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特許7385392発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品の製造方法
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  • 特許-発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 8/04 20060101AFI20231115BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20231115BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20231115BHJP
【FI】
A21D8/04
A21D6/00
A21D13/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019139405
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021019555
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】田中 潤平
(72)【発明者】
【氏名】冨石 雄也
(72)【発明者】
【氏名】堀士 忠則
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-086976(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010548(WO,A1)
【文献】特開平08-009872(JP,A)
【文献】特開平06-038665(JP,A)
【文献】特開2019-024336(JP,A)
【文献】特開昭63-188388(JP,A)
【文献】特開2002-238443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストラン、酵母、及び麹を含有することを特徴とする発酵種。
【請求項2】
α化穀粉をさらに含有する、請求項1に記載の発酵種。
【請求項3】
前記麹が米麹である、請求項1または2に記載の発酵種。
【請求項4】
デキストランの含有量が0.1質量%以上である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項5】
デキストラン生成能を有する乳酸菌を含有し、前記デキストランは前記乳酸菌由来である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項6】
液状または流動状の液種である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項7】
酢酸濃度が1000ppm以上である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項8】
乳酸濃度が400ppm以上である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項9】
大型製パンラインのベーカリー製品用の発酵種である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の発酵種。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の発酵種を用いた、ベーカリー製品生地。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の発酵種を用いる、ベーカリー製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー製品の製造に用いる発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベーカリー製品の風味や食感を向上させるために、発酵種を用いてベーカリー製品を製造する方法が知られている。代表的な発酵種として、「サワー種」、「ホップ種」、「酒種」、「パネトーネ種」等が挙げられ、ベーカリー製品に風味や食感面で特徴を付与する目的で、リテールベーカリーを中心に、これらの発酵種が製造され、用いられている。また、特許文献1では、発芽玄米粉、酵母、乳酸菌、麹及び米粉を含有する製パン材を用いて、パンを製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-238443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、ベーカリー製品の製造工程において使用する発酵種を独自に製造する場合、手間や時間がかかることに加えて、風味が豊かで、かつ、しっとりとした食感のベーカリー製品を製造できる高品質の発酵種を安定して製造すること、特に、仕込み量の多い大型製パンラインに供給可能な製造規模で高品質の発酵種を製造することは困難であった。そのため、大型製パンラインであっても、風味が豊かで、かつ、しっとりとした食感のベーカリー製品を製造することができる高品質の発酵種を提供することが望まれていた。
【0005】
本発明は、風味が豊かで、かつ、しっとりとした食感のベーカリー製品を、特に大型製パンラインに供給可能な製造規模で製造することができる発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)~(9)の発酵種に関する。また、本発明は、以下の(10)に記載のベーカリー製品生地、(11)に記載のベーカリー製品の製造方法に関する。
(1)デキストラン、酵母、及び麹を含有することを特徴とする発酵種。
(2)α化穀粉をさらに含有する、上記(1)に記載の発酵種。
(3)前記麹が米麹である、上記(1)または(2)に記載の発酵種。
(4)デキストランの含有量が0.1質量%以上である、上記(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の発酵種。
(5)デキストラン生成能を有する乳酸菌を含有し、前記デキストランは前記乳酸菌由来である、上記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の発酵種。
(6)液状または流動状の液種である、上記(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の発酵種。
(7)酢酸濃度が1000ppm以上である、上記(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の発酵種。
(8)乳酸濃度が400ppm以上である、上記(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の発酵種。
(9)大型製パンラインのベーカリー製品用の発酵種である、上記(1)ないし(8)のいずれか一項に記載の発酵種。
(10)上記(1)ないし(9)のいずれか一項に記載の発酵種を用いた、ベーカリー製品生地。
(11)上記(1)ないし(9)のいずれか一項に記載の発酵種を用いる、ベーカリー製品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、風味が豊かで、かつ、しっとりとした食感のベーカリー製品を、特に大型製パンラインに供給可能な製造規模で製造することができる発酵種、及びそれを用いたベーカリー製品生地、及びベーカリー製品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る発酵種の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発酵種とは、パンの主原料である澱粉質、とくに穀粉(好ましくは小麦粉)を発酵の基質として使用した発酵製品であって、原材料の一つとして添加した菌類、あるいは原材料に付着又は環境中に存在している菌類を選択的に発酵させ、培地中に菌類が生存している状態のものをいう。発酵種は、製パン時にイーストの替わりに使用してパンの発酵を行う以外にも、パンに特徴的な風味や呈味を付与する目的で使用される。発酵種は、ライ麦粉、小麦粉、デュラム小麦粉、米粉などの穀粉、あるいはぶどう、リンゴなどの果実を主な原料とし、酵母や乳酸菌などの発酵微生物により発酵させたものが知られており、「ルヴァン種」、「ポーリッシュ種」または「サワー種」あるいは「果実種」と呼ばれるものや、米麹を使用する「酒種」、ホップを含む「ホップ種(ホップス種)」などが広く利用されている。なお、本発明において発酵種とは、狭義の発酵種を意味し、いわゆる広義の発酵種を意味する場合に含まれる「中種」などとは異なる。すなわち、いわゆる「中種」は、最終ベーカリー製品の原料の一部が用いられ、製造された「種」の全量が次工程に供されるのに対して、本発明の発酵種は、原料の一部として別途準備される「種」であり、ベーカリー製品の製造に際しては「種」の一部が原料として用いられる点で異なる。
【0010】
本実施形態に係る発酵種は、デキストラン、酵母、及び麹を含有することを特徴とする。詳細は後述するが、本実施形態に係る発酵種では、デキストラン及び麹を含有することで、しっとりとした食感をベーカリー製品に付与することができるとともに、酵母及び麹を含有することで、風味が豊かなベーカリー製品を提供することができる。特に、大型製パンラインにおいては、発酵種の仕込み量が多く、また、職人でなくても比較的容易に発酵種を製造できることが望まれるところ、後述するように、本実施形態に係る発酵種では、しっとりとした食感を有し、かつ、風味が豊かなベーカリー製品を製造することができる発酵種を、比較的大規模でも安定して製造することができる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る発酵種の状態を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態に係る発酵種は、流動性のある液状の液種となっている。このように発酵種を液種とすることで、ドウ状の発酵種と比べて、発酵種が取り分け易くなり、計量を正確かつ簡便に行うことができる。また、液種とすることで、発酵種を製造する際の温度調整も容易となる。なお、本実施形態では、発酵種を液種とするときに、発酵種における水分含有量が、40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0012】
本実施形態に係る発酵種は、小麦粉、ライ麦粉、デュラム小麦粉、米粉等の穀粉を主原料とするが、ポテト、リンゴ、ブドウ、ホップなどの原料も含むこともできる。
【0013】
また、本実施形態に係る発酵種は、デキストランを含有する。発酵種に含有されるデキストランは、市販のデキストランを添加したものでもよいし、デキストラン生成能を有する乳酸菌(以下、単にデキストラン生成乳酸菌ともいう)を発酵種に含有させることで当該デキストラン生成乳酸菌により生成された乳酸菌由来のデキストランであってもよい。また、デキストラン生成乳酸菌を含有させることで当該デキストラン生成乳酸菌由来のデキストランを含有させるとともに、市販のデキストランを添加してもよい。
【0014】
発酵種に含有されるデキストラン生成乳酸菌は、特に限定されず、たとえばLeuconostoc mesenteroidesやLeuconostoc dextranicumが挙げられる。これらデキストラン生成乳酸菌は、発酵種に含有されるショ糖から、デキストランを生成することができる。そのため、発酵種がデキストラン生成乳酸菌を含む場合には、発酵種には、デキストラン生成乳酸菌がデキストランを生成するためのショ糖を含有することが好ましい。
【0015】
また、本実施形態に係る発酵種において、デキストランの含有量は、特に限定されないが、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。デキストランの含有量を0.1質量%以上とすることで、この発酵種を用いてベーカリー製品を製造した場合に、ベーカリー製品にしっとりとした食感を付与することができる。なお、市販のデキストランを用いて本実施形態に係る発酵種を製造する場合には、発酵種のデキストランの含有量が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上となるように市販のデキストランを添加すればよい。また、デキストラン生成乳酸菌を用いて本実施形態に係る発酵種を製造する場合には、デキストラン生成乳酸菌由来のデキストランの含有量が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0%以上となる条件で発酵をさせればよく、デキストランの含有量を測定して確認することで発酵状態を管理することができる。デキストランの含有量は、公知のデキストランの定量方法(たとえば、公知のデキストラン簡易測定キット(たとえばLow Molecular Weight Dextran ELISA コスモ・バイオ株式会社))を使用して測定することができる。また、市販のデキストランとデキストラン生成乳酸菌由来のデキストランを併存させて、発酵種のデキストランの含有量が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上となるように製造してもよい。
【0016】
なお、本実施形態に係る発酵種では、デキストラン生成乳酸菌の他に、デキストラン生成能を有さない乳酸菌も含有することができる。たとえば、ベーカリー製品の風味を調整するために、酢酸や乳酸を生成しやすい乳酸菌であるLactobacillus plantarumやLactobacillus sanfranciscensisなどの乳酸菌を含有する構成とすることができる。
【0017】
本実施形態に係る発酵種は酵母を含有する。酵母は、糖分を消化し、アルコール類や有機酸などの風味成分を生成する。酵母は、ベーカリー製品の製造に用いられる酵母であれば特に制限はなく、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストなどの工業的に生産されている市販のパン酵母でも、また発酵種の発酵に適している限り、いわゆる果物や穀物等から自家採捕した酵母でも良い。このような酵母として、パン酵母として用いられるSaccharomyces cerevisiaeや、発酵種に用いられるSaccharomyces exiguousなどが挙げられる。
【0018】
さらに、本実施形態に係る発酵種は、麹を含有する。本実施形態に係る発酵種では、麹を含有することで、本実施形態に係る発酵種を用いてベーカリー製品を製造した場合に、麹由来の豊かな風味を、ベーカリー製品に付与することができる。また、麹は、単独で用いた場合には明確な効果を確認できないが、デキストラン存在下で用いることで、ベーカリー製品のしっとりとした食感をより高める効果を発揮する。麹としては豆を原料とした豆麹や、麦を原料とした麦麹、米を原料とした米麹などがあり、米麹を用いて本実施形態に係る発酵種を製造することが特に好ましい。米麹の麹菌は、特に限定されないが、酒種に用いられるAspergillus oryzaeなどを用いることができる。
【0019】
また、本実施形態に係る発酵種は、酵母や麹による風味の醸成を促すため、主原料となる穀粉以外にα化された穀粉を含むことが好ましい。α化された穀粉は、小麦、ライ麦、ライ小麦、米、大麦、とうもろこし、ゴマ、豆類、稗、粟、黍、ソバ、キヌア、アマランサスなどを原料とするものとすることができる。特に、α化小麦粉、または、α化米粉を用いることが好適である。穀粉のα化処理の方法は、穀粉中の澱粉をα化させることができる方法であれば特に限定されず、一例として、穀粉を加熱処理する方法が挙げられる。また、穀粉のα化度も、特に限定されないが、50%以上であることが好ましい。
【0020】
次に、本実施形態に係る発酵種の製造方法の一例について説明する。なお、下記の製造方法1~4は一例であり、これに限定されるものではない。
【0021】
(製造方法1)
発酵タンクに、穀粉、麹、デキストラン、酵母、水を含む原料(さらに酵母が資化できる糖類及び/又はα化穀粉を含むことが好ましい)を所定の配合で一度に混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは20~35℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは12~48時間)発酵させることで、本実施形態に係る発酵種を製造することができる。
【0022】
(製造方法2)
種起こしを行った、デキストラン生成乳酸菌を含有する元種と、穀粉、麹、酵母、水を含む原料(さらにショ糖及び/又は酵母が資化できる糖類及び/又はα化穀粉を含むことが好ましい)を所定の配合で、発酵タンクに投入して混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは22~30℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは12~24時間)発酵させる。これにより、デキストラン生成乳酸菌によりデキストランが生成され、本実施形態に係る発酵種を製造することができる。
【0023】
(製造方法3)
種起こしを行った、デキストラン生成乳酸菌を含有する元種と、穀粉、水を含む原料(さらにショ糖を含むことが好ましい)を所定の配合で、第一の発酵タンクAに投入して混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは22~30℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは12~24時間)発酵させるとともに、別の第二の発酵タンクBに、穀粉、麹、酵母、水を含む原料(さらに酵母が資化できる糖類及び/又はα化穀粉を含むことが好ましい)を投入して混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは22~30℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは6~12時間)発酵させる。第一の発酵タンクAでは、デキストラン生成乳酸菌によりデキストランが生成され、デキストランを含有する種が製造される。そして、第一の発酵タンクAで発酵させた種と、第二の発酵タンクBで発酵させた種とを併せることで、本実施形態に係る発酵種を製造することができる。
【0024】
(製造方法4)
種起こしを行った、デキストラン生成乳酸菌を含有する元種と、穀粉、水を含む原料(さらにショ糖を含むことが好ましい)を所定の配合で混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは22~30℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは12~24時間)発酵させる第1発酵工程を行う。さらに、第1発酵工程を行った種の全量に、穀粉、麹、酵母、水を含む原料(さらに酵母が資化できる糖類及び/又はα化穀粉を含むことが好ましい)を投入して混合し、所定の温度(たとえば15~40℃、好ましくは22~30℃)で所定の時間(たとえば6~48時間、好ましくは6~12時間)発酵させる第2発酵工程を行う。別々のタンクで発酵させた種を混合する製造方法3と異なり、異なる発酵条件を連続的に行う製造方法である。
【0025】
また、上述した製造方法1~4ではデキストラン生成能を有しない乳酸菌を含有させる構成とすることもできる。デキストラン生成能を有しない乳酸菌は、たとえば乳酸や酢酸を生成しやすい乳酸菌であることが好ましい。これにより、発酵種に一定量以上の酢酸や乳酸を含有させることができ、この発酵種を用いてベーカリー製品を製造した際に、ベーカリー製品に酸味を付与するとともに、ベーカリー製品の日持ちを向上(消費期限延長)できる可能性がある。また、上述の製造方法3においては、デキストラン生成能を有しない乳酸菌を、第一の発酵タンクAに加えてもよいし、第二の発酵タンクBに加えて発酵させてもよい。また第三の発酵タンクCを用いて別途デキストラン生成能を有しない乳酸菌による発酵を行った種を、第一の発酵タンクAで発酵させた種と、第二の発酵タンクBで発酵させた種とに併せることもできる。また上述の製造方法4においては、デキストラン生成能を有しない乳酸菌を、第1発酵工程で加えてもよいし、第2発酵工程で加えることもでき、また別途第1発酵工程と第2発酵工程の間にデキストラン生成能を有しない乳酸菌による発酵工程を設けてもよいし、第2発酵工程の後にデキストラン生成能を有しない乳酸菌による発酵工程を設けることもできる。
【0026】
発酵種を製造する際の発酵温度は、たとえば、発酵タンク内で発酵種が均一になるように撹拌を行った後に、発酵種の中心部付近の温度を測ることで管理することができ、必要に応じて加温、冷却等の温調管理を行う手段を用いてもよい。
【0027】
また、本実施形態に係る発酵種の製造方法では、一定時間が経過した場合に、発酵を終了する構成とする以外に、発酵種のpH、酸度、または粘度を必要に応じて測定し、一定の条件となった場合に、発酵種の発酵を終了する構成や、有機酸等の発酵生成物の生成量を終点管理の指標とする構成とすることができる。たとえばpHが所定の酸性範囲内となった場合(たとえばpH3.0~4.5)、酸度が所定の酸度となった場合(たとえば酸度6以上)、あるいは、粘度が所定の粘度(たとえば100~1000mPa・s)となった場合に、発酵を終了することができる。なお、発酵の終了方法としては、一時的に加熱することも例示できる。
【0028】
本発明の発酵種は、発酵終了後、そのまま製パン工程に供することができるが、一旦冷蔵保存(または冷凍保存)してから使用することもできる。冷蔵(または冷凍)する手段としては、発酵タンク自体を冷却して発酵タンク内の発酵種を冷却する方法、発酵種を発酵タンクとは別の容器に移して低温下に移動させることで発酵種を冷却する方法などが例示される。冷蔵保存した発酵種は、そのまま製パン工程に供することもできるが、室温付近まで温度を回復させてから用いることもできる。また冷凍保存した発酵種は、少なくとも解凍工程を経てから、製パン工程に供するが、必要に応じて解凍後室温付近まで温度を回復させてから用いることもできる。
【0029】
本実施形態に係る発酵種の製造において、発酵条件を乳酸菌及び酵母の生育に適した温度とすることで、発酵種中に酢酸や乳酸などの発酵生成物を多く含むことができ、当該発酵種を用いたベーカリー製品は、発酵種の特徴をより強く感じられる良好な風味とすることができる。このように、風味の良いベーカリー製品を製造するためには、発酵種において、酢酸は1000ppm以上が好ましく、2000ppm以上であることがより好ましく、3000ppm以上かつ20000ppm以下であることがさらに好ましい。また乳酸は400ppm以上が好ましく、1000ppm以上であることがより好ましく、1500ppm以上かつ10000ppm以下であることさらに好ましい。また酢酸及び乳酸を一定量以上含有することで、pHは酸性となり、酸度も高くなるため、製造されるベーカリー製品は、良好な風味が付与されるとともに、日持ち向上効果が付与される場合もある。なお、発酵種中の酢酸及び乳酸の含有量は、たとえば有機酸分析システム((株)島津製作所社製)を用いて測定することで、調節することができる。後述する試験の発酵種の分析例では、試験1の実施例1の発酵種では、酢酸が1400ppm、乳酸が420ppmであり、試験2の実施例7の発酵種では、酢酸が3500ppm、乳酸が1720ppmであった。
【0030】
本実施形態に係る発酵種は、従来の発酵種と異なり、大型製パンライン(たとえば、穀粉である小麦粉を、1回のミキシングで50kg以上使用するような製造設備、特に連続製造設備)に供給可能な製造規模での製造が容易であることを特徴とする。従来の発酵種は、発酵種の種類によっては、発酵の管理に職人的な技能を必要とされる場合があるなど、安定的な品質で発酵種を製造するために、発酵の管理や種継ぎ操作による影響を緩和できる比較的小規模の仕込み量で製造されている。また小規模店舗向けに、特定の発酵種の製造用に発酵条件を自動制御した設備も市販されている。このように、発酵種の製造設備の大型化、特に発酵タンクの大型化は、発酵条件、特に温度条件の制御が難しくなってくるという課題がある。本実施形態に係る発酵種は、デキストラン、酵母、及び麹を含有することで、ベーカリー製品の食感をしっとりさせ、風味を豊かにすることができるものであり、従来の発酵種に比べて、多様な製造工程により製造が可能であり、発酵管理が容易であるため、設備の大型化に適した発酵種である。また、発酵種の製造設備は、発酵種の発酵管理(たとえば、温度管理)を容易にし、かつ発酵状態を均一化させるために、発酵タンク内部に撹拌装置を備える設備であることが好ましい。さらに、温調設備を備えた発酵タンクを用いると、より厳密な温度管理を行うことができる。ここで、大型製パンラインに供給可能な製造規模での製造とは、発酵種の製造に用いられる発酵タンクの容量が、250リットル以上、好ましくは400リットル以上、より好ましくは1000リットル以上、さらに好ましくは2500リットル以上である設備により発酵管理がなされて製造されることをいう。
【実施例
【0031】
(試験1)
続いて、表1~5に基づいて、本実施形態に係る発酵種の実施例について説明する。 下記表1は、発酵種不使用(参考例1)、従来の発酵種(参考例2~4)、デキストラン、酵母、及び麹を含有する本実施形態に係る発酵種(実施例1,2)、デキストランを含有しない発酵種(比較例1)の概要、並びに各発酵種を用いて製造したパンの評価をまとめた表である。なお、実施例1,2は、デキストランとして、市販のデキストラン(Dextran40,000 和光純薬工業株式会社製)を用いた。
【0032】
表1において、「○」は酵母、麹またはデキストランを添加したことを意味し、「×」は乳酸菌、酵母、麹またはα化穀粉を添加していないことを意味する。また、デキストランの項目において「-」は製造後の発酵種においてデキストランが検出されなかったことを意味し、「+」は製造後の発酵種においてデキストランが検出されたことを意味する。なお、デキストランの検出は、Low Molecular Weight Dextran ELISA (コスモ・バイオ株式会社)を用いて行った(試験2,3の表6,8も同様)。
【表1】
【0033】
また、表2~4は、表1の発酵種の詳細を示す。具体的には、表2は参考例2~4の、表3は実施例1,2及び比較例1の発酵種の原料の配合割合(単位は質量部で表示)を示し、表4は参考例2~4の発酵種の製造条件(発酵条件)を示す。なお、参考例2~4、実施例1,2及び比較例1の発酵種は、容量5リットルのシール容器を発酵容器として用いた。また、発酵種の最大膨張時の体積が発酵容器容量の90%以下となるように調整するため、発酵開始前の発酵種の全容量が発酵容器容量の約半量となるように、表2,3に示す配合割合で各原料を添加した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0034】
参考例2の発酵種はオールインミックス製法により製造されたポーリッシュ種であり、参考例3の発酵種は種継製法により製造された酒種であり、参考例4の発酵種は種継製法により製造されたサワー種であり、表2,4に記載のとおり、従来知られた方法に準じて製造した。なお、オールインミックス製法とは、全ての原材料を一度に混合して発酵させる製法であり、種継製法とは、原材料を混合して発酵し、次回混合において、その発酵物の一部と原材料(初回混合に用いた原材料と同じものを一部又は全部)を加え混合し、発酵を行う手順を繰り返し行う製法である。また、実施例1,2の発酵種は、市販のデキストラン、麹及び酵母を含む全原料を混合して26℃で9時間発酵を行い製造した(上記製造方法1に該当)。なお、発酵種中のデキストランの添加量は、実施例1では0.1質量%とし、実施例2では0.5質量%とした。比較例1は、デキストランを添加せずに、実施例1と同様にして発酵を行い製造した。
【0035】
表5に参考例1の製パン試験の配合(単位は質量部で表示)及び工程を示す。発酵種を用いた参考例2~4、実施例1,2及び比較例1における製パン試験では、参考例1の配合に、発酵種30質量部を追加し、発酵種中の水分量に応じて、配合する水の量を減じた。また、生地の状態に合わせて、工程のミキシング条件を適宜調整した(後述する試験2,3においても同様)。
【表5】
【0036】
参考例1~4、比較例1及び実施例1,2の発酵種を用いて製造したパンは、常温で24時間保管した後に、食感(しっとりとした食感)、及び風味について官能評価を行った。官能評価は、参考例2のポーリッシュ種を用いたパンの食感及び風味の評価を基準(3点)として、5名のパネルの合議により、1~5点の5段階で点数を付けた。なお、「食感」は「しっとりとした食感」の有無(強弱)を評価し、参考例2のパンと同等である場合を「3」点とし、しっとりとした食感が非常に強い場合を「5」点、しっとりとした食感が強い場合を「4」点、しっとりとした食感がやや弱い場合を「2」点、しっとりとした食感が弱い場合を「1」点として評価した。また、「風味」は発酵による甘く香ばしい風味の強弱を評価し、参考例2のパンと同等である場合を「3」点とし、風味が非常に強い場合を「5」点、風味が強い場合を「4」点、風味がやや弱い場合を「2」点、風味が弱い場合を「1」点として評価した(試験2,3も同様)。
【0037】
表1に示すように、食感(しっとりとした食感)の官能評価は、デキストランを含まない参考例2~4及び比較例1の発酵種を用いたパンが3点であったのに対して、デキストランを含有する実施例1,2の発酵種を用いたパンでは5点と高くなった。このことから、デキストランを含有する発酵種を用いることで、しっとりとした食感をより強く感じるパンを製造できることが分かった。また、風味の官能評価は、麹及び酵母を添加しない参考例2の発酵種を用いたパンと比べて、麹及び酵母を添加した比較例1及び実施例1,2の発酵種を用いたパンでは、4点以上と高くなった。このことから、酵母及び米麹を含有する発酵種を用いることで、風味をより強く感じるパンを製造できることが分かった。なお、参考例3の発酵種では酵母を添加しておらず、また参考例4の発酵種では麹及び酵母を添加していないが、表2に示すように、参考例3,4の発酵種は、長期間発酵させる種継製法により発酵生成物が多く生産されたことで、製造されたパンの風味の官能評価が4点と高くなったと考えられる。ただし、参考例3,4の発酵種は、製造に手間と時間がかかりすぎてしまい、生産性に劣るため、特に、大型製パンラインにおいて利用することが困難である。
【0038】
(試験2)表6は、デキストラン生成乳酸菌の発酵に由来するデキストラン、酵母、及び麹を含有する本実施形態に係る発酵種(実施例3,4)及びデキストラン非生成乳酸菌(デキストラン生成能を有しない乳酸菌)、酵母、及び麹を含有する発酵種(比較例2)の概要、並びに各発酵種を用いて製造したパンの評価をまとめた表である。各記号は(試験1)と同様の意味で使用した。
【表6】
【0039】
表7に実施例3,4及び比較例2の発酵種の原料の配合割合(単位は質量部で表示)を示す。発酵種の製造は、種起こしした元種を用いて、表7に示す配合割合で発酵タンクに投入して混合し、本発酵を行った。実施例3では、小麦粉25質量部、砂糖5質量部、乳酸菌(デキストラン生成乳酸菌A)20質量部及び水150質量部を混合し、26℃で15時間発酵させることにより種起こしした元種を準備し、次いで、表7に示す配合割合で原料を発酵タンクに投入して混合し、26℃で36時間発酵を行い、発酵種を製造した(上記製造方法2に該当)。実施例4は、乳酸菌Aとは異なるデキストランを生成する乳酸菌Bを用いて、実施例3と同様にして発酵種を製造した。比較例2は、デキストラン生成乳酸菌Aの代わりに、デキストランを生成しない乳酸菌Cを用いて、実施例3と同様にして発酵種を製造した。なお、試験2における発酵種の本発酵には、容量3600リットルの発酵タンク(撹拌装置付き)を用いた。また、発酵種の最大膨張時の体積が発酵タンク容量の90%以下となるように調整するため、発酵開始前の発酵種の全容量がタンク容量の約半量となるように、表7に示す配合割合で各原料を添加した。
【表7】
【0040】
上記試験1と同様に、実施例3,4及び比較例2の発酵種を用いてパンを製造し、試験1と同様の手法、基準により、パンの官能評価(しっとりとした食感、風味)を行った。なお、試験2においては、パンの製造は、大型の連続製造設備を用いて、小麦粉2袋(50kg)仕込みにて実施した。
【0041】
デキストランの添加に代えて、デキストラン生成乳酸菌を用いた発酵により発酵種にデキストランを含有させた場合(実施例3,4)でも、当該発酵種を用いたパンは、しっとりとした食感を強く感じる(4点)との評価であった。これに対して、デキストランを生成しない乳酸菌を用いた比較例2の発酵種では、デキストランを含有しない(デキストランが生成されていない)ため、当該発酵種を用いたパンは、しっとりとした食感がやや弱い(2点)と劣る評価となった。
【0042】
(試験3)
表8は、デキストラン生成乳酸菌の発酵に由来するデキストラン、酵母、及び麹を含有する本実施形態に係る発酵種(実施例5~9)の概要、並びに各発酵種を用いて製造したパンの評価をまとめた表である。各記号は(試験1)と同様の意味で使用した。
【表8】
【0043】
表9に実施例5の、表10に実施例6~9及び比較例3,4の発酵種の原料の配合割合(単位は質量部で表示)を示す。なお、配合中の元種(乳酸菌A)は、上記試験2の実施例3と同一の条件にて種起こしした元種を使用したことを示す。
【表9】
【表10】
【0044】
実施例5は、第一の発酵タンクAに表8に示す「種A」の配合割合で原料を投入して混合し、26℃で15時間発酵を行い、デキストラン生成乳酸菌Aの発酵に由来するデキストランを含有する発酵種Aを製造し、第二の発酵タンクBに表9に示す「種B」の配合割合で原料を投入して混合し、26℃で9時間発酵を行い、酵母と麹を含有する発酵種Bを製造した。次いで、発酵完了後の発酵種Aと発酵種Bとを、1:1の割合で混合して、本実施形態に係る発酵種を製造した(上記製造方法3に該当)。なお、第一の発酵タンクA、第二の発酵タンクBは、容量3600リットルの発酵タンク(撹拌装置付き)を用い、発酵種の最大膨張時の体積が発酵タンク容量の90%以下となるように調整するため、発酵開始前の発酵種の全容量がタンク容量の約半量となるように、表9に示す配合割合で各原料を添加した。
【0045】
実施例6は、表10に示す「1段目」の配合割合で原料を発酵タンクに投入して混合し、26℃で15時間発酵(1段階目の発酵)を行い、次いで、表10に示す「2段目」の配合割合で原料を発酵タンクに追加投入して混合し、26℃で9時間発酵(2段階目の発酵)を行い、発酵種を製造した(上記製造方法4に該当)。実施例7は、「2段目」の原料のうち、α化小麦粉をα化米粉に変えた以外は実施例6と同様にして、発酵種を製造した。実施例8は、「2段目」の原料に、α化穀粉(α化小麦粉)を用いずに、さらに2段階目の発酵条件を26℃で24時間とした以外は実施例6と同様にして、発酵種を製造した。比較例3は、「2段目」の原料に、麹(米麹)を用いず、また比較例4は、「2段目」の原料に、酵母を用いずに、実施例6と同様にして、発酵種を製造した。また、実施例9では、実施例6と同様の方法にて発酵種を製造した。
【0046】
実施例6~9及び比較例3,4における発酵種の発酵には、容量3600リットルの発酵タンク(撹拌装置付き)を用い、各原料の添加量の合計は、2段階目の発酵種の最大膨張時の体積が発酵タンク容量の90%以下となるように調整した。
【0047】
そして、上記試験1と同様に、実施例5~9及び比較例3,4の発酵種を用いてパンを製造し、試験1と同様の手法、基準により、パンの官能評価(しっとりとした食感、風味)を行った。また実施例9は、実施例6の発酵種を用いて、パン製造時の発酵種の配合量を20質量部とした以外は、試験1と同様の手法、基準により、パンの官能評価(しっとりとした食感、風味)を行った。なお、試験3においては、パンの製造は、大型の連続製造設備を用いて、小麦粉2袋(50kg)仕込みにて実施した。
【0048】
デキストラン生成乳酸菌を含有する発酵種と、酵母、麹を含有する発酵種とを別のタンクで製造して混合した、実施例5の発酵種を用いたパンは、しっとりとした食感、風味の評価はともに良好であった。これは、デキストラン生成乳酸菌の発酵を別タンクにより行ったことで、デキストランの生成に適した環境で発酵が行われたことによるものと考えられる。また、初めにデキストラン生成乳酸菌の発酵を行った後に、酵母と麹を追加して発酵を行った実施例6~9の発酵種を用いたパンにおいても、しっとりとした食感、風味の評価はともに良好であった。また、パン製造時の、発酵種の配合量を20質量部とした実施例9のパンにおいても、しっとりとした食感、風味の評価はともに良好であった。一方、比較例3,4では、デキストラン生成乳酸菌の発酵に由来するデキストランを含有することで、パンにしっとりとした食感を付与することはできたが、酵母または麹を添加していないため、パンの風味評価は劣る結果(2点:やや弱い)となってしまった。さらに、実施例6,7と実施例8との対比から、原料としてα化穀粉を用いることで、発酵種の発酵に要する時間を短くする(発酵を促進する)ことができると推察される。
【0049】
以上のことから、実施例1~9に示すように、デキストランと、酵母及び麹とを含有する発酵種は、しっとりとした食感と豊かな風味をベーカリー製品に付与することができることがわかった。また、発酵種に、デキストラン生成乳酸菌と酵母及び麹とを含有させる場合には、実施例3~4のように、デキストラン生成乳酸菌、酵母、麹を一度に混ぜるオールインミックス製法(上記製造方法2に該当)とするよりも、実施例5のようにデキストラン生成乳酸菌と、酵母及び麹とを別々に発酵させる(上記製造方法3に該当)か、実施例6~9のようにデキストラン生成乳酸菌の発酵の後に、酵母及び麹を発酵させる2段階の発酵を行って製造(上記製造方法4に該当)した発酵種が好ましい。
【0050】
(試験4)
試験4では、上述した参考例1,2及び実施例6で製造したパンについて、焼成後1日目の水分含量(%)と、焼成2日目の水分含量(%)とを測定するとともに、焼成後1日目と焼成2日目との水分含量の変化率(%)を算出した。表11に結果を示す。なお、水分含量の測定方法は、特に限定されないが、本試験4では、加熱乾燥法により水分含量を測定した。
【表11】
【0051】
表11に示すように、焼成後1日目の水分含量(%)は、参考例1,2と比べて、実施例6は高くなった。この点からも、実施例6に係るパンでは、参考例1,2に係るパンと比べて、しっとりとした食感が得られることが分かる。また、参考例1,2のパンに比べて、実施例6のパンは水分含量の変化率が低く、焼成後2日目の水分含量(%)が、参考例1,2のパンに対して大幅に高くなった。このことから、実施例6に係るパンでは、参考例1,2のパンと比べて、しっとりとした食感が長続きすることも分かる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る発酵種は、デキストラン、酵母、及び麹を含有するため、本実施形態に係る発酵種を用いてパンを製造した場合、パンにしっとりとした食感と豊かな風味を付与することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態例の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
図1