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特許7385241画像抽出装置、画像抽出システム、画像抽出方法及び画像抽出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】画像抽出装置、画像抽出システム、画像抽出方法及び画像抽出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231115BHJP
【FI】
G06T7/00 630
G06T7/00 350C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019113730
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020205013
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成30年6月20日に次世代病理技術講習会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)-(3)平成30年6月21日に第107回日本病理学会総会にて2件発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (4)平成30年6月22日に第107回日本病理学会総会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (5)平成30年6月22日にプレプリントサーバに論文を発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (6)平成30年6月23日に第107回日本病理学会総会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (7)平成30年8月1日に雑誌「病理と臨床」Vol.36 No.8 8月号に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (8)平成30年8月3日に第15回日本病理学会カンファレンスにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (9)平成30年9月5日に雑誌「実験医学増刊」Vol.36 No.15に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (10)平成30年9月7日に第50回日本臨床分子形態学会総会・学術集会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (11)平成30年9月27日に第77回日本癌学会学術総会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (12)平成30年10月10日にBioJapan 2018にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (13)平成30年11月16日に第58回日本核医学会学術総会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (14)平成31年2月15日に雑誌「生体の科学」70巻1号に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (15)平成31年3月8日に第38回日本画像医学会・学術集会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (16)平成31年3月19日に鳥取大学医学部付属病院がんセンター市民講座にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (17)-(18)令和1年5月10日に第108回日本病理学会総会にて2件発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (19)令和1年5月18日にGlobal Congress on Molecular Pathologyにて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的がん医療実用化研究事業、「国内がんゲノムの均てん化に資するゲノム病理情報の学習と検証」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊平
(72)【発明者】
【氏名】河村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】河辺 昭宏
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050671(JP,A)
【文献】特開2018-180635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理画像を取得する取得部と、
前記病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部と、
前記局所的な特徴量の相関行列の次元を減らす計算処理を行うことにより、非局所的な特徴量を算出する第2算出部と、
前記非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部と、
前記類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部と、
を備える画像抽出装置。
【請求項2】
抽出された前記1又は複数の参照画像、前記1又は複数の参照画像の識別情報、前記1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び前記1又は複数の参照画像と前記病理画像との前記類似度の少なくともいずれかを表示する表示部をさらに備える、
請求項1に記載の画像抽出装置。
【請求項3】
前記第1算出部は、病理画像の局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される特徴マップによって、前記局所的な特徴量を算出する、
請求項1又は2に記載の画像抽出装置。
【請求項4】
前記第2算出部は、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される特徴マップの相関に基づいて、前記非局所的な特徴量を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像抽出装置。
【請求項5】
前記第2算出部は、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる異なる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、前記非局所的な特徴量を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像抽出装置。
【請求項6】
前記第2算出部は、2種類の学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、前記非局所的な特徴量を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像抽出装置。
【請求項7】
前記複数の参照画像は、病理組織のホールスライドイメージのうち選択された領域からランダムに切り出された画像を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像抽出装置。
【請求項8】
前記非局所的な特徴量に基づいて、前記病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定部をさらに備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像抽出装置。
【請求項9】
所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された所定の病理の第1画像と、前記所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された前記所定の病理の第2画像とを学習データとして、前記非局所的な特徴量に基づいて、前記病理画像に写された細胞に前記所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定モデルを生成する生成部をさらに備える、
請求項8に記載の画像抽出装置。
【請求項10】
前記判定モデルにより前記所定の遺伝子変異が生じていると判定される場合に、判定の根拠となった前記病理画像の領域を表示する表示部をさらに備える、
請求項9に記載の画像抽出装置。
【請求項11】
画像抽出装置及びユーザ端末を備える画像抽出システムであって、
前記ユーザ端末は、病理画像を撮影する撮影部を有し、
前記画像抽出装置は、
前記病理画像を取得する取得部と、
前記病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部と、
前記局所的な特徴量の相関行列の次元を減らす計算処理を行うことにより、非局所的な特徴量を算出する第2算出部と、
前記非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部と、
前記類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部と、を有する、
画像抽出システム。
【請求項12】
前記ユーザ端末は、
抽出された前記1又は複数の参照画像、前記1又は複数の参照画像の識別情報、前記1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び前記1又は複数の参照画像と前記病理画像との前記類似度の少なくともいずれかを表示する表示部をさらに有する、
請求項11に記載の画像抽出システム。
【請求項13】
病理画像を取得することと、
前記病理画像の局所的な特徴量を算出することと、
前記局所的な特徴量の相関行列の次元を減らす計算処理を行うことにより、非局所的な特徴量を算出することと、
前記非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出することと、
前記類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出することと、
を含む画像抽出方法。
【請求項14】
画像抽出装置に備えられた演算部を、
病理画像を取得する取得部、
前記病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部、
前記局所的な特徴量の相関行列の次元を減らす計算処理を行うことにより、非局所的な特徴量を算出する第2算出部、
前記非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部、及び
前記類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部、
として機能させる画像抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像抽出装置、画像抽出システム、画像抽出方法及び画像抽出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者の病理組織の画像に基づく病理診断が行われている。病理画像に基づいて病理診断を行う医師は、アトラスを参照して類似画像を検索し、症例を特定することがある。
【0003】
一方、ニューラルネットワークを用いた画像解析の技術が近年発展しており、例えば、下記非特許文献1では、画像のスタイルを任意の絵画風に変換する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Leon A. Gatys, Alexander S. Ecker, and Matthias Bethge, "Image Style Transfer Using Convolutional Neural Networks," IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、電子化された病理画像のアトラスが用いられているが、画像の検索は、テキストをクエリとして行われることがある。しかしながら、病理画像を検索する場合、解釈が難しい症例や初見の症例について適切なクエリを設定することが難しく、参照画像の抽出が困難な場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる画像抽出装置、画像抽出システム、画像抽出方法及び画像抽出プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る画像抽出装置は、病理画像を取得する取得部と、病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部と、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する第2算出部と、非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部と、類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部と、を備える。
【0008】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴量を算出し、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量と比較することで、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる。
【0009】
上記態様において、抽出された1又は複数の参照画像、1又は複数の参照画像の識別情報、1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び1又は複数の参照画像と病理画像との類似度の少なくともいずれかを表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0010】
この態様によれば、抽出された1又は複数の参照画像に関する情報を確認することができ、クエリとした病理画像との関連性が評価しやすくなる。
【0011】
上記態様において、第1算出部は、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される特徴マップによって、局所的な特徴量を算出してもよい。
【0012】
この態様によれば、病理画像の局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0013】
上記態様において、第2算出部は、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してもよい。
【0014】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0015】
上記態様において、第2算出部は、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる異なる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してもよい。
【0016】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0017】
上記態様において、第2算出部は、2種類の学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してもよい。
【0018】
この態様によれば、病理画像の局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0019】
上記態様において、複数の参照画像は、病理組織のホールスライドイメージのうち選択された領域からランダムに切り出された画像を含んでもよい。
【0020】
この態様によれば、病理組織の特徴を適切に表す参照画像を抽出することができる。
【0021】
上記態様において、非局所的な特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0022】
この態様によれば、病理画像をクエリとして、所定の遺伝子変異が生じているか否かを予測することができる。
【0023】
上記態様において、所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された所定の病理の第1画像と、所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された所定の病理の第2画像とを学習データとして、非局所的な特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定モデルを生成する生成部をさらに備えてもよい。
【0024】
この態様によれば、病理画像をクエリとして、所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定モデルを生成することができる。
【0025】
上記態様において、判定モデルにより所定の遺伝子変異が生じていると判定される場合に、判定の根拠となった病理画像の領域を表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0026】
この態様によれば、所定の遺伝子変異が生じていると判定した根拠を視覚的に確認することができる。
【0027】
本発明の他の態様に係る画像抽出システムは、画像抽出装置及びユーザ端末を備える画像抽出システムであって、ユーザ端末は、病理画像を撮影する撮影部を有し、画像抽出装置は、病理画像を取得する取得部と、病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部と、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する第2算出部と、非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部と、類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部と、を有する。
【0028】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴量を算出し、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量と比較することで、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる。
【0029】
上記態様において、ユーザ端末は、抽出された1又は複数の参照画像、1又は複数の参照画像の識別情報、1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び1又は複数の参照画像と病理画像との類似度の少なくともいずれかを表示する表示部をさらに有してもよい。
【0030】
この態様によれば、抽出された1又は複数の参照画像に関する情報を確認することができ、クエリとした病理画像との関連性が評価しやすくなる。
【0031】
本発明の他の態様に係る画像抽出方法は、病理画像を取得することと、病理画像の局所的な特徴量を算出することと、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出することと、非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出することと、類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出することと、を含む。
【0032】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴量を算出し、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量と比較することで、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる。
【0033】
本発明の他の態様に係る画像抽出プログラムは、画像抽出装置に備えられた演算部を、病理画像を取得する取得部、病理画像の局所的な特徴量を算出する第1算出部、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する第2算出部、非局所的な特徴量と、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する第3算出部、及び類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する抽出部、として機能させる。
【0034】
この態様によれば、病理画像の非局所的な特徴量を算出し、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量と比較することで、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、病理画像をクエリとして、データベースから適切な参照画像を抽出することができる画像抽出装置、病理画像抽出方法及び病理画像抽出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係る画像抽出システムのネットワーク構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る画像抽出装置の機能ブロックを示す図である。
図3】本実施形態に係る画像抽出装置の物理的構成を示す図である。
図4】本実施形態に係るユーザ端末によって病理画像を撮影する例を示す図である。
図5】本実施形態に係る画像抽出装置によって病理画像と類似する参照画像を抽出する処理の概要を示す図である。
図6】本実施形態に係る画像抽出装置によって抽出された参照画像の例を示す図である。
図7】本実施形態に係る画像抽出装置によって実行される抽出処理のフローチャートである。
図8】本実施形態に係る画像抽出装置による遺伝子変異の判定の根拠となった病理画像の領域の例を示す図である。
図9】本実施形態に係る画像抽出装置によって実行される遺伝子変異の有無を判定する処理のフローチャートである。
図10】本実施形態に係る画像抽出装置によって実行される判定モデル生成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0038】
図1は、本発明の実施形態に係る画像抽出システム100のネットワーク構成を示す図である。画像抽出システム100は、画像抽出装置10及びユーザ端末20を備える。画像抽出装置10及びユーザ端末20は、汎用のコンピュータで構成されてよく、ユーザ端末20は、例えばスマートフォンであってよい。
【0039】
ユーザは、対象者の病理組織を顕微鏡30で観察し、ユーザ端末20を用いて病理画像を撮影する。撮影された病理画像は、インターネット等の通信ネットワークNを介して、ユーザ端末20から画像抽出装置10に送られる。
【0040】
画像抽出装置10は、取得した病理画像をクエリとして、データベース50に記憶された1又は複数の参照画像を抽出する。画像抽出装置10は、抽出した参照画像を画像抽出装置10の表示部に表示したり、ユーザ端末20に送信したりしてよい。
【0041】
図2は、本実施形態に係る画像抽出装置10の機能ブロックを示す図である。画像抽出装置10は、取得部11、記憶部12、第1算出部13、第2算出部14、第3算出部15、抽出部16、判定部17及び生成部18を備える。
【0042】
取得部11は、病理画像を取得する。取得部11は、ユーザ端末20から病理画像を取得してよいが、他の装置から病理画像を取得してもよい。また、画像抽出装置10に撮影部を設ける場合、取得部11は、当該撮影部から病理画像を取得してよい。
【0043】
記憶部12は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)12a及び判定モデル12bを記憶する。畳み込みニューラルネットワーク12aは、学習済み(Pre-trained)モデルであってよく、例えば、Simonyan, Karen and Zisserman, Andrew, "Very Deep Convolutional Networks for Large-Scale Image Recognition," arXiv 1409.1556, 2014で提案されたモデルを用いてよい。画像抽出装置10は、畳み込みニューラルネットワーク12aによって、病理画像の局所的な特徴量を算出する。
【0044】
判定モデル12bは、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定するモデルである。判定モデル12bは、任意のアルゴリズムを用いて構成されてよいが、例えばニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いて構成されてよい。
【0045】
第1算出部13は、病理画像の局所的な特徴量を算出する。第1算出部13は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aに含まれる隠れ層により算出される特徴マップによって、局所的な特徴量を算出してよい。本明細書では、畳み込みニューラルネットワーク12aに含まれる第L層の位置jに関するi番目のフィルタの特徴マップをFL ijと表す。学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aによって、病理画像の局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0046】
第2算出部14は、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する。第2算出部14は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aに含まれる隠れ層により算出される特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してよい。第2算出部14は、非局所的な特徴量GL ijを、GL ij=ΣkL ikL jkにより算出してよい。第2算出部14によって、病理画像の非局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0047】
第2算出部14は、Yang Gao, Oscar Beijbom, Ning Zhang, and Trevor Darrell, "Compact Bilinear Pooling," arXiv:1511.06062, 2015に記載されたCompact Bilinear Poolingを用いて、非局所的な特徴量を1024次元程度の特徴量に変換してよい。もっとも、第2算出部14は、主成分分析等の他の方法により、非局所的な特徴量を1024次元程度の特徴量に変換してもよい。
【0048】
第2算出部14は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aに含まれる異なる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してもよい。すなわち、第2算出部14は、畳み込みニューラルネットワーク12aに含まれる第L層の特徴マップFL ikと、第M層の特徴マップFM jkとを用いて、非局所的な特徴量GL,M ijを、GL,M ij=ΣkL ikM jkにより算出してよい。これにより、病理画像の非局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0049】
また、第2算出部14は、2種類の学習済みの畳み込みニューラルネットワークに含まれる隠れ層により算出される2種類の特徴マップの相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出してもよい。すなわち、第2算出部14は、第1の畳み込みニューラルネットワークに含まれる第L層の特徴マップFL ikと、第2の畳み込みニューラルネットワークに含まれる第M層の特徴マップFM jkとを用いて、非局所的な特徴量GL,M ijを、GL,M ij=ΣkL ikM jkにより算出してよい。これにより、病理画像の非局所的な特徴を適切に表す特徴量を算出することができる。
【0050】
第3算出部15は、非局所的な特徴量と、データベース50に記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出する。データベース50に記憶される複数の参照画像は、病理組織のホールスライドイメージのうち選択された領域からランダムに切り出された画像を含む。このような参照画像をデータベース50に記憶していることで、病理組織の特徴を適切に表す参照画像を抽出することができる。また、データベース50は、複数の参照画像と、複数の参照画像それぞれについて算出された非局所的な特徴量とを関連付けて記憶していてよい。第3算出部15は、病理画像について算出された非局所的な特徴量と、データベース50に記憶された参照画像の非局所的な特徴量との間の類似度を算出してよい。
【0051】
抽出部16は、第3算出部15により算出された類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する。抽出部16は、類似度が上位所定割合である参照画像を、データベース50から抽出してよい。
【0052】
本実施形態に係る画像抽出装置10によれば、病理画像の非局所的な特徴量を算出し、データベースに記憶された複数の参照画像の特徴量と比較することで、病理画像をクエリとして、データベース50から適切な参照画像を抽出することができる。
【0053】
画像抽出装置10は、複数の学習済みのニューラルネットワークに含まれる複数の隠れ層のうち、いずれの層の特徴マップを用いるかを以下のようにして選択してよい。はじめに、病理医が、データベース50から、クエリ画像に類似する複数の参照画像を類似度が高い順に抽出する。そして、同じクエリ画像を複数の学習済みのニューラルネットワークに入力し、複数の隠れ層の特徴マップを用いてそれぞれ非局所的な特徴量を算出する。次に、それぞれの算出方法毎に、非局所的な特徴量と、データベース50に記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出し、類似度が高い順に複数の参照画像を抽出する。画像抽出装置10は、複数の算出方法により抽出された複数の参照画像と、病理医により抽出された複数の参照画像との順位の相関を算出し、相関が最も高い算出方法を選択してよい。
【0054】
表示部10fは、抽出された1又は複数の参照画像、1又は複数の参照画像の識別情報、1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び1又は複数の参照画像と病理画像との類似度の少なくともいずれかを表示する。ここで、1又は複数の参照画像の識別情報は、例えば、癌ゲノム・アトラス(TCGA;The Cancer Genome Atlas)のIDであってよい。また、1又は複数の参照画像に関する病理の種類は、例えば、癌の種類であってよい。このように、抽出された参照画像に関する情報を表示することで、抽出された1又は複数の参照画像に関する情報を確認することができ、クエリとした病理画像との関連性が評価しやすくなる。
【0055】
ユーザ端末20は、画像抽出装置10により抽出された1又は複数の参照画像、1又は複数の参照画像の識別情報、1又は複数の参照画像に関する病理の種類及び1又は複数の参照画像と病理画像との類似度の少なくともいずれかを表示する表示部を有してよい。これにより、ユーザは、スマートフォン等のユーザ端末20によって、抽出された1又は複数の参照画像に関する情報を確認することができ、クエリとした病理画像との関連性が評価しやすくなる。
【0056】
判定部17は、非局所的な特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する。判定部17は、第2算出部14により算出された、病理画像の非局所的な特徴量に基づいて、判定モデル12bによって、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定してよい。これにより、病理画像をクエリとして、所定の遺伝子変異が生じているか否かを予測することができる。
【0057】
生成部18は、所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された所定の病理の第1画像と、所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された所定の病理の第2画像とを学習データとして、非局所的な特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定モデル12bを生成する。判定モデル12bは、例えば、特定の種類の癌について、所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された第1画像と、所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された第2画像とを学習データとして、病理画像の非局所的な特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定するように学習されたニューラルネットワーク等のモデルであってよい。ここで、所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された第1画像と、所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された第2画像とは、それぞれ病理医により収集されてよい。生成部18によって、病理画像をクエリとして、所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する判定モデル12bを生成することができる。
【0058】
表示部10fは、判定モデル12bにより所定の遺伝子変異が生じていると判定される場合に、判定の根拠となった病理画像の領域を表示してよい。画像抽出装置10は、例えば、Ramprasaath R. Selvaraju, Michael Cogswell, Abhishek Das, Ramakrishna Vedantam, Devi Parikh, and Dhruv Batra, "Grad-CAM: Visual Explanations from Deep Networks via Gradient-based Localization," arXiv:1610.02391, 2016で提案された手法を用いて、判定モデル12bが注目する病理画像の領域をヒートマップとして表し、表示部10fに表示してよい。このようにして、所定の遺伝子変異が生じていると判定した根拠を視覚的に確認することができる。
【0059】
図3は、本実施形態に係る画像抽出装置10の物理的構成を示す図である。画像抽出装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では画像抽出装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、画像抽出装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図3で示す構成は一例であり、画像抽出装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0060】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、病理画像に基づいて、データベースに記憶された参照画像を抽出するプログラム(画像抽出プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0061】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、病理画像といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0062】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば画像抽出プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0063】
通信部10dは、画像抽出装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0064】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0065】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、例えば、病理画像、抽出した1又は複数の参照画像を表示してよい。
【0066】
画像抽出プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。画像抽出装置10では、CPU10aが画像抽出プログラムを実行することにより、図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、画像抽出装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0067】
図4は、本実施形態に係るユーザ端末20によって病理画像を撮影する例を示す図である。ユーザは、顕微鏡30によって病理組織を観察し、スマートフォン等のユーザ端末20を用いて、病理画像を撮影する。病理画像は、ユーザ端末20の撮影部を顕微鏡30の接眼レンズにあてることで撮影されてよいが、顕微鏡30に備えられた撮影部によって撮影されてもよい。
【0068】
ユーザ端末20により撮影された病理画像は、通信ネットワークNを介して画像抽出装置10に送信される。ユーザ端末20は、撮影した複数の病理画像のうち、ユーザによって選択された1又は複数の病理画像を画像抽出装置10に送信してもよい。
【0069】
図5は、本実施形態に係る画像抽出装置10によって病理画像IMG1と類似する参照画像IMG2を抽出する処理の概要を示す図である。画像抽出装置10は、取得した病理画像IMG1を畳み込みニューラルネットワーク12aに入力し、特徴マップF1を算出する。
【0070】
そして、画像抽出装置10は、算出した特徴マップF1の相関行列を算出し、Compact Bilinear Poolingを用いて、非局所的な特徴量F2を算出する。もっとも、画像抽出装置10は、主成分分析等の他の方法により、特徴マップF1の相関行列から非局所的な特徴量F2を算出してもよい。画像抽出装置10は、特徴マップF1の相関行列から非局所的な特徴量F2を算出する場合、データの次元を減らす任意の方法を用いてよい。
【0071】
画像抽出装置10は、病理画像IMG1の非局所的な特徴量F2と、データベース50に記憶された参照画像IMG2の非局所的な特徴量との類似度を算出し、類似度が高い1又は複数の参照画像IMG2を抽出する。1又は複数の参照画像IMG2には、TCGAの識別情報や病理の種類に関する情報が関連付けられていてよい。ユーザは、病理画像IMG1と、抽出された参照画像IMG2とを見比べて、病理画像IMG1に写された組織に関する病理の種類を診断する。
【0072】
図6は、本実施形態に係る画像抽出装置10によって抽出された参照画像IMG2の例を示す図である。同図では、クエリとする病理画像IMG1と、画像抽出装置10により抽出された第1参照画像IMG2a及び第2参照画像IMG2bを示している。
【0073】
ユーザ端末20は、クエリとする病理画像IMG1の選択を受け付け、病理画像IMG1及び「Search」と記載された検索ボタンB1を表示部に表示する。ユーザにより検索ボタンB1がタップされると、ユーザ端末20から画像抽出装置10に病理画像IMG1が送信され、画像抽出装置10は、データベース50から類似の参照画像を抽出する。
【0074】
第1参照画像IMG2a及び第2参照画像IMG2bは、病理画像IMG1をクエリとした場合に、画像抽出装置10により抽出された参照画像の例である。第1参照画像IMG2aの下部には、「Thyroid_carcinoma」(甲状腺癌腫)と記載された病理の種類T1aと、「Similarity: 0.875」と記載された類似度T2aと、「TCGA-EM-A3AJ-01Z-00-DX1」と記載されたTCGAの識別情報T3aとが表示されている。また、第2参照画像IMG2bの下部には、「Thyroid_carcinoma」(甲状腺癌腫)と記載された病理の種類T1bと、「Similarity: 0.872」と記載された類似度T2bと、「TCGA-FY-A2QD-01Z-00-DX1」と記載されたTCGAの識別情報T3bとが表示されている。これらの情報は、画像抽出装置10の表示部10fに表示されてもよいし、ユーザ端末20の表示部に表示されてもよい。
【0075】
このように、病理画像IMG1をクエリとして、データベース50から適切な参照画像IMG2を抽出することができる。また、抽出された1又は複数の参照画像IMG2に関する情報を確認することができ、クエリとした病理画像IMG1との関連性を容易に評価することができる。
【0076】
図7は、本実施形態に係る画像抽出装置10によって実行される抽出処理のフローチャートである。はじめに、画像抽出装置10は、ユーザ端末20で撮影した病理画像を取得する(S10)。
【0077】
次に、画像抽出装置10は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aによって、病理画像の局所的な特徴量を算出し(S11)、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する(S12)。
【0078】
その後、画像抽出装置10は、非局所的な特徴量と、データベース50に記憶された複数の参照画像の特徴量との間の類似度を算出し(S13)、類似度に基づいて、1又は複数の参照画像を抽出する(S14)。
【0079】
最後に、画像抽出装置10は、ユーザ端末20の表示部及び画像抽出装置10の表示部10fの少なくともいずれかに、抽出された1又は複数の参照画像、識別情報、病理の種類及び類似度を表示する(S15)。
【0080】
図8は、本実施形態に係る画像抽出装置10による遺伝子変異の判定の根拠となった病理画像の領域の例を示す図である。同図では、判定モデル12bによって、細胞に所定の遺伝子変異が生じていると判定された病理画像IMG3と、判定の根拠となった病理画像の領域をヒートマップで示した画像IMG3aとを示している。なお、病理画像IMG3は、乳癌の病理画像であり、本例では、p53遺伝子に変異が生じている。
【0081】
例えば、病理画像IMG3の領域Rには分裂した核が写っており、画像IMG3aの領域Raによれば、判定モデル12bは、分裂した核を根拠として、細胞に所定の遺伝子変異が生じていると判定していることが読み取れる。もっとも、判定モデル12bが着目しているポイント全てについて簡単な解釈が可能であるとは限らず、解釈が困難な場合もある。
【0082】
図8では、細胞に所定の遺伝子変異が生じている例を示したが、同様に、判定モデル12bによって、細胞に所定の遺伝子変異が生じていないと判定された病理画像について、判定の根拠となった病理画像の領域をヒートマップで示すことができる。
【0083】
図9は、本実施形態に係る画像抽出装置10によって実行される遺伝子変異の有無を判定する処理のフローチャートである。はじめに、画像抽出装置10は。ユーザ端末20で撮影した病理画像を取得する(S20)。
【0084】
次に、画像抽出装置10は、学習済みの畳み込みニューラルネットワーク12aによって、病理画像の局所的な特徴量を算出し(S21)、局所的な特徴量の相関に基づいて、非局所的な特徴量を算出する(S22)。
【0085】
その後、画像抽出装置10は、判定モデル12bによって、非局所的な特徴量に基づいて、細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する(S23)。
【0086】
画像抽出装置10は、所定の遺伝子変異が生じていると判定された場合(S24:YES)、判定の根拠となった病理画像の領域を算出し、表示する(S25)。
【0087】
図10は、本実施形態に係る画像抽出装置10によって実行される判定モデル生成処理のフローチャートである。画像抽出装置10は、所定の遺伝子変異が生じている細胞が写された所定の病理の第1画像と、所定の遺伝子変異が生じていない細胞が写された所定の病理の第2画像とを学習データとして収集する(S30)。
【0088】
そして、画像抽出装置10は、判定モデル12bによって、学習データに含まれる画像の非局所的特徴量に基づいて、病理画像に写された細胞に所定の遺伝子変異が生じているか否かを判定する(S31)。画像抽出装置10は、所定の損失関数に基づいて、判定モデル12bのパラメータを更新する。画像抽出装置10は、例えば、交差エントロピーを損失関数として、判定モデル12bを構成するニューラルネットワークのパラメータを、誤差逆伝播法によって更新してよい。
【0089】
学習終了条件を満たさない場合(S33:NO)、画像抽出装置10は、処理S31及びS32を再び実行する。ここで、学習終了条件は、損失関数の値が所定値以下となることであったり、処理S31及びS32の実行回数が所定回数以上となることであったりしてよい。
【0090】
一方、学習終了条件を満たす場合(S33:YES)、画像抽出装置10は、学習済みの判定モデル12bを記憶部12に記憶し(S34)、判定モデル生成処理を終了する。
【0091】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…画像抽出装置、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…取得部、12…記憶部、12a…CNN、12b…判定モデル、13…第1算出部、14…第2算出部、15…第3算出部、16…抽出部、17…判定部、18…生成部、20…ユーザ端末、30…顕微鏡、50…データベース、100…画像抽出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10