(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び整合方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2020026391
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 絢
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0126069(US,A1)
【文献】特開2018-073904(JP,A)
【文献】特開2015-090759(JP,A)
【文献】特表2018-535505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0122420(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0098527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01J 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
電極と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内でのプラズマ処理のために前記電極に供給される高周波電力を発生するように構成された高周波電源と、
前記高周波電源と前記電極との間で接続されており、前記高周波電源の負荷側のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するよう構成された整合器と、
を備え、
前記高周波電源は、二つの連続する期間のうち先行期間において前記電極に前記高周波電力の変調波及び連続波のうち一方の電力波を供給し、該二つの連続する期間のうち後続期間において前記電極に前記変調波及び前記連続波のうち他方の電力波を供給するよう構成されており、
前記高周波電源は、交互の第1の副期間と第2の副期間のうち該第1の副期間における前記高周波電力のパワーレベルが該第2の副期間における前記高周波電力のパワーレベルよりも高くなるように、前記変調波を生成し、
前記整合器は、前記二つの連続する期間のうち前記連続波が供給される期間において
、連続する複数の副期間を経て前記複数の副期間のうち最初の副期間のインピーダンスから前記後続期間のための目標インピーダンスまで
前記負荷インピーダンスを段階的に変更するよう構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記整合器は、前記連続波が供給される前記期間において前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的に前記後続期間のための設定目標値まで変化させるように、前記負荷インピーダンスを段階的に変更するよう構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記整合器は、前記高周波電源から前記電極に供給される電力が前記変調波から前記連続波に切り替えられた後に、前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロまで減少させるように、前記負荷インピーダンスを段階的に変更するよう構成されている、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記整合器は、前記高周波電源から前記電極に供給される電力が前記連続波から前記変調波に切り替えられる前に、前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロよりも大きな前記設定目標値まで増加させるように、前記負荷インピーダンスを段階的に変更するよう構成されている、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記設定目標値は、0.3以上、0.5以下である、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記整合器は、前記連続波が供給される前記期間において、
前記複数の副期間を経て前記反射係数の前記絶対値を段階的に前記後続期間のための前記設定目標値まで変化させるよう構成されており、
前記複数の副期間の各々の時間長が、0.5秒以上に設定され、且つ、前記複数の副期間に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における前記反射係数の前記絶対値の目標値と他方の副期間における前記反射係数の前記絶対値の目標値の差が、0.2以下に設定されるか、
前記時間長が0.2秒以上に設定され、且つ、前記差が0.1以下に設定される、
請求項2~5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記時間長が0.5秒以上に設定され、且つ、前記差が0.05以下に設定される、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記整合器は、前記二つの連続する期間のうち前記変調波が供給される期間における前記高周波電源の負荷インピーダンスであり前記第1の副期間内のモニタ期間におけるその測定値によって特定される該負荷インピーダンスを、前記高周波電源の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整するよう構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記モニタ期間は、前記第1の副期間の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間である、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記整合器は、前記目標インピーダンスを、前記変調波が供給される前記期間における前記変調波の反射係数の絶対値の設定目標値から特定するように構成されている、請求項8又は9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記反射係数の前記絶対値の前記設定目標値は、0.3以上、0.5以下である、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記高周波電源は、前記変調波の進行波のパワーレベルと該変調波の反射波のパワーレベルとの差であるロードパワーレベルを目標パワーレベルに近づけるか一致させるように、前記変調波のパワーレベルを調整するよう構成されている、請求項8~11の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理装置において実行される整合方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
電極と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内でのプラズマ処理のために前記電極に供給される高周波電力を発生するように構成された高周波電源と、
前記高周波電源と前記電極との間で接続されており、前記高周波電源の負荷側のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するよう構成された整合器と、
を備え、該整合方法は、
二つの連続する期間のうち先行期間において、前記高周波電源から前記電極に前記高周波電力の変調波及び連続波のうち一方の電力波を供給する工程であり、前記変調波は、交互の第1の副期間と第2の副期間のうち該第1の副期間における前記高周波電力のパワーレベルが該第2の副期間における前記高周波電力のパワーレベルよりも高くなるように生成される、該工程と、
前記二つの連続する期間のうち後続期間において前記電極に前記高周波電力の前記変調波及び前記連続波のうち他方の電力波を供給する工程と、
前記二つの連続する期間のうち前記連続波が供給される期間において、
連続する複数の副期間を経て前記複数の副期間のうち最初の副期間のインピーダンスから前記後続期間のための目標インピーダンスまで前記負荷インピーダンスを段階的に変更する工程と、
を含む整合方法。
【請求項14】
前記負荷インピーダンスを段階的に変更する前記工程に
おいて、前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的に前記後続期間のための設定目標値まで変化させるように、前記負荷インピーダンスが段階的に変更される、請求項13に記載の整合方法。
【請求項15】
前記高周波電源から前記電極に供給される電力が前記変調波から前記連続波に切り替えられた後に、前記負荷インピーダンスを段階的に変更する前記工程において、前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロまで減少させるように前記負荷インピーダンスが段階的に変更される、請求項14に記載の整合方法。
【請求項16】
前記高周波電源から前記電極に供給される電力が前記連続波から前記変調波に切り替えられる前に、前記負荷インピーダンスを段階的に変更する前記工程において、前記高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロよりも大きい前記設定目標値まで増加させるように前記負荷インピーダンスが段階的に変更される、請求項14に記載の整合方法。
【請求項17】
前記設定目標値は、0.3以上、0.5以下である、請求項16に記載の整合方法。
【請求項18】
前記連続波が供給される前記期間において、
前記複数の副期間を経て前記反射係数の前記絶対値を段階的に前記後続期間のための前記設定目標値まで変化させるよう、前記負荷インピーダンスが段階的に変更され、
前記複数の副期間の各々の時間長が、0.5秒以上に設定され、且つ、前記複数の副期間に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における前記反射係数の前記絶対値の目標値と他方の副期間における前記反射係数の前記絶対値の目標値の差が、0.2以下に設定されるか、
前記時間長が0.2秒以上に設定され、且つ、前記差が0.1以下に設定される、
請求項14~17の何れか一項に記載の整合方法。
【請求項19】
前記時間長が0.5秒以上に設定され、且つ、前記差が0.05以下に設定される、請求項18に記載の整合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及び整合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、プラズマ処理装置が用いられている。プラズマ処理装置は、チャンバ、電極、高周波電源、及び整合器を備える。チャンバ内のガスを励起させてプラズマを生成するために、高周波電力が高周波電源から電極に与えられる。整合器は、高周波電源の出力インピーダンスに高周波電源の負荷側のインピーダンス、即ち負荷インピーダンスを整合させるように構成されている。
【0003】
プラズマ処理装置において、そのパワーが交互に増減された高周波電力、即ち高周波電力の変調波を電極に供給する技術が提案されている。かかる技術は、例えば、下記の特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-90770号公報
【文献】特開2019-186099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プラズマ処理装置の電極に供給する電力を高周波電力の変調波及び連続波のうち一方から他方に切り替えた後の負荷からの反射を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、電極、高周波電源、及び整合器を備える。高周波電源は、電極に電気的に接続されている。高周波電源は、チャンバ内でのプラズマ処理のために電極に供給される高周波電力を発生するように構成されている。整合器は、高周波電源と電極との間で接続されている。整合器は、高周波電源の負荷側のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するよう構成されている。高周波電源は、二つの連続する期間のうち先行期間において電極に高周波電力の変調波及び連続波のうち一方の電力波を供給し、二つの連続する期間のうち後続期間において電極に変調波及び連続波のうち他方の電力波を供給するよう構成されている。高周波電源は、交互の第1の副期間と第2の副期間のうち第1の副期間における高周波電力のパワーレベルが第2の副期間における高周波電力のパワーレベルよりも高くなるように、変調波を生成する。整合器は、二つの連続する期間のうち連続波が供給される期間において負荷インピーダンスを後続期間のための目標インピーダンスまで段階的に変更するよう構成されている。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置の電極に供給する電力を高周波電力の変調波及び連続波のうち一方から他方に切り替えた後の負荷からの反射を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】第1の高周波電力及び第2の高周波電力のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図3】第1の高周波電力及び第2の高周波電力のタイミングチャートの別の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示すプラズマ処理装置の第1の高周波電源及び第1の整合器の構成の一例を例示する図である。
【
図5】
図1に示すプラズマ処理装置の第1の整合器のセンサの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示すプラズマ処理装置の第2の高周波電源及び第2の整合器の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示すプラズマ処理装置の第2の整合器のセンサの構成の一例を示す図である。
【
図8】反射係数の絶対値の変化の一例を示す図である。
【
図9】反射係数の絶対値の変化の別の一例を示す図である。
【
図10】一つの例示的実施形態に係る整合方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、電極、高周波電源、及び整合器を備える。高周波電源は、電極に電気的に接続されている。高周波電源は、チャンバ内でのプラズマ処理のために電極に供給される高周波電力を発生するように構成されている。整合器は、高周波電源と電極との間で接続されている。整合器は、高周波電源の負荷側のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するよう構成されている。高周波電源は、二つの連続する期間のうち先行期間において電極に高周波電力の変調波及び連続波のうち一方の電力波を供給し、二つの連続する期間のうち後続期間において電極に変調波及び連続波のうち他方の電力波を供給するよう構成されている。高周波電源は、交互の第1の副期間と第2の副期間のうち第1の副期間における高周波電力のパワーレベルが第2の副期間における高周波電力のパワーレベルよりも高くなるように、変調波を生成する。整合器は、二つの連続する期間のうち連続波が供給される期間において負荷インピーダンスを後続期間のための目標インピーダンスまで段階的に変更するよう構成されている。
【0011】
上記実施形態では、整合器は、高周波電源から電極に供給される電力が一方の電力波から他方の電力波に切り替えられる前又は後の連続波が供給される期間において負荷インピーダンスを後続期間のための目標インピーダンスまで段階的に変更する。したがって、整合器は、高周波電源から電極に供給される電力が一方の電力波から他方の電力波に切り替えられた後に設定すべき負荷インピーダンスに追従することが可能となる。故に、高周波電源から電極に供給される電力が変調波及び連続波のうち一方から他方に切り替えられた後の反射を低減させることが可能となる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、整合器は、連続波が供給される期間における負荷インピーダンスの段階的な変更を、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的に後続期間のための設定目標値まで変化させるように行ってもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、整合器は、高周波電源から電極に供給される電力が変調波から連続波に切り替えられた後に、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロまで減少させるように、負荷インピーダンスを段階的に変更するよう構成されていてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、整合器は、電極に供給される電力が連続波から変調波に切り替えられる前の負荷インピーダンスの段階的な変更を、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロよりも大きな設定目標値まで増加させるように行ってもよい。設定目標値は、0.3以上、0.5以下であってもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、整合器は、連続波が供給される期間において反射係数の絶対値を段階的に後続期間のための設定目標値まで変化させるように構成されていてもよい。複数の副期間の各々の時間長が、0.5秒以上に設定され、且つ、複数の副期間に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における反射係数の絶対値の目標値と他方の副期間における反射係数の絶対値の目標値の差が、0.2以下に設定される。或いは、当該時間長が、0.2秒以上に設定され、且つ、当該差が、0.1以下に設定される。当該時間長は0.5秒以上に設定され、且つ、当該差は0.05以下に設定されてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、整合器は、二つの連続する期間のうち変調波が供給される期間における高周波電源の負荷インピーダンスを高周波電源の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整するよう構成されていてもよい。高周波電源の負荷インピーダンスは、第1の副期間内のモニタ期間における負荷インピーダンスの測定値によって特定される。この実施形態によれば、変調波が供給される期間において変調波に対する負荷からの反射が低減され得る。
【0017】
一つの例示的実施形態において、モニタ期間は、第1の副期間の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間であってもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、整合器は、目標インピーダンスを、変調波が供給される期間における変調波の反射係数の絶対値の設定目標値から特定するように構成されていてもよい。一つの例示的実施形態において、この設定目標値は、0.3以上、0.5以下であってもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、高周波電源は、変調波が供給される期間におけるロードパワーレベルを目標パワーレベルに近づけるか一致させるように、高周波電力のパワーレベルを調整するよう構成されていてもよい。ロードパワーレベルは、変調波の進行波のパワーレベルと変調波の反射波のパワーレベルとの差である。目標インピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスと異なる場合には、反射が発生する。この実施形態によれば、反射が発生しても、プラズマに目標パワーレベルの変調波が結合され得る。
【0020】
別の例示的実施形態においては、整合方法が提供される。整合方法は、プラズマ処理装置において実行される。プラズマ処理装置は、チャンバ、電極、高周波電源、及び整合器を備える。高周波電源は、電極に電気的に接続されている。高周波電源は、チャンバ内でのプラズマ処理のために電極に供給される高周波電力を発生するように構成されている。整合器は、高周波電源と電極との間で接続されており、高周波電源の負荷側のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するよう構成されている。整合方法は、二つの連続する期間のうち先行期間において、高周波電源から電極に高周波電力の変調波及び連続波のうち一方の電力波を供給する工程を含む。変調波は、交互の第1の副期間と第2の副期間のうち第1の副期間における高周波電力のパワーレベルが第2の副期間における高周波電力のパワーレベルよりも高くなるように生成される。整合方法は、二つの連続する期間のうち後続期間において電極に高周波電力の変調波及び連続波のうち他方の電力波を供給する工程を更に含む。整合方法は、二つの連続する期間のうち連続波が供給される期間において、後続期間のための目標インピーダンスまで負荷インピーダンスを段階的に変更する工程を更に含む。
【0021】
一つの例示的実施形態では、負荷インピーダンスを段階的に変更する工程にいて、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的に後続期間のための設定目標値まで変化させるように、負荷インピーダンスが段階的に変更されてもよい。
【0022】
一つの例示的実施形では、電極に供給される電力が変調波から連続波に切り替えられた後に、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロまで減少させるように負荷インピーダンスが段階的に変更されてもよい。
【0023】
一つの例示的実施形では、電極に供給される電力が連続波から変調波に切り替えられる前に、高周波電力の反射係数の絶対値を段階的にゼロよりも大きい設定目標値まで増加させるように負荷インピーダンスが段階的に変更されてもよい。設定目標値は、0.3以上、0.5以下であってもよい。
【0024】
一つの例示的実施形において、連続波が供給される期間において、連続する複数の副期間を経て反射係数の絶対値を段階的に後続期間のための設定目標値まで変化させるよう、負荷インピーダンスが段階的に変更されてもよい。複数の副期間の各々の時間長が、0.5秒以上に設定され、且つ、複数の副期間に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における反射係数の絶対値の目標値と他方の副期間における反射係数の絶対値の目標値の差が、0.2以下に設定される。或いは、当該時間長が、0.2秒以上に設定され、且つ、当該差が、0.1以下に設定される。当該時間長は0.5秒以上に設定され、且つ、当該差は0.05以下に設定されてもよい。
【0025】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0026】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間を提供している。
【0027】
チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいる。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ10の内部空間は、チャンバ本体12の内側に提供されている。チャンバ本体12は、アルミニウムといった材料から形成されている。チャンバ本体12の内壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。チャンバ本体12は、接地されている。チャンバ本体12の側壁には開口12pが形成されている。基板Wは、チャンバ10の内部空間とチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、開口12pを通過する。開口12pは、ゲートバルブ12gによって開閉可能である。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0028】
チャンバ本体12の底部上には、絶縁板13が設けられている。絶縁板13は、例えばセラミックから形成されている。絶縁板13上には、支持台14が設けられている。支持台14は、略円盤形状を有している。支持台14は、その上に設けられたサセプタ16を支持している。サセプタ16は、チャンバ10内に設けられている。サセプタ16は、アルミニウムといった導電性の材料から形成されている。サセプタ16は、下部電極を構成している。
【0029】
サセプタ16は、その上に設けられた静電チャック18を支持している。静電チャック18は、チャンバ10内に設けられている。静電チャック18は、その上に載置される基板Wを保持するように構成されている。静電チャック18は、本体及び電極20を有している。静電チャック18の本体は、誘電体から形成されており、略円盤形状を有している。電極20は、導電膜であり、静電チャック18の本体の中に設けられている。電極20には、スイッチ22を介して直流電源24が電気的に接続されている。直流電源24からの直流電圧が電極20に印加されると、基板Wと静電チャック18との間で静電引力が発生する。発生した静電引力によって、基板Wは静電チャック18に引き付けられ、静電チャック18によって保持される。
【0030】
サセプタ16及び静電チャック18は、基板支持器を構成している。基板支持器は、その上に搭載されるエッジリング26を支持する。エッジリング26は、基板Wのエッジを囲むように配置される。即ち、基板Wは、エッジリング26によって囲まれた領域内、且つ、静電チャック18上に配置される。サセプタ16及び支持台14の各々外周面は、円筒状の内壁部材28によって覆われている。内壁部材28は、例えば石英から形成されている。
【0031】
支持台14の内部には、流路14fが形成されている。流路14fは、例えば、鉛直方向に延びる中心軸線に対して渦巻状に延在している。流路14fには、チャンバ10の外部に設けられた供給装置(例えばチラーユニット)から配管32aを介して熱交換媒体cw(例えば冷却水といった冷媒)が供給される。流路14fに供給された熱交換媒体は、配管32bを介して供給装置に回収される。熱交換媒体の温度が供給装置によって調整されることにより、基板Wの温度が調整される。さらに、プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン34を提供している。ガス供給ライン34は、伝熱ガス(例えば、Heガス)を、静電チャック18の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給するために設けられている。
【0032】
プラズマ処理装置1は、一つ以上の高周波電源を備え得る。一実施形態において、プラズマ処理装置1は、第1の高周波電源(即ち、高周波電源36)及び第2の高周波電源(即ち、高周波電源38)を備える。高周波電源36は、導体44(例えば、給電棒)及び第1の整合器(即ち、整合器40)を介してサセプタ16(即ち、下部電極)に接続されている。高周波電源38は、導体44及び第2の整合器(即ち、整合器42)を介してサセプタ16(即ち、下部電極)に接続されている。なお、高周波電源36は、下部電極ではなく、後述する上部電極に整合器40を介して接続されていてもよい。プラズマ処理装置1は、高周波電源36と整合器40のセット及び高周波電源38と整合器42のセットのうち一方のセットを備えていなくてもよい。
【0033】
高周波電源36は、チャンバ10内でのプラズマ処理のために第1の高周波電力(即ち、高周波電力RF1)を発生するように構成されている。高周波電力RF1は、主にプラズマの生成のために用いられる。高周波電力RF1の基本周波数fB1は、例えば100MHzである。高周波電源38は、チャンバ10内でのプラズマ処理のために第2の高周波電力(即ち、高周波電力RF2)を発生するように構成されている。高周波電力RF2の周波数は、高周波電力RF1の周波数よりも低い。高周波電力RF2の基本周波数fB2は、例えば13.56MHzである。
【0034】
整合器40は、高周波電源36の負荷側(例えば下部電極側)のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するための回路を有している。整合器42は、高周波電源38の負荷側(下部電極側)のインピーダンスである負荷インピーダンスを設定するための回路を有している。整合器40及び整合器42の各々は、電子制御式の整合器であり得る。整合器40及び整合器42の各々の詳細については後述する。
【0035】
整合器40及び導体44は、給電ライン43の一部を構成している。高周波電力RF1は、給電ライン43を介してサセプタ16に供給される。整合器42及び導体44は、給電ライン45の一部を構成している。高周波電力RF2は、給電ライン45を介してサセプタ16に供給される。
【0036】
プラズマ処理装置1は、上部電極46を更に備えている。上部電極46は、チャンバ10の天部を構成している。上部電極46は、チャンバ本体12の上端の開口を閉じるように設けられている。チャンバ10の内部空間は、処理領域PSを含む。処理領域PSは、上部電極46とサセプタ16の間の空間である。プラズマ処理装置1は、上部電極46とサセプタ16の間で発生する高周波電界により、処理領域PSにおいてプラズマを生成する。上部電極46は、接地されている。なお、高周波電源36が、下部電極ではなく上部電極46に整合器40を介して接続されている場合には、上部電極46は接地されず、上部電極46とチャンバ本体12とは電気的に分離される。
【0037】
上部電極46は、天板48及び支持体50を有している。天板48には、複数のガス噴出孔48aが形成されている。天板48は、例えば、Si、SiCといったシリコン系の材料から形成されている。支持体50は、天板48を着脱可能に支持する部材であり、アルミニウムといった導体から形成されており、その表面には耐プラズマ性を有する膜が形成されている。
【0038】
支持体50の内部には、ガスバッファ室50bが形成されている。また、支持体50には、複数のガス孔50aが形成されている。複数のガス孔50aはそれぞれ、ガスバッファ室50bから延びて、複数のガス噴出孔48aに連通している。ガスバッファ室50bには、ガス供給管54が接続されている。ガス供給管54には、流量制御器58(例えば、マスフローコントローラ)及び開閉バルブ60を介して、ガスソース56が接続されている。ガスソース56からのガスは、流量制御器58、開閉バルブ60、ガス供給管54、ガスバッファ室50b、及び複数のガス噴出孔48aを介して、チャンバ10の内部空間に供給される。ガスソース56からチャンバ10の内部空間に供給されるガスの流量は、流量制御器58によって調整される。
【0039】
サセプタ16とチャンバ本体12の側壁との間の空間の下方では、チャンバ本体12の底部に排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管64が接続されている。排気管64は、排気装置66に接続されている。排気装置66は、自動圧力制御弁といった圧力調整器及びターボ分子ポンプといった真空ポンプを有している。排気装置66は、チャンバ10の内部空間を指定された圧力に減圧する。
【0040】
プラズマ処理装置1は、主制御部70を更に備えている。主制御部70は、一つ以上のマイクロコンピュータを含む。主制御部70は、プロセッサ、メモリといった記憶装置、キーボードといった入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を有し得る。主制御部70のプロセッサは、記憶装置に格納されているソフトウェア(プログラム)を実行し、レシピデータに従って、プラズマ処理装置1の各部の個々の動作及びプラズマ処理装置1の装置全体の動作(シーケンス)を制御する。主制御部70は、例えば、高周波電源36、高周波電源38、整合器40、整合器42、流量制御器58、開閉バルブ60、排気装置66等を制御する。
【0041】
プラズマ処理装置1においてプラズマ処理が行われる場合には、まず、ゲートバルブ12gが開かれる。次いで、基板Wが、開口12pを経由してチャンバ10内に搬入され、静電チャック18の上に載置される。そして、ゲートバルブ12gが閉じられる。次いで、処理ガスがガスソース56からチャンバ10の内部空間に供給され、排気装置66が作動されて、チャンバ10の内部空間における圧力が指定された圧力に設定される。さらに、高周波電力RF1及び/又は高周波電力RF2がサセプタ16に供給される。また、直流電源24からの直流電圧が静電チャック18の電極20に印加されて、基板Wが静電チャック18によって保持される。そして、処理ガスが、サセプタ16と上部電極46との間で形成された高周波電界により励起される。その結果、処理領域PS内でプラズマが生成される。
【0042】
以下、
図1と共に
図2及び
図3を参照する。
図2は、第1の高周波電力及び第2の高周波電のタイミングチャートの一例を示す図である。
図3は、第1の高周波電力及び第2の高周波電力のタイミングチャートの別の一例を示す図である。プラズマ処理装置1は、期間P1において、チャンバ10内でのプラズマ処理のために、高周波電力RF1の変調波MW1又は高周波電力RF2の変調波MW2の少なくとも一方を利用するように構成されている。変調波MW1は、高周波電源36によって生成される。変調波MW2は、高周波電源38によって生成される。
図2及び
図3において点線で示すように、期間P1において、高周波電力RF1の連続波CW1又は高周波電力RF2の連続波CW2が利用されてもよい。連続波CW1は、高周波電源36によって生成される。連続波CW2は、高周波電源38によって生成される。期間P1において変調波MW1及び変調波MW2が利用されるモードは、第1のモードである。期間P1において変調波MW1及び連続波CW2が利用されるモードは、第2のモードである。期間P1において連続波CW1及び変調波MW2が利用されるモードは、第3のモードである。
【0043】
期間P1は、交互の第1の副期間SP11と第2の副期間SP12を含む。変調波MW1は、第1の副期間SP11における高周波電力RF1のパワーレベルが第2の副期間SP12における高周波電力RF1のパワーレベルよりも高くなるように、高周波電源36によって生成される。第2の副期間SP12における高周波電力RF1のパワーレベルは、0[W]であってもよい。変調波MW2は、第1の副期間SP11における高周波電力RF2のパワーレベルが第2の副期間SP12における高周波電力RF2のパワーレベルよりも高くなるように、高周波電源38によって生成される。第2の副期間SP12における高周波電力RF2のパワーレベルは、0[W]であってもよい。
【0044】
第1の副期間SP11とこれに続く第2の副期間SP12は一周期CPを構成する。第1の副期間SP11が一周期CPにおいて占める割合、即ちデューティ比は、任意の値であってもよい。例えば、デューティ比は、10%以上、90%以下の範囲内の値に制御され得る。また、一周期CPの逆数、即ち変調周波数は、任意の周波数に制御可能である。但し、変調周波数は、基本周波数fB1及び基本周波数fB2よりも低い。変調周波数は、例えば、0.1kHz以上、100kHz以下の範囲内の周波数であり得る。
【0045】
さらに、プラズマ処理装置1は、期間P2において、連続波CW1及び連続波CW2を利用するように構成されている。即ち、高周波電力RF1及び高周波電力RF2は、期間P2の開始時点と期間P2の終了時点との間で連続的に供給される。期間P2の時間長は、一周期CPの時間長よりも長い。
【0046】
期間P1及び期間P2は、二つの連続する期間である。
図2に示すように、二つの連続する期間のうち、期間P1は先行期間PAであり、期間P2は後続期間PBであってもよい。或いは、
図3に示すように、二つの連続する期間のうち、期間P2は先行期間PAであり、期間P1は後続期間PBであってもよい。期間P1と期間P2は、交互に繰り返されてもよい。即ち、高周波電源36は、先行期間PAにおいて電力波W11を供給する。電力波W11は、変調波MW1及び連続波CW1のうち一方である。高周波電源36は、後続期間PBにおいて電力波W11又は電力波W12を供給する。電力波W12は、変調波MW1及び連続波CW1のうち他方である。高周波電源38は、先行期間PAにおいて電力波W21を供給する。電力波W21は、変調波MW2及び連続波CW2のうち一方である。高周波電源38は、後続期間PBにおいて電力波W21又は電力波W22を供給する。電力波W22は、変調波MW2及び連続波CW2のうち他方である。後続期間PBでは、電力波W12又は電力波W22の少なくとも一方が供給される。
【0047】
以下、
図4~
図7を参照して、高周波電源36、整合器40、高周波電源38、及び整合器42について詳細に説明する。
図4は、
図1に示すプラズマ処理装置の第1の高周波電源及び第1の整合器の構成の一例を示す図である。
図5は、
図1に示すプラズマ処理装置の第1の整合器のセンサの構成の一例を示す図である。
図6は、
図1に示すプラズマ処理装置の第2の高周波電源及び第2の整合器の構成の一例を示す図である。
図7は、
図1に示すプラズマ処理装置の第2の整合器のセンサの構成の一例を示す図である。
【0048】
図4に示すように、一実施形態において、高周波電源36は、発振器36a、パワーアンプ36b、パワーセンサ36c、及び電源制御部36eを有している。電源制御部36eは、CPUといったプロセッサから構成されている。電源制御部36eは、発振器36a、パワーアンプ36b、及びパワーセンサ36cのそれぞれに制御信号を与えて、発振器36a、パワーアンプ36b、及びパワーセンサ36cを制御する。電源制御部36eは、主制御部70から与えられる信号及びパワーセンサ36cから与えられる信号を利用して、発振器36a、パワーアンプ36b、及びパワーセンサ36cのそれぞれに与える制御信号を生成する。
【0049】
主制御部70から電源制御部36eに与えられる信号は、第1の周波数設定信号及びモード設定信号を含む。第1の周波数設定信号は、高周波電力RF1の設定周波数を指定する信号である。モード設定信号は、第1~第3のモードのうち選択されたモードを指定する信号である。第1のモード又は第2のモードが指定される場合には、主制御部70から電源制御部36eに与えられる信号は、第1の変調設定信号を更に含む。第1の変調設定信号は、変調波MW1の変調周波数及びデューティ比を指定する信号である。また、第1の変調設定信号は、第1の副期間SP11における変調波MW1のパワーレベル及び第2の副期間SP12における変調波MW1のパワーレベルを指定する信号でもある。第3のモードが指定されている場合には、主制御部70から電源制御部36eに与えられる信号は、連続波CW1のパワーを指定する第1のパワーレベル設定信号を更に含む。
【0050】
電源制御部36eは、第1の周波数設定信号によって指定された設定周波数(例えば基本周波数fB1)を有する高周波信号を出力するように発振器36aを制御する。発振器36aの出力は、パワーアンプ36bの入力に接続されている。パワーアンプ36bは、発振器36aから出力された高周波信号を増幅することにより高周波電力RF1を生成する。パワーアンプ36bは、電源制御部36eによって制御される。
【0051】
第1のモード又は第2のモードが指定されている場合には、電源制御部36eは、期間P1において、第1の変調設定信号に応じて高周波信号から変調波MW1を生成するようにパワーアンプ36bを制御する。第1のモード又は第2のモードが指定されている場合には、電源制御部36eは、期間P2において、第1のパワーレベル設定信号に応じて、高周波信号から連続波CW1を生成するようにパワーアンプ36bを制御する。また、第3のモードが指定されている場合には、電源制御部36eは、期間P1及び期間P2において、第1のパワーレベル設定信号に応じて、高周波信号から連続波CW1を生成するようにパワーアンプ36bを制御する。
【0052】
パワーアンプ36bの後段には、パワーセンサ36cが設けられている。パワーセンサ36cは、方向性結合器、進行波検出器、及び反射波検出器を有している。方向性結合器は、高周波電力RF1の進行波の一部を進行波検出器に与え、反射波を反射波検出器に与える。パワーセンサ36cには、高周波電力RF1の設定周波数を特定する第1の周波数特定信号が電源制御部36eから与えられる。進行波検出器は、進行波の全周波数成分のうち第1の周波数特定信号から特定される設定周波数と同一の周波数を有する成分のパワーレベルの測定値、即ち、進行波のパワーレベルの測定値Pf11を生成する。測定値Pf11は、電源制御部36eに与えられる。
【0053】
第1の周波数特定信号は、電源制御部36eから反射波検出器にも与えられる。反射波検出器は、反射波の全周波数成分のうち第1の周波数特定信号から特定される設定周波数と同一の周波数を有する成分のパワーレベルの測定値、即ち反射波のパワーレベルの測定値Pr11を生成する。測定値Pr11は、電源制御部36eに与えられる。また、反射波検出器は、反射波の全周波数成分のトータルのパワーレベルの測定値、即ち反射波のパワーレベルの測定値Pr12を生成する。測定値Pr12は、パワーアンプ36bの保護用に、電源制御部36eに与えられる。
【0054】
一実施形態では、高周波電源36は、期間P1においてロードパワー制御を実行してもよい。即ち、高周波電源36は、期間P1における高周波電力RF1のロードパワーレベルを指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように、高周波電力RF1のパワーレベルを調整してもよい。電源制御部36eは、高周波電源36におけるロードパワー制御において、パワーアンプ36bを制御し得る。
【0055】
第1のモード又は第2のモードが指定されている場合のロードパワー制御において、電源制御部36eは、第1の副期間SP11における変調波MW1のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ36bを制御し得る。第1の副期間SP11における変調波MW1のパワーレベルは、モニタ期間MP1におけるロードパワーレベルPL11を指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように調整される。
【0056】
モニタ期間MP1は、第1の副期間SP11内の期間である。モニタ期間MP1は、第1の副期間SP11の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間であり得る。モニタ期間MP1は、主制御部70によって指定される。ロードパワーレベルPL11は、モニタ期間MP1における高周波電力RF1の進行波のパワーレベルとモニタ期間MP1における高周波電力RF1の反射波のパワーレベルの差である。ロードパワーレベルPL11は、モニタ期間MP1における測定値Pf11と測定値Pr11の差として求められる。ロードパワーレベルPL11は、モニタ期間MP1における測定値Pf11の平均値と測定値Pr11の平均値の差として求められてもよい。或いは、ロードパワーレベルPL11は、複数のモニタ期間MP1における測定値Pf11の移動平均値と測定値Pr11の移動平均値の差として求められてもよい。
【0057】
第2の副期間SP12における変調波MW1のパワーレベルが0[W]でない場合には、高周波電源36は、第2の副期間SP12における変調波MW1のロードパワー制御を実行してもよい。このロードパワー制御において、電源制御部36eは、第2の副期間SP12における変調波MW1のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ36bを制御し得る。第2の副期間SP12における変調波MW1のパワーレベルは、モニタ期間MP2におけるロードパワーレベルPL12を指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように調整される。
【0058】
モニタ期間MP2は、第2の副期間SP12と一致する期間であってもよい。或いは、モニタ期間MP2は、第2の副期間SP12内の期間であり、第2の副期間SP12の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間であってもよい。モニタ期間MP2は、主制御部70によって指定される。ロードパワーレベルPL12は、モニタ期間MP2における高周波電力RF1の進行波のパワーレベルとモニタ期間MP2における高周波電力RF1の反射波のパワーレベルの差である。ロードパワーレベルPL12は、モニタ期間MP2における測定値Pf11と測定値Pr11の差として求められる。ロードパワーレベルPL12は、モニタ期間MP2における測定値Pf11の平均値と測定値Pr11の平均値の差として求められてもよい。或いは、ロードパワーレベルPL12は、複数のモニタ期間MP2における測定値Pf11の移動平均値と測定値Pr11の移動平均値の差として求められてもよい。
【0059】
第3のモードが指定されている場合にも、高周波電源36はロードパワー制御を実行してもよい。第3のモードが指定されている場合のロードパワー制御において、電源制御部36eは、期間P1における連続波CW1のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ36bを制御し得る。期間P1における連続波CW1のパワーレベルは、モニタ期間MP1におけるロードパワーレベルPL11とモニタ期間MP2におけるロードパワーレベルPL12の平均値を、指定された目標パワーレベルに一致させるか近づけるように調整される。
【0060】
整合器40は、高周波電源36の負荷側のインピーダンス、即ち負荷インピーダンスを設定するように構成されている。第1及び第2のモードの各々では、整合器40は、期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定してもよい。期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスは、モニタ期間MP1における高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値によって特定されてもよい。
【0061】
整合器40は、第3のモードでは、期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスに整合させてもよい。或いは、整合器40は、第1及び第2のモードと同様に、第3のモードにおいても、期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定してもよい。
【0062】
整合器40は、第1のモード及び第2のモードの各々では、期間P2において高周波電源36の負荷インピーダンスを後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更する。即ち、整合器40は、高周波電源36が生成する電力が電力波W11から電力波W12に切り替えられる前又は後の期間P2において、高周波電源36の負荷インピーダンスを後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更するように構成されている。
【0063】
整合器40は、第1及び第2のモードの各々では、
図8及び
図9に示すように、期間P2において、反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|を段階的に後続期間PBのための設定目標値まで変化させるように、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更する。
図8に示すように、第1及び第2のモードの各々において後続期間PBが期間P2である場合には、後続期間PBのための反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の設定目標値は、ゼロであり得る。
図9に示すように、第1及び第2のモードの各々において後続期間PBが期間P1である場合には、後続期間PBのための反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の設定目標値は、ゼロよりも大きく、例えば0.3以上、0.5以下である。
【0064】
期間P2は、連続する複数の副期間SPを含む。複数の副期間SPは、副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを含む。整合器40は、期間P2において副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|を段階的に後続期間PBのための設定目標値まで変化させるよう、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更し得る。
図8に示すように後続期間PBが期間P2である場合に、整合器40は、後続期間PB(期間P2)の開始後に期間P2内の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更する。
図9に示すように後続期間PBが期間P1である場合に、整合器40は、後続期間PB(期間P1)の開始前の期間P2内の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更する。期間P2は、副期間SP
(N+1)を更に含む。副期間SP
(N+1)は、副期間SP
Nに連続する期間である。整合器40は、副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|を後続期間PBのための設定目標値に設定するように、高周波電源36の負荷インピーダンスを設定する。以下、副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
N,SP
(N+1)の各々を副期間SP
iということがある。「i」は、1以上、N+1以下の整数であるインデックスである。
【0065】
整合器40は、第3のモードでは、期間P2における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスに整合させてもよい。整合器40は、第1及び第2のモードと同様に、第3のモードでも、期間P2において高周波電源36の負荷インピーダンスを、後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更してもよい。
【0066】
一実施形態において、整合器40は、
図4に示すように、整合回路40a、センサ40b、コントローラ40c、アクチュエータ40d、及びアクチュエータ40eを有している。整合回路40aは、可変リアクタンス素子40g及び可変リアクタンス素子40hを含み得る。可変リアクタンス素子40g及び可変リアクタンス素子40hの各々は、例えば可変コンデンサである。なお、整合回路40aは、インダクタ等を更に含んでいてもよい。
【0067】
コントローラ40cは、主制御部70の制御の下で動作する。コントローラ40cは、センサ40bから与えられる高周波電源36の負荷側のインピーダンス(即ち、負荷インピーダンス)の測定値に応じて、高周波電源36の負荷インピーダンスを調整する。コントローラ40cは、アクチュエータ40d及びアクチュエータ40eを制御して、可変リアクタンス素子40g及び可変リアクタンス素子40hそれぞれのリアクタンスを調整することにより、高周波電源36の負荷インピーダンスを調整する。アクチュエータ40d及びアクチュエータ40eは、例えば、モータである。
【0068】
センサ40bは、高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値を取得するように構成されている。一実施形態では、高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値は、移動平均値として取得される。
図5に示すように、センサ40bは、電流検出器102A、電圧検出器104A、フィルタ106A及び108A、平均値演算器110A及び112A、移動平均値演算器114A及び116A、並びにインピーダンス演算器118Aを有していてもよい。
【0069】
電圧検出器104Aは、給電ライン43上で伝送される高周波電力RF1の電圧波形を検出し、当該電圧波形を表す電圧波形アナログ信号を出力する。この電圧波形アナログ信号は、フィルタ106Aに入力される。フィルタ106Aは、入力された電圧波形アナログ信号をデジタル化することにより、電圧波形デジタル信号を生成する。フィルタ106Aは、電源制御部36eから上記の第1の周波数特定信号を受け、電圧波形デジタル信号から、第1の周波数特定信号によって特定される周波数に対応した周波数成分のみを抽出することにより、濾過電圧波形信号を生成する。フィルタ106Aは、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0070】
フィルタ106Aによって生成された濾過電圧波形信号は、平均値演算器110Aに出力される。平均値演算器110Aは、モニタ期間設定信号を主制御部70から受ける。平均値演算器110Aは、モニタ期間設定信号から特定される期間内の電圧の平均値を濾過電圧波形信号から求める。平均値演算器110Aは、電圧の平均値として、各モニタ期間MP1における電圧の平均値VA11を求める。第3のモードが指定されている場合に、平均値演算器110Aは、電圧の平均値として、各モニタ期間MP2における電圧の平均値VA12を更に求めてもよい。なお、平均値演算器110Aは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0071】
移動平均値演算器114Aは、既に得られている複数の平均値VA11のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP1における高周波電力RF1の電圧から得られた平均値VA11の移動平均値VMA11を求める。移動平均値VMA11は、インピーダンス演算器118Aに出力される。
【0072】
第3のモードにおいて、移動平均値演算器114Aは、既に得られている複数の平均値VA12のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP2における高周波電力RF1の電圧から得られた平均値VA12の移動平均値VMA12を更に求めてもよい。移動平均値VMA12は、インピーダンス演算器118Aに出力される。
【0073】
電流検出器102Aは、給電ライン43上で伝送される高周波電力RF1の電流波形を検出し、当該電流波形を表す電流波形アナログ信号を出力する。この電流波形アナログ信号は、フィルタ108Aに入力される。フィルタ108Aは、入力された電流波形アナログ信号をデジタル化することにより、電流波形デジタル信号を生成する。フィルタ108Aは、電源制御部36eから上記の第1の周波数特定信号を受け、電流波形デジタル信号から、第1の周波数特定信号によって特定される周波数に対応した周波数成分のみを抽出することにより、濾過電流波形信号を生成する。フィルタ108Aは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0074】
フィルタ108Aによって生成された濾過電流波形信号は、平均値演算器112Aに出力される。平均値演算器112Aは、モニタ期間設定信号を主制御部70から受ける。平均値演算器112Aは、モニタ期間設定信号から特定される期間内の電流の平均値を濾過電流波形信号から求める。平均値演算器112Aは、電流の平均値として、各期間P1内のモニタ期間MP1における電流の平均値IA11を求める。第3のモードが指定されている場合に、平均値演算器112Aは、電流の平均値として、各モニタ期間MP2における電流の平均値IA12を更に求めてもよい。なお、平均値演算器112Aは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0075】
移動平均値演算器116Aは、既に得られている複数の平均値IA11のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP1における高周波電力RF1の電流から得られた平均値IA11の移動平均値IMA11を求める。移動平均値IMA11は、インピーダンス演算器118Aに出力される。
【0076】
第3のモードにおいて、移動平均値演算器116Aは、既に得られている複数の平均値IA12のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP2における高周波電力RF1の電流から得られた平均値IA12の移動平均値IMA12を更に求めてもよい。移動平均値IMA12は、インピーダンス演算器118Aに出力される。
【0077】
インピーダンス演算器118Aは、移動平均値IMA11及び移動平均値VMA11から、高周波電源36の負荷インピーダンスの移動平均値ZMA11を求める。移動平均値ZMA11は、モニタ期間MP1における高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値である。第3のモードでは、インピーダンス演算器118Aは、移動平均値IMA12及び移動平均値VMA12から、高周波電源36の負荷インピーダンスの移動平均値ZMA12を更に求めてもよい。移動平均値ZMA12は、モニタ期間MP2における高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値である。
【0078】
コントローラ40cは、高周波電源36の負荷インピーダンスを設定するために、整合回路40aを制御する。一実施形態では、コントローラ40cは、アクチュエータ40d及びアクチュエータ40eを通じて、可変リアクタンス素子40g及び可変リアクタンス素子40hそれぞれのリアクタンスを調整することにより、高周波電源36の負荷インピーダンスを設定する。
【0079】
コントローラ40cは、第1及び第2のモードの各々においては、移動平均値ZMA11によって特定される期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整する。
【0080】
一実施形態では、コントローラ40cは、期間P1における高周波電力RF1の反射係数Γ1の絶対値|Γ1|の設定目標値から目標インピーダンスを特定し得る。期間P1における絶対値|Γ1|の設定目標値は、0よりも大きい値であり得る。例えば、期間P1における絶対値|Γ1|の設定目標値は、0.3以上、0.5以下である。反射係数Γ1は、以下の(1)式によって定義される。
Γ1=(Z1-Z01)/(Z1+Z01) …(1)
(1)式において、Z01は給電ライン43の特性インピーダンスであり、一般的には、50Ωである。(1)式において、Z1は、目標インピーダンスである。コントローラ40cは、(1)式に基づき、期間P1における絶対値|Γ1|の設定目標値に対応する目標インピーダンスZ1を決定する。コントローラ40cは、移動平均値ZMA11によって特定される期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、目標インピーダンスZ1に近づけるか一致させるよう、高周波電源36の負荷インピーダンスを設定する。
【0081】
第3のモードが指定されている場合に、コントローラ40cは、期間P1において、高周波電源36の負荷インピーダンスを高周波電源36の出力インピーダンス(整合ポイント)に整合させてもよい。高周波電源36の負荷インピーダンスは、移動平均値ZMA11と移動平均値ZMA12の平均値によって特定され得る。或いは、コントローラ40cは、第1及び第2のモードと同様に、第3のモードにおいても、期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整してもよい。
【0082】
上述したように、整合器40は、第1及び第2のモードの各々では、反射係数Γ1の絶対値|Γ1|を後続期間PBのための設定目標値まで段階的に変化させるように、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更し得る。上述したように、整合器40は、期間P2内の複数の副期間SPを経て、高周波電源36の負荷インピーダンスを段階的に変更する。複数の副期間SP(即ち、SP1,SP2,・・・・,SPN)の各々の時間長はTLである。
【0083】
複数の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nにおける高周波電力RF1の反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の目標値は、互いに異なる。複数の副期間SP2に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の目標値と他方の期間における反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の目標値の差は、ΔΓ
1である。なお、
図8及び
図9においては、ΔΓ
1は、ΔΓとして示されている。
図8に示すように、後続期間PBが期間P2である場合に副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の目標値、即ち設定目標値はゼロである。
図9に示すように、後続期間PBが期間P1である場合に副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
1の絶対値|Γ
1|の目標値、即ち設定目標値は、ゼロよりも大きく、例えば0.3以上、0.5以下である。一実施形態において、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ
1は0.2以下に設定されてもよい。或いは、TLが0.2秒以上に設定され、且つ、ΔΓ
1は0.1以下に設定されてもよい。或いは、TL0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ
1が0.05以下に設定されてもよい。
【0084】
コントローラ40cは、高周波電源36の負荷インピーダンスを設定する。具体的に、コントローラ40cは、副期間SPiにおいて、高周波電源36の負荷インピーダンスを、副期間SPiにおける高周波電力RF1の反射係数Γ1の絶対値|Γ1|の目標値から(1)式に基づき特定される目標インピーダンスZ1に調整する。なお、コントローラ40cは、副期間SPiにおける高周波電源36の負荷インピーダンスを、センサ40bにおいて得られる高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値から特定し得る。センサ40bは、上述した濾過電圧波形信号及び濾過電流波形信号から、高周波電源36の負荷インピーダンスの測定値を求め得る。
【0085】
第3のモードが指定されている場合に、コントローラ40cは、期間P2において、高周波電源36の負荷インピーダンスを高周波電源36の出力インピーダンス(整合ポイント)に整合させてもよい。コントローラ40cは、第1及び第2のモードと同様に、第3のモードでも、期間P2において、高周波電源36の負荷インピーダンスを、後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更してもよい。
【0086】
図6に示すように、一実施形態において、高周波電源38は、発振器38a、パワーアンプ38b、パワーセンサ38c、及び電源制御部38eを有している。電源制御部38eは、CPUといったプロセッサから構成されている。電源制御部38eは、発振器38a、パワーアンプ38b、及びパワーセンサ38cのそれぞれに制御信号を与えて、発振器38a、パワーアンプ38b、及びパワーセンサ38cを制御する。電源制御部38eは、主制御部70から与えられる信号及びパワーセンサ38cから与えられる信号を利用して、発振器38a、パワーアンプ38b、及びパワーセンサ38cのそれぞれに与える制御信号を生成する。
【0087】
主制御部70から電源制御部38eに与えられる信号は、第2の周波数設定信号及び上述のモード設定信号を含む。第2の周波数設定信号は、高周波電力RF2の設定周波数を指定する信号である。第1のモード又は第3のモードが指定される場合には、主制御部70から電源制御部38eに与えられる信号は、第2の変調設定信号を更に含む。第2の変調設定信号は、変調波MW2の変調周波数及びデューティ比を指定する信号である。また、第2の変調設定信号は、第1の副期間SP11における変調波MW2のパワーレベル及び第2の副期間SP12における変調波MW2のパワーレベルを指定する信号でもある。なお、第1のモードにおいて、変調波MW1の変調周波数と変調波MW2の変調周波数は互いに同一であり得る。第2のモードが指定されている場合には、主制御部70から電源制御部38eに与えられる信号は、連続波CW2のパワーを指定する第2のパワーレベル設定信号を更に含む。
【0088】
電源制御部38eは、第2の周波数設定信号によって指定された設定周波数(例えば基本周波数fB2)を有する高周波信号を出力するように発振器38aを制御する。発振器38aの出力は、パワーアンプ38bの入力に接続されている。パワーアンプ38bは、発振器38aから出力された高周波信号を増幅することにより高周波電力RF2を生成する。パワーアンプ38bは、電源制御部38eによって制御される。
【0089】
第1のモード又は第3のモードが指定されている場合には、電源制御部38eは、期間P1において、第2の変調設定信号に応じて高周波信号から変調波MW2を生成するようにパワーアンプ38bを制御する。第1のモード又は第3のモードが指定されている場合には、電源制御部38eは、期間P2において、第2のパワーレベル設定信号に応じて、高周波信号から連続波CW2を生成するようにパワーアンプ38bを制御する。また、第2のモードが指定されている場合には、電源制御部38eは、期間P1及び期間P2において、第2のパワーレベル設定信号に応じて、高周波信号から連続波CW2を生成するようにパワーアンプ38bを制御する。
【0090】
パワーアンプ38bの後段には、パワーセンサ38cが設けられている。パワーセンサ38cは、方向性結合器、進行波検出器、及び反射波検出器を有している。方向性結合器は、高周波電力RF2の進行波の一部を進行波検出器に与え、反射波を反射波検出器に与える。パワーセンサ38cには、高周波電力RF2の設定周波数を特定する第2の周波数特定信号が電源制御部38eから与えられる。進行波検出器は、進行波の全周波数成分のうち第2の周波数特定信号から特定される設定周波数と同一の周波数を有する成分のパワーレベルの測定値、即ち、進行波のパワーレベルの測定値Pf21を生成する。測定値Pf21は、電源制御部38eに与えられる。
【0091】
第2の周波数特定信号は、電源制御部38eから反射波検出器にも与えられる。反射波検出器は、反射波の全周波数成分のうち第2の周波数特定信号から特定される設定周波数と同一の周波数を有する成分のパワーレベルの測定値、即ち反射波のパワーレベルの測定値Pr21を生成する。測定値Pr21は、電源制御部38eに与えられる。また、反射波検出器は、反射波の全周波数成分のトータルのパワーレベルの測定値、即ち反射波のパワーレベルの測定値Pr22を生成する。測定値Pr22は、パワーアンプ38bの保護用に、電源制御部38eに与えられる。
【0092】
一実施形態では、高周波電源38は、期間P1においてロードパワー制御を実行してもよい。即ち、高周波電源38は、期間P1における高周波電力RF2のロードパワーレベルを指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように、高周波電力RF2のパワーレベルを調整してもよい。電源制御部38eは、高周波電源38におけるロードパワー制御において、パワーアンプ38bを制御し得る。
【0093】
第1のモード又は第3のモードが指定されている場合のロードパワー制御において、電源制御部38eは、第1の副期間SP11における変調波MW2のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ38bを制御し得る。第1の副期間SP11における変調波MW2のパワーレベルは、モニタ期間MP1におけるロードパワーレベルPL21を指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように調整される。
【0094】
上述したように、モニタ期間MP1は、第1の副期間SP11内の期間である。モニタ期間MP1は、第1の副期間SP11の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間であり得る。モニタ期間MP1は、主制御部70によって指定される。ロードパワーレベルPL21は、モニタ期間MP1における高周波電力RF2の進行波のパワーレベルとモニタ期間MP1における高周波電力RF2の反射波のパワーレベルの差である。ロードパワーレベルPL21は、モニタ期間MP1における測定値Pf21と測定値Pr21の差として求められる。ロードパワーレベルPL21は、モニタ期間MP1における測定値Pf21の平均値と測定値Pr21の平均値の差として求められてもよい。或いは、ロードパワーレベルPL21は、複数のモニタ期間MP1における測定値Pf21の移動平均値と測定値Pr21の移動平均値の差として求められてもよい。
【0095】
第2の副期間SP12における変調波MW2のパワーレベルが0[W]でない場合には、高周波電源38は、第2の副期間SP12における変調波MW2のロードパワー制御を実行してもよい。このロードパワー制御において、電源制御部38eは、第2の副期間SP12における変調波MW2のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ38bを制御し得る。第2の副期間SP12における変調波MW2のパワーレベルは、モニタ期間MP2におけるロードパワーレベルPL22を指定された目標パワーレベルに近づけるか一致させるように調整される。
【0096】
上述したように、モニタ期間MP2は、第2の副期間SP12と一致する期間であってもよい。或いは、モニタ期間MP2は、第2の副期間SP12内の期間であり、第2の副期間SP12の開始時点から所定時間長の経過後に開始する期間であってもよい。モニタ期間MP2は、主制御部70によって指定される。ロードパワーレベルPL22は、モニタ期間MP2における高周波電力RF2の進行波のパワーレベルとモニタ期間MP2における高周波電力RF2の反射波のパワーレベルの差である。ロードパワーレベルPL22は、モニタ期間MP2における測定値Pf21と測定値Pr21の差として求められる。ロードパワーレベルPL22は、モニタ期間MP2における測定値Pf21の平均値と測定値Pr21の平均値の差として求められてもよい。或いは、ロードパワーレベルPL22は、複数のモニタ期間MP2における測定値Pf21の移動平均値と測定値Pr21の移動平均値の差として求められてもよい。
【0097】
第2のモードが指定されている場合にも、高周波電源38はロードパワー制御を実行してもよい。第2のモードが指定されている場合のロードパワー制御において、電源制御部38eは、期間P1における連続波CW2のパワーレベルを調整するようにパワーアンプ38bを制御し得る。期間P1における連続波CW2のパワーレベルは、モニタ期間MP1におけるロードパワーレベルPL21とモニタ期間MP2におけるロードパワーレベルPL22の平均値を、指定された目標パワーレベルに一致させるか近づけるように調整される。
【0098】
整合器42は、高周波電源38の負荷側のインピーダンス、即ち負荷インピーダンスを設定するように構成されている。第1及び第3のモードの各々では、整合器42は、期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定してもよい。期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスは、モニタ期間MP1における高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値によって特定されてもよい。
【0099】
整合器42は、第2のモードでは、期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスに整合させてもよい。或いは、整合器42は、第1及び第3のモードと同様に、第2のモードにおいても、期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定してもよい。
【0100】
整合器42は、第1のモード及び第3のモードの各々では、期間P2において高周波電源38の負荷インピーダンスを後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更する。即ち、整合器42は、高周波電源38が生成する電力が電力波W21から電力波W22に切り替えられる前又は後の期間P2において、高周波電源38の負荷インピーダンスを後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更するように構成されている。
【0101】
整合器42は、第1及び第3のモードの各々では、
図8及び
図9に示すように、期間P2において、反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|を段階的に後続期間PBのための設定目標値まで変化させるように、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更する。
図8に示すように、第1及び第3のモードの各々において後続期間PBが期間P2である場合には、後続期間PBのための反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の設定目標値は、ゼロであり得る。
図9に示すように、第1及び第3のモードの各々において後続期間PBが期間P1である場合には、後続期間PBのための反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の設定目標値は、ゼロよりも大きく、例えば0.3以上、0.5以下である。
【0102】
上述したように、後続期間PBは、連続する複数の副期間SPを含む。上述したように、複数の副期間SPは、副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを含む。整合器42は、期間P2において副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|を段階的に後続期間PBのための設定目標値まで変化させるよう、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更し得る。
図8に示すように後続期間PBが期間P2である場合に、整合器42は、後続期間PB(期間P2)の開始後に期間P2内の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更する。
図9に示すように後続期間PBが期間P1である場合に、整合器42は、後続期間PB(期間P1)の開始前の期間P2内の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nを経て、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更する。整合器42は、副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|を後続期間PBのための設定目標値に設定するように、高周波電源38の負荷インピーダンスを設定する。
【0103】
整合器42は、第2のモードでは、期間P2における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスに整合させてもよい。或いは、整合器42は、第1及び第3のモードと同様に、第2のモードでも、期間P2において高周波電源38の負荷インピーダンスを、後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更してもよい。
【0104】
一実施形態において、整合器42は、
図6に示すように、整合回路42a、センサ42b、コントローラ42c、アクチュエータ42d、及びアクチュエータ42eを有している。整合回路42aは、可変リアクタンス素子42g及び可変リアクタンス素子42hを含み得る。可変リアクタンス素子42g及び可変リアクタンス素子42hの各々は、例えば可変コンデンサである。なお、整合回路42aは、インダクタ等を更に含んでいてもよい。
【0105】
コントローラ42cは、主制御部70の制御の下で動作する。コントローラ42cは、センサ42bから与えられる高周波電源38の負荷側のインピーダンス(即ち、負荷インピーダンス)の測定値に応じて、高周波電源38の負荷インピーダンスを調整する。コントローラ42cは、アクチュエータ42d及びアクチュエータ42eを制御して、可変リアクタンス素子42g及び可変リアクタンス素子42hそれぞれのリアクタンスを調整することにより、高周波電源38の負荷インピーダンスを調整する。アクチュエータ42d及びアクチュエータ42eは、例えば、モータである。
【0106】
センサ42bは、高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値を取得するように構成されている。一実施形態では、高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値は、移動平均値として取得される。
図7に示すように、センサ42bは、電流検出器102B、電圧検出器104B、フィルタ106B及び108B、平均値演算器110B及び112B、移動平均値演算器114B及び116B、並びにインピーダンス演算器118Bを有していてもよい。
【0107】
電圧検出器104Bは、給電ライン45上で伝送される高周波電力RF2の電圧波形を検出し、当該電圧波形を表す電圧波形アナログ信号を出力する。この電圧波形アナログ信号は、フィルタ106Bに入力される。フィルタ106Bは、入力された電圧波形アナログ信号をデジタル化することにより、電圧波形デジタル信号を生成する。フィルタ106Bは、電源制御部38eから上記の第2の周波数特定信号を受け、電圧波形デジタル信号から、第2の周波数特定信号によって特定される周波数に対応した周波数成分のみを抽出することにより、濾過電圧波形信号を生成する。フィルタ106Bは、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0108】
フィルタ106Bによって生成された濾過電圧波形信号は、平均値演算器110Bに出力される。平均値演算器110Bは、モニタ期間設定信号を主制御部70から受ける。平均値演算器110Bは、モニタ期間設定信号から特定される期間内の電圧の平均値を濾過電圧波形信号から求める。平均値演算器110Bは、電圧の平均値として、モニタ期間MP1における電圧の平均値VB11を求める。第2のモードが指定されている場合に、平均値演算器110Bは、電圧の平均値として、モニタ期間MP2における電圧の平均値VB12を更に求めてもよい。なお、平均値演算器110Bは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0109】
移動平均値演算器114Bは、既に得られている複数の平均値VB11のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP1における高周波電力RF2の電圧から得られた平均値VB11の移動平均値VMB11を求める。移動平均値VMB11は、インピーダンス演算器118Bに出力される。
【0110】
第2のモードにおいて、移動平均値演算器114Bは、既に得られている複数の平均値VB12のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP2における高周波電力RF2の電圧から得られた平均値VB12の移動平均値VMB12を更に求めてもよい。移動平均値VMB12は、インピーダンス演算器118Bに出力される。
【0111】
電流検出器102Bは、給電ライン45上で伝送される高周波電力RF2の電流波形を検出し、当該電流波形を表す電流波形アナログ信号を出力する。この電流波形アナログ信号は、フィルタ108Bに入力される。フィルタ108Bは、入力された電流波形アナログ信号をデジタル化することにより、電流波形デジタル信号を生成する。フィルタ108Bは、電源制御部38eから上記の第2の周波数特定信号を受け、電流波形デジタル信号から、第2の周波数特定信号によって特定される周波数に対応した周波数成分のみを抽出することにより、濾過電流波形信号を生成する。フィルタ108Bは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0112】
フィルタ108Bによって生成された濾過電流波形信号は、平均値演算器112Bに出力される。平均値演算器112Bは、モニタ期間設定信号を主制御部70から受ける。平均値演算器112Bは、モニタ期間設定信号から特定される期間内の電流の平均値を濾過電流波形信号から求める。平均値演算器112Bは、電流の平均値として、各期間P1内のモニタ期間MP1における電流の平均値IB11を求める。第2のモードが指定されている場合に、平均値演算器112Bは、電流の平均値として、各モニタ期間MP2における電流の平均値IB12を更に求めてもよい。なお、平均値演算器112Bは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)から構成され得る。
【0113】
移動平均値演算器116Bは、既に得られている複数の平均値IB11のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP1における高周波電力RF2の電流から得られた平均値IB11の移動平均値IMB11を求める。移動平均値IMB11は、インピーダンス演算器118Bに出力される。
【0114】
第2のモードにおいて、移動平均値演算器116Bは、既に得られている複数の平均値IB12のうち直近且つ所定数のモニタ期間MP2における高周波電力RF2の電流から得られた平均値IB12の移動平均値IMB12を更に求めてもよい。移動平均値IMB12は、インピーダンス演算器118Bに出力される。
【0115】
インピーダンス演算器118Bは、移動平均値IMB11及び移動平均値VMB11から、高周波電源38の負荷インピーダンスの移動平均値ZMB11を求める。移動平均値ZMB11は、モニタ期間MP1における高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値である。第2のモードでは、インピーダンス演算器118Bは、移動平均値IMB12及び移動平均値VMB12から、高周波電源38の負荷インピーダンスの移動平均値ZMB12を更に求めてもよい。移動平均値ZMB12は、モニタ期間MP2における高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値である。
【0116】
コントローラ42cは、高周波電源38の負荷インピーダンスを設定するために、整合回路42aを制御する。一実施形態では、コントローラ42cは、アクチュエータ42d及びアクチュエータ42eを通じて、可変リアクタンス素子42g及び可変リアクタンス素子42hそれぞれのリアクタンスを調整することにより、高周波電源38の負荷インピーダンスを設定する。
【0117】
コントローラ42cは、第1及び第3のモードの各々においては、移動平均値ZMB11によって特定される期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整する。
【0118】
一実施形態では、コントローラ42cは、期間P1における高周波電力RF2の反射係数Γ2の絶対値|Γ2|の設定目標値から目標インピーダンスを特定し得る。期間P1における絶対値|Γ2|の設定目標値は、0よりも大きい値であり得る。例えば、期間P1における絶対値|Γ2|の設定目標値は、0.3以上、0.5以下である。反射係数Γ2は、以下の(2)式によって定義される。
Γ2=(Z2-Z02)/(Z2+Z02) …(2)
(2)式において、Z02は給電ライン45の特性インピーダンスであり、一般的には、50Ωである。(2)式において、Z2は、目標インピーダンスである。コントローラ42cは、(2)式に基づき、期間P1における絶対値|Γ2|の設定目標値に対応する目標インピーダンスZ2を決定する。コントローラ42cは、移動平均値ZMB11によって特定される期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、目標インピーダンスZ2に近づけるか一致させるよう、高周波電源38の負荷インピーダンスを設定する。
【0119】
第2のモードが指定されている場合に、コントローラ42cは、期間P1において、高周波電源38の負荷インピーダンスを高周波電源38の出力インピーダンス(整合ポイント)に整合させてもよい。高周波電源38の負荷インピーダンスは、移動平均値ZMB11と移動平均値ZMB12の平均値によって特定され得る。或いは、コントローラ42cは、第1及び第3のモードと同様に、第2のモードにおいても、期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整してもよい。
【0120】
上述したように、整合器42は、第1及び第3のモードの各々では、反射係数Γ2の絶対値|Γ2|を後続期間PBのための設定目標値まで段階的に変化させるように、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更し得る。上述したように、整合器42は、期間P2内の複数の副期間SPを経て、高周波電源38の負荷インピーダンスを段階的に変更する。
【0121】
複数の副期間SP
1,SP
2,・・・・,SP
Nにおける高周波電力RF2の反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の目標値は、互いに異なる。複数の副期間SP2に含まれる任意の二つの連続する副期間のうち一方の副期間における反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の目標値と他方の期間における反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の目標値の差は、ΔΓ
2である。なお、
図8及び
図9においては、ΔΓ
2は、ΔΓとして示されている。
図8に示すように、後続期間PBが期間P2である場合に副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の目標値、即ち設定目標値はゼロである。
図9に示すように、後続期間PBが期間P1である場合に副期間SP
(N+1)における反射係数Γ
2の絶対値|Γ
2|の目標値、即ち設定目標値は、ゼロよりも大きく、例えば0.3以上、0.5以下である。一実施形態において、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2は0.2以下に設定されてもよい。或いは、TLが0.2秒以上に設定され、且つ、ΔΓ
2は0.1以下に設定されてもよい。或いは、TL0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ
2が0.05以下に設定されてもよい。
【0122】
コントローラ42cは、高周波電源38の負荷インピーダンスを設定する。具体的に、コントローラ42cは、副期間SPiにおいて、高周波電源38の負荷インピーダンスを、副期間SPiにおける高周波電力RF2の反射係数Γ2の絶対値|Γ2|の目標値から(2)式に基づき特定される目標インピーダンスZ2に調整する。なお、コントローラ42cは、副期間SPiにおける高周波電源38の負荷インピーダンスを、センサ42bにおいて得られる高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値から特定し得る。センサ42bは、上述した濾過電圧波形信号及び濾過電流波形信号から、高周波電源38の負荷インピーダンスの測定値を求め得る。
【0123】
第2のモードが指定されている場合に、コントローラ42cは、期間P2において、高周波電源38の負荷インピーダンスを高周波電源38の出力インピーダンス(整合ポイント)に整合させてもよい。コントローラ42cは、第1及び第3のモードと同様に、第2のモードでも、期間P2において、高周波電源38の負荷インピーダンスを、後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更してもよい。
【0124】
プラズマ処理装置1では、整合器40は、高周波電源36から供給される電力が電力波W11から電力波W12に切り替えられる前又は後の連続波CW1が供給される期間において負荷インピーダンスを後続期間のための目標インピーダンスまで段階的に変更する。したがって、整合器40は、高周波電源36から電力が電力波W11から電力波W12に切り替えられた後に設定すべき負荷インピーダンスの変化に追従することが可能となる。故に、高周波電源36から供給される電力が電力波W11から電力波W12に切り替えられた後の反射を低減させることが可能となる。また。整合器42は、高周波電源38から供給される電力が電力波W21から電力波W22に切り替えられる前又は後の連続波CW2が供給される期間において負荷インピーダンスを後続期間のための目標インピーダンスまで段階的に変更する。したがって、整合器42は、高周波電源38から電力が電力波W21から電力波W22に切り替えられた後に設定すべき負荷インピーダンスの変化に追従することが可能となる。故に、高周波電源38から供給される電力が電力波W21から電力波W22に切り替えられた後の反射を低減させることが可能となる。
【0125】
一実施形態では、整合器40は、期間P1における高周波電源36の負荷インピーダンスを高周波電源36の出力インピータンスとは異なる目標インピーダンスに調整する。この実施形態によれば、期間P1において変調波MW1に対する負荷からの反射が低減され得る。一実施形態では、第1及び第3のモードの各々において、整合器42は、期間P1における高周波電源38の負荷インピーダンスを高周波電源38の出力インピータンスとは異なる目標インピーダンスに調整する。この実施形態によれば、期間P1において変調波MW2に対する負荷からの反射が低減され得る。
【0126】
一実施形態においては、期間P1においては変調波MW1のロードパワー制御が行われ得る。この実施形態によれば、期間P1において目標インピーダンスが高周波電源36の出力インピーダンスと異なることに起因して反射が発生しても、プラズマに目標パワーレベルの変調波MW1が結合され得る。一実施形態においては、期間P1においては変調波MW2のロードパワー制御が行われ得る。この実施形態によれば、期間P1において目標インピーダンスが高周波電源38の出力インピーダンスと異なることに起因して反射が発生しても、プラズマに目標パワーレベルの変調波MW2が結合され得る。
【0127】
以下、
図10を参照する。
図10は、一つの例示的実施形態に係る整合方法の流れ図である。
図10に示す整合方法(以下、「方法MT」という)では、高周波電源36及び高周波電源38のうち少なくとも一方から供給される電力が、連続波及び変調波のうち一方の電力波から他方の電力波に切り替えられる。即ち、方法MTでは、高周波電源36から電力波W11が供給され、高周波電源38から電力波W21が供給される。次いで、高周波電源36からの電力波W12又は高周波電源38から電力波W22のうち少なくとも一方が供給される。電力波W11が二つの連続する期間にわたって高周波電源36から供給されてもよく、或いは、電力波W21が二つの連続する期間にわたって高周波電源36から供給されてもよい。方法MTでは、高周波電源36及び高周波電源38のうち少なくとも一方から供給される電力は、連続波及び変調波のうち一方の電力波から他方の電力波に交互に切り替えられてもよい。
【0128】
方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1において、高周波電源36から電力波W11が供給され、高周波電源38から電力波W21が供給される。工程ST1の実行中には、高周波電源36の負荷インピーダンスが整合器40によって設定される。電力波W11が変調波MW1である場合には、工程ST1の実行中に、高周波電源36の負荷インピーダンスは、上述したように、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整されてもよい。また、電力波W11が変調波MW1である場合には、工程ST1の実行中に、上述したように、高周波電源36によってロードパワー制御が実行されてもよい。
【0129】
電力波W11が連続波CW1である場合には、工程ST1の実行中に、高周波電源36の負荷インピーダンスは、高周波電源36の出力インピーダンスに整合されてもよい。或いは、電力波W11が連続波CW1である場合にも、電力波W11が変調波MW1である場合と同様に、工程ST1の実行中に、高周波電源36の負荷インピーダンスは、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整されてもよい。
【0130】
工程ST1の実行中には、高周波電源38の負荷インピーダンスが整合器42によって設定される。電力波W21が変調波MW2である場合には、工程ST1の実行中に、高周波電源38の負荷インピーダンスは、上述したように、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整されてもよい。また、電力波W21が変調波MW2である場合には、工程ST1の実行中に、上述したように高周波電源38によってロードパワー制御が実行されてもよい。
【0131】
電力波W21が連続波CW2である場合には、工程ST1の実行中に、高周波電源38の負荷インピーダンスは、高周波電源38の出力インピーダンスに整合されてもよい。或いは、電力波W21が連続波CW2である場合にも、電力波W21が変調波MW2である場合と同様に、工程ST1の実行中に、高周波電源38の負荷インピーダンスは、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに調整されてもよい。
【0132】
工程STJaでは、二つの連続する期間のうち先行期間PAにおいて供給されている電力波が連続波であるか否かが判定される。先行期間PAにおいて連続波CW1が供給されていない場合、即ち変調波MW1が供給されている場合には、二つの連続する期間のうち後続期間PBにおいて工程STA2が実行される。先行期間PAにおいて変調波MW1が供給されており、後続期間PBにおいて連続波CW1が供給される場合には、後続期間PBにおいて工程STA3が実行される。一方、先行期間PAにおいて連続波CW1が供給されている場合には、後続期間PBにおいて工程STB3が実行される。先行期間PAにおいて連続波CW1が供給されており、後続期間PBにおいて変調波MW1が供給される場合には、先行期間PAにおいて工程STB2が実行される。
【0133】
また、先行期間PAにおいて連続波CW2が供給されていない場合、即ち変調波MW2が供給されている場合には、後続期間PBにおいて工程STA2が実行される。先行期間PAにおいて変調波MW2が供給されており、後続期間PBにおいて連続波CW2が供給される場合には、後続期間PBにおいて工程STA3が実行される。先行期間PAにおいて連続波CW2が供給されている場合には、後続期間PBにおいて工程STB3が実行される。先行期間PAにおいて連続波CW2が供給されており、後続期間PBにおいて変調波MW2が供給される場合には、先行期間PAにおいて工程STB2が実行される。
【0134】
工程STA2は、先行期間PAにおいて変調波MW1が供給されている場合に実行される。工程STA2では、後続期間PBの電力波が高周波電源36から供給される。工程STA2において高周波電源36から供給される電力波が連続波CW1である場合には、高周波電源36の負荷インピーダンスが、後続期間PBの開始後に工程STA3で、上述したように後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更される。工程STA2において高周波電源36から供給される電力波が変調波MW1である場合には、高周波電源36の負荷インピーダンスは、高周波電源36の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定され得る。
【0135】
また、工程STA2は、先行期間PAにおいて変調波MW2が供給されている場合に実行される。工程STA2では、後続期間PBの電力波が高周波電源38から供給される。工程STA2において高周波電源38から供給される電力波が連続波CW2である場合には、高周波電源38の負荷インピーダンスが、後続期間PBの開始後に工程STA3で、上述したように後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更される。工程STA2において高周波電源38から供給される電力波が変調波MW2である場合には、高周波電源38の負荷インピーダンスは、高周波電源38の出力インピーダンスとは異なる目標インピーダンスに設定され得る。
【0136】
工程STB3は、先行期間PAにおいて連続波CW1が供給されている場合に、後続期間PBにおいて実行される。工程STB3では、後続期間PBの電力波が高周波電源36から供給される。工程STB3において高周波電源36から供給される電力波が変調波MW1である場合には、工程STB2が、後続期間PBの開始前に先行期間PAにおいて実行される。工程STB2では、高周波電源36の負荷インピーダンスが、上述したように後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更される。工程STB3において高周波電源36から供給される電力波が連続波CW1である場合には、高周波電源36の負荷インピーダンスは、高周波電源36の出力インピーダンスに整合され得る。
【0137】
工程STB3は、先行期間PAにおいて連続波CW2が供給されている場合に、後続期間PBにおいて実行される。工程STB3では、後続期間PBの電力波が高周波電源38から供給される。工程STB3において高周波電源38から供給される電力波が変調波MW2である場合には、工程STB2が、後続期間PBの開始前に先行期間PAにおいて実行される。工程STB2では、高周波電源38の負荷インピーダンスが、上述したように後続期間PBのための目標インピーダンスまで段階的に変更される。工程STB3において高周波電源38から供給される電力波が連続波CW2である場合には、高周波電源38の負荷インピーダンスは、高周波電源38の出力インピーダンスに整合され得る。
【0138】
工程STJbでは、終了条件が満たされるか否かが判定される。終了条件は、
図10に示すサイクルCYの実行回数が所定回数に達している場合に満たされる。終了条件が満たされない場合には、サイクルCYが工程STJaから繰り返される。終了条件が満たされる場合には、方法MTは、終了する。
【0139】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0140】
例えば、プラズマ処理装置1は容量結合型のプラズマ処理装置であったが、本開示の思想は、高周波電源からの変調高周波電力を電極に供給するように構成された任意のプラズマ処理装置に適用され得る。そのようなプラズマ処理装置としては、例えば、誘導結合型のプラズマ処理装置、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、プラズマの生成のためにマイクロ波といった表面波を用いるプラズマ処理装置が例示される。
【0141】
また、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理のために高周波電力RF1及び高周波電力RF2の双方を用いるように示されているが、プラズマ処理のために、高周波電力RF1及び高周波電力RF2のうち一方のみが用いられてもよい。
【0142】
以下、プラズマ処理装置1を用いて行った実験について説明する。実験では、プラズマ処理装置1において第3のモードでプラズマを生成した。実験では、高周波電力RF2のパワーレベルとして、400Wと1000Wの2種類のパワーを用いた。また、実験では、上述のTL及びΔΓ2の各々に異なる値を設定した。実験におけるその他の条件は以下の通りである。
<条件>
高周波電力RF1の周波数:60MHz、
連続波CW1のパワー:300W
高周波電力RF2の周波数:40.68MHz、
第1の副期間SP11における変調波MW2のパワー及び期間P2における連続波CW2のパワー:400W又は1000W
第2の副期間SP12における変調波MW2のパワー:0W
変調波MW2の変調周波数:1kHz
変調波MW2のデューティ比:90%
【0143】
実験では、高周波電力RF2に応じたサセプタ16のV
PPを測定した。V
PPは、高周波電力RF2に応じたサセプタ16の電圧のPeak-to-peak valueである。実験では、サセプタ16に供給する電力を変調波MW2から連続波CW2に変更したことに起因して生じたV
PPの低下量の、反射が実質的に観察されなくなったときのV
PPに対する割合(%)(以下、「低下率」という)を求めた。第1の副期間SP11における変調波MW2のパワー及び期間P2における連続波CW2のパワーを400Wに設定したときの低下率を表1に示す。第1の副期間SP11における変調波MW2のパワー及び期間P2における連続波CW2のパワーを1000Wに設定したときの低下率を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0144】
表1及び表2に示すよう、実験の結果、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.2以下に設定された場合、又は、TLが0.2秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.1以下に設定された場合に、低下率は10%以下であった。したがって、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.2以下に設定される場合、又は、TLが0.2秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.1以下に設定される場合に、反射が効果的に抑制されることが確認された。また、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.05以下に設定された場合には、低下率は0%であった。したがって、TLが0.5秒以上に設定され、且つ、ΔΓ2が0.05以下に設定される場合には、反射が殆ど発生しないことが確認された。
【0145】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0146】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、16…サセプタ、36…高周波電源、38…高周波電源、40…整合器、42…整合器。