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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】反射光学素子の基板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231116BHJP
   G03F 1/60 20120101ALI20231116BHJP
   G03F 1/22 20120101ALI20231116BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20231116BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20231116BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20231116BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F1/60
G03F1/22
G02B5/08 A
G02B1/00
C03C3/06
C03B20/00 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021500216
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019068176
(87)【国際公開番号】W WO2020008068
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】102018211234.7
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】エリック エヴァ
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-162359(JP,A)
【文献】特開平09-235134(JP,A)
【文献】特開2003-286040(JP,A)
【文献】特開2014-199435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 1/00-1/86
G02B 1/00
G02B 5/08
C03C 3/06
C03B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被コーティング表面領域を有する、チタンドープ石英ガラス製の極紫外波長域用の反射光学素子の基板であって、前記チタンドープ石英ガラスは、少なくとも前記表面領域(511)付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合を有することを特徴とする基板。
【請求項2】
請求項1に記載の基板において、前記チタンドープ石英ガラスは、少なくとも前記表面領域(511)付近で1×1017/cm以上、1×1018/cm以上、又は1×1019/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合、及び/又は1×1017/cm以上、1×1018/cm以上、又は1×1019/cm以上のSi-Si結合の割合を有することを特徴とする基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板において、前記チタンドープ石英ガラスは、少なくとも前記表面領域(511)付近で100重量ppm以下の平均水酸基含有量を有することを特徴とする基板。
【請求項4】
請求項3に記載の基板において、前記チタンドープ石英ガラスは、前記表面領域(511)付近で水酸基含有量の20%以下のマトリクス停止剤含有量を有することを特徴とする基板。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の基板において、前記チタンドープ石英ガラスは、少なくとも前記表面領域(511)付近でフッ化ケイ素又は塩化ケイ素を有することを特徴とする基板。
【請求項6】
被コーティング表面領域を有する、チタンドープ石英ガラス製の極紫外波長域用の反射光学素子の基板であって、前記チタンドープ石英ガラスは、表面領域(511)に対して垂直な仮想線(513)に沿って500nm以上の長さ(517)にわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有することを特徴とし、前記チタンドープ石英ガラスは、さらに、少なくとも前記表面領域(511)付近で1×10 16 /cm 以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×10 16 /cm 以上のSi-Si結合の割合を有することを特徴とする基板。
【請求項7】
請求項6に記載の基板において、前記チタンドープ石英ガラスは、前記表面領域(511)に対して垂直な仮想線(513)に沿って500nm以上の長さ(517)にわたり1×1019分子/cmを超える、又は1×1020分子/cmを超える水素含有量を有することを特徴とする基板。
【請求項8】
反射コーティングを有する表面領域を有する請求項1~のいずれか1項に記載の基板を有する極紫外波長域用の反射光学素子。
【請求項9】
請求項に記載の反射光学素子において、前記基板(51)は、前記反射コーティング(54)を有する前記表面領域(511)に対して垂直な仮想線(513)に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える、1×1019分子/cmを超える、又は1×1020分子/cmを超える水素含有量を有することを特徴とする反射光学素子。
【請求項10】
請求項に記載の反射光学素子において、500nm以上の前記長さ(517)は、前記反射コーティング(54)から1mm以下、100μm以下、20μm以下、又は5μm以下の距離にあることを特徴とする反射光学素子。
【請求項11】
請求項又は10に記載の反射光学素子において、前記基板(51)は、前記反射コーティング(54)を有する前記表面領域(511)に対して垂直な前記仮想線(513)に沿って前記反射コーティング(54)から1mm以上、又は1cm以上の距離で5×1017分子/cm未満、1×1017分子/cm未満、又は1×1016分子/cm未満の水素含有量を有することを特徴とする反射光学素子。
【請求項12】
請求項11のいずれか1項に記載の反射光学素子において、前記基板(51)は、前記反射コーティング(54)の塗布後最大1ヶ月の期間内で、前記反射コーティング(54)を有する前記表面領域(511)に対して垂直な仮想線(513)に沿って500nm以上の長さ(517)にわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有し、且つ前記反射コーティング(54)の塗布後1ヶ月~前記反射コーティング(54)の塗布後7年の期間内で1×1018分子/cmを超える水素含有量を有することを特徴とする反射光学素子。
【請求項13】
請求項10又は12に記載の反射光学素子であって、前記基板はさらに別の表面領域を有し、該さらに別の表面領域は、前記基板の前記反射コーティングを有する前記表面領域とは反対側に位置して反射コーティングを有しない反射光学素子において、前記基板(51)は、前記さらに別の表面領域の表面から2mm以下の距離で前記仮想線(513)に沿ってさらに500nm以上の長さにわたり、前記反射コーティングから1mm以下の距離で前記長さ(517)にわたる水素含有量の半分以下~1/20以上の水素含有量を有することを特徴とする反射光学素子。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の反射光学素子を有する光学系。
【請求項15】
請求項14に記載の光学系又は請求項10~13のいずれか1項に記載の反射光学素子を有するEUVリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被コーティング表面領域を有する、チタンドープ石英ガラス製の極紫外波長域用の反射光学素子の基板に関する。本発明はさらに、反射コーティングを有する表面領域を有する上記基板を有する、極紫外波長域用の反射光学素子に関する。本発明はさらに、上記反射光学素子を有する光学系と、当該光学系又は上記反射光学素子を有するEUVリソグラフィ装置とに関する。本願は、参照により全体を援用する独国出願の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ法による例えば半導体コンポーネントの製造中に製造される構造をさらに微細化できるように、使用される光の短波長化が進められている。使用される作動波長域が極紫外線(EUV)、例えば約5nm~20nmの波長にある場合、透過型のレンズ素子のような素子の使用は不可能となり、各作動波長に適合した反射コーティングを有するミラー素子から照明及び投影レンズが作製される。
【0003】
ゼロ膨張材料として知られるものは、室温をわずかに上回るリソグラフィ作業中に生じる温度の範囲でゼロに近くなる熱膨張率を有するものであり、特にEUVリソグラフィ用の反射光学素子の基板材料にこれが用いられる。ここで特に重要なのは、ガラスセラミック及びチタンドープ石英ガラスである。これらの材料は、特定の材料に応じて変わる温度で、温度の関数としての相対線膨張の温度に従った微分としてここでは定義される熱膨張率がゼロになるように製造され得る。チタンドープ石英ガラスの場合、この効果は添加剤の含有量の影響を受けることがあり、ガラスセラミックの場合、厳密に制御された再加熱サイクルでの再結晶過程の影響を受けることがある。
【0004】
EUVリソグラフィ装置は、像平面へのマスクの結像に用いられる反射光学素子がその表面形状に関して高精度であることに依存する。同様に、マスクは、EUV波長域用の反射光学素子として、その交換がEUVリソグラフィ装置の作動費用に少なからず反映されるので、その表面形状に関して高精度であるべきである。
【0005】
従来の表面補正方法は、機械的に又はイオン照射により光学素子から基板材料を除去することに通常は基づく。表面補正のさらに別の手法は、電磁放射又は好ましくは電子での照射により光学素子の基板材料を局所的に圧縮することである。この手順は、例えば特許文献1に記載されており、コーティング済みの基板、特に反射光学素子に用いることもできることが有利である。
【0006】
しかしながら、照射による圧縮により実行された表面形状の補正は、特に反射光学素子の貯蔵及び作動時に緩和効果を示し、これは結像特性に悪影響を及ぼし得ることが分かった。特に、数年後に補正が完全に後退することは否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/050199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、反射光学素子の表面形状の長期安定性の改善を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、第1態様において、被コーティング表面領域を有する、チタンドープ石英ガラス製の極紫外波長域用の反射光学素子の基板であって、チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合を有する基板により達成される。
【0010】
この態様及び下記の態様は、ガラスマトリクスの構造を目標通りに変えることにより基板材料の圧縮後の緩和に影響を及ぼそうとする手法に基づく。
【0011】
ガラスマトリクス中のペルオキシ結合(Si-O-O-Si)又はSi-Si結合(酸素欠乏欠陥としても知られる)がいわゆる所定切断点を形成し、これは圧縮で用いられるような特に電子の高エネルギー照射の影響下で特に容易に切断されるが、通常のマトリクス結合とは対照的に容易には再結合できないと思われる。このような非化学量論的マトリクスを有する基板は圧縮が容易であり得る。しかしながら、これは、例えばより小さなSiOリング形態が形成されるか又は石英ガラスの四面体基本構造内の通常のSi-O結合が切断される、化学量論的マトリクスを有する基板よりも緩和しない。したがって、ここで提案される基板の表面形状は、より良い長期安定性を有するはずである。
【0012】
チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合、及び/又は1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-Si結合の割合を有することが好ましい。Si-O-O-Si結合又はSi-Si結合の形態の所定切断点がマトリクス中に多く存在するほど、照射により行われた表面補正の長期緩和の抑制が容易になる。
【0013】
好ましい実施形態では、チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で100重量ppm以下の平均水酸基含有量を有する。特にチタンドープ石英ガラスのマトリクスにおける圧縮の緩和が、ガラスマトリクス中での変位又は切断された結合の再結合を通して構造的に起こり得ることが分かった。ガラスマトリクスは、特にマトリクス停止剤に富む場合に変位可能である。マトリクス停止剤は、各ケイ素又はチタン原子がいずれの場合も1つの酸素原子と4配位結合される理想的な石英ガラスマトリクスの厳密な四面体構造を妨げる欠陥を意味すると、ここでは理解されたい。水酸基のほかに、マトリクス停止剤は、例えばSiF、SiOH、SiH、TiF、TiOH、TiH、TiO、及びTiOを含む。長期間にわたる圧縮後の緩和の可能性をさらに低減するために、所定切断点の最大数と並行して水酸基の数をできる限り少なくすることが目的である。
【0014】
かかる実施形態では、圧縮後の緩和が少ないという効果をさらに高めることができるように、チタンドープ石英ガラスは、表面領域付近で水酸基を有するもの以外に水酸基含有量の20%以下のさらに他のマトリクス停止剤の含有量を有することが好ましい。
【0015】
チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で1×1016分子/cm未満の水素含有量を有することが有利である。これは、特に高温では水素が脆弱結合部でのSiO及びSiOHの形成をもたらし得ることで、これがさらにマトリクス停止剤として働き得ることが示されているからである。
【0016】
チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近でフッ化ケイ素又は塩化ケイ素を有することが好ましい。
【0017】
第2態様において、上記目的は、被コーティング表面領域を有する、チタンドープ石英ガラス製の極紫外波長域用の反射光学素子の基板であって、チタンドープ石英ガラスは、表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有する基板により達成される。
【0018】
この手法は、水素を大量に充填したチタンドープ石英ガラスが、水素の充填が少ないチタンドープ石英ガラスよりも照射時に大きな材料圧縮を示し得るという仮定に基づく。Si-O-Si>Si+Si-O形態の切断されたマトリクス結合は、過剰な水素の存在下で反応してSiH及びSiOHを形成する一方で、水素がない場合には再びある程度再結合すると思われる。例えば水素含有雰囲気への導入又は水素含有ガスでのパージにより、多量の水素を水素低含有で少なくとも局所的に圧縮した基板に添加した場合、転位したがエネルギー的に不利な結合がそれにより攻撃されて飽和する可能性があり、これが遅い緩和を抑制することになると思われる。圧縮前に多量の水素を基板に供給した場合、圧縮はおそらくマトリクスの転位につながるというよりも結合の永久的な切断につながる。これにより、緩和速度が低下することで、基板の表面のより良い長期安定性を達成できるはずである。基板は、補正目的の圧縮前、圧縮中、及び圧縮直後に水素含有量が増加した厚さ500nm以上の領域を表面領域付近に有することが好ましい。
【0019】
チタンドープ石英ガラスは、緩和速度を大幅に下げることができるように、表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり1×1019分子/cmを超える、特に好ましくは1×1020分子/cmを超える水素含有量を有することが好ましい。ここで提案される基板のチタンドープ石英ガラスは、特に好ましくは、照射前、照射中、及び/又は照射直後に上記の高い水素含有量を有する。
【0020】
チタンドープ石英ガラスは、照射による圧縮後の緩和過程をさらに低減するために、少なくとも表面領域付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合を有することが有利である。チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合、及び/又は1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-Si結合の割合を有すれば好ましい。Si-O-O-Si結合又はSi-Si結合の形態の所定切断点がマトリクス中に多く存在するほど、照射により行われた表面補正の長期緩和の抑制が容易になる。
【0021】
第3態様において、上記目的は、反射コーティングを有する表面領域を有する上述の基板を有する極紫外波長域用の反射光学素子により達成される。
【0022】
ここで提案された特別な基板材料により、上記反射光学素子は、照射によるその表面形状とそれに対応した基板材料の圧縮に関する補正に特に適している。その理由は、この圧縮の緩和が、特に数ヶ月や数年という長期間にわたり従来のチタンドープ石英ガラス製の基板の場合よりも顕著ではないからである。各反射光学素子に望まれる基板の表面プロファイルは、反射コーティングの塗布前でも本質的に整形することができ、圧縮につながり得る、したがって少なくとも照射領域の表面プロファイルの変化につながり得る照射を、この目的で用いることもできる。コーティング後に、各反射光学素子を例えば所望の機能に関して個別に又はさらに他の光学素子と組み合わせて調べてから、適宜細かく補正することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、基板は、緩和速度を大幅に下げることができるように、反射コーティングを有する表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える、好ましくは1×1019分子/cmを超える、特に好ましくは1×1020分子/cmを超える水素含有量を有する。
【0024】
500nm以上の長さは、特に好ましくは、反射コーティングからの距離が1mm以下、好ましくは100μm以下、特に好ましくは20μm以下、特に非常に好ましくは5μm以下である。その理由は、所望の高い水素含有量が、特に、緩和の最小化しようとする補正も実行される反射コーティングの直下の領域に形成されれば十分であることが分かったからである。
【0025】
基板は、特に好ましくは、反射コーティングを有する表面領域に対して垂直な仮想線に沿って反射コーティングから1mm以上、好ましくは1cm以上の距離で5×1017分子/cm未満、好ましくは1×1017分子/cm未満、特に好ましくは1×1016分子/cm未満の水素含有量を有する。基板は、その内部では、すなわち特に反射コーティングの直下の領域以外は水素含有量が少ないので、チタンドープ石英ガラスの他の材料特性が高すぎる水素含有量により悪影響を受けないことが確実になり得る。
【0026】
基板は、反射コーティングの塗布後最大1ヶ月の期間内で、反射コーティングを有する表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有し、且つ反射コーティングの塗布後1ヶ月~反射コーティングの塗布後7年の期間内で1×1018分子/cmを超える水素含有量を有することが有利である。水素含有量のこの長期挙動により、反射光学素子に導入された補正の緩和が数年という期間でも最低限になり得ると予想される。
【0027】
基板を有する反射光学素子において、基板が、基板の反射コーティングを有する表面領域とは反対側に位置して反射コーティングを有しないさらに別の表面領域を有する場合、基板は、仮想線に沿ってこのさらに別のコーティングされていない表面領域の表面から2mm以下の距離でさらに500nm以上の長さにわたり、反射コーティングから1mm以下の距離でこの長さにわたる水素含有量の半分以下~1/20以上の水素含有量を有することが好ましい。
【0028】
さらに、上記目的は、上述の反射光学素子を有する光学系と、当該光学系を有するか又は上述の反射光学素子を有するEUVリソグラフィ装置とにより達成される。このように、長期安定性が良く良好な光学特性を有し得る光学系又はEUVリソグラフィ装置を提供することができる。ここで提案される基板に基づく反射光学素子のさらなる好ましい用途は、例えばウェーハ又はマスクの検査システム用の、又は例えば天体物理学、特に地球外物理学での分光用途の光学系を含む。
【0029】
好ましい例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】EUVリソグラフィ装置の一実施形態を概略的に示す。
図2】反射光学素子案の第1実施形態の概略図を示す。
図3】反射光学素子案の第2実施形態の概略図を示す。
図4】第1時点での反射光学素子の基板の幅にわたる水素含有量の分布を示す。
図5】第2時点での反射光学素子の基板の幅にわたる水素含有量の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、EUVリソグラフィ装置10を概略的に示す。基本的なコンポーネントは、照明系14、フォトマスク17、及び投影系20である。EUVリソグラフィ装置10は、その内部で吸収されるEUV放射ができる限り少ないように真空条件下で作動される。
【0032】
プラズマ源又はシンクロトロンが、例えば放射源12として働き得る。ここに示す例では、放射源はプラズマ源である。約5nm~20nmの波長域の放出された放射線は、コレクタミラー13により最初に集束される。作動ビームは、続いて照明系14に導入される。図1に示す例では、照明系14は2つのミラー15、16を有する。ミラー15、16は、ウェーハ21に結像しようとする構造を有するフォトマスク17へビームを導く。フォトマスク17は、同様にEUV及び軟X線波長域用の反射光学素子であり、製造プロセスに応じて交換される。投影系20を用いて、フォトマスク17が反射したビームがウェーハ21に投影され、フォトマスクの構造はそれにより上記ウェーハに結像される。図示の例では、投影系20は2つのミラー18、19を有する。投影系20及び照明系14の両方が、1つだけ又は3つ、4つ、5つ、若しくはそれ以上のミラーをそれぞれ有し得ることを指摘しておく。
【0033】
原理上、EUVリソグラフィ装置10の全ての反射光学素子13、15、16、17、18、19が、被コーティング表面領域を有するチタンドープ石英ガラス製の基板を有することができ、チタンドープ石英ガラスは、少なくとも表面領域付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合、又は表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有する。長期にわたり安定した表面プロファイルの微細な補正を実行できる可能性が、特に投影系20のミラーの場合に重要だが、それは、投影系が可能な限り正確な光学特性を理想としては有するべきだからである。上記反射光学素子は、それぞれの基板において、少なくとも反射コーティングを有する表面領域に対して垂直な仮想線に沿って500nm以上の長さにわたり5×1018分子/cmを超える、好ましくは1×1019分子/cmを超える、特に好ましくは1×1020分子/cmを超える水素含有量を有し得る。
【0034】
ここに示す例では、照明系のミラー15、16、フォトマスク17、及び投影系のミラー18、19は、図2及び図3に概略的に示すように、多層系54に基づいた反射コーティングを有する準垂直入射用のミラー50である。これは、例えばリソグラフィ露光を実行する使用波長での屈折率の実部が大きい材料の層(スペーサ57とも称する)と、使用波長での屈折率の実部が小さい材料の層(アブソーバ56とも称する)とを交互に施した層を含み、アブソーバ・スペーサ対がスタック55を形成する。ある意味で、これにより、ブラッグ反射が起こる吸収層に相当する格子面を有する結晶が模倣される。個々の層56、57の厚さは、また反復スタック55の厚さも、達成しようとするスペクトル又は角度依存反射プロファイルに応じて、多層系54全体で一定であってもよく又は変わってもよい。各使用波長の最大反射率を高めるために、アブソーバ56及びスペーサ57からなる基本構造にさらに他の吸収性のより高い材料及びより低い材料を補うことにより、反射プロファイルに目標通りに影響を及ぼすこともできる。そのために、スタックによってはアブソーバ及び/又はスペーサ材料を相互に交換してもよく、又はスタックを2つ以上のアブソーバ及び/又はスペーサ材料から構成してもよい。アブソーバ及びスペーサ材料は、反射率を最適化するために全てのスタックにわたって厚さが一定であっても変わってもよい。さらに、スペーサ及びアブソーバ層57、56間に拡散バリアとして追加層を設けることも可能である。例えば13.4nmの使用波長で一般的な材料の組み合わせは、アブソーバ材料としてのモリブデン及びスペーサ材料としてのケイ素である。この場合、スタック55は通常は7nm弱の厚さを有し、スペーサ層57は通常はアブソーバ層56よりも厚い。
【0035】
ここに示す例では、反射コーティング52は任意の保護層53もさらに有し、これは2つ以上の層からなることもできる。例えばモリブデン・ケイ素多層系の場合、保護層53は、約13.5nmの波長での使用のために、真空を遮断するものとして窒化ケイ素の層及びルテニウムの層から特に構成され得る。同じくEUV波長域の他の波長用のさらなる適当な材料の組み合わせが、当業者には既知である。
【0036】
原理上、ここで提案される反射光学素子は、斜入射用に設計することもできる。そのために、全反射現象に基づくEUV放射を反射する1つ又は少数の金属層を基板上に設けることができる。
【0037】
コーティング54は、チタンドープ石英ガラス製の基板51上に配置される。極紫外線波長域用の反射光学素子、例えばEUVリソグラフィの投影系のミラーの基板51は、被コーティング表面領域511を有し、これはここでは記載のようにコーティング済みである。基板51は、少なくとも表面領域511付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合を有する。チタンドープ石英ガラスが、少なくとも表面領域511付近で1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合、及び/又は1×1017/cm以上又はさらに5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上又はさらに5×1018/cm以上、特に好ましくは1×1019/cm以上又はさらに5×1019/cm以上、特に非常に好ましくは1×1020/cm以上のSi-Si結合の割合を有すれば、特に有利である。
【0038】
石英ガラスマトリクス中のこれらの結合の割合が高いほど、高エネルギー照射下で特に容易に切断される所定切断点が多くなる。結果として、対応するチタンドープ石英ガラスは、高エネルギー照射下で特に良く圧縮することができる。これらの結合は、通常のマトリクス結合ほど容易に再結合できない、すなわち放射線誘発結合後に容易に元の状態に戻らないので、このような基板は、チタンドープ石英ガラスに基づく従来の基板よりも緩和を示さない。このような組成を有するチタンドープ石英ガラスは、Si-O-O-Si結合の割合を増加させた酸化条件下若しくはSi-Si結合の割合を増加させた還元条件下で、火炎加水分解で又はスート法により得ることができる。火炎加水分解の場合、例えば過剰な酸素(酸化条件)で又は過剰な水素(還元条件)で火炎が作動され得る。スート法の場合、酸化条件のために、SiO粉末が高温の酸素、亜酸化窒素、又は水蒸気雰囲気で代わりに又はさらに処理され得る。還元条件を達成するためには、高温による物理的乾燥及び/又はハロゲンを添加した真空又は化学的乾燥の適用を行うことができ、例えば塩化ケイ素又はフッ化ケイ素が形成されるようになる。
【0039】
変形形態では、基板51はさらに、少なくとも表面領域511付近で100重量ppm以下の平均水酸基含有量を有することにより、マトリクス停止剤の数を減少させ且つ圧縮後の緩和の確率を減らすようにする。基板51は、特に好ましくは、緩和の確率をさらに減らすために、少なくとも表面領域514付近で水酸基含有量の20%以下のマトリクス停止剤含有量を有する。OH基に加えてさらに他のマトリクス停止剤は、例えばSiOH、SiF、SiH、TiOH、TiF、TiH、TiO2、TiOであり得る。このような基板のブランクは、スート法を用いて製造されることが好ましい。水酸基含有量は、特に、乾燥又は特に乾燥した雰囲気中での製造及び貯蔵により減り得る。
【0040】
この変形形態では、基板は、チタンドープ石英ガラスの高純度により得られる効果がSiOH及びSiH等の水素関連マトリクス停止剤のわずかな増加により再び減るリスクを冒さないように、表面領域511付近で又は基板51のさらに内部で1×1016分子/cm未満の水素含有量を有することが有利である。水素含有量は、例えば燃料として酸水素ガスの代わりに天然ガス又はメタンを用いることにより、例えば火炎加水分解の場合に低水素還元雰囲気中で石英ガラスの直接堆積を実行することにより減らすことができる。スート法を用いて堆積させた石英ガラスは、特に添加されない限りは先験的に水素を含まない。
【0041】
図3に概略的に示す第2変形形態では、基板51は、表面領域511に対して垂直な仮想線513に沿って500nm以上の長さ517にわたり5×1018分子/cmを超える、好ましくは1×1019分子/cmを超える、特に好ましくは1×1020分子/cmを超える水素含有量を有する。結果として、高エネルギー照射による圧縮中に、圧縮の緩和を低減することができる永久的に切断された結合をより多く発生させることができる。ここに示す例では、水素含有量を増加させた領域515が、反射コーティング54の下の表面領域511に位置する。基板51が特に高い水素含有量を有する500nmにわたる長さ517は、ここに示す例では、反射コーティング54から1mm以下、好ましくは100μm以下、特に好ましくは20μm以下、特に非常に好ましくは5μm以下の距離にあり、その結果として基板51は、反射コーティング54のできる限り近くに所望の高水素含有量を有する。従来のチタンドープ石英ガラスでも起こり得るように、表面領域511に対して垂直な仮想線513に沿った反射コーティング54からの距離が大きいほど、ここに示す例の基板51の水素含有量が少なくなる。特に、基板51は、反射コーティング54を有する表面領域511に対して垂直な仮想線513に沿って反射コーティング54から1mm以上、好ましくは1cm以上の距離で5×1017分子/cm未満、好ましくは1×1017分子/cm未満、特に好ましくは1×1016分子/cm未満の水素含有量を有する。
【0042】
チタンドープ石英ガラスブランクは、特に表面領域511付近では、室温を超える、例えば600℃以下、好ましくは約100℃~200℃の範囲の温度で基板に加工される前でも高い水素含有量を充填することができる。例えば400℃~600℃の範囲の高温であるほど、所望の水素含有量又は特に高い水素含有量により急速に達することが可能となる。しかしながら、高温であるほど、Ti3+の形成が多くなり、これは石英ガラスの黒化につながり得ると共に、石英ガラスの熱膨張率に望ましくない影響も及ぼし得る。
【0043】
ブランクは、最初にその最終形状にほぼ又は完全に加工することもできるので、実質的にコーティング可能な基板が入手可能であり、コーティング前にこれに水素が充填される。ブランク及び実質的にコーティング可能な基板の両方が、好ましくは約10atm~100atmの範囲の水素分圧でオートクレーブにて水素を充填され得ることが好ましい。特に高圧で、表面領域での含有量が高い特に狭い水素勾配を得ることができる。
【0044】
水素の充填後でコーティング前の研磨により材料が表面から除去される場合、水素含有量の分布の最大値は、反射コーティングの下に特に近接して位置し得る。シミュレーションによれば、例えば充填とコーティング又は目標通りの焼戻しとの間の貯蔵時間が比較的長いことにより、表面領域の、特に反射コーティングの下の直近の水素含有量がコーティング直後に望まれるよりも多少少ない場合でも、水素含有量は反射コーティングの下で年月を経て増加する。
【0045】
コーティング後に、存在したままであるか又はコーティングプロセス中に生じた表面欠陥を、圧縮照射により補正することができる。場合によってはコーティング前でも、少なくともコーティング面積全体に広範な圧縮プロセスを実行することも可能であり、その際に、反射光学素子全体の長期安定性をさらに高めるために、水素含有量が多い照射された基板領域において、結合が切断されてSiH又はSiOHとして飽和する。その後の貯蔵中に、水素が基板内にさらに拡散することができ、特にコーティングされていない表面において基板から出ることもできる。例えば、Mo/Si多層コーティングは、水素に対して良好な拡散バリアである。シミュレーションによれば、コーティング前に表面の領域に水素を充填した基板は、数年間の貯蔵後にも例えばMo/Si多層系でコーティングした表面の領域で非常に高い水素含有量を有する。これに対して、コーティングされていない表面領域では、水素含有量はわずか数ヶ月以内に著しく低下し得る。特に、第2変形形態による、図3に関連して説明した反射光学素子が有し得る基板51は、反射コーティング54の塗布後最長1ヶ月の期間内に、反射コーティング54を有する表面領域511に対して垂直な仮想線517に沿って500nm以上の長さ517にわたり5×1018分子/cmを超える水素含有量を有し、反射コーティング54の塗布後1ヶ月~反射コーティング54の塗布後7年の期間内に依然として1×1018分子/cmを超える水素含有量を有する。反射光学素子の基板が、基板の反射コーティングを有する表面領域とは反対側に位置して反射コーティングを有しないさらに別の表面領域を有する場合、例えば図3に示す例の場合のように、基板は、上記期間内に、このさらに別の表面領域の表面から2mm以下の距離で仮想線に沿ってさらに500nmの長さにわたり、反射コーティングから1mm以下の距離でこの長さにわたる水素含有量の半分以下~1/20以上の水素含有量を有し得る。その理由は、反射光学素子のうち反射コーティングを有しない側で、水素が経時的に基板から外部に拡散し得るからである。上記さらに別の表面領域における正確な水素含有量及び特定の時点でのその分布は、特に具体的な水素充填に応じて変わる。
【0046】
例として、図4及び図5を参照するが、これらの図は、チタンドープ石英ガラスの充填が水素分圧25bar及び温度約250℃で5時間行われると仮定したシミュレーションを示す。こうして得られた水素含有量分布を図4に示す。mm単位の基板の厚さをx軸にとり、基板の厚さは4cmであり、モリブデン・ケイ素多層系等の水素に対する拡散バリアとして働く反射コーティングが表面上で0cmにあるとする。これに対して、4cmにある反対側の領域では表面がコーティングされていないので、この表面の領域に位置する水素は経時的に基板から外部に拡散し得る。充填後に、両方の表面上の水素含有量は10×1018分子/cmであり、これは各表面から1ミリメートル以内の距離ではそのわずか1/10である。
【0047】
図5は、室温で7年貯蔵後のシミュレーション状態を示す。0mmにある反射コーティングに隣接した水素含有量の分布は多少広がっており、その振幅は1/4に減っている。基板のコーティングされていない反対側の4mmでは、振幅の分布は1/20以下に減り、水素含有量の分布は同様に多少広がっている。
【0048】
この効果は、簡単のために反射コーティングを有する表面及びコーティングのない反対側の表面に関してここでは述べられていることに留意されたい。しかしながら、この効果は、当然ながら側面等の異なる位置の表面についても見込まれる。この場合も、水素の充填後に各表面がコーティングされない場合に、コーティングされる場合と比べて経時的な水素含有量の大幅な減少が経時的に見込まれる。
【0049】
図3に関連して説明した変形形態の変更形態では、高い水素含有量に加えて、基板51は、圧縮後の緩和をより効果的に低減するために、少なくとも好ましくは表面領域511付近で1×1016/cm以上のSi-O-O-Si結合の割合及び/又は1×1016/cm以上のSi-Si結合の割合も有し得る。
【0050】
Si-O-O-Si結合又はSi-Si結合等の石英ガラスマトリクス中の水酸基及び水素含有量並びに欠陥の割合は、例えば、サブミリメートル範囲までの分解能での完成した基板又は反射光学素子に対するラマン分光法により求めることができる。共焦点ラマン分光法により、サブマイクロメートル範囲の分解能を達成することもできる。ラマン分光法を用いて、例えば3~4員環SiOリングの比により、異なる基板領域の仮想ガラス転移温度を求めることもできる。補正されてない領域か高エネルギー照射により補正目的で圧縮された領域かに応じて、異なる仮想ガラス転移温度及び異なる欠陥密度が見込まれ得る。
【0051】
図2又は3に示す反射光学素子50の実施形態では、基板51は、表面512から1μm~100μmの固定距離の仮想面514に少なくとも沿って約1容量%の密度変化を有する。簡単のために、これを図2にのみ示す。基板のコーティング後に、表面プロファイルの微細な補正を国際公開第2013/050199号に記載の手順に従って実行した。特に、電子ビームによる基板の領域516の局所的圧縮により補正を実行し、その際に、保護層53を有する反射コーティング54を電子が貫通して、反射コーティング54の下の基板51の最初の数マイクロメートルに堆積が完全に行われるように、電子エネルギーを選択した。結果として、チタンドープ石英ガラスは、全ての基板変形形態で最大約1%圧縮され、ここに示す例ではこれにより約10nmの表面変形が得られる。
【0052】
ここで提案される反射光学素子は、表面形状の長期安定性の改善を示す。特に、圧縮で表される補正の緩和が低減される。例えば7年後でも、補正はその元の振幅の2/3を超える振幅を依然と有することが見込まれ得る。
【0053】
ここで提案される基板に基づく反射光学素子のさらに他の好ましい用途は、EUVリソグラフィに加えて、例えばウェーハ又はマスクの検査システム用の、又は例えば天体物理学、特に地球外物理学での分光用途の光学系を含む。
【符号の説明】
【0054】
10EUVリソグラフィ装置
12 EUV放射源
13 コレクタミラー
14 照明系
15 第1ミラー
16 第2ミラー
17 マスク
18 第3ミラー
19 第4ミラー
20 投影系
21 ウェーハ
50 コレクタミラー
51 基板
511 表面領域
512 表面
514 線
513 線
515 領域
516 領域
517 長さ
53 保護層
54 多層系
55 層対
56 アブソーバ
57 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5