(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】マルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法及びマルチ荷電粒子ビーム検査装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20231115BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20231115BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20231115BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2020025559
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩一
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009882(JP,A)
【文献】特開2014-026834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0241606(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/244
H01J 37/28
H01J 37/22
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ試料面から放出される2次荷電粒子ビームを用いて、前記それぞれの2次荷電粒子ビームを含むマルチ2次荷電粒子ビームを検出するためのマルチ検出器が有する複数の検出エレメントのうちの2以上の検出エレメントの座標を探索する工程と、
第1の回転角度で前記マルチ検出器を回転させる工程と、
前記試料面から放出されるそれぞれの2次荷電粒子ビームを用いて、回転後の前記2以上の検出エレメントの座標を探索する工程と、
前記マルチ検出器を回転させた前記第1の回転角度と、探索された回転前後の前記2以上の検出エレメントの各座標を用いて、前記マルチ検出器の回転中心座標を演算する工程と、
探索された前記2以上の検出エレメントの各座標の少なくとも1つと前記マルチ検出器の回転中心座標とを用いて、前記複数の検出エレメントを前記マルチ2次荷電粒子ビームに位置合わせするための第2の回転角度を算出する工程と、
前記第2の回転角度で前記マルチ検出器を回転させる工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法。
【請求項2】
前記複数の検出エレメントに対する前記回転中心座標の位置関係と同様の位置関係になる前記マルチ2次荷電粒子ビームに対する対応座標を演算する工程と、
前記回転中心座標を前記マルチ2次荷電粒子ビームに対する前記対応座標にシフトするためのシフト量を演算する工程と、
前記シフト量を用いて前記マルチ検出器をシフトする工程と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法。
【請求項3】
探索された前記2以上の検出エレメントの各座標を用いて、前記複数の検出エレメントの残りの検出エレメントの座標を演算する工程と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法。
【請求項4】
探索される前記2以上の検出エレメントとして、前記複数の検出エレメントのうち、中心部の検出エレメントとは異なる3つの検出エレメントを選択する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法。
【請求項5】
前記2以上の検出エレメントとして、直線上に並ばない3つの検出エレメントが用いられ、
前記3つの検出エレメントのうち、1つの検出エレメントの座標から前記回転中心座標へのベクトルを前記1つの検出エレメントの座標から残りの2つの検出エレメントの座標への2つのベクトルに分解する演算を行う工程をさらに備え、
前記対応座標は、分解された前記2つのベクトルを前記マルチ2次荷電粒子ビームのうちの3つの2次荷電粒子ビームの座標に適用した場合における前記2つのベクトルの合成ベクトルの座標として演算されることを特徴とする請求項
2記載のマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法。
【請求項6】
試料を載置するステージと、
前記試料をマルチ1次電子ビームで照射する1次電子光学系と、
複数の検出エレメントを有し、前記試料を前記マルチ1次電子ビームで照射することによって放出されたマルチ2次
荷電粒子ビームを検出するためのマルチ検出器と、
前記マルチ検出器を回転させる回転機構と、
それぞれ試料面から放出される2次荷電粒子ビームを用いて、第1の回転角度で前記マルチ検出器を回転させる回転前後の前記複数の検出エレメントのうちの2以上の検出エレメントの座標を探索する探索部と、
前記マルチ検出器を回転させた前記第1の回転角度と、探索された回転前後の前記2以上の検出エレメントの各座標を用いて、前記マルチ検出器の回転中心座標を演算する回転中心演算部と、
探索された前記2以上の検出エレメントの各座標の少なくとも1つと前記マルチ検出器の回転中心座標とを用いて、前記複数の検出エレメントを前記マルチ2次荷電粒子ビームに位置合わせするための第2の回転角度を算出する回転角度算出部と、
を備え、
前記回転機構は、前記第2の回転角度で前記マルチ検出器を回転させることを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法及びマルチ荷電粒子ビーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査手法としては、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
半導体ウェハやフォトマスクの欠陥検査では、より小さいサイズの欠陥を検出することが求められている。そのため、近年の検査装置では、上述したパターン検査装置には、レーザ光を検査対象基板に照射して、その透過像或いは反射像を撮像する装置の他、画像の画素分解能を上げるために、レーザ光よりも波長の短い電子ビームで検査対象基板上を走査(スキャン)して、電子ビームの照射に伴い検査対象基板から放出される2次電子を検出して、パターン像を取得する検査装置の開発も進んでいる。電子ビームを用いた検査装置では、さらに、マルチビームを用いた装置の開発も進んでいる。
【0005】
マルチビーム検査装置において、マルチビームの本数と2次電子検出器のエレメント数が同じ系では、両者の位置合わせが重要となる。特に、新規に或いは交換として、2次電子検出器を装置に搭載する場合にマルチ2次電子ビームとの位置合わせが重要となる。例えば、2次光学系レンズの最終段のレンズと2次電子検出器との間に開口板を配置して、開口板を2次電子ビームの位置調整に用いるといった手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、マルチ荷電粒子ビームと2次電子検出器との位置合わせが可能な方法およびかかる方法を実現可能な装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法は、
それぞれ試料面から放出される2次荷電粒子ビームを用いて、それぞれの2次荷電粒子ビームを含むマルチ2次荷電粒子ビームを検出するためのマルチ検出器が有する複数の検出エレメントのうちの2以上の検出エレメントの座標を探索する工程と、
第1の回転角度でマルチ検出器を回転させる工程と、
試料面から放出されるそれぞれの2次荷電粒子ビームを用いて、回転後の2以上の検出エレメントの座標を探索する工程と、
マルチ検出器を回転させた第1の回転角度と、探索された回転前後の2以上の検出エレメントの各座標を用いて、マルチ検出器の回転中心座標を演算する工程と、
探索された2以上の検出エレメントの各座標の少なくとも1つとマルチ検出器の回転中心座標とを用いて、複数の検出エレメントをマルチ2次荷電粒子ビームに位置合わせするための第2の回転角度を算出する工程と、
第2の回転角度でマルチ検出器を回転させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、複数の検出エレメントに対する回転中心座標の位置関係と同様の位置関係になるマルチ2次荷電粒子ビームに対する対応座標を演算する工程と、
回転中心座標をマルチ2次荷電粒子ビームに対する対応座標にシフトするためのシフト量を演算する工程と、
シフト量を用いてマルチ検出器をシフトする工程と、
をさらに備えると好適である。
【0010】
また、探索された2以上の検出エレメントの各座標を用いて、複数の検出エレメントの残りの検出エレメントの座標を演算する工程と、
をさらに備えると好適である。
【0011】
また、探索される2以上の検出エレメントとして、複数の検出エレメントのうち、中心部の検出エレメントとは異なる3つの検出エレメントを選択する工程をさらに備えると好適である。
【0012】
また、2以上の検出エレメントとして、直線上に並ばない3つの検出エレメントが用いられ、
3つの検出エレメントのうち、1つの検出エレメントの座標から回転中心座標へのベクトルを1つの検出エレメントの座標から残りの2つの検出エレメントの座標への2つのベクトルに分解する演算を行う工程をさらに備え、
対応座標は、分解された2つのベクトルをマルチ2次荷電粒子ビームのうちの3つの2次荷電粒子ビームの座標に適用した場合における2つのベクトルの合成ベクトルの座標として演算されると好適である。
【0013】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム検査装置は、
試料を載置するステージと、
試料をマルチ1次電子ビームで照射する1次電子光学系と、
複数の検出エレメントを有し、試料をマルチ1次電子ビームで照射することによって放出されたマルチ2次荷電粒子ビームを検出するためのマルチ検出器と、
マルチ検出器を回転させる回転機構と、
それぞれ試料面から放出される2次荷電粒子ビームを用いて、第1の回転角度でマルチ検出器を回転させる回転前後の複数の検出エレメントのうちの2以上の検出エレメントの座標を探索する探索部と、
マルチ検出器を回転させた第1の回転角度と、探索された回転前後の2以上の検出エレメントの各座標を用いて、マルチ検出器の回転中心座標を演算する回転中心演算部と、
探索された2以上の検出エレメントの各座標の少なくとも1つとマルチ検出器の回転中心座標とを用いて、複数の検出エレメントをマルチ2次荷電粒子ビームに位置合わせするための第2の回転角度を算出する回転角度算出部と、
を備え、
回転機構は、第2の回転角度でマルチ検出器を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、マルチ荷電粒子ビームと2次電子検出器との効率的な位置合わせが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1における位置合わせ前の段階でのマルチ2次電子ビームとマルチ検出器の複数の検出エレメントとの位置関係の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図6】実施の形態1における検出エレメント座標の探索の仕方を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の構成を示す図である。
【
図8】実施の形態1における2次電子ビームを走査する仕方の一例を説明するための図である。
【
図9A】実施の形態1における2次電子ビームの走査範囲の一例を示す図である。
【
図9B】D11に近いビームを特定した後にD11の位置を正確に把握するための探索方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの一方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。
【
図11】実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの他方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。
【
図12】実施の形態1における回転前後のマルチ2次電子ビームとマルチ検出器の複数の検出エレメントとの位置関係の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの一方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。
【
図14】実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの他方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。
【
図15】実施の形態1における回転前後のマルチ検出器の複数の検出エレメントの座標の一例を示す図である。
【
図16】実施の形態1における回転中心座標を算出するための演算式を示す図である。
【
図17】実施の形態1における検出エレメント座標のベクトル演算の仕方を説明するための図である。
【
図18】実施の形態1におけるベクトル係数を算出するための演算式を示す図である。
【
図19】実施の形態1における2次電子ビーム座標のベクトル演算の仕方を説明するための図である。
【
図20】実施の形態1における複数の検出エレメントの各座標の算出手法を説明するための図である。
【
図21】実施の形態1における位置合わせ角度を算出するための演算式を示す図である。
【
図22】実施の形態1における複数の検出エレメントをシフトする様子を説明するための図である。
【
図23】実施の形態1における複数の検出エレメントを回転する様子を説明するための図である。
【
図24】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図25】実施の形態1における検査処理を説明するための図である。
【
図26】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いて説明する。但し、これに限るものではない。例えば、イオンビーム等であっても構わない。また、マルチビーム画像取得装置の一例として、マルチビームを用いた検査装置について説明する。但し、これに限るものではない。マルチビームに対応する2次電子検出器を用いて画像を取得する装置であればよい。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板232、駆動機構234、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、アライメントコイル225,226、検出器ステージ229及びマルチ検出器222が配置されている。電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、ビーム選択アパーチャ基板232、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209によって1次電子光学系151を構成する。また、電磁レンズ207、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、及びアライメントコイル225,226によって2次電子光学系152を構成する。マルチ検出器222は、2次座標系のx,y方向及び回転(θ)方向に移動可能な検出器ステージ229上に配置される。検出器ステージ229は、回転ステージ227、及び2次系のx,yステージ228を有している。
【0018】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。
【0019】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0020】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、位置合わせ回路134、ビーム選択アパーチャ制御回路136、磁気ディスク装置等の記憶装置109、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0021】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108及び位置合わせ回路134に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0022】
検出器ステージ229は、検出器ステージ制御回路130の制御の下に駆動機構132により駆動される。駆動機構132では、例えば、ステージ座標系におけるx方向、y方向、θ方向に駆動する3軸(x-y-θ)モータの様な駆動系が構成され、x、y方向にx,yステージ228が、θ方法に回転ステージ227が移動可能となっている。
図1の例では、回転ステージ227上にx,yステージ228が配置される場合を示している。これらの、図示しないxモータ、yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。検出器ステージ229は、xyθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。ステージ座標系は、例えば、マルチ2次電子ビーム300の光軸に直交する面に対して、2次座標系のx方向、y方向、θ方向が設定される。
【0023】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ224、アライメントコイル226,227、及びビームセパレーター214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。
【0024】
ビーム選択アパーチャ基板232は、駆動機構234により駆動され、駆動機構234は、ビーム選択アパーチャ制御回路136により制御される。
【0025】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0026】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0027】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。次に、2次電子画像を取得する場合における画像取得機構150の動作について説明する。1次電子光学系151は、基板101をマルチ1次電子ビーム20で照射する。具体的には、以下のように動作する。
【0028】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0029】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置:I.I.P.)に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。
【0030】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカスする。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によってマルチ1次電子ビーム20全体が遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、
図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、画像取得用のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0031】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0032】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
【0033】
ここで、ビームセパレーター214はマルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられる。
【0034】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を増幅発生させ、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。各1次電子ビームは、基板101上における自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域内に照射され、当該サブ照射領域内を走査(スキャン動作)する。
【0035】
2次電子画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された各1次電子ビームの個別照射領域(サブ照射領域)内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた2次電子画像データ(2次電子画像1のデータ)は、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に出力される。
【0036】
各1次電子ビームのサブ照射領域内の画像を得るためには、各1次電子ビームに対応する2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出エレメントで検出する必要がある。よって、マルチ1次電子ビーム20の本数とマルチ検出器222の検出エレメント数が同じ系では、マルチ1次電子ビーム20に対応するマルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数の検出エレメントとの位置合わせが重要となる。
【0037】
図3は、実施の形態1における位置合わせ前の段階でのマルチ2次電子ビームとマルチ検出器の複数の検出エレメントとの位置関係の一例を示す図である。ここでは、例えば粗調整後の位置関係を示している。
図3の例では、マルチ検出器222の検出面上におけるマルチ2次電子ビーム300の中心位置を原点とした2次座標系で示している。
図3の例では、例えば、3×3のマルチ2次電子ビーム300(B11~B33)を、アレイ配置された3×3個の検出エレメント(D11~D33)で検出する場合を示している。マルチ2次電子ビーム300の中心位置にマルチ検出器222の中心が近づくように設置する。しかし、
図3に示したように、位置合わせ前の段階では、各検出エレメント(D11~D33)は、対応する2次電子ビーム(B11~B33)から位置がずれている。よって、このままでは、基板101の画像を得ることは困難である。そこで、実施の形態1では、かかる状態から、マルチ検出器222をx,y,θ方向に移動させることによって、各検出エレメント(D11~D33)の位置を対応する2次電子ビーム(B11~B33)の位置に位置合わせする。
【0038】
図4は、実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
図4において、位置合わせ回路134内には、探索部60、回転中心算出部61、ベクトル演算部62、中心対応座標算出部63、シフト量算出部64、座標算出部65、回転角度算出部66、回転処理部67、シフト処理部68、及び選択部69が配置される。探索部60、回転中心算出部61、ベクトル演算部62、中心対応座標算出部63、シフト量算出部64、座標算出部65、回転角度算出部66、回転処理部67、シフト処理部68、及び選択部69といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。探索部60、回転中心算出部61、ベクトル演算部62、中心対応座標算出部63、シフト量算出部64、座標算出部65、回転角度算出部66、回転処理部67、シフト処理部68、及び選択部69内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0039】
図5は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図5において、実施の形態1における検査方法の要部工程は、2次電子ビーム座標測定工程(S102)と、検出エレメント選択工程(S104)と、検出エレメント座標探索工程(S106)と、検出器回転工程(S108)と、検出エレメント座標探索工程(S110)と、回転中心算出工程(S112)と、ベクトル演算工程(S114)と、中心対応座標算出工程(S116)と、シフト量算出工程(S118)と、残りの検出エレメント座標算出工程(S120)と、回転角度算出工程(S122)と、シフト工程(S124)と、回転工程(S126)と、検査処理工程(S130)と、いう一連の工程を実施する。
【0040】
実施の形態1におけるマルチ電子ビーム位置合わせ方法は、かかる各工程のうち、2次電子ビーム座標測定工程(S102)と、検出エレメント選択工程(S104)と、検出エレメント座標探索工程(S106)と、検出器回転工程(S108)と、検出エレメント座標探索工程(S110)と、回転中心算出工程(S112)と、ベクトル演算工程(S114)と、中心対応座標算出工程(S116)と、シフト量算出工程(S118)と、残りの検出エレメント座標算出工程(S120)と、回転角度算出工程(S122)と、シフト工程(S124)と、回転工程(S126)と、を実施する。シフト工程(S124)と、回転工程(S126)とは、どちらが先でも構わない。或いは同時期に実施してもよい。
【0041】
2次電子ビーム座標測定工程(S102)として、まずは、検出面上におけるマルチ2次電子ビーム300の位置を測定する。まず、マルチ検出器222の代わりに、図示しない電子線検出イメージセンサ(Electron Detecting Image Sensor、以下EDISと呼ぶ)を取り付け、マルチ2次電子ビーム300をダイレクト・ディテクション・デバイスで検出することで、検出面上におけるマルチ2次電子ビーム300の位置を測定する。EDISは、ビームサイズよりも十分小さい画素を2次元状に配置したイメージセンサであり、例えばサイズ10μm角の画素を4000x3000個配置したものが有用である。個々の画素が電子線に感度を有するものであってもいいし、蛍光体を介して電子線を検出するものでも構わない。電子線を直接これにより、マルチ検出器222の検出面上におけるマルチ2次電子ビーム300の中心位置を原点とした2次座標系を設定できる。その後、ダイレクト・ディテクション・デバイスを取り外し、マルチ検出器222を取り付けることになる。
図3の例では、各検出エレメント(D11~D33)の位置が一例として示されているが、実際には、2次座標系における各検出エレメント(D11~D33)の位置は把握できていない状態である。EDISでの測定は、マルチ1次電子ビーム20を照射して、基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300全体を測定しても良いし、マルチ1次電子ビーム20を1本ずつ照射して、それぞれ対応する2次電子ビームの位置を測定しても良い。ステージ105は停止した状態で行えばよい。また、基板101の代わりに、図示しないマーク或いは評価基板等に1次電子ビームを照射しても良い。
【0042】
検出エレメント選択工程(S104)として、選択部69は、複数の検出エレメント(D11~D33)のうち、2以上の検出エレメントを選択する。選択する場合に、中心部の検出エレメントD22とは異なる2以上の検出エレメントを選択する。例えば、中心部の検出エレメントD22とは異なる2つの検出エレメントD11,D31を選択する。なお、後述するように、ベクトル演算工程(S114)において3つの検出エレメント座標が必要となるので、望ましくは、中心部の検出エレメントD22とは異なる3つの検出エレメントを選択すると好適である。かかる場合に、直線上に並ばない3つの検出エレメントを選択する。例えば、3つの検出エレメントD11,D31,D33を選択する。あるいは、まずは2つの検出エレメントD11,D31を選択し、以降のベクトル演算工程(S114)の前までの各工程を実施した後で、さらにもう1つの検出エレメントを選択しても構わない。
【0043】
検出エレメント座標探索工程(S106)として、探索部60は、それぞれ基板101(試料)面から放出される2次電子ビームを用いて、それぞれの2次電子ビームを含むマルチ2次電子ビームを検出するためのマルチ検出器222が有する複数の検出エレメントのうちの2以上の検出エレメントの座標を探索する。具体的には、選択された2以上の検出エレメントD11,D31(,D33)の座標を、それぞれいずれかの2次電子ビームを用いて探索する。
【0044】
図6は、実施の形態1における検出エレメント座標の探索の仕方を説明するための図である。
図6に示すように、ビーム選択アパーチャ基板232で選択することによりマルチ2次電子ビーム300を1本ずつ走査して、選択された検出エレメントD11,D31(,D33)に近い2次電子ビームをそれぞれ把握する。1本の2次電子ビームに絞るために、マルチ1次電子ビーム20を1本ずつ選択する。
図6の例では、検出エレメントD11を2次電子ビームB21で探索できる場合を示している。同様に、検出エレメントD31を2次電子ビームB31で探索できる場合を示している。
【0045】
図7は、実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板232の構成を示す図である。
図7において、ビーム選択アパーチャ基板232には、マルチ1次電子ビーム20全体が通過可能な大開口11と、1本の1次電子ビームしか通過できないサイズの小開口13とが基板上に形成される。ビーム選択アパーチャ制御回路136の制御のもと、駆動機構234は、ビーム選択アパーチャ基板232を水平移動させることによって、マルチ1次電子ビーム20のうち1本の1次電子ビームを選択的に通過させる。ビーム選択アパーチャ基板232を通過した1次電子ビームは、基板101に照射され、対応する2次電子ビームを放出する。放出された2次電子ビームは、ビームセパレーター214により偏向され、2次電子光学系152のアライメントコイル225,226に進む。
【0046】
図8は、実施の形態1における2次電子ビームを走査する仕方の一例を説明するための図である。1本ずつに絞られた2次電子ビーム301は、アライメントコイル225で偏向され中心軌道が斜めに振られた後にアライメントコイル226で斜めに振られた軌道を当初の軌道軸と平行な軌道軸に振り戻す。これにより、入射角度を変えずに軸移動ができる。かかる軸移動により、マルチ検出器222に照射する位置を走査(スキャン)する。なお、ここでは、2つのアライメントコイル225,226で走査する場合を示しているが、これに限るものではない。例えば4極以上の電極で構成される偏向器を使って2次電子ビーム301を走査しても好適である。
【0047】
図9Aは、実施の形態1における2次電子ビームの走査範囲の一例を示す図である。
図9に示すように、各2次電子ビームの走査範囲は、2次電子ビーム間のビームピッチで囲まれる矩形領域(x,y方向に±0.5ビームピッチ)に設定すると好適である。なお、
図9Aの例では、一部の2次電子ビームが様々な誤差要因(鋼製部材の加工精度、組立精度など)により設計上のビームピッチよりも大きいピッチで配列されている場合を示している。
【0048】
そして、マルチ1次電子ビーム20を1本ずつ選択して、走査範囲を走査することで検出エレメントD11に近い2次電子ビームを把握する。具体的にはD11からの出力が最大となるビームをD11に近いビームとして特定する。
次にD11に近いビームを特定した後にD11の位置を正確に把握するための探索方法について
図9Bを用いて説明する。ビームB21によるD11からの出力が最大となる座標(Xmax、Ymax)(最大出力座標)を記録しておき、その座標を中心に探索範囲(再探索範囲17)を再定義する。例えば±0.5ビームピッチとする。その再探索範囲17内でB21を走査しながらD11の出力を記録していき、出力値と走査座標値のデータから重心座標を算出する。この重心座標を最終的なD11の座標として特定する。
【0049】
図10は、実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの一方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。
図10の例では、検出エレメントD11で検出される2次電子ビームを探索する。
図10の例では、2次電子ビームB21が検出エレメントD11で検出される場合を示している。そして、かかる2次電子ビームB21の位置はEDISで測定されているので、2次電子ビームB21の位置にかかる位置から検出される強度が最大となる位置までの相対的な走査位置が加算された位置を、検出エレメントD11の座標(x1,y1)として探索(検出)できる。
【0050】
図11は、実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの他方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。検出エレメントD11の座標(x1,y1)を検出する場合と同様の動作を行うことで、検出エレメントD31で検出される2次電子ビームを探索する。
図11の例では、2次電子ビームB31が検出エレメントD31で検出される場合を示している。そして、かかる2次電子ビームB31の位置はEDISで測定されているので、2次電子ビームB31の位置にかかる位置から検出される強度が最大となる位置までの相対的な走査位置が加算された位置を、検出エレメントD31の座標(x2,y2)として探索(検出)できる。
【0051】
なお、3つの検出エレメントを選択した場合には、同様に、3つ目の検出エレメントD33の座標(x3,y3)を探索(検出)する。
【0052】
検出器回転工程(S108)として、検出器ステージ制御回路130は、駆動機構132を制御して、回転ステージ227を回転させる。これにより、回転ステージ227は、予め設定された回転角度φ(第1の回転角度)でマルチ検出器222を回転させる。
【0053】
図12は、実施の形態1における回転前後のマルチ2次電子ビームとマルチ検出器の複数の検出エレメントとの位置関係の一例を示す図である。
図12に示すように、複数の検出エレメントD11~D33の中心がマルチ検出器222の回転中心(rx,ry)とは限らない。よって、マルチ検出器222を回転角度φだけ回転させた状態では、回転前に座標を検出した検出エレメントD11,D31,D33の回転後の位置は不明な状態となる。
図12の例では、回転角度φだけマルチ検出器222を回転させることで検出エレメントD11が検出エレメントD11´に移動した状態を示している。同様に、検出エレメントD31が検出エレメントD31´に移動した状態を示している。
【0054】
検出エレメント座標探索工程(S110)として、探索部60は、基板101面から放出されるそれぞれの2次電子ビームを用いて、回転後の2以上の検出エレメントの座標を探索する。具体的には、選択された2以上の検出エレメントD11,D31(,D33)の回転後の座標を、それぞれいずれかの2次電子ビームを用いて探索する。
【0055】
図13は、実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの一方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。探索の仕方は、回転前の探索の仕方と同様である。
図13の例では、検出エレメントD11′で検出される2次電子ビームを探索する。
図13の例では、2次電子ビームB11が検出エレメントD11′で検出される場合を示している。そして、かかる2次電子ビームB11の位置はEDISで測定されているので、2次電子ビームB11の位置にかかる位置から検出される強度が最大となる位置までの相対的な走査位置が加算された位置を、検出エレメントD11′の座標(X1,Y1)として探索(検出)できる。
【0056】
図14は、実施の形態1における選択された2つの検出エレメントの他方と2次電子ビームとが重なった場合を示す図である。検出エレメントD11′の座標(X1,Y1)を検出する場合と同様の動作を行うことで、検出エレメントD31′で検出される2次電子ビームを探索する。
図14の例では、2次電子ビームB31が検出エレメントD31′で検出される場合を示している。そして、かかる2次電子ビームB31の位置はEDISで測定されているので、2次電子ビームB31の位置にかかる位置から検出される強度が最大となる位置までの相対的な走査位置が加算された位置を、検出エレメントD31′の座標(X2,Y2)として探索(検出)できる。
【0057】
図15は、実施の形態1における回転前後のマルチ検出器の複数の検出エレメントの座標の一例を示す図である。
図15に示すように、検出エレメントD11(D11′)は、未知の回転中心座標(rx,ry)を軸に回転前の座標(x1,y1)から回転後の座標(X1,Y1)へと移動している。同様に、検出エレメントD31(D31′)は、未知の回転中心座標(rx,ry)を軸に回転前の座標(x2,y2)から回転後の座標(X2,Y2)へと移動している。
【0058】
回転中心算出工程(S112)として、回転中心算出部61は、マルチ検出器222を回転させた回転角度φと、探索された回転前後の2以上の検出エレメントD11(D11′),D31(D31′)の各座標(x1,y1),(x2,y2),(X1,Y1),(X2,Y2)を用いて、マルチ検出器222の回転中心座標(rx,ry)を演算する。
【0059】
図16は、実施の形態1における回転中心座標を算出するための演算式を示す図である。回転前後の座標の関係から式(1)により求めることができる。
【0060】
以上の処理により、少なくとも2つの検出エレメントD11(D11′),D31(D31′)の回転前後の各座標(x1,y1),(x2,y2),(X1,Y1),(X2,Y2)と、回転中心座標(rx,ry)とを取得できる。また、3つの検出エレメントを選択した場合には、同様に、3つ目の検出エレメントD33の回転前の座標(x3,y3)を取得できる。3つの検出エレメントを選択していない場合には、3つ目の検出エレメントの選択と回転前の座標(x3,y3)の探索とを実施する。3つ目の検出エレメントを選択する場合、中心部の検出エレメントD22とは異なる検出エレメントであって、先の2つの検出エレメントD11,D31との関係において、3つの検出エレメントが直線上に並ばない検出エレメントを選択する。
【0061】
ベクトル演算工程(S114)として、ベクトル演算部62は、3つの検出エレメントのうち、1つの検出エレメントの座標から回転中心座標(rx,ry)へのベクトルをかかる1つの検出エレメントの座標から残りの2つの検出エレメントの座標への2つのベクトルに分解する演算を行う。
【0062】
図17は、実施の形態1における検出エレメント座標のベクトル演算の仕方を説明するための図である。上述した回転前の3つの検出エレメントD11,D31,D33のうち、1つ検出エレメントD31の座標(x2,y2)から回転中心座標(rx,ry)へのベクトルRを、検出エレメントD31の座標(x2,y2)から検出エレメントD33の座標(x3,y3)へのベクトルPと、検出エレメントD31の座標(x2,y2)から検出エレメントD11の座標(x1,y1)へのベクトルQとに分解する。3つの検出エレメントD11,D31,D33のうち、回転中心座標(rx,ry)へのベクトルに対して両側に2つの検出エレメントD11,D33が分かれて位置することになる残りの1つの検出エレメントD31を基準として用いると好適である。ベクトルRは、ベクトルPとベクトルQとを用いて次の式(2)で定義できる。式(2)では、ベクトルを示す記号(-)は省略している。
(2) R=αP+βQ
【0063】
図18は、実施の形態1におけるベクトル係数を算出するための演算式を示す図である。未知のベクトル係数α,βは、式(3)で求めることができる。
【0064】
中心対応座標算出工程(S116)として、中心対応座標算出部63は、複数の検出エレメントD11,D31,D33に対する回転中心座標(rx,ry)の位置関係と同様の位置関係になるマルチ2次電子ビームB11,B31,B33に対する対応座標Bcを演算する。
【0065】
図19は、実施の形態1における2次電子ビーム座標のベクトル演算の仕方を説明するための図である。
図19において、対応座標Bcは、分解された2つのベクトルαP,βQをマルチ2次電子ビームのうちの3つの2次電子ビームB11,B31,B33の座標に適用した場合における2つのベクトルの合成ベクトルの座標として演算される。具体的には、中心対応座標算出部63は、基準となる検出エレメントD31に対応する2次電子ビームB31から検出エレメントD33に対応する2次電子ビームB33へのベクトルP′にベクトル係数αを乗じたαP′と、検出エレメントD31に対応する2次電子ビームB31から検出エレメントD11に対応する2次電子ビームB11へのベクトルQ′にベクトル係数βを乗じたβQ′との合成ベクトルR′を演算する。そして、中心対応座標算出部63は、2次電子ビームB31を起点とした合成ベクトルR′の座標を対応座標Bcとして算出する。
【0066】
シフト量算出工程(S118)として、シフト量算出部64は、回転中心座標(rx,ry)をマルチ2次電子ビームに対する対応座標Bcにシフトするためのシフト量(dx,dy)を演算する。
【0067】
残りの検出エレメント座標算出工程(S120)として、座標算出部65は、探索された2以上の検出エレメントの各座標を用いて、複数の検出エレメントD11~D33の残りの検出エレメントの座標を演算する。
【0068】
図20は、実施の形態1における複数の検出エレメントの各座標の算出手法を説明するための図である。上述した例では、3つの検出エレメントD11,D31,D33の各座標(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)が既に探索によりわかっている。また、マルチ検出器222の複数の検出エレメントD11~D33は、直交する2軸に沿って同じピッチでアレイ配置された3×3の検出エレメントであるものとする。よって、少なくとも2つの検出エレメントの各座標が分かれば、残りの検出エレメントの各座標を演算できる。
図20の例では、3つの検出エレメントD11,D31,D33の各座標(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)がわかっている場合に、残りの検出エレメントの各座標を算出する手法の一例が示さている。
【0069】
例えば、検出エレメントD21の座標(x4,y4)は、検出エレメントD11,D31の各座標(x1,y1),(x2,y2)を結ぶ直線の中央の位置として算出される。例えば、検出エレメントD32の座標(x5,y5)は、検出エレメントD31,D33の各座標(x2,y2),(x3,y3)を結ぶ直線の中央の位置として算出される。例えば、検出エレメントD22の座標(x6,y6)は、検出エレメントD11,D33の各座標(x1,y1),(x3,y3)を結ぶ直線の中央の位置として算出される。
【0070】
例えば、検出エレメントD13の座標(x7,y7)は、検出エレメントD11の座標(x1,y1)に検出エレメントD31の座標(x2,y2)から検出エレメントD33の座標(x3,y3)へのベクトルを加算した値の位置として算出される。或いは、検出エレメントD13の座標(x7,y7)は、D33の座標(x3,y3)に検出エレメントD31の座標(x2,y2)から検出エレメントD11の座標(x1,y1)へのベクトルを加算した値の位置として算出される。或いは、検出エレメントD13の座標(x7,y7)は、検出エレメントD31の座標(x2,y2)に検出エレメントD31の座標(x2,y2)から検出エレメントD22の座標へのベクトルの2倍を加算した値の位置として算出される。或いは、これらの3つの式の平均値として算出されるとさらに好適である。
【0071】
例えば、検出エレメントD12の座標(x8,y8)は、検出エレメントD11,D13の各座標を結ぶ直線の中央の位置として算出される。例えば、検出エレメントD23の座標(x9,y9)は、検出エレメントD13,D33の各座標を結ぶ直線の中央の位置として算出される。
【0072】
以上により、マルチ検出器222の3×3の9つのすべての検出エレメントD11~D33の各座標(x1,y1)~(x9,y9)を取得することができる。
【0073】
回転角度算出工程(S122)として、回転角度算出部66は、探索された2以上の検出エレメントの各座標の少なくとも1つとマルチ検出器222の回転中心座標(rx,ry)とを用いて、複数の検出エレメントD11~D33をマルチ2次電子ビームB11~B33に位置合わせするための回転角度θ(第2の回転角度)を算出する。
【0074】
図21は、実施の形態1における位置合わせ角度を算出するための演算式を示す図である。複数の検出エレメントD11~D33をマルチ2次電子ビームB11~B33に位置合わせした位置合わせ後の検出エレメントD11~D33の各座標(X1′,Y1′)~(X9′,Y9′)のうちの1つの検出エレメントD11の座標(X1′,Y1′)は、位置合わせ前の検出エレメントD11の座標(x1,y1)と、回転中心座標(rx,ry)と、未知の回転角度θと、を用いて、
図21に示す式(4)のように定義できる。検出エレメントD11の代わりに、他の検出エレメントを用いた場合も同様である。かかる式(4)を変形することにより、未知の回転角度θを求めることができる。さらに精度を高めるためには、3×3の9つのすべての検出エレメントD11~D33の各座標(x1,y1)~(x9,y9)を使って、未知の回転角度θを求めると好適である。
【0075】
具体的には
図21に示す式(4)および式(5)から求めることができる。
【0076】
以上のようにして、位置合わせのためのシフト量(dx,dy)と回転角度θを得ることができる。
【0077】
なお、上述した例では、回転中心座標(rx,ry)を得るために回転角度φだけマルチ検出器222を回転させる前の検出エレメントD11~D33の各座標(x1,y1)~(x9,y9)を用いて回転角度θを求めたが、これに限るものではない。回転角度φだけマルチ検出器222を回転させた後の検出エレメントD11~D33の各座標(X1,Y1)~(X9,Y9)を用いて位置合わせのための回転角度θ′を求めても構わない。かかる場合には、回転させた後の探索した2つの検出エレメントD11,D31の各座標(X1,Y1),(X2,Y2)の他に残りの各座標(X3,Y3)~(X9,Y9)を求めておけばよい。或いは、回転させた後の探索した2つの検出エレメントD11,D31の各座標(X1,Y1),(X2,Y2)の少なくとも1つを用いて、式(4)を適用して位置合わせのための回転角度θ′を求めても構わない。かかる場合、式(4)の(x1,y1)は(X1,Y1)と読み替え、θはθ′と読み替えればよい。
【0078】
シフト工程(S124)として、シフト処理部68は、シフト量(dx,dy)を用いてマルチ検出器222をシフトする。
【0079】
図22は、実施の形態1における複数の検出エレメントをシフトする様子を説明するための図である。
図22では回転中心座標(rx,ry)に位置していたマルチ検出器222の回転中心Dcをマルチ2次電子ビームB11~B33の対応座標Bcに合わせるようにマルチ検出器222をシフトする。検出器ステージ制御回路130の制御の下に駆動機構132によりx,yステージ228を移動させてことによって、マルチ検出器222をシフトする。
【0080】
回転工程(S126)として、回転処理部67は、回転角度θでマルチ検出器222を回転させる。
【0081】
図23は、実施の形態1における複数の検出エレメントを回転する様子を説明するための図である。
図23では、マルチ2次電子ビームB11~B33の対応座標Bcに合わせたマルチ検出器222の回転中心Dcを軸に、回転角度θだけマルチ検出器222を回転させる。検出器ステージ制御回路130の制御の下に駆動機構132により回転ステージ227を回転させることによって、マルチ検出器222を回転させる。
【0082】
以上の動作により、マルチ検出器222の複数の検出エレメントD11~D33をマルチ2次電子ビームB11~B33に位置合わせできる。
【0083】
検査処理工程(S130)として、位置合わせが行われた検査装置100を用いて、基板101を検査する。
【0084】
図24は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図24において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。1チップ分のマスクパターンは、一般に、複数の図形パターンにより構成される。
【0085】
図25は、実施の形態1における検査処理を説明するための図である。
図25に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0086】
図25の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0087】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。
図25の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎のフレーム画像31について比較することになる。
図8の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0088】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように主偏向器208によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器218は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
【0089】
以上のように、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系152を移動中に発散し分離され、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0090】
図26は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図26において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0091】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0092】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビーム10のスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0093】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0094】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0095】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0096】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0097】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0098】
そして、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0099】
なお、上述した例では、ダイ-データベース検査について説明したが、これに限るものではない。ダイ-ダイ検査を行う場合であっても良い。ダイ-ダイ検査を行う場合、対象となるフレーム画像31(ダイ1)と、当該フレーム画像31と同じパターンが形成されたフレーム画像31(ダイ2)(参照画像の他の一例)との間で、上述した位置合わせと比較処理を行えばよい。
【0100】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ荷電粒子ビームと2次電子検出器との効率的な位置合わせが可能となる。
【0101】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、位置合わせ回路134、及びビーム選択アパーチャ制御回路136は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。例えば、これらの回路内での処理を制御計算機110で実施しても良い。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0103】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0104】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム位置合わせ方法及びマルチ荷電粒子ビーム検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0105】
10 1次電子ビーム
11 大開口
13 小開口
17 再探索範囲
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
50,52,56 記憶装置
54 フレーム画像作成部
57 位置合わせ部
58 比較部
60 探索部
61 回転中心算出部
62 ベクトル演算部
63 中心対応座標算出部
64 シフト量算出部
65 座標算出部
66 回転角度算出部
67 回転処理部
68 シフト処理部
69 選択部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 検出器ステージ制御回路
132 駆動機構
134 位置合わせ回路
136 ビーム選択アパーチャ制御回路
142 駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205,206,207,224,226 電磁レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 ビームセパレーター
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
225,226 アライメントコイル
227 回転ステージ
228 x,yステージ
229 検出器ステージ
232 ビーム選択アパーチャ基板
234 駆動機構
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ