(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】半導体検査装置および半導体試料の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/305 20060101AFI20231114BHJP
G01R 31/308 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01R31/305
G01R31/308
(21)【出願番号】P 2022553261
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036927
(87)【国際公開番号】W WO2022070258
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白崎 保宏
(72)【発明者】
【氏名】津野 夏規
(72)【発明者】
【氏名】庄子 美南
(72)【発明者】
【氏名】榊原 慎
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-330178(JP,A)
【文献】特開平4-64245(JP,A)
【文献】特開2011-247603(JP,A)
【文献】特開2018-41737(JP,A)
【文献】特開2017-75935(JP,A)
【文献】特開2016-122860(JP,A)
【文献】特開2012-98294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 31/00
H01L 21/66
G01N 23/225
H01J 37/04
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の測定モードを有する半導体検査装置であって、
試料に電子線を照射する電子光学系と、
前記試料に光を照射する光学系と、
前記電子光学系からの電子線が前記試料に照射されることにより発生する信号電子を検出する電子検出器と、
前記光学系からの光が前記試料に照射されることにより発生する信号光を検出する光検出器と、
前記第1の測定モードにおいて第1の照射条件で電子線及び光が照射されるよう前記電子光学系及び前記光学系を制御し、前記第2の測定モードにおいて第2の照射条件で電子線及び光が照射されるよう前記電子光学系及び前記光学系を制御する制御部と、
前記電子検出器または前記光検出器からの検出信号を処理する計算機とを有し、
前記第1の測定モードにおいては前記光検出器からの検出信号が前記計算機に入力され、前記第2の測定モードにおいては前記電子検出器からの検出信号が前記計算機に入力される半導体検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記光学系からの光を前記試料の第1の領域に照射し、前記計算機は、前記電子光学系からの電子線照射ありの状態での前記光検出器からの検出信号と前記電子光学系からの電子線照射なしの状態での前記光検出器からの検出信号とに基づき、前記第1の領域の電気的特性を評価する半導体検査装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系からの電子線を前記第1の領域に照射し、前記電子光学系からの電子線のスポット径は、前記光学系からの光のスポット径に応じた大きさとされる半導体検査装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系からの電子線を前記第1の領域に照射し、前記電子光学系は、前記光学系からの光のスポット径よりも小さいスポット径の電子線を前記第1の領域上で走査する半導体検査装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系からの電子線を前記第1の領域とは異なる領域に照射する半導体検査装置。
【請求項6】
請求項5において、前記電子光学系は、前記光学系からの光のスポット径よりも小さいスポット径の電子線を前記第1の領域とは異なる領域上で走査する半導体検査装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記第2の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系からの電子線を前記第1の測定モードでの測定結果に基づき定められた第2の領域において走査させ、前記計算機は、前記電子検出器からの検出信号に基づき、前記第2の領域の像を形成する半導体検査装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記計算機は、電気的特性と前記第2の照射条件との対応を示すデータベースを備え、前記第2の照射条件は、前記計算機によって求められた前記電気的特性に基づき、前記データベースを参照して決定される半導体検査装置。
【請求項9】
請求項2において、
前記光学系が照射する光は連続光であり、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系に周期的に電子線を照射させる電子線照射トリガーと、前記光検出器に信号光を周期的に検出させる信号光測定トリガーとを出力し、
前記電子線照射トリガーと前記信号光測定トリガーとは同期しており、前記信号光測定トリガーは、前記電子線照射トリガーがONのときにONとなる第1のトリガーと、前記電子線照射トリガーがOFFのときにONとなる第2のトリガーとを含む半導体検査装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記制御部は、前記電子線照射トリガー及び前記信号光測定トリガーの周期を変化させる半導体検査装置。
【請求項11】
請求項2において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系に周期的に電子線を照射させる電子線照射トリガーと、前記光学系に周期的に光を照射させる光照射トリガーと、前記光検出器に信号光を周期的に検出させる信号光測定トリガーとを出力し、
前記電子線照射トリガーと前記光照射トリガー及び前記信号光測定トリガーとは同期しており、前記光照射トリガー及び前記信号光測定トリガーはそれぞれ、前記電子線照射トリガーがONのときにONとなる第1のトリガーと、前記電子線照射トリガーがOFFのときにONとなる第2のトリガーとを含む半導体検査装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記制御部は、前記電子線照射トリガーから前記光照射トリガー及び前記信号光測定トリガーの前記第2のトリガーまでの遅延時間を変化させる半導体検査装置。
【請求項13】
請求項9において、
前記第1の測定モードにおいて、前記制御部は、前記電子光学系に第1方向に電子線を走査させる第1走査信号と、電子線の走査位置を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる第2走査信号とを出力し、
前記電子線照射トリガーと前記第1走査信号とは同期しており、前記電子線照射トリガーがONである期間に、前記電子光学系は電子線の照射領域を前記第1方向に走査し、
前記計算機は、前記電子光学系からの電子線照射ありの状態での前記光検出器からの検出信号に基づき、画像を形成する半導体検査装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記計算機は、前記電子光学系からの電子線照射ありの状態での前記光検出器からの検出信号から、前記電子光学系からの電子線照射なしの状態での前記光検出器からの検出信号をバックグラウンドとして差し引くことにより、前記画像のピクセル値を決定する半導体検査装置。
【請求項15】
半導体検査装置を用いた半導体試料の検査方法であって、
前記半導体検査装置は、前記半導体試料に電子線を照射する電子光学系と、前記半導体試料に光を照射する光学系と、前記電子光学系からの電子線が前記半導体試料に照射されることにより発生する信号電子を検出する電子検出器と、前記光学系からの光が前記半導体試料に照射されることにより発生する信号光を検出する光検出器とを備えており、
第1の照射条件で前記電子光学系からの電子線及び前記光学系からの光を前記半導体試料に照射し、前記光検出器からの検出信号に基づき前記半導体試料の電気的特性を評価する第1の測定ステップと、
前記第1の測定ステップにおいて異常が検出された場合には、前記電子光学系及び前記光学系を前記第1の照射条件から第2の照射条件に切り替える切り替えステップと、
前記第2の照射条件で前記電子光学系からの電子線及び前記光学系からの光を前記半導体試料に照射し、前記電子検出器からの検出信号に基づき前記半導体試料の像を形成する第2の測定ステップとを有する半導体試料の検査方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記半導体検査装置は、電気的特性と前記第2の照射条件との対応を示すデータベースを備え、
前記第2の照射条件は、前記第1の測定ステップにおいて求められた前記半導体試料の電気的特性に基づき、前記データベースを参照して決定される半導体試料の検査方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記半導体試料は複数のチップ区画を含み、
前記第1の測定ステップに先立ち、前記電子光学系からの電子線の照射位置と前記光学系からの光の照射位置とを設定するキャリブレーションステップを有し、
前記キャリブレーションステップにおいて、前記半導体試料においてキャリブレーションを実行する複数の前記チップ区画の選択、及び前記チップ区画における電子線照射位置及び光照射位置の指定を受けて、選択された前記チップ区画のそれぞれにおいて、指定された電子線照射位置及び光照射位置にそれぞれ電子線及び光が照射されるよう、前記電子光学系及び前記光学系のキャリブレーションを実行する半導体試料の検査方法。
【請求項18】
請求項15において、
前記第1の測定ステップにおいて、前記光学系からの光を前記半導体試料の第1の領域に照射し、前記電子光学系からの電子線照射ありの状態での前記光検出器からの検出信号と前記電子光学系からの電子線照射なしの状態での前記光検出器からの検出信号とに基づき、前記第1の領域の電気的特性を評価する半導体試料の検査方法。
【請求項19】
請求項15において、
前記第1の測定ステップに先立ち、前記半導体試料の像を形成する予備計測ステップを有し、
前記予備計測ステップにおいて、第3の照射条件で電子線及び光が照射されるよう前記電子光学系及び前記光学系を制御し、前記電子光学系からの電子線を所定の領域において走査させ、前記電子検出器からの検出信号に基づき、前記所定の領域の像を形成し、
前記予備計測ステップによる測定結果に基づき、前記第1の照射条件が決定される半導体試料の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体検査装置およびそれを用いた半導体試料の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウエハ全面に対して、異常なパターンの寸法変動を検出できるパターン評価方法、パターン評価システムが開示されている。特許文献1によれば、まず光学検査装置によりウエハの全面をスキャンし、その光量がパターンと相関関係を有する検出光によりパターン寸法に異常があるウエハ上の座標を特定する。その後、当該ウエハは測長SEM(走査電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)に移送され、光学検査によって座標が特定されたウエハ上のパターンに対して、測長SEMによるパターン寸法の測長を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、光学検査装置により検出する異常はパターン寸法の異常である。しかしながら、デバイス不良にはパターン寸法の不良に起因するもののみではなく、デバイスあるいはデバイスを構成する材料の電気的特性に起因するものもある。
【0005】
本開示は、デバイスや材料の電気的特性に起因するような異常について高速に光学検査を行い(第1の測定モード)、電子線を用いて異常の検出された領域に対する計測を行う(第2の測定モード)ことが可能な半導体検査装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である半導体検査装置は、第1及び第2の測定モードを有する半導体検査装置であって、試料に電子線を照射する電子光学系と、試料に光を照射する光学系と、電子光学系からの電子線が試料に照射されることにより発生する信号電子を検出する電子検出器と、光学系からの光が試料に照射されることにより発生する信号光を検出する光検出器と、第1の測定モードにおいて第1の照射条件で電子線及び光が照射されるよう電子光学系及び光学系を制御し、第2の測定モードにおいて第2の照射条件で電子線及び光が照射されるよう電子光学系及び光学系を制御する制御部と、電子検出器または光検出器からの検出信号を処理する計算機とを有し、第1の測定モードにおいては光検出器からの検出信号が計算機に入力され、第2の測定モードにおいては電子検出器からの検出信号が計算機に入力される。
【0007】
本発明の一態様である半導体試料の検査方法は、第1及び第2の測定モードを有する半導体検査装置を用いた半導体試料の検査方法であって、半導体検査装置は、半導体試料に電子線を照射する電子光学系と、半導体試料に光を照射する光学系と、電子光学系からの電子線が半導体試料に照射されることにより発生する信号電子を検出する電子検出器と、光学系からの光が半導体試料に照射されることにより発生する信号光を検出する光検出器とを備えており、
第1の照射条件で電子光学系からの電子線及び光学系からの光を半導体試料に照射し、光検出器からの検出信号に基づき半導体試料の電気的特性を評価する第1の測定ステップと、
第1の測定ステップにおいて異常が検出された場合には、電子光学系及び光学系を第1の照射条件から第2の照射条件に切り替える切り替えステップと、
第2の照射条件で電子光学系からの電子線及び光学系からの光を半導体試料に照射し、電子検出器からの検出信号に基づき半導体試料の像を形成する第2の測定ステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
電気的特性の検査と、電気的特性の異常が検出された場合の詳細検査とが実施可能な半導体検査装置を実現する。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】光学検査(第1の測定モード)において、検査領域に電子線と光を照射している様子を示す図である。
【
図5】光学検査における電子線照射、光照射及び信号光検出のタイムチャートである。
【
図7】SEM計測(第2の測定モード)において、検査領域に電子線と光を照射している様子を示す図である。
【
図8】半導体検査装置における測定のフローチャートである。
【
図9】検査・計測キャリブレーション画面の例である。
【
図12A】検査対象とするデバイスの回路例である。
【
図13】変形例1における電子線照射位置と光照射位置の設定例である。
【
図14A】変形例2の光学検査における電子線照射、光照射及び信号光検出のタイムチャートである。
【
図14B】周期Tに依存した検出信号差分の変化を示す図である。
【
図15A】変形例2の光学検査における電子線照射、光照射及び信号光検出のタイムチャートである。
【
図15B】遅延時間Tに依存した検出信号差分の変化を示す図である。
【
図16】変形例4,5の光学検査(第1の測定モード)において、検査領域に電子線と光を照射している様子を示す図である。
【
図17】変形例5の光学検査における電子線照射、電子線走査、光照射及び信号光検出のタイムチャートである。
【
図18】変形例5の光学検査で得られる画像(模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例で示す図面は本発明の具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0012】
本実施例の半導体検査装置では、デバイスあるいはデバイスを構成する材料の電気的特性を光学検査によって評価する。このため、検査対象試料における電荷を制御して、試料の電気状態を変化させる機構を有する。試料の電気状態が変化するとその光学特性も変化するため、試料の電気状態を変化させたときの光学特性の変化を把握することで、デバイスや材料の電気的特性の異常を検出することが可能になる。具体的には、試料の電気状態を変化させるために、電子線を試料に照射する。
【0013】
ここで、電気状態という用語は、試料の電位、帯電、あるいは電子状態など、試料に電子線を照射することによって試料内の電荷が変動することによりもたらされる状態を広く指すものとして使用する。例えば、Siなどの半導体膜に電子線を照射すると半導体膜の電子状態が変化する。電子状態が変わった半導体は光学特性も変化するため、例えば光反射率の変化をもとに半導体の電子状態の変化を推定できる。なお、光学検査する視野は一様な材料で構成されている必要はなく、異なる材料によって構成されるデバイス構造を含んだものであってもよい。例えば、絶縁膜中に配置されるプラグ(導体)に電子線を照射するとプラグが帯電し、その電位がプラグ周囲(nm~μm)に電界を生じるので、この範囲の試料の光学特性から電気的特性を検査することも可能である。
【0014】
図1に本実施例の半導体検査装置1の概略構成を示す。半導体検査装置1は、電子線装置10、計算機30、ディスプレイ、キーボード、操作ボタン等を含む入出力器40を備えている。
【0015】
電子線装置10は、検査対象の試料23が収容される試料室10Bに試料23に照射する電子線を発生させる電子光学系を内蔵する鏡筒10Aが設けられ、鏡筒10A及び試料室10Bの外側に制御部11が配置されている。鏡筒10Aには、電子源12、電子線のパルス化を行うブランカ15、電子線の照射電流量の調整を行う絞り13、電子線の軌道を制御する偏向器14、電子線を試料表面に集束させる対物レンズ16などが収容される。なお、これらは電子光学系を構成する光学要素の一例であって、電子光学系には、コンデンサレンズやビームセパレータなども含まれている。
【0016】
また、鏡筒10Aには、電子線の照射により試料23から放出される二次電子を検出し、二次電子に基づく検出信号を出力する電子検出器25が収容されている。電子検出器25からの検出信号は、SEM(Scanning Electron Microscopy)像の生成、試料23のサイズの測定、電気的特性の計測等に利用される。なお、ここでは二次電子を検出する電子検出器25を示しているが、反射電子(後方散乱電子(BSE:backscattered electron))を検出する電子検出器でもよく、それら双方を備えていてもよい。
【0017】
試料室10Bには、ステージ21、試料23等が収容される。試料23は、ステージ21上に載置される。試料23は、例えば複数の半導体デバイスを含む半導体ウエハや、個別の半導体デバイスなどである。ステージ21には、図示しないステージ駆動機構が設けられ、観察視野に応じて制御部11によりステージ位置が制御される。
【0018】
また、試料室10Bには、光源26、光調整器27、光検出器29が配置される。光源26は、試料23に照射する光を供給し、例えば、固体レーザ、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などの半導体素子や白色ランプを有する。光源26は、波長が異なる複数種類の光源から構成されてもよい。光調整器27は、光源26から照射される光が試料23の所定の領域に照射されるよう光の光路を調整する機能ブロックである。光調整器27は、さらに光源26から照射される光の強度や偏光等を変調する機能を備えていることが望ましい。試料23に照射された光によって発生する信号光は光検出器29により検出される。検出対象とする信号光には、反射光、散乱光、回折光、発光を含む。検出する信号光に応じて、その検出に適した光検出器29を用いることができる。光検出器29からの検出信号は試料23の電気的特性の評価に利用される。
【0019】
光源26及び光調整器27は、光学検査のために光を試料23に照射する光学系を構成する。なお、光学系を構成する光学要素、及び光検出器の全部または一部を試料室10Bの外部に配置し、試料室10Bに設けたポートを介して光を試料23に照射する、あるいは試料室10Bの外部に配置した光検出器29で信号光を検出するようにしてもよい。
【0020】
制御部11は、電子線装置10の構成要素の制御を行う。制御部11は、例えば、計算機30から入力される観察条件に基づき、電子源12、ブランカ15、絞り13、偏向器14、対物レンズ16等の動作制御を行う。制御部11は、例えばCPU等のプロセッサで実行されるプロクラムにより実現される。また、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0021】
半導体検査装置1による検査、計測の条件設定や電子線装置10の電子検出器25や光検出器29で得られた検出信号の処理は計算機30によって実行される。計算機30は計算部31、記憶部32を有している。記憶部32には、条件設定や処理に必要な種々のデータベースを記憶しており、計算部31は、入出力器40から入力されるユーザの入力データ及びデータベースを参照しながら、制御部11を介して電子線装置10の制御を行うとともに、検出信号の処理を行い、その結果を入出力器40に表示する。
【0022】
図2に検査対象とする試料の例としてウエハ(半導体試料)50を示す。ウエハ50は一度に大量のチップを生産できるよう、同じ大きさのメッシュ状のチップ区画51に区分され、各チップ区画には同一のパターンが形成されている。ウエハ50上にトランジスタなどの素子や配線などを作り込む前工程が終了した後、チップ区画ごとに切り離されることによってチップとなる。ウエハ50上には、半導体デバイスを構成する種々の材料のパターンが形成されている。
図2に、チップがDRAMメモリチップであった場合の、1つのメモリアレイ52のパターンを例示する。メモリアレイ52には、キャパシタが集積される領域53、ワード線が集積される領域54、ビット線が集積される領域55が存在する。それぞれの領域には、領域ごとの材料(絶縁体、半導体、導体など)によりパターンが形成されている。半導体検査装置1は、領域ごとに、当該領域に形成されたパターンや半導体膜における電気的特性を光学的に検査する(第1の測定モード)。
【0023】
なお、
図2では検査対象試料としてメモリチップが形成されたウエハを例示したが、これに限るものではない。同じ材料によるパターンが形成された領域を有するチップであれば、例えばセンサチップや検査用のテストパターン(Test Element Group)であってもよい。あるいは、パターンの形成されていない一様な膜が形成されたウエハ(またはウエハの一部)であってもよい。また、通常、半導体デバイスは複数の異なる材料の積層膜で構成されるため、インラインでウエハを検査する場合には、取り出す工程によって同じチップ区画であっても、領域の材料が異なる場合があるし、さらには領域そのものが異なる場合もある。検査目的によって、領域と、領域ごとの検査仕様を定めることになる。
【0024】
図3に、光学検査(第1の測定モード)のため、領域55に対して電子線61と光62を照射している様子を示す。光学検査においては、電子線61は試料の電気状態を変化させるために照射されるためスポット径を大きくし、照射される光62のスポット径(1μm~1mm)とほぼ同等となるようにする。発生した信号光63は光検出器29によって検出される。
【0025】
図4を用いて光学検査の検査仕様の例について説明する。上述のように、信号光には、反射光、散乱光、回折光、発光などがあり、検出する電気状態に応じて選択する。散乱光は、ラマン散乱光のように光源の光の波長とは異なる波長となって発生するものであってもよい。また、光源の光の波長についても限定しない。光学検査では、電子線を照射しない場合の光検出器からの検出信号と電子線を照射したときの光検出器からの検出信号を比較することにより、視野に含まれるパターンの電気的特性の異常の有無を判定する。電気的特性は、代表的には抵抗、容量、欠陥やキャリア密度であるが、これらに限られるものではない。
【0026】
光検出器29としてフォトダイオードやモノクロメータを用いる場合には、特定波長の信号光の強度を検出することができる(
図4第1段(最上段))。ここでは、電子線照射なしの状態で強度010mWの信号光が検出される場合において、電子線照射ありの状態で強度003mWの信号光が検出された場合には異常なしと判定し、強度009mWの信号光が検出された場合には異常ありと判定する例を示している。例えば、領域がキャパシタを構成しており、形状欠陥によって電子線照射によりチャージされた電荷が消失してしまう場合、欠陥がある場合には電子線照射なしの状態での信号光強度と電子線照射ありの状態での信号強度はほぼ同様となり、欠陥がない場合には電子線照射なしの状態での信号光強度と電子線照射ありの状態での信号強度は電荷のチャージにより異なったものとなる。したがって、信号光強度に基づく異常検出が可能である。
【0027】
検査対象領域の材料、検出する電気的特性に応じて定められる検査仕様によって、測定に使用する信号光、光検出器により検出するパラメータ(強度の他、以下で例示するスペクトル、強度分布など)、パラメータに基づく異常判定方法は異なる。
【0028】
光検出器29としてスペクトロメータを用いる場合には、信号光のスペクトルを検出することができる(
図4第2~3段)。第2段には、スペクトルのピーク強度の変化により異常を検出する例を示す。電子線照射なしの状態でのスペクトル71aのピーク強度と、電子線照射ありの状態でのスペクトル71b(71c)のピーク強度とを比較することにより、異常の有無を検出することができる。第3段には、スペクトルのシフト量により異常を検出する例を示す。電子線照射なしの状態でのスペクトル72aと電子線照射ありの状態でのスペクトル72b(72c)のシフト量により、異常の有無を検出することができる。
【0029】
光検出器29としてCCD、CMOSセンサなどの多ピクセル光センサを用いる場合には、信号光の強度分布を検出することができる(
図4第4段(最下段))。第4段には、信号光の強度分布により異常を検出する例を示す。この例では、0次光のx方向の両脇に回折光があらわれた信号光の強度分布が観察されている。回折光の大きさ、あるいは0次光と回折光との距離など信号光強度分布の2次元パターンの特徴に基づき、異常の有無を検出することができる。また、検出する信号光の強度分布は試料の光学顕微鏡像であってもよい。この場合は、光学レンズで試料面を多ピクセル光センサに投影すればよい。
【0030】
なお、電子線を照射しない場合の光検出器からの検出信号と電子線を照射したときの光検出器からの検出信号を比較するのではなく、電子線を照射しないときと電子線を照射したときとの差分を検出し、差分の大きさから異常の有無を判定するようにしてもよい。
【0031】
図5に光学検査における電子線照射、光照射及び信号光検出のタイムチャートを示す。電子線照射トリガー81は、制御部11からブランカ15への制御信号であり、電子線の試料23への照射期間を示す。電子線照射トリガー81の周期はHz~MHzオーダーである。光照射トリガー82は、制御部11から光源26または光調整器27への制御信号であり、光の試料23への照射期間を示す。この例では照射光は連続光としている。信号光測定トリガー83は、制御部11から光検出器29への制御信号であり、信号光の検出期間を示す。信号光測定トリガー83と電子線照射トリガー81とは同期しており、電子線照射トリガー81がONとされる期間にONとなる信号光測定トリガー83aにより電子線照射ありの状態での測定を、電子線照射トリガー81がOFFとされる期間にONとなる信号光測定トリガー83bにより電子線照射なしの状態での測定を行うことができる。なお、測定のSN比を向上させるため、測定値は複数回測定してその平均値をとることが有効である。また、電子線を照射しない状態と電子線を照射した状態での差分をとる場合には、ロックインアンプを用いたロックイン検出を行うことにより精度を高めることができる。
【0032】
図6に、光学検査の結果の表示例を示す。光学検査は、ウエハ50上のユーザが指定したチップ区画51の、ユーザが指定した領域に対して行われる。ウエハ50上の全チップ区画に対して光学検査を行ってもよい。光学検査を実施した領域におけるパターンの電気的特性、または光学特性が、ユーザが設定する許容範囲から外れている場合に異常ありと判定し、異常ありと判定されたチップ区画の座標及び当該チップ区画の許容範囲から外れた程度(異常度)に基づき、ウエハヒートマップ90として表示する。ウエハヒートマップ90では、ウエハ91中にチップ区画92を表示し、異常ありと判定されたチップ区画について、異常度に応じた色を付して表示することにより、異常ありと判定されたチップ区画とその異常度をユーザに視認可能となるように表示する。ユーザは異常ありと判定されたチップ区画に対して、電子線によるSEM計測(第2の測定モード)を実行する。SEM計測にあたっては、ユーザは、その異常度に基づき電子線によるSEM計測の仕様を設定する。
【0033】
図7に、SEM計測(第2の測定モード)のため、領域55に対して電子線101と光102を照射している様子を示す。領域55におけるパターンの寸法計測や形状評価を実施するのみであれば光102の照射は不要であるが、領域55のパターンにおける帯電状況など、電気状態を制御した状態でSEM計測を行う場合には、
図7に示すように観察視野に対して光102を照射する。SEM計測においては、電子線101のスポット径を小さく絞り、観察視野を2次元に走査する。光102のスポット径は電子線101により2次元に走査される観察視野を含む大きさに設定される。電子線101の照射によって発生する信号電子103は電子検出器25により検出され、電子検出器25の検出信号に基づきSEM像が形成される。SEM計測における電子線条件(プローブサイズ、加速電圧、プローブ電流など)や光条件(波長、偏光、強度など)は光学検査で検出された異常度に応じて決定する。例えば、光学検査で検出した電気的特性が抵抗であった場合、高抵抗異常が検出されている場合は、プローブ電流を小さくして帯電を抑制することで得られるSEM像を適正化することができる。
【0034】
このように、第1の測定モードと第2の測定モードとでは、使用する電子線条件、光条件は異なるため、半導体検査装置はそれぞれの条件に切り替えて計測を行う。また、
図1の構成では電子源12を、光学検査のための電子源及びSEM計測のための電子源として共用しているが、光学検査のための電子源、または電子源を備える鏡筒を別に設けてもよい。
【0035】
図8に、半導体検査装置1によって光学検査(第1の測定モード)によって試料における電気的特性の異常を検出し、異常の検出された領域に対してSEM計測(第2の測定モード)を実施する測定フローを示す。
【0036】
最初にキャリブレーション設定を行う(S01)。
図3に示したように、光学検査(第1の測定モード)においては、光と電子線との照射位置を調整する必要がある。このため、ウエハ上の任意の位置で光と電子線が正しい位置関係で照射されるよう、キャリブレーションを行う。キャリブレーション設定を行うためのGUI(Graphical User Interface)である検査・計測キャリブレーション画面210の例を
図9に示す。検査・計測キャリブレーション画面210には、設定ファイル選択部211が設けられており、過去の計測において記憶部32に保存されたキャリブレーションデータを呼び出すことができる。例えば、同じウエハに対して検出する電気的特性を異ならせて検査を実施する場合、あるいは同じウエハに対して検査領域を変えて検査を実施する場合など、過去のキャリブレーションデータを活用することでユーザの作業負荷を低減することができる。
【0037】
ユーザはキャリブレーションを行うウエハ上のチップ区画を何点か選択する。キャリブレーション座標リスト212に直接指定してもよいし、画面に表示されたウエハマップ213上でキャリブレーションを行うチップ区画を指定してもよい。キャリブレーション実行ボタン220を押下してウエハのアライメントを実行することによって、ウエハ上の任意の位置に光と電子線を照射することができるようになる。
【0038】
続いて、ユーザは検査対象のチップ区画において検査の対象とする領域を設定する。電子線照射位置画像214にはチップ区画のSEM像が表示され、ユーザは検査領域215がSEM像の中心になるように観察視野を調整する。電子線の照射方式は複数あり、方式選択を選択枠223から選択する。
図9では、
図3に示した電子線を試料に定点照射する方式を選択した例を示しているが、後述する変形例で説明するような走査方式などが選択できる。入力枠221に検査領域215aについての座標名を入力し、選択ボタン216を押下することにより、照射位置が確定し、その座標が登録される。ユーザは、別の領域を電子線照射位置画像214に表示させることにより、複数の電子線照射位置を登録することができる。同様に、光照射位置の設定についてもチップ区画のSEM像である光照射位置画像217が表示され、入力枠222に検査領域215bについての座標名を入力した後、選択ボタン218を押下することにより光照射位置を登録する。
図3では、光と電子線を同じ照射位置としているが、後述する変形例のように光と電子線とを異なる位置に照射してデバイスの電気的特性を検査することも可能である。このため、電子線照射位置と光照射位置とは独立して設定可能にしている。なお、
図9に示した照射位置の設定方法は一例であり、例えば電子線照射位置画像214または光照射位置画像217に低倍率のSEM像または光学顕微鏡像を表示して、照射位置をSEM像上または光学顕微鏡像上で、1または複数指定するようにしてもよい。以上の設定が終了すると、保存ボタン219を押下して、設定した内容を記憶部32に保存する。
【0039】
続いて、光学検査(第1の測定モード)の電子線条件・光条件を設定する(S02)。条件設定を行うためのGUIである検査・計測設定画面230の例を
図10Aに示す。検査・計測キャリブレーション画面210と同様に、設定ファイル選択部231が設けられており、過去の計測において記憶部32に保存された検査計測条件データを呼び出すことができる。ユーザは、検査パラメータ欄232の光条件パラメータ欄233及び電子線条件パラメータ欄234に照射条件(第1の照射条件)を設定する。
【0040】
ステップS01、S02により光学検査の条件設定が終了し、設定された条件により光学検査(第1の測定)を実施する(S03)。
図10Bに光学検査を実行するための操作画面(検査・計測画面)240の例を示す。
図10Bに示す検査・計測画面240aは、光学検査の操作画面と結果表示画面を含む第1のタブ241が開かれた状態を示している。第1のタブ241の上半分が操作画面であり、ユーザは検査チップ区画指定部242に検査対象とするチップ区画を指定する。なお、ウエハの全チップ区画を指定することも可能である。その後、検査実行ボタン243を押下することにより、指定されたチップ区画に対する光学検査が実行される。
【0041】
光学検査では、指定されたチップ区画における異常の有無を判定し、少なくとも異常と判定された座標(チップ区画)については、その異常の程度を算出する(S04)。例えば、記憶部32に測定される光学特性と測定領域の電気的特性との関係をデータベースとして保存しておき、異常判定に用いることができる。例えば、スペクトルシフト量と抵抗値の大きさあるいは欠陥密度の大きさなどをデータベース化しておき、測定されたスペクトルシフト量から抵抗値や欠陥などの電気的特性を求め、異常の有無を判定することができる。または、測定されたバンドギャップや屈折率等の半導体材料の光学特性から異常の有無を直接判定してもよい。
図10Bに示す検査・計測画面240aの第1のタブ241の下半分が結果表示画面である。検査結果表示部244に、検査チップ区画指定部242において指定されたチップ区画の検査結果が表示される。この例では、チップ区画の正常、異常にかかわらず、電気的特性値を算出して表示する例を示している。また、
図6に示したウエハヒートマップ245もあわせて表示している。ユーザは光学検査の結果を確認した後、保存ボタン246を押下して、光学検査結果を記憶部32に保存する。
【0042】
ユーザは、異常の程度に基づいて第2の測定の電子線条件、光条件を設定する(S05)。条件設定は、ユーザが検査・計測設定画面230(
図10A)における計測パラメータ欄235の電子線条件パラメータ欄236及び光条件パラメータ欄237に照射条件(第2の照射条件)を設定する。半導体検査装置1は、光学検査で検出された異常度、あるいは電気的特性に応じて設定する計測パラメータのデフォルト値をあらかじめデータベースとして記憶部32に格納しておく。データベースの例を
図11に示す。領域の材料、照射する加速電圧の下、第1の測定で算出された領域の電気的特性(抵抗値など)に応じて第2の測定で使用する電子線電流量(プローブ電流量)が格納されている。データベースは、第2の測定条件に用いられる光条件を含んでもよい。ユーザはこのようなデータベースを参照することにより、容易に適切なパラメータを設定することができるようになる。
【0043】
計算機30は、ユーザが設定したSEM計測(第2の測定モード)の電子線条件及び光条件に電子線装置10の装置条件を切り替え(S06)、光学検査にて異常ありと判定されたチップ区画に対してSEM計測を実行する(S07)。ユーザはSEM像に基づき、光学検査で検出された異常についての詳細分析を行う。
図10CにSEM計測を実行するための操作画面(検査・計測画面)240の例を示す。
図10Cに示す検査・計測画面240bは、SEM計測の操作画面と結果表示画面を含む第2のタブ251が開かれた状態を示している。第2のタブ251の上半分が操作画面であり、ユーザは結果ファイル選択部252から記憶部32に保存されている光学検査結果データを呼び出す。これにより、第1のタブ241(
図10B)における検査結果表示部244、ウエハヒートマップ245に相当する検査結果表示部253、ウエハヒートマップ254が表示される。計測実行ボタン255を押下することにより、異常ありと判定されたチップ区画に対してSEM計測が実行され、検査・計測画面240bの第2のタブ251の下半分にSEM計測結果が表示される。結果表示画面は、計測結果表示部256を含み、計測結果表示部256には検査結果表示部253と同じチップ区画の光学検査結果が表示されている。光学検査で異常が検出されたレコードをポインタで指示することにより、SEM計測で取得したSEM像257が表示される。
図10Cに例示したSEM像257は、
図2に示したDRAMメモリアレイのキャパシタが集積される領域の像である。光学検査で異常判定されたチップ区画のSEM像からパターンの寸法を計測し、異常が形状起因であると判定し、SEM像及び計測した寸法を計測結果として保存する。あるいは、光を照射してSEM像を取得し、SEM像の輝度値から、異常が何らかの電気的特性起因であると判定し、電気的特性の値を計測結果として保存する。SEM計測結果は、保存ボタン258が押下されることにより、記憶部32に保存される。
【0044】
以上、本実施例の半導体検査装置による半導体デバイスや材料の電気的特性の検査と、電気的特性の異常が検出された場合の詳細検査について説明したが、実行可能な検査・計測は上述の説明に限られない。以下では、その変形例について説明する。
【0045】
(変形例1)
図3の例では、電子線と光とを同じ照射位置としていた。変形例1では電子線と光とを異なる照射位置とする例について説明する。
図12Aに検査対象とするデバイスの回路例を示す。回路A132、回路B134、回路C136はそれぞれ外部端子131、外部端子133、外部端子135を備えている。回路A132は回路B134と接続されており、回路B134は回路C136と接続されていることにより、回路間には相互依存関係がある。
図12Bに
図12Aの回路が実装されたデバイスのレイアウトを示す。
図12Bでは外部端子131に対応するプラグ(群)が形成された領域A131a、外部端子133に対応するプラグ(群)が形成された領域B133a、外部端子135に対応するプラグ(群)が形成された領域C135aが表れている。回路A~Cは、
図12Bに示された層よりも下に位置する層に形成されている。
【0046】
このようなデバイスに対して、光学検査(第1の測定モード)において、
図12Bに示すように、領域131aに対して電子線137を照射し、領域133aに対して光138を照射し、発生した信号光139を検出する。このように領域131aのプラグ(群)を帯電させることにより間接的に回路B134の電気状態を変え、この状態で回路B134の電気的特性を測定する。これにより、回路B134の電気的特性の回路A132に対する依存性を把握することができる。
【0047】
この場合、キャリブレーション設定ステップ(S01、
図8参照)では、
図13に示すように、電子線照射位置と光照射位置とを異なる位置に設定する。また、
図13においては複数の電子線照射位置を設定し(なお、第1の測定の電子線条件・光条件設定ステップ(S02)で設定した電子線、光の各チップ内の照射位置座標を括弧内に表示している)、具体的には電子線を領域A~Cに照射することによって、直接的または間接的に回路B134の電気状態を変えて、電気的特性を測定する例を示している。このように、
図9の検査・計測キャリブレーション画面210において、電子線照射位置を複数登録することにより各チップで複数種類の検査を実施できる。同様に、複数の光照射位置を登録し、各チップで光照射位置を変えた複数の検査を実施できる。
【0048】
(変形例2)
図5に示したタイムチャートでは、電子線照射と信号光検出のタイミングを所定の一定周期とし、光学検査(第1の測定モード)では当該タイミングで検出される電気的特性の大きさを測定する例を説明した。しかしながら、あるタイミングでの電気的特性の大きさだけではなく、キャパシタにおける電荷の保持能力のように、デバイスの電気的特性の応答特性を検査したい場合もある。このような場合には、電子線照射と信号光検出のタイミングを可変にすることで、デバイスの電気的特性の応答特性を測定することができる。
【0049】
図14Aのタイムチャートは
図5のタイムチャートと同様であり、電子線照射トリガー141、電子線照射トリガー141がONとされる期間にONとなる信号光測定トリガー143a、電子線照射トリガー141がOFFとされる期間にONとなる信号光測定トリガー143bの周期はそれぞれTとされている。光学検査(第1の測定)では周期Tを変調させながら、電子線照射ありの状態と電子線照射なしの状態での検出信号の差分を検出する。
【0050】
図14Bは、周期Tに依存した検出信号差分の変化を示す。例えば、検出信号差分が大きく変化した周期T
1において、上述の例であれば電子線照射によってデバイス(キャパシタ)にチャージされた電荷が消失したと判断できる。このように、光学検査(第1の測定)において測定する電気的特性には、その応答特性を含めることができる。
【0051】
図15Aは変形例2の別のタイムチャートである。この例では光源26をパルス光とし、光源26の発光を制御する光照射トリガー152及び信号光測定トリガー153と電子線照射トリガー151とは同期しており、電子線照射トリガー151がONとされる期間にONとなる光照射トリガー152a及び信号光測定トリガー153aにより電子線照射ありの状態での測定を、電子線照射トリガー151がOFFとされる期間にONとなる光照射トリガー152b及び信号光測定トリガー153bにより電子線照射なしの状態での測定を行うことができる。この例では、電子線照射トリガー151がONからOFFに変化するタイミングと信号光測定トリガー153bがONからOFFに変化するタイミングとの遅延時間Tを変調させながら、電子線照射ありの状態と電子線照射なしの状態での検出信号の差分を検出する。
図15Bは、遅延時間Tに依存した検出信号差分の変化を示す。
図14Bと同様に、電気的特性の応答特性を測定することができる。
【0052】
(変形例3)
図8のフローチャートでは、ユーザが検査・計測設定画面230に直接値を入力することにより、光学検査(第1の測定モード)の電子線条件・光条件を設定する例を説明した。光学検査に最適な条件は、試料の構造や材料によって異なる。そこで、変形例3では、光学検査の電子線条件・光条件を設定するため、光学検査を実施する領域に対して予備計測を実施し、予備計測の結果に基づいて光学検査の電子線条件・光条件を設定する。
【0053】
予備計測は、本実施例における第2の測定と同様にSEM計測とし、同時に光照射を行っても行わなくてもよい。例えば、予備計測によりデバイスの寸法を算出し、デバイスを帯電させるのに必要な電荷量を算出し、第1の測定における電子線電流量を算出することができる。あるいは、予備計測の結果から算出されるデバイスの時定数から、第1の測定における電子線照射の周期を算出することができる。あるいは、予備計測の結果から算出されるデバイスの帯電状況から、帯電に必要な電荷の正負を判定し、第1の測定における電子線の加速電圧を算出することができる。
【0054】
(変形例4)
図3に示した光学検査(第1の測定モード)における電子線と光の試料への照射では、電子線61の試料での照射スポット径を照射される光62のスポット径とほぼ同等となるようにしている。しかし、この場合、電子線61を照射する領域を任意に決められない。例えば、
図3の領域55に絞って電子線を照射したい場合、領域55に合わせた形状の電子線61の照射スポットを作ることは困難である。変形例4では、電子線61をスポット径に制約されることなく、試料上の任意の領域に照射する方法を説明する。変形例4における光学検査における電子線と光の照射方法について
図16を用いて説明する。本変形例での照射方法は、
図9に示した検査・計測キャリブレーション画面210において、電子線照射方式を選択する選択枠223において、走査方式を選択することで実行される。
【0055】
図16は、
図12A,Bに示したデバイスについて、電子線137と光138とを領域133aに照射して、領域133a(回路B134)について光学検査する様子を例として示している。電子線の照射について走査方式を選択することにより、電子線137の試料上のスポット径は、光138のスポット径よりも小さくされ、電子線137は、電子線照射位置画像214で設定された領域を偏向器14によって2次元に走査される。電子線照射位置を領域133aに設定し、電子線はその領域を走査することによって、電子線137のスポット径とは無関係に電子線137の照射領域を設定することができる。
【0056】
さらに、検査・計測キャリブレーション画面210の電子線照射位置画像214において電子線61を照射する領域を任意に設定し、設定された領域について電子線61を走査する任意領域走査方式を選択枠223から選択可能にしてもよい。任意領域走査方式の特徴は、電子線61の照射する領域をユーザの指定する任意の形状とできるところにある。なお、電子線61の走査は、
図5の電子線照射トリガー81がONである期間に行われる。以上により、光学検査(第1の測定モード)における電子線照射領域を任意に設定できる。変形例1と組み合わせ、光照射領域と異なる電子線照射領域への電子線照射のために走査方式を適用してもよい。
【0057】
(変形例5)
実施例における光学検査(第1の測定モード)は、光の照射領域全体の検査を行うものである。言い換えれば、実施例の第1の測定モードで検査される電気的特性は、光の照射領域全体における平均的特性となっている。これに対して、変形例5では、光の照射領域における電気的特性の分布を検出することにより、空間分解能に優れた光学検査を実現する。本変形例での電子線照射方式には、変形例4にて説明した走査方式または任意領域走査方式を適用する。
【0058】
変形例5の光学検査について
図16の例を用いて説明する。光138は領域133aに対して照射され、電子線137は、そのスポット径が光138のスポット径よりも小さくされ、かつ領域133aを走査されるものとする。変形例5のタイムチャートを
図17に示す。
図17のタイムチャートは
図5のタイムチャートと同様であるが、X方向の電子線走査信号172、Y方向の電子線走査信号173が加えられている。電子線走査信号172,173は、制御部11から偏向器14への制御信号であり、電子線137を試料上で2次元に走査させる。X方向の電子線走査信号172は、電子線137をX方向に走査させ、Y方向の電子線走査信号173は、X方向に直交するY方向に電子線の走査位置を移動させる。
図17のタイムチャートでは、Y方向への走査は連続的になされる一方、X方向への走査は電子線照射トリガー171がONとされる期間においてなされ、当該期間内に電子線137は、X方向に延びるライン状に領域133aを走査する。
【0059】
また、信号光測定トリガー175と電子線照射トリガー171とは同期しており、電子線照射トリガー171がONとされる期間にONとなる信号光測定トリガー175aにより電子線照射ありの状態での測定を、電子線照射トリガー171がOFFとされる期間にONとなる信号光測定トリガー175bにより電子線照射なしの状態での測定を行うことができる。X方向の電子線走査信号172とY方向の電子線走査信号173は、試料上に照射される電子線137の位置を示しているため、光検出器からの検出信号を電子線走査信号172,173に合わせて2次元的に配列することで画像化できる。例えば、検出信号が信号光の強度であれば、各ピクセルの値は、信号光測定トリガー175aのタイミングでの電子線の走査位置に電子線137が照射された状態での信号光の強度である。なお、信号光測定トリガー175bのタイミングで検出される信号光強度は電子線照射がない状態の強度であるため、信号光測定トリガー175aにより検出される信号強度から信号光測定トリガー175bにより検出される信号強度をバックグラウンドとして差し引くことにより、電子線照射の影響をより検出しやすくすることができる。
【0060】
このようにして得られる、
図16の領域133aの画像(模式図)を
図18に示す。領域133aの画像181の一部に信号光強度が周囲の領域182よりも著しく高い領域183が観察されたとする。この場合、領域183において、検査したデバイスあるいは半導体膜の形状または電気的特性に異常があると判定できる。そこで、この異常領域183の座標を記憶部32に欠陥部として記憶する。記憶された座標(領域183)について、第2の測定モードであるSEM計測を実施し、電気的特性あるいはデバイス形状について詳細な計測を行う。画像のピクセル値は、信号光の強度に限らず、
図4に示すスペクトルシフト量や強度分布を数値化した値としてもよい。あるいは、バンドギャップや屈折率等の光学特性、抵抗や欠陥密度等の電気的特性を数値化した値としてもよい。このように、光学検査における空間分解能を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明について実施例、変形例を挙げて説明した。上記した実施例、変形例は発明の要旨を変更しない範囲で種々変形が可能であり、また、これらを組み合わせて使用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:半導体検査装置、10:電子線装置、10A:鏡筒、10B:試料室、11:制御部、12:電子源、13:絞り、14:偏向器、15:ブランカ、16:対物レンズ、21:ステージ、23:試料、25:電子検出器、26:光源、27:光調整器、29:光検出器、30:計算機、31:計算部、32:記憶部、40:入出力器、50:ウエハ、51:チップ区画、52:メモリアレイ、53~55:領域、61:電子線、62:光、63:信号光、71,72:スペクトル、81,141,151,171:電子線照射トリガー、82,142,152,174:光照射トリガー、83,143,153,175:信号光測定トリガー、90:ウエハヒートマップ、91:ウエハ、92:チップ区画、101:電子線、102:光、103:信号電子、131,133,135:外部端子、132,134,136:回路、137:電子線、138:光、139:信号光、172:X方向の電子線走査信号、173:Y方向の電子線走査信号、181:画像、182,183:領域、210:検査・計測キャリブレーション画面、211,121:設定ファイル選択部、212:キャリブレーション座標リスト、213:ウエハマップ、214:電子線照射位置画像、215:検査領域、216,218:選択ボタン、217:光照射位置画像、219,238,246,258:保存ボタン、220:キャリブレーション実行ボタン、221,222:入力枠、223:選択枠、230:検査・計測設定画面、232:検査パラメータ欄、233,237:光条件パラメータ欄、234,236:電子線条件パラメータ欄、235:計測パラメータ欄、240:検査・計測画面、241:第1のタブ、242:検査チップ区画指定部、243:検査実行ボタン、244,253:検査結果表示部、245,254:ウエハヒートマップ、251:第2のタブ、252:結果ファイル選択部、255:計測実行ボタン、256:計測結果表示部、257:SEM像。