(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20231116BHJP
G16Y 10/05 20200101ALI20231116BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20231116BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20231116BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20231116BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G16Y10/05
G16Y20/10
G16Y40/20
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2021039461
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】官 森林
(72)【発明者】
【氏名】深見 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/218157(WO,A1)
【文献】特開2016-49102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/02
A01G 7/00
G16Y 10/05
G16Y 20/10
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得する取得部と、
前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出する進行速度導出部と、
基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出する状態値導出部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記進行速度導出部は、同じ生育形質指標に関する前記進行速度を、生育段階ごとに異なる傾向で導出し、
前記接続マトリクスは、生育段階を問わず前記積分値の用法を定義するものである、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、環境測定値に基づいて前記影響要因の情報を生成する処理を行う、
請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、環境測定値に基づいて前記影響要因の情報を生成する処理の手法を変えながら予測状態ベクトルを導出し、
前記予測状態ベクトルの実際の作物への当てはまり度合いに基づいて前記影響要因の情報を生成する処理の手法を評価する評価部を更に備える、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
少なくとも前記影響要因、前記遷移イベント、および前記生育形質指標の関係をグラフ化した画像を表示装置に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
生育形質指標の変化をグラフ化した画像を表示装置に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得し、
前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出し、
基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得させ、
前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出させ、
基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培されている農作物に関する情報を取得する情報検出手段と、農作物の生育状況を予測するための農作物登録情報を記憶する記憶手段と、農作物に関する情報に基づき農作物登録情報を参照して、農作物の生育状況を予測する生育予測手段と、生育予測手段で予測された生育状況を表示する表示手段と、を有する圃場管理システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、様々な条件や外乱要素などの影響要因を考慮して個体生育モデルを作成しておらず、そのため作物の状態を精度よく予測することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、作物の状態を精度よく予測することができる情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様である情報処理装置は、作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得する取得部と、前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出する進行速度導出部と、基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出する状態値導出部と、を備えるものである。
【0007】
本発明の第2の態様である情報処理装置は、第1の態様において、前記進行速度導出部は、同じ生育形質指標に関する前記進行速度を、生育段階ごとに異なる傾向で導出し、前記接続マトリクスは、生育段階を問わず前記積分値の用法を定義するものである。
【0008】
本発明の第3の態様である情報処理装置は、第1または第2の態様において、前記取得部は、環境測定値に基づいて前記影響要因の情報を生成する処理を行うものである。
【0009】
本発明の第4の態様である情報処理装置は、第1から第3の態様において、前記取得部は、環境測定値に基づいて前記影響要因の情報を生成する処理の手法を変えながら予測状態ベクトルを導出し、前記予測状態ベクトルの実際の作物への当てはまり度合いに基づいて前記影響要因の情報を生成する処理の手法を評価する評価部を更に備えるものである。
【0010】
本発明の第5の態様である情報処理装置は、少なくとも前記影響要因、前記遷移イベント、および前記生育形質指標の関係をグラフ化した画像を表示装置に表示させる表示制御部を更に備えるものである。
【0011】
本発明の第6の態様である情報処理装置は、生育形質指標の変化をグラフ化した画像を表示装置に表示させる表示制御部を更に備えるものである。
【0012】
本発明の第7の態様である情報処理方法は、コンピュータが、作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得し、前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出し、基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出するものである。
【0013】
本発明の第8の態様であるプログラムは、コンピュータに、作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得させ、前記影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも前記作物の生育形質指標ごとに導出させ、基準時点から予測時点までの前記進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、前記作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出させるものである。
【発明の効果】
【0014】
上記各態様によれば、作物の状態を精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例に係る情報処理装置100の構成と処理対象の一例を示す図である。
【
図2】取得部110の機能について説明するための図である。
【
図4】進行速度導出部120および状態値導出部130の機能について説明するための図である。
【
図5】t=0すなわち生育開始日の状態をモデルによって計算した結果を示す図である。
【
図6】t=5.5のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。
【
図7】t=6のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。
【
図8】t=30のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。
【
図9】t=30のときの状態をモデルによって計算した結果を全体的に示す図である。
【
図10】t=33のときに鳥獣による被害が発生した状態をモデルによって計算した結果を全体的に示す図である。
【
図11】鳥獣による被害が発生したことを反映させて、作物の成熟(t=166)まで計算を行った結果をグラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
図1は、実施例に係る情報処理装置100の構成と処理対象の一例を示す図である。情報処理装置100は、例えば、自然環境の耕作地における対象圃場の個体株ごとに、作物の生育形質指標ごとの状態値を導出する装置である。情報処理装置100は、例えば、取得部110と、進行速度導出部120と、状態値導出部130と、評価部140と、表示制御部150とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0018】
以下、情報処理装置100の各部の機能について説明する。
図2は、取得部110の機能について説明するための図である。
【0019】
取得部110は、作物に与えられる影響要因の情報を取得する。影響要因は、後述する進行速度の計算過程に与えられる入力情報である。影響要因には、環境測定値に基づいて取得部110が生成するものと、イベントの発生状況を示すものとがある。前者について取得部110は、環境測定値から環境要因の情報を生成する。環境測定値とは、例えば、時系列の気温データから求められる積算温度量、時系列の日照データから求められる日照量、時系列の給水量データから求められる水量、時系列の酸素供給量データから求められる酸素量、時系列の施肥データから求められる積算温度量である。
【0020】
取得部110は、積算温度量に基づいて影響要因の一つである温度条件を生成する。取得部110は、日照量に基づいて影響要因の一つである日照条件を生成する。取得部110は、水量に基づいて影響要因の一つである水条件を生成する。取得部110は、酸素量に基づいて影響要因の一つである酸素条件を生成する。取得部110は、肥料量に基づいて影響要因の一つである肥料条件を生成する。温度条件、日照条件、水条件、酸素条件、肥料条件のそれぞれは、進行速度の計算過程に与えることが可能な任意の形態の情報である。取得部110は、これらの影響要因の生成手法を、例えばパラメータの変更等によって変更することが可能である。
【0021】
また、イベントの発生状況を示す影響要因には、病虫害発生状況、鳥獣による被害状況、人的関与(防除)条件、雑草発生状況、その他がある。これらの影響要因は、例えば発生有りを示す1、発生無しを示すゼロなどで表される情報である。
【0022】
このようにして取得された環境要因は、進行速度導出部120の処理に使用される。なお図中、丸で表されているものは作物自らの生育条件や外的要因による条件または状態を示し、丸の中の黒点は一つの条件または状態を表す。環境要因は、遷移イベントに影響するものである。遷移イベントとは、例えば、発芽、分げつ、出穂、登熟といったものを含む。遷移イベント間の状態を、生育段階と称する。
図2では、生育段階の例として発芽後、分げつ後(出穂前)を記載している。遷移イベントが到来すると、生育段階が次の生育段階に遷移する。
【0023】
以下、作物の一例として小麦を例にとって説明する。
図3は、小麦の生育プロセスを示す図である。小麦は、発芽、分げつ、出穂、登熟という生育段階を経て成熟に至る。各生育段階において、最高分げつ、穂ばらみ、開花、黄熱といった状態が出現する。
図4以降では、小麦に対してモデルが適用されることを前提に、各部の機能について説明する。なお本発明は小麦に限らず、あらゆる作物あるいは植物に適用可能である。
【0024】
図4は、進行速度導出部120および状態値導出部130の機能について説明するための図である。進行速度導出部120は、影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも作物の生育形質指標ごとに導出する。生育形質指標とは、例えば、草丈、葉数、茎数、穂数などである。生育形質指標は、
図4において二重丸で表されている。生育形質指標には、穂数のように特定の生育段階に至った後に出現するものも存在する。
【0025】
状態値導出部130は、基準時点(例えば種まき時点)から予測時点までの進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスAを乗算することで、作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出する。
【0026】
以下、進行速度導出部120および状態値導出部130の機能について、より簡易な例と計算結果を示しながら説明する。以下の説明において、eは影響因子、tは生育日数、jは生育段階、kは生育形質指標の識別子を表す。
図5~8は、進行速度導出部120および状態値導出部130の処理について例示した図である。これらの図の例では、T1とT2の二つの遷移イベントがある。また、説明を簡略化するために生育段階を分げつ後(出穂前)まで、生育形質指標を草丈に絞って説明するが、他の部分についても同様に展開できる。
図5は、t=0すなわち生育開始日の状態をモデルによって計算した結果を示す図である。
【0027】
遷移イベントの切り替わり日数は予め定められており、T1が6日後、T2が120日後に発生すると定義されている。切り替わり日数は可変であってもよいし、当該作物に関して経験から求められた適合値であってもよい。この場合、進行速度導出部120が導出する進行速度は、以下の式で表される。式中、E(e,t,j,k)は、影響因子e、生育日数t、生育段階j、生育形質指標kに基づいて進行速度を導出する関数またはアルゴリズムである。E(e,t,j,k)は、例えば、当該作物に関して経験から求められたものである。
【0028】
【0029】
図5~8に示すモデルに関して状態値導出部130が用いる接続マトリクス(接続行列)Aは、以下の式で表される。接続マトリクスAは、生育段階の遷移イベントにおける出力アークOから入力アークIを差し引いたものである。入力アークとは、遷移イベントよりも前の状態であって、当該遷移イベントまで作用する状態について1、そうでない状態についてゼロが定義されるベクトルを、遷移イベントごとに並べたマトリクスである。出力アークとは、遷移イベントよりも後の状態であって、当該遷移イベントの直後から作用する状態について1、そうでない状態についてゼロが定義されるベクトルを、遷移イベントごとに並べたマトリクスである。
【0030】
【0031】
進行速度導出部120および状態値導出部130が行う処理を一般式で表すと、以下の式のようになる。式中、S0は初期状態の予測状態ベクトルであり、Stは生育日数tにおける予測状態ベクトルであり、uは時間増分である。S0およびStの要素には生育形質指標が少なくとも含まれ、例えば、{P1(t),P2(t),P3(t),Pe(t),P2-1(t),P3-1(t)}Tで表される。このように、進行速度導出部120は、同じ生育形質指標に関する進行速度を、生育段階ごとに異なる傾向で導出し、接続マトリクスAは、生育段階を問わず積分値の用法(取捨選択、およびプラスで作用させるかマイナスで作用させるか)を定義するものである。
【0032】
【0033】
図6は、t=5.5のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。t=5.5のとき、P
2-1すなわち生育段階が「発芽後」である作物の生育形質指標「草丈」として1.0が算出されている。この場合の計算式は以下の式で表される。
【0034】
【0035】
図7は、t=6のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。t=6のとき、P
2-1すなわち生育段階が「発芽後」である作物の生育形質指標「草丈」として1.2が算出されている。この場合の計算式は以下の式で表される。
【0036】
【0037】
図8は、t=30のときの状態をモデルによって計算した結果を示す図である。t=30のとき、P
3-1すなわち生育段階が「分げつ後(出穂前)」である作物の生育形質指標「草丈」として11.5が算出されている。この場合の計算式は以下の式で表される。t=6で遷移の条件を満たしたことで遷移イベント(分げつ)が発生したため、t=6以降の分の生育形質指標は、v
2(p
3-1)に基づいて決定される。
【0038】
【0039】
上記のように計算を行うことで、任意の生育日数について各生育形質指標を求めることができる。
【0040】
再度、生育段階の全体に関して説明する。
図9は、t=30のときの状態をモデルによって計算した結果を全体的に示す図である。図示するように、草丈だけでなく葉数や茎数も同様の計算で算出されている。
【0041】
ここで、病虫害発生状況、鳥獣による被害状況、人的関与(防除)条件、雑草発生状況などの影響要因を反映させる手法について説明する。例えば、t=33のときに鳥獣による被害が発生したと仮定すると、取得部110は、例えば、所定の生育形質指標に関して、実際の計測値や予め定められた被害後の生育形質値または被害度合いから計算するという形で影響要因を定義する。
図10は、t=33のときに鳥獣による被害が発生した状態をモデルによって計算した結果を全体的に示す図である。図示するように、草丈と葉数に関してt=30のときの状態から値が減少しているのが分かる。
【0042】
図11は、鳥獣による被害が発生したことを反映させて、作物の成熟(t=166)まで計算を行った結果をグラフで表した図である。図示するように、t=33における被害によって減少した草丈と葉数がその後に回復し、作物が成長しているのが分かる。
【0043】
図1に戻り、取得部110は、環境測定値に基づいて影響要因の情報を生成する処理の手法を変えながら予測状態ベクトルを導出する。評価部140は、予測状態ベクトルの実際の作物への当てはまり度合いに基づいて、影響要因の情報を生成する処理の手法を評価する。そして、評価部140は、対象圃場において当てはまりの良い(相似性の高い)所定数のモデル(影響要因の仕方)を抽出して群落の将来状態を予測する。当てはまりの良い所定数のモデルとは、最大評価値から一定の決定枠範囲内(例えば最大評価値の90%~100%の範囲内)である。評価部140は、例えば、遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法のような発見的手法やモンテカルロ法などを用いて評価を行ってよい。また、評価部140は、状態値導出部130の導出結果に基づいて、作物の生育量や活性化指数などによる作物の収穫量を増加するための施肥量を定めても良いし、病虫害を防ぐための予察に利用しても良いし、播種時期毎の最適な植え付け本数を定めるのに利用しても良いし、収穫物の品質・等級を優先するための肥培管理を求めても良い。
【0044】
表示制御部150は、例えば、
図4~10で示したように、少なくとも影響要因、遷移イベント、および生育形質指標の関係をグラフ化した画像を表示装置200に表示させる。また、表示制御部150は、
図11で示したように、上記説明した各部の機能によって生成される、生育形質指標の変化をグラフ化した画像を表示装置200に表示させてもよい。表示装置200は、情報処理装置100に付設されるものであってもよいし、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して情報処理装置100から画像が提供されるもの(例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなど)であってもよい。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、作物に与えられる条件および外乱要素を含む影響要因の情報を取得する取得部110と、影響要因および生育日数に基づいて、次の生育段階への遷移に向けて進行する進行速度を、少なくとも作物の生育形質指標ごとに導出する進行速度導出部120と、基準時点から予測時点までの進行速度の積分値を並べたベクトルに、生育段階の遷移イベントにおける出力アークから入力アークを差し引いた接続マトリクスを乗算することで、作物の生育形質指標ごとの状態値を含む予測状態ベクトルを導出する状態値導出部130と、を備えることにより、作物の状態を精度よく予測することができる。
【0046】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0047】
100 情報処理装置
110 取得部
120 進行速度導出部
130 状態値導出部
140 評価部
150 表示制御部
200 表示装置