレン基、炭素数が6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0228】
中でも、B41で表される2価の連結基は、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。アルキレン基は、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。
【0229】
R4a、R4b及びR4cはそれぞれ独立に、脂肪族基又は芳香族基を表す。
【0230】
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
【0231】
中でも、R4a、R4b及びR4cはそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
【0232】
E41及びE42はそれぞれ独立に、単結合又は脂肪族基を表す。
【0233】
また、E11及びE12はそれぞれ独立に、単結合又はアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。アリール基はフェニル基であることが好ましい。
【0234】
m4は2以上の整数である。m4は50~3000であることが好ましく、100~2000であることがより好ましい。
【0235】
中でも、式2-4で表される構造を有する有機カチオンは、A41が窒素原子であり、R4a、R4b及びR4cのうち1つがE41又はE42と結合して環を形成している有機カチオンがより好ましい。
【0236】
以下、式2-4で表される構造を有する有機カチオンの具体例を示すが、X1で表される有機カチオンは、以下の具体例に限定されるものではない。なお、Meはメチル基を表し、m4は式2-4におけるm4と同義である。
【0237】
【0238】
X1は、式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンであることが好ましい。シアニン色素によって形成された会合体は、式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンによって、長期にわたって適切な位置で保持されるものと考えられる。X1が、式2-1で表される有機カチオン、又は、式2-4で表される構造を有する有機カチオンであると、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能がより長く維持される。
[n]
nは0ではない、電荷を中和するために必要な数を表す。例えば、アニオン部が1価のアニオンであり、有機カチオンが2価のカチオンである場合、nは0.5である。
【0239】
本開示の色素化合物は、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来より長く維持されるため、さまざまな用途への適用が期待される。本開示の色素化合物は、他の成分と混合することにより色素組成物とすることができる。
【0240】
式1で表される色素化合物の具体例を以下に示す。ただし、本開示における式1で表される色素化合物は、以下の具体例に制限されるものではない。
【0241】
【0242】
【0243】
式1中、Cyが式4で表される場合、式1で表される色素化合物は、例えば、以下の方法で合成することができる。
【0244】
【0245】
まず、化合物41、化合物42、及び2-プロパノールを混合した後、無水酢酸及びトリエチルアミンを加える。さらに、酢酸カリウムの水溶液とメタノールを加えると、化合物43が得られる。化合物43は、カリウム塩である。化合物43を精製した後、目的とする色素化合物の対カチオンであるX1とカリウムカチオンとを交換するカチオン交換を行うことにより、目的化合物である化合物44が得られる。
【0246】
[色素組成物]
本開示の色素組成物は、上記式1で表される色素化合物と、媒体と、を含む。
【0247】
媒体は、式1で表される色素化合物を分散しうる媒体であれば特に限定されず、例えば、水、有機溶剤、樹脂、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0248】
媒体は、液体であることが好ましく、水を含む液体であることがより好ましい。
【0249】
媒体として液体を用いた場合には、本開示の色素組成物をインクとして用いることができる。また、媒体として水を含む液体を用いた場合には、本開示の色素組成物を水性インク、好ましくは、インクジェット記録用の水性インクとして用いることができる。
【0250】
-媒体が液体以外である場合-
媒体として樹脂を用いた場合には、本開示の色素組成物を、色素化合物と樹脂とを含む樹脂組成物とすることができる。樹脂組成物は、樹脂フィルム、又は樹脂成形体へ加工することができる。
樹脂の種類は特に限定されないが、成形容易性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリアクリル、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリスルホン、ポリイミド、及びポリオレフィンが挙げられる。中でも、樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0251】
樹脂には、ポリマー及びオリゴマーが含まれ、重量平均分子量が5,000~1,000,000である化合物の中から適宜選択することができる。
【0252】
樹脂組成物は、樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の樹脂を用いる場合、相溶性及び成形性の観点から、ガラス転移温度又はSP値(溶解度パラメータ)が近い樹脂同士を併用することが好ましい。
【0253】
樹脂組成物には、式1で表される色素化合物及び樹脂に加え、本開示の効果を損なわない限り、種々の添加剤を含有させることができる。
【0254】
本開示に係る色素組成物は、少なくとも1種の着色剤を含んでもよい。
【0255】
着色剤を含有させることで、樹脂組成物及び樹脂組成物から作製される樹脂成形体に所望の色を付与することができる。
【0256】
着色剤は、染料及び顔料のいずれであってもよい。染料及び顔料としては、従来公知の染料及び顔料を用いることができる。
【0257】
着色剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、0.0001質量%~20質量%であることが好ましく、0.001質量%~10質量%がより好ましい。
【0258】
樹脂組成物には、必要に応じて耐衝撃性、抗菌性、ガスバリア性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、電磁波吸収性、難燃性、脱水性、脱臭性、アンチブロッキング性、吸油性、吸水性、成形性等の物性を向上させる目的で、さらに無機充填材を含有させてもよい。
【0259】
無機充填材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスフレーク、ゼオライト、マイカ、黒鉛、金属粉、フェライト、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、テフロン(登録商標)粉、タルク、木炭粉、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンマイクロコイル(CMC)、酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、シリカ、及び炭酸カルシウムが挙げられる。無機充填材は、後述する樹脂成形体の透明性を低下させない含有量で含有されることが好ましい。
【0260】
また、樹脂組成物には、例えば、レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘性改質剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、金属不活性剤、過酸化物分解剤、加工安定剤、核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、ゲル化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、防錆剤、蛍光性増白剤、流動性改質剤、帯電防止剤等の公知添加剤を含有させてもよい。
【0261】
樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、式1で表される色素化合物を含有させるため、樹脂原料となるマスターバッチ、樹脂ペレットに対し、式1で表される色素化合物を直接練り込み、混練して溶融成形してもよい。また、式1で表される色素化合物を、樹脂に塗布、浸漬等の方法で付着させてもよい。
【0262】
中でも、樹脂に対し、式1で表される色素化合物を直接練り込み、混練して溶融成形すると、樹脂表面から式1で表される色素化合物が離脱し難く、赤外線吸収能がより長く維持される。
【0263】
また、樹脂成形体を作製する場合には、式1で表される色素化合物と樹脂とを混合し、均一に分散させてから成形体とすることが好ましい。なお、式1で表される色素化合物と樹脂とを混合する方法としては、樹脂と式1で表される色素化合物とを加熱混練する方法、及び、樹脂と式1で表される色素化合物と溶媒とを撹拌混合する方法が挙げられる。
【0264】
樹脂成形体の形状、及び用途は特に限定されない。樹脂成形体の態様としては、例えば、樹脂フィルム;合成繊維;瓶、化粧品用容器、食品用容器等の樹脂製容器;樹脂板;レンズ;トナー;一般装飾品をはじめとする各種家電、電子デバイス等の外装部品;内装材、外装材等の住宅建材部品;及び、航空機、車輛等の内外装部品が挙げられる。
【0265】
樹脂成形体の製造方法には特に制限はなく、公知の樹脂の成形方法を適宜適用することができる。
【0266】
-媒体が液体である場合-
本開示の色素組成物は、媒体として液体を含むことが好ましい。以下、媒体としての液体を液状媒体という。
【0267】
液状媒体の種類は、特に限定されず、色素組成物の使用目的に応じて適宜選択できる。中でも、本開示の色素組成物をインク(例えば、インクジェット記録用インク)に適用する場合には、液状媒体は水を含むことが好ましく、水及び有機溶剤を含むことがより好ましい。
【0268】
また、液状媒体は、色素組成物をインクジェット記録用インクへ適用することを考慮すると、吐出安定性の観点から、水と、沸点が100℃以上の有機溶剤と、を含むことが好ましい。沸点は、1気圧(101325Pa)下における沸点を意味する。沸点は、沸点計により測定され、例えば、タイタンテクノロジーズ社製の沸点測定器(製品名「DosaTherm300」)を用いて測定される。
【0269】
水は、不純物が少ないという観点から、蒸留水、イオン交換水、イオン交換した蒸留水又は純水であることが好ましい。
【0270】
沸点が100℃以上の有機溶剤としては、例えば、
エチレングリコール(沸点:198℃)、プロピレングリコール(沸点:188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点:194℃)、2,3-ブタンジオール(沸点:183℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(沸点:124℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点:198℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点:178℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点:175℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点:170℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ジプロピレングリコール(沸点:231℃)、1,3-プロパンジオール(沸点:214℃)、1,3-ブタンジオール(沸点:208℃)、1,4-ブタンジオール(沸点:230℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点:206℃)、2,4-ペンタンジオール(沸点:201℃)、2-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点:242℃)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(沸点:208℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点:223℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、2,5-ヘキサンジオール(沸点:217℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点:243℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃)、グリセリン(沸点:290℃)等の多価アルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:135℃)、エチレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:150℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:133℃)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点:171℃)、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル(沸点:153℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:159℃)、ジエチレングリコールメチルエーテル(沸点:194℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:162℃)、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点:230℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:188℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:230℃)、トリエチレングリコールメチルエーテル(沸点:249℃)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:213℃)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点:243℃)、トリエチレングリコールエチルエーテル(沸点:256℃)、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル(沸点:259℃)、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:261℃)、3-メトキシブタノール(沸点:161℃)等の多価アルコールアルキルエーテル;
エチレングリコールフェニルエーテル(沸点:237℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点:243℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:256℃)等の多価アルコールアリールエーテル;
ε-カプロラクタム(沸点:137℃)、N-メチルホルムアミド(沸点:199℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:204℃)、2-ピロリドン(沸点:245℃)、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(沸点:220℃)、N-メチルピロリジノン(沸点:202℃)等の含窒素化合物;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、酢酸3-メトキシブチル(沸点:172℃)等のエステル化合物;
ダイアセトンアルコール(沸点:169℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)等のケトン化合物が挙げられる。
【0271】
本開示において、色素組成物中の水の含有量は、色素組成物の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0272】
本開示において、色素組成物中の、沸点が100℃以上の有機溶剤の含有量は、色素組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0273】
本開示の色素組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
【0274】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤のいずれであってもよい。
【0275】
中でも、色素組成物をインクに適用する場合には、インクの打滴干渉を抑制する観点から、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
【0276】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0277】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業社製のサーフィノール104PG等のサーフィノールシリーズ、日信化学工業社製のオルフィンE1010等のEシリーズが挙げられる。
【0278】
アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、例えば、Capstone(登録商標) FS-63、Capstone FS-61(Dupont社製)、フタージェント(登録商標、以下同様)100、フタージェント110、フタージェント150(ネオス社製)、及びCHEMGUARD(登録商標) S-760P(Chemguard Inc.社製)が挙げられる。
【0279】
界面活性剤の含有量は、色素組成物の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.2質量%~3質量%がさらに好ましい。
【0280】
本開示の色素組成物は、液状媒体として重合性化合物を含有してもよい。色素組成物に重合性化合物が含まれている場合には、活性エネルギー線を照射することにより、色素組成物を硬化させることができる。
【0281】
色素組成物をインクに適用する場合には、本開示の色素組成物は、さらに、インクに使用される公知の添加剤を含有していてもよい。
【0282】
添加剤としては、例えば、界面活性剤、樹脂、乾燥防止剤(言い換えると、湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、防錆剤、及びキレート剤が挙げられる。
【0283】
色素組成物をインクに適用する場合には、式1で表される色素化合物以外の他の色素を含有してもよい。他の色素としては、特に限定されず、インクの分野で公知の色素を用いることができる。
【0284】
不可視性の観点から、他の色素の含有量は、インクの全質量に対し、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0285】
また、本開示の色素組成物は、目的に応じて、可視光域に吸収を有する色素を含み、近赤外線領域に吸収を有する可視画像を形成しうる色素組成物としてもよい。
【0286】
本開示の色素組成物は、インクに適用することができる。インクは、インクジェット記録用であることが好ましい。
【0287】
インクのpHは、吐出安定性の観点から、7~10であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましい。インクのpHは、pH計を用いて25℃で測定され、例えば、東亜DKK社製のpHメーター(型番「HM-31」)を用いて測定される。
【0288】
インクの粘度は、0.5mPa・s~30mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~20mPa・sであることがより好ましく、2mPa・s~15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s~10mPa・sであることがさらに好ましい。インクの粘度は、粘度計を用いて25℃で測定され、例えば、東機産業社製のTV-22型粘度計を用いて測定される。
【0289】
インクの表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。インクの表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「CBVP-Z」)を用いて、プレート法によって測定される。
【0290】
また、本開示の色素組成物の用途としては、画像、特に不可視画像を記録するための画像記録材料が挙げられる。画像記録材料としては、具体的には、インクジェット記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、及び記録ペンが挙げられる。本開示の色素組成物は、インクジェット記録材料、感熱記録材料、又は電子写真方式を用いる記録材料に用いられることが好ましい。
【0291】
また、本開示の色素組成物は、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)等の固体撮像素子;赤外線センサ;画像表示装置等の各種装置;プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイで用いられる赤外カットフィルタ、又は、各種繊維の染色のための染色液にも適用できる。また、本開示の色素組成物は、追記型光ディスク、又はフラッシュ溶融定着材料等の光熱変換材料にも適用できる。また、本開示の色素組成物は、人体透過性に優れる近赤外領域に吸収を有することから、上記用途に加え、診断用マーカー、及び光線力学療法の薬剤にも適用できる。
【0292】
さらに、本開示の色素組成物は、繊維(保温蓄熱性);赤外線による偵察に対する偽装性(カモフラージュ性能);眼精疲労防止;又は、写真、フイルム等の位置決め用マーキング剤にも適用できる。また、本発明の色素組成物を硬化膜とすることにより、用途を拡大できる。
【0293】
また、本開示の色素組成物は、近赤外線を吸収又はカットする機能を有するレンズ(例えば、デジタルカメラ、携帯電話、車載カメラ等のカメラ用レンズ;f-θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ);半導体受光素子用の光学フィルタ;太陽光の選択的な利用を目的とする農業用コーティング剤;近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体;電子機器用又は写真用近赤外線フィルタ;保護めがね;サングラス;熱線遮断フィルタ;光学文字読み取り記録;機密文書複写防止の用途;電子写真感光体;又はレーザー溶着に適用できる。また、本開示の色素組成物は、CCDカメラ用ノイズカットフィルター、CMOSイメージセンサ用フィルタとしても有用である。
【0294】
[インクジェット記録方法]
本開示のインクジェット記録方法は、基材上に上記インクを付与する工程を含む。
【0295】
基材は、画像を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、紙、布、木材、金属板及び樹脂フィルムが挙げられる。基材には、あらかじめ表面処理が施されていてもよい。
【0296】
紙としては、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、上質紙、OCR用紙、アート紙、コート紙、ミラーコート紙、コンデンサー紙、及びパラフィン紙が挙げられる。
【0297】
樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、セロファン、アセテートフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、及びトリアセテート(TAC)フィルムが挙げられる。
【0298】
インクジェット記録方式は、画像を記録し得る方式であれば特に限定されず、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式のいずれであってもよい。
【0299】
インクジェット記録方式としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に利用することができる。
【0300】
また、インクジェット記録方式については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
【0301】
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
【0302】
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。
【0303】
また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0304】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの打滴量は、高精細な画像を得る観点で、1pL(ピコリットル)~20pLが好ましく、1.5pL~10pLがより好ましい。
【0305】
本開示のインクジェット記録方法は、基材上にインクジェット記録方式で画像を記録する工程以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、画像を記録した後に、画像を乾燥させる工程が挙げられる。また、本開示の画像記録方法は、インク中に重合性化合物が含まれている場合には、活性エネルギー線を照射する工程を含んでいてもよい。
【0306】
[画像記録物]
本開示の画像記録物は、基材と、基材上に配置された上記インクの固化物である赤外線吸収画像と、を含む。
【0307】
固化物とは、インクの乾燥物、及びインク中の重合性化合物を重合反応させて得られる硬化物を含むものである。
【0308】
また、本開示の画像記録物は、基材と、基材上に配置された赤外線吸収画像と、を含み、赤外線吸収画像は、上記式1で表される色素化合物を含み、赤外線吸収画像の極大吸収波長が700nm~1,300nmの範囲にある。
【0309】
基材については、上記のとおりであり、説明を省略する。基材上に配置された赤外線吸収画像のパターンは特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。
【0310】
赤外線吸収画像の極大吸収波長は、島津製作所社製150mm大型析分球付属装置LISR-3100を備えた分光時計UV-3100PCを用いて、赤外線吸収画像の光学濃度(OD)を測定することにより、確認することができる。赤外線吸収画像の極大吸収波長は、不可視性、及び、赤外吸収画像の読み取り性の観点から、700nm~1,300nmの範囲にあることが好ましい。
【0311】
本開示の画像記録物は、偽造防止を目的としたセキュリティーシステムに適用可能である。本開示の画像記録物は、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来より長く維持されるため、セキュリティー性を長く保持することができる。
【実施例】
【0312】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0313】
まず、表1~表3に記載の化合物1~化合物60と、比較化合物1~比較化合物3を準備した。化合物9、化合物12、化合物23、化合物46、及び化合物50の合成方法を以下に示す。化合物9、化合物12、化合物23、化合物46、及び化合物50以外の化合物についても、原料を変更することにより、化合物9、化合物12、化合物23、化合物46、及び化合物50と同様の方法で合成した。
【0314】
【0315】
化合物1~化合物60はいずれも式1で表される色素化合物であり、塩基性核1と塩基性核2が同じ構造を有する。表1~表3に、L1、塩基性核1及び塩基性核2(表中、「Cy中の2つの塩基性核」と記す)、並びに、X1を記載した。
【0316】
<化合物9の合成>
【0317】
【0318】
フラスコに、化合物9-Aを21.0g、化合物9-Bを11.4g、2-プロパノールを114.8g加えた。その後、10℃で無水酢酸を20.3g、トリエチルアミンを13.4g加えて、室温で2時間撹拌した。得られた反応液に、酢酸カリウム6.5gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えた。50℃で30分間、室温で1時間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物9-Cの粗体15.0gを得た。
【0319】
フラスコに、得られた化合物9-Cの粗体を15.0g、メタノールを465.7g加えて、65℃で30分間撹拌した。室温に戻した後、酢酸カリウム6.5gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えて、1時間撹拌した。分散液中で析出した結晶をろ過することで、化合物9-Cを10.5g得た。
【0320】
フラスコに、得られた化合物9-Cを4.0g、水を266.7g加えて、室温で12時間撹拌した。得られた水溶液に化合物9-Dを1.1g加えて、室温で12時間撹拌した。その後、メタノール156.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物9を4.0g得た。
【0321】
化合物9のNMRスペクトル:1H-NMR (重THF/重水/30%NaOD) δ8.2-8.0(2H、m)、8.0-7.6(6H、m)、7.2-6.8(4H、m)、5.8(1H、d)、5.3(1H、d)、4.0(2H、s)、3.8-3.7(2H、m)、3.3(9H、s)、3.3-3.0(2H、m)、2.7-2.5(4H、m)、1.8(6H、s)、1.5(3H、s)、1.3-1.1(9H、m)
【0322】
1H-NMRスペクトルにより、得られた化合物9の構造を確認した。
【0323】
【0324】
フラスコに、化合物12-Aを21.0g、化合物12-Bを12.8g、2-プロパノールを114.8g加えた。その後、10℃で無水酢酸を20.3g、トリエチルアミンを13.4g加えて、室温で2時間撹拌した。得られた反応液に、酢酸カリウム6.5gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えた。50℃で30分間、室温で1時間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物12-Cの粗体14.8gを得た。
【0325】
フラスコに、得られた化合物12-Cの粗体を14.8g、メタノールを465.7g加えて、65℃で30分間撹拌した。室温に戻した後、酢酸カリウム6.5gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えて、1時間撹拌した。分散液中で析出した結晶をろ過することで、化合物12-Cを10.2g得た。
【0326】
フラスコに、得られた化合物12-Cを4.0g、水を266.7g加えて室温で12時間撹拌した。得られた水溶液に化合物12-Dを1.1g加えて、室温で12時間撹拌した。その後、メタノール156.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物12を3.9g得た。
【0327】
化合物12のNMRスペクトル:1H-NMR (重THF/重水/30%NaOD) δ8.2-8.0(2H、m)、8.0-7.6(6H、m)、7.4-7.3(3H、m)、7.2-6.8(6H、m)、5.8(1H、d)、5.3(1H、d)、4.0(2H、s)、3.8-3.7(2H、m)、3.3(9H、s)、3.3-3.0(2H、m)、2.7-2.5(4H、m)、1.8(6H、s)、1.5(3H、s)、1.3-1.1(9H、m)
【0328】
1H-NMRスペクトルにより、得られた化合物12の構造を確認した。
【0329】
<化合物23の合成>
【0330】
【0331】
フラスコに、化合物23-Aを21.0g、化合物23-Bを11.8g、2-プロパノールを114.8g加えた。その後、10℃で無水酢酸を20.9g、トリエチルアミンを13.8g加えて、室温で2時間撹拌した。得られた反応液に、酢酸カリウム6.7gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えた。50℃で30分間、室温で1時間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物23-Cの粗体14.0gを得た。
【0332】
フラスコに、得られた化合物23-Cの粗体を14.0g、メタノールを465.7g加えて、65℃で30分間撹拌した。室温に戻した後、酢酸カリウム6.7gと水16.2gとの混合溶液、メタノール28.2gを加えて、1時間撹拌した。分散液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物23-Cを10.2g得た。
【0333】
フラスコに、得られた化合物23-Cを4.0g、水を266.7g加えて室温で12時間撹拌した。得られた水溶液に化合物23-Dを1.1g加えて、室温で12時間撹拌した。その後、メタノール156.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物23を4.0g得た。
【0334】
化合物23のNMRスペクトル:1H-NMR (重THF/重水/30%NaOD) δ8.0-7.6(8H、m)、7.2-6.8(4H、m)、6.5(1H、d)、5.5(1H、d)、4.0(2H、s)、3.8-3.7(2H、m)、3.3(9H、s)、3.3-3.0(2H、m)、2.7-2.5(4H、m)、1.2(6H、t)
【0335】
1H-NMRスペクトルにより、得られた化合物23の構造を確認した。
【0336】
<化合物46の合成>
【0337】
【0338】
フラスコに、化合物9-Cを4.0g、水を266.7g加えて室温で12時間撹拌した。得られた水溶液に化合物46-Dを0.96g加えて、室温で12時間撹拌した。その後、メタノール156.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物46を4.1g得た。
【0339】
化合物46のNMRスペクトル:1H-NMR (重THF/重水/30%NaOD) δ8.7-8.6(2H、m)、8.2-8.0(2H、m)、8.0-7.6(7H、m)、7.5-7.4(2H、m)、7.2-6.8(4H、m)、5.8(1H、d)、5.3(1H、d)、4.0(2H、s)、3.8-3.7(2H、m)、3.3-3.0(2H、m)、2.7-2.5(4H、m)、1.8(6H、s)、1.5(3H、s)、1.3-1.1(9H、m)
【0340】
1H-NMRスペクトルにより、得られた化合物46の構造を確認した。
【0341】
<化合物50の合成>
【0342】
【0343】
フラスコに、化合物9-Cを4.0g、水を266.7g加えて室温で12時間撹拌した。得られた水溶液に化合物50-Dを1.1g加えて、室温で12時間撹拌した。その後、メタノール156.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。反応液中で析出した結晶をろ過することにより、化合物50を3.9g得た。
【0344】
化合物50のNMRスペクトル:1H-NMR (重THF/重水/30%NaOD) δ8.2-8.0(2H、m)、8.0-7.6(6H、m)、7.2-6.8(4H、m)、5.8(1H、d)、5.3(1H、d)、4.0(2.7H、s)、3.8-3.7(2H、m)、3.3(8H、s)、3.3-3.0(2H、m)、2.7-2.5(4H、m)、1.8(6H、s)、1.5(3H、s)、1.3-1.1(9H、m)
【0345】
1H-NMRスペクトルにより、得られた化合物50の構造を確認した。
【0346】
【0347】
【0348】
【0349】
<比較化合物1~比較化合物3>
・比較化合物1…特開2017-226820号公報に記載の化合物No.2
・比較化合物2…特開2002-90521号公報に記載の化合物(I-13)
・比較化合物3…特開2000-292758号公報に記載の化合物A-1と化合物B-19との組み合わせ
【0350】
比較化合物1~比較化合物3の構造は、以下のとおりである。
【0351】
(比較化合物1)
【0352】
【0353】
(比較化合物2)
【0354】
【0355】
(比較化合物3)
【0356】
【0357】
次に、色素化合物(化合物1~化合物60、比較化合物1~比較化合物3のいずれか)を用いて、インクを調製した。以下の組成となるように、各成分を混合した。さらに、直径0.1mmのジルコニアビーズを100質量部添加し、遊星型ボールミルを用いて、400rpm(回転/分)で5時間、分散処理を行い、インクを得た。
色素化合物…0.5質量部
超純水(比抵抗値18MΩ・cm以上)…78.8質量部
有機溶剤:プロピレングリコール…19.7質量部
アセチレングリコール系界面活性剤:オルフィンE1010(日信化学社製)…1質量部
【0358】
<画像記録物の作製>
調製したインクを、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2831」、FUJIFILM DIMATIX社製)のインクタンクに装填した。基材として、OKトップコート紙(王子製紙社製)を準備した。基材上にインクを吐出した後、100℃の温風で1分間乾燥し、ベタ画像を記録した。
【0359】
得られた画像記録物を用いて、不可視性、耐光性、及び耐湿熱性の評価を行った。評価方法は、以下のとおりである。
【0360】
[不可視性]
450nmにおける光学濃度(OD)、及び、極大吸収波長における光学濃度(OD)を、150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100(島津製作所製)を備えた分光光度計UV-3100PC(島津製作所製)を用いて測定した。極大吸収波長におけるODに対する450nmにおけるODの比率P(450nmのOD/極大吸収波長のOD)に基づいて、不可視性を評価した。評価基準は以下のとおりである。比率Pが小さいほど不可視性に優れるといえる。評価基準は以下のとおりである。A、B及びCは実用上問題ないレベルである。
A:比率Pが1/10以下である。
B:比率Pが1/10超1/7以下である。
C:比率Pが1/7超1/5以下である。
D:比率Pが1/5超である。
【0361】
[耐光性]
調製したインクを用いて、極大吸収波長における光学濃度(OD)が0.5、1.0、及び1.5である3種の画像記録物を作製した。ODは、インクの吐出量を調整することによって、調整した。
作製した各画像記録物に対して、キセノンウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、照度85,000ルクスのキセノン光を1日間照射した。光照射後の画像記録物について、極大吸収波長における光学濃度(OD)を測定した。下記式に基づいて色素残存率を算出した。色素残存率が高いほど、耐光性に優れるといえる。
色素残存率(%)=(光照射後のOD)÷(光照射前のOD)×100
全ての光学濃度は、島津製作所社製150mm大型析分球付属装置LISR-3100を備えた分光時計UV-3100PCを用いて測定した。
評価基準は以下のとおりである。A、B及びCは実用上問題ないレベルである。
A:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が90%以上である。
B:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が75%以上90%未満である。
C:3種の画像記録物のうち少なくとも1つにおいて、色素残存率が75%未満であり、3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が60%以上である。
D:3種の画像記録物のうち1つ又は2つにおいて、色素残存率が60%未満である。
E:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が60%未満である。
【0362】
[耐湿熱性]
調製したインクを用いて、極大吸収波長における光学濃度(OD)が0.5、1.0、及び1.5である3種の画像記録物を作製した。ODは、インクの吐出量を調整することによって、調整した。
作製した各画像記録物を、温度45℃、湿度85%に設定されたボックス内に7日間保管した。保管後の画像記録物について、極大吸収波長における光学濃度(OD)を測定した。下記式に基づいて色素残存率を算出した。色素残存率が高いほど、耐光性に優れるといえる。
色素残存率(%)=(保管後のOD)÷(保管前のOD)×100
全ての光学濃度は、島津製作所社製150mm大型析分球付属装置LISR-3100を備えた分光時計UV-3100PCを用いて測定した。
評価基準は以下のとおりである。A、B及びCは実用上問題ないレベルである。
A:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が90%以上である。
B:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が75%以上90%未満である。
C:3種の画像記録物のうち少なくとも1つにおいて、色素残存率が75%未満であり、3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が60%以上である。
D:3種の画像記録物のうち1つ又は2つにおいて、色素残存率が60%未満である。
E:3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が60%未満である。
【0363】
表4及び表5に、評価結果を示す。
【0364】
【0365】
【0366】
表4及び表5に示すように、実施例1~実施例60では、式1で表される色素化合物を含むため、不可視性に優れ、かつ、赤外線吸収能が従来よりも長く維持される画像記録物が得られた。
一方、比較例1では、色素化合物がフタロシアニン色素であるため、不可視性に劣ることが分かった。
比較例2では、色素化合物が有機カチオンを有していないため、耐光性及び耐湿熱性に劣ることが分かった。
比較例3では、色素化合物が、ビピリジン骨格を有する有機カチオンを有しているため、耐光性及び耐湿熱性に劣ることが分かった。
【0367】
<実施例100>
化合物9を0.02g、及びポリエチレンテレフタラート樹脂(Tg:60℃)10gを二軸混練機のホッパーに投入し、温度120℃、スクリュ回転数200rpm(revolutions per minute)の条件で5分間混練操作を行い、樹脂混練物を作製した。
【0368】
得られた樹脂混練物の吸収スペクトルは、極大吸収波長が900nm以上であり、かつ、450nmの吸光度/極大吸収波長の吸光度の値が1/10以下であり、不可視性に優れることが分かった。また、得られた樹脂混錬物について、上記耐光性の評価を行ったところ、3種の画像記録物全てにおいて、色素残存率が90%以上であり、耐光性に優れることが分かった。
【0369】
なお、2020年9月1日に出願された日本国特許出願2020-147010号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。