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特許7386256重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置
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  • 特許-重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20231116BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20231116BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231116BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231116BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231116BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231116BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231116BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231116BHJP
【FI】
C08F220/10
C09K19/38
G02B5/30
G02F1/1335
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021549015
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036158
(87)【国際公開番号】W WO2021060427
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019177821
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅明
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057545(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145935(WO,A1)
【文献】特開2019-056727(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009255(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016567(WO,A1)
【文献】特開2016-006439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C09K 19/00-19/60
G02B 5/30
G02F 1/1335;1/3363
G09F 9/00;9/30-9/46
H01L 44/00;45/60
H05B 33/00-33/28
H10K 50/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物とを含有する、重合性液晶組成物。
-SP-D-(Aa1-D-(Gg1-D-〔Ar-Dq1-(Gg2-D-(Aa2-D-SP-L ・・・(I)
-SP-D-(Aa3-D10-(Gg3-D11-M ・・・(II)
ここで、前記式(I)中、
a1、a2、g1およびg2は、いずれも1を表す。
q1は、1または2を表す。
、D、D、D、DおよびDは、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。ただし、q1が2である場合、複数のDは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
およびGは、いずれも1,4-シクロヘキシレン基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
およびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLの少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、LおよびLならびに下記式(Ar-3)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-7)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。ただし、q1が2である場合、複数のArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化1】
ここで、前記式(Ar-1)~(Ar-7)中、
*は、DまたはDとの結合位置を表す。
は、NまたはCHを表す。
は、-S-、-O-、または、-N(R)-を表し、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
は、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~12の芳香族複素環基、または、置換基を有してもよい炭素数6~20の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR、-NR、-SR10、-COOR11、または、-COR12を表し、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、ZおよびZは、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
およびAは、それぞれ独立に、-O-、-N(R13)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R13は、水素原子または置換基を表す。
Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい、第14~16族の非金属原子を表す。
およびDは、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
およびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLならびに前記式(I)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、前記式(II)中、
a3およびg3は、いずれも1を表す。
、D10およびD11は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい
は、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。ただし、AおよびGの少なくとも一方は、1,4-シクロヘキシレン基を表す。
SPは、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
は、重合性基を表す。
Mは、下記式(M-1)~(M-3)で表される基からなる群から選択されるいずれかの末端基を表す。
【化2】
ここで、前記式(M-1)~(M-3)中、
*は、D11との結合位置を表す。
複数のBは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
は、水素原子またはフッ素原子を表す。
【請求項2】
前記式(I)中のLまたはLからArまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列が、前記式(II)中のLからMまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列と同一である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
ただし、芳香環および脂環の配列について、対比する対象がいずれも芳香環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなし、対比する対象がいずれも脂環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなす。また、芳香環および脂環の配列には、芳香環と脂環との間の連結部分の構造は含まれないものとする。
【請求項3】
スメクチック相の液晶状態を示す、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
前記式(I)中のDおよびDが、それぞれ独立に、単結合、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかを表し、
前記式(I)中のSPおよびSPが、それぞれ独立に、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、
前記式(II)中のDが、単結合、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかを表し、
前記式(II)中のSPが、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、
前記式(I)中のSPおよびSPにおける原子の数が、前記式(II)中のSPにおける原子の数よりも長い、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
ただし、前記式(I)中のSPにおける原子の数は、前記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、前記式(I)中のSPにおける原子の数は、前記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、前記式(II)中のSPにおける原子の数は、前記式(II)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、前記式(I)中のSPおよびSPは、前記式(I)中のSPおよびSPにおける原子の数が前記式(II)中のSPにおける原子の数よりも長いため、炭素数1のアルキレン基である場合を除く。
【請求項5】
前記式(I)中、GおよびGが、いずれも1,4-シクロヘキシレン基であり、
前記式(II)中、Gが、1,4-シクロヘキシレン基である、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
前記式(I)中のAおよびAと、前記式(II)中のAとが同じ構造である、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
前記式(I)中のLおよびL、ならびに、前記式(II)中のLが、下記式(P-1)~(P-20)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を表す、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【化3】
ここで、前記式(P-1)~(P-20)中、*は、SP、SPおよびSPのいずれかとの結合位置を表す。
【請求項8】
前記式(II)で表される化合物の含有量が、前記式(I)で表される化合物100質量部に対して5~100質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を硬化してなる、硬化物。
【請求項10】
請求項に記載の硬化物を有する、光学フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の光学フィルムと、偏光子とを有する、偏光板。
【請求項12】
請求項10に記載の光学フィルム、または、請求項11に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートおよび位相差フィルムなどの光学フィルムは、画像着色解消または視野角拡大のために、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶化合物からなる光学異方性層を有する光学フィルムを使用することが提案されている。
【0003】
このような光学異方性層として、例えば、特許文献1には、スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物を1種類以上含む重合性組成物がスメクチック相を示した状態で固定化されている光学異方性層が記載されている([請求項1])。
また、特許文献2には、スメクチック相を示す液晶化合物がスメクチック相で固定化されている位相差フィルムであって、所定の条件を満たす非液晶化合物を含む位相差フィルムが記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-200861号公報
【文献】特開2016-051178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された光学異方性層および特許文献2に記載された位相差フィルムについて検討したところ、これらを有する画像表示装置のコントラストに改善の余地があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、コントラストに優れた画像表示装置を作製することができる、重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、後述する式(I)で表される化合物とともに、後述する式(II)で表される化合物を配合した重合性液晶組成物を用いることにより、作製される画像表示装置のコントラストが良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物とを含有する、重合性液晶組成物。
-SP-D-(Aa1-D-(Gg1-D-〔Ar-Dq1-(Gg2-D-(Aa2-D-SP-L ・・・(I)
-SP-D-(Aa3-D10-(Gg3-D11-M ・・・(II)
【0009】
[2] 上記式(I)中のLまたはLからArまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列が、上記式(II)中のLからMまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列と同一である、[1]に記載の重合性液晶組成物。
ただし、芳香環および脂環の配列について、対比する対象がいずれも芳香環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなし、対比する対象がいずれも脂環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなす。また、芳香環および脂環の配列には、芳香環と脂環との間の連結部分の構造は含まれないものとする。
【0010】
[3] スメクチック相の液晶状態を示す、[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
【0011】
[4] 上記式(I)中、a1、a2、g1およびg2が、いずれも1であり、
上記式(II)中、a3およびg3が、いずれも1である、[1]~[3]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0012】
[5] 上記式(II)中、AおよびGの少なくとも一方が1,4-シクロヘキシレン基である、[1]~[4]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0013】
[6] 上記式(I)中のSPおよびSPにおける原子の数が、上記式(II)中のSPにおける原子の数がよりも長い、[1]~[5]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
ただし、上記式(I)中のSPにおける原子の数は、上記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、上記式(I)中のSPにおける原子の数は、上記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、上記式(II)中のSPにおける原子の数は、上記式(II)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
【0014】
[7] 上記式(I)中、GおよびGが、いずれも1,4-シクロヘキシレン基であり、
上記式(II)中、Gが、1,4-シクロヘキシレン基である、[1]~[6]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0015】
[8] 上記式(I)中のAおよびAと、上記式(II)中のAとが同じ構造である、[1]~[7]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0016】
[9] 上記式(I)中、a1およびa2が0であり、g1およびg2が1であり、GおよびGが1,4-シクロヘキシレン基であり、
上記式(II)中、a3が0であり、g3が1であり、Gが、1,4-シクロヘキシレン基である、[1]~[8]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0017】
[10] 上記式(I)中のLおよびL、ならびに、上記式(II)中のLが、下記式(P-1)~(P-20)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を表す、[1]~[9]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【化1】
ここで、上記式(P-1)~(P-20)中、*は、SP、SPおよびSPのいずれかとの結合位置を表す。
【0018】
[11] 上記式(II)で表される化合物の含有量が、上記式(I)で表される化合物100質量部に対して5~100質量部である、[1]~[10]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【0019】
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の重合性液晶組成物を硬化してなる、硬化物。
[13] [12]に記載の硬化物を有する、光学フィルム。
[14] [13]に記載の光学フィルムと、偏光子とを有する、偏光板。
[15] [13]に記載の光学フィルム、または、[14]に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コントラストに優れた画像表示装置を作製することができる、重合性液晶組成物、硬化物、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の光学フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、表記される二価の基(例えば、-CO-NR-)の結合方向は、結合位置を明記している場合を除き、特に制限されず、例えば、後述する式(I)中のDが-CO-NR-である場合、G側に結合している位置を*1、Ar側に結合している位置を*2とすると、Dは、*1-CO-NR-*2であってもよく、*1-NR-CO-*2であってもよい。
【0023】
[重合性液晶組成物]
本発明の重合性液晶組成物は、下記式(I)で表される化合物(以下、「逆分散液晶化合物」とも略す。)と、下記式(II)で表される化合物(以下、「特定化合物」とも略す。)とを含有する、重合性液晶組成物である。
-SP-D-(Aa1-D-(Gg1-D-〔Ar-Dq1-(Gg2-D-(Aa2-D-SP-L ・・・(I)
-SP-D-(Aa3-D10-(Gg3-D11-M ・・・(II)
【0024】
本発明においては、上述した通り、逆分散液晶化合物とともに、特定化合物を配合した重合性液晶組成物を用いることにより、作製される画像表示装置のコントラストが良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、後述する比較例1~5に示す通り、特定化合物を配合しない場合には、コントラストが劣ることが分かる。これは、重合性液晶組成物の配向状態を固定化する際、すなわち、重合性液晶組成物を重合(硬化)する際に、体積収縮が生じ、その結果、配向状態に乱れが発生したことが原因であると考えられる。
これに対し、後述する実施例1~5に示す通り、特定化合物を配合した場合には、コントラストが良好となることが分かるが、後述する比較例6~10に示す通り、特定化合物に類似する構造を有する化合物を配合した場合には、コントラストが改善されないことが分かる。
そのため、本発明においては、特定化合物が、上記式(II)中のMで表される末端構造に起因して、逆分散液晶化合物の分子間に入り込み、かつ、留まりやすくなり、その結果、逆分散液晶化合物の重合に伴う体積収縮を緩和させることができたため、コントラストが良好になったと考えられる。
以下、本発明の重合性液晶組成物の各成分について詳細に説明する。
【0025】
〔逆分散液晶化合物〕
本発明の重合性液晶組成物が含有する逆分散液晶化合物は、下記式(I)で表される化合物である。
-SP-D-(Aa1-D-(Gg1-D-〔Ar-Dq1-(Gg2-D-(Aa2-D-SP-L ・・・(I)
【0026】
上記式(I)中、a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
また、上記式(I)中、q1は、1または2を表す。
また、上記式(I)中、D、D、D、D、DおよびDは、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。ただし、q1が2である場合、複数のDは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(I)中、GおよびGは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(I)中、AおよびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(I)中、SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(I)中、LおよびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLの少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、LおよびLならびに下記式(Ar-3)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
【0027】
上記式(I)中、a1、a2、g1およびg2は、本発明の重合性液晶組成物がスメクチック相の液晶状態を示しやすくなる理由から、いずれも1であることが好ましい。
また、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、a1およびa2がいずれも0であり、かつ、g1およびg2がいずれも1であることが好ましい。
【0028】
上記式(I)中、q1は、1であることが好ましい。
【0029】
上記式(I)中、D、D、D、D、DおよびDの一態様が示す2価の連結基としては、例えば、-CO-、-O-、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR-、-CR-CR-、-O-CR-、-CR-O-CR-、-CO-O-CR-、-O-CO-CR-、-CR-O-CO-CR-、-CR-CO-O-CR-、-NR-CR-、および、-CO-NR-などが挙げられる。R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
これらのうち、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかであることが好ましい。
【0030】
上記式(I)中、GおよびGの一態様が示す炭素数6~20の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられる。なかでも、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)が好ましい。
【0031】
上記式(I)中、GおよびGの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、5員環又は6員環であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和脂環式炭化水素基が好ましい。GおよびGで表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012-21068号公報の[0078]段落の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(I)中のGおよびGは、シクロアルカン環であることが好ましい。
シクロアルカン環としては、具体的には、例えば、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。
これらのうち、シクロヘキサン環が好ましく、1,4-シクロヘキシレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が更に好ましい。
【0033】
また、上記式(I)中、GおよびGについて、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルチオール基、および、N-アルキルカルバメート基などが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基およびシクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基およびメトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、上記で例示したアルキル基にオキシカルボニル基(-O-CO-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基またはイソプロポキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基がより好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基としては、上記で例示したアルキル基にカルボニルオキシ基(-CO-O-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基またはイソプロピルカルボニルオキシ基が好ましく、メチルカルボニルオキシ基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0034】
上記式(I)中、AおよびAの一態様が示す炭素数6~20以上の芳香環としては、上記式(I)中のGおよびGにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
また、上記式(I)中、AおよびAの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(I)中のGおよびGにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、AおよびAについて、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0035】
上記式(I)中、SPおよびSPの一態様が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基などが好適に挙げられる。なお、SPおよびSPは、上述した通り、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0036】
上記式(I)中、LおよびLが示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0037】
上記式(I)中、LおよびLの少なくとも一方が示す重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイルオキシ基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイルオキシ基が好ましいが、メタクリロイルオキシ基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては、下記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。
【0038】
【化2】
【0039】
上記式(I)中、耐久性が良好となる理由から、上記式(I)中のLおよびLが、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0040】
一方、上記式(I)中、Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-7)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。ただし、q1が2である場合、複数のArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-7)中、*は、上記式(I)中のDまたはDとの結合位置を表す。
【0041】
【化3】
【0042】
上記式(Ar-1)中、Qは、NまたはCHを表し、Qは、-S-、-O-、または、-N(R)-を表し、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Yは、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~12の芳香族複素環基、または、置換基を有してもよい炭素数6~20の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
が示す炭素数6~20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
また、Yが有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0043】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-7)中、Z、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR、-NR、-SR10、-COOR11、または、-COR12を表し、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、ZおよびZは、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;等が挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
炭素数6~20の1価の芳香族複素環基としては、具体的には、例えば、4-ピリジル基、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であるのが好ましい。
一方、R~R10が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0044】
およびZは、上述した通り、互いに結合して芳香環を形成してもよく、例えば、上記式(Ar-1)中のZおよびZが互いに結合して芳香環を形成した場合の構造としては、例えば、下記式(Ar-1a)で表される基が挙げられる。なお、下記式(Ar-1a)中、*は、上記式(I)中のDまたはDとの結合位置を表す。
【化4】
ここで、上記式(Ar-1a)中、Q、QおよびYは、上記式(Ar-1)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0045】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、AおよびAは、それぞれ独立に、-O-、-N(R13)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R13は、水素原子または置換基を表す。
13が示す置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0046】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい、第14~16族の非金属原子を表す。
また、Xが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、水素原子または置換基が結合した窒素原子〔=N-RN1,RN1は水素原子または置換基を表す。〕、水素原子または置換基が結合した炭素原子〔=C-(RC1,RC1は水素原子または置換基を表す。〕が挙げられる。
置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、水酸基等が挙げられる。
【0047】
また、上記式(Ar-3)中、DおよびDは、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
ここで、2価の連結基としては、上記式(I)中のD、D、D、D、DおよびDにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
また、上記式(Ar-3)中、SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
ここで、アルキレン基としては、上記式(I)中のSPおよびSPにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0049】
また、上記式(Ar-3)中、LおよびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLならびに上記式(I)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(I)中のLおよびLにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(I)中のLおよびLにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0050】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-7)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-7)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Qは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の[0039]~[0095]段落に記載されたものが挙げられる。
また、Qが示す炭素数1~20のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられ、置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0051】
上記式(I)で表される化合物としては、例えば、特開2010-084032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]~[0073]に記載の化合物)、特開2016-053709号公報に記載の一般式(II)で表される化合物(特に、段落番号[0036]~[0043]に記載の化合物)、および、特開2016-081035公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0043]~[0055]に記載の化合物)等が挙げられる。
【0052】
また、上記式(I)で表される化合物としては、下記式(1)~(22)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(1)~(22)中のK(側鎖構造)として、下記表1~表3に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下記表1~表3中、Kの側鎖構造に示される「*」は、芳香環との結合位置を表す。
また、下記表2中の2-2および下記表3中の3-2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【化5】
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(I)で表される化合物が、スメクチック相の液晶状態を示す化合物であることが好ましい。
【0057】
〔特定化合物〕
本発明の重合性液晶組成物が含有する特定化合物は、下記式(II)で表される化合物である。
-SP-D-(Aa3-D10-(Gg3-D11-M ・・・(II)
【0058】
上記式(II)中、a3およびg3は、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。ただし、a3およびg3は、合計して1~3の整数を表す。
また、上記式(II)中、D、D10およびD11は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR-、-CR=CR-、-NR-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
また、上記式(II)中、Gは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。ただし、g3が2である場合、複数のGは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(II)中、Aは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。ただし、a3が2である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(II)中、SPは、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(II)中、Lは、重合性基を表す。
【0059】
上記式(II)中、a3およびg3は、本発明の重合性液晶組成物がスメクチック相の液晶状態を示しやすくなる理由から、いずれも1であることが好ましい。
また、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、a3が0であり、かつ、g3が1であることが好ましい。
【0060】
上記式(II)中、D、D10およびD11の一態様が示す2価の連結基としては、例えば、上記式(I)中のDなどの一態様が示す2価の連結基として例示したものと同様のものが挙げられ、中でも、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかであることが好ましい。
【0061】
上記式(II)中、Gの一態様が示す炭素数6~20の芳香環としては、例えば、上記式(I)中のGなどの一態様が示す炭素数6~20の芳香環として例示したものと同様のものが挙げられ、中でも、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)が好ましい。
【0062】
上記式(II)中、Gの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、上記式(I)中のGなどの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基として例示したものと同様のものが挙げられ、中でも、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、シクロアルカン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましく、1,4-シクロヘキシレン基が更に好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が特に好ましい。
【0063】
また、上記式(II)中、Gについて、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0064】
上記式(II)中、Aの一態様が示す炭素数6~20以上の芳香環としては、上記式(I)中のGおよびGにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
また、上記式(II)中、Aの一態様が示す炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(I)中のGおよびGにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、Aについて、炭素数6~20の芳香環または炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0065】
本発明においては、逆波長分散性が向上する理由から、上記式(II)中のAおよびGの少なくとも一方が1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0066】
上記式(II)中、SPの一態様が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、上記式(I)中のSPなどの一態様が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
上記式(II)中、Lが示す重合性基としては、例えば、上記式(I)中のLおよびLの少なくとも一方が示す重合性基として例示したものと同様のものが挙げられ、中でも、上記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が好適に挙げられる。
【0068】
一方、上記式(II)中、Mは、下記式(M-1)~(M-3)で表される基からなる群から選択されるいずれかの末端基を表す。なお、下記式(M-1)~(M-3)中、*は、D11との結合位置を表す。
【化6】
【0069】
上記式(M-1)~(M-3)中、複数のBは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、置換基としては、上記式(I)中のGおよびGが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
また、上記式(M-1)~(M-3)中、Bは、水素原子またはフッ素原子を表し、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、水素原子であることが好ましい。
【0070】
上記式(M-1)~(M-3)のうち、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(M-1)であることが好ましい。
【0071】
上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(CR-1)~(CR-18)で表される化合物が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0072】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(II)で表される化合物の含有量は、上記式(I)で表される化合物100質量部に対して5~100質量部であることが好ましく、6~50質量部であることがより好ましい。
【0073】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(I)中のLまたはLからArまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列が、上記式(II)中のLからMまでの間にこの順で含まれている芳香環および脂環の配列と同一であることが好ましい。
ここで、芳香環および脂環の配列について、対比する対象がいずれも芳香環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなし、対比する対象がいずれも脂環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなす。また、芳香環および脂環の配列には、芳香環と脂環との間の連結部分の構造は含まれないものとする。例えば、フェニレンおよびナフチレンのように別の骨格であっても、芳香族環同士であれば同一の配列を構成しているとみなし、シクロヘキシレンおよびシクロペンタレンのように別の骨格であっても、脂環同士であれば同一の配列を構成しているとみなす。
【0074】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(I)中のSPおよびSPにおける原子の数が、上記式(II)中のSPにおける原子の数がよりも長いことが好ましい。
ここで、上記式(I)中のSPにおける原子の数は、上記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、上記式(I)中のSPにおける原子の数は、上記式(I)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
また、上記式(II)中のSPにおける原子の数は、上記式(II)中のLとDとを最短距離で結んだ結合上の原子の数を表し、水素原子は含まれないものとする。
【0075】
例えば、上記式(I)で表される化合物に該当する、下記式で表される逆分散液晶化合物のSPおよびSPにおける原子の数は、いずれも6である。
【化9】
【0076】
また、上記式(II)で表される化合物に該当する、下記式(CR-1)で表される特定化合物のSPにおける原子の数は、2である。
【化10】
【0077】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、上記式(I)中のAおよびAと、上記式(II)中のAとが同じ構造であることが好ましい。
【0078】
〔重合開始剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。
使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
また、本発明においては、重合開始剤がオキシム型の重合開始剤であることも好ましく、その具体例としては、国際公開第2017/170443号の[0049]~[0052]段落に記載された開始剤が挙げられる。
【0079】
〔溶媒〕
本発明の重合性液晶組成物は、後述する本発明の硬化物(例えば、光学異方性層)を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
〔レベリング剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、後述する本発明の硬化物の表面を平滑に保ち、配向制御を容易にする観点から、レベリング剤を含有することが好ましい。
このようなレベリング剤としては、添加量に対するレベリング効果が高い理由から、フッ素系レベリング剤またはケイ素系レベリング剤であることが好ましく、泣き出し(ブルーム、ブリード)を起こしにくい観点から、フッ素系レベリング剤であることがより好ましい。
レベリング剤としては、具体的には、例えば、特開2007-069471号公報の[0079]~[0102]段落の記載に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0020]~[0032]段落に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0022]~[0029]段落に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された一般式(I)で表される液晶配向促進剤(特に[0076]~[0078]および[0082]~[0084]段落に記載された化合物)、特開2005-099248号公報に記載された一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物(特に[0092]~[0096]段落に記載された化合物)などが挙げられる。なお、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0081】
〔配向制御剤〕
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含有することができる。
配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、コレステリック配向等の種々の配向状態を形成することができ、また、特定の配向状態をより均一かつより精密に制御して実現することができる。
【0082】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤や、高分子の配向制御剤を用いることができる。
低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002-20363号公報の[0009]~[0083]段落、特開2006-106662号公報の[0111]~[0120]段落、および、特開2012-211306号公報の[0021]~[0029]段落の記載を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004-198511号公報の[0021]~[0057]段落、および、特開2006-106662号公報の[0121]~[0167]段落を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0083】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、オニウム塩化合物が挙げられ、具体的には、特開2008-225281号公報の[0023]~[0032]段落、特開2012-208397号公報の[0052]~[0058]段落、特開2008-026730号公報の[0024]~[0055]段落、特開2016-193869号公報の[0043]~[0055]段落などに記載された化合物を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0084】
一方、コレステリック配向は、本発明の重合性液晶組成物にキラル剤を加えることにより実現することができ、そのキラル性の向きによりコレステリック配向の旋回方向を制御できる。
なお、キラル剤の配向規制力に応じてコレステリック配向のピッチを制御することができる。
【0085】
配向制御剤の含有する場合の含有量は、組成物中の全固形分質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましい。含有量がこの範囲であると、望む配向状態を実現しつつ、析出や相分離、配向欠陥等が無く、均一で透明性の高い硬化物を得ることができる。
【0086】
〔その他の成分〕
本発明の重合性液晶組成物は、上述した成分以外の成分を含有してもよく、例えば、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0087】
本発明においては、作製される画像表示装置のコントラストがより良好となる理由から、本発明の重合性液晶組成物がスメクチック相の液晶状態を示していることが好ましい。
【0088】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の重合性液晶組成物を硬化してなる硬化物であり、上述した本発明の重合性液晶組成物をスメクチック相の液晶状態で固定化した硬化物であることが好ましい。
硬化物の形成方法としては、例えば、上述した本発明の重合性液晶組成物を用いて、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法などが挙げられる。
ここで、重合条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、20mJ/cm~5J/cmであることがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmであることが更に好ましく、50~1000mJ/cmであることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
なお、本発明においては、硬化物は、後述する本発明の光学フィルムにおける任意の支持体上や、後述する本発明の偏光板における偏光子上に形成することができる。
【0089】
本発明の硬化物は、下記式(III)を満たす光学異方性層であることが好ましい。
0.50<Re(450)/Re(550)<1.00 ・・・(III)
ここで、上記式(III)中、Re(450)は、光学異方性層の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re(550)は、光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションを表す。なお、本明細書において、レターデーションの測定波長を明記していない場合は、測定波長は550nmとする。
また、面内レターデーションおよび厚み方向のレターデーションの値は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用い、測定波長の光を用いて測定した値をいう。
具体的には、AxoScan OPMF-1にて、平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0090】
また、このような光学異方性層は、ポジティブAプレートまたはポジティブCプレートであることが好ましく、ポジティブAプレートであることがより好ましい。
【0091】
ここで、ポジティブAプレート(正のAプレート)とポジティブCプレート(正のCプレート)は以下のように定義される。
フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、ポジティブAプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示し、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(C1) nz>nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。
「実質的に同一」とは、ポジティブAプレートでは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「nx≒nz」に含まれる。また、ポジティブCプレートでは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0092】
光学異方性層がポジティブAプレートである場合、λ/4板として機能する観点から、Re(550)が100~180nmであることが好ましく、120~160nmであることがより好ましく、130~150nmであることが更に好ましく、130~140nmであること特に好ましい。
ここで、「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
【0093】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、本発明の硬化物を有する光学フィルムである。
図1は、本発明の光学フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
なお、図1は模式図であり、各層の厚みの関係や位置関係などは必ずしも実際のものとは一致せず、図1に示す支持体および配向膜は、いずれも任意の構成部材である。
図1に示す光学フィルム10は、支持体16と、配向膜14と、硬化物としての光学異方性層12とをこの順で有する。
また、光学異方性層12は、異なる2層以上の光学異方性層の積層体であってもよい。例えば、後述する本発明の偏光板を円偏光板として用いる場合、または、本発明の光学フィルムをIPS方式またはFFS方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合には、ポジティブAプレートとポジティブCプレートの積層体であることが好ましい。
また、光学異方性層を支持体から剥離して、光学異方性層単独で光学フィルムとして用いてもよい。
以下、本発明の光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0094】
〔硬化物〕
本発明の光学フィルムが有する硬化物は、上述した本発明の硬化物である。
本発明の光学フィルムにおいては、上記硬化物の厚みについては特に限定されないが、光学異方性層として用いる場合には、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0095】
〔支持体〕
本発明の光学フィルムは、上述したように、硬化物を形成するための基材として支持体を有していてもよい。
このような支持体は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。
【0096】
このような支持体としては、例えば、ガラス基板やポリマーフィルムが挙げられ、ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;、塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
また、後述する偏光子がこのような支持体を兼ねる態様であってもよい。
【0097】
本発明においては、上記支持体の厚みについては特に限定されないが、5~60μmであるのが好ましく、5~40μmであるのがより好ましい。
【0098】
〔配向膜〕
本発明の光学フィルムは、上述した任意の支持体を有する場合、支持体と硬化物との間に、配向膜を有しているのが好ましい。なお、上述した支持体が配向膜を兼ねる態様であってもよい。
【0099】
配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。
本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。
本発明に使用可能な配向膜については、例えば、国際公開第01/88574号の43頁24行~49頁8行に記載された配向膜;特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール;特開2012-155308号公報に記載された液晶配向剤により形成される液晶配向膜;等が挙げられる。
【0100】
本発明においては、配向膜の形成時に配向膜表面に接触しないことで面状悪化を防ぐことが可能となる理由から、配向膜としては光配向膜を利用することも好ましい。
光配向膜としては特に限定はされないが、国際公開第2005/096041号の段落[0024]~[0043]に記載されたポリアミド化合物やポリイミド化合物などのポリマー材料;特開2012-155308号公報に記載された光配向性基を有する液晶配向剤により形成される液晶配向膜;Rolic Technologies社製の商品名LPP-JP265CPなどを用いることができる。
【0101】
また、本発明においては、上記配向膜の厚さは特に限定されないが、支持体に存在しうる表面凹凸を緩和して均一な膜厚の光学異方性層を形成するという観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがより好ましく、0.01~0.5μmであることがさらに好ましい。
【0102】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の光学フィルムは、外光(特に紫外線)の影響を考慮して、紫外線(UV)吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤は、本発明の硬化物に含有されてしてもよいし、本発明の光学フィルムを構成する硬化物以外の部材に含有されていてもよい。硬化物以外の部材としては、例えば、支持体が好適に挙げられる。
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できる従来公知のものがいずれも使用できる。このような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得る観点から、ベンゾトリアゾール系またはヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、特開2012-18395公報の[0258]~[0259]段落に記載された化合物、特開2007-72163号公報の[0055]~[0105]段落に記載された化合物などが挙げられる。
また、市販品として、Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479、および、Tinuvin1577(いずれもBASF社製)等を用いることができる。
【0103】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルムと、偏光子とを有するものである。
また、本発明の偏光板は、上述した本発明の光学異方性層がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、円偏光板として用いることができる。
本発明の偏光板を円偏光板として用いる場合は、上述した本発明の光学異方性層をλ/4板(ポジティブAプレート)とし、λ/4板の遅相軸と後述する偏光子の吸収軸とのなす角が30~60°であることが好ましく、40~50°であることがより好ましく、42~48°であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
また、本発明の偏光板は、IPS方式またはFFS方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いることもできる。
本発明の偏光板をIPS方式またはFFS方式の液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合は、上述した本発明の光学異方性層を、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとの積層体の少なくとも一方のプレートとし、ポジティブAプレート層の遅相軸と、後述する偏光子の吸収軸とのなす角が直交または平行であることが好ましく、具体的には、ポジティブAプレート層の遅相軸と、後述する偏光子の吸収軸とのなす角が0~5°または85~95°であることがより好ましい。
ここで、λ/4板またはポジティブAプレート層の「遅相軸」は、λ/4板またはポジティブAプレート層の面内において屈折率が最大となる方向を意味し、偏光子の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。
【0104】
〔偏光子〕
本発明の偏光板が有する偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば特に限定されず、従来公知の吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子などが用いられる。
なかでも、密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(-CH-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー、特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子であることが好ましい。
【0105】
本発明においては、偏光子の厚みは特に限定されないが、3μm~60μmであるのが好ましく、3μm~30μmであるのがより好ましく、3μm~10μmであるのが更に好ましい。
【0106】
〔粘着剤層〕
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムにおける硬化物と、偏光子との間に、粘着剤層が配置されていてもよい。
硬化物と偏光子との積層のために用いられる粘着剤層としては、例えば、動的粘弾性測定装置で測定した貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。本発明に用いることのできる粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
〔接着剤層〕
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムにおける光学異方性層と、偏光子との間に、接着剤層が配置されていてもよい。
硬化物と偏光子との積層のために用いられる接着剤層としては、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性接着剤組成物が好ましい。
硬化性接着剤組成物としては、カチオン重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物、および、ラジカル重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物などが挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.01~20μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.05~5μmが更に好ましい。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される保護層または光学異方性層と偏光子との間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
【0108】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムまたは本発明の偏光板を有する、画像表示装置である。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セル、有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0109】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した本発明の偏光板と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0110】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe-Field-Switching)モード、又はTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、及び特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0111】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、偏光子と、本発明の光学異方性層からなるλ/4板(ポジティブAプレート)と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が好適に挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例
【0112】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0113】
[実施例1]
〔保護フィルム1の作製〕
<コア層セルロースアシレートドープ1の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・エステルオリゴマー(下記化合物1-1) 10質量部
・耐久性改良剤(下記化合物1-2) 4質量部
・紫外線吸収剤(下記化合物1-3) 3質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 438質量部
・メタノール(第2溶剤) 65質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0114】
化合物1-1
【化11】
【0115】
化合物1-2
【化12】
【0116】
化合物1-3
【化13】
【0117】
<外層セルロースアシレートドープ1の調製>
上記のコア層セルロースアシレートドープ1の90質量部に、下記のマット剤分散液1を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・コア層セルロースアシレートドープ1 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0118】
<保護フィルム1の作製>
上記コア層セルロースアシレートドープ1とその両側に外層セルロースアシレートドープ1とを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。ドラム上のフィルムの溶剤含有率略20質量%の状態で、ドラム上からフィルムを剥ぎ取り、得られたフィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、フィルム中の残留溶剤が3~15質量%の状態で、フィルムを横方向に1.2倍延伸しつつ乾燥した。その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送することにより、厚さ25μmのセルロースアシレートフィルム1を作製し、保護フィルム1とした。
【0119】
〔ハードコート層付き保護フィルム1の作製〕
ハードコート層形成用の塗布液として、下記表4に記載のハードコート用硬化性組成物(ハードコート1)を調製した。
【0120】
【表4】
【0121】
上記表4中、UV開始剤1の構造を以下に示す。
【化14】
【0122】
上記ハードコート用硬化性組成物1を、上記にて作製した保護フィルム1の表面上へ塗布し、その後、100℃で60秒乾燥し、窒素0.1%以下の条件でUVを1.5kW、300mJにて照射し、硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を有するハードコート層付き保護フィルム1を作製した。なお、ハードコート層の膜厚の調整は、スロットダイを用い、ダイコート法において塗布量を調整することにより行った。
【0123】
〔片面保護膜付き偏光板1の作製〕
(1)フィルムのケン化
作製したハードコート層付き保護フィルム1を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(ケン化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒間浸漬した後、さらに水洗浴に通した。そして、得られたフィルムに対して、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、ケン化処理したハードコート層付き保護フィルム1を作製した。
(2)偏光子の作製
特開2016-148724号公報の実施例に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、膜厚は15μmの偏光子を調製した。このようにして作製した偏光子を偏光子1とした。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光子1と、ケン化処理したハードコート層付き保護フィルム1とを、PVA((株)クラレ製、PVA-117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて、片面保護膜付き偏光板1(以後、単に「偏光板1」とも称する。)を作製した。このとき、保護フィルムのセルロースアシレートフィルム側が、偏光子側になるように貼り合わせた。
【0124】
〔保護フィルム2の作製〕
<PMMA(ポリメタクリル酸メチル)ドープの調製>
下記のドープ組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、PMMAドープを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――
PMMAドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――
・PMMA樹脂 100質量部
・スミライザーGS(住友化学社製) 0.1質量部
・ジクロロメタン 426質量部
・メタノール 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
<PMMAフィルムの作製>
調製したPMMAドープをステンレス製のバンド(流延支持体)に流延ダイから均一に流延した(バンド流延機)。流延膜中の溶剤含有率略20質量%の状態でフィルムを剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、膜厚20μmのPMMAフィルムを作製し、保護フィルム2とした。
【0126】
〔第1偏光板の作製〕
<接着剤液の調製>
下記化合物を記載の比率で混合し、接着剤液Aを調製した。
アロニックスM-220(東亜合成株式会社製):20質量部
4-ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成株式会社製):40質量部
アクリル酸-2-エチルヘキシル(三菱化学株式会社製):40質量部
Irgacure907(BASF製):1.5質量部
KAYACURE DETX-S(日本化薬株式会社製):0.5質量部
【0127】
保護フィルム2の偏光子貼合面を放電量150W・min/mでコロナ処理した後、上記で調製した接着剤液Aを、膜厚0.5μmになるように塗設した。
その後、接着剤塗布面を、上記で作製した片面保護膜付き偏光板1の偏光子面と貼り合わせ、大気雰囲気下40℃にて保護フィルム2(PMMAフィルム)側から紫外線を300mJ/cm照射した。
その後、60℃で3分間乾燥し、第1偏光板を作製した。
【0128】
〔光学異方性層1の作製〕
<光配向膜用組成物1の調製>
酢酸ブチル/メチルエチルケトン(80質量部/20質量部)に対して、下記共重合体C1を8.4質量部と、下記熱酸発生剤D1を0.3質量部添加し、光配向膜用組成物を調製した。
【0129】
共重合体C1(重量平均分子量:40,000,下記式中の数値は各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。)
【化15】
【0130】
熱酸発生剤D1
【化16】
【0131】
<光学異方性層形成用組成物1の調製>
下記組成の光学異方性層形成用組成物1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記逆分散液晶化合物A1 90質量部
・下記特定化合物B1 10質量部
・下記重合開始剤S1 1質量部
・下記レベリング剤P1 0.09質量部
・シクロペンタノン 300質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記逆分散液晶化合物A1のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記逆分散液晶化合物A1は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0132】
逆分散液晶化合物A1(Cr 109 SA 133 N 154 Is)
【化17】
【0133】
特定化合物B1
【化18】
【0134】
重合開始剤S1
【化19】
【0135】
レベリング剤P1(下記式中:a~cは、a:b:c=66:26:8であり、樹脂中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(mol%)を示す。)
【化20】
【0136】
<光学異方性層1の作製>
ガラス基板上に、先に調製した光配向膜用組成物1をバーコーターで塗布した。塗布後、120℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.2μmの光異性化組成物層を形成した。得られた光異性化組成物層に対して偏光紫外線を照射(10mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜1を形成した。
次いで、光配向膜1上に、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように、先に調製した光学異方性層形成用組成物1をスピンコーターで塗布した。塗布後、ネマチック相の液晶状態を示す温度領域で30秒間加熱した後、ネマチック相からスメクチック相への相転移温度よりも5℃低い温度まで冷却した後に、その温度でUV照射(300mJ/cm)を行い、スメクチック相の液晶状態で固定化した光学異方性層1を作製した。
【0137】
〔評価用の第1偏光板の作製〕
作製した光学異方性層1と、第1偏光板の保護フィルム2とを、偏光子の吸収軸と光学異方性層の遅相軸が平行な方向になるように20μmのアクリル系粘着剤を用いて貼り合わせ、実施例1の光学異方性層1を含む評価用の第1偏光板を作製した。
【0138】
〔液晶表示装置1の作製〕
市販の液晶表示装置(iPad(登録商標)、Apple社製)(FFSモードの液晶セルを含む液晶表示装置)から表側の偏光板を剥がして、上記で作製した実施例1の評価用の第1偏光板を、裏側の偏光板中の偏光子との吸収軸が互いに直交するように、かつ、液晶セル内の液晶の配向方向が第一偏光板中の偏光子の吸収軸と直交するように20μmのアクリル系粘着剤で貼り合わせ、実施例1の液晶表示装置1を作製した。
【0139】
[実施例2~12および比較例1~10]
逆分散液晶化合物A1および特定化合物B1を下記表5に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、光学異方性層および液晶表示装置を作製した。
なお、下記表5中、逆分散液晶化合物A2などの構造を以下に示す。
【0140】
逆分散液晶化合物A2(Cr 136 SA 204 N 280 Is)
【化21】
【0141】
逆分散液晶化合物A3(Cr 124 SA 164 N 247 Is)
【化22】
【0142】
逆分散液晶化合物A4(Cr 151 SA 167 N 195 Is)
【化23】
【0143】
逆分散液晶化合物A5(Cr 101 SA 133 N 146 Is)
【化24】
【0144】
特定化合物B2
【化25】
【0145】
特定化合物B3
【化26】
【0146】
特定化合物B4
【化27】
【0147】
特定化合物B5
【化28】
【0148】
特定化合物B6
【化29】
【0149】
特定化合物B7
【化30】
【0150】
比較化合物C1
【化31】
【0151】
比較化合物C2
【化32】
【0152】
比較化合物C3
【化33】
【0153】
〔評価〕
<コントラスト>
白表示におけるパネルに対して垂直方向からの輝度(Yw)及び黒表示におけるパネルに対して垂直方向からの輝度(Yb)を市販の液晶視野角、色度特性測定装置Ezcontrast(ELDIM社製)を用いて測定し、パネルに対して垂直方向のコントラスト比(Yw/Yb)を算出し、正面コントラストとし、以下の基準で評価した。結果を下記表5に示す。
A:50,000以上
B:25,000以上50,000未満
C:10000以上25,000未満
D:10000未満
【0154】
【表5】
【0155】
上記表5に示す結果から、特定化合物を配合しない場合には、コントラストが劣ることが分かった(比較例1~5)。
また、特定化合物に類似する構造を有する比較化合物を配合した場合でも、コントラストが改善されないことが分かった(比較例6~10)。
これに対し、特定化合物を配合した場合には、コントラストが良好となることが分かった(実施例1~12)。
特に、実施例1と実施例8~9との対比から、上記式(I)中のAおよびAと、上記式(II)中のAとが同じ構造であると、コントラストがより良好となることが分かった。
また、実施例1と実施例10との対比から、特定化合物の片末端が有する上記式(M-1)~(M-3)で表される基中、Bが水素原子であると、コントラストがより良好となることが分かった。
また、実施例2と実施例11との対比から、上記式(I)中のSPおよびSPにおける原子の数が、上記式(II)中のSPにおける原子の数がよりも長いと、コントラストがより良好となることが分かった。
また、実施例2と実施例12との対比から、上記式(I)中のMが、上記式(M-1)で表される基であると、コントラストがより良好となることが分かった。
【符号の説明】
【0156】
10 光学フィルム
12 光学異方性層
14 配向膜
16 支持体
図1