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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/20 20060101AFI20231116BHJP
   C11D 1/835 20060101ALI20231116BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20231116BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20231116BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231116BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20231116BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
C11D3/20
C11D1/835
C11D1/72
C11D1/62
C09K3/00 112E
C09D5/16
C09D7/20
C09K3/00 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019121819
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008534
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光司
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-310098(JP,A)
【文献】特開2002-146397(JP,A)
【文献】特開平05-025500(JP,A)
【文献】特開平10-001697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有し、
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、及びポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
トイレ便器の洗浄に使用される、洗浄剤組成物(ただし、下記の一般式(1)で表されるアスパラギン酸-N,N-ジ酢酸又はその塩を含有するもの、及び3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を含有するものを除く)
【化1】
(式中、MはH、Na、K又はNH 4 を示す)
【請求項2】
更に、カチオン性界面活性剤を含有する、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩型界面活性剤である、請求項2~4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有し、
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、及びポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物からなる群より選択される少なくとも1種である、トイレ便器表面用のコーティング剤(ただし、下記の一般式(1)で表されるアスパラギン酸-N,N-ジ酢酸又はその塩を含有するもの、及び3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を含有するものを除く)
【化2】
(式中、MはH、Na、K又はNH 4 を示す)
【請求項7】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、及びポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有するコーティング剤(ただし、下記の一般式(1)で表されるアスパラギン酸-N,N-ジ酢酸又はその塩を含有するもの、及び3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を含有するものを除く)を、トイレ便器表面に接触させる、トイレ便器表面の防汚コーティング方法。
【化3】
(式中、MはH、Na、K又はNH 4 を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ便器等の硬質表面に対して優れた防汚効果を付与できる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの便器等の硬質表面に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すために、様々な洗浄剤組成物が使用されている。例えば、水洗トイレ用の洗浄剤組成物としては、水洗トイレの手洗い部、便器表面、貯水タンク内等に設置することにより、フラッシュ水に洗浄剤を溶出できるように設計された洗浄剤組成物が使用されている。しかしながら、従来の洗浄剤組成物では、硬質表面に汚垢が付着し難くなる効果(防汚効果)の点では限界がある。そこで、従来、硬質表面をコーティングすることにより、防汚効果を付与することが検討されている。
【0003】
従来、金属、ガラス、陶器等の硬質表面に対して防汚効果を付与する方法としては、撥水化処理、及び親水化処理が知られている。
【0004】
撥水化処理は、硬質表面に撥水性を付与することにより、水分を含む汚垢を反発させることにより付着し難くすることができる。このような撥水化処理は、衣類、自動車の塗装面等に広く適用されているが、トイレ便器の撥水処理への使用も検討されている。例えば、特許文献1には、フッ素系両新媒性物質を使用することによって、トイレ便器を撥水化処理できることが開示されている。
【0005】
一方、親水化処理は、硬質表面に親水性を付与することにより、硬質表面の水に対する接触角を低下させ、水分を含む汚垢を流れ易くすることにより付着し難くすることができる。このような親水化処理は、ガラスや鏡の防曇や帯電防止等に広く適用されているが、トイレ便器の親水化処理への使用も検討されている。例えば、特許文献2には、特定のアセチレングリコールのアルキレノキサイド付加物を使用することによって、トイレ便器を親水化処理できることが開示されている。
【0006】
しかしながら、従来の一般的な硬質表面に対する撥水化処理や親水化処理では、依然として十分な防汚効果が得られるとはいえない。特に、汚垢の中でも、糞便は、腸内細菌、油性物質、親水性物質等が混在しており、他の汚垢とは組成が著しく異なるため、従来の一般的な硬質表面に対する撥水化処理や親水化処理では、トイレ便器の糞便汚れに対する防汚効果は十分とはいえない。また、特許文献1及び2では、トイレ便器の表面処理によって防汚効果を付与できることが開示されているが、消費者ニーズの高まりに追従するために、防汚効果を向上させた洗浄剤組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-144177号公報
【文献】特開2006-307148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、硬質表面に対して、優れた防汚効果を付与できる洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、界面活性剤と共にイソプレングリコールを含む洗浄剤組成物を用いて硬質表面を洗浄すると、当該洗浄剤組成物によって硬質表面がコーティングされ、格段に優れた防汚効果を奏し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有する、洗浄剤組成物。
項2. 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤である、項1に記載の洗浄剤組成物。
項3. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、項2に記載の洗浄剤組成物。
項4. 前記カチオン性界面活性剤が、第4級アンモニウム塩型界面活性剤である、項2に記載の洗浄剤組成物。
項5. トイレ便器の洗浄に使用される、洗浄剤組成物。
項6. 界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有する、硬質表面用のコーティング剤。
項7. 界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有するコーティング剤を、硬質表面に接触させる、硬質表面の防汚コーティング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、トイレ便器等の硬質表面の洗浄に使用することによって、洗浄剤組成物によって硬質表面がコーティングされて格段に優れた防汚効果を奏することができるので、トイレ便器等の硬質表面を衛生的な状態に保つことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.洗浄剤組成物
本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤、及びイソプレングリコールを含有することを特徴とする。以下、本発明の洗浄剤組成物について詳述する。
【0013】
[界面活性剤]
本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有する。本発明の洗浄剤組成物において、界面活性剤は、硬質表面に対する洗浄効果付与する役割を担うと共に、後述するイソプレングリコールと併用されることにより、硬質表面をコーティングして優れた防汚効果を吸付与する役割も担っている。
【0014】
本発明で使用される界面活性剤の種類については、特に制限されず、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0015】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、アルキル多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸アルカノールアミド、アシルメチルグルカミド、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、防汚効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。以下、本発明で使用されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルについて説明する。
【0017】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとは、ポリオキシアルキレン鎖とアルキル基がエーテル結合している非イオン性界面活性剤である。
【0018】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを構成するポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のいずれであってもよい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドがランダム付加されたものであってもよく、これらがブロック付加されたものであってもよい。
【0019】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを構成するポリオキシアルキレン鎖として、好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖におけるポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとの平均付加モル数の比率については、特に制限されないが、例えば、ポリプロピレンオキサイドの平均付加モル数:ポリエチレンオキサイドの平均付加モル数として、1:0.3~15、好ましくは1:0.5~8、更に好ましくは1:1~5が挙げられる。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを構成するポリオキシアルキレン鎖のアルキレンキサイドの平均付加モル数としては、例えば、3~50、好ましくは8~40、更に好ましくは10~30、特に好ましくは15~25が挙げられる。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを構成するアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、当該アルキル基の炭素数としては、例えば、6~24、好ましくは8~18、更に好ましくは8~16が挙げられる。
【0022】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、具体的には、POEアルキル(C6)エーテル、POEアルキル(C10)エーテル、POEアルキル(C12)エーテル、POEアルキル(C14)エーテル、POEアルキル(C16)エーテル、POEアルキル(C20)エーテル、POEアルキル(C22)エーテル、POEアルキル(C24)エーテル、POPアルキル(C6)エーテル、POPアルキル(C10)エーテル、POPアルキル(C12)エーテル、POPアルキル(C14)エーテル、POPアルキル(C16)エーテル、POPアルキル(C20)エーテル、POPアルキル(C22)エーテル、POPアルキル(C24)エーテル、POE・POPアルキル(C6)エーテル、POE・POPアルキル(C10)エーテル、POE・POPアルキル(C12)エーテル、POE・POPアルキル(C14)エーテル、POE・POPアルキル(C16)エーテル、POE・POPアルキル(C20)エーテル、POE・POPアルキル(C22)エーテル、POE・POPアルキル(C24)エーテル等が挙げられる。ここで、「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを示し、括弧書きで記しているCの後ろの数値はアルキル基の炭素数を示す。
【0023】
本発明で使用されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適な例として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、特に下記一般式(1)に示す化合物が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(1)において、R1は、炭素数6~24、好ましくは8~18、更に好ましくは8~16の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。
【0026】
一般式(1)において、nは0~50、好ましくは0~40、より好ましくは0~30、更に好ましくは0~25の整数;mは0~50、好ましくは0~40、より好ましくは0~30、更に好ましくは0~25の整数;且つn+mは3~50、好ましくは8~40、より好ましくは10~30、更に好ましくは15~25を示す。一般式(1)におけるn及びmとして、特に好ましくは、nが8~20、mが1~8、且つn+mが12~24、最も好ましくはnが13~19、mが2~7、且つn+mが18~22が挙げられる。
【0027】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種の構造のものを単独で使用してもよく、2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0028】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、第4級アンモニウム塩型界面活性剤、アミドアミン塩型界面活性剤、アミドグアニジン塩型界面活性剤が挙げられる。
【0029】
第4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、具体的には、ジヘキシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジドデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジテトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート等のジアルキル(炭素数6~18)ジアルキル(炭素数1~4)アンモニウムのメチル硫酸塩;塩化ジデシルジメチルアンモニウム等のジアルキル(炭素数6~18)ジアルキル(炭素数1~4)アンモニウムクロライド;塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキル(炭素数12~20)トリアルキル(炭素数1~4)アンモニウムクロライド;塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0030】
アミドアミン塩型界面活性剤としては、具体的には、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩、ラノリン脂肪酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩等が挙げられる。
【0031】
アミドグアニジン塩型界面活性剤としては、具体的には、ラウリン酸アミドグアニジン塩酸塩等が挙げられる。
【0032】
これらのカチオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらのカチオン性界面活性剤の中でも、防汚効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは第4級アンモニウム塩型界面活性剤、更に好ましくはジアルキル(炭素数6~18)ジアルキル(炭素数1~4)アンモニウムのメチル硫酸塩、特に好ましくはジアルキル(炭素数6~18)ジメチルアンモニウムのメチル硫酸塩が挙げられる。
【0034】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニルスルホン酸塩(αオレフィンスルホン酸塩)、アルキルスルホ酢酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸リン酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
(両性イオン性界面活性剤)
両性イオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
(好適な界面活性剤・界面活性剤の含有量)
本発明の洗浄剤組成物において、界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
界面活性剤の中でも、防汚効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
また、本発明で使用する界面活性剤の一態様として、非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との組み合わせが挙げられる。非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を併用する場合には、優れた防汚効果と共に、カチオン性界面活性剤による除菌効果も奏させることも可能になる。非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを組み合わせて使用する場合、両者の比率については、特に制限されないが、例えば、非イオン性界面活性剤100重量部当たり、カチオン性界面活性剤が30~70重量部、好ましくは35~65重量部、更に好ましくは40~60重量部が挙げられる。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物における界面活性剤の濃度については、後述する使用時の濃度を満たすように適宜設定すればよい。
【0040】
例えば、本発明の洗浄剤組成物が、希釈されることなく、そのまま硬質表面に適用される態様(以下、「非濃縮タイプ」と表記することもある)である場合には、本発明の洗浄剤組成物における界面活性剤の濃度として、例えば0.00001~99重量%、好ましくは0.00002~30重量%、更に好ましくは0.0001~10重量%が挙げられる。
【0041】
また、例えば、本発明の洗浄剤組成物が、水で希釈された後に硬質表面に適用される態様(以下、「濃縮タイプ」と表記することもある)である場合には、本発明の洗浄剤組成物における界面活性剤の濃度は、希釈後の濃度が前記非濃縮タイプにおける界面活性剤の濃度の範囲になるように、設定される希釈倍率に応じて適宜設定すればよい。本発明の洗浄剤組成物が濃縮タイプである場合、設定される希釈倍率としては、例えば、10~1000000倍程度、好ましくは100~500000倍程度、更に好ましくは1000~100000倍程度が挙げられる。
【0042】
[イソプレングリコール]
本発明の洗浄剤組成物は、イソプレングリコールを含む。界面活性剤とイソプレングリコールを併用することにより、硬質表面に対して優れた防汚効果を付与させることが可能になる。
【0043】
イソプレングリコールは、化学名が3-メチル-1,3-ブタンジオールである2価アルコールである。
【0044】
本発明の洗浄剤組成物におけるイソプレングリコールの濃度としては、非濃縮タイプの場合であれば、例えば0.0000001~99重量%、好ましくは0.0000002~30重量%、更に好ましくは0.000001~10重量%が挙げられる。また、濃縮タイプの場合であれば、本発明の洗浄剤組成物におけるイソプレングリコールの濃度は、希釈後の濃度が前記非濃縮タイプにおけるイソプレングリコールの濃度の範囲になるように、設定される希釈倍率に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物において、界面活性剤とイソプレングリコールとの比率については、特に制限されないが、例えば、界面活性剤の総量100重量部当たり、イソプレングリコールが0.001~50重量部が挙げられる。硬質表面に対してより一層優れた防汚効果を付与させるという観点から、界面活性剤の総量100重量部当たり、イソプレングリコールが、好ましくは0.01~10重量部、更に好ましくは0.01~5重量部が挙げられる。
【0046】
[その他の成分・形態等]
本発明の洗浄剤組成物は、前記成分以外に、他の添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤や基剤としては、例えば、水、1価低級アルコール、多価アルコール、前記成分以外の界面活性剤、漂白剤、香料、消臭剤、着色剤、可溶化剤、殺菌剤、キレート剤、増量剤、溶解性調整剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、無機系ビルダー、有機系ビルダー、酵素等が挙げられる。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物が非濃縮タイプである場合には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数2~5の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の水性基剤を配合し、前記各成分が前述する濃度になるように調整すればよい。
【0048】
また、本発明の洗浄剤組成物が濃縮タイプである場合には、前述する基材や添加剤を配合し、設定される希釈倍率に応じて前記各成分の濃度を適宜調整して、液状、液体状、固体状(粉末状、錠剤状等)、半固形状(ペースト状、ゲル状等)の形状にすればよい。
【0049】
[洗浄対象]
本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象については、除菌や汚れ除去が求められるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、トイレ(便器、トイレの床)、浴室、台所、厨房、排水管、貯水設備(プール、人工池等)等の、水との接触が可能な硬質表面が挙げられる。これらの中でも、水洗トイレの便器は、糞便が付着し易く、防汚効果が強く求められているので、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレの便器用の洗浄剤として好適である。
【0050】
[使用方法]
本発明の洗浄剤組成物を用いて硬質表面を洗浄するには、非濃縮タイプの場合にはそのまま、濃縮タイプの場合には所定の希釈倍率になるように水で希釈して、噴霧、塗布、流水等によって硬質表面に接触させればよい。また、本発明の洗浄剤組成物を硬質表面に接触させる際には、必要に応じてブラシでブラッシングを行ってもよい。
【0051】
また、本発明の洗浄剤組成物がトイレ便器用の洗浄剤の場合であれば、本発明の洗浄剤組成物を濃縮タイプで提供して、トイレのフラッシュ水で希釈して使用することが好ましい。このような場合、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレのオンタンク用、リム部用、便器表面付着用等として使用することができる。オンタンク用とは、水洗トイレの手洗い部の上に設置して使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、手洗い部に供給された洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、便器表面が洗浄される。また、リム部用では、水洗トイレのリム部に取り付けられて使用され、洗浄剤組成物が収容された容器に、便器に放出されるフラッシュ水が接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、便器表面が洗浄される。便器表面付着用では、ゲル状や固形状にした本発明の洗浄剤組成物を便器表面に直接付着させておき、フラッシュ時に便器表面でフラッシュ水と接触し、洗浄剤組成物がフラッシュ水中に溶出することによって、便器表面が洗浄される。
【0052】
本発明の洗浄剤組成物の1回当たりの使用量については、洗浄対象となる硬質表面の種類や、硬質表面に接触させる方法等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、トイレ便器用洗浄剤の場合であれば、1回当たりの使用量として、界面活性剤とイソプレングリコールの総量が1~300mg程度となる量が挙げられる。
【0053】
また、本発明の洗浄剤組成物で洗浄された硬質表面は、洗浄剤組成物でコーティングされた状態になって防汚効果を発現できるが、時間経過と共に徐々に硬質表面から洗浄剤組成物が離脱していくので、防汚効果を持続的に維持させるには、例えば、1~8週間程度に1回の頻度で本発明の洗浄剤組成物を使用して洗浄を行うことが望ましい。また、本発明の洗浄剤組成物がトイレ便器用洗浄剤であってフラッシュ水に希釈して使用する態様の場合には、トイレの使用の度に本発明の洗浄剤組成物がトイレ便器表面にコーティングされた状態になるので、防汚効果を持続させることができる。
【0054】
2.硬質表面用コーティング剤・硬質表面の防汚コーティング方法
前述の通り、界面活性剤及びイソプレングリコールを含む洗浄剤組成物で洗浄された硬質表面は、当該洗浄剤組成物でコーティングされた状態になって防汚効果を発現できる。従って、本発明は、更に、界面活性剤及びイソプレングリコールを含む硬質表面用のコーティング剤を提供する。また、本発明は、界面活性剤及びイソプレングリコールを含むコーティング剤を硬質表面に接触させる、硬質表面の防汚コーティング方法を提供する。
【0055】
当該硬質表面用コーティング剤、及び硬質表面の防汚コーティング方法において、使用する成分、濃度、使用対象、使用方法等については、前記「1.洗浄剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0056】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
試験例1
先ず、以下に示す試験液を準備した。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル含有液:ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル含量は100重量%、一般式(1)において、R1が炭素数10の直鎖状アルキル基、nが17程度、mが3程度であるものを使用した。
ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート含有液:ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート含量は80重量%であるものを使用した。
イソプレングリコール含有液:イソプレングリコール99重量%含有液を使用した。
ポリオキシエチレンステアリルエーテル含有液:商品名「ブラウノンSR-720」(青木油脂工業株式会社)
ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート含有液:商品名「ブラウノンOT-320」(青木油脂工業株式会社)
ポリオキシエチレン合成アルコールエーテル含有液:商品名「ファインサーフNE-50」(青木油脂工業株式会社)
プロピレングリコールモノリシノレート含有液:商品名「PGMR」(伊藤製油株式会社)
アクリルポリマー含有液:アクリルポリマー60重量%含有液、商品名「ポリフローKL-850」(共栄社化学株式会社)
両新媒性オリゴマー含有液:両新媒性オリゴマー14重量%含有液、商品名「ポリフローKL-900」(共栄社化学株式会社)
【0058】
表1及び2に示す組成の洗浄剤組成物を蒸留水で14ppmに希釈し、防汚効果を評価した。具体的な試験方法は、以下の通りである。先ず、衛生陶器のカットタイル(KYタイルP4-100、日本テストパネル株式会社製、109mm×109mm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄した後に、蒸留水で洗浄し、自然乾燥を行った。乾燥後のカットタイルを洗浄剤組成物の希釈液500ml中に10秒間浸漬させた後に自然乾燥を行った。この操作(浸漬及び自然乾燥)を合計15回行った後に、カットタイルを30°に傾けて台に固定した。台から15cmの高さから20gの疑似便(ドライイースト8重量%、セルロース4重量%、カルボキシメチルセルロース7重量%、油4重量%、ケルコゲル0.6重量%、乳酸カルシウム0.04%、及び水76.36重量%の混合物)を、固定しているカットタイルの上に落下させ、30秒間静置した。次いで、疑似便が付着しているカットタイルの上側から3Lの水道水を5秒間かけて流水させた後に、疑似便の残存の有無を目視にて確認し、以下の判定基準に従って防汚効果を評価した。
<防汚効果の判定基準>
○:カットタイル表面の疑似便が目視では確認できない。
×:カットタイル表面の疑似便が目視で確認できる。
【0059】
得られた結果を表1及び2に示す。界面活性剤単独では、防汚効果は認められなかったが(比較例1及び7)、界面活性剤とイソプレングリコールを併用した場合には防汚効果が認められた(実施例1及び2)。また、界面活性剤と他の親水性化合物を併用した場合には、防汚効果は認められなかった(比較例2~6及び9~12)。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】