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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20231115BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20231115BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61F13/514 100
A61F13/494 110
A61F13/514 211
A61F13/539
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022075119
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2023163907
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久家 健太
(72)【発明者】
【氏名】川上 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 真帆
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-537(JP,A)
【文献】特開2007-175247(JP,A)
【文献】米国特許第6822136(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、
着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、
少なくとも前記股下域に配置された吸収コアと、
前記吸収コアよりも非肌面側に配置された液不透過性のバックフィルムと、
前記前後方向に伸縮し、かつ着用者の脚周りに配置される脚周り伸縮部と、を有する吸収性物品であって、
前記バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有し、
前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っており、
前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記脚周り伸縮部の内側縁と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている、吸収性物品。
【請求項2】
前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、
着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、
少なくとも前記股下域に配置され、体液を保持する吸収コアと、
前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックフィルムと、
前記前後方向に伸縮し、かつ前記吸収コアよりも肌面側に起立可能な防漏伸縮部と、を有する吸収性物品であって、
前記バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有し、
前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っており、
前記防漏伸縮部は、基端部と、前記基端部から前記幅方向に延び、肌面側に起立する起立部と、を有し、
前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記基端部と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている、吸収性物品。
【請求項3】
前記水抜き領域の耐水圧は、290mmH20以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記水抜き領域の内側縁は、前記吸収コアの外側縁よりも前記幅方向の外側に位置する、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記バックフィルムよりも非肌面側に配置されたバック不織布を有し、
前記水抜き領域には、前記バック不織布が配置されており、
前記水抜き領域の内側部には、前記バックフィルムの外側縁と前記バック不織布が非接合である非接合領域が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記水抜き領域は、前記股下域の前記前後方向の全域に亘って連続して設けられている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収コアと、前記バックフィルムと、前記吸収コアよりも肌面側に配置されたトップシートと、を含む吸収性本体を有し、
前記股下域は、前記股下域を前記前後方向に三等分した領域を有し、
当該領域は、前記前後方向の中央に位置する中央股下域と、前記中央股下域よりも前記前後方向の外側に位置する外股下域と、を有し、
前記水抜き領域は、前記外股下域において、前記吸収性本体の前記幅方向の全域に亘って連続して設けられている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記水抜き領域は、液不透過性のフィルムが配置されてなく、不織布が配置されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記水抜き領域に配置されたたシートには、開口又は切り込みが形成されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項10】
伸縮可能な弾性部材が配置されていない非伸縮領域を有し、
前記水抜き領域の少なくとも一部は、前記非伸縮領域によって構成されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記水抜き領域の少なくとも一部は、伸縮可能な弾性部材が配置された伸縮領域によって構成されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水遊び等に使用される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乳幼児のプール等での使用を前提とし、陸上で排泄物を保持し、水中で便や便の粒子が水中に拡散するのを防止する機能を備えた吸収性物品(スイミングパンツとも呼ばれている)が開示されている。特許文献1の吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側のバックシートと、これらの間に介在され、トップシートを透過した排泄物を受け入れ保持する吸収コアを基本要素としている。
【0003】
このような吸収性物品を着用して泳いだ場合や水に浸かった場合には、当該吸収性物品の内部に入った水が保持されたままとなり、吸収性物品の着脱がし難かったり、水の重量により歩行し難かったり、水の重みによるズレが生じ、内部に保持された便が外に出てしまったりする問題があった。上記背景に鑑みて、特許文献1にかかる吸収性物品は、吸収コアとバックシートとの間に水溶性フィルムを設けるとともに、バックシートを親水性不織布によって構成し、陸上では排泄物を好適に保持できる一方で、水に漬かった場合には水溶性フィルムが解けることで水抜けし、吸収性物品の内部に入った水を排出できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-206311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の吸収性物品には、以下の問題があった。
着用者が水中で遊んでいる場合や、水に浸かった後に陸上に上がった場合には、水溶性フィルムが溶けてしまい、吸収性物品によって体液(尿)を保持することができなくなる。そのため、吸収性物品によって尿を吸収することができず、衛生的に使用できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、水に浸かった後においても体液を保持しつつ、内部の水分を排出できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様1に係る吸収性物品は、前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、少なくとも前記股下域に配置され吸収コアと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置された液不透過性のバックフィルムと、前記前後方向に伸縮し、かつ着用者の脚周りに配置される脚周り伸縮部と、を有する。吸収性物品は、前記バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有する。前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っている。前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記脚周り伸縮部の内側縁と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている。
【0008】
態様2に係る吸収性物品は、前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、少なくとも前記股下域に配置され、体液を保持する吸収コアと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックフィルムと、前記前後方向に伸縮し、かつ吸収コアよりも肌面側に起立可能な防漏伸縮部と、を有する。吸収性物品は、バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有する。前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っている。前記防漏伸縮部は、基端部と、前記基端部から前記幅方向に延び、肌面側に起立する起立部と、を有する。前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記基端部と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る吸収性物品の模式正面図である。
図2図2は、本実施形態に係る吸収性物品の展開状態の模式平面図である。
図3図3は、図2に示すA-A線に沿った模式断面図である。
図4図4は、図2に示すB-B線に沿った模式断面図である。
図5図5は、着用状態の吸収性物品を模式的に示した図である。
図6図6は、着用状態の吸収性物品を模式的に示した図である。
図7図7は、変形例1に係る吸収性物品の展開状態の模式平面図である。
図8図8は、変形例2に係る吸収性物品の模式断面図である。
図9図9は、変形例3に係る吸収性物品の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1に係る発明は、以下の特徴を有する。吸収性物品は、前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、少なくとも前記股下域に配置され吸収コアと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置された液不透過性のバックフィルムと、前記前後方向に伸縮し、かつ着用者の脚周りに配置される脚周り伸縮部と、を有する。吸収性物品は、前記バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有する。前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っている。前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記脚周り伸縮部の内側縁と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている。吸収性物品を着用した着用者が水に浸かった後に水から上がると、吸収コアに水がたまり、股下域の前後方向の中央かつ吸収コアの幅方向の中央が下に膨らむように垂れ下がる。このとき、吸収コアの側方に位置する脚周り伸縮部は、その収縮によって脚にフィットし、上側に引き上げられた状態となる。よって、吸収性物品は、正面視にて下側に向かって凸状に変形する。当該脚周り伸縮部と吸収コアの間には、水抜き領域が配置されている。よって、吸収コアの幅方向の中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、吸収コアの側方から水が抜け、吸収性物品内の水分を排出できる。また、吸収コアの面積の50%以上を覆うように液不透過性を有するバックフィルムが配置されているため、当該バックフィルムによって体液を保持することができ、一旦水に浸かった後にも衛生的に使用できる。また、脚周り伸縮部近傍に水抜き領域が配置されているため、水に浸かった後に吸収性物品を脱ぐ際に、水の吸収によって吸収性物品が脚に引っかかって脱ぎにくくなる不具合を抑制できる。
【0011】
態様2に係る発明は、以下の特徴を有する。吸収性物品は、前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、及び厚さ方向と、着用者の胴回りを覆う胴回り域と、前記胴回り域よりも前記前後方向の内側に位置する股下域と、少なくとも前記股下域に配置され、体液を保持する吸収コアと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックフィルムと、前記前後方向に伸縮し、かつ吸収コアよりも肌面側に起立可能な防漏伸縮部と、を有する。吸収性物品は、バックフィルムが配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域を有する。前記バックフィルムは、前記吸収コアの面積の50%以上を覆っている。前記防漏伸縮部は、基端部と、前記基端部から前記幅方向に延び、肌面側に起立する起立部と、を有する。前記水抜き領域は、前記幅方向において、前記基端部と前記吸収コアの外側縁の間に配置されている。防漏伸縮部の基端部と吸収コアの間に、水抜き領域が配置されている。よって、吸収コアの幅方向の中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、吸収コアの側方から水が抜け、吸収性物品内の水分を排出できる。また、吸収コアの面積の50%以上を覆うように液不透過性を有するバックフィルムが配置されているため、当該バックフィルムによって体液を保持することができ、一旦水に浸かった後にも衛生的に使用できる。また、防漏伸縮部の基端部の近傍に水抜き領域が配置されているため、起立部の支点が水の重みによって垂れ下がることを抑制し、起立部の起立状態を維持できる。よって、水の重みによって吸収コアが垂れ下がった場合であっても、起立部によって吸収コアの側方に壁を形成し、便が外にでる不具合を抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、態様3に係る発明は、態様1又は態様2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域の耐水圧は、290mmH20以下である。水抜き領域の耐水圧が290mmH20であることにより、着用状態において吸収性物品の内部の水分を適切に排出することができる。
【0013】
好ましい態様によれば、態様4に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域の内側縁は、前記吸収コアの外側縁よりも前記幅方向の外側に位置する。本態様によれば、吸収コアと水抜き領域が幅方向に離間しているため、吸収コアによって吸収した体液が水抜き領域を介して排出されることを抑制できる。
【0014】
好ましい態様によれば、態様5に係る発明は、態様1から態様4のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記バックフィルムよりも非肌面側に配置されたバック不織布を有する。前記水抜き領域には、前記バック不織布が配置されている。前記水抜き領域の内側部には、バックフィルムの外側縁とバック不織布が非接合である非接合領域が設けられている。非接合領域は、接合領域と比較してシート同士が密着せずに、シート同士に空間が形成され易い。非接合領域による空間を介してより水分が排出され易い。よって、吸収性物品の内部の水分を排出し易くなる。
【0015】
好ましい態様によれば、態様6に係る発明は、態様1から態様5のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域は、前記股下域の前記前後方向の全域に亘って連続して設けられている。本態様によれば、股下域の前後方向の全域に亘って、吸収コアの側方から体液を排出できる。着色者の脚によって股下域の前後方向の中心が挟まれる等によって、水抜き領域の一部が閉じてしまって水抜き領域が機能しない場合であっても、水抜き領域の他の部分によって水分を排出できる。
【0016】
好ましい態様によれば、態様7に係る発明は、態様1から態様6のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収コアと、前記バックフィルムと、前記吸収コアよりも肌面側に配置されたトップシートと、を含む吸収性本体を有する。前記股下域は、前記股下域を前後方向に三等分した領域を有する。当該領域は、前記前後方向の中央に位置する中央股下域と、前記中央股下域よりも前記前後方向の外側に位置する外股下域と、を有する。前記水抜き領域は、前記外股下域において、前記吸収性本体の前記幅方向の全域に亘って連続して設けられている。本態様によれば、着用者の脚の動きによって中央股下域の水抜き領域が閉じてしまい、当該部分の水抜き領域が機能しない場合であっても、外股下域の水抜き領域によって水分を排出できる。
【0017】
好ましい態様によれば、態様8に係る発明は、態様1から態様7のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域は、液不透過性のフィルムが配置されてなく、不織布が配置されている。本態様によれば、水抜き領域にフィルムが配置されていないため、水抜き領域を介して水分を排出できる。また、不織布が配置されており、不織布を介して水分を徐々に排出できるため、一度に大量の水分が排出されることを抑制できる。
【0018】
好ましい態様によれば、態様9に係る発明は、態様1から態様8のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域に配置されたたシートには、開口又は切り込みが形成されている。本態様によれば、水抜き領域に配置されたシートの開口又は切り込みを介して水分を迅速に排出できる。
【0019】
好ましい態様によれば、態様10に係る発明は、態様1から態様9のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。吸収性物品は、伸縮可能な弾性部材が配置されていない非伸縮領域を有する。前記水抜き領域の少なくとも一部は、前記非伸縮領域によって構成されている。本態様によれば、水抜き領域が弾性部材によって収縮することを抑制し、水抜き領域の面積を確保し、当該水抜き領域による水分の排出効果を維持できる。
【0020】
好ましい態様によれば、態様11に係る発明は、態様1から態様10のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記水抜き領域の少なくとも一部は、伸縮可能な弾性部材が配置された伸縮領域によって構成されている。本態様によれば、水抜き領域が弾性部材によって収縮し、水抜き領域に摩擦が生じ、当該摩擦によって水抜き領域による水分の排出を促すことができる。
【0021】
(2)吸収性物品の全体概略構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品1について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。吸収性物品1は、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつである。実施形態の吸収性物品1は、パンツ型の使い捨ておむつであり、より詳細には、水遊びに適した使い捨て水着である。
【0022】
図1は、本実施形態に係る吸収性物品1の模式正面図である。図2は、本実施形態に係る吸収性物品1の展開状態の模式平面図である。図2に示す模式平面図は、後述するサイド接合部18を展開した状態において吸収性物品1を皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。図2は、吸収性物品1を肌面側T1から見た模式平面図である。図3及び図4は、本実施形態に係る吸収性物品1の模式断面図である。図3は、図2に示すA-A線に沿った模式断面図である。図4は、図2に示すB-B線に沿った模式断面図である。なお、説明の便宜上、各部材が厚さ方向において離間していたとしても、実際の製品では厚さ方向に接していることに留意すべきである。
【0023】
吸収性物品1は、前後方向L、幅方向W、及び厚さ方向Tを有する。前後方向Lは、身体前側と身体後側とに延びる方向によって規定される。言い換えると、前後方向Lは、展開された吸収性物品1において前後に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lに直交する方向である。また、厚さ方向Tは、前後方向Lと幅方向Wの両方に直交する。厚さ方向Tは、着用者側に向かう肌面側T1と、肌面側と反対側の非肌面側T2と、に延びる。吸収性物品1は、前胴回り域S1と、後胴回り域S2と、股下域S3と、を有する。前胴回り域S1は、着用者の前胴回り(腹部)に対向する領域である。後胴回り域S2は、着用者の後胴回り(背部)に対向する領域であり、装着時に身体(臀部)が載せられる領域を含む。股下域S3は、着用者の股下に位置し、前胴回り域S1と後胴回り域S2との間に挟まれた領域である。
【0024】
図1に示すように、幅方向Wにおける前胴回り域S1の端部と、幅方向Wにおける後胴回り域S2の端部と、を接合したサイド接合部18が設けられていてよい。サイド接合部18は、前胴回り域S1の外側部と後胴回り域S2の外側部を互いに係止した部分によって規定される。図1に示すように、サイド接合部18が形成された状態で、吸収性物品1には、着用者の胴が通されるウエスト開口部16と、着用者の脚がそれぞれ挿入される一対の脚周り開口部17と、が形成される。ウエスト開口部16は、前胴回り域S1の前端縁S1Fと、後胴回り域S2の後端縁S2Rとによって規定されていてよい。
【0025】
図2は、サイド接合部18における接合を解除し、吸収性物品1を展開した状態を示している。サイド接合部18は、前外装体20及び後外装体30のそれぞれにおいて、前後方向Lに沿って延びていてよい。パンツ型の吸収性物品1においては、前胴回り域S1と股下域S3との境界は、前外装体20に設けられたサイド接合部18の後端縁によって規定されていてよい。同様に、後胴回り域S2と股下域S3との境界は、後外装体30に設けられたサイド接合部18の前端縁によって規定されていてよい。なお、股下域S3は、脚周り開口部17が設けられた領域であってもよい。脚周り開口部17は、前胴回り域S1及び後胴回り域S2よりも幅方向Wの内側に凹んでいる。
【0026】
なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。
【0027】
本実施形態では、吸収性物品1は、外装体15と吸収性本体40とを有していてよい。外装体15は、吸収性本体40と厚さ方向Tに重なっている。外装体15は、少なくとも前胴回り域S1と後胴回り域S2に配置されてよい。本実施の形態の外装体15は、前胴回り域S1に配置された前外装体20と、後胴回り域S2に配置された後外装体30と、を有している。しかし、他の形態において、外装体15は、前胴回り域S1、股下域S3及び後胴回り域S2に亘って連続して設けられてよい。外装体15の少なくとも一部は、吸収性本体40よりも非肌面側T2に配置されてよい。図4に示すように、外装体15は、複数のシート21、23と、シート21間に配置された外装弾性部材22と、を有してよい。外装弾性部材22は、幅方向Wに伸長した状態でシートに接合されている。外装体15を構成するシートは、吸収性本体40よりも非肌面側T2に配置された第1外装シート21と、吸収性本体40よりも肌面側T1に配置された第2外装シート23と、を有してよい。
【0028】
吸収性物品1は、少なくとも股下域S3に配置された吸収コア51と、吸収コア51よりも非肌面側T2に配置された液不透過性のバックフィルム42と、吸収コア51よりも肌面側T1に配置され、着用者の肌に当接するトップシート41を有してよい。吸収コア51は、吸収体50を構成し、液体を吸収する吸収材料を含む。吸収コア51は、例えば粉砕パルプもしくは高吸収性ポリマー(SAP)、又はこれらの混合物を含んでいてよい。吸収コア51は、前後方向Lにおいて、前胴回り域S1から後胴回り域S2にわたって延びていてもよい。吸収体は、吸収コア51を覆うコアラップ52を有してもよい。コアラップ52は、厚さ方向Tにおいて、吸収コア51を挟んでよい。コアラップ52は、例えばティッシュや不織布によって構成されていてよい。なお、吸収コア51は、好適にSAPを有してなく、パルプ及び不織布の少なくともいずれかによって構成されてよい。当該構成によれば、吸収コア51によって体液を保持しすぎず、吸収性物品1の内部(吸収性物品によって保持した水分、及び吸収性物品の内側に一時的に溜まった水分)の水分の排出を促すことができる。
【0029】
バックフィルム42は、液不透過性のフィルムによって構成され、吸収コア51の非肌面側T2を覆い、吸収コア51によって保持された体液の漏れを抑制する。バックフィルム42は、吸収コア51の平面視の面積の50%以上を覆っている。そのため、バックフィルム42によって体液を保持することができ、一旦着用者が水に浸かった後にも当該吸収性物品1を衛生的に使用できる。バックフィルム42の外端縁42Fは、吸収コア51の外端縁51Fよりも前後方向Lの外側に位置してよく、後胴回り域S2及び前胴回り域S1に位置してよい。すなわち、バックフィルム42は、前胴回り域S1から後胴回り域S2に亘って延びていてもよい。バックフィルム42の外側縁42Eは、吸収コア51の外側縁51Eよりも幅方向Wの外側に位置してよく、吸収体50の外側縁50Eよりも幅方向Wの外側に位置してよいし、トップシート41の外側縁41Eよりも幅方向Wの外側に位置してよい。
【0030】
トップシート41は、吸収性本体40の幅方向Wの中央に位置し、着用者の肌面に当接するシートである。トップシートは、液透過性を有する。吸収性物品1に排出された体液は、トップシート41を介して吸収体50に導かれる。本実施の形態のトップシートの幅方向Wの中央は、吸収体50の肌面側T1を覆い、かつトップシートの幅方向Wの両側部は、吸収体50の非肌面側T2にそれぞれ折り返され、吸収体50の非肌面の一部を覆っている。吸収体50の非肌面側T2に折り返されたトップシート同士は、幅方向Wに離間している。なお、吸収コア51、コアラップ52、トップシート41及びバックフィルム42は、本実施の形態において吸収性本体40に設けられている。しかし、変形例に係る吸収性物品は、吸収性本体を備えず、吸収コア51、コアラップ52、トップシート41及びバックフィルム42は、外装体15と一体化して設けられていてもよい。
【0031】
吸収性物品1は、前後方向Lに伸縮し、かつ着用者の脚周りに配置される脚周り伸縮部60を有してよい。脚周り伸縮部60は、着用者の脚に沿って配置される。脚周り伸縮部60は、吸収体50の非肌面側T2に配置されたバック不織布61と、バック不織布61に接合された脚周り弾性部材62と、によって構成されてよい。バック不織布61の液透過性は、バックフィルム42の液透過性よりも高い。バック不織布61は、バックフィルム42よりも非肌面側T2に配置され、バックフィルム42よりも幅方向Wの外側に延出している。バック不織布61は、バックフィルム42よりも幅方向Wの外側に延出した領域において、前後方向Lに沿った外折り目FL1を基点に幅方向Wの内側に折り返されている。折り返されたバック不織布61は、トップシート41の肌面側T1を覆う位置まで延び、当該領域において、前後方向Lに沿った内折り目FL2を基点に幅方向Wの外側に折り返されている。内折り目FL2を基点に折り返されたバック不織布61は、外折り目FL1を基点に折り返されたバック不織布61間に配置されている。よって、外折り目FL1近傍においては、3枚のバック不織布61が積層されている。内折り目FL2を基点に折り返されたバック不織布61と、バックフィルム42の非肌面側T2から延びたバック不織布61と、の間に、脚周り弾性部材62が配置されている。脚周り弾性部材62は、幅方向Wに間隔を空けて、左右2本ずつ配置されている。脚周り伸縮部60は、脚周り弾性部材62によって前後方向Lに伸縮する領域である。前後方向Lに伸長可能な複数の脚周り弾性部材62を有する形態にあっては、複数の脚周り弾性部材62のうち最も幅方向Wの内側に位置する脚周り弾性部材が脚周り伸縮部60の内側縁60Iを構成し、複数の脚周り弾性部材のうち最も幅方向Wの外側に位置する脚周り弾性部材が脚周り伸縮部60の外側縁60Eを構成する。本実施の形態では、幅方向Wに間隔を空けて2本の脚周り弾性部材62が配置されており、幅方向Wの内側に位置する脚周り弾性部材62が脚周り伸縮部60の内側縁60Iを構成する。
【0032】
吸収性物品1は、前後方向Lに伸縮し、かつ吸収コア51よりも肌面側T1に起立可能な防漏伸縮部65を有してよい。防漏伸縮部65は、吸収体50の幅方向Wの中心に対する両側において、吸収体50よりも肌面側T1に起立し、体液の横漏れを抑制する。防漏伸縮部65は、トップシート41の側部を覆うバック不織布61と、バック不織布61に接合された防漏弾性部材66と、によって構成されてよい。上述のように、バック不織布61は、内折り目FL2を基点に折り返されており、当該内折り目FL2を基点に折り返されたバック不織布61間に、前後方向Lに伸長された防漏弾性部材66が配置されている。なお、本実施の形態の防漏伸縮部65及び脚周り伸縮部60は、同一のバック不織布61によって構成されている。しかし、変形例において、防漏伸縮部65及び脚周り伸縮部60は、別々のシートによって構成されていてもよい。
【0033】
防漏伸縮部65は、基端部67と、基端部67から幅方向Wに延び、肌面側T1に起立する起立部68と、を有してよい。起立部68は、肌面側T1に起立する部分であり、防漏弾性部材66の収縮によって起立する部分であってよい。基端部67は、起立部68の起立支点のうち、基端部67よりも幅方向Wにずれて配置された支点である。本実施の形態の防漏伸縮部65は、いわゆる内倒れギャザーであり、基端部67は、起立部68よりも幅方向Wの外側に位置している。しかし、変形例において、防漏伸縮部は、いわゆる外倒れギャザーであり、基端部67は、起立部68よりも幅方向Wの内側に位置してもよい。基端部67は、内折り目FL2を基点に折り返されたバック不織布61が、バックフィルム42の非肌面側T2から延びたバック不織布61に接合された部分によって構成されている。基端部67は、内倒れギャザーにおいては、接合部分の内側縁によって構成され、外倒れギャザーにおいては、接合部分の外側縁によって構成される。基端部67は、防漏伸縮部を構成するシート(本実施の形態においては、バック不織布)が、当該シートの非肌面側に位置するシートに接合された部分によって構成されてよい。接合部分が吸収コア51の肌面側に重なっている形態にあっては、基端部67も、吸収コアの肌面側に重なって配置される。防漏伸縮部65は、起立部68よりも前後方向Lの外側に位置する前後基端部69(図2参照)を有してもよい。前後基端部69は、起立部68の起立支点のうち、起立部68よりも前後方向Lの外側に配置された支点である。前後基端部69は、バック不織布61がトップシート41に接合された領域の内端縁であってよい。
【0034】
本実施の形態の吸収性物品1は、水に浸かった後においても体液を保持しつつ、吸収性物品1の内部の水分を排出できるように構成されている。図5は、水に浸かった後における吸収性物品1の着用状態を模式的に示した図である。図5は、図3に示す断面を基準としており、説明の便宜上、吸収体とトップシートを纏めて示している。図6は、着用状態の吸収性物品の模式断面図であり、図3に示す断面を基準とした断面図である。図6において、着用者の身体のラインをBLにて示し、吸収性物品の内部に溜まった水分のラインをWLにて示す。図6(a)は、水に浸かる前の状態であり、(b)は、水に浸かった後に水から出た直後の状態であり、(c)は、水が排出された状態である。吸収性物品1は、バックフィルム42が配置された領域よりも液透過性が高い水抜き領域RWを有する。水抜き領域RWは、吸収性物品1の内部に水を貯めた状態で、バックフィルム42が配置された領域よりも液の透過性が高い領域である。より詳細には、水抜き領域RWは、バックフィルム42が接合されていない領域であってよい。水抜き領域RWは、バックフィルム42が非接合状態で配置された領域を含んでよい。または、水抜き領域RWは、平面視にてバックフィルム42が配置されていない領域であってもよい。
【0035】
水抜き領域RWの配置は、大別して、第1形態及び第2形態がある。第1形態に係る水抜き領域RWは、幅方向Wにおいて、脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間に配置されている。なお、第1形態において、水抜き領域RWは、脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間の領域のうち少なくとも一部に配置されていればよく、脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間の全体に配置されていてもよい。本実施の形態の水抜き領域RWは、バックフィルム42の外側縁42Eと、外折り目FL1と、の間に連続して設けられている。すなわち、水抜き領域RWは、脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間の領域を超えた領域(脚周り伸縮部60の内側縁60Iよりも幅方向の外側の領域、及び吸収コア51の外側縁51Eよりも幅方向の内側の領域)にも設けられてもよい。変形例において、水抜き領域RWは、脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間のみに配置されてよい。
【0036】
図5及び図6(c)に示すように、吸収性物品1を着用した着用者が水に浸かった後に水から上がると、吸収コア51に水がたまり、股下域S3の前後方向Lの中央かつ吸収コア51の幅方向Wの中央が下に膨らむように垂れ下がる。このとき、吸収コア51の側方に位置する脚周り伸縮部60は、その収縮によって脚にフィットし、上側に引き上げられた状態となる。よって、吸収性物品1は、正面視にて下側に向かって凸状に変形する。脚周り伸縮部60と吸収コア51の間には、水抜き領域RWが配置されている。よって、吸収コア51の幅方向Wの中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、図6(c)に示すように、吸収コア51の側方から水が抜け、吸収性物品1の内部の水分を排出できる。また、脚周り伸縮部60近傍に水抜き領域RWが配置されているため、水に浸かった後に吸収性物品1を脱ぐ際に、水の吸収によって吸収性物品1が脚に引っかかって脱ぎにくくなる不具合を抑制できる。
【0037】
第2形態に係る水抜き領域RWは、幅方向Wにおいて、防漏伸縮部65の基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間に配置されている。すなわち、バックフィルム42の左右の外側縁42E間の距離よりも、左右の基端部67間の距離の方が長い。第2形態において、水抜き領域RWは、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間の領域のうち少なくとも一部に配置されていればよく、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間の全体に配置されてよい。本実施の形態の水抜き領域RWは、基端部67(接合部分の内側縁)と、バックフィルム42の外側縁42Eと、の間に連続して設けられており、より詳細には、バックフィルム42の外側縁42Eと、外折り目FL1と、の間に連続して設けられている。すなわち、水抜き領域RWは、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間の領域を超えた領域(基端部67よりも幅方向の外側の領域、及び吸収コア51の外側縁51Eよりも幅方向の内側の領域)にも設けられてもよい。変形例において、水抜き領域RWは、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間のみに配置されてよい。吸収性物品1を着用した着用者が水に浸かった後に水から上がった状態で、吸収コア51よりも肌面側T1に起立可能な防漏伸縮部65は、その収縮によって上側に引き上げられた状態となる。よって、吸収性物品1は、正面視にて下側に向かって凸状に変形する。基端部67と吸収コア51の間に、水抜き領域RWが配置されている。よって、吸収コア51の幅方向Wの中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、吸収コア51の側方から水が抜け、吸収性物品内の水分を排出できる。また、防漏伸縮部65の基端部67の近傍に水抜き領域RWが配置されているため、起立部68の支点が水の重みによって垂れ下がることを抑制し、起立部68の起立状態を維持できる。よって、水の重みによって吸収コア51が垂れ下がった場合であっても、起立部68によって吸収コア51の側方に壁を形成し、便が外にでる不具合を抑制できる。
【0038】
なお、水抜き領域RWは、第1形態と第2形態のいずれかの構成であってもよいし、両方の構成を兼ね備えていてもよい。次いで、第1形態及び第2形態のいずれにもおいても、好適な形態について説明する。水抜き領域RWの幅方向Wの長さは、1mm以上20mm以下であってよい。当該構成によれば、吸収性物品1の内部の水分を瞬時に排出することなく、徐々に排出できる一方で、水分の排出スピードを確保できる。
【0039】
水抜き領域RWの耐水圧は、290mmH20以下であってよい。本出願人が鋭意研究した結果、耐水圧が高すぎると(290mmH20よりも高いと)、着用状態において吸収性物品1の内部の水分を適切に排出できず、歩行し難さや脱ぎ難さを解消できないことがあった。しかし、水抜き領域RWの耐水圧が290mmH20であることにより、着用状態において吸収性物品1の内部の水分を適切に排出することができる。耐水圧の測定は、JIS A法(低水圧法)(AATCC127、ISO811)によって測定できる。また、着用状態において吸収性物品1の内部の水分を適切に排出することができるか否かの評価は、以下の方法によって評価できる。(1)水遊びを想定して水桶内に吸収性物品を完全に浸し、5分間放置する。(2)水桶から吸収性物品を取り出し、吸収性物品の外側の水分をふきとる。(3)吸収性物品を着用した状態を想定し、ウエスト形状の円筒に吸収性物品を装着し、クランプで円筒を吊るす。(4)吸収性物品の内部に水を注ぎ、防漏伸縮部の起立部の頂点が水面となるまで水を注ぐ。当該状態で、水抜け領域から水が抜けるか観察する。
【0040】
水抜き領域RWは、股下域S3の前後方向Lの中心において、吸収コア51の幅方向Wの中心に配置されず、吸収コア51の幅方向Wの中心に対する両側に配置されてよい。本構成によれば、吸収コア51の幅方向Wの中央における体液を保持し、その側方に配置された水抜き領域RWから水を排出できる。より好適には、水抜き領域RWは、吸収コア51の外側縁51Eよりも幅方向Wの外側に配置されてよく、水抜き領域RWの内側縁RWIは、吸収コア51の外側縁51Eよりも幅方向Wの外側に位置してよい。本形態によれば、吸収コア51と水抜き領域RWが幅方向Wに離間しているため、吸収コア51によって吸収した体液が水抜き領域RWを介して排出されることを抑制できる。なお、変形例において、水抜き領域RWの内側縁は、吸収コア51に一致していてもよい。また、水抜き領域RWは、吸収コア51に一部重なっていてもよく、水抜き領域RWの内側縁は、吸収コア51の外側縁よりも幅方向Wの内側に位置してもよい。
【0041】
水抜き領域RWには、液不透過性のフィルムが配置されてなく、不織布が配置されてよい。本構成によれば、フィルムが配置されていないため、水抜き領域RWを介して水分を排出できる。また、不織布が配置されており、不織布を介して水分を徐々に排出できるため、一度に大量の水分が排出されることを抑制できる。なお、不織布は、バック不織布61であってもよいし、他の不織布であってもよい。また、水抜き領域RWに配置される不織布は、1枚であってよく、複数枚でなくてよい。複数枚の不織布が配置された形態にあっては、不織布間に水がたまり、水の排出速度が低下するおそれがある。一枚の不織布によって構成することにより、吸収性物品1の内部の水の排出をより促すことができる。水抜き領域RWに配置される不織布の目付は、特に限定されないが、例えば、10g/m以上25g/m以下であってよい。当該構成によれば、吸収性物品1の内部の水分を瞬時に排出することなく、徐々に排出できる一方で、水分の排出スピードを確保できる。
【0042】
水抜き領域RWには、バック不織布61が配置されてよい。図6に示すように、水抜き領域RWの内側部には、バックフィルム42の外側縁42Eとバック不織布61が非接合である非接合領域NRが設けられてよい。非接合領域NRは、バックフィルムとバック不織布が接合された領域と比較してシート同士が密着せずに、シート同士に空間が形成され易い。例えば、非接合領域NRにおいて、バックフィルム42は、バック不織布61に対して起立することがある。非接合領域NRによる空間を介してより水分が排出され易い。非接合領域NRは、吸収コア51の外側縁51Eよりも外側のみに設けられていてもよい。当該構成によれば、吸収コア51において体液を保持しつつ、吸収コア51よりも外側の領域で体液の排出を促すことができる。また、他の形態において、非接合領域NRは、吸収コア51の外側縁51Eを跨がって、吸収コア51に重なって配置されてもよい。非接合領域NRは、バックフィルム42の前後方向Lの全域に亘って配置されていてもよいし、少なくとも股下域S3において設けられていてもよい。非接合領域NRの幅方向Wの長さは、特に限定されないが、例えば、1mm以上5mm以下であってよい。当該構成によれば、吸収性物品1の内部の水分を瞬時に排出することなく、徐々に排出できる一方で、水分の排出スピードを確保できる。
【0043】
また、水抜き領域RWには、不織布又はフィルムからなるシートが配置され、当該シートには、図示しない開口又は切り込みが形成されてよい。当該構成によれば、シートの開口又は切り込みを介して水分を迅速に排出できる。開口又は切り込みは、間欠的に配置されてよい。また、開口の面積は、1mm以上5mm以下であってよく、切り込みの長さは、1mm以上5mm以下であってよい。当該構成によれば、吸収性物品1の内部の水分を瞬時に排出することなく、徐々に排出できる一方で、水分の排出スピードを確保できる。
【0044】
水抜き領域RWは、股下域S3の前後方向Lの全域に亘って連続して設けられてよい。股下域S3の前後方向Lの全域に亘って、吸収コア51の側方から体液を排出できる。着用者の脚によって股下域S3の前後方向Lの中心が挟まれる等によって、水抜き領域RWの一部が閉じてしまって水抜き領域RWが機能しない場合であっても、水抜き領域RWの他の部分によって水分を排出できる。また、水抜き領域RWは、バックフィルム42の前後方向Lの全域に亘って連続して設けられてよく、前胴回り域S1、股下域S3及び後胴回り域S2を跨がって設けられていてもよい。
【0045】
吸収性物品1は、伸縮可能な弾性部材が配置されていない非伸縮領域NCを有してよい。当該非伸縮領域NCは、伸長可能な弾性部材が接合されていない領域であり、例えば、非伸長状態の弾性部材(切断された弾性部材)が配置された領域、及び当該領域自体に弾性部材が配置されていないが、厚み方向に間隔を空けて他の弾性部材(防漏弾性部材)が配置された領域を含む。水抜き領域RWの少なくとも一部は、非伸縮領域NCによって構成されてよい。当該構成によれば、水抜き領域RWが弾性部材の収縮によって収縮することを抑制し、水抜き領域RWの面積を確保し、当該水抜き領域RWによる水分の排出効果を維持できる。なお、本実施の形態の水抜き領域RWは、バック不織布61によって構成されており、脚周り伸縮部60の内側縁60Iとバックフィルム42の外側縁42Eの間に非伸縮領域NCが設けられている。
【0046】
吸収性物品1は、伸縮可能な弾性部材が配置された伸縮領域を有してよい。当該伸縮領域は、伸長可能な弾性部材が接合された領域であり、当該弾性部材によって伸縮する領域である。そのため、伸縮領域は、非伸長状態の弾性部材(切断された弾性部材)が配置された領域を含まない。また、伸縮領域は、厚み方向に間隔を空けて他の弾性部材(防漏弾性部材)が配置されているが、当該他の弾性部材によって領域自体が収縮しない領域を含まない。本実施の形態では、図3に示すように、水抜き領域RWの一部は、脚周り弾性部材62が配置された伸縮領域によって構成されている。本形態によれば、水抜き領域が弾性部材によって収縮し、水抜き領域に摩擦が生じ、当該摩擦によって水抜き領域による水分の排出を促すことができる。水抜き領域RWは、伸縮領域のみによって構成されていてもよいし、非伸縮領域のみによって構成されていてもよいし、本実施の形態のように伸縮領域及び非伸縮領域の両方によって構成されていてもよい。
【0047】
次いで、変形例に係る吸収性物品について説明する。なお、変形例において上述の実施形態と同様の構成は、同符号を用いて説明を省略する。図7は、変形例1に係る吸収性物品1Aの平面図である。図7において、説明の便宜上、バックフィルム42Aの配置領域、及び水抜き領域RWにそれぞれ異なるハッチングを付している。変形例1に係る吸収性物品1Aは、実施の形態の吸収性物品とバックフィルム42Aの配置が異なり、水抜き領域RWの配置が異なっている。実施形態のバックフィルム42Aは、吸収コア51の前後方向L全域に連続しており、股下域S3の前後方向Lの全域、前胴回り域S1の一部、及び後胴回り域S2の一部に跨がって設けられている。これに対して、変形例1に係るバックフィルム42Aは、股下域S3の前後方向Lの全域に設けられていない。
【0048】
股下域S3は、股下域S3を前後方向Lに三等分した領域を有する。当該領域は、前後方向Lの中央に位置する中央股下域S31と、中央股下域S31よりも前後方向Lの外側に位置する外股下域S32と、を有する。バックフィルム42Aは、前胴回り域S1側の外股下域S32のように、その外端縁42Fが、股下域S3の外端縁よりも前後方向Lの内側に位置してもよいし、後胴回り域S2側の外股下域S32のように、その外端縁42Fが、股下域S3よりも前後方向Lに位置し(後胴回り域S2に位置し)、前後方向Lに非連続であり、当該非連続の領域の少なくとも一部が外股下域S32に配置されていてもよい。このようにバックフィルム42Aが配置されていない領域は、水抜き領域RWを構成する。水抜き領域RWは、外股下域S32において、吸収性本体40の幅方向Wの全域に亘って連続して設けられてよい。当該構成によれば、着用者の脚の動きによって中央股下域S31の水抜き領域RWが閉じてしまい、当該部分の水抜き領域RWが機能しない場合であっても、外股下域S32の水抜き領域RWによって水分を排出できる。なお、変形例に係る水抜き領域RWは、第1形態と第2形態のいずれかの水抜き領域RWと合わせて設けられていてよい。
【0049】
次いで、変形例2に係る吸収性物品1Bについて、図8を参照して説明する。図8は、変形例2に係る吸収性物品1Bの股下域S3の前後方向の中心を基準とした模式断面図である。変形例2に係る吸収性物品1Bは、実施の形態の吸収性物品と、バック不織布61B、バックフィルム42B、脚周り伸縮部及び防漏伸縮部の構成が異なっている。変形例2に係る吸収性物品1Bのバック不織布61Bは、バックフィルム42Bよりも非肌面側T2に配置され、バックフィルム42Bよりも幅方向Wの外側に延出している。バック不織布61Bは、吸収性物品の外側縁において前後方向Lに沿った外折り目FL1を基点に折り返されている。折り返されたバック不織布61は、トップシート41の肌面側T1を覆う位置まで延び、当該領域において、前後方向Lに沿った内折り目FL2を基点に幅方向Wの外側に折り返されている。内折り目FL2を基点に幅方向Wの外側に折り返されたバック不織布61Bは、前後方向Lに延びる折り目FL3を基点に肌面側T1に折り返されている。折り目FL3を基点に折り返されたバック不織布61Bは、内折り目FL2及び外折り目FL1を基点に折り返されている。すなわち、バック不織布61Bは、2層に積層されている。2層のうち外側に位置するバック不織布61Bは、吸収体50の非肌面側T2において幅方向に連なっており、内側に位置するバック不織布61Bは、吸収体50の非肌面側T2において幅方向に離間している。バックフィルム42Bは、吸収体50の非肌面側T2を覆い、2層のバック不織布61Bが配置された領域では、当該バック不織布61B間に配置されている。バックフィルム42Bは、バック不織布61Bと共に、外折り目FL1及び内折り目FL2を基点に折り返されている。バックフィルム42Bの外側縁は、折り目FL3の近傍まで延びている。バックフィルム42Bは、左右の防漏伸縮部65に跨がって配置されてよい。変形例2に係るバックフィルム42Bは、少なくとも股下域S3において、水抜き領域RWを構成するための切断部CRが形成されている。変形例2における水抜き領域RWは、バックフィルム42Bの切断部CRが形成された領域である。なお、変形例2のバックフィルム42Bは、同一の資材に構成され、当該資材に切断部CRが形成されることによって構成されてよい。しかし、他の形態において、バックフィルム42Bは、切断部CRを挟んで配置された領域毎に異なる資材によって構成されてもよい。すなわち、切断部CRよりも幅方向の内側に位置するバックフィルムと、切断部CRよりも幅方向の外側に位置するバックフィルムは、同一の資材によって構成されてもよいし、異なる資材によって構成されていてもよい。
【0050】
防漏伸縮部65は、バック不織布61B、バックフィルム42B及び防漏弾性部材66によって構成されている。防漏弾性部材66は、内折り目FL2と折り目FL3の間において左右4本ずつ配置され、バック不織布61Bとバックフィルム42Bの間に接合されている。防漏伸縮部65の基端部67は、バック不織布61B及びバックフィルム42Bが起立する外折り目FL1であり、防漏伸縮部65は、当該基端部67を支点として肌面側T1に起立する。脚周り伸縮部60は、バック不織布61B、バックフィルム42B及び脚周り弾性部材62によって構成されている。脚周り弾性部材62は、防漏伸縮部65と基端部67の間において、左右1本ずつ配置され、バック不織布61Bとバックフィルム42Bの間に接合されている。脚周り伸縮部60も防漏伸縮部65と同様に基端部67を支点として起立する。複数の脚周り弾性部材のうち、吸収コアの外側縁側に近い弾性部材が、脚周り伸縮部60の内側縁60Iを構成する。水抜き領域RWは、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間、及び脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間に設けられている。変形例2に係る吸収性物品1Bによっても、吸収コア51の幅方向Wの中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、吸収コア51の側方から水が抜け、吸収性物品1の内部の水分を排出できる。
【0051】
次いで、変形例3に係る吸収性物品1Cについて、図9を参照して説明する。図9は、変形例3に係る吸収性物品1Cの股下域S3の前後方向の中心を基準とした模式断面図である。変形例3に係る吸収性物品1Cは、変形例2に係る吸収性物品に対してバックフィルム、脚周り伸縮部及び防漏伸縮部の構成が異なっている。変形例3に係る吸収性物品1Cのバック不織布61Cは、変形例2に係る吸収性物品1Bのバック不織布61Bと同様に、外折り目FL1、内折り目FL2及び折り目FL3を基点に折り畳まれており、2層に積層されている。変形例3に係るバックフィルム42Cは、左右の外折り目FL1よりも幅方向の内側のみに配置されており、外折り目FL1、内折り目FL2を基点にバック不織布61Cとともに折り畳まれていない。バックフィルム42Cの外側縁は、外折り目FL1(基端部67)と幅方向に離間している。バックフィルム42Cの外側縁と外折り目FL1(基端部67)の間の領域が水抜き領域RWを構成する。水抜き領域RWは、基端部67と吸収コア51の外側縁51Eの間、及び脚周り伸縮部60の内側縁60Iと吸収コア51の外側縁51Eの間に設けられている。変形例に係る吸収性物品1Cによっても、吸収コア51の幅方向Wの中央が下に膨らむように垂れ下がった際に、吸収コア51の側方から水が抜け、吸収性物品1の内部の水分を排出できる。また、変形例2及び3の吸収性物品は、水抜き領域RWよりも肌面側T1に伸縮部材(脚周り弾性部材62、防漏弾性部材66)が配置されている。水抜き領域RWと伸縮部材は、厚み方向に離間しており、水抜き領域RWは、当該伸縮領域によって収縮しない。そのため、変形例2及び3の吸収性物品は、非伸縮領域によって構成されている。しかし、水抜き領域RWよりも肌面側に伸縮部材(脚周り弾性部材62、防漏弾性部材66)が配置されていることにより、伸縮部材の伸縮によって水抜き領域が引き上げられ、当該引き上げに伴って水抜き領域が変形し、水抜き領域を介して水の排出を促すことができる。
【0052】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。本実施の形態では、水遊びに適した使い捨て水着について説明したが、本発明に係る吸収性物品は、水遊び用途でない吸収性物品にも適用できるものである。
【0053】
上述にあっては、吸収コアは、股下域S3の前後方向の全域に配置されている。しかし、変形例において、吸収コアの外端縁が、股下域S3の外端縁と離間し、股下域S3の外端縁よりも内側に位置してもよい。吸収コアの前後方向の長さを短くすることで、乳幼児の1回分程度の尿(60cc程度)及び便を保持する機能を確保しつつ、水に浸かった後の水抜けを促進する効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、水に浸かった後においても体液を保持しつつ、内部の水分を排出できる吸収性物品を提供できる。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B、1C :吸収性物品
15 :外装体
40 :吸収性本体
41 :トップシート
42、42A、42B、42C :バックフィルム
51 :吸収コア
51E :吸収コアの外側縁
60 :脚周り伸縮部
60E :脚周り伸縮部の外側縁
60I :内側縁
61、61B、61C :バック不織布
62 :脚周り弾性部材
65 :防漏伸縮部
67 :基端部
68 :起立部
L :前後方向
NC :非伸縮領域
NR :非接合領域
RW :水抜き領域
S1 :前胴回り域
S2 :後胴回り域
S3 :股下域
S31 :中央股下域
S32 :外股下域
T :厚さ方向
T1 :肌面側
T2 :非肌面側
W :幅方向
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9