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特許7386171酸性ガス分離膜を製造するために有用な組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】酸性ガス分離膜を製造するために有用な組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/00 20060101AFI20231116BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20231116BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B01D71/00
B01D53/22
B01D63/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020546066
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035803
(87)【国際公開番号】W WO2020054791
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2018172248
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】笠原 奨平
(72)【発明者】
【氏名】牧口 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】柏原 泰吾
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036129(JP,A)
【文献】特開2013-049048(JP,A)
【文献】特開2015-027654(JP,A)
【文献】特開2011-161387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00-71/82
C02F 1/44
C08K 3/18
5/17
C08L 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C):
(A)アルカリ金属化合物、
(B)酸性解離性基を有する重合体、並びに
(C)酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物
を含み、下記式(I):
β={成分(A)が有するアルカリ金属の量(mol)-成分(B)が有する酸性解離性基の量(mol)}/成分(C)が有する酸性解離性基の量(mol) (I)
から算出されるβが、0.20以上0.50以下である、酸性ガス分離膜を製造するために用いられる組成物。
【請求項2】
成分(B)が、酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)が、酸性解離性基を有する非架橋重合体を含む請求項に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む酸性ガス分離膜。
【請求項5】
請求項に記載の酸性ガス分離膜を含む酸性ガス分離膜エレメント。
【請求項6】
酸性ガス分離膜と、供給側流路部材および透過側流路部材の少なくとも一つとを含む積層体と、
複数の穴が壁面に形成された中空管と
を含み、
積層体が中空管の外周に巻き付けられた構造
を有する請求項に記載の酸性ガス分離膜エレメント。
【請求項7】
請求項5またはに記載の酸性ガス分離膜エレメントを含む酸性ガス分離膜モジュール。
【請求項8】
少なくとも一つの酸性ガス分離膜エレメントと、
酸性ガス分離膜に混合ガスを供給する混合ガス供給部と、
酸性ガス分離膜を透過しなかった非透過ガスを排出する非透過ガス排出部と、
酸性ガス分離膜を透過した透過ガスを排出する透過ガス排出部と
を含む請求項に記載の酸性ガス分離膜モジュール。
【請求項9】
請求項またはに記載の酸性ガス分離膜モジュールを少なくとも一つ含む酸性ガス分離装置。
【請求項10】
透過ガスを減圧する手段、および透過ガスと同伴して排出されるスイープガスを供給する手段の少なくとも一つをさらに含み、
透過ガスを減圧する手段は、酸性ガス分離膜モジュールの透過ガス排出部と連通しており、
スイープガスを供給する手段は、酸性ガス分離膜モジュールにさらに備わるスイープガス供給部と連通している、
請求項に記載の酸性ガス分離装置。
【請求項11】
以下の成分(A)~(C):
(A)アルカリ金属化合物、
(B)酸性解離性基を有する重合体、
(C)酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物、
並びに媒質を混合して塗工液を調製する工程と、
塗工液を多孔層に塗布して、塗工液の膜を形成する工程と、
塗工液の膜から媒質を除去する工程と
を含み、下記式(I):
β={成分(A)が有するアルカリ金属の量(mol)-成分(B)が有する酸性解離性基の量(mol)}/成分(C)が有する酸性解離性基の量(mol) (I)
から算出されるβが、0.20以上0.50以下である、酸性ガス分離膜を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガス分離膜を製造するために有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水素製造や尿素製造などの大規模プラントで合成される合成ガスや天然ガス、排ガス等から酸性ガス(例えば、二酸化炭素)を分離するプロセスとして、省エネルギー化を実現できることから、酸性ガス膜分離プロセスが近年注目されている。この酸性ガス膜分離プロセスのために、様々な酸性ガス分離膜が研究されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルカリ金属系炭酸ガスキャリアおよびアミン系炭酸ガスキャリアを含む樹脂組成物と多孔膜とから構成される炭酸ガス分離膜が記載されている。また、特許文献2には、グリシンおよび脱プロトン化剤を含むゲル層(ハイドロゲル膜)と多孔膜とから構成されるCO促進輸送膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-36129号公報
【文献】特開2013-49048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸性ガス分離膜を用いて酸性ガスを効率的に分離するために、酸性ガスを供給する酸性ガス分離膜の表面側(供給側)と、透過した酸性ガスが出てくる酸性ガス分離膜の表面側(透過側)との間の酸性ガスの分圧差を大きくすることが有効である。
【0006】
供給側と透過側との間の酸性ガスの分圧差を大きくするために、本発明者らは、透過側を不活性ガスでスイープすること、または透過側を減圧することを検討した。この検討の結果、本発明者らは、透過側の不活性ガスによるスイープおよび減圧を行うと、従来の酸性ガス分離膜では、酸性ガス/非酸性ガスの分離係数が低下することを見出した。これは、不活性ガスによるスイープおよび減圧によって透過側の湿度が低下することが原因であると推定される。但し、本発明はこのような推定に限定されない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、透過側の不活性ガスによるスイープおよび減圧を行っても、高い酸性ガス/非酸性ガスの分離係数を達成することができる酸性ガス分離膜を製造し得る組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 以下の成分(A)~(C):
(A)アルカリ金属化合物、
(B)酸性解離性基を有する重合体、並びに
(C)酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物
を含み、下記式(I):
β={成分(A)が有するアルカリ金属の量(mol)-成分(B)が有する酸性解離性基の量(mol)}/成分(C)が有する酸性解離性基の量(mol) (I)
から算出されるβが、0.0超1.0未満である組成物。
【0009】
[2] βが、0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.20以上である前記[1]に記載の組成物。
[3] βが、0.90以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下、特に好ましくは0.60以下、最も好ましくは0.50以下である前記[1]または[2]に記載の組成物。
【0010】
[4] 成分(A)が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、特に好ましくは水酸化セシウムである前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
【0011】
[5] 成分(A)の量が、成分(B)の酸性解離性基1モルに対して、1.0モル超であり、および10モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは3.0モル以下である前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
【0012】
[6] 成分(B)が、酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体を含む前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7] 酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体が、カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する化学架橋ポリアクリル酸である前記[6]に記載の組成物。
[8] 酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体の0.2重量%水溶液の粘度が、500~50,000mPa・s、より好ましくは800~45,000mPa・s、さらに好ましくは1,000~40,000mPa・sである前記[6]または[7]に記載の組成物。
【0013】
[9] 成分(B)が、酸性解離性基を有する非架橋重合体を含む前記[6]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10] 酸性解離性基を有する非架橋重合体が、カルボキシ基を有するアクリル酸系の非架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する非架橋ポリアクリル酸である前記[9]に記載の組成物。
[11] 酸性解離性基を有する非架橋重合体の0.2重量%水溶液の粘度が、100~1,500mPa・s、より好ましくは150~1,200mPa・s、さらに好ましくは200~1,000mPa・sである前記[9]または[10]に記載の組成物。
[12] 酸性解離性基を有する非架橋重合体の量が、成分(B)中の酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体と前記非架橋重合体との総量に対して、1~99重量%、より好ましくは2~90重量%、さらに好ましくは2~80重量%である前記[9]~[11]のいずれか一項に記載の組成物。
【0014】
[13] 組成物の固形分中の成分(B)の量が、5.0~90重量%、より好ましくは7.0~60重量%、さらに好ましくは10~30重量%である前記[1]~[12]のいずれか一項に記載の組成物。
【0015】
[14] 成分(C)が、カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物であり、より好ましくはアミノ基として2級アミノ基のみを有するアミノ酸であり、さらに好ましくはプロリンおよび/またはサルコシンであり、特に好ましくはプロリンまたはサルコシンである前記[1]~[13]のいずれか一項に記載の組成物。
【0016】
[15] 成分(C)の量が、成分(B)の酸性解離性基1モルに対して、0.5~10モル、より好ましくは0.7~7.0モル、さらに好ましくは1.0~5.0モルである前記[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物。
【0017】
[16] 酸性ガス分離膜を製造するために用いられる前記[1]~[15]のいずれかに一つに記載の組成物。
【0018】
[17] 前記[1]~[16]のいずれか一つに記載の組成物を含む酸性ガス分離膜。
[18] 前記[17]に記載の酸性ガス分離膜を含む酸性ガス分離膜エレメント。
[19] 酸性ガス分離膜と、供給側流路部材および透過側流路部材の少なくとも一つとを含む積層体と、
複数の穴が壁面に形成された中空管と
を含み、
積層体が中空管の外周に巻き付けられた構造
を有する前記[18]に記載の酸性ガス分離膜エレメント。
【0019】
[20] 前記[18]または[19]に記載の酸性ガス分離膜エレメントを含む酸性ガス分離膜モジュール。
[21] 少なくとも一つの酸性ガス分離膜エレメントと、
酸性ガス分離膜に混合ガスを供給する混合ガス供給部と、
酸性ガス分離膜を透過しなかった非透過ガスを排出する非透過ガス排出部と、
酸性ガス分離膜を透過した透過ガスを排出する透過ガス排出部と
を含む前記[20]に記載の酸性ガス分離膜モジュール。
【0020】
[22] 前記[20]または[21]に記載の酸性ガス分離膜モジュールを少なくとも一つ含む酸性ガス分離装置。
[23] 透過ガスを減圧する手段、および透過ガスと同伴して排出されるスイープガスを供給する手段の少なくとも一つをさらに含み、
透過ガスを減圧する手段は、酸性ガス分離膜モジュールの透過ガス排出部と連通しており、
スイープガスを供給する手段は、酸性ガス分離膜モジュールにさらに備わるスイープガス供給部と連通している、
前記[22]に記載の酸性ガス分離装置。
【0021】
[24] 以下の成分(A)~(C):
(A)アルカリ金属化合物、
(B)酸性解離性基を有する重合体、
(C)酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物、
並びに媒質を混合して塗工液を調製する工程と、
塗工液を多孔層に塗布して、塗工液の膜を形成する工程と、
塗工液の膜から媒質を除去する工程と
を含み、下記式(I):
β={成分(A)が有するアルカリ金属の量(mol)-成分(B)が有する酸性解離性基の量(mol)}/成分(C)が有する酸性解離性基の量(mol) (I)
から算出されるβが、0.0超1.0未満である、酸性ガス分離膜を製造する方法。
【0022】
[25] βが、0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.20以上である前記[24]に記載の方法。
[26] βが、0.90以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下、特に好ましくは0.60以下、最も好ましくは0.50以下である前記[24]または[25]に記載の方法。
【0023】
[27] 成分(A)が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、特に好ましくは水酸化セシウムである前記[24]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
[28] 成分(A)の量が、成分(B)の酸性解離性基1モルに対して、1.0モル超であり、および10モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは3.0モル以下である前記[24]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
[29] 成分(B)が、酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体を含む前記[24]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30] 酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体が、カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する化学架橋ポリアクリル酸である前記[29]に記載の方法。
[31] 酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体の0.2重量%水溶液の粘度が、500~50,000mPa・s、より好ましくは800~45,000mPa・s、さらに好ましくは1,000~40,000mPa・sである前記[29]または[30]に記載の方法。
【0026】
[32] 成分(B)が、酸性解離性基を有する非架橋重合体を含む前記[29]~[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33] 酸性解離性基を有する非架橋重合体が、カルボキシ基を有するアクリル酸系の非架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する非架橋ポリアクリル酸である前記[32]に記載の方法。
[34] 酸性解離性基を有する非架橋重合体の0.2重量%水溶液の粘度が、100~1,500mPa・s、より好ましくは150~1,200mPa・s、さらに好ましくは200~1,000mPa・sである前記[32]または[33]に記載の方法。
[35] 酸性解離性基を有する非架橋重合体の量が、成分(B)中の酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体と前記非架橋重合体との総量に対して、1~99重量%、より好ましくは2~90重量%、さらに好ましくは2~80重量%である前記[32]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
[36] 塗工液の固形分中の成分(B)の量が、5.0~90重量%、より好ましくは7.0~60重量%、さらに好ましくは10~30重量%である前記[24]~[35]のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
[37] 成分(C)が、カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物であり、より好ましくはアミノ基として2級アミノ基のみを有するアミノ酸であり、さらに好ましくはプロリンおよび/またはサルコシンであり、特に好ましくはプロリンまたはサルコシンである前記[24]~[36]のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
[38] 成分(C)の量が、成分(B)の酸性解離性基1モルに対して、0.5~10モル、より好ましくは0.7~7.0モル、さらに好ましくは1.0~5.0モルである前記[24]~[37]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0030】
透過側の不活性ガスによるスイープおよび減圧を行っても、高い酸性ガス/非酸性ガスの分離係数を達成することができる酸性ガス分離膜を、本発明の組成物から製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の酸性ガス分離膜エレメントの一例を展開して示す、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。
図2】本発明の酸性ガス分離膜エレメントの一例を展開して示す概略の斜視図である。
図3】本発明の酸性ガス分離膜モジュールの一例を模式的に示す構成図である。
図4】本発明の酸性ガス分離膜モジュールの一例を模式的に示す構成図である。
図5】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図6】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図7】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図8】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図9】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図10】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図11】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図12】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図13】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図14】水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
図15】試験例1で用いた酸性ガス分離装置を模式的に示す構成図である。
図16】試験例2で用いた酸性ガス分離装置を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について順に説明する。なお、本明細書に記載の例示、好ましい態様等は、これらが互いに矛盾しない限り、組み合わせることができる。
【0033】
<組成物>
本発明の組成物は、以下の成分(A)~(C):
(A)アルカリ金属化合物、
(B)酸性解離性基を有する重合体、並びに
(C)酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物
を含み、下記式(I):
β={成分(A)が有するアルカリ金属の量(mol)-成分(B)が有する酸性解離性基の量(mol)}/成分(C)が有する酸性解離性基の量(mol) (I)
から算出されるβが、0.0超1.0未満であることを特徴とする。
【0034】
上述の成分(A)~(C)を、βが0.0超1.0未満であるような量で併用することによって、透過側の不活性ガスによるスイープおよび減圧を行っても、高い酸性ガス/非酸性ガスの分離係数を達成することができる酸性ガス分離膜を製造することができる。βは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.20以上であり、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下、特に好ましくは0.60以下、最も好ましくは0.50以下である。
【0035】
本発明において、成分(A)~(C)は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。以下、これらについて順に説明する。
【0036】
<成分(A)>
成分(A)は、アルカリ金属化合物である。アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
【0037】
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。アルカリ金属炭酸塩は、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ルビジウムおよび炭酸セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは炭酸セシウムである。
【0038】
アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。アルカリ金属炭酸水素塩は、好ましくは炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウムおよび炭酸水素セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは炭酸水素セシウムである。
【0039】
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。アルカリ金属水酸化物は、好ましくは水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは水酸化セシウムである。
【0040】
成分(A)は、(i)好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、(ii)より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、(iii)さらに好ましくは水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、(iv)特に好ましくは水酸化セシウムである。
【0041】
成分(A)(アルカリ金属化合物)の量は、成分(B)(酸性解離性基を有する重合体)の酸性解離性基1モルに対して、好ましくは1.0モル超であり、好ましくは10モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは3.0モル以下である。
【0042】
<成分(B)>
成分(B)は、酸性解離性基を有する重合体である。本明細書中、「酸性解離性基」とは、媒質中でプロトン(H)を放出し得る酸性官能基を意味する。1価の酸性解離性基としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-S(O)(OH))、フェノール性水酸基が挙げられ、2価の酸性解離性基としては、例えば、ホスホノ基(-P(O)(OH))、ホスホノオキシ基(-O-P(O)(OH))が挙げられる。前記重合体は、1種のみの酸性解離性基を有していてもよく、2種以上の酸性解離性基を有していてもよい。酸性解離性基は、好ましくは1価の酸性解離性基であり、より好ましくはカルボキシ基である。
【0043】
成分(B)の大きさの指標として、その0.2重量%水溶液の粘度(成分(B)が架橋重合体であり、厳密には水に溶解しない場合、0.2重量%分散液の粘度)が挙げられる。成分(B)の0.2重量%水溶液の粘度(0.2重量%分散液の粘度)は、好ましくは300~70,000mPa・s、より好ましくは400~50,000mPa・s、さらに好ましく500~40,000mPa・sである。この粘度は、pH7、温度25℃および回転数20rpmの条件下でB型粘度計を用いて測定される値である。
【0044】
組成物の固形分中の成分(B)の量は、膜の形成のし易さおよび酸性ガス透過性の観点から、好ましくは5.0~90重量%、より好ましくは7.0~60重量%、さらに好ましくは10~30重量%である。ここで組成物の固形分とは、媒質以外の成分の合計を意味する。
【0045】
成分(B)は、好ましくは酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体を含む。本明細書中、「吸水性架橋重合体」とは、化学架橋および物理架橋のどちらか一方、またはその両方によって、ハイドロゲルを形成し得る重合体を意味する。「化学架橋」とは、共有結合(但し、配位結合を除く)による架橋を意味する。「物理架橋」とは、非共有結合(例えば、水素結合、イオン結合、配位結合)による架橋を意味する。酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。酸性解離性基の説明は上述の通りである。
【0046】
酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体としては、例えば、アクリル酸系の吸水性架橋重合体、アクリルアミド系の吸水性架橋重合体、ビニルアルコール系の吸水性架橋重合体、エチレンオキシド系の吸水性架橋重合体、スルホン酸系の吸水性架橋重合体、アスパラギン酸系の吸水性架橋重合体、グルタミン酸系の吸水性架橋重合体、アルギン酸塩系の吸水性架橋重合体、デンプン系の吸水性架橋重合体、セルロース系の吸水性架橋重合体が挙げられる。
【0047】
酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体は、好ましくは、カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体である。ここで、アクリル酸系の吸水性架橋重合体とは、アクリル酸に由来する構成単位を有する吸水性架橋重合体を意味する。
【0048】
カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体は、さらに、カルボキシ基とは異なる他の酸性解離性基を有していてもよい。他の酸性解離性基としては、例えば、スルホ基、ホスホノ基、ホスホノオキシ基が挙げられる。他の酸性解離性基は、この基を有する単量体を上述のアクリル酸等と共に重合させる、または重合で得られた吸水性架橋重合体に、他の酸性解離性基を有する単量体または重合体を付加させることによって、吸水性架橋重合体に導入することができる。
【0049】
カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体の好適例として、カルボキシ基を有する化学架橋ポリアクリル酸が挙げられる。ここで「化学架橋ポリアクリル酸」とは、アクリル酸に由来する構成単位および共有結合による架橋構造を有し、化学架橋(即ち、共有結合による架橋)によってハイドロゲルを形成し得る重合体を意味する。なお、共有結合による架橋構造は、架橋性単量体に由来する構成単位または架橋剤から構成されていてもよい。
【0050】
化学架橋ポリアクリル酸の原料の一つである架橋性単量体としては、例えば、1,3-ブチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトール ペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等が挙げられる。
【0051】
化学架橋ポリアクリル酸としては、例えば、住友精化社から入手できる「アクペック(登録商標)」、三洋化成社から入手できる「サンフレッシュ(登録商標)」が挙げられる。
【0052】
カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体は、アクリル酸に由来する構成単位に加えて、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびそれらの塩、ビニルアルコール、アクリルアミド、並びにメタクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する構成単位(以下「他の構成単位」と略称することがある)を含んでいてもよい。
【0053】
本明細書において、「ビニルアルコールに由来する構成単位」とは、ビニルアルコールの二重結合が反応して形成される構造を有する単位を意味し、これはビニルアルコールそのものから形成されなくてもよい。「ビニルアルコールに由来する構成単位」は、一般に、酢酸ビニルを重合したのち、酢酸ビニルに由来する構成単位を加水分解することによって、形成される。また、「アクリル酸に由来する構成単位」等も同様の意味である。カルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体が他の構成単位を含む場合、この吸水性架橋重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0054】
他の構成単位を有する共重合体の中で、物理架橋によってハイドロゲルを形成し得るポリアクリル酸-ポリビニルアルコール共重合体、化学架橋によってハイドロゲルを形成し得るポリアクリルアミド-ポリアクリル酸共重合体が好ましい。前記のような共重合体としては、例えば、クラレ社から入手できるポリビニルアルコール-ポリアクリル酸共重合体のナトリウム塩「商品名:クラストマーAP20」、Sigma-Aldrich社から入手できる「製品番号432776」のポリアクリルアミド-ポリアクリル酸共重合体のカリウム塩等が挙げられる。
【0055】
酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体の大きさの指標として、その0.2重量%水溶液の粘度が挙げられる。その0.2重量%水溶液の粘度は、好ましくは500~50,000mPa・sであり、より好ましくは800~45,000mPa・sであり、さらに好ましくは1,000~40,000mPa・sである。この粘度は、pH7、温度25℃および回転数20rpmの条件下でB型粘度計を用いて測定した値である。
【0056】
成分(B)は、酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体に加えて、非架橋重合体を含むことが好ましい。非架橋重合体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。なお、以下では非架橋重合体を、単に「重合体」と略称することがある。非架橋重合体は、酸性解離性基を有していてもよい。酸性解離性基の説明は上述の通りである。
【0057】
酸性解離性基を有する非架橋重合体は、好ましくはカルボキシ基を有するアクリル酸系重合体である。カルボキシ基を有するアクリル酸系重合体は、さらに、カルボキシ基とは異なる他の酸性解離性基を有していてもよい。他の酸性解離性基としては、例えば、スルホ基、ホスホノ基、ホスホノオキシ基が挙げられる。他の酸性解離性基は、この基を有する単量体を、上述のアクリル酸および/またはその塩と共に重合させる、または得られたアクリル酸系重合体に、他の酸性解離性基を有する単量体または重合体を付加させることによって、アクリル酸系重合体に導入することができる。
【0058】
カルボキシ基を有するアクリル酸系重合体は、アクリル酸および/またはその塩に由来する構成単位に加えて、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびそれらの塩、ビニルアルコール、アクリルアミド、並びにメタクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する構成単位(以下「他の構成単位」と略称することがある)を含んでいてもよい。
【0059】
酸性解離性基を有する非架橋重合体は、より好ましくはカルボキシ基を有する非架橋ポリアクリル酸である。
【0060】
酸性解離性基を有する非架橋重合体の0.2重量%水溶液の粘度は、好ましくは100~1,500mPa・s、より好ましくは150~1,200mPa・s、さらに好ましくは200~1,000mPa・sである。この粘度は、pH7、温度25℃および回転数20rpmの条件下でB型粘度計を用いて測定した値である。
【0061】
成分(B)は、(i)好ましくは酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体からなるか、または酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体および酸性解離性基を有する非架橋重合体からなり、(ii)より好ましくは酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体および酸性解離性基を有する非架橋重合体からなる。この態様において、酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体は、好ましくはカルボキシ基を有するアクリル酸系の吸水性架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する化学架橋ポリアクリル酸である。また、この態様において、酸性解離性基を有する非架橋重合体は、好ましくはカルボキシ基を有するアクリル酸系の非架橋重合体であり、より好ましくはカルボキシ基を有する非架橋ポリアクリル酸である。
【0062】
酸性解離性基を有する非架橋重合体を使用する場合、成分(B)中のその量は、本発明の組成物の製膜性向上の観点から、成分(B)中の酸性解離性基を有する吸水性架橋重合体と前記非架橋重合体との総量に対して、好ましくは1~99重量%、より好ましくは2~90重量%、さらに好ましくは2~80重量%である。
【0063】
<成分(C)>
成分(C)は、酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物である。酸性解離性基の説明は上述の通りである。成分(C)は、1種のみの酸性解離性基を有していてもよく、2種以上の酸性解離性基を有していてもよい。成分(C)は、分子内に複数の異なる種類の酸性解離性基を有する化合物(例、ヒドロキシフェニルグリシン)でもよい。アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれでもよい。また、2級アミノ基および3級アミノ基は、アミノ基の窒素原子が含窒素複素環の構成原子の一つとなっている複素環式アミノ基でもよい。
【0064】
酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物としては、例えば、カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物、スルホ基およびアミノ基を有する化合物を有する化合物(例、2-アミノエタンスルホン酸)、ホスホノ基(-P(O)(OH))およびアミノ基を有する化合物(例、2-アミノエタンホスホン酸、NTMP(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸))、およびEDTMP(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸))等が挙げられる。これらの中で、カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物が好ましい。即ち、成分(C)は、好ましくはカルボキシ基およびアミノ基を有する化合物である。カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0065】
カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物としては、後述する一般的なアミノ酸の他、例えば、キレート材として広く知られるEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、PDTA(1,3-プロパンジアミン四酢酸)、HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、IDA(イミノ二酢酸)、DHEG(ジヒドロキシエチルグリシン)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、およびCMGA(ジカルボキシメチルグルタミン酸)などが挙げられる。これらの化合物はキレート材として市販されている。
【0066】
アミノ基として1級アミノ基のみを有するアミノ酸としては、例えば、アラニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン等が挙げられる。
アミノ基として2級アミノ基のみを有するアミノ酸としては、例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン等が挙げられる。
アミノ基として3級アミノ基のみを有するアミノ酸としては、例えば、ジメチルグリシン等が挙げられる。
アミノ基として1級アミノ基および2級アミノ基を有するアミノ酸としては、例えば、アルギニン、トリプトファン等が挙げられる。
アミノ基として1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基を有するアミノ酸としては、例えば、ヒスチジン等が挙げられる。
【0067】
成分(C)は、酸性ガスとの反応性の観点から、より好ましくはアミノ基として2級アミノ基のみを有するアミノ酸であり、さらに好ましくはプロリンおよび/またはサルコシンであり、特に好ましくはプロリンまたはサルコシンである。
【0068】
成分(C)(酸性解離性基およびアミノ基を有する化合物)の量は、成分(B)(酸性解離性基を有する重合体)の酸性解離性基1モルに対して、好ましくは0.5~10モル、より好ましくは0.7~7.0モル、さらに好ましくは1.0~5.0モルである。
【0069】
<他の成分>
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、成分(A)~(C)とは異なる他の成分を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の組成物は、好ましくは媒質を含有する。媒質を含有する組成物は、流動性を有するものでもよく(例えば、塗工液)、流動性を有さないもの(例えば、酸性ガス分離膜における本発明の組成物からなる膜(本明細書中で「組成物膜」と略称することがある))でもよい。
【0071】
媒質としては、例えば、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール)等のプロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の無極性溶媒;ケトン溶媒(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。媒質は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。媒質としては、水およびアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む媒質が好ましく、水、メタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む媒質がより好ましく、水を含む媒質がさらに好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または両性界面活性剤のいずれでもよい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0073】
界面活性剤を使用する場合、組成物中の界面活性剤の量(即ち、組成物全体に対する界面活性剤の量)は、塗工性と酸性ガス透過性能の観点から、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.001~3重量%、さらに好ましくは0.01~3重量%である。
【0074】
<酸性ガス分離膜>
本発明の組成物は、好ましくは酸性ガス分離膜を製造するために用いられる。また、本発明は、上述の組成物を含む酸性ガス分離膜も提供する。酸性ガスは、好ましくは二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)およびハロゲン化水素(例、塩化水素)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SO)、および窒素酸化物(NO)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくは二酸化炭素、硫化水素および硫黄酸化物(SO)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、特に好ましくは二酸化炭素および/または硫化水素であり、最も好ましくは二酸化炭素である。
【0075】
本発明の酸性ガス分離膜は、組成物膜(即ち、本発明の組成物からなる膜)でもよく、組成物膜および他の部材(例えば多孔層)を含むものでもよい。本発明の酸性ガス分離膜における組成物膜の厚さは、好ましくは0.1~600μm、より好ましくは0.5~400μm、さらに好ましくは1~200μmである。
【0076】
本発明の酸性ガス分離膜は、好ましくは多孔層を含む。多孔層は、単層でもよく、積層でもよい。本発明の酸性ガス分離膜は、1枚の多孔層を有するものでもよく、2枚以上の多孔層を有するものでもよい。2枚以上の多孔層は、それぞれ、同じものでもよく、異なるものでもよい。
【0077】
多孔層の材料としては、樹脂が挙げられる。樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の含フッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アラミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、撥水性の点から、ポリオレフィン系樹脂および含フッ素樹脂が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がより好ましい。
【0078】
多孔層の材料としては、上記の樹脂の他に、金属、ガラス、セラミックス等の無機材料が挙げられる。多孔層は、樹脂および無機材料の両方を含んでいてもよい。
【0079】
多孔層の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、好ましくは10~3,000μm、より好ましくは10~500μm、さらに好ましくは20~200μmである。
【0080】
多孔層の平均細孔直径は、好ましくは0.0005μm以上、より好ましくは0.001μm以上、さらに好ましくは0.005μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。この平均細孔直径は、水銀圧入法によって測定される値である。また、多孔層の最大細孔直径は、好ましくは0.05μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.07μm以上0.9μm以下である。
【0081】
多孔層の空孔率は、好ましくは5~99体積%、より好ましくは30~90体積%であるこの空孔率は、水銀圧入法によって測定される値である。
【0082】
多孔層は、疎水性であることが好ましい。疎水性の多孔層を有する支持層を使用することによって、組成物膜内の水分が多孔層の細孔に浸入することが抑制されて、酸性ガス分離膜の性能低下が抑えられる。
【0083】
疎水性の指標としては、例えば、温度25℃における水の接触角が挙げられる。多孔層の温度25℃における水の接触角は、好ましくは90度以上、より好ましくは95度以上、さらに好ましくは100度以上であってもよい。水の接触角は、接触角計(例えば、動的接触角試験機1100DAT:FIbro SystemAB社)で測定することができる。
【0084】
多孔層は、耐熱性を有することが好ましい。本明細書において「耐熱性」とは、多孔層をプロセス条件における最大温度に2時間保存した後においても、熱収縮または熱溶融による、目視で確認し得るカールが多孔層に生じないことを意味する。
【0085】
<酸性ガス分離膜の製造方法>
本発明は、上述の成分(A)~(C)および媒質を混合して塗工液を調製する工程と、塗工液を多孔層に塗布して、塗工液の膜を形成する工程と、塗工液の膜から媒質を除去する工程とを含む、上述の酸性ガス分離膜を製造する方法も提供する。なお、本発明の製造方法において、成分(A)~(C)の種類および量、媒質の種類、並びにβ等についての説明は、上述の通りである。
【0086】
塗工液中の媒質の量は、塗工性の観点から、好ましくは1.0~99.9重量%、より好ましくは3.0~97重量%、さらに好ましくは5.0~95重量%である。なお、媒質の量は、塗工液全体に対する媒質の量を意味する。
【0087】
媒質として水を使用する場合、塗工液中の水の量は、塗工性の観点から、好ましくは10~99.9重量%、より好ましくは20~97重量%、さらに好ましくは30~95重量%である。なお、水の量は、塗工液全体に対する水の量を意味する。
【0088】
まず、成分(A)~(C)および媒質を混合して、本発明の組成物の一態様である塗工液を調製する。塗工液は、基材との親和性による塗りムラを抑制するために、必要に応じて界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤の説明は、上述の通りである。
【0089】
次に、塗工液を多孔層に塗布して、塗工液の膜を形成する。塗布方法に特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜採用することができる。塗布方法としては、例えばスピンコート法、バーコート法、ダイコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、コンマロールコート法、キスコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
多孔層(第1多孔層)上に形成された塗工液の膜に、必要に応じて多孔層(第2多孔層)を積層してもよい。
【0090】
次に、塗工液の膜から媒質を除去することによって組成物膜を形成して、酸性ガス分離膜を製造する。媒質の除去方法に特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。媒質の除去方法としては、乾燥機を用いて塗工液の膜を乾燥させる方法が好ましい。乾燥機としては、例えば、通風乾燥炉等が挙げられる。
【0091】
乾燥温度および時間は、塗工液の媒質、多孔層の種類等を考慮して、適宜決定すればよい。乾燥温度は、例えば、80~150℃である。乾燥時間は、例えば、3~30分である。
【0092】
<酸性ガス分離膜エレメント>
本発明は、上述の酸性ガス分離膜を含む酸性ガス分離膜エレメントも提供する。酸性ガス分離膜エレメントは、酸性ガス分離膜が集積化または一体化されて構成される。酸性ガス分離膜としては、例えば、シート状、中空状等の形状を挙げることができる。酸性ガス分離膜エレメントは、シート状の酸性ガス分離膜を含む場合は、例えば、スパイラル型、プレート&フレーム型、プリーツ型等の形式とすることができ、中空状の酸性ガス分離膜を含む場合は、例えば、中空糸型、円筒型等の形式とすることができる。
【0093】
本発明の酸性ガス分離膜エレメントは、好ましくは、酸性ガス分離膜と、供給側流路部材および透過側流路部材の少なくとも一つとを含む積層体と、複数の穴が壁面に形成された中空管とを含み、積層体が中空管の外周に巻き付けられた構造を有する。以下、図1を用いて、本発明の酸性ガス分離膜エレメントの一例を説明する。
【0094】
図1で示される酸性ガス分離膜エレメント1は、酸性ガス分離膜10、供給側流路部材3および透過側流路部材4を含むとともに、これらの積層体が中心管5に巻き付けられている。巻き付けられた積層体の形状は、円筒状または角筒状のいずれでもよいが、好ましくは円筒状である。
【0095】
酸性ガス分離膜エレメント1は、さらに、巻き付けられた積層体の巻戻しや巻崩れを防止するために、外周テープやテレスコープ防止板(ATD)等の固定部材(図示せず)を備えていてもよく、酸性ガス分離膜エレメント1にかかる内圧および外圧による負荷に対する強度を確保するために、巻き付けられた積層体の最外周にアウターラップ(補強層)を有していてもよい。外周テープは、巻き付けられた積層体の外周に巻き付けられることにより、巻き付けられた積層体の巻戻しを抑制することができる。テレスコープ防止板は、巻き付けられた積層体の両端部に取り付けられ、酸性ガス分離膜エレメント1の使用中に、巻き付けられた積層体に巻崩れ(テレスコープ)現象が発生することを抑制することができる。アウターラップ(補強層)は、例えばガラスファイバーにエポキシ樹脂を含浸した繊維強化樹脂などの補強材を用いることができ、巻き付けられた積層体の最外周に補強材を巻き付けた後にエポキシ樹脂を硬化させることが好ましい。
【0096】
例えば、透過側のガス流路を形成する透過側流路部材4、酸性ガス分離膜10、供給側のガス流路を形成する供給側流路部材3、酸性ガス分離膜10をこの順に繰返し積層することによって、積層体を構成してもよい。
【0097】
供給側流路部材3は、原料ガスが供給される部材であり、この部材を通して酸性ガス分離膜10に原料ガスが供給される。透過側流路部材4は、酸性ガス分離膜10を透過した透過ガス(酸性ガス分離膜10に供給された原料ガスの少なくとも一部を含む。)が流れる部材であり、該透過ガスを中心管5へ誘導する。中心管5は、透過流路部材4を流れる透過ガスを収集する。
【0098】
積層体は、酸性ガス分離膜-流路部材複合体(膜リーフ)を含んでもよい。酸性ガス分離膜-流路部材複合体は、対向する酸性ガス分離膜10と、この対向する酸性ガス分離膜10の間に挟み込まれた流路部材とで構成される。対向する酸性ガス分離膜10は、一枚の酸性ガス分離膜が二つ折りにされてなる折り曲げ分離膜でもよいし、二枚の酸性ガス分離膜が対向するように組み合わせてなる組み上げ分離膜でもよい。対向する酸性ガス分離膜10に挟まれる流路部材は、例えば、供給側流路部材3であるが、透過側流路部材4でもよい。
【0099】
酸性ガス分離膜-流路部材複合体が、供給側流路部材3を含む場合、その供給側流路部材3は、原料ガスが供給される流路空間を形成するものであり、この流路空間によって原料ガスを巻き付けられた積層体の内部に導き、酸性ガス分離膜10に原料ガスを供給する。
【0100】
供給側流路部材3は、原料ガスの流路空間を形成する流路部材としての機能と、原料ガスに乱流を生じさせて酸性ガス分離膜10の供給側面の表面更新を促進させつつ、供給される原料ガスの圧力損失をできるだけ小さくする機能とを備えていることが好ましい。この観点から、供給側流路部材3は、網目形状を有することが好ましい。網目形状によって原料ガスの流路が変わることから、供給側流路部材3における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
【0101】
供給側流路部材3を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリスルホン(PSF)等の樹脂;金属、ガラス、セラミックス等の無機材料;樹脂材料と無機材料との組合せが挙げられる。供給側流路部材3を構成する材料は、酸性ガス分離膜10が使用される温度条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。また、供給側流路部材3を構成する材料は、原料ガスの流路空間を形成する流路部材としての機能を維持する観点から、高い機械的強度(剛性)を有することが好ましい。
【0102】
供給側流路部材3は、樹脂、金属およびガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む不織布、織布またはネットからなる層を含むことが好ましく、PE、PP、PTFE、PS、PPS、PES、PEEK、PI、PCT、PSF、金属およびガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む不織布、織布またはネットからなる層を含むことがより好ましい。
【0103】
供給側流路部材3は、1層構造でもよく、2層以上の積層構造でもよい。供給側流路部材3は、例えば、上記不織布、織布またはネットからなる層を複数積層した構造でもよい。
【0104】
供給側流路部材3の厚さ(複数積層した構造である場合にはそれらの全厚)は、流通するガスの圧力損失および機械的強度等の観点からは、10~7500μmが好ましく、50~5000μmがより好ましく、100~2500μmがさらに好ましい。
【0105】
透過側流路部材4は、酸性ガス分離膜10を透過した透過ガスが流れる流路空間を形成するものであり、この流路空間によって透過ガスを中心管5に導く。
【0106】
透過側流路部材4は、透過ガスの流路空間を形成する流路部材としての機能と、透過ガスに乱流を生じさせて酸性ガス分離膜10の透過側面の表面更新を促進する機能とを備えていることが好ましい。この観点から、透過側流路部材4は、網目形状を有することが好ましい。網目形状によって透過ガスの流路が変わることから、透過側流路部材4における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
【0107】
透過側流路部材4を構成する材料は、特に限定されないが、酸性ガス分離膜10が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば、供給側流路部材3を構成する材料と同様の材料を好適に用いることができる。透過側流路部材4を構成する材料としては、具体的には、PP、PTFE、PPS、PES、PSF、PEEK、PI、金属が好ましく、PP、PTFE、PPS、PEEK、PI、金属がより好ましい。透過側流路部材4は、1層構造でもよく、2層以上の積層構造でもよい。
【0108】
中心管5は、酸性ガス分離膜10を透過した透過ガスを収集して、酸性ガス分離膜エレメント1から排出するための導管である。中心管5は、円管でもよく、角管でもよい
【0109】
中心管5の材料は特に限定されないが、酸性ガス分離膜10が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましい。また、酸性ガス分離膜10等を外周に複数回巻き付けるために、中心管5の材料は、機械的強度を有する材料であることが好ましい。中心管5の材料としては、例えば、ステンレス鋼等が好適に用いられる。中心管5の直径や長さ、厚さは、酸性ガス分離膜エレメント1の大きさ、積層体中の酸性ガス分離膜-流路部材複合体の数、透過ガスの量、中心管5に要求される機械的強度等に応じて適宜設定される。
【0110】
中心管5は、中心管5の外周面に、透過側流路部材4の透過ガスの流路空間と中心管5の内部空間とを連通させる複数の孔を有している。中心管5に設けられる孔の数や孔の大きさは、透過側流路部材4から供給される透過ガスの量や中心管5に要求される機械的強度を考慮して決定される。
【0111】
本発明の酸性ガス分離膜エレメントは、酸性ガス分離膜と、供給側流路部材および透過側流路部材の少なくとも一つとを含む積層体とを形成し、これを中空管の外周に巻き付けることによって製造することができる。酸性ガス分離膜エレメントの製造方法に特に限定は無く、公知の方法を使用することができる。また、各部材の固定手段としては、例えば、粘着テープ、接着剤等の使用、熱融着などが挙げられる。
【0112】
接着剤の接着成分としては、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン-ブタジエン共重合体、合成ゴム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0113】
また、図2を用いて、図1のエレメントとは別の、本発明の酸性ガス分離膜エレメントの一例を説明する。図2に示す酸性ガス分離膜エレメントは、中心管5および透過側流路部材4に付加的な構成がある点が図1に示す酸性ガス分離膜エレメントと異なり、これらエレメントの他の構成は同じである。
【0114】
図2に示す酸性ガス分離膜エレメント1は、中心管5の内部に遮断部材41が設けられ、透過側流路部材4には遮断部材41に対応する位置に中心管5に直交する方向に仕切部材42が延設されている。遮断部材41および仕切部材42は、ガスの透過を遮断することによりガスの流路を規定する。
【0115】
ガス分離膜エレメント1において、中心管5の端部5aから供給されたスイープガスは、中心管5に設けられた孔43より透過側流路部材4に導出され、仕切部材42によって規定された流路を矢印dの方向に流れ、中心管5の遮断部材41より下流側に設けられた孔43から中心管5内に至る。すなわち、中心管5の端部5aは、スイープガス供給口として機能する。中心管5の一方の端部5a(スイープガス供給口)は、透過側流路部材4が形成する透過側流路と連通している。透過側流路部材4内をスイープガスが流れることにより、透過側流路部材4内の透過ガスの流れが促進される。透過ガスは、スイープガスとともに、中心管5に至り、中心管5の端部5bより導出される。
【0116】
ガス分離膜エレメント1において、遮断部材41の位置は図2に示す中心管5の中心付近に限定されることはなく、中心管5内において、透過側流路部材4に供給されるスイープガスの流路と、透過側流路部材4から回収された透過ガスとスイープガスの混合ガスの流路とが仕切られるように配置されていればよい。
【0117】
スイープガスとしては、特に限定されないが、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および水蒸気からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むガスを用いることができる。
【0118】
<酸性ガス分離膜モジュール>
本発明は、上述の酸性ガス分離膜エレメントを含む酸性ガス分離膜モジュールも提供する。本発明の酸性ガス分離膜モジュールは、好ましくは、少なくとも一つの酸性ガス分離膜エレメントと、酸性ガス分離膜に混合ガスを供給する混合ガス供給部と、酸性ガス分離膜を透過しなかった非透過ガスを排出する非透過ガス排出部と、酸性ガス分離膜を透過した透過ガスを排出する透過ガス排出部とを含む。上記の混合ガス供給部、非透過ガス排出部および透過ガス排出部は、酸性ガス分離膜エレメントの本体に設けられてもよく、酸性ガス分離膜エレメントを収納するハウジング(容器)に設けられてもよい。
【0119】
ハウジング内に2以上の酸性ガス分離膜エレメントを収納する場合には、ハウジング内に、2以上の酸性ガス分離膜エレメントを並列または直列に配列することができる。また、並列に配列した2以上の酸性ガス分離膜エレメント群を、さらに直列に配列してもよい。混合ガスを分配して、複数の酸性ガス分離膜エレメントに導入してもよく(混合ガスの並列供給)、前段の酸性ガス分離膜エレメントから排出された透過ガスおよび/または非透過ガスを、後段の酸性ガス分離膜エレメントに導入してもよい(混合ガスの直列供給)。酸性ガス分離膜モジュールは、少なくとも一つの酸性ガス分離膜エレメントをハウジング内に収納し、ハウジングに混合ガス供給部、非透過ガス排出部および透過ガス排出部を取り付けることにより製造することができる。
【0120】
以下、図3を用いて、本発明の酸性ガス分離膜モジュールの一例を説明する。図3に示す酸性ガス分離膜モジュール20は、ハウジング27に設けられた、混合ガス供給部21と、非透過ガス排出部22と、酸性ガス分離膜エレメント1の中心管5の端部と接続部29aにて接続された透過ガス排出部23とを含む。ハウジング27は、酸性ガス分離膜モジュール内を流通する混合ガスを封入するための空間を形成していてもよく、例えばステンレスや耐湿熱樹脂等の筒状部材と、この筒状部材の軸方向両端を閉塞するための閉塞部材28とを有していてもよい。ハウジング27の形状は、通常、筒状である。筒状は、円筒状または角筒状のいずれでもよい。酸性ガス分離膜エレメント1の形状は、通常、円筒状であることから、ハウジング27の形状は、円筒状であることが好ましい。また、ハウジング27の内部には、酸性ガス分離膜エレメント1の供給側端部25に供給される混合ガスと、酸性ガス分離膜エレメント1の排出側端部26から排出される非透過ガス(即ち、酸性ガス分離膜を透過しなかったガス)との混合を防止するための仕切り24を設けることができる。また、酸性ガス分離膜エレメント1の透過ガス排出部23と接続されていない中心管5の端部には、酸性ガス分離膜エレメント1の供給側端部25に供給される混合ガスと、酸性ガス分離膜酸性ガス分離膜を透過した透過ガスとの混合を防止するための遮断部29bを設けることができる。
【0121】
以下、図4を用いて、図3のモジュールとは別の、本発明の酸性ガス分離膜モジュールの一例を説明する。図4に示す酸性ガス分離膜モジュール20’は、図3に示す遮断部29bの代わりに、図4に示す接続部29cにて接続されたスイープガス供給部30を含む点が、図3に示す酸性ガス分離膜モジュール20と異なり、これらモジュールの他の構成は同じである。なお、混合ガス供給部21、非透過ガス排出部22、透過ガス排出部23、およびスイープガス供給部30は、図3および図4に示す配置に限定されるものではなく、適宜、プロセスガス(混合ガス、非透過ガス、および透過ガス等)のドレン排出や、酸性ガス分離膜モジュールの構成等を考慮して配置することができる。
【0122】
<酸性ガス分離装置>
本発明は、上述の酸性ガス分離膜モジュールを少なくとも一つ含む酸性ガス分離装置も提供する。酸性ガス分離装置中の酸性ガス分離膜モジュールの配列および個数、並びに酸性ガス分離膜モジュール中の酸性ガス分離膜エレメントの配列および個数は、要求される処理量、酸性ガスの回収率、酸性ガス分離装置を設置する場所の大きさ等に応じて選択することができる。
【0123】
本発明の酸性ガス分離装置は、好ましくは、少なくとも一つの酸性ガス分離膜モジュールに加えて、透過ガスを減圧する手段、および透過ガスと同伴して排出されるスイープガスを供給する手段の少なくとも一つをさらに含み、透過ガスを減圧する手段は、酸性ガス分離膜モジュールの透過ガス排出部と連通しており、スイープガスを供給する手段は、酸性ガス分離膜モジュールにさらに備わるスイープガス供給部と連通している。
【0124】
酸性ガスが二酸化炭素(CO)である場合、酸性ガス分離膜は、COおよび水蒸気を含む原料ガスからCOと同時に水蒸気も除去することができるため、上述の酸性ガス分離膜、酸性ガス分離膜モジュール、酸性ガス分離装置は、種々のガスから、COや水蒸気を除去するために用いることができる。種々のガスとしては、例えば、炭化水素の改質を行って得られ、水素の製造等のために用いられる改質ガス;燃料電池等で、原料である改質ガスから生成する水素を含む電気化学的酸化反応ガス;バイオマスのメタン発酵等で得られるバイオガス;ボイラ等で発生する燃焼排ガス等が挙げられる。
【0125】
<酸性ガス分離膜モジュールを用いた水素の製造装置および水素の製造方法>
酸性ガス分離膜モジュール(分離膜モジュール)は、水素の製造装置中で用いることができる。この場合、酸性ガス分離膜モジュールは、少なくとも水素および二酸化炭素を含む原料ガス(原料流体)から、二酸化炭素ガスを含むガス成分(特定の流体成分)を選択的に透過させることができる。水素の製造装置に備えられる酸性ガス分離膜モジュールは、酸性ガス分離膜モジュールを含む酸性ガス分離装置として備えられていてもよい。
【0126】
酸性ガス分離膜モジュールに供給される原料ガスに含まれる水素は、炭化水素の改質反応により生成した改質ガスに含まれるものであってもよい。この改質ガスから、酸性ガス分離膜を用いてCOおよび水蒸気を除去することにより、粗精製水素(水素)を製造することができる。炭化水素の改質反応は、COを用いたCO改質、水蒸気を用いた水蒸気改質、これら二つの改質の組み合わせのいずれかによって行うことができる。そのため、粗精製水素を製造する際に、酸性ガス分離膜を用いた除去で回収されたCOおよび水蒸気を含む混合ガスは、炭化水素の改質反応に再利用することができる。これにより、炭化水素の改質反応に用いる原料を低減することができる。
【0127】
酸性ガス分離装置または酸性ガス分離膜モジュールが備える酸性ガス分離膜による酸性ガス膜分離では、酸性ガス分離膜を透過する透過ガス量によって酸性ガス膜分離の処理量が決まる。酸性ガス膜分離の処理量を向上する方法としては、酸性ガス分離膜モジュールに備わる混合ガス供給部を経由して酸性ガス分離膜の供給側に供給する原料ガスの圧力を圧縮機等で昇圧することにより、供給側のガス分圧を、透過側(酸性ガス分離膜10の透過ガスが排出される側)のガス分圧よりも高める方法;酸性ガス分離膜モジュールに備わる透過ガス排出部を経由して酸性ガス分離膜の透過側を減圧状態とすることにより、供給側のガス分圧を透過側のガス分圧よりも高める方法(以下、「減圧法」ということがある。);酸性ガス分離膜モジュールに備わるスイープガス供給部を経由して酸性ガス分離膜の透過側に透過ガスと同伴して排出するためのスイープガスを供給することにより、透過ガス量を増やす方法(以下、「スイープ法」ということがある。);これらのうちの2以上を組み合わせた方法等が挙げられる。これらのうち、透過ガスの少なくとも一部を再利用する場合、新たなガス(スイープガス)の供給が不要であり、透過ガスのみを分離することができることから、減圧法を用いることが好ましい。
【0128】
上記のようにして得られた粗精製水素を精製して高純度水素を得ることができる。この方法によれば、改質ガスを精製して高純度水素を得る場合に比較して、精製手段である化学吸収法や圧力変動吸着法(PSA)において、省エネルギー化や水素ロス低減化が期待できる。
【0129】
以下、炭化水素としてメタン(CH)を用い、CHの水蒸気改質やCHのCO改質を行って水素を製造する方法を、図面を用いて説明する。なお、図5図14は、酸性ガス分離膜を用いた水素の製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
【0130】
(水素の製造装置100aおよびそれを用いた水素の製造方法)
図5に示す水素の製造装置100aは、水蒸気改質を行って水素を製造する装置であり、減圧法により酸性ガス膜分離を行う。水素の製造装置100aは、混合器181a、水蒸気改質を行うための水蒸気改質器182a、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備えた酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185aを有する。
【0131】
混合器181aは、水蒸気改質の原料となるCHおよび水蒸気(図中、HO)を水蒸気改質器182aに供給するためのものである。混合器181aとしては、例えば、ミキサ、気化器、スプレー噴霧器、エゼクタ、これらの二つ以上の組合せ等が挙げられる。
【0132】
水蒸気改質器182aは、混合器181aから供給されたCHおよび水蒸気を用いて水蒸気改質を行うためのものである。水蒸気改質器182aは、反応式(II):
CH+HO⇔CO+3H (II)
に示す水蒸気改質反応によって、CHを一酸化炭素(CO)および水素(H)に改質する改質部と、反応式(III):
CO+HO⇔CO+H (III)
に示すCO転化反応によって、COをCOおよびHに転化する転化部とを有することができる。
【0133】
酸性ガス分離装置120は、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備え、酸性ガス分離装置120に供給された原料ガス(改質ガスおよび水蒸気)から、COおよび水蒸気を選択的に分離するためのものである。酸性ガス分離装置120には、水蒸気改質器182aで生成したHおよびCOを含む改質ガスが供給される。この改質ガスには、水蒸気改質の原料として供給された水蒸気(原料中の未反応の水蒸気)も含まれている。そのため、酸性ガス分離装置120では、供給された改質ガスおよび水蒸気を含む原料ガスからCOおよび水蒸気が酸性ガス分離膜を選択的に透過することにより、COおよび水蒸気を含む混合ガスと、Hが富化された粗精製水素とを分離することができる。なお、酸性ガス分離装置120では、酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜に供給される原料ガス(改質ガスおよび水蒸気)の流れ方向と、酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過した透過ガス(COおよび水蒸気)の流れ方向とは、並流であってもよく、向流であってもよい。
【0134】
凝縮器183aは、酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過した混合ガス中のCOおよび水蒸気を分離するためのものである。凝縮器183aは、COおよび水蒸気を冷却し、水蒸気を液化することによって、液化した水とCOとを分離する。減圧ポンプ184aは、凝縮器183aで分離されたCOを回収するためのものである。液抜きポンプ185aは、水を回収するためのものである。
【0135】
図5に示す水素の製造装置100aでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質の原料となるCHおよび水を混合器181aに供給する。混合器181aに供給される水は、水蒸気改質の原料として適したものであれば特に限定されず、水素の製造装置100a以外から調達してもよく、図5に示すように、後述する水素の製造方法において酸性ガス分離装置120において回収される水を用いてもよい。なお、酸性ガス分離装置120において回収される水のみでは水蒸気改質の原料として不足する場合、酸性ガス分離装置120において回収される水に、不足分量の水を追加して、混合器181aに供給してもよい。混合器181aで調整されたCHおよび水蒸気は水蒸気改質器182aに供給されて、上記した反応式(II)に示す水蒸気改質反応、および、上記した反応式(III)に示すCO転化反応が行われ、改質ガスとしてのHおよびCOが生成される。
【0136】
生成された改質ガスには、水蒸気改質の原料として供給された未反応の水蒸気も含まれるため、改質ガス(HおよびCO)とともに水蒸気を含む原料ガスが酸性ガス分離装置120に供給される。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜はCOおよび水蒸気を選択的に透過させることができるため、酸性ガス分離装置120において、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとが分離され、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、COは減圧ポンプ184aによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。液抜きポンプ185aによって回収された水は、水蒸気改質の原料として再利用できる。
【0137】
なお、図5に示す水素の製造装置100aでは、凝縮器183aを用いてCOと水蒸気とを分離する場合を例に挙げて説明したが、凝縮器183aに代えて水蒸気分離膜を用いてCOと水蒸気とを分離してもよい。この場合、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を液化することなく、そのまま混合器181aに供給してもよい。
【0138】
(水素の製造装置100bおよびそれを用いた水素の製造方法)
図6に示す水素の製造装置100bは、水蒸気改質を行って水素を製造する装置であり、水蒸気改質の原料となるCHとして、水蒸気改質反応の圧力よりも高い圧力のCHを用いる点が、図5に示す水素の製造装置100aと異なっている。水素の製造装置100bでは、水素の製造装置100aよりも高い圧力のCHを用いることにより、このCHによる差圧発電で得られた電力を、水素の製造装置100bに備えられた機器の作動に用いることができる。以下では、水素の製造装置100a(図5)で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0139】
図6に示す水素の製造装置100bは、混合器181a、水蒸気改質器182a、酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185a、膨張タービン186b、発電機187bを有する。膨張タービン186bおよび発電機187b以外の各部材の説明については、上記したとおりである。
【0140】
膨張タービン186bは、水蒸気改質器182aで用いられるときのCHの圧力よりも高い圧力のCHが導入されることにより駆動され、これに伴い、導入されたCHを膨張させて減圧するものである。膨張タービン186bで減圧されたCHは、混合器181aに供給される。発電機187bは、膨張タービン186bの回転によって駆動されることにより発電を行うものである。発電機187bで発生した電力は、減圧ポンプ184aや液抜きポンプ185aの駆動に用いることができる。
【0141】
図6に示す水素の製造装置100bでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質の原料となるCHを膨張タービン186bに導入する。膨張タービン186bでは、翼部にCHが吹き付けられることにより、膨張タービン186bが回転して発電機187bを駆動する。これにより、発電機187bでは発電が行われる。膨張タービン186bで膨張して減圧したCHは、混合器181aに供給される。水は、水蒸気改質の原料として適したものであれば特に限定されず、水素の製造装置100b以外から調達してもよく、図6に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収される水を用いてもよい。なお、酸性ガス分離装置120において回収される水のみでは水蒸気改質の原料として不足する場合、酸性ガス分離装置120において回収される水に、不足分量の水を追加して、混合器181aに供給してもよい。混合器181aで調整されたCHおよび水蒸気は水蒸気改質器182aに供給されて、水蒸気改質反応およびCO転化反応が行われる。
【0142】
続いて、水蒸気改質器182aで生成した改質ガスおよび原料中の未反応の水蒸気を含む原料ガスが、酸性ガス分離装置120に供給され、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとに分離されて、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。
【0143】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、発電機187bで発生した電力によって駆動される減圧ポンプ184aおよび液抜きポンプ185aによってCOおよび水がそれぞれ回収される。回収された水は水蒸気改質の原料として再利用できる。
【0144】
なお、図6に示す水素の製造装置100bでは、差圧発電により発電機187bで得られた電力によって減圧ポンプ184aや液抜きポンプ185aを駆動する場合を例に挙げて説明したが、CHの導入により膨張タービン186bが回転することによって得られる動力を別の用途に用いてもよい。例えば、この動力を、減圧ポンプ184aや液抜きポンプ185aを駆動するために用いてもよい。
【0145】
また、水素の製造装置100bにおいて、混合器181aがエゼクタを含む場合、水蒸気改質の原料となるCH(水蒸気改質反応の圧力よりも高い圧力のCH)は、エゼクタの駆動流体として用いてもよい。
【0146】
(水素の製造装置100cおよびそれを用いた水素の製造方法)
図7に示す水素の製造装置100cは、CO改質を行って水素を製造する装置であり、減圧法により酸性ガス膜分離を行う。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。水素の製造装置100cは、混合器181c、CO改質を行うためのCO改質器182c、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備えた酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185aを有する。混合器181cおよびCO改質器182c以外の各部材の説明については、上記したとおりである。
【0147】
混合器181cは、CO改質の原料となるCHおよびCOを混合するためのものである。混合器181cとしては、例えば、ミキサ、エゼクタ、これらの二つ以上の組合せ等が挙げられる。
【0148】
CO改質器182cは、混合器181cから供給されたCHおよびCOを用いてCO改質を行うためのものである。CO改質器182cは、反応式(IV):
CH+CO⇔2CO+2H (IV)
に示すCO改質によって、CHをHおよびCOに改質する改質部を有することができる。
【0149】
図7に示す水素の製造装置100cでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、CO改質の原料となるCHおよびCOを混合器181cに供給する。混合器181cに供給されるCOは、CO改質の原料として適したものであれば特に限定されず、水素の製造装置100c以外から調達してもよく、図7に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収されたCOを用いることができる。なお、酸性ガス分離装置120において回収されるCOのみではCO改質の原料として不足する場合、酸性ガス分離装置120において回収されるCOに、不足分量のCOを追加して、混合器181cに供給してもよい。混合器181cで混合されたCHおよびCOはCO改質器182cに供給されて、上記した反応式(IV)に示すCO改質反応が行われ、改質ガスとしてのHおよびCOが生成される。選択的な酸性ガスの透過促進のために、酸性ガス分離装置120に供給される改質ガスと原料中の未反応のCOとを含む原料ガスを、事前に加湿しておくことが好ましい。なお、原料ガスの加湿に用いる水は、後述する酸性ガス分離装置120において回収された水を用いることができる。また、加湿した原料ガスを、酸性ガス分離装置120に供給する前に、反応式(III)に示すCO転化反応にてCOを富化するために用いることにより、酸性ガス分離装置におけるCOの除去効率を向上させることができる。
【0150】
CO改質器182cで生成された改質ガスは、原料中の未反応のCOと、事前の加湿のために追加された水蒸気とを含む原料ガスとして、酸性ガス分離装置120に供給されることが好ましい。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜は、COおよび水蒸気を選択的に透過させることができるため、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとが分離され、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。
【0151】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、COは減圧ポンプ184aによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。減圧ポンプ184aによって回収されたCOは、CO改質の原料として再利用できる。また、液抜きポンプ185aによって回収された水は、改質ガスの加湿に用いることができる。
【0152】
なお、図7に示す水素の製造装置100cでは、凝縮器183aを用いてCOと水蒸気とを分離する場合を例に挙げて説明したが、凝縮器183aに代えて水蒸気分離膜を用いてCOと水蒸気とを分離してもよい。この場合、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を液化することなく、そのまま改質ガスの加湿に用いてもよい。
【0153】
(水素の製造装置100dおよびそれを用いた水素の製造方法)
図8に示す水素の製造装置100dは、CO改質を行って水素を製造する装置であり、CO改質の原料となるCHとして、CO改質反応の圧力よりも高い圧力のCHを用いる点が、図7に示す水素の製造装置100cと異なっている。水素の製造装置100dでは、水素の製造装置100cよりも高い圧力のCHを用いることにより、このCHによる差圧発電で得られた電力を、水素の製造装置100dに備えられた機器の作動に用いることができる。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0154】
図8に示す水素の製造装置100dは、混合器181c、CO改質器182c、酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185a、膨張タービン186b、発電機187bを有する。これらの各部材の説明については、上記したとおりである。
【0155】
図8に示す水素の製造装置100dでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、CO改質の原料となるCHを膨張タービン186bに導入することにより、膨張タービン186bが回転して発電機187bを駆動し、発電が行われる。膨張タービン186bで膨張して減圧されたCHは、混合器181cに供給されてCOと混合される。COは、CO改質の原料として適したものであれば特に限定されず、水素の製造装置100d以外から調達してもよく、図8に示すように、後述する酸性ガス分離装置120によって回収されたCOを用いてもよい。なお、酸性ガス分離装置120において回収されるCOのみではCO改質の原料として不足する場合、酸性ガス分離装置120において回収されるCOに、不足分量のCOを追加して、混合器181cに供給してもよい。混合器181cで混合されたCHおよびCOはCO改質器182cに供給されて、上述のように、CO改質反応が行われる。
【0156】
続いて、CO改質器182cで生成した改質ガス、原料中の未反応のCO、および事前の加湿のために追加された水蒸気を含む原料ガスが、酸性ガス分離装置120に供給され、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとに分離されて、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。
【0157】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、発電機187bで発生した電力によって駆動される減圧ポンプ184aおよび液抜きポンプ185aによってCOおよび水がそれぞれ回収される。回収されたCOはCO改質の原料として再利用でき、水は必要に応じて改質ガスの加湿のために再利用できる。
【0158】
なお、図8に示す水素の製造装置100dでは、CHの導入により膨張タービン186bが回転することによって得られる動力を、減圧ポンプ184aや液抜きポンプ185aを駆動するために用いてもよい。また、水素の製造装置100dにおいて、混合器181cがエゼクタを含む場合、CO改質の原料となるCH(水蒸気改質反応の圧力よりも高い圧力のCH)は、エゼクタの駆動流体として用いてもよい。
【0159】
(水素の製造装置100eおよびそれを用いた水素の製造方法)
図9に示す水素の製造装置100eは、CO改質を行って水素を製造する装置であり、スイープ法により酸性ガス膜分離を行う。スイープガスとしては、CO改質の原料であるCHを用いる。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0160】
図9に示す水素の製造装置100eは、混合器181c、CO改質を行うためのCO改質器182c、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備えた酸性ガス分離装置120、凝縮器183e、ブロア184e、液抜きポンプ185aを有する。凝縮器183eおよびブロア184e以外の各部材の説明については、上記したとおりである。
【0161】
凝縮器183eは、酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過したCOおよび水蒸気と、酸性ガス分離装置120で用いられるスイープガス(CH)とを含む混合ガスが導入され、この混合ガスを冷却し、水蒸気を液化することによって、液化した水と、COおよびCHを含むガスとを分離するためのものである。ブロア184eは、スイープガス(CH)を酸性ガス分離装置120に供給し、凝縮器183eで分離されたCOおよびCHを含むガスを回収するためのものである。
【0162】
図9に示す水素の製造装置100eでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、CO改質の原料となるCHおよびCOを混合器181cに供給する。混合器181cには、水素の製造装置100e以外から調達されるCOに加えて、図9に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収されたCOおよびスイープガス(CH)を含むガスを追加して供給してもよい。混合器181cで混合されたCHおよびCOはCO改質器182cに供給されて、CO改質反応が行われる。
【0163】
続いて、CO改質器182cで生成した改質ガス、原料中の未反応のCO、および事前の加湿のために追加された水蒸気を含む原料ガスが酸性ガス分離装置120に供給されるとともに、酸性ガス分離装置120の透過側(酸性ガス分離膜の透過側)に、スイープガスとしてのCHも供給する。酸性ガス分離装置120では、CO、CH、および水蒸気を含む混合ガスと、Hが富化された原料ガスとが分離され、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、スイープガスの流量を調整することによって調整することができる。
【0164】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、スイープガス(CH)とともに凝縮器183eに導入され、凝縮器183eで水蒸気が液化することによって、液化した水と、COおよびCHを含むガスとに分離され、COおよびCHを含むガスはブロア184eによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。ブロア184eによって回収されたCOおよびCHを含むガスは、CO改質の原料として再利用することができる。また、液抜きポンプ185aによって回収された水は、酸性ガス分離装置120に供給される改質ガスの事前の加湿に用いることができる。
【0165】
なお、図9に示す水素の製造装置100eでは、凝縮器183eを用いてCOおよびCHを含むガスと水蒸気とを分離する場合を例に挙げて説明したが、凝縮器183eに代えて水蒸気分離膜を用いてCOおよびCHを含むガスと水蒸気とを分離してもよい。この場合、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を液化することなく、そのまま改質ガスの事前の加湿に用いてもよい。
【0166】
(水素の製造装置100fおよびそれを用いた水素の製造方法)
図10に示す水素の製造装置100fは、CO改質を行って水素を製造する装置であり、CO改質の原料となるCHとして、CO改質反応の圧力よりも高い圧力のCHを用いる点が、図9に示す水素の製造装置100eと異なっている。水素の製造装置100fでは、水素の製造装置100eよりも高い圧力のCHを用いることにより、このCHによる差圧発電で得られた電力を、製造装置100fに備えられた機器の作動に用いることができる。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0167】
図10に示す水素の製造装置100fは、混合器181c、CO改質器182c、酸性ガス分離装置120、凝縮器183e、ブロア184e、液抜きポンプ185a、膨張タービン186b、発電機187bを有する。これらの各部材の説明については、上記したとおりである。
【0168】
図10に示す水素の製造装置100fでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、CO改質の原料となるCHを膨張タービン186bに導入することにより、膨張タービン186bが回転して発電機187bを駆動し、発電が行われる。膨張タービン186bで膨張して減圧されたCHは、混合器181cに供給されてCOと混合される。混合器181cには、酸性ガス分離装置120によって分離され、凝縮器183eからブロア184eによって回収されたCOおよびスイープガス(CH)を含むガスを追加供給してもよい。混合器181cで混合されたCHおよびCOはCO改質器182cに供給されて、CO改質反応が行われる。
【0169】
続いて、CO改質器182cで生成した改質ガス、原料中の未反応のCO、および事前の加湿のために追加された水蒸気を含む原料ガスが酸性ガス分離装置120に供給されるとともに、酸性ガス分離装置120の透過側(酸性ガス分離膜の透過側)に、スイープガスとしてのCHも供給する。酸性ガス分離装置120では、CO、CH、および水蒸気を含む混合ガスと、Hが富化された原料ガスとが分離され、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、スイープガスの流量を調整することによって調整することができる。
【0170】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、スイープガス(CH)とともに凝縮器183eに導入され、凝縮器183eで水蒸気が液化することによって、液化した水と、COおよびCHを含むガスとに分離され、発電機187bで発生した電力によって駆動されるブロア184eおよび液抜きポンプ185aによってCOおよびCHを含むガスと水とがそれぞれ回収される。ブロア184eによって回収されたCOおよびCH含むガスは、CO改質の原料として再利用することができ、液抜きポンプ185aによって回収された水は、酸性ガス分離装置120に供給される改質ガスの事前の加湿に用いることができる。
【0171】
なお、図10に示す水素の製造装置100fでは、CHの導入により膨張タービン186bが回転することによって得られる動力を、ブロア184eや液抜きポンプ185aを駆動するために用いてもよい。また、水素の製造装置100fにおいて、混合器181cがエゼクタを含む場合、CO改質の原料となるCH(水蒸気改質反応の圧力よりも高い圧力のCH)は、エゼクタの駆動流体として用いてもよい。
【0172】
(水素の製造装置100gおよびそれを用いた水素の製造方法)
図11に示す水素の製造装置100gは、水蒸気改質およびCO改質を行って水素を製造する装置であり、減圧法により酸性ガス膜分離を行う。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0173】
図11に示す水素の製造装置100gは、混合器181g、水蒸気改質およびCO改質を行うための改質器182g、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備えた酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185aを有する。混合器181gおよび改質器182g以外の各部材の説明については、上記したとおりである。
【0174】
混合器181gは、水蒸気改質およびCO改質の原料となるCH、水蒸気、およびCOを改質器182gに供給するためのものである。混合器181gとしては、例えば、ミキサ、気化器、スプレー噴霧器、エゼクタ、これらの二つ以上の組合せ等が挙げられる。
【0175】
改質器182gは、混合器181gから供給されたCH、水蒸気、およびCOを用いて、水蒸気改質およびCO改質を行うためのものである。改質器182gは、上記反応式(II)に示す水蒸気改質、および上記反応式(IV)に示すCO改質を行うことができ、さらに上記反応式(III)に示すCO転化反応を行ってもよい。これにより、CHをHおよびCOに改質し、さらに、COをCOおよびHに転化することができる。
【0176】
図11に示す水素の製造装置100gでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質およびCO改質の原料となるCH、水蒸気(または水)、およびCOを混合器181gに供給する。混合器181gに供給される水蒸気(または水)およびCOは、水蒸気改質およびCO改質の原料として適したものであれば特に限定されず、水素の製造装置100g以外から調達してもよく、図11に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収される水やCOを用いることができる。なお、酸性ガス分離装置120において回収される水およびCOのみでは水蒸気改質およびCO改質の原料として不足する場合、酸性ガス分離装置120において回収される水やCOに、不足分量の水およびCOを追加して、混合器181gに供給してもよい。混合器181gで調整されたCH、水蒸気、およびCOは改質器182gに供給されて、上記した水蒸気改質反応(反応式(II))およびCO改質反応(反応式(IV))が行われ、改質ガスとしてのHおよびCOが生成される。さらに、改質器182gにおいてCO転化反応(反応式(III))を行う場合は、COが追加生成される。
【0177】
改質器182gで生成された改質ガスは、酸性ガス分離装置120に供給される。酸性ガス分離装置120には、改質ガスに加えて、水蒸気(原料中の未反応の水蒸気)も含んだ原料ガスが導入される。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜は、COおよび水蒸気を選択的に透過させることができるため、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとが分離され、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。
【0178】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、COは減圧ポンプ184aによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。減圧ポンプ184aによって回収されたCOは、CO改質の原料として再利用できる。また、液抜きポンプ185aによって回収された水は、水蒸気改質の原料として再利用できる。
【0179】
なお、図11に示す水素の製造装置100gでは、凝縮器183aを用いてCOと水蒸気とを分離する場合を例に挙げて説明したが、凝縮器183aに代えて水蒸気分離膜を用いてCOと水蒸気とを分離してもよい。この場合、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を液化することなく、そのまま混合器181gに供給してもよい。
【0180】
(水素の製造装置100hおよびそれを用いた水素の製造方法)
図12に示す水素の製造装置100hは、水蒸気改質およびCO改質を行って水素を製造する装置であり、水蒸気改質およびCO改質の原料となるCHとして、水蒸気改質反応およびCO改質反応の圧力よりも高い圧力のCHを用いる点が、図11に示す水素の製造装置100gと異なっている。水素の製造装置100hでは、水素の製造装置100gよりも高い圧力のCHを用いることにより、このCHによる差圧発電で得られた電力を、製造装置100hに備えられた機器の作動に用いることができる。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0181】
図12に示す水素の製造装置100hは、混合器181g、改質器182g、酸性ガス分離装置120、凝縮器183a、減圧ポンプ184a、液抜きポンプ185a、膨張タービン186b、発電機187bを有する。これらの各部材の説明については、上記したとおりである。
【0182】
図12に示す水素の製造装置100hでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質の原料となるCHを膨張タービン186bに導入することにより、膨張タービン186bが回転して発電機187bを駆動し、発電機187bで発電が行われる。膨張タービン186bで膨張して減圧されたCHは、混合器181gに供給される。混合器181gで調整されたCH、水蒸気、およびCOは改質器182gに供給されて、水蒸気改質反応およびCO改質反応が行われ、改質ガスとしてのHおよびCOが生成される。さらに、改質器182gにおいて、CO転化反応(反応式(III))を行う場合は、COが追加生成される。
【0183】
続いて、改質器182gで生成した改質ガスおよび水蒸気(原料中の未反応の水蒸気)を含む原料ガスが、酸性ガス分離装置120に供給され、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとに分離されて、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、透過側の圧力を調整することによって調整することができる。
【0184】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、凝縮器183aで水蒸気が液化することによって、液化した水とCOとに分離され、発電機187bで発生した電力によって駆動される減圧ポンプ184aおよび液抜きポンプ185aによってCOおよび水がそれぞれ回収される。減圧ポンプ184aによって回収されたCOは、CO改質の原料として再利用でき、液抜きポンプ185aによって回収された水は、水蒸気改質の原料として再利用できる。
【0185】
なお、図12に示す水素の製造装置100hでは、CHの導入により膨張タービン186bが回転することによって得られる動力を、減圧ポンプ184aや液抜きポンプ185aを駆動するために用いてもよい。また、水素の製造装置100hにおいて、混合器181gがエゼクタを含む場合、水蒸気改質の原料となるCH(水蒸気改質反応およびCO改質反応の圧力よりも高い圧力のCH)は、エゼクタの駆動流体としてもよい。
【0186】
(水素の製造装置100iおよびそれを用いた水素の製造方法)
図13に示す水素の製造装置100iは、水蒸気改質およびCO改質を行って水素を製造する装置であり、スイープ法により酸性ガス膜分離を行う。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0187】
図13に示す水素の製造装置100iは、混合器181g、水蒸気改質およびCO改質を行うための改質器182g、酸性ガス分離膜を有する酸性ガス分離膜モジュールを備えた酸性ガス分離装置120、凝縮器183e、ブロア184e、液抜きポンプ185aを有する。
【0188】
図13に示す水素の製造装置100iでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質およびCO改質の原料となるCH、水蒸気(または水)、およびCOを混合器181gに供給する。混合器181gには、水素の製造装置100i以外から調達される水またはCOに加えて、図13に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収される水またはCOおよびスイープガス(CH)を含むガスを追加供給してもよい。混合器181gで調整されたCH、水蒸気、およびCOは改質器182gに供給されて、水蒸気改質反応およびCO改質反応が行われ、改質ガスとしてのHおよびCOが生成される。さらに、改質器182gにおいてCO転化反応(反応式(III))を行う場合は、COが追加生成される。
【0189】
続いて、改質器182gで生成した改質ガスおよび水蒸気(原料中の未反応の水蒸気)を含む原料ガスが酸性ガス分離装置120に供給され、酸性ガス分離装置120の透過側(酸性ガス分離膜の透過側)には、スイープガスとしてのCHも供給される。酸性ガス分離装置120では、COおよび水蒸気を含む混合ガスとHが富化された原料ガスとが分離されて、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、スイープガスの流量を調整することによって調整することができる。
【0190】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、スイープガス(CH)とともに凝縮器183eに導入され、凝縮器183eで水蒸気が液化することによって、液化した水と、COおよびCHを含むガスとに分離され、COおよびCHを含むガスはブロア184eによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。ブロア184eによって回収されたCOおよびCHを含むガスは、水蒸気改質およびCO改質の原料として再利用することができる。また、液抜きポンプ185aによって回収された水は、水蒸気改質の原料として再利用することができる。
【0191】
なお、図13に示す水素の製造装置100iでは、凝縮器183eを用いてCOおよびCHを含むガスと水蒸気とを分離する場合を例に挙げて説明したが、凝縮器183eに代えて水蒸気分離膜を用いてCOおよびCHを含むガスと水蒸気とを分離してもよい。この場合、水蒸気分離膜で分離された水蒸気を液化することなく、そのまま混合器181gに供給してもよい。
【0192】
(水素の製造装置100jおよびそれを用いた水素の製造方法)
図14に示す水素の製造装置100jは、水蒸気改質およびCO改質を行って水素を製造する装置であり、水蒸気改質およびCO改質の原料となるCHとして、水蒸気改質およびCO改質反応の圧力よりも高い圧力のCHを用いる点が、図13に示す水素の製造装置100iと異なっている。水素の製造装置100jでは、水素の製造装置100iよりも高い圧力のCHを用いることにより、このCHによる差圧発電で得られた電力を、製造装置100jに備えられた機器の作動に用いることができる。以下では、水素の製造装置100a(図5)等で説明したものと同じ部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0193】
図14に示す水素の製造装置100jは、混合器181g、改質器182g、酸性ガス分離装置120、凝縮器183e、ブロア184e、液抜きポンプ185a、膨張タービン186b、発電機187bを有する。これらの各部材の説明については、上記したとおりである。
【0194】
図14に示す水素の製造装置100jでは、次のようにして水素を製造することができる。まず、水蒸気改質の原料となるCHを膨張タービン186bに導入することにより、膨張タービン186bが回転して発電機187bを駆動し、発電が行われる。膨張タービン186bで膨張して減圧されたCHは、混合器181gに供給される。混合器181gに供給される水蒸気(または水)およびCOは、水素の製造装置100j以外から調達してもよく、図14に示すように、後述する酸性ガス分離装置120において回収される水やCOおよびスイープガス(CH)を含むガスを用いてもよい。混合器181gで調整されたCH、水蒸気、およびCOは改質器182gに供給されて、少なくとも水蒸気改質反応およびCO改質反応が行われる。
【0195】
続いて、改質器182gで生成した改質ガスおよび水蒸気(原料中の未反応の水蒸気)を含む原料ガスが酸性ガス分離装置120に供給されるとともに、酸性ガス分離装置120の透過側(酸性ガス分離膜の透過側)に、スイープガスとしてのCHも供給する。酸性ガス分離装置120では、CO、CH、および水蒸気を含む混合ガスと、Hが富化された原料ガスとが分離されて、粗精製水素が得られる(図中、H)。酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を透過する透過ガスの組成(COおよび水蒸気の割合)は、スイープガスの流量を調整することによって調整することができる。
【0196】
酸性ガス分離装置120に備わる酸性ガス分離膜を選択的に透過したCOおよび水蒸気は、スイープガス(CH)とともに凝縮器183eに導入され、凝縮器183eで水蒸気が液化することによって、液化した水と、COおよびCHを含むガスとに分離され、COおよびCHを含むガスはブロア184eによって回収され、水は液抜きポンプ185aによって回収される。ブロア184eによって回収されたCOおよびCHを含むガスは、水蒸気改質およびCO改質の原料として再利用することができる。また、液抜きポンプ185aによって回収された水は、水蒸気改質の原料として再利用することができる。
【0197】
なお、図14に示す製造装置100jでは、CHの導入により膨張タービン186bが回転することによって得られる動力を、ブロア184eや液抜きポンプ185aを駆動するために用いてもよい。また、水素の製造装置100jにおいて、混合器181gがエゼクタを含む場合、水蒸気改質の原料となるCH(水蒸気改質反応の圧力よりも高い圧力のCH)は、エゼクタの駆動流体としてもよい。
【0198】
上記した水素の製造装置100a~100jおよびそれらを用いた水素の製造方法は、炭化水素の改質反応により生成した改質ガスに含まれる水素を燃料とする燃料電池システムに用いることができる。
【実施例
【0199】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0200】
(実施例1)
水172.33重量部と、化学架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクペック HV-501E、イオン交換容量:13.9mmoleq/g)4重量部および非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクパーナ AP-40F(40%Na鹸化)、イオン交換容量:12.4mmoleq/g)0.8重量部とを原料タンクに添加し、混合して、分散液を得た。この分散液に、50重量%水酸化セシウム水溶液(ロックウッドリチウムジャパン社製)28.80重量部を添加し、混合した後、L-プロリン(東京化成工業社製)11.05重量部と10重量%界面活性剤(AGCセイミケミカル社製、商品名:サーフロン S-242)水溶液1.2重量部を加えて混合して、塗工液を得た(塗工液中の水の量:86.1重量%)。得られた塗工液を、脱泡装置(シンキー社製、商品名:自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310)を用いて脱泡した。
【0201】
脱泡した塗工液を、第1多孔層として使用する疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロン HP-010-50、厚さ:50μm、平均細孔直径:0.1μm、空孔率:73体積%、温度25℃における水の接触角:113度)の片面上に温度20~25℃で塗布し、塗工液の膜を形成した。
【0202】
続いて、第1多孔層上に形成された塗工液の膜に、第2多孔層として、上記第1多孔層と同じ疎水性PTFE多孔膜を積層して積層体を得た。この積層体を恒温槽にて、温度100℃で約15分間乾燥して、組成物膜(厚さ:50μm、組成物膜中の水の量:50重量%以下)を形成し、酸性ガス分離膜を得た。
【0203】
(実施例2)
水204.63重量部と、化学架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクペック HV-501E、イオン交換容量:13.9mmoleq/g)4.41重量部および非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクパーナ AP-40F(40%Na鹸化)、イオン交換容量:12.4mmoleq/g)0.88重量部とを原料タンクに添加し、混合して、分散液を得た。この分散液に、50重量%水酸化セシウム水溶液(ロックウッドリチウムジャパン社製)31.10重量部を添加し、混合した後、サルコシン(東京化成工業社製)9.63重量部と10重量%界面活性剤(AGCセイミケミカル社製、商品名:サーフロン S-242)水溶液1.34重量部を加えて混合して、塗工液を得た(塗工液中の水の量:87.9重量%)。得られた塗工液を、脱泡装置(シンキー社製、商品名:自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310)を用いて脱泡した。
【0204】
脱泡した塗工液を、第1多孔層として使用する疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロン HP-010-50、厚さ:50μm、平均細孔直径:0.1μm、空孔率:73体積%、温度25℃における水の接触角:113度)の片面上に温度20~25℃で塗布し、塗工液の膜を形成した。
【0205】
続いて、第1多孔層上に形成された塗工液の膜に、第2多孔層として、上記第1多孔層と同じ疎水性PTFE多孔膜を積層して積層体を得た。この積層体を恒温槽にて、温度100℃で約15分間乾燥して、組成物膜(厚さ:30μm、組成物膜中の水の量:50重量%以下)を形成し、酸性ガス分離膜を得た。
【0206】
(比較例1)
水170.92重量部と、化学架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクペック HV-501E、イオン交換容量:13.9mmoleq/g)4重量部および非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクパーナ AP-40F(40%Na鹸化)、イオン交換容量:12.4mmoleq/g)0.8重量部とを原料タンクに添加し、混合して、分散液を得た。この分散液に、50重量%水酸化セシウム水溶液(ロックウッドリチウムジャパン社製)38.09重量部を添加し、混合した後、10重量%亜テルル酸ナトリウム水溶液3.18重量部と10重量%界面活性剤(AGCセイミケミカル社製、商品名:サーフロン S-242)水溶液1.2重量部を加えて混合して、塗工液を得た(塗工液中の水の量:87.6重量%)。得られた塗工液を、脱泡装置(シンキー社製、商品名:自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310)を用いて脱泡した。
【0207】
脱泡した塗工液を、第1多孔層として使用する疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロン HP-010-50、厚さ:50μm、平均細孔直径:0.1μm、空孔率:73体積%、温度25℃における水の接触角:113度)の片面上に温度20~25℃で塗布し、塗工液の膜を形成した。
【0208】
続いて、第1多孔層上に形成された塗工液の膜に、第2多孔層として、上記第1多孔層と同じ疎水性PTFE多孔膜を積層して積層体を得た。この積層体を恒温槽にて、温度100℃で約15分間乾燥して、組成物膜(厚さ:50μm、組成物膜中の水の量:50重量%以下)を形成し、酸性ガス分離膜を得た。
【0209】
(比較例2)
水166.73重量部と、化学架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクペック HV-501E、イオン交換容量:13.9mmoleq/g)4重量部および非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製、商品名:アクパーナ AP-40F(40%Na鹸化)、イオン交換容量:12.4mmoleq/g)0.8重量部とを原料タンクに添加し、混合して、分散液を得た。この分散液に、50重量%水酸化セシウム水溶液(ロックウッドリチウムジャパン社製)38.09重量部を添加し、混合した後、L-プロリン(東京化成工業社製)7.37重量部と10重量%界面活性剤(AGCセイミケミカル社製、商品名:サーフロン S-242)水溶液1.2重量部を加えて混合して、塗工液を得た(塗工液中の水の量:85.6重量%)。得られた塗工液を、脱泡装置(シンキー社製、商品名:自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310)を用いて脱泡した。
【0210】
脱泡した塗工液を、第1多孔層として使用する疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロン HP-010-50、厚さ:50μm、平均細孔直径:0.1μm、空孔率:73体積%、温度25℃における水の接触角:113度)の片面上に温度20~25℃で塗布し、塗工液の膜を形成した。
【0211】
続いて、第1多孔層上に形成された塗工液の膜に、第2多孔層として、上記第1多孔層と同じ疎水性PTFE多孔膜を積層して積層体を得た。この積層体を恒温槽にて、温度100℃で約15分間乾燥して、組成物膜(厚さ:30μm、組成物膜中の水の量:50重量%以下)を形成し、酸性ガス分離膜を得た。
【0212】
(試験例1:スイープ条件)
図15に示す、酸性ガス分離膜セル61を備えた酸性ガス分離装置を用いて、実施例1および2並びに比較例1および2の酸性ガス分離膜のCOパーミアンスおよびHeパーミアンスを測定した。具体的には、作製した酸性ガス分離膜を適切な大きさにカットして平膜形状とし、これをステンレス製の酸性ガス分離膜セル61の供給側室62と透過側室63の間に固定した。酸性ガス分離膜セルの温度は恒温槽により93℃に設定した。原料ガス(CO:13.6体積%、He:67.7体積%、HO:18.7体積%)を338.7NmL/minの流量で酸性ガス分離膜セル61の供給側室62に供給した。また、スイープガス(Ar:88.2体積%、HO:11.8体積%)を31.6NmL/minの流量で酸性ガス分離膜セル61の透過側室63に供給した。ここで、水を定量送液ポンプ68および70で送入し、加熱して蒸発させて、HOが上記混合比率となるように調整した。供給側室62の圧力は、非透過ガスの排出路の途中の冷却トラップ64の下流側に設けられた背圧調整器65によって125kPaA(絶対圧)に調整した。また、冷却トラップ66とガスクロマトグラフ67の間にも背圧調整器69が設けられており、これによって透過側室63の圧力を大気圧に調整した。
【0213】
酸性ガス分離装置の運転開始後、定常状態に到達した時点で、透過側室63から排出された透過ガスに含まれる水蒸気を冷却トラップ66で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ67で分析してCOパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))およびHeパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))を算出し、それらの値から下記式:
CO/He分離係数
=COパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))/Heパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))
によってCO/He分離係数を算出した。結果を表1に示す。また、表1には、成分(A)~(C)の種類および量、並びにβの値も記載する。なお、比較例2の酸性ガス分離膜は試験例1の途中で破けたため、CO/He分離係数を測定できなかった。
【0214】
【表1】
【0215】
(試験例2:減圧条件)
図16に示す、酸性ガス分離膜セル61を備えた酸性ガス分離装置を用いて、実施例1の酸性ガス分離膜のCOパーミアンスおよびHeパーミアンスを測定した。具体的には、作製した酸性ガス分離膜を適切な大きさにカットして平膜形状とし、これをステンレス製の酸性ガス分離膜セル61の供給側室62と透過側室63の間に固定した。酸性ガス分離膜セルの温度は恒温槽により93℃に設定した。原料ガス(CO:13.6体積%、He:28.0体積%、HO:58.4体積%)を660.8NmL/minの流量で酸性ガス分離膜セル61の供給側室62に供給した。ここで、水を定量送液ポンプ68で送入し、加熱して蒸発させて、HOが上記混合比率となるように調整した。供給側室62の圧力は、非透過ガスの排出路の途中の冷却トラップ64の下流側に設けられた背圧調整器65によって125kPaA(絶対圧)に調整した。また、冷却トラップ66とガスクロマトグラフ67の間に背圧調整器69および減圧ポンプ71が設けられており、これらによって透過側室63の圧力を20kPaAに調整した。
【0216】
酸性ガス分離装置の運転開始後、定常状態に到達した時点で、透過側室63から排出された透過ガスに含まれる水蒸気を冷却トラップ66で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ67で分析してCOパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))およびHeパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))を算出し、それらの値から下記式:
CO/He分離係数
=COパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))/Heパーミアンス(mol/(m×秒×kPa))
によってCO/He分離係数を算出した。結果を表2に示す。また、表2には、成分(A)~(C)の種類および量、並びにβの値も記載する。
【0217】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の組成物は、酸性ガス分離膜を製造するために有用である。
【0219】
本願は、日本で出願された特願2018-172248号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。
【符号の説明】
【0220】
1 酸性ガス分離膜エレメント
3 供給側流路部材
4 透過側流路部材
5 中心管
5a、5b 中心管の端部
10 酸性ガス分離膜
20、20’ 酸性ガス分離膜モジュール
21 混合ガス供給部
22 非透過ガス排出部
23 透過ガス排出部
24 仕切り
25 酸性ガス分離膜エレメントの供給側端部
26 酸性ガス分離膜エレメントの排出側端部
27、27’ ハウジング
28 閉塞部材
29a 接続部
29b 遮断部
30 スイープガス供給部
41 遮断部材
42 仕切部材
43 中心管に設けられた孔
61 酸性ガス分離膜セル
62 供給側室
63 透過側室
64 冷却トラップ
65 背圧調整器
66 冷却トラップ
67 ガスクロマトグラフ
68 定量送液ポンプ
69 背圧調整器
70 定量送液ポンプ
71 減圧ポンプ
100a~100j 水素の製造装置
120 酸性ガス分離装置
181a、181c、181g 混合器
182a 水蒸気改質器
182c 二酸化炭素(CO)改質器
182g 改質器
183a、183e 凝縮器
184a 減圧ポンプ
184e ブロア
185a 液抜きポンプ
186b 膨張タービン
187b 発電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16