(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ディスプレイ駆動装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3208 20160101AFI20231115BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231115BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231115BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
G09G3/3208
G09G3/20 611A
G09G3/20 612D
G09G3/20 612E
G09G3/20 621G
G09G3/20 621L
G09G3/20 623R
H05B33/14 A
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2021512118
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014570
(87)【国際公開番号】W WO2020203974
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019066090
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一倉 宏嘉
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1918212(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0111497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325200(US,A1)
【文献】国際公開第2012/081222(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0290909(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0302683(US,A1)
【文献】特開2019-132918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G3/00-3/08
3/12-3/16
3/19-3/26
3/30-3/34
3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルを駆動する駆動装置であって、
前記ディスプレイパネルに駆動電圧を供給する出力回路を含み、高電源電圧が印加される第1の電圧印加ラインに接続され、前記第1の電圧印加ラインからの前記高電源電圧の印加に応じて動作電流を得る高電圧動作部と、
前記高電源電圧より低い低電源電圧の印加に応じて動作し、前記高電圧動作部を制御する低電圧動作部と、
前記動作電流を前記高電圧動作部
との間に設けられた接続ラインである中継接続ラインを介して
前記高電圧動作部から受け入れ、当該受け入れた前記動作電流を前記低電圧動作部を介して基準電位ラインに供給しつつ前記低電圧動作部に前記低電源電圧を印加する再利用回路と、
前記低電圧動作部へ印加される前記低電源電圧の電圧上昇に応じて
前記高電圧動作部から前記中継接続ライン
に流れる前記動作電流の一部を前記再利用回路に供給することなく前記基準電位ラインに流し込む電流迂回回路と、を含むことを特徴とするディスプレイ駆動装置。
【請求項2】
前記電流迂回回路は、前記中継接続ラインの前記出力回路との接続点近傍と前記基準電位ラインとの間に接続されていることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ駆動装置。
【請求項3】
前記電流迂回回路は、
前記低電圧動作部へ前記低電源電圧として印加される電圧をゲートに受ける電界効果トランジスタと、
一端が前記電界効果トランジスタのドレインに接続された抵抗と、
一端が前記電界効果トランジスタのソースと共に前記中継接続ラインに接続され、他端が前記抵抗の他端と共に前記基準電位ラインに接続されたバイパスコンデンサと、を含むクランプ回路からなることを特徴とする請求項1又は2記載のディスプレイ駆動装置。
【請求項4】
前記高電源電圧より低くかつ前記低電源電圧より高い中電源電圧が印加される第2の電圧印加ラインと、
前記低電圧動作部に前記低電源電圧を印加するために前記再利用回路と前記低電圧動作部との間を接続する第3の電圧印加ラインと、
前記再利用回路は、前記低電源電圧の基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
ソースが前記第2の電圧印加ラインに接続され、ドレインが前記第3の電圧印加ラインに接続された第1の電界効果トランジスタと、
ソースが前記中継接続ラインに接続され、ドレインが前記第3の電圧印加ラインに接続された第2の電界効果トランジスタと、
前記第3の電圧印加ラインの電圧が前記基準電圧に等しくなるように前記第1の電界効果トランジスタ及び前記第2の電界効果トランジスタの各々のゲート電圧を制御する駆動手段と、を含むことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ駆動装置。
【請求項5】
前記ディスプレイパネルは有機ELディスプレイパネルであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載のディスプレイ駆動装置。
【請求項6】
前記駆動電圧の変動範囲は前記高電源電圧より低くかつ前記低電源電圧より高い電圧であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載のディスプレイ駆動装置。
【請求項7】
前記出力回路を除いた前記高電圧動作部の一部は前記動作電流を前記低電圧動作部を介すことなく前記基準電位ライン側に供給することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1記載のディスプレイ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる電圧レベルの電源電圧が印加されることにより動作するディスプレイ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置では内部回路の微細化に従って動作電圧が例えば、1.2Vのように低電圧化し、これにより消費電力の低減が図られている。ディスプレイ駆動装置においても、回路部分は半導体装置として構成されているので、制御回路等の論理回路は低電圧での動作が行われる。一方、ディスプレイパネルに駆動電圧を出力する出力回路を含む出力段では例えば、各画素の輝度レベルに対応した駆動電圧を生成するために7Vのような高電圧の動作電圧を必要としている。また、映像信号の入力インターフェース部などの前段回路は例えば、1.8Vのような中電圧の動作電圧で動作している。従って、ディスプレイ駆動装置では全てを単一の低電圧での動作とすることができない故に、電力消費の低減が進んでいなかった。
【0003】
しかしながら、近時のスマートフォン等のモバイル機器に使用されるディスプレイ駆動装置では、高精細化表示のため、また主電源であるバッテリーの頻繁な充電を避けるためにも電力消費の低減が特に要求されている。
【0004】
特許文献1には、高電圧から1つ以上の任意の電圧を生成することができるボルテージレギュレータが開示されている。そのボルテージレギュレータでは、外部電源電圧を第1レギュレータ回路で降圧して第1の電源電圧を生成する他、第2レギュレータ回路及び第3レギュレータ回路が設けられ、第2レギュレータ回路及び第3レギュレータ回路は、第1の電源電圧を電源にして各々作動し、外部電源電圧を電圧降下素子を用いて降圧し、該降圧した電圧を入力電圧とする電圧制御用ドライバ素子を用いて第2の電源電圧及び第3の電源電圧を各々生成して個別の負荷に対して出力し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のディスプレイ駆動装置においては、低電力消費化のために電源電圧や動作電流を下げると、所望の特性を得ることができなくなったり、動作条件を変更する必要があったり、場合によっては所望の特性を得るために回路変更を行うと製造コストを上昇させてしまうという問題が生じ、消費電力の低減を容易に行うことは困難であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、消費電力の低減を比較的に容易にかつ効果的に図ることができるディスプレイ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のディスプレイ駆動装置は、ディスプレイパネルを駆動する駆動装置であって、前記ディスプレイパネルに駆動電圧を供給する出力回路を含み、高電源電圧が印加される第1の電圧印加ラインに接続され、前記第1の電圧印加ラインからの前記高電源電圧の印加に応じて動作電流を得る高電圧動作部と、前記高電源電圧より低い低電源電圧の印加に応じて動作し、前記高電圧動作部を制御する低電圧動作部と、前記動作電流を前記高電圧動作部との間に設けられた接続ラインである中継接続ラインを介して前記高電圧動作部から受け入れ、当該受け入れた前記動作電流を前記低電圧動作部を介して基準電位ラインに供給しつつ前記低電圧動作部に前記低電源電圧を印加する再利用回路と、前記低電圧動作部へ印加される前記低電源電圧の電圧上昇に応じて前記高電圧動作部から前記中継接続ラインに流れる前記動作電流の一部を前記再利用回路に供給することなく前記基準電位ラインに流し込む電流迂回回路と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のディスプレイ駆動装置によれば、高電圧動作部を流れる動作電流を再利用回路によって低電圧動作部を介して基準電位ラインに供給しつつ低電圧動作部に低電源電圧を印加し、高電圧動作部の動作電流を有効に利用するので、電力消費量を低減させることができる。また、低電圧動作部へ印加される低電源電圧の電圧上昇に応じて中継接続ラインを流れる動作電流の一部を再利用回路に供給することなく基準電位ラインに流し込むので、駆動電圧の変動を抑制することができると共に低電圧動作部への印加電圧の過上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例として有機ELディスプレイ駆動装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の装置中のクランプ回路の具体的構成を示す回路図である。
【
図3】
図1の装置の駆動電圧の電圧範囲を示す図である。
【
図4】
図1の装置中の再利用回路の具体的構成を示す回路図である。
【
図5】
図1の装置の回路をIC化した際の配置及び配線例を示している。
【
図6】
図1の装置と消費電力を比較するための駆動装置例を示すブロック図である。
【
図7】
図1の装置に接続される有機ELディスプレイパネルの等価回路を示す図である。
【
図8】
図6の駆動装置の駆動電圧が低下した場合のグランドラインの電圧変化を示すシミュレーション図である。
【
図9】
図1の駆動装置のHV出力回路近傍にクランプ回路を備えない構成で駆動電圧が低下した場合のグランドラインの電圧変化を示すシミュレーション図である。
【
図10】
図1の駆動装置のようにHV出力回路近傍にクランプ回路を備えた構成で駆動電圧が低下した場合のグランドラインの電圧変化を示すシミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例としてディスプレイ駆動装置の構成を示している。なお、
図1においては回路の配線として電源ライン及び駆動出力ラインだけを示しており、回路間の制御ラインや信号供給ラインは省略されている。
【0013】
この駆動装置は、有機ELディスプレイパネル11を駆動するドライバ部12と、ドライバ部12に電源電圧を供給する中電圧電源部13及び高電圧電源部14を備えている。
【0014】
有機ELディスプレイパネル11は例えば、複数の有機EL素子を各々画素としてマトリックス状に配置して表示パネルを構成したものである。中電圧電源部13は電源電圧として中電圧MV(中電源電圧)を生成し、高電圧電源部14は中電圧MVより高い電源電圧である高電圧HV(高電源電圧)を生成する。
【0015】
ドライバ部12は、中電圧MVが電源電圧として印加されるMV回路21と、中電圧MVより低い電源電圧である低電圧LV(低電源電圧)が印加されるLV回路22(低電圧動作部)と、高電圧HVが電源電圧として印加される高電圧動作部であるHV回路23A、HV回路23B及びHV出力回路24と、LV回路22に低電圧LVを供給するために再利用回路25とを備えている。なお、LV回路22、HV回路23A、HV回路23B及びHV出力回路24は駆動装置をIC化した場合には
図5に示すように複数のチャンネル(複数のソースライン)分設けられているが、
図1では各々1つとして示している。
【0016】
MV回路21は例えば、入力画像信号を受けて入力画像信号に応じて有機ELディスプレイパネル11のソースライン毎の各画素の輝度データを生成する部分である。LV回路22はドライバ部12の出力段より前段を担う、論理回路からなる制御回路であり、MV回路21から入力される入力画像信号を受けて、同期信号に基づいてHV回路23A、23B及びHV出力回路24を制御する。
【0017】
MV回路21及び再利用回路25の各々には電圧印加ライン31とグランドライン32(基準電位ライン)とが個別に接続されている。電圧印加ライン31は中電圧電源部13の出力端に接続された中電圧MVの印加ラインである。グランドライン32は接地ラインであり、中電圧電源部13の接地ラインである。MV回路21及び再利用回路25には電圧印加ライン31を介して供給される中電圧MVによる電流IMVが動作電流として流れ込み、そして、その電流IMVはそれらの回路からグランドライン32に流れ出るようになっている。
【0018】
HV回路23AはHV回路制御用の論理回路やレベルシフターであり、電圧範囲として接地レベルからの高電圧HVまでを必要とする回路である。HV回路23Aには電圧印加ライン33(第1の電圧印加ライン)とグランドライン36(基準電位ライン)とが各々接続されている。グランドライン36はグランドライン32に接続されていても良い。HV回路23Aには電圧印加ライン33を介して供給される高電圧HVによる電流IHVAが動作電流として流れ込み、そして、その電流IHVAはHV回路23Aからグランドライン36に流れ出るようになっている。
【0019】
HV回路23Bは例えば、バイアス回路であり、HV出力回路24は例えば、出力アンプ回路である。HV回路23B及びHV出力回路24は接地側の電位が低電圧LV以上でも動作し、高電圧HVの正電位の印加が必要な又は望ましい回路である。
【0020】
HV回路23B及びHV出力回路24には電圧印加ライン33と中継接続ライン34とが個別に接続されている。中継接続ライン34は中継接続ライン341を介してHV回路23Bに接続され、同様に中継接続ライン342を介してHV出力回路24に接続されている。中継接続ライン341は複数チャンネルのHV回路23Bを共通接続するためのラインであり、中継接続ライン342は複数チャンネルのHV出力回路24を共通接続するためのラインである。
【0021】
HV回路23Bには電圧印加ライン33を介して供給される高電圧HVによる電流IHV2が動作電流として流れ込み、HV出力回路24には電圧印加ライン33を介して供給される高電圧HVによる電流IHV3が動作電流として流れ込み、そして、その電流IHV2及びIHV3はHV回路23B及びHV出力回路24から中継接続ライン341、342を介して中継接続ライン34に合成電流IHVBとして流れ出るようになっている。更に、中継接続ライン34とグランドライン36との間にはパスコン26が接続されている。
【0022】
また、中継接続ライン34は再利用回路25に接続されている。再利用回路25には更に電圧印加ライン35(第3の電圧印加ライン)が接続されている。再利用回路25は中継接続ライン34から供給される電流IHVBを受け入れ、後述するように電圧印加ライン35の電圧が基準電圧に等しい低電圧LVになるように制御する。LV回路22には電圧印加ライン35とグランドライン32とが接続されている。LV回路22には再利用回路25から中継接続ライン35を介して電流ILVが動作電流として流れ込み、そして、その電流ILVはLV回路22からグランドライン32に流れ出るようになっている。
【0023】
また、中継接続ライン34の中継接続ライン342とグランドライン36との間にはクランプ回路27が接続されている。クランプ回路27はLV回路22へ印加される低電圧LVの電圧上昇に応じて中継接続ライン342を流れる電流IHV3の一部を再利用回路25に供給することなくグランドライン36に流し込む電流迂回回路である。クランプ回路27はチャンネル毎に設けられており、クランプ回路27の中継接続ライン342への接続位置はHV出力回路24からの電流IHV3出力位置の近傍である。
【0024】
クランプ回路27は、
図2に示すように、パスコン28、電界効果トランジスタ(PMOS FET)29、及び抵抗30を有している。パスコン28は中継接続ライン342とグランドライン36との間に接続され、トランジスタ29のソースは中継接続ライン342に接続され、ドレインは抵抗30を介してグランドライン36に接続されている。トランジスタ29のゲートは再利用回路25からLV回路22への電圧印加ライン35に接続されている。
【0025】
高電圧HV、中電圧MV及び低電圧LV(基準電圧)はいずれも正の電圧であり、上述したようにHV>MV>LVの関係がある。この実施例では、HV=7[V]、MV=1.8[V]、LV=1.2[V]である。
【0026】
HV出力回路24が有機ELディスプレイパネル11に対して出力する駆動電圧VOUTはいわゆるソースドライバ出力であり、
図3に示すように低電圧LVより十分に高い電圧VOUT
L、例えば、3[V]以上で、高電圧HVより低い電圧VOUT
H、例えば、5[V]以下の電圧範囲である。
【0027】
なお、ドライバ部12は
図1に示したように、外部接続端子16~20を有し、上記した有機ELディスプレイパネル11、電源部13、14及び外部接地との接続は外部接続端子16~19を介して行われている。
【0028】
再利用回路25は、具体的には
図4に示すように、基準電圧生成回路41、オペアンプ42と、第1及び第2の電界効果トランジスタ(PMOS FET)43、44と、スタートアップ回路45、46と、クランプ回路47と、パスコン(バイパスコンデンサ)48とを備えている。
【0029】
基準電圧生成回路41及びオペアンプ42の各々には電圧印加ライン31(第2の電圧印加ライン)とグランドライン32とが個別に接続されており、中電圧MVが電源電圧として印加される。基準電圧生成回路41は、中電圧MVに基づいて低電圧LVを基準電圧として生成する基準電圧生成部である。基準電圧生成回路41は、中電圧MVから低電圧LVを得るために例えば、ツェナーダイオードと抵抗とを用いた簡単な定電圧回路、或いは直列接続の2つの抵抗による分圧回路と、ボルテージフォロワとを備えている。基準電圧生成回路41のボルテージフォロワは上記した定電圧回路又は分圧回路から供給される低電圧LVを入力電圧とし、低インピーダンスで低電圧LVを出力する。
【0030】
オペアンプ42は電界効果トランジスタ43、44各々のゲート電圧を制御する駆動手段である。オペアンプ42の正入力端は基準電圧生成回路41の出力端に接続され、負入力端は電界効果トランジスタ43、44各々のドレインに接続されている。オペアンプ42の出力端は電界効果トランジスタ43、44各々のゲートに接続されている。電界効果トランジスタ43のソースは電圧印加ライン31に接続されている。電界効果トランジスタ44のソースは中継接続ライン34に接続されている。また、電界効果トランジスタ43、44各々のドレインは電圧印加ライン35に接続されている。
【0031】
スタートアップ回路45は電圧印加ライン35とグランドライン32とに接続され、電源投入時に電圧印加ライン35に一時的に低電圧LVの基準電圧にほぼ等しいスタートアップ電圧SV1を印加する。スタートアップ回路45は図示しないが、電圧印加ライン31に接続されており、例えば、中電圧MVに基づいてスタートアップ電圧SV1を生成する。スタートアップ電圧SV1は電源投入後、LV回路22の動作が安定するまでの時間だけ生成される。
【0032】
スタートアップ回路46は中継接続ライン34とグランドライン32とに接続され、電源投入時に中継接続ライン34に一時的に中電圧MVより若干高いスタートアップ電圧SV2、例えば、2.0~2.5[V]を印加する。スタートアップ回路46は図示しないが、電圧印加ライン33に接続されており、例えば、高電圧HVに基づいてスタートアップ電圧SV2を降圧生成する。スタートアップ電圧SV2は電源投入後、HV回路23の動作が安定するまでの時間だけ生成される。
【0033】
クランプ回路47は、中継接続ライン34とグランドライン32との間に設けられ、中継接続ライン34の電圧が、例えば、3[V]以上に過上昇することを防止するためのものである。パスコン48は中継接続ライン34とグランドライン32との間に設けられたキャパシタであり、中継接続ライン34の電圧のリップルを防止するためのものである。
【0034】
図5は、
図1に示した駆動装置の回路(MV回路21を除く)をIC化した際の配置及び配線例を示している。
図5に示したように、IC70内ではLV回路22、HV回路23A、23B及びHV出力回路24の各々は複数チャンネルで分散されて配置されている。分散配置されたLV回路22と再利用回路25とは電圧印加ライン35で互いに接続されている。各チャンネルのHV回路23Aはグランドライン36で互いに接続されている。グランドライン36はパッド71~73、76、77を介してIC70の外部にも配線されている。各チャンネルのHV回路23Bは中継接続ライン341で互いに接続され、更に再利用回路25及びパッド75にも接続されている。各チャンネルのHV出力回路24は中継接続ライン342で互いに接続され、更にパッド74にも接続されている。パッド74と75とは中継接続ライン34で接続されている。パスコン26はパッド73と74との間に外部接続されている。
【0035】
このような構成を備えた実施例の駆動装置においては、電源部13、14が共に動作を開始して電源電圧が投入されると、先ず、スタートアップ回路45、46が直ちに動作する。これにより、電圧印加ライン35のレベルがスタートアップ電圧SV1まで上昇し、また中継接続ライン34のレベルがスタートアップ電圧SV2まで上昇する。
【0036】
基準電圧生成回路41が低電圧LVの基準電圧を生成する。その基準電圧はオペアンプ42の正入力端に供給され、オペアンプ42はその負入力端の電圧と比較する。オペアンプ42と電界効果トランジスタ43とは電圧レギュレータとして動作する。すなわち、電界効果トランジスタ43は正入力端の電圧と負入力端の電圧とが等しくなるように電圧印加ライン31から電界効果トランジスタ43のソース・ドレイン間を介して電圧印加ライン35へ電流が流れ込むので、この結果、電圧印加ライン35の電圧は基準電圧に等しい低電圧LVに安定化され、LV回路22に印加される。
【0037】
高電圧電源部14の出力電圧である高電圧HVが電圧印加ライン33を介してHV回路23A、23B及びHV出力回路24に印加されると、HV回路23A、23B及びHV出力回路24は各々動作する。HV回路23Aの動作電流IHVAはグランドライン36に流れ出る。一方、HV回路23B及びHV出力回路24の動作電流IHV2及びIHV3は各々中継接続ライン341、342を流れて中継接続ライン34で合流して電流IHVBとなり、そして電流IHVBは再利用回路25に流れ入る。電流IHVBは再利用回路25では電界効果トランジスタ44のソース・ドレイン間を介して電圧印加ライン35へ流れ出る。電圧印加ライン35の電圧は基準電圧に等しい低電圧LVに安定化され、LV回路22に印加される。よって、LV回路22には電流IMVの一部と電流IHVBの合成電流が電流ILVとして流れる。IHVB=IHV-IHVAである。
【0038】
電界効果トランジスタ44は電界効果トランジスタ43と共にオペアンプ42の出力電圧に応じてオンオフ動作するので、HV回路23B及びHV出力回路24の動作電流IHVBの電圧印加ライン35へ流れ込みは、電圧印加ライン35の電圧が基準電圧に等しい低電圧LVに安定化するように電界効果トランジスタ44のソース・ドレイン間によって制御される。電界効果トランジスタ44のソース・ドレイン間を流れる電流と電界効果トランジスタ44のゲート電位とによって電界効果トランジスタ44のソース・ドレイン間の電圧Vdsが決まるので、その電圧によって中継接続ライン34の電位も決まる。
【0039】
なお、電流IHVBと電流ILVとのバランスによっては、電圧印加ライン31と中継接続ライン34との間で電界効果トランジスタ43、44を介して双方向に電流が流れる可能性があるため、それを防止するように電界効果トランジスタ43、44のサイズ比が設定され、電界効果トランジスタ43、44それぞれに流れる電流の最適化が図られている。
【0040】
図1に示した実施例の駆動装置の消費電力Aは、次のように計算することができる。
【0041】
消費電力A=中電圧MV×(電流IMV-電流IHVB)+高電圧HV×電流IHVA
+高電圧HV×電流IHVB ・・・(1)
この消費電力Aと比較するために、かかる実施例に備えられたような再利用回路25を用いないで、上記した特許文献1に示されたようにレギュレータで降下生成された低電圧を使用する駆動装置の例を
図6に示す。この
図6に示した駆動装置では、中電圧電源部13の出力電圧である中電圧MVを低電圧LVに変換するレギュレータ51が備えられ、レギュレータ51の出力電圧である低電圧LVがLV回路22に印加される一方、高電圧電源部14の出力電圧である高電圧HVはそのままHV回路23に印加され、その動作電流IHVはHV回路23からグランドライン36を介して流れ出るようになっている。HV回路23は上記したHV回路23A、23B及びHV出力回路24を含む回路である。グランドライン36は接地された外部接続端子20に接続されている。
【0042】
図6に示した駆動装置の消費電力Bは、次のように計算することができる。
【0043】
消費電力B=中電圧MV×電流IMV+高電圧HV×電流IHV ・・・(2)
電流IMVを40[mA]とし、電流IHVを35[mA]とすると、上述したようにHV=7[V]、MV=1.8[V]、LV=1.2[V]であるので、消費電力Bは式(2)から、
消費電力B=1.8[V]×40[mA]+7[V]×35[mA]=317[mW]となる。
【0044】
一方、HV回路23Aを流れる電流IHVAが5[mA]、HV回路23B及びHV出力回路24を流れる電流IHV2及びIHV3の合成電流IHVBが30[mA]であるとし、上述したようにHV=7[V]、MV=1.8[V]であるので、その他の電圧値及び電流値は上記した消費電力Bの計算の際の値と等しいとすると、式(1)から消費電力Aを計算すると、
消費電力A=1.8[V]×(40[mA]-30[mA])+7[V]×5[mA]
+7[V]×30[mA]=263[mW]
となる。
図1に示した実施例の駆動装置では、消費電力Aは、
図6の駆動装置例の消費電力Bより17%ほど低下していることが分かる。このように、HV回路23Aには高電圧HVを0[V]のレベルからの電圧レベル範囲が得られるようにその動作電流IHVAをグランドライン36に流し、0[V]のレベルを必要としないHV回路23B及びHV出力回路24を流れる電流IHVBをLV回路22で再利用するので、駆動装置の消費電力を削減することができる。
【0045】
HV回路23B及びHV出力回路24の動作により電流IHVBが変化した場合には、中継接続ライン34の電圧も変動する。このような中継接続ライン34の電圧変動に対してクランプ回路47がその変動を抑制する。また、パスコン48は中継接続ライン34のリップル電圧を抑える。
【0046】
HV出力回路24の出力が特に大きく変動する場合には、有機ELディスプレイパネル11は等価的に
図7に示すように抵抗11aとキャパシタ11bとを有しているので、HV出力回路24では抵抗11a及びキャパシタ11bによって大きなピークを持つ充放電電流が流れる。この電流と中継接続ライン342の寄生抵抗により、中継接続ライン342の電位が一時的に上昇する。この電位上昇は電流IHV3の一部としてパスコン48を流れ、パスコン48を充電させる一方、パスコン48の充電電荷はLV回路22の消費電流ILVにより放電される。しかしながら、当該充放電電流に起因してLV回路22の消費電流ILVが過剰に大きくなると、中継接続ライン342の電圧が過上昇し、その電圧が電界効果トランジスタ29のソースに印加される。これにより電界効果トランジスタ29のゲート・ソース間の電圧Vgsが上昇して電界効果トランジスタ29はオンする。よって、電流IHV3の一部が電界効果トランジスタ29のソース・ドレイン間、そして抵抗30を介してグランドライン36に流れ込む。すなわち、電流IHV3の過剰電流分がグランドライン36に逃がされる。この結果、中継接続ライン342の電圧の過上昇が抑制される。
【0047】
電界効果トランジスタ29のゲート電圧及びそのトランジスタサイズは中継接続ライン342の電位上昇をどの程度に抑えるかによって決定される。実施例では、例えば、低電圧LVより電界効果トランジスタ29のゲート閾値電圧Vt分だけ高い電圧に設定されている。
【0048】
なお、抵抗30は、上記した中継接続ライン342の電位上昇やESDサージ等の際に電界効果トランジスタ29を流れる電流を制限して電界効果トランジスタ29の破壊を防止している。
【0049】
図8は、
図6に示した駆動装置の駆動電圧VOUTが時点T1で階調電圧の変化により大きく低下した場合のグランドライン36の電圧変化を示している。再利用回路25を備えていない
図6の駆動装置では、時点T1でグランドライン36を流れる電流の増大によりグランドライン36の電圧レベルは上昇し、その後、徐々に低下している。
【0050】
図9は、
図1に示した駆動装置においてクランプ回路27を設けないで再利用回路25のクランプ回路47だけが作用する場合の駆動電圧VOUTの電圧変化に対する中継接続ライン342の電圧変化を示している。駆動電圧VOUTが時点T1で階調電圧の変化により大きく低下した場合に、中継接続ライン342の電圧が大きく上昇し、その電圧上昇が駆動電圧VOUTの電圧低下直後において駆動電圧VOUTを不安定にする結果となっている。
【0051】
図10は、
図1に示した駆動装置において、
図5に示したようにクランプ回路27をHV出力回路24毎に設けた場合の駆動電圧VOUTの電圧変化に対する中継接続ライン342の電圧変化を示している。駆動電圧VOUTが時点T1で階調電圧の変化により大きく低下した場合に、クランプ回路27が電流IHV3のうちの余剰な電流分をグランドライン36に直接流し出して中継接続ライン342の電圧上昇を抑えるので、その中継接続ライン342の電圧上昇は
図9の電圧上昇に比べて低く、駆動電圧VOUTの電圧低下直後において駆動電圧VOUTを早急に安定させることができる。この結果、低電圧LVの過上昇も防止することができるのである。
【0052】
なお、上記した各実施例においては、ディスプレイパネルとして有機ELディスプレイパネルを駆動する駆動装置の例を示したが、本発明はこれに限定されず、他のディスプレイパネルを駆動し、その際に複数の異なる電圧レベルの電源電圧が印加されることにより動作するディスプレイ駆動装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 有機ELディスプレイパネル
12 ドライブ部
13、14 電源部
16~20 外部接続端子
21 MV回路
22 LV回路
23、23A、23B HV回路
24 HV出力回路
25 再利用回路
26、28、48 パスコン
27、47 クランプ回路
29、43、44 電界効果トランジスタ
30 抵抗
41 基準電圧生成回路
42 オペアンプ
45、46 スタートアップ回路
51 レギュレータ
70 IC
71~77 パッド