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特許7385679リソグラフィマスクの空間像を3次元的に決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】リソグラフィマスクの空間像を3次元的に決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566173
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020062834
(87)【国際公開番号】W WO2020225411
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】102019206651.8
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ジャブール トゥーフィク
(72)【発明者】
【氏名】コッホ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヒュースマン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲールケ ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴェク ディルク
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0132782(US,A1)
【文献】特表2007-527019(JP,A)
【文献】特表2009-507251(JP,A)
【文献】特開2019-015967(JP,A)
【文献】米国特許第07379175(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィマスク(7)の空間像(Iスキャナ)を、投影露光装置(2)のアナモルフィック投影露光結像光学ユニット(3)による結像の測定強度結果として3次元的に決定するための方法であって、決定するべき前記3D空間像(Iスキャナに対応する波面はデフォーカス値(zwに対応する波面(
【数1】
であり、以下のステップ:
-最初の測定ステップにおいて、同形結像スケールを有する測定結像光学ユニット(15)と少なくとも1つの変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素(Mi)とを有する測定光学ユニットを有する計測システム(14)を用いて、3D空間像(I測定)を、各々がデフォーカス値(zw)に対応している複数の動作状況(
【数2】
)における測定強度結果として測定するステップであって、
--この測定は、前記測定結像光学ユニット(15)において、前記投影露光装置(2)のアナモルフィック投影露光結像光学ユニット(3)の楕円形の入射瞳(8)のアスペクト比と大きさが同じであるアスペクト比を有する開口絞り(16a)を使用して、各場合において動作状況(
【数3】
)に対応している前記測定結像光学ユニット(15)の目標とされるミスアライメント(
【数4】
)の影響下で実行され、
--前記目標とされるミスアライメント(
【数5】
)は、
---それぞれのデフォーカス値(zw)の場合に前記投影露光結像光学ユニット(3)による前記リソグラフィマスク(7)の前記結像の結果として生じる、波面(
【数6】
)と、
---目標とされるミスアライメント(
【数7】
)を有する前記測定結像光学ユニット(15)、すなわち目標を定めるやり方で変位および/または変形される測定光学ユニット構成要素(Mi)による、前記リソグラフィマスク(7)の前記結像の結果として生じる、波面(
【数8】
)と、の間の差の最小化をもたらす、測定するステップと、
-スペクトル(F1…N)を、前記リソグラフィマスク(7)の照明の照明設定の瞳のそれぞれの特定のセクション(σi)における結像光(1)の視野のフーリエ変換として再構築するステップと、
-前記最初の測定ステップにおいて各デフォーカス値(zw)の場合に取得した測定結果(I測定)を、以下の補正項:
--前記再構築されたスペクトル(F1…N)を含めた、前記投影露光装置(2)の前記アナモルフィック投影露光結像光学ユニット(3)による結像のシミュレーションによって生成される、関連付けられたデフォーカス値(zw)に関する計算された3D空間像(
【数9】
)、および
--前記再構築されたスペクトル(F1…N)を含めた、前記測定結像光学ユニット(15)による結像のシミュレーションによって生成される関連付けられたデフォーカス値(zw)に関する、計算された3D空間像(
【数10】
)を用いて補正するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記スペクトル(F1…N)の前記再構築には、
-前記目標とされるミスアライメント(
【数11】
)を使用して前記測定光学ユニット(15)によって測定される結像光強度(
【数12】
)と、
-前記スペクトル(F1…Nのそれぞれに関する暫定候補値を含めた、前記それぞれの目標とされるミスアライメント(
【数13】
)の場合の結像光強度のシミュレーション(
【数14】
)と、の間の差(Δ)の最小化が組み込まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標とされるミスアライメントの場合に複数の変位可能な測定光学ユニット構成要素(Mi,Mi+1)の変位および/または変形が実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記再構築されたスペクトル(F1…N)を確定するために、前記照明設定の前記瞳が3つ以上のセクション(σi)へと細分化されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記再構築されたスペクトル(F1…N)は、測定平面(19)における前記結像光強度(
【数15】
の測定を、各々が前記投影露光結像光学ユニット(3)のデフォーカス値(zw)に対応している前記少なくとも1つの変位可能および/または変形可能な測定光学ユニット構成要素(ni)の複数の変位位置(
【数16】
)において実行することによって確定されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記リソグラフィマスク(7)の前記空間像(Iスキャナ)は、絶対的なデフォーカス値(zw)が理想的なフォーカス位置すなわち像平面(13)から20nmを超えて逸脱している場合に、3次元的に決定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記補正項のうちの少なくとも1つが、前記リソグラフィマスク(7)の回折スペクトルを投影露光中の照明条件に対応する照明条件下で測定することによって確定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記回折スペクトルを測定するために位相回復アルゴリズムが使用されることを特徴とする、請求項に7記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の決定方法を実行するための計測システム(14)であって、
-検査するべき前記リソグラフィマスク(7)を照明するための照明光学ユニットを有する照明システム(4)を備え、
-前記リソグラフィマスク(7)のあるセクションを測定平面(19)内に結像するための結像光学ユニット(15)を備え、
-前記測定平面(19)内に配置された空間分解検知デバイス(20)を備える、計測システム(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドイツ特許出願第DE 10 2019 206 651.8号の内容が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、投影露光装置のアナモルフィック(anamorphic)投影露光結像光学ユニットによる結像の結果として、リソグラフィマスクの空間像(aerial image)を3次元的に決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
そのような方法および計測システムは、米国特許出願公開第2017/0131528号(対応する文書として国際出願公開第2016/012425号)および米国特許出願公開第2017/0132782号から知られている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、アイソモルフィック(isomorphic:同形)結像スケールを有する測定結像光学ユニットを備える計測システムを使用しながら、アナモルフィック投影露光結像光学ユニットによって結像される(imaged)ことになるリソグラフィマスクの3D空間像の決定の正確度を改善することである。
【0005】
この目的は本発明によれば、請求項1に規定される特徴を有する空間像決定方法によって達成される。
【0006】
本発明によれば、少なくとも1つの補正項を使用することで、計測システムの測定光学ユニットの変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素の目標とされるミスアライメント(targeted misalignment:目標とされるずれ)によって、3次元空間像を完成させるために、すなわち結像光学ユニットの像平面に対して垂直な第3の空間像次元を捕捉するために必要な、投影露光結像光学ユニットのデフォーカスされた空間像への近似の改善が可能であることが認識されている。上記少なくとも1つの補正項には、照明設定のそれぞれ再構築されたスペクトルが組み込まれている。少なくとも1つの補正項は、一方の投影露光装置の結像光学ユニットのデフォーカス依存度と他方の計測システムの測定光学ユニットのミスアライメント依存度との間の差に関する照明設定の影響を考慮したものである。両方の補正項が使用される限りにおいて、それらは、最初の測定ステップにおいて取得した測定結果の補正に、好ましくは異なる符号で組み込まれる。2つの補正項には同じ再構築されたスペクトルが組み込まれるので、スペクトルの再構築中に生じる誤差はその場合、2つの補正項の使用によって互いを打ち消し合う。
【0007】
計測システムの同形測定結像光学ユニットを使用することで、決定方法によって、アナモルフィック投影露光結像光学ユニットによって結像されるリソグラフィマスクの3D空間像を非常に精確に決定することが可能になる。このことを使用して、半導体構成要素、特にメモリチップの製造中に、リソグラフィマスク上の元の構造をその結像性能を改善するために最適化することができる。アナモルフィック測定結像光学ユニットを使用する必要はない。また更に、測定結像光学ユニットによる測定中の、視野平面に対して垂直な方向への視野の変位も必要ない。
【0008】
請求項2に記載の再構築に、測定される結像光強度とシミュレートされる結像光強度の間の差の最小化が組み込まれる限りにおいて、スペクトル再構築品質の改善がもたらされる。この結果、方法の補正ステップにおける測定結果の補正が改善される。
【0009】
各場合において異なるデフォーカス値を事前に定めるための測定光学ユニットの目標とされるミスアライメントを生じさせるための、請求項3に記載の複数の変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素によって、一方の投影露光結像光学ユニットによる結像によって生成される波面と、他方の上記波面を近似することが意図されている測定結像光学ユニットの結像によって生成される波面と、の間の差の最小化において利用可能な自由度の数が増える。それぞれの変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素の変位および/または変形の、波面に対する効果は、互いに一次独立であるのが好ましい。最初の測定ステップにおいて最小化するべき、一方の投影露光結像光学ユニットの波面と他方の測定結像光学ユニットの波面との間の差を、こうして有利に小さく保つことができる。この結果投影露光結像光学ユニットの様々なデフォーカス値を、測定光学ユニットによって良好にシミュレートすることができる。測定結像光学ユニットは、投影結像光学ユニットの対応するデフォーカス値をシミュレートするための、測定結像光学ユニットの目標とされるミスアライメントのために、ちょうど1つの変位可能かつ/もしくは変形可能な測定光学ユニット構成要素を備え得るか、ちょうど2つの変位可能かつ/もしくは変形可能な測定光学ユニット構成要素を備え得るか、または、3つ以上の変位可能かつ/もしくは変形可能な測定光学ユニット構成要素、例えば3つの、4つの、5つの、もしくは更にそれ以上の変位可能かつ/もしくは変形可能な測定光学ユニット構成要素を備え得る。
【0010】
請求項4に記載の照明設定瞳の細分化によって、スペクトル再構築の正確度が改善される。細分化は、実際に使用されるリソグラフィマスクの場合に、照明方向のシフトがマスクスペクトルのシフトしかもたらさない、ホプキンス近似(Hopkins approximation)としても知られる手法が、照明方向の小さい変化に対してしか良好な近似を構成しない、という物理的事実を考慮したものである。以降ではこれを「局所的ホプキンス近似」とも呼ぶ。
【0011】
請求項5に記載のスペクトル再構築によって、確定されるスペクトルの正確度が改善される。
【0012】
請求項6に記載の空間像決定方法は、デフォーカス値が比較的高い場合であっても3D空間像データを生成するが、このことは、投影露光動作の安定性を予測するのに有利である。空間像決定方法がカバーするデフォーカス値の範囲は、理想的なフォーカス位置から20nmよりも大きく、30nmよりも大きく、50nmよりも大きく、さもなければ100nmよりも大きく、逸脱する可能性がある。
【0013】
請求項7に記載の回折スペクトル測定によって例えば、再構築されたスペクトルとの比較が可能になる。このことにより、1つの補正項または複数の補正項の確定がより正確になり得る。
【0014】
請求項8に記載の位相回復アルゴリズムは、回折スペクトルの測定との関連において有益であることが判明している。当業者は、そのようなアルゴリズムに関する情報を米国特許出願公開第2017/0132782号に見出すことができる。
【0015】
請求項9に記載の計測システムの利点は、3D空間像決定方法を参照して上で既に説明した利点と一致する。計測システムは、例えば30nmよりも良好であり特に10nmよりも良好であり得る、極めて高い構造解像度で半導体構成要素を製造するための投影露光のために提供される、リソグラフィマスクを測定することができる。
【0016】
本発明の例示的な実施形態を、以下で図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】リソグラフィマスクを結像するためのアナモルフィック投影露光結像光学ユニットを備えるEUVリソグラフィ用の投影露光装置を概略的に示す図である。
図2】同形結像スケールを有する測定結像光学ユニットと、1とは異なるアスペクト比を有する開口絞りと、少なくとも1つの変位可能な測定光学ユニット構成要素と、を備える、リソグラフィマスクの空間像を決定するための計測システムを概略的に示す図である。
図3】特定のデフォーカス値の場合の、図1に係る投影露光装置によるリソグラフィマスクの結像中の像平面内での結像光の強度分布、すなわち像平面の理想的な焦点位置からの測定平面の逸脱を、例として示す図である。
図4】変位可能な測定光学ユニット構成要素が、図3に係るデフォーカスに対応するデフォーカス値が測定結像光学ユニットの目標とされるミスアライメントによって近似されるように設定されている、図2に係る計測システムによって測定される結像光強度を示す図である。
図5】変位可能な測定光学ユニット構成要素が各場合において、異なるデフォーカス値に対応する異なる変位位置にある、レチクルの結像中の計測システムの像平面における一連の結像光強度測定結果を示す図である。
図6】リソグラフィマスクの照明の照明設定の瞳のそれぞれの特定のセクション内への結像光の視野のフーリエ変換を表すスペクトルを使用した空間像の決定における処置を、概略的に示す図であり、スペクトルを決定するこのプロセスは、局所的ホプキンス近似の様式で実行される。
図7】空間像決定における個々の寄与を、すなわち、上段右に計測システムの測定光学ユニットの測定された空間像を、下段左に補正項として、図6に係る再構築されたスペクトルを含めた、アナモルフィック投影露光結像光学ユニットによる結像のシミュレーションによって取得された計算された空間像を、下段右に、上記のスペクトルを含めた、計測システムの測定光学ユニットによる結像のシミュレーションによって生成された計算された空間像の形態の更なる補正項を、示す図であり、異なる空間像が各場合において同じデフォーカス値に割り当てられている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、図1ではボックスによって概略的に描かれているアナモルフィック投影露光結像光学ユニット3を備える投影露光装置2における、EUV照明光または結像光1の光線経路を、メリジオナル断面(meridional section)に対応する断面図で示す。照明光1は投影露光装置2の照明システム4において生成され、上記照明システムは同じくボックスとして概略的に図示されている。照明システム4はEUV光源および照明光学ユニットを含むが、これらのどちらもこれ以上詳細には図示しない。光源はレーザプラズマ源(LPP;レーザ生成プラズマ)または放電源(DPP;放電生成プラズマ)であり得る。原理的には、シンクロトロンベースの光源、例えば自由電子レーザ(FEL)も使用できる。照明光1の使用される波長は、5nmから30nmの間の範囲内であり得る。原理的には、投影露光装置2の変形の場合に、使用されている何らかの他の光波長用の、例えば使用されている193nmの波長用の光源を使用することも可能である。
【0019】
照明光1は、照明システム4の照明光学ユニットにおいて、照明の特定の照明設定、すなわち特定の照明角度分布が得られるように調整される。上記照明設定は、照明システム4の照明光学ユニットの照明瞳における照明光1の特定の強度分布に対応している。
【0020】
位置関係の提示を容易にするために、以降ではxyzデカルト座標系を使用する。図1では、x軸は図面の紙面に対して垂直方向に、そこから出ていくように延びる。y軸は図1において右向きに延びる。z軸は図1において上向きに延びる。
【0021】
照明光1は、投影露光装置2の物体平面6の物体視野(object field)5を照明する。リソグラフィマスク7はレチクルとも呼ばれ、物体平面6内に配置されている。図1において、xy平面と平行に延びる物体平面6の上方に、リソグラフィマスク7の構造断面が概略的に示されている。上記構造断面は、図1の図面の紙面内に存在するように図示されている。リソグラフィマスク7の実際の配置は図1の図面の紙面に対して垂直であり、物体平面6内にある。
【0022】
照明光1は図1に概略的に図示されているようにリソグラフィマスク7で反射され、入射瞳面9内の結像光学ユニット3の入射瞳8に入る。結像光学ユニット3の使用される入射瞳8は、楕円形の外形を有する。
【0023】
結像光学ユニット3内で、照明または結像光1は、入射瞳面9と射出瞳面10の間を伝播する。結像光学ユニット3の円形の射出瞳11は、射出瞳面10内に存在する。結像光学ユニット3はアナモルフィックであり、楕円形の入射瞳8から円形の射出瞳11を生成する。
【0024】
結像光学ユニット3は、物体視野5を、投影露光装置2の像平面13内の像視野(image field)12内に結像する。図1では、像平面13の下方に、像平面13からz方向に値zwだけ離間された平面内で測定された結像光強度分布Iスキャナ、すなわちデフォーカス値zwの場合の結像光強度が、概略的に示されている。投影露光結像光学ユニット3による結像の場合のそのような測定される結像光強度分布Iスキャナの別の例が、図3に示されている。
【0025】
物体平面6と像平面13の間に結像光学ユニット3の構成要素に特に起因して波面収差φが生じるが、図1には上記波面収差が、所望の波面値(デフォーカス=0)からの実際の波面値のデフォーカスの逸脱として、概略的に図示されている。
【0026】
像平面13の周囲の異なるz値における結像光強度Iスキャナ(xy)もまた、投影露光装置2の3D空間像と呼ばれる。投影露光装置2はスキャナとして具現化される。一方のリソグラフィマスク7、および他方の像平面13内に配置されたウエハは、投影露光中に互いに同期させてスキャンされる。その結果、リソグラフィマスク7上の構造がウエハに転写される。
【0027】
図2は、リソグラフィマスク7を測定するための計測システム14を示す。計測システム14は、リソグラフィマスク7の空間像を、投影露光装置2の実際の空間像Iスキャナ(xyz)への近似として3次元的に決定するために使用される。
【0028】
図1を参照して既に上で説明した構成要素および機能は、図2において同じ参照符号を有しており、改めて詳細に検討はしない。
【0029】
投影露光装置2のアナモルフィック結像光学ユニット3と対照的に、計測システム14の測定結像光学ユニット15は、同形光学ユニットとして、すなわち同形結像スケールを有する光学ユニットとして具現化される。この場合、グローバルな結像スケールを別として、測定入射瞳16は形状に関して忠実に測定出射瞳17へと変換される。計測システム14は、入射瞳面9内に楕円形の開口絞り16aを有する。計測システムにおけるそのような楕円形の開口絞り16aの実施形態は、国際出願公開第2016/012426号から知られる。上記楕円形の開口絞り16aは、測定結像光学ユニット15の楕円形の測定入射瞳16を生成する。この場合、開口絞り16aの内側境界は、測定入射瞳16の外郭を事前に画定する。この楕円形の測定入射瞳16は、楕円形の測定射出瞳17へと変換される。楕円形の測定入射瞳16のアスペクト比は、投影露光装置2の結像光学ユニット3の楕円形の入射瞳8のアスペクト比と大きさが厳密に同じであり得る。計測システムに関しては、国際出願公開第2016/012425号も参照する。
【0030】
測定結像光学ユニット15は、少なくとも1つの変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素を有する。そのような測定光学ユニット構成要素が、図2においてMiでミラーとして概略的に図示されている。測定結像光学ユニット15は、複数のミラーM1、M2…を備えることができ、対応する複数のそのような測定光学ユニット構成要素Mi、Mi+1を備えることができる。
【0031】
変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素Miの変位可能性および/または操作可能性が、図2においてマニピュレータレバー18によって概略的に示されている。図2では操作の自由度が両矢印αとして示されている。変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素Miのそれぞれに設定されたミスアライメント
【数1】
に応じて波面収差φ(α)が生じるが、これは図1の場合と類似の様式で図2にも概略的に図示されている。
【0032】
CCDカメラであり得る空間分解検知デバイス(spatially resolving detection device)20は、計測システム14の測定平面19内に配置されており、上記測定平面は測定結像光学ユニットの像平面を構成している。
【0033】
図1の場合と類似の様式で、図2では測定平面19の下方に、変位可能かつ/または変形可能な測定光学ユニット構成要素Miのそれぞれのミスアライメント
【数2】
に応じた強度測定の結果
【数3】
が示されている。そのような強度測定I測定の更なる例が、図4に示されている。
【0034】
投影露光装置2の空間像は測定平面19における計測システム14の測定結果から決定することができるが、これについて以下で詳細に説明する。
【0035】
このことは、レイリー単位(Rayleigh unit)λ/NA2 ウェーハの絶対値を有するデフォーカス値zrの場合に、投影露光装置2の結像光学ユニット3の波面収差φを最初に計算することを含む。この場合、λは照明光1の波長であり、NAウェーハは投影露光装置2の結像光学ユニット3の像側の開口数である。この波面収差は波数ベクトルkに関して決定される。
【0036】
次いでこの波面収差がゼルニケ(Zernike)関数の展開として記述され、今度は像平面13におけるスキャナ波面収差のこのゼルニケ展開の目標ゼルニケ係数
【数4】
が得られる。次いで、ゼルニケ展開すると係数
【数5】
に最も近いゼルニケ係数
【数6】
が得られる測定結像光学ユニット15の波面収差φが得られるような、1つのマニピュレータ位置Δα、または複数のマニピュレータ位置Δαiの組合せを求める。このマニピュレータ位置、またはマニピュレータ位置のこのセットの場合に、次いでリソグラフィマスク7の像が、検知デバイス20を用いて計測システム14によって記録される。
【0037】
次いでこの方法が異なるデフォーカス値に対して繰り返されるが、これには、最初に投影露光装置2の結像光学ユニット3のそのデフォーカスの場合の波面収差を決定することと、続いて、このデフォーカス波面収差を最も良好にシミュレートする測定結像光学ユニットの操作Δαのセットおよびゼルニケ係数のセットを決定することと、が含まれる。
【0038】
このことを例えば、レイリー単位にn=-2、-1.5、-1、-0.5、0、0.5、1、1.5、および2を掛けたものについて行うことができる。図5は、測定平面19における強度測定
【数7】
の対応する結果を示す。これらのデフォーカス値の各々の場合に、マニピュレータ設定がこうして、測定結像光学ユニットの関連付けられた波面収差のゼルニケ係数
【数8】
が投影露光装置2の結像光学ユニットの波面収差のゼルニケ係数
【数9】
と各場合において最小の誤差で整合される(matched:一致させられる、匹敵する)ようなかたちで実行される。
【0039】
リソグラフィマスク7の空間像Iスキャナに関する3次元決定方法の最初の測定ステップでは、3D空間像
【数10】
はしたがって、同形の開口数を有する測定光学ユニット15と少なくとも1つの変位可能な測定光学ユニット構成要素Miとを有する計測システム14を用いて、デフォーカス値zwの関数としての、すなわち各々がデフォーカス値(zw)に対応している複数のデフォーカス測定平面にわたる、測定強度として測定される。この測定は、測定結像光学ユニット15において、1との違いが10%超であるアスペクト比を有する、入射瞳16のための楕円形の開口絞り16aを使用して行われる。この測定は更に、デフォーカス値にそれぞれ割り当てられている、測定結像光学ユニット15の目標とされるミスアライメントの影響下で行われる。上記目標とされるミスアライメントは、上で説明したように、投影露光装置2の結像光学ユニット3によるリソグラフィマスクの結像の結果として生じる、波面
【数11】
と、目標を定めるやり方で変位される測定光学ユニット構成要素Miを有する、測定結像光学ユニット15によるリソグラフィマスク7の結像の結果として生じる、波面
【数12】
と、の間の差の、最小化をもたらす。
【0040】
レイリー単位を様々に(n=-2,…n=2)増倍したものに対応するマニピュレータ位置の場合に計測システム14によって測定された一連の空間像
【数13】
と、更に、誤差を最小化した関連付けられた波面収差の整合に際して得られる対応するゼルニケ係数
【数14】
と、測定において使用されかつ投影露光中に使用される照明設定に対応している照明設定とが、その後マスクスペクトルを再構築するために使用される。
【0041】
この場合、文献においてホプキンス近似として知られる近似が使用される。この近似は、2つの異なる照明方向についてのそれぞれのマスクスペクトルが、シフト以外は同一であるとの仮定に基づいている。この場合、ホプキンス近似が局所的にのみ、すなわち互いに近い照明方向に対して、適用される。このことは、照明方向が互いからより遠く離れている場合に、リソグラフィマスクの3次元構造に起因する陰影によって異なる照明スペクトルが生じる、という事実を考慮したものである。ホプキンス近似に関する詳細は例えば、参考図書「Advances in FDTD Computational Electrodynamics」、A. Taflove(編集)、Artech House、2013年の、第15章で説明されている。
【0042】
図6の左側には、照明システム4の照明瞳面21(図1および図2を参照)における強度分布として図示された、例示的な照明設定が示されている。照明設定は四重極照明設定として具現化され、この場合図6では、左側に個々の照明ポール(illumination pole:照明極)σが、瞳座標qx、qyの関数としてσ1からσ4で図示されている。これらのポールσ1からσ4の各々は、照明設定の瞳のあるセクションを表す。局所的ホプキンス近似によれば、これらのセクションσ1からσ4の各々に、波数ベクトル
【数15】
の関数としてのフーリエ変換F1からF4を割り当てることができる。局所的ホプキンス近似によるそれぞれのポールσiにおける照明角度の変化は、リソグラフィマスク7のそれぞれの回折スペクトルFiの周波数シフトをもたらす。
【0043】
この非局所的ホプキンス近似を使用して、空間像全体を、4つの照明ポールに関する4つのスペクトルの重ね合わせとして、以下のように書くことができる。
【数16】
この場合、
【数17】
はN個のセクションへと、すなわちこの場合は4つのセクションへと、細分化された照明設定であり、
【数18】
は投影光学ユニットの振幅アポダイゼーション(apodization)関数(利用可能な開口数内では1、それ以外では0)であり、
【数19】
は、ゼルニケ係数
【数20】
を用いたゼルニケ関数の展開として記述される、結像光学ユニットの波面収差であり、
【数21】
は、各瞳セクションσi(i=1・・・・N)に割り当てられた、上で説明したマスクスペクトルである。
【0044】
マスクスペクトルF1…Nの再構築において、次いで、図5に係る一連の空間像測定および関連付けられたゼルニケ係数
【数22】
を用いて、以下の処置が取られる。
【0045】
照明設定の各セクションσ1について、スペクトルFiが再構築される。この目的のために、最初に暫定候補値として初期スペクトルまたは未処理のスペクトルFiが使用され、上記スペクトルは、例えばそれぞれの空間像測定のフーリエ変換によって、未処理の状態で生成される。その後、これらの未処理のスペクトルFiから空間像が計算されるが、各場合において、最初の測定ステップにおけるそれぞれの空間像測定に関して確定されたゼルニケ係数が使用される。全ての瞳セクションについて、すなわち例えば4つの照明ポールについて、実際の空間像測定とシミュレーションの間の差Δが決定される。
【0046】
【数23】
このとき未処理のスペクトルFiは各場合において差Δを最小化するべく繰り返し整合され、この差の計算は任意選択的に何回か繰り返される。
【0047】
全体的には、スペクトルFiがこのように、リソグラフィマスク7の照明の照明設定の瞳のそれぞれの特定のセクションσi内への、結像光1の視野のフーリエ変換として再構築される。この再構築には、変位可能な測定光学ユニット構成要素Miの目標とされるミスアライメントを使用して測定光学ユニット15によって測定される結像光強度
【数24】
と、それぞれのスペクトルに関するそれぞれの暫定候補値を含めた結像光強度のシミュレーション
【数25】
と、の間の差Δが組み込まれる。
【0048】
再構築するべきスペクトルFiの繰り返しの近似による値Δの改善がそれ以上得られなくなった時点で、再構築されたスペクトルFiが確立され、次いで上記再構築されたスペクトルFiに基づいて、2つの補正項を計算できる。
【0049】
この場合、第1の補正項
【数26】
は、再構築されたスペクトルFiを含めた、投影露光装置2のアナモルフィック投影露光結像光学ユニット3による結像のシミュレーションによって生成される関連付けられたデフォーカス値zwの場合の、計算された3D空間像である。
【0050】
第2の補正項は、再構築されたスペクトルFiを含めた、測定結像光学ユニット15による結像のシミュレーションによって生成される関連付けられたデフォーカス値zwの場合の、計算された3D空間像
【数27】
である。
【0051】
最初の測定ステップの結果
【数28】
、および2つの補正項から、アナモルフィック投影露光結像光学ユニット3の空間像、Iスキャナが、以下の式に従って決定され得る:
【数29】
シミュレーションまたは再構築の誤差は、両方の補正項において異なる符号で現れるので、互いを相互に打ち消し合うことが明らかである。
【0052】
図7は、上記の式に従う3D空間像Iスキャナの計算に組み込まれる様々な項を図式的に示す。上段左には、まだ計算前の、アナモルフィック投影結像光学ユニット3によってもたらされる実際の波面収差の場合の求められる空間像が、クエスチョンマークで表されている。最初の測定ステップによる空間像、
【数30】
が、上段右に図示されている。投影結像光学ユニット3に基づくシミュレーションの結果としての第1の補正項、
【数31】
が、下段左に図示されており、第2の補正項、すなわち測定光学ユニットのシミュレーションに基づく計算された空間像
【数32】
が、下段右に図示されている。
【0053】
補正項のうちの少なくとも1つを確定するために、米国特許出願公開第2017/0132782号に記載されている方法によって測定される回折スペクトルを使用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7