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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231116BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20231116BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20231116BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 631
B23K26/53
B23K26/00 N
B24B7/22 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019234098
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103725
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田之上 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176589(WO,A1)
【文献】特開2011-056544(JP,A)
【文献】特開2017-024039(JP,A)
【文献】特表2013-511155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
B23K 26/00
B24B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する方法であって、
前記第1の基板の除去対象の周縁部と、前記第1の基板の中央部の境界に沿って周縁改質層を形成することと、
前記重合基板の内部にレーザ光を照射して改質層を形成し、前記周縁部における前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を弱める未接合領域を形成することと、
前記周縁改質層を基点に前記第1の基板の周縁部を除去することと、を含み、
前記周縁改質層は、第1の基板と第2の基板が接合された接合領域と前記未接合領域との境界に沿って形成され、
前記未接合領域の形成においては、
前記周縁部における径方向外側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第1の剥離領域と、
前記周縁部における前記第1の剥離領域の径方向内側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第2の剥離領域と、を形成し、
前記第2の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔は、前記第1の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔よりも小さい、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔を、前記改質層の周方向の形成幅と一致させ、
前記第2の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔を、前記改質層の周方向の形成幅よりも小さくする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記未接合領域においては、前記レーザ光の照射により蓄積される内部応力により前記第1の基板と前記第2の基板との自然剥離が進行し、
前記第2の剥離領域においては、前記レーザ光の出力及び前記改質層の周方向の形成間隔により、径方向への前記第1の基板と前記第2の基板との自然剥離距離を制御する、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2の剥離領域の形成後に、前記第1の剥離領域を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の剥離領域の形成後、再度、前記第2の剥離領域を形成する、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1の剥離領域の形成後に、前記第2の剥離領域を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記周縁部の内部にレーザ光を照射して前記第1の基板の径方向に延伸する複数の分割改質層を形成することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1の基板の面方向に沿って、前記第1の基板の分離の基点となる内部面改質層を形成することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記周縁部を、前記第1の基板の分離時において一体に除去する、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の基板の裏面を研削することにより、前記第1の基板を薄化することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理システムであって、
前記第1の基板の除去対象の周縁部と、前記第1の基板の中央部の境界に沿って周縁改質層を形成する第1改質部と、
前記重合基板の内部にレーザ光を照射して改質層を形成し、前記周縁部における前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を弱める未接合領域を形成する第2改質部と、
前記周縁改質層を基点に前記第1の基板の前記周縁部を除去する除去部と、
前記第2改質部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記周縁改質層は、第1の基板と第2の基板が接合された接合領域と前記未接合領域との境界に沿って形成され、
前記制御部は、前記未接合領域の形成時において、
前記周縁部における径方向外側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第1の剥離領域と、
前記周縁部における前記第1の剥離領域の径方向内側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第2の剥離領域と、を形成し、
前記第2の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔が、前記第1の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔よりも小さくなるように、前記第2改質部の動作を制御する、基板処理システム。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第1の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔が、前記改質層の周方向の形成幅と一致し、
前記第2の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔が、前記改質層の周方向の形成幅よりも小さくなるように、前記第2改質部の動作を制御する、請求項11に記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記未接合領域においては、前記レーザ光の照射により蓄積される内部応力により前記第1の基板と前記第2の基板との自然剥離が進行し、
前記制御部は、
前記第2の剥離領域の形成における径方向への前記第1の基板と前記第2の基板との自然剥離距離を、前記レーザ光の出力及び前記改質層の周方向の形成間隔の制御により制御する、請求項11または12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記制御部は、
前記第2の剥離領域の形成後に、前記第1の剥離領域を形成するように、前記第2改質部の動作を制御する、請求項11~13のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項15】
前記制御部は、
前記第1の剥離領域の形成後、再度、前記第2の剥離領域を形成するように、前記第2改質部の動作を制御する、請求項14に記載の基板処理システム。
【請求項16】
前記制御部は、
前記第1の剥離領域の形成後に、前記第2の剥離領域を形成するように、前記第2改質部の動作を制御する、請求項11~13のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項17】
前記制御部は、
前記周縁部の内部にレーザ光を照射して前記第1の基板の径方向に延伸する複数の分割改質層を形成するように、前記第1改質部の動作を制御する、請求項11~16のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項18】
前記制御部は、
前記第1の基板の面方向に沿って、前記第1の基板の分離の基点となる内部面改質層を形成するように、前記第1改質部の動作を制御する、請求項11~17のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項19】
前記制御部は、
前記周縁部を前記第1の基板の分離時において一体に除去するように、前記第1改質部、及び前記除去部の動作を制御する、請求項18に記載の基板処理システム。
【請求項20】
研削砥石により前記第1の基板の裏面を研削することにより、前記第1の基板を薄化する研削部を備える、請求項11~17のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハの一方の面側から外周縁より所定量内側の位置で外周縁に沿ってレーザ光線を照射し、ウェハの外周部を除去する工程と、外周部が除去されたウェハの被研削面を研削して所定の仕上がり厚さに形成する工程と、を含むウェハの研削方法が開示されている。特許文献1に記載の研削方法によれば、ウェハの外周縁にナイフエッジを生ずることなくウェハを所定の厚さに研削することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-108532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板同士が接合された重合基板において、第1の基板の周縁部を適切に除去する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する方法であって、前記第1の基板の除去対象の周縁部と、前記第1の基板の中央部の境界に沿って周縁改質層を形成することと、前記重合基板の内部にレーザ光を照射して改質層を形成し、前記周縁部における前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を弱める未接合領域を形成することと、前記周縁改質層を基点に前記第1の基板の周縁部を除去することと、を含み、前記周縁改質層は、第1の基板と第2の基板が接合された接合領域と前記未接合領域との境界に沿って形成され、前記未接合領域の形成においては、前記周縁部における径方向外側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第1の剥離領域と、前記周縁部における前記第1の剥離領域の径方向内側において、前記第1の基板と前記第2の基板の接合強度を低下させる第2の剥離領域と、を形成し、前記第2の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔は、前記第1の剥離領域における前記改質層の周方向の形成間隔よりも小さい。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板同士が接合された重合基板において、第1の基板の周縁部を適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ウェハ処理システムにおいて処理される重合ウェハの構成の一例を示す説明図である。
図2】ウェハ処理システムの構成の一例を模式的に示す平面図である。
図3】ウェハ処理の主な工程の一例を示す説明図である。
図4】ウェハ処理の主な工程の一例を示すフロー図である。
図5】第1のウェハの内部に発生する応力による影響の説明図である。
図6】未接合領域の形成の様子を示す説明図である。
図7】本実施形態にかかる未接合領域の形成例を示す説明図である。
図8】ウェハ処理の主な工程の一例を示す説明図である。
図9】周縁改質層からクラックを伸展させる他の例を示す説明図である。
図10】第1のウェハの分離の他の方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、半導体デバイスの製造工程においては、基板同士が接合された重合基板において、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体基板(以下、「ウェハ」という。)に対し、当該ウェハの裏面を研削して、ウェハを薄化することが行われている。
【0009】
ところで、通常、ウェハの周縁部は面取り加工がされているが、上述したようにウェハに研削処理を行うと、ウェハの周縁部が鋭く尖った形状(いわゆるナイフエッジ形状)になる。そうすると、ウェハの周縁部でチッピングが発生し、ウェハが損傷を被るおそれがある。そこで、研削処理前に予めウェハの周縁部を削る、いわゆるエッジトリムが行われている。
【0010】
上述した特許文献1に記載の研削方法は、ウェハ(第1のウェハ)の外周部にこのナイフエッジ形状が形成されるのを抑制するための研削方法である。しかしながら特許文献1に記載の方法で第2のウェハに接合された第1のウェハのエッジトリム(外周部の除去)を行う場合、当該外周部は第2のウェハと接合された状態であるため、適切に外周部を除去できない場合があった。具体的には、例えば外周部の一部が第1のウェハから適切に剥離されずに残存し、第1のウェハの裏面への傷の形成や、装置の故障の原因となる場合があった。したがって、従来のエッジトリムには改善の余地がある。
【0011】
そこで本発明者らは、エッジトリムにおける除去対象の周縁部において、第1のウェハと第2のウェハとの接合強度が低下された領域(以下、「未接合領域」という。)を形成することで、より適切に周縁部を剥離できることを見出した。かかる未接合領域は、例えば第1のウェハと第2のウェハとの界面にレーザ光を照射することにより形成される。なお、未接合領域が形成される「界面」とは、第1のウェハと第2のウェハの接合界面には限られない。
【0012】
しかしながら、この未接合領域の形成においては、上述のように第1のウェハと第2のウェハとの界面に処理が行われるため、加工による応力がこれらウェハの内部に蓄積される。そして、このようにウェハの内部に応力が蓄積された場合、当該応力により界面には剥離方向に力が作用し、これにより第1のウェハと第2のウェハとの剥離が径方向へと意図せずに進行する場合がある。このように意図しない剥離により未接合領域が形成された場合、例えば、形成された未接合領域の内周側端部、換言すれば、除去対象としての第1のウェハの周縁部と中央部との境界に沿ってレーザ光線を照射することが困難になり、周縁部の除去の基点となる改質層を適切に形成できない。また、剥離が意図せずに除去の基点となる改質層の形成位置よりも径方向内側まで進行した場合、適切な周縁部の除去が行われず、所望のエッジトリムの品質を得られない場合がある。
【0013】
そこで本開示にかかる技術は、基板同士が接合された重合基板において、第1の基板の周縁部を適切に除去する。以下、本実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
本実施形態にかかる後述のウェハ処理システム1では、図1に示すように第1の基板としての第1のウェハWと第2の基板としての第2のウェハSとが接合された重合基板としての重合ウェハTに対して処理を行う。そしてウェハ処理システム1では、第1のウェハWの周縁部Weを除去しつつ、当該第1のウェハWを薄化する。以下、第1のウェハWにおいて、第2のウェハSに接合される側の面を表面Waといい、表面Waと反対側の面を裏面Wbという。同様に、第2のウェハSにおいて、第1のウェハWに接合される側の面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。また、第1のウェハWにおいて、除去対象としての周縁部Weよりも径方向内側の領域を中央部Wcという。
【0015】
第1のウェハWは、例えばシリコン基板等の半導体ウェハであって、表面Waに複数のデバイスを含むデバイス層Dが形成されている。デバイス層Dにはさらに、表面膜Fが形成され、当該表面膜Fを介して第2のウェハSと接合されている。表面膜Fとしては、例えば酸化膜(SiO膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。なお、第1のウェハWの周縁部Weは面取り加工がされており、周縁部Weの断面はその先端に向かって厚みが小さくなっている。また、周縁部Weは後述のエッジトリムにおいて除去される部分であり、例えば第1のウェハWの外端部から径方向に0.5mm~3mmの範囲である。
【0016】
第2のウェハSは、例えば第1のウェハWと同様の構成を有しており、表面Saにはデバイス層D及び表面膜Fが形成され、周縁部は面取り加工がされている。なお、第2のウェハSはデバイス層Dが形成されたデバイスウェハである必要はなく、例えば第1のウェハWを支持する支持ウェハであってもよい。かかる場合、第2のウェハSは第1のウェハWの表面Waのデバイス層Dを保護する保護材として機能する。
【0017】
なお、本実施形態のウェハ処理システム1では、重合ウェハTにおける第1のウェハWを、表面Wa側と裏面Wb側とに分離することにより薄化する。以下の説明においては、分離された表面Wa側の第1のウェハWを第1の分離ウェハWd1といい、分離された裏面Wb側の第1のウェハWを第2の分離ウェハWd2という。第1の分離ウェハWd1はデバイス層Dを有し製品化される。第2の分離ウェハWd2は再利用される。なお、第1の分離ウェハWd1は第2のウェハSと接合された状態の第1のウェハWを指し、第2のウェハSを含めて第1の分離ウェハWd1という場合がある。また、第1の分離ウェハWd1及び第2の分離ウェハWd2において分離された面をそれぞれ分離面という場合がある。
【0018】
図2に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2は、例えば外部との間で複数の重合ウェハT、複数の第1の分離ウェハWd1、複数の第2の分離ウェハWd2をそれぞれ収容可能なカセットCt、Cw1、Cw2がそれぞれ搬入出される。処理ステーション3は、重合ウェハTに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0019】
なお、本実施形態では、カセットCtとカセットCw1を別々に設けたが、同じカセットとしてもよい。すなわち、処理前の重合ウェハTを収容するカセットと、処理後の第1の分離ウェハWd1(重合ウェハT)を収容するカセットとを共通に用いてもよい。
【0020】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCt、Cw1、Cw2をY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCt、Cw1、Cw2の個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0021】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10のX軸負方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置20は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットCt、Cw1、Cw2、及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0022】
搬入出ステーション2には、ウェハ搬送装置20のX軸負方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハTを受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
【0023】
処理ステーション3には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2、及び第3の処理ブロックG3は、X軸正方向側(搬入出ステーション2側)から負方向側にこの順で並べて配置されている。
【0024】
第1の処理ブロックG1には、エッチング装置40、洗浄装置41、及びウェハ搬送装置50が設けられている。エッチング装置40と洗浄装置41は、積層して配置されている。なお、エッチング装置40と洗浄装置41の数や配置はこれに限定されない。例えば、エッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれX軸方向に並べて載置されていてもよい。さらに、これらエッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれ積層されていてもよい。
【0025】
エッチング装置40は、後述する加工装置80で研削された第1のウェハWの研削面をエッチング処理する。例えば、研削面に対して薬液(エッチング液)を供給し、当該研削面をウェットエッチングする。薬液には、例えばHF、HNO、HPO、TMAH、Choline、KOHなどが用いられる。
【0026】
洗浄装置41は、後述する加工装置80で研削された第1のウェハWの研削面を洗浄する。例えば研削面にブラシを当接させて、当該研削面をスクラブ洗浄する。なお、研削面の洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置41は、第1のウェハWの研削面と共に、第2のウェハSの裏面Sbを洗浄する構成を有していてもよい。
【0027】
ウェハ搬送装置50は、例えばエッチング装置40と洗浄装置41のY軸負方向側に配置されている。ウェハ搬送装置50は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム51、51を有している。各搬送アーム51は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム51の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置50は、トランジション装置30、エッチング装置40、洗浄装置41、後述する界面改質装置60、後述する内部改質装置61及び後述する周縁除去装置62に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0028】
第2の処理ブロックG2には、界面改質装置60、内部改質装置61、周縁除去装置62及びウェハ搬送装置70が設けられている。界面改質装置60、内部改質装置61及び周縁除去装置62は、積層して配置されている。なお、界面改質装置60、内部改質装置61及び周縁除去装置62の数や配置はこれに限定されない。例えば、界面改質装置60、内部改質装置61及び周縁除去装置62はそれぞれX軸方向に並べて載置されていてもよい。さらに、これら界面改質装置60、内部改質装置61及び周縁除去装置62はそれぞれ、積層されていてもよい。
【0029】
第2改質部としての界面改質装置60は、例えば第1のウェハWのデバイス層Dの外周部にレーザ光(界面用レーザ光、例えばCOレーザ)を照射し、当該デバイス層Dの外周部を改質する。より具体的には、除去対象としての第1のウェハWの周縁部Weにおける第1のウェハWとデバイス層Dの界面を改質する。これにより、第1のウェハWの周縁部Weには、第1のウェハWと第2のウェハSとの接合強度が低下された未接合領域Aeが形成される。
【0030】
第1改質部としての内部改質装置61は、第1のウェハWの内部にレーザ光(内部用レーザ光、例えばYAGレーザ)を照射し、周縁改質層M1、分割改質層M2及び内部面改質層M3を形成する。周縁改質層M1は、後述のエッジトリムにおいて周縁部Weを除去する際の基点となるものである。分割改質層M2は、除去される周縁部Weを小片化する際の基点となるものである。内部面改質層M3は、第1のウェハWを第1の分離ウェハWd1と第2の分離ウェハWd2に分離する際の基点となるものである。
【0031】
除去部としての周縁除去装置62は、内部改質装置61において形成された周縁改質層M1を基点として、第1のウェハWの周縁部Weの除去、すなわちエッジトリムを行う。エッジトリムの方法は、任意に選択することができる。
【0032】
ウェハ搬送装置70は、例えば界面改質装置60、内部改質装置61及び周縁除去装置62のY軸正方向側に配置されている。ウェハ搬送装置70は、重合ウェハTを図示しない吸着保持面により吸着保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム71、71を有している。各搬送アーム71は、多関節のアーム部材72に支持され、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム71の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置70は、エッチング装置40、洗浄装置41、界面改質装置60、内部改質装置61、周縁除去装置62及び後述する加工装置80に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0033】
第3の処理ブロックG3には、加工装置80が設けられている。なお、加工装置80の数や配置は図示の例に限定されず、複数の加工装置80が任意に配置されていてもよい。
【0034】
研削部としての加工装置80は、回転テーブル81を有している。回転テーブル81は、回転機構(図示せず)によって、鉛直な回転中心線82を中心に回転自在に構成されている。回転テーブル81上には、重合ウェハTを吸着保持するチャック83が2つ設けられている。チャック83は、回転テーブル81と同一円周上に均等に配置されている。2つのチャック83は、回転テーブル81が回転することにより、受渡位置A0及び加工位置A1に移動可能になっている。また、2つのチャック83はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0035】
受渡位置A0では、重合ウェハTの受け渡しが行われる。加工位置A1には、研削ユニット84が配置され、第1のウェハWを研削する。研削ユニット84は、環状形状で回転自在な研削砥石(図示せず)を備えた研削部85を有している。また、研削部85は、支柱86に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。そして、チャック83に保持された重合ウェハTに研削砥石に当接させた状態で、チャック83と研削砥石をそれぞれ回転させる。
【0036】
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置90が設けられている。制御装置90は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置90にインストールされたものであってもよい。
【0037】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において第1のウェハWと第2のウェハSが接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0038】
先ず、図3(a)に示す重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ステーション2のカセット載置台10に載置される。次に、ウェハ搬送装置20によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、トランジション装置30に搬送される。
【0039】
続けて、ウェハ搬送装置50により、トランジション装置30の重合ウェハTが取り出され、界面改質装置60に搬送される。界面改質装置60では、図3(b)に示すように第1のウェハWとデバイス層Dの界面にレーザ光を照射し、当該界面を改質する(図4のステップS1)。
【0040】
ステップS1において第1のウェハWとデバイス層Dの界面を改質すると第1のウェハWと第2のウェハSの接合強度が低下する。これにより第1のウェハWとデバイス層Dの界面には、第1のウェハWと第2のウェハSとが接合された接合領域Acと、接合領域Acの径方向外側で接合強度が低下した領域である未接合領域Aeとが形成される。後述するエッジトリムにおいては、除去対象である第1のウェハWの周縁部Weが除去されるが、このように未接合領域Aeが存在することで、かかる周縁部Weの除去を適切に行うことができる。
【0041】
ここで、未接合領域Aeの形成にあたっては、第1のウェハWとデバイス層Dとの界面に処理が行われるため、加工による応力σがウェハの内部に蓄積される。そして、このようにウェハの内部に応力σが蓄積された場合、図5に示すように当該応力σにより界面の剥離方向に力が作用し、第1のウェハWと第2のウェハSとの剥離が径方向に向けて意図せずに進行する場合がある。
【0042】
未接合領域Aeは、レーザヘッド(図示せず)と第1のウェハW(重合ウェハT)とを相対的に回転させながら、レーザヘッドから第1のウェハWの内部にレーザ光を周期的に照射することで、図6に示すように、平面視において複数の接合強度低下用改質層(以下、単に「改質層M」という。)を隣接するように連続的に形成することで形成される。しかしながら、図5に示したように第1のウェハWと第2のウェハSとの剥離が意図せずに自然進行した場合、周縁部Weを適切に除去できなくなる。具体的には、後述の内部改質装置61では、第1のウェハWの中央部Wcと周縁部Weとの境界に沿って、換言すれば、界面改質装置60において形成された未接合領域Aeと接合領域Acとの境界(以下、単に「境界Ad」という場合がある。)に沿って周縁改質層M1を形成する。しかしながら、図6に示したように径方向に向けて剥離が自然進行し、境界Adが均一とならない場合、適切に周縁改質層M1を形成することができなくなる。また例えば、かかる剥離が意図せずに周縁改質層M1の形成位置よりも径方向内側まで進行した場合、周縁部Weが除去された後に第2のウェハSに対して第1のウェハWが浮いた状態になり、以降のウェハ処理やウェハ搬送におけるコンタミネーションの発生原因となり得る。
【0043】
ここで、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、加工により蓄積される応力σによる第1のウェハWと第2のウェハSの剥離の伸展は、周縁部Weに形成される改質層Mのパルスピッチ、すなわち周方向における改質層Mの形成間隔を小さくすることで制御できることを知見した。そして、未接合領域Aeの形成に際しては、このような知見に基づき、周縁部Weにおける径方向内側において改質層Mのパルスピッチを小さくすることで径方向への剥離の伸展を制御し、適切に周縁部Weを除去できることを見出した。
【0044】
そこで本実施形態においては、図3(b)及び図7に示すように、第1のウェハWの周縁部Weにおいて、第1の剥離領域としての広間隔領域R1と、第2の剥離領域としての狭間隔領域R2とを形成し、狭間隔領域R2における改質層Mのパルスピッチpを広間隔領域R1における改質層MのパルスピッチPよりも小さくする。なお、改質層Mのインデックスピッチ(径方向の形成間隔)は、広間隔領域R1または狭間隔領域R2に依らず任意に決定することができる。
【0045】
第1の剥離領域としての広間隔領域R1は、第1のウェハWの周縁部Weにおいて、複数の改質層Mが周縁部Weを第2のウェハSから適切に剥離できるパルスピッチPで連続的に形成される領域である。具体的には、例えば図7に示すように、周方向に隣接する改質層Mが相互に接するように、換言すれば、形成される改質層Mの周方向の形成幅LとパルスピッチPが一致するように、複数の改質層Mが連続的に形成される。
【0046】
第2の剥離領域としての狭間隔領域R2は、周縁部Weにおける広間隔領域R1の径方向内側において、複数の改質層MがパルスピッチPよりも小さいパルスピッチpで連続的に形成される領域である。具体的には、例えば図7に示すように、周方向に隣接する改質層Mの一部が相互に重なるように、換言すれば、形成される改質層Mの周方向の形成幅Lがパルスピッチpよりも大きくなるように、複数の改質層Mが連続的に形成される。そして狭間隔領域R2の形成においては、パルスピッチpやレーザ光の出力等に基づいて、改質層Mの形成において進行する自然剥離距離、換言すれば境界Adの位置を制御できる。なお、狭間隔領域R2の径方向に対する形成幅は任意に決定することができ、例えば図7に示したように径方向に対して改質層Mを2周分以上形成してもよいし、1周分のみを形成してもよい。
【0047】
なお、未接合領域Aeの形成における界面の「改質」とは、第1のウェハWと第2のウェハSとの接合強度を低下させる処理のことをいい、例えばレーザ光の照射による当該界面の剥離、除去、アモルファス化等を含むものとする。また、図7においては改質層Mが略円形状で形成される場合を例に図示をしたが、形成される改質層Mの形状は略円形状には限られず、任意の形状で形成することができる。
【0048】
未接合領域Aeの形成に際しては、先ず、レーザヘッドと第1のウェハWとを相対的に回転させながら、レーザヘッドから第1のウェハWの内部にレーザ光を周期的に照射し、第1のウェハWの周縁部Weにおける径方向内側に狭間隔領域R2を形成する。狭間隔領域R2の形成に際しては、隣接する改質層Mのパルスピッチpが改質層Mの形成幅Lよりも小さくなるように、レーザヘッドと第1のウェハWの相対的な回転速度やレーザ光の周波数が制御される。
【0049】
この際、改質層Mの形成により重合ウェハTの内部には応力σが蓄積され、かかる応力σにより第1のウェハWと第2のウェハSとの剥離が自然進行する。しかしながら本実施形態によれば、改質層Mのパルスピッチpを小さく、具体的には周方向に隣接する改質層Mの一部が互いに重なるように形成し、この際のパルスピッチpやレーザ光の出力等により、第1のウェハWと第2のウェハSの自然剥離距離を均一に制御することができる。そして、このように自然剥離距離を均一に制御できることから、周縁改質層M1を適切に形成することができる。またこれにより、前述のように第2のウェハSに対して第1のウェハWが浮いた状態となることが抑制される。
【0050】
周縁部Weに狭間隔領域R2が形成されると、次に、狭間隔領域R2の径方向外側に広間隔領域R1を形成する。広間隔領域R1の形成に際しては、隣接する改質層MのパルスピッチPがパルスピッチpよりも大きくなるように、具体的には、パルスピッチPが改質層Mの形成幅Lと一致するように、レーザヘッドと第1のウェハWの相対的な回転速度やレーザ光の周波数が制御される。
【0051】
なお、周縁部Weの除去を適切に行う観点からは、未接合領域Aeの全面に狭間隔領域R2が形成されることが好ましい。しかしながら、このように未接合領域Aeの全面に狭間隔領域R2を形成する場合、周縁部Weに対する改質層Mの形成数が増大し、未接合領域Aeの形成に係るスループットが悪化する。この点、本実施形態によれば、少なくとも周縁部Weの径方向内側において狭間隔領域R2を形成し、その径方向外側には広間隔領域R1を形成する。これにより、少なくとも周縁改質層M1形成の基準となる未接合領域Aeの内周側端部における剥離を均一に進行させるとともに、未接合領域Aeの形成に係るスループットを向上できる。
【0052】
なお、広間隔領域R1の形成に際しても、改質層Mの形成により重合ウェハTの内部には応力σが蓄積され、かかる応力σにより第1のウェハWと第2のウェハSとの自然剥離が進行する。しかしながら本実施形態によれば、広間隔領域R1の形成に先立って周縁部Weにおける径方向内側に狭間隔領域R2が形成され、当該狭間隔領域R2を境に第1のウェハWの中央部Wc側と周縁部We側が縁切りされている。このため、狭間隔領域R2の径方向内側まで、すなわち周縁改質層M1の形成予定位置を跨いで径方向内側まで自然剥離が進行するのが抑制される。すなわち、境界Adの均一な形成が維持され、これにより周縁部Weを適切に除去することができる。
【0053】
なお、このように予め狭間隔領域R2が形成されることで、広間隔領域R1の形成に際しての自然剥離が径方向内側まで伸展することが抑制されるが、広間隔領域R1を形成する改質層Mの形成位置は、当該改質層Mの形成による自然剥離を考慮して決定することが更に好ましい。すなわち広間隔領域R1における改質層Mの形成位置は、当該改質層Mの形成により自然剥離する領域の内周側端部が境界Adよりも径方向外側となるように、広間隔領域R1における改質層Mの形成位置が制御されることが好ましい。このように、未接合領域Aeの形成により進行する自然剥離が、周縁改質層M1の形成位置よりも径方向内側まで進行しないように改質層Mの形成位置が制御されることにより、第1のウェハWの内部に周縁改質層M1を適切に形成することができ、すなわち、エッジトリムの品質を向上することができる。
【0054】
なお、図示の例において未接合領域Aeは第1のウェハWとデバイス層Dの界面に形成したが、未接合領域Aeの形成位置は、重合ウェハTの内部であって、第1のウェハWと第2のウェハSの接合強度を低下できればこれに限定されるものではない。例えば、未接合領域Aeは第2のウェハSとデバイス層Dの界面に形成されてもよいし、例えば第1のウェハWと第2のウェハSとが実際に接合されるそれぞれの表面膜Fの界面に形成されてもよい。また未接合領域Aeは、例えば第2のウェハSとデバイス層Dとの界面に形成される場合、反転された重合ウェハTの上方、すなわち、第2のウェハS側からレーザ光を照射することにより形成してもよい。なお、本開示に係る技術においては、第1のウェハWの内部、第2のウェハSの内部、デバイス層Dまたは表面膜Fの内部及びそれぞれの界面をあわせて、前述の「重合ウェハTの内部」というものとする。
【0055】
またここで、後のエッジトリム処理において、未接合領域Aeを境とする周縁部Weの除去を効果的に促進するためには、界面用レーザ光の波長が8.9μm~11μmの波長帯を有することが好ましい。具体的には、例えば表面膜FがSiO膜からなる場合、最も効率的に光を吸収するのは、吸収係数が最も大きい非対称伸縮ピークであることが知られており、かかる非対称伸縮ピークで光を吸収させるためには、レーザ光の波長が8.9μm~11μmの間にあることが好ましい。
【0056】
本実施形態において界面用レーザ光として使用されるCOレーザは、8.9μm~11μmの波長帯に多くの発振線を有している。すなわち、上記事情を鑑みて、SiO膜からなる表面膜Fに未接合領域Aeを形成する場合には、界面用レーザ光としてCOレーザを使用することが好ましく、より適切には、波長が9.3μm程度のCOレーザ光であることが望ましい。
【0057】
未接合領域Aeが形成された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置70により内部改質装置61に搬送される。内部改質装置61では、図3(c)及び図3(d)に示すように第1のウェハWの内部にレーザ光を照射し、周縁改質層M1、分割改質層M2及び内部面改質層M3を順次形成する(図4のステップS2、ステップS3)。なお、図示の煩雑さを回避するため、図3(d)以降の図面においては、分割改質層M2の図示を省略している。
【0058】
周縁改質層M1の形成にあたっては、重合ウェハT(第1のウェハW)を回転させながら、レーザヘッド(図示せず)から第1のウェハWの内部にレーザ光を周期的に照射する。これにより、周縁改質層M1は接合領域Ac(未接合領域Ae)と同心円状の環状に形成される。なお、第1のウェハWの厚み方向における周縁改質層M1の形成数は図示の例には限定されず、任意に決定できる。
【0059】
ここで周縁改質層M1の形成位置は、前述のように界面改質装置60において形成された未接合領域Aeの内周側端部、すなわち境界Adを基準として、当該境界Adよりも若干径方向内側に決定される。境界Adは、例えば界面改質装置60における未接合領域Aeの形成結果や、ウェハ処理システム1の任意の位置に設けられるアライメント装置(図示せず)においてIRカメラ等を用いて検知される。
【0060】
周縁改質層M1は、接合領域Acと未接合領域Aeとの境界Adと重なる位置に形成されることが理想であるが、例えば加工誤差などにより周縁改質層M1がずれて形成される場合がある。そしてこれにより、周縁改質層M1が境界Adから径方向外側に離れた位置、すなわち未接合領域Aeに形成されると、周縁部Weが除去された後に第2のウェハSに対して第1のウェハWが浮いた状態になってしまう場合がある。
【0061】
この点、周縁改質層M1を境界Adよりも径方向内側に形成するように制御することにより、例えば加工誤差により形成位置がずれたとしても、境界Adと重なる位置、または境界Adよりも径方向外側であっても当該境界Adに近接した位置に周縁改質層M1を形成することができ、境界Adから径方向外側の離れた位置に周縁改質層M1が形成されるのを抑制できる。
【0062】
なお、第1のウェハWの内部には、周縁改質層M1から厚み方向(以下、「上下方向」という場合があり、第1のウェハWの裏面Wb側を「上方」、表面Wa側を「下方」とする。)にクラックC1が伸展する。周縁改質層M1から上方に伸展するクラックC1は、例えば第1のウェハWの裏面Wbに到達させる。また、下方に伸展するクラックC1は、例えば第1のウェハWの表面Waに形成されたデバイス層Dに到達させる。周縁部Weは、未接合領域Ae、周縁改質層M1及びかかるクラックC1を基点として剥離し、第1のウェハWから除去される。
【0063】
周縁改質層M1が形成されると、レーザヘッド(図示せず)を移動させて、周縁改質層M1の径方向外側に、第1のウェハWの径方向に延伸する分割改質層M2を形成する。なお、図1(b)及び図3(c)の例においては、分割改質層M2は第1のウェハWの円周方向に8箇所、厚み方向に3箇所形成されているが、この分割改質層M2の数は任意である。
【0064】
分割改質層M2が形成されると、レーザヘッド(図示せず)を移動させて、周縁改質層M1の径方向内側に、第1のウェハWの面方向に延伸する内部面改質層M3を形成する。内部面改質層M3の形成にあたっては、重合ウェハT(第1のウェハW)を回転させながらレーザヘッド(図示せず)からレーザ光を周期的に照射するとともに、レーザヘッドを第1のウェハWの径方向内側に相対的に移動させる。これにより、第1のウェハWの内部には、面方向に沿って全面に内部面改質層M3が形成される。なお、第1のウェハWの内部には、内部面改質層M3から面方向にクラックC2が伸展する。ここで、周縁部WeはクラックC1により第1のウェハWから縁切りされているため、クラックC2は周縁改質層M1の径方向内側のみに伸展する。
【0065】
また、形成される内部面改質層M3の下端は、分離後の第1の分離ウェハWd1の最終仕上げ処理後の表面より上方に位置している。すなわち、分離後の第1の分離ウェハWd1に内部面改質層M3が残らないように形成位置が調節される。
【0066】
またここで、ステップS2において形成される周縁改質層M1の下端は、内部面改質層M3よりも上方に位置していることが望ましい。周縁改質層M1の下端が内部面改質層M3よりも下方に位置する場合、エッジトリムの品質が低下するおそれがある。具体的には、例えば周縁改質層M1が分離後の第1の分離ウェハWd1の最終仕上げ処理後の表面や側面に残ることにより、仕上げ面が粗れてしまうおそれがある。かかる観点から、第1の分離ウェハWd1の最終仕上げ面上に周縁改質層M1が残さないようにするため、周縁改質層M1の下端は、内部面改質層M3よりも上方に位置することが好ましい。
【0067】
第1のウェハWの内部に内部面改質層M3が形成されると、次に、ウェハ搬送装置70によって重合ウェハTが内部改質装置61から周縁除去装置62へと搬送される。
【0068】
周縁除去装置62においては、図8(a)に示すように、周縁改質層M1(クラックC1)及び未接合領域Aeを基点に、第1のウェハWの周縁部Weが除去される(図4のステップS4)。
【0069】
周縁部Weの除去にあたっては、重合ウェハTを形成する第1のウェハWと第2のウェハSとの界面に、例えばくさび形状からなる挿入部材としてのブレードを挿入してもよい。また例えば、エアブローやウォータジェットを噴射し、当該周縁部Weを打圧して除去してもよい。このように、エッジトリムにあたっては第1のウェハWの周縁部Weに対して衝撃を加えることにより、周縁部Weが周縁改質層M1を基点に適切に剥離される。また、上述のように、未接合領域Aeにより第1のウェハWと第2のウェハSの接合強度が低下しているため、周縁部Weが適切に除去される。
【0070】
第1のウェハWの周縁部Weが除去された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置70によって周縁除去装置62から加工装置80へと搬送される。加工装置80では、先ず、図8(b)に示すように内部面改質層M3(クラックC2)を基点に、第1のウェハWが第1の分離ウェハWd1と第2の分離ウェハWd2とに分離される(図4のステップS5)。
【0071】
第1のウェハWの分離にあたっては、第1のウェハWの裏面Wbを搬送アーム71で吸着保持し、また第2のウェハSの裏面Sbをチャック83で吸着保持した状態で、搬送アーム71を上昇させる。これにより第1のウェハWは内部面改質層M3を基点として第1の分離ウェハWd1と第2の分離ウェハWd2とに分離され、第2の分離ウェハWd2が搬送アーム71に保持された状態で上方に持ち上げられる。
【0072】
なお、分離された第2の分離ウェハWd2は、例えば受渡位置A0上に載置して搬送アーム71の吸着保持面により吸引吸着した後、ウェハ処理システム1の外部に回収される。また例えば、搬送アーム71の可動範囲内に回収部(図示せず)を設け、当該回収部において第2の分離ウェハWd2の吸着保持を解除することで、分離された第2の分離ウェハWd2を回収してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、搬送アーム71の上昇により第1のウェハWを分離したが、搬送アーム71を回転させることにより内部面改質層M3を境に第2の分離ウェハWd2を縁切りした後、搬送アーム71を上昇させてもよい。また例えば、搬送アーム71に圧力センサ(図示せず)を設け、第2の分離ウェハWd2を吸引する圧力を測定することで、第2の分離ウェハWd2の有無を検知して、第1のウェハWが分離されたか否かを確認してもよい。
【0074】
続いて、チャック83を加工位置A1に移動させる。そして、研削ユニット84によって、図8(c)に示すようにチャック83に保持された分離後の重合ウェハT、すなわち第1の分離ウェハWd1の分離面を研削し、当該分離面に残る周縁改質層M1と内部面改質層M3を除去する(図4のステップS6)。ステップS6では、分離面に研削砥石を当接させた状態で、重合ウェハT(第1の分離ウェハWd1)と研削砥石をそれぞれ回転させ、分離面を研削する。なおその後、洗浄液ノズル(図示せず)を用いて、第1の分離ウェハWd1の研削面が洗浄液によって洗浄されてもよい。
【0075】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により洗浄装置41に搬送される。洗浄装置41では第1の分離ウェハWd1の研削面がスクラブ洗浄される(図4のステップS7)。なお、洗浄装置41では、第1の分離ウェハWd1の研削面と共に、第2のウェハSの裏面Sbが洗浄されてもよい。
【0076】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置50によりエッチング装置40に搬送される。エッチング装置40では第1の分離ウェハWd1の研削面が薬液によりウェットエッチングされる(図4のステップS8)。上述した加工装置80で研削された研削面には、研削痕が形成される場合がある。本ステップS8では、ウェットエッチングすることによって研削痕を除去でき、研削面を平滑化することができる。
【0077】
その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置50によりトランジション装置30に搬送され、さらにウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCw1に搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0078】
以上の実施形態によれば、未接合領域Aeの形成において、周縁部Weにおける径方向外側に広間隔領域R1、周縁部Weにおける広間隔領域R1の径方向内側に狭間隔領域R2を形成することで、周縁部Weの除去を適切に行うことができる。具体的には、周縁部Weにおける径方向内側にパルスピッチpの小さい狭間隔領域R2を形成することにより、かかる狭間隔領域R2の形成に際して進行する自然剥離距離を制御し、未接合領域Aeの内周側端部の位置、すなわち境界Adの位置を全周にわたって均一にすることができる。そしてこれにより、周縁改質層M1の形成予定位置と境界Adの位置との距離を適切に制御できるため、境界Adに沿って適切に周縁改質層M1を形成できる。すなわち、周縁部Weを第1のウェハWから適切に除去することができ、エッジトリムの品質を向上することができる。
【0079】
また、このように境界Adの位置を制御できるため、改質層Mの形成に際しての自然剥離が周縁改質層M1の形成予定位置よりも径方向内側まで進行することが抑制される。これにより、周縁部Weが除去された後に第2のウェハSに対して第1のウェハWが浮いた状態となることが抑制され、以降のウェハ処理やウェハ搬送におけるコンタミネーションの発生が抑制される。
【0080】
また更に、周縁部Weにおける狭間隔領域R2の径方向外側には、改質層MのパルスピッチPが少なくとも狭間隔領域R2におけるパルスピッチpよりも大きな広間隔領域R1が形成される。これにより、上述のように未接合領域Aeの径方向内側に適切に周縁改質層M1を形成できることに加え、未接合領域Aeの形成にかかるスループットを向上することができる。
【0081】
なお、上述のように広間隔領域R1は、当該広間隔領域R1の形成に際して進行する自然剥離の内周側端部が、境界Adよりも内側まで進行しない位置に形成されることが好ましい。しかしながら、例えば広間隔領域R1の形成時のレーザ光の出力や加工誤差等の影響により自然剥離が境界Adよりも内側まで進行し、均一に形成された境界Adを乱してしまう場合がある。
【0082】
かかる場合、狭間隔領域R2及び広間隔領域R1を順次形成した後、更に、境界Adを均一に補正するための狭間隔領域R2を形成するようにしてもよい。すなわち、狭間隔領域R2の形成時における自然剥離距離は、上述のように、例えばレーザ光の出力や改質層Mのパルスピッチpにより制御することが可能である。そして、広間隔領域R1の形成により乱された境界Adを更に上書きして均一化することができる位置に、再度、狭間隔領域R2を形成してもよい。これにより、境界Adに沿って周縁改質層M1を適切に形成することができ、すなわち周縁部Weを適切に除去できる。
【0083】
なお、上記実施形態においては広間隔領域R1の形成に先立って狭間隔領域R2を形成したが、広間隔領域R1の形成後に狭間隔領域R2を形成してもよい。このように狭間隔領域R2の形成に先立って広間隔領域R1を形成する場合、広間隔領域R1の形成により不均一に進行した自然剥離を、上述のように、狭間隔領域R2の形成により適切に均一に上書きすることができる。すなわち、狭間隔領域R2の形成により境界Adの位置を均一に制御することができる。なお、このように狭間隔領域R2の形成に先立って広間隔領域R1を形成する場合であっても、広間隔領域R1の形成により自然剥離する領域の内周側端部が、境界Adよりも径方向外側となるように、広間隔領域R1における改質層Mの形成位置が制御されることが好ましい。
【0084】
なお、上記実施形態においては、広間隔領域R1におけるパルスピッチPを改質層Mの形成幅Lと一致するように、狭間隔領域R2におけるパルスピッチpを改質層Mの形成幅Lよりも小さくなるように制御したが、改質層MのパルスピッチP、pはこれに限られるものではない。具体的には、パルスピッチPは、周縁部Weにおける第2のウェハSとの接合強度を低下させ、適切に周縁部Weを剥離できる距離であればよい。また、パルスピッチpは、少なくとも広間隔領域R1におけるパルスピッチPよりも小さく、自然剥離距離を制御できる距離であればよい。
【0085】
なお、上記実施形態においては未接合領域Aeの形成後に周縁改質層M1を形成したが、未接合領域Aeの形成に先立って周縁改質層M1を形成してもよい。かかる場合、周縁改質層M1から上下方向に伸展するクラックC1の下端部を、少なくとも未接合領域Aeの形成高さよりも下方まで到達させておくことが好ましい。これにより、当該クラックC1により周縁部Weと第1のウェハWとが縁切りされ、未接合領域Aeの形成における自然剥離が周縁改質層M1よりも径方向内側まで伸展することが適切に抑制される。すなわち、未接合領域Aeの内周側端部である境界Adの位置を、より適切に均一にすることができ、これによりエッジトリムの品質を向上することができる。
【0086】
また、周縁改質層M1の形成方法、及び、クラックC1の伸展方法も上記実施形態に限られるものではなく、例えば、図9(a)に示すように、クラックC1の下端が未接合領域Aeよりも上方、未接合領域Aeの内端(より具体的には自然剥離部分の内端)が周縁改質層M1よりも径方向外側に配置されてもよい。これにより、周縁部Weの剥離においては図9(b)に示すようにクラックC1と未接合領域Ae内端とが他のクラックC3により連結され、第1のウェハWの全周にわたって周縁部Weを適切に除去することができる。
【0087】
なお、上述の実施形態においてはウェハ処理システム1に設けられた界面改質装置60において未接合領域Aeを形成したが、未接合領域Aeはウェハ処理システム1の外部において形成してもよい。また、第2のウェハSと接合前の第1のウェハWに未接合領域Aeを形成してもよい。なお、ここで、接合前の第1のウェハWに表面膜Fの表面に未接合領域Aeを形成する場合、当該未接合領域Aeの形成時において第1のウェハWの内部に応力σが蓄積されることが抑制されるため、内部応力により重合ウェハTの剥離が進行するのを抑制できる。
【0088】
なお、上記の実施形態においては、周縁改質層M1から上方に伸展するクラックC1を第1のウェハWの裏面Wbまで到達させたが、図10(a)に示すように、クラックC1を裏面Wbまで到達させず、内部面改質層M3から面方向に伸展するクラックC2と連結させてもよい。かかる場合、第1のウェハWの分離においては、図10(b)に示すように第2の分離ウェハWd2は周縁部Weと一体に分離される。すなわち周縁部Weの除去と第1のウェハWの分離が同時に行われる。なお、このように第2の分離ウェハWd2と周縁部Weとを一体に分離する場合には、上述の実施形態における図4のステップS2において、分割改質層M2は形成しなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、第1のウェハWの内部に内部面改質層M3を形成することにより、当該内部面改質層M3を基点として第1のウェハWを分離(薄化)したが、第1のウェハWの薄化方法はこれに限定されない。例えば、重合ウェハTに未接合領域Ae、周縁改質層M1及び分割改質層M2を形成し、第1のウェハWの周縁部Weを除去した後、加工装置80における研削処理により第1のウェハWを薄化してもよい。
【0090】
なお、上記実施形態においては内部改質装置61において第1のウェハWの内部に周縁改質層M1、分割改質層M2及び内部面改質層M3を形成したが、周縁改質層M1、分割改質層M2及び内部面改質層M3はそれぞれ別の装置において形成されてもよい。すなわち、ウェハ処理システム1には、周縁改質層M1を形成するための周縁改質装置、分割改質層M2を形成するための分割改質装置、内部面改質層M3を形成するための内部面改質装置がそれぞれ設けられていてもよい。
【0091】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 ウェハ処理システム
60 界面改質装置
61 内部改質装置
62 周縁除去装置
90 制御装置
Ad 境界
Ae 未接合領域
M 改質層
M1 周縁改質層
P (広間隔領域の)パルスピッチ
p (狭間隔領域の)パルスピッチ
R1 広間隔領域
R2 狭間隔領域
S 第2のウェハ
T 重合ウェハ
W 第1のウェハ
Wc 中央部
We 周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10