(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】積層圧電素子および電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
H10N 30/20 20230101AFI20231116BHJP
H10N 30/85 20230101ALI20231116BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231116BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20231116BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20231116BHJP
H10N 30/045 20230101ALI20231116BHJP
【FI】
H10N30/20
H10N30/85
H04R17/00
B06B1/06 Z
H10N30/50
H10N30/045
(21)【出願番号】P 2022512021
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012200
(87)【国際公開番号】W WO2021200455
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020061719
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020206068
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】芦川 輝男
(72)【発明者】
【氏名】香川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平口 和男
(72)【発明者】
【氏名】三好 哲
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/015378(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/030192(WO,A1)
【文献】特開2014-168132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0133247(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01322030(EP,A1)
【文献】特開2015-070110(JP,A)
【文献】特開2019-007749(JP,A)
【文献】特開2014-068142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/20
H10N 30/85
H04R 17/00
B06B 1/06
H10N 30/50
H10N 30/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を含むマトリックス中に圧電体粒子を含む圧電体層と、前記圧電体層の両面に設けられる電極層と、前記電極層を覆って設けられる保護層とを有する圧電フィルムを、折り返して積層してなるものであり、
折り返しによって積層された隣接する2層の前記圧電フィルムにおいて、折り返し方向の中央部の厚さを中央厚さ、折り返し方向における折り返し部の端部から前記中央部までの長さをL、折り返し方向の折り返し部の端部から前記中央部に向かって前記長さLの1/3の領域を折り返し部、とした際に、前記折り返し部が、前記中央厚さより厚い部分を有し、
折り返しによって積層された隣接する2層の前記圧電フィルムを貼着する貼着層を有し、前記貼着層は、前記中央部を含み、少なくとも、前記折り返し部を除く部分に設けられており、
前記折り返し部において、隣接する2層の前記圧電フィルムの間に空隙を有し、または、隣接する2層の前記圧電フィルムの間が貼着剤で満たされている、積層圧電素子。
【請求項2】
前記貼着層は、前記中央部を含み、前記折り返し部における前記中央厚さより厚い部分を除いた隣接する2層の前記圧電フィルムの所定の間隔の積層部分に形成されており、前記貼着層の厚さは、前記所定の間隔である、請求項1に記載の積層圧電素子。
【請求項3】
前記圧電フィルムを、複数回、折り返して積層する、請求項1または2に記載の積層圧電素子。
【請求項4】
積層方向に隣接する前記折り返し部の外側の端部の位置が、前記圧電フィルムの折り返し方向で異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項5】
前記圧電フィルムが厚さ方向に分極されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項6】
前記圧電体層の前記高分子材料が、シアノエチル基を有する高分子材料である、請求項請求項1~5のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項7】
前記高分子材料が、シアノエチル化ポリビニルアルコールである、請求項6に記載の積層圧電素子。
【請求項8】
積層圧電素子の長手方向の端部に、前記圧電フィルムが突出する突出部を有し、
前記突出部の前記長手方向の長さが、前記長手方向の全長の10%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層圧電素子と、前記積層圧電素子が固定される振動板とを有する、電気音響変換器。
【請求項10】
前記振動板が可撓性を有する、請求項9に記載の電気音響変換器。
【請求項11】
前記振動板と前記積層圧電素子とが、貼着剤によって貼着されている、請求項9または10に記載の電気音響変換器。
【請求項12】
前記振動板が、少なくとも1組の対向する2辺が固定された四角形状であり、前記
対向する2辺における固定端間の距離をLとした際に、前記振動板への前記積層圧電素子の貼着を、『0.1×L』以上、前記固定端から離間する位置に行う、請求項11に記載の電気音響変換器。
【請求項13】
前記振動板が長方形または正方形である、請求項12に記載の電気音響変換器。
【請求項14】
前記振動板のバネ定数が1×10
4~1×10
7N/mである、請求項12または13に記載の電気音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキサイター等に利用される積層圧電素子、および、この積層圧電素子を用いる電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の物品に接触して取り付けることで、物品を振動させて音を出す、いわゆるエキサイター(励起子)が、各種の用途に利用されている。
例えば、オフィスであれば、プレゼンテーションおよび電話会議等の際に、会議用テーブル、ホワイトボードおよびスクリーン等にエキサイターを取り付けることで、スピーカーの代わりに音を出すことができる。自動車等の車両であれば、コンソール、Aピラーおよび天井等にエキサイターを取り付けることで、ガイド音、警告音および音楽等を鳴らすことができる。また、ハイブリット車および電気自動車のように、エンジン音が出ない自動車の場合には、バンパー等にエキサイターを取り付けることで、バンパー等から車両接近通報音を出すことができる。
【0003】
このようなエキサイターにおいて振動を生じる可変素子としては、コイルとマグネットとの組み合わせ、ならびに、偏心モータおよび線形共振モータ等の振動モータ等が知られている。
これらの可変素子は、薄型化が困難である。特に、振動モータは、振動力を増加するためには質量体を大きくする必要がある、振動の程度を調節するための周波数変調が難しく応答速度が遅い等の難点がある。
【0004】
このような問題を解決可能なエキサイターとして、シート状の圧電体層を電極層で挟持してなる圧電フィルムを、複数枚、積層した、積層圧電素子が考えられる。
例えば、特許文献1には、1方向に伸長する圧電体層(圧電性フィルム)と、圧電体層の一面に設けられた第1電極層(電極膜)と、圧電体層の他方の面に設けられた第2電極層とを有する圧電フィルムを、伸長の方向に少なくとも1回折り曲げて、この折り曲げ部が側面となる主体部と、主体部の第1電極層が露出する側面に形成された第1補強電極、および、主体部の第2電極層が露出する側面に形成された第2補強電極とを有する、エキサイター等に利用される積層圧電素子(圧電デバイス)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一枚の圧電フィルムでは、十分な圧電特性を得られない場合も多い。これに対して、圧電フィルムを複数層、積層することにより、特許文献1にも記載されるように、圧電効果を向上して、高い圧電性能を得ることが可能になる。
また、特許文献1のように、圧電フィルムを折り返すことで複数層を積層した構成とすることにより、製造も容易にできる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、圧電フィルムを折り返して、複数層、積層にした構成では、折り返し部において、圧電フィルムの外側は伸長された状態となり、内側は収縮された状態となる。
そのため、圧電フィルムの折り返し部では、電極層にストレスが掛かってしまい、電極層の破断および剥離等の損傷が生じてしまう。電極層の破断および剥離等が生じると、その部分の比誘電率が変わって、目的とする圧電性能が得られない、電力が集中して発熱する等の不都合が生じる可能性が有る。
【0008】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、圧電体層の両面に電極層を設けた圧電フィルムを折り返すことで、複数層の圧電フィルムを積層した積層圧電素子において、折り返し部における電極層の剥離等の損傷を防止できる積層圧電素子、および、この積層圧電素子を用いる電気音響変換器を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 高分子材料を含むマトリックス中に圧電体粒子を含む圧電体層と、圧電体層の両面に設けられる電極層と、電極層を覆って設けられる保護層とを有する圧電フィルムを、折り返して積層してなるものであり、
折り返しによって積層された隣接する2層の圧電フィルムにおいて、折り返し方向の中央部の厚さを中央厚さ、折り返し方向における折り返し部の端部から中央部までの長さをL、折り返し方向の折り返し部の端部から中央部に向かって長さLの1/3の領域を折り返し部、とした際に、折り返し部が、中央厚さより厚い部分を有し、
折り返し部において、隣接する2層の圧電フィルムの間に空隙を有し、または、隣接する2層の圧電フィルムの間が貼着剤で満たされている、積層圧電素子。
[2] 折り返しによって積層された隣接する2層の圧電フィルムを貼着する貼着層を有する、[1]に記載の積層圧電素子。
[3] 圧電フィルムを、複数回、折り返して積層する、[1]または[2]に記載の積層圧電素子。
[4] 積層方向に隣接する折り返し部の外側の端部の位置が、圧電フィルムの折り返し方向で異なる、[1]~[3]のいずれかに記載の積層圧電素子。
[5] 圧電フィルムが厚さ方向に分極されている、[1]~[4]のいずれかに記載の積層圧電素子。
[6] 圧電体層の高分子材料が、シアノエチル基を有する高分子材料である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層圧電素子。
[7] 高分子材料が、シアノエチル化ポリビニルアルコールである、[6]に記載の積層圧電素子。
[8] 積層圧電素子の長手方向の端部に、圧電フィルムが突出する突出部を有し、
突出部の長手方向の長さが、長手方向の全長の10%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層圧電素子。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の積層圧電素子と、積層圧電素子が固定される振動板とを有する、電気音響変換器。
[10] 振動板が可撓性を有する、[9]に記載の電気音響変換器。
[11] 振動板と積層圧電素子とが、貼着剤によって貼着されている、[9]または[10]に記載の電気音響変換器。
[12] 振動板が、少なくとも1組の対向する2辺が固定された四角形状であり、対抗する2辺における固定端間の距離をLとした際に、振動板への積層圧電素子の貼着を、『0.1×L』以上、固定端から離間する位置に行う、[11]に記載の電気音響変換器。
[13] 振動板が長方形または正方形である、[12]に記載の電気音響変換器。
[14] 振動板のバネ定数が1×104~1×107N/mである、[12]または[13]に記載の電気音響変換器。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明によれば、圧電フィルムを折り返すことで複数層を積層した積層圧電素子において、折り返し部における電極層の剥離等の損傷を防止できる積層圧電素子、および、この積層圧電素子を用いる電気音響変換器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の積層圧電素子の一例を概念的に示す図である。
【
図2】
図1に示す積層圧電素子を構成する圧電フィルムの一例を概念的に示す図である。
【
図3】圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。
【
図4】圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。
【
図5】圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。
【
図6】本発明の積層圧電素子の一例を説明するための概念図である。
【
図7】本発明の積層圧電素子の別の例を説明するための概念図である。
【
図8】本発明の積層圧電素子の別の例を説明するための概念図である。
【
図9】
図6に示す積層圧電素子の作製方法の一例を概念的に示す図である。
【
図10】
図7に示す積層圧電素子の作製方法の一例を概念的に示す図である。
【
図11】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図12】本発明の電気音響変換器の一例を概念的に示す図である。
【
図13】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図14】実施例における音圧測定方法を説明するための概念図である。
【
図15】実施例における音圧測定方法を説明するための概念図である。
【
図16】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図17】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図18】本発明の積層圧電素子の突出部を説明するための概念図である。
【
図19】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図20】
図19に示す積層圧電素子を作製する圧電フィルムの一例を概念的に示す図である。
【
図21】本発明の積層圧電素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図22】本発明の電気音響変換器の別の例を概念的に示す図である。
【
図23】本発明の電気音響変換器の別の例を概念的に示す図である。
【
図24】本発明の電気音響変換器の別の例を概念的に示す図である。
【
図25】本発明の電気音響変換器の別の例を概念的に示す図である。
【
図26】
図2に示す圧電フィルム12を4層積層した積層圧電素子を用いる電気音響変換器による振動板の振動のシミュレーション結果である。
【
図28】本発明の戦記音響変換器の別の例を説明するための概念図である。
【
図29】本発明の戦記音響変換器の別の例を説明するための概念図である。
【
図30】本発明の戦記音響変換器の別の例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の積層圧電素子および電気音響変換器について、添付の図面に示される好適実施態様を基に、詳細に説明する。
【0013】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、以下に示す図面は、本発明を説明するための概念図である。従って、各構成部材の厚さ、大きさ、形状および位置関係等は、必ずしも実際のものと同じではない。
【0014】
図1に、本発明の積層圧電素子の一例を概念的に示す。
図1に示す積層圧電素子10は、1枚の圧電フィルム12を、4回、折り返すことにより、5層の圧電フィルム12を積層したような状態としたものである。圧電フィルム12は、圧電体層20の両面に電極層24、26を有し、両電極層24、26を覆って、保護層28、30を有するものである。
後に詳述するが、本発明の積層圧電素子10は、このように蛇腹状に折り返して圧電フィルム12を積層した積層圧電素子において、圧電フィルム12の折り返し部40が、中央部よりも厚い部分を有し、かつ、折り返し部40が、空隙を有し、あるいは、貼着剤で満たされている。
本発明の積層圧電素子10は、このような構成を有することにより、折り返し部40における電極層および保護層の剥離を防止している。
【0015】
図1に示す積層圧電素子10は、圧電フィルム12を、4回、折り返すことにより、圧電フィルム12を5層、積層しているが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の積層圧電素子は、圧電フィルム12を、3回以下、折り返すことにより、圧電フィルム12を2層~4層、積層したものでもよい。あるいは、本発明の積層圧電素子は、圧電フィルムを5回以上、折り返すことより、圧電フィルム12を6層以上、積層したものでもよい。
本発明の積層圧電素子は、圧電フィルム12を2回以上、折り返すことで、圧電フィルム12を3層以上、積層したものであることが好ましい。
また、本発明の積層圧電素子は、圧電フィルム12を、1回以上折り返した積層圧電素子を、複数、積層したものであってもよい。
【0016】
図2に、圧電フィルム12を断面図によって概念的に示す。
図2に示すように、圧電フィルム12は、圧電性を有するシート状物である圧電体層20と、圧電体層20の一方の面に積層される第1薄膜電極24と、第1薄膜電極24上に積層される第1保護層28と、圧電体層20の他方の面に積層される第2薄膜電極26と、第2薄膜電極26上に積層される第2保護層30とを有する。後述するが、圧電フィルム12は、厚さ方向に分極されている。
【0017】
圧電フィルム12において、圧電体層20は、好ましい態様として、
図2に概念的に示すように、高分子材料を含むマトリックス34中に、圧電体粒子36を分散してなる高分子複合圧電体からなるものである。マトリックス34は、好ましくは、常温で粘弾性を有する高分子材料を含むことが好ましく、常温で粘弾性を有する高分子材料からなることがより好ましい。すなわち、マトリックス34は、常温で粘弾性を有する、粘弾性マトリックスであることが好ましい。
なお、本発明において、「常温」とは、0~50℃程度の温度域を指す。
【0018】
ここで、高分子複合圧電体(圧電体層20)は、次の用件を具備したものであることが好ましい。
(i) 可撓性
例えば、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持する場合、絶えず外部から、数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けることになる。この時、高分子複合圧電体が硬いと、その分大きな曲げ応力が発生し、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生し、やがて破壊に繋がる恐れがある。従って、高分子複合圧電体には適度な柔らかさが求められる。また、歪みエネルギーを熱として外部へ拡散できれば応力を緩和することができる。従って、高分子複合圧電体の損失正接が適度に大きいことが求められる。
【0019】
以上をまとめると、エキサイターとして用いるフレキシブルな高分子複合圧電体は、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、高分子複合圧電体の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。
さらに、貼り付ける相手材(振動板)の剛性(硬さ、コシ、バネ定数)に合わせて、積層することで、簡便にバネ定数を調節できることが好ましく、その際、詳細は後述するが、
図1に示す貼着層14は薄ければ薄いほど、エネルギー効率を高めることができる。
【0020】
一般に、高分子固体は粘弾性緩和機構を有しており、温度上昇あるいは周波数の低下と共に大きなスケールの分子運動が貯蔵弾性率(ヤング率)の低下(緩和)あるいは損失弾性率の極大(吸収)として観測される。その中でも、非晶質領域の分子鎖のミクロブラウン運動によって引き起こされる緩和は、主分散と呼ばれ、非常に大きな緩和現象が見られる。この主分散が起きる温度がガラス転移点(Tg)であり、最も粘弾性緩和機構が顕著に現れる。
高分子複合圧電体(圧電体層20)において、ガラス転移点が常温にある高分子材料、言い換えると、常温で粘弾性を有する高分子材料をマトリックスに用いることで、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の遅い振動に対しては柔らかく振舞う高分子複合圧電体が実現する。特に、この振舞いが好適に発現する等の点で、周波数1Hzでのガラス転移点が常温、すなわち、0~50℃にある高分子材料を、高分子複合圧電体のマトリックスに用いることが好ましい。
【0021】
常温で粘弾性を有する高分子材料としては、公知の各種のものが利用可能である。好ましくは、常温、すなわち0~50℃において、動的粘弾性試験による周波数1Hzにおける損失正接Tanδの極大値が、0.5以上有る高分子材料を用いる。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に、最大曲げモーメント部における高分子マトリックスと圧電体粒子との界面の応力集中が緩和され、高い可撓性が期待できる。
【0022】
また、常温で粘弾性を有する高分子材料は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下、であることが好ましい。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に発生する曲げモーメントが低減できると同時に、20Hz~20kHzの音響振動に対しては硬く振る舞うことができる。
【0023】
また、常温で粘弾性を有する高分子材料は、比誘電率が25℃において10以上有ると、より好適である。これにより、高分子複合圧電体に電圧を印加した際に、高分子マトリックス中の圧電体粒子にはより高い電界が掛かるため、大きな変形量が期待できる。
しかしながら、その反面、良好な耐湿性の確保等を考慮すると、高分子材料は、比誘電率が25℃において10以下であるのも、好適である。
【0024】
このような条件を満たす常温で粘弾性を有する高分子材料としては、シアノエチル化ポリビニルアルコール(シアノエチル化PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリロニトリル、ポリスチレン-ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレート等が例示される。また、これらの高分子材料としては、ハイブラー5127(クラレ社製)などの市販品も、好適に利用可能である。なかでも、高分子材料としては,シアノエチル基を有する材料を用いることが好ましく、シアノエチル化PVAを用いることが特に好ましい。
なお、これらの高分子材料は、1種のみを用いてもよく、複数種を併用(混合)して用いてもよい。
【0025】
このような常温で粘弾性を有する高分子材料を用いるマトリックス34は、必要に応じて、複数の高分子材料を併用してもよい。
すなわち、マトリックス34には、誘電特性や機械的特性の調節等を目的として、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する高分子材料に加え、必要に応じて、その他の誘電性高分子材料を添加しても良い。
【0026】
添加可能な誘電性高分子材料としては、一例として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体およびポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系高分子、シアン化ビニリデン-酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロースおよびシアノエチルソルビトール等のシアノ基またはシアノエチル基を有するポリマー、ならびに、ニトリルゴムやクロロプレンゴム等の合成ゴム等が例示される。
中でも、シアノエチル基を有する高分子材料は、好適に利用される。
また、圧電体層20のマトリックス34において、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する材料に加えて添加される誘電性ポリマーは、1種に限定はされず、複数種を添加してもよい。
【0027】
また、マトリックス34には、誘電性高分子材料以外にも、ガラス転移点Tgを調節する目的で、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリブテン、および、イソブチレン等の熱可塑性樹脂、ならびに、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、および、マイカ等の熱硬化性樹脂を添加しても良い。
さらに、粘着性を向上する目的で、ロジンエステル、ロジン、テルペン、テルペンフェノール、および、石油樹脂等の粘着付与剤を添加しても良い。
【0028】
圧電体層20のマトリックス34において、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する高分子材料以外の材料を添加する際の添加量には、特に限定は無いが、マトリックス34に占める割合で30質量%以下とすることが好ましい。
これにより、マトリックス34における粘弾性緩和機構を損なうことなく、添加する高分子材料の特性を発現できるため、高誘電率化、耐熱性の向上、圧電体粒子36および電極層との密着性向上等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0029】
圧電体粒子36は、ペロブスカイト型またはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子からなるものである。
圧電体粒子36を構成するセラミックス粒子としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛(PLZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライト(BiFe3)との固溶体(BFBT)等が例示される。
【0030】
このような圧電体粒子36の粒径には制限はなく、圧電フィルム12のサイズ、および、積層圧電素子10の用途等に応じて、適宜、選択すれば良い。圧電体粒子36の粒径は、1~10μmが好ましい。
圧電体粒子36の粒径をこの範囲とすることにより、圧電フィルム12が高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0031】
なお、
図2においては、圧電体層20中の圧電体粒子36は、マトリックス34中に、均一かつ規則性を持って分散されているが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、圧電体層20中の圧電体粒子36は、好ましくは均一に分散されていれば、マトリックス34中に不規則に分散されていてもよい。
さらに、圧電体粒子36は、粒径が揃っていても、揃っていなくてもよい。
【0032】
圧電フィルム12において、圧電体層20中におけるマトリックス34と圧電体粒子36との量比には、制限はなく、圧電フィルム12の面方向の大きさおよび厚さ、積層圧電素子10の用途、ならびに、圧電フィルム12に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
圧電体層20中における圧電体粒子36の体積分率は、30~80%が好ましく、50%以上がより好ましく、従って、50~80%とすることが、さらに好ましい。
マトリックス34と圧電体粒子36との量比を上記範囲とすることにより、高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0033】
圧電フィルム12において、圧電体層20の厚さには、特に限定はなく、積層圧電素子10の用途、積層圧電素子10における圧電フィルムの積層数、圧電フィルム12に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
圧電体層20が厚いほど、いわゆるシート状物のコシの強さなどの剛性等の点では有利であるが、同じ量だけ圧電フィルム12を伸縮させるために必要な電圧(電位差)は大きくなる。
圧電体層20の厚さは、8~300μmが好ましく、8~200μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、15~100μmが特に好ましい。
圧電体層20の厚さを、上記範囲とすることにより、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0034】
圧電体層20は、厚さ方向に分極処理(ポーリング)されていることが好ましい。分極処理に関しては、後に詳述する。
【0035】
図2に示すように、図示例の圧電フィルム12は、このような圧電体層20の一面に、第1薄膜電極24を有し、その表面に第1保護層28を有し、圧電体層20の他方の面に、第2薄膜電極26を有し、その表面に第2保護層30を有してなる構成を有する。ここで、第1薄膜電極24と第2薄膜電極26とが電極対を形成する。
なお、
図1に示すように、圧電フィルム12は、これらの層に加えて、例えば、第1薄膜電極24および第2薄膜電極26からの電極の引出しを行う電極引出し部を有し、電極引き出し部が電源16に接続される。また、圧電フィルム12は、圧電体層20が露出する領域を覆って、ショート等を防止する絶縁層等を有していてもよい。
【0036】
すなわち、圧電フィルム12は、圧電体層20の両面を電極対、すなわち、第1薄膜電極24および第2薄膜電極26で挟持し、この積層体を、第1保護層28および第2保護層30で挟持してなる構成を有する。
このように、圧電フィルム12において、第1薄膜電極24および第2薄膜電極26で挾持された領域は、印加された電圧に応じて伸縮される。
なお、本発明において、第1薄膜電極24および第1保護層28、ならびに、第2薄膜電極26および第2保護層30における第1および第2とは、圧電フィルム12を説明するために、便宜的に図面に合わせて名称を付しているものである。従って、圧電フィルム12における第1および第2には、技術的な意味は無く、また、実際の使用状態とは無関係である。
【0037】
圧電フィルム12において、第1保護層28および第2保護層30は、第1薄膜電極24および第2薄膜電極26を被覆すると共に、圧電体層20に適度な剛性と機械的強度を付与する役目を担っている。すなわち、圧電フィルム12において、マトリックス34と圧電体粒子36とからなる圧電体層20は、ゆっくりとした曲げ変形に対しては、非常に優れた可撓性を示す一方で、用途によっては、剛性や機械的強度が不足する場合がある。圧電フィルム12は、それを補うために第1保護層28および第2保護層30が設けられる。
【0038】
第1保護層28および第2保護層30には、制限はなく、各種のシート状物が利用可能であり、一例として、各種の樹脂フィルムが好適に例示される。
中でも、優れた機械的特性および耐熱性を有するなどの理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、および、環状オレフィン系樹脂等からなる樹脂フィルムが、好適に利用される。
【0039】
第1保護層28および第2保護層30の厚さにも、制限はない。また、第1保護層28および第2保護層30の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、第1保護層28および第2保護層30の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれる。そのため、機械的強度やシート状物としての良好なハンドリング性が要求される場合を除けば、第1保護層28および第2保護層30は、薄いほど有利である。
【0040】
圧電フィルム12においては、第1保護層28および第2保護層30の厚さが、圧電体層20の厚さの2倍以下であれば、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
例えば、圧電体層20の厚さが50μmで第1保護層28および第2保護層30がPETからなる場合、第1保護層28および第2保護層30の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。
【0041】
圧電フィルム12において、圧電体層20と第1保護層28との間には第1薄膜電極24が、圧電体層20と第2保護層30との間には第2薄膜電極26が、それぞれ形成される。以下の説明では、第1薄膜電極24を第1電極24、第2薄膜電極26を第2電極26、とも言う。
第1電極24および第2電極26は、圧電体層20(圧電フィルム12)に電圧を印加するために設けられる。
【0042】
本発明において、第1電極24および第2電極26の形成材料には制限はなく、各種の導電体が利用可能である。具体的には、炭素、パラジウム、鉄、錫、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、チタン、クロムおよびモリブデン等の金属、これらの合金、これらの金属および合金の積層体および複合体、ならびに、酸化インジウムスズ等が例示される。中でも、銅、アルミニウム、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズは、第1電極24および第2電極26として好適に例示される。
【0043】
また、第1電極24および第2電極26の形成方法にも制限はなく、真空蒸着およびスパッタリング等の気相堆積法(真空成膜法)やめっきによる成膜や、上記材料で形成された箔を貼着する方法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
【0044】
中でも特に、圧電フィルム12の可撓性が確保できる等の理由で、真空蒸着によって成膜された銅およびアルミニウム等の薄膜は、第1電極24および第2電極26として、好適に利用される。その中でも特に、真空蒸着による銅の薄膜は、好適に利用される。
第1電極24および第2電極26の厚さには、制限はない。また、第1電極24および第2電極26の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
【0045】
ここで、前述の第1保護層28および第2保護層30と同様に、第1電極24および第2電極26の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれる。そのため、第1電極24および第2電極26は、電気抵抗が高くなり過ぎない範囲であれば、薄いほど有利である。
【0046】
圧電フィルム12においては、第1電極24および第2電極26の厚さと、ヤング率との積が、第1保護層28および第2保護層30の厚さとヤング率との積を下回れば、可撓性を大きく損なうことがないため、好適である。
例えば、第1保護層28および第2保護層30がPET(ヤング率:約6.2GPa)で、第1電極24および第2電極26が銅(ヤング率:約130GPa)からなる組み合わせの場合、第1保護層28および第2保護層30の厚さが25μmだとすると、第1電極24および第2電極26の厚さは、1.2μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、中でも0.1μm以下とすることが好ましい。
【0047】
上述したように、圧電フィルム12は、常温で粘弾性を有する高分子材料を含むマトリックス34に圧電体粒子36を分散してなる圧電体層20を、第1電極24および第2電極26で挟持し、さらに、この積層体を、第1保護層28および第2保護層30を挟持してなる構成を有する。
このような圧電フィルム12は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)の極大値が常温に存在することが好ましく、0.1以上となる極大値が常温に存在することがより好ましい。
これにより、圧電フィルム12が外部から数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けたとしても、歪みエネルギーを効果的に熱として外部へ拡散できるため、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生するのを防ぐことができる。
【0048】
圧電フィルム12は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において10~30GPa、50℃において1~10GPaであることが好ましい。
これにより、常温で圧電フィルム12が貯蔵弾性率(E’)に大きな周波数分散を有することができる。すなわち、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことができる。
【0049】
また、圧電フィルム12は、厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において1.0×106~2.0×106N/m、50℃において1.0×105~1.0×106N/mであることが好ましい。
これにより、圧電フィルム12が可撓性および音響特性を損なわない範囲で、適度な剛性と機械的強度を備えることができる。
【0050】
さらに、圧電フィルム12は、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzにおける損失正接(Tanδ)が、0.05以上であることが好ましい。
これにより、圧電フィルム12を用いたスピーカーの周波数特性が平滑になり、スピーカーの曲率の変化に伴って最低共振周波数f0が変化した際における音質の変化量も小さくできる。
【0051】
以下、
図3~
図5の概念図を参照して、
図2に示す圧電フィルム12の製造方法の一例を説明する。
【0052】
まず、
図3に示すように、第1保護層28の上に第1電極24が形成されたシート状物12aを準備する。このシート状物12aは、第1保護層28の表面に、真空蒸着、スパッタリング、および、めっき等によって、第1電極24として銅薄膜等を形成して作製すればよい。
第1保護層28が非常に薄く、ハンドリング性が悪い時などは、必要に応じて、セパレータ(仮支持体)付きの第1保護層28を用いても良い。なお、セパレータとしては、厚さ25~100μmのPET等を用いることができる。セパレータは、第2電極26および第2保護層30を熱圧着した後、第1保護層28に何らかの部材を積層する前に、取り除けばよい。
【0053】
一方で、有機溶媒に、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する高分子材料を溶解し、さらに、PZT粒子等の圧電体粒子36を添加し、攪拌して分散してなる塗料を調製する。以下の説明では、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する高分子材料を、『粘弾性材料』とも言う。
有機溶媒には制限はなく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が利用可能である。
シート状物12aを準備し、かつ、塗料を調製したら、この塗料をシート状物12aにキャスティング(塗布)して、有機溶媒を蒸発して乾燥する。これにより、
図4に示すように、第1保護層28の上に第1電極24を有し、第1電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体12bを作製する。なお、第1電極24とは、圧電体層20を塗布する際の基材側の電極を差し、積層体における上下の位置関係を示すものではない。
【0054】
この塗料のキャスティング方法には、特に、限定はなく、スライドコータおよびドクターナイフ等の公知の塗布方法(塗布装置)が、全て、利用可能である。
なお、粘弾性材料がシアノエチル化PVAのように加熱溶融可能な物であれば、粘弾性材料を加熱溶融して、これに圧電体粒子36を添加/分散してなる溶融物を作製し、押し出し成形等によって、
図3に示すシート状物12aの上にシート状に押し出し、冷却することにより、
図4に示すような、第1保護層28の上に第1電極24を有し、第1電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体12bを作製してもよい。
【0055】
上述したように、圧電フィルム12において、マトリックス34には、シアノエチル化PVA等の粘弾性材料以外にも、PVDF等の高分子圧電材料を添加しても良い。
マトリックス34に、これらの高分子圧電材料を添加する際には、上述した塗料に添加する高分子圧電材料を溶解すればよい。または、上述した加熱溶融した粘弾性材料に、添加する高分子圧電材料を添加して加熱溶融すればよい。
第1保護層28の上に第1電極24を有し、第1電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体12bを作製したら、圧電体層20の分極処理(ポーリング)を行う。
【0056】
圧電体層20の分極処理の方法には、制限はなく、公知の方法が利用可能である。例えば、分極処理を行う対象に、直接、直流電界を印加する、電界ポーリングが例示される。なお、電界ポーリングを行う場合には、分極処理の前に、第1電極24を形成して、第1電極24および第2電極26を利用して、電界ポーリング処理を行ってもよい。
また、本発明の圧電フィルム12を製造する際には、分極処理は、圧電体層20の面方向ではなく、厚さ方向に分極を行うことが好ましい。
なお、この分極処理の前に、圧電体層20の表面を、加熱ローラ等を用いて平滑化する、カレンダー処理を施してもよい。このカレンダー処理を施すことで、後述する熱圧着工程がスムーズに行える。
【0057】
このようにして積層体12bの圧電体層20の分極処理を行う一方で、
図5に示すように、第2保護層30の上に第2電極26が形成されたシート状物12cを、準備する。このシート状物12cは、第2保護層30の表面に、真空蒸着、スパッタリング、めっき等によって第2電極26として銅薄膜等を形成して、作製すればよい。
次いで、
図5に示すように、第2電極26を圧電体層20に向けて、シート状物12cを、圧電体層20の分極処理を終了した積層体12bに積層する。
さらに、この積層体12bとシート状物12cとの積層体を、第2保護層30と第1保護層28とを挟持するようにして、加熱プレス装置や加熱ローラ対等で熱圧着して、圧電フィルム12を作製する。
【0058】
本発明の積層圧電素子10は、圧電フィルム12を折り返すことによって、複数層、積層したものである。
図1に示す積層圧電素子10は、好ましい態様として、折り返しによって積層された、積層方向に隣接する圧電フィルム12を貼着層14(貼着剤)で貼着した構成を有する。
【0059】
本発明において、貼着層14は、隣接する圧電フィルム12を貼着可能であれば、公知のものが、各種、利用可能である。
従って、貼着層14は、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層でも、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。
ここで、本発明の積層圧電素子10は、積層した複数枚の圧電フィルム12を伸縮させることで、例えば、後述するように振動板50を振動させて、音を発生させる。従って、本発明の積層圧電素子10は、各圧電フィルム12の伸縮が、直接的に伝達されることが好ましい。圧電フィルム12の間に、振動を緩和するような粘性を有する物質が存在すると、圧電フィルム12の伸縮のエネルギーの伝達効率が低くなってしまい、積層圧電素子10の駆動効率が低下してしまう。
この点を考慮すると、貼着層14は、粘着剤からなる粘着剤層よりも、固体で硬い貼着層14が得られる、接着剤からなる接着剤層であることが好ましい。より好ましい貼着層14としては、具体的には、ポリエステル系接着剤およびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)系接着剤等の熱可塑タイプの接着剤からなる貼着層が好適に例示される。
接着は、粘着とは異なり、高い接着温度を求める際に有用である。また、熱可塑タイプの接着剤は『比較的低温、短時間、および、強接着』を兼ね備えており、好適である。
【0060】
本発明の積層圧電素子10は、圧電フィルム12を折り返して積層したものである。そのため、本発明の圧電フィルム12では、隣接する圧電フィルム12においては、第1電極24および第1保護層28同士が対面し、また、第2電極26および第2保護層30同士が対面する。
そのため、隣接する圧電フィルム12において、対面する第1保護層28に1以上の貫通孔を設け、また、対面する第2保護層30に1以上の貫通孔を設けて、この貫通孔を埋めるようにして、導電性の貼着層14で、隣接する圧電フィルム12を貼着してもよい。あるいは、保護層に形成した貫通孔を、銀ペースト等の導電性の材料で埋めた上で、導電性の貼着層14で、隣接する圧電フィルム12を貼着してもよい。
このような構成を有することにより、仮に圧電フィルムの折り返し部などで電極層が破断して、断線した場合でも、各層の圧電フィルム12に、適正に、駆動電力を供給することが可能になる。
【0061】
導電性を有する貼着層14には、制限はなく、公知のものが利用可能である。
従って、導電性を有する貼着層14は、貼着層14を構成する接着剤および粘着剤等自身が導電性を有するものであってもよく、あるいは、導電性を有さない接着剤および粘着剤等に、金属粒子、導電性のフィラーおよび金属繊維等を分散させて導電性にした、貼着層14であってもよい。また、例えば藤倉化成社製のドータイトなど、乾燥することで硬化する銀ペースト等も利用可能である。
また、貫通孔は、一例として、レーザ加工、ならびに、溶剤エッチングおよび機械研磨などによる保護層の除去による形成など、公知の方法で形成すればよい。
【0062】
本発明の積層圧電素子10において、貼着層14の厚さには制限はなく、貼着層14の形成材料に応じて、十分な貼着力(接着力、粘着力)を発現できる厚さを、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明の積層圧電素子10は、貼着層14が薄い方が、圧電体層20の伸縮エネルギー(振動エネルギー)の伝達効果を高くして、エネルギー効率を高くできる。また、貼着層14が厚く剛性が高いと、圧電フィルム12の伸縮を拘束する可能性もある。さらに、上述のように、本発明の積層圧電素子10は、隣接する圧電フィルム12では、同じ極性の電極層が対面するので、同士がショートする恐れが無い。そのため、本発明の積層圧電素子10は、貼着層14を薄くできる。
この点を考慮すると、貼着層14は、圧電体層20よりも薄いことが好ましい。すなわち、本発明の積層圧電素子10において、貼着層14は、硬く、薄いことが好ましい。
具体的には、貼着層14の厚さは、貼着後の厚さで0.1~50μmが好ましく、0.1~30μmがより好ましく、0.1~10μmがさらに好ましい。
【0063】
本発明の積層圧電素子10においては、貼着層14のバネ定数が高いと、圧電フィルム12の伸縮を拘束する可能性がある。従って、貼着層14のバネ定数は圧電フィルム12のバネ定数と同等か、それ以下であることが好ましい。なお、バネ定数は、『厚さ×ヤング率』である。
具体的には、貼着層14の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において2.0×106N/m以下、50℃において1.0×106N/m以下であることが好ましい。
また、貼着層の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの内部損失が、粘着剤からなる貼着層14の場合には25℃において1.0以下、接着剤からなる貼着層14の場合には25℃において0.1以下であることが好ましい。
【0064】
なお、本発明の積層圧電素子において、貼着層14は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要素ではない。
従って、本発明の積層圧電素子は、貼着層14を有さず、公知の圧着手段、締結手段、および、固定手段等を用いて、積層圧電素子を構成する圧電フィルム12を積層して、密着させて、積層圧電素子を構成してもよい。例えば、圧電フィルム12が矩形である場合には、四隅をボルトナットのような部材で締結して積層圧電素子を構成してもよく、または、四隅と中心部とをボルトナットのような部材で締結して積層圧電素子を構成してもよい。あるいは、圧電フィルム12を積層した後、周辺部(端面)に粘着テープを貼着することで、積層した圧電フィルム12を固定して、積層圧電素子を構成してもよい。
しかしながら、この場合には、電源16から駆動電圧を印加した際に、個々の圧電フィルム12が独立して伸縮してしまい、場合によっては、各圧電フィルム12各層が逆方向に撓んで空隙ができてしまう。このように、個々の圧電フィルム12が独立して伸縮した場合には、積層圧電素子としての駆動効率が低下してしまい、積層圧電素子全体としての伸縮が小さくなって、当接した振動板等を十分に振動させられなくなってしまう可能性がある。特に、各圧電フィルム12各層が逆方向に撓んで空隙ができてしまった場合には、積層圧電素子としての駆動効率の低下は大きい。
この点を考慮すると、本発明の積層圧電素子は、図示例の積層圧電素子10のように、隣接する圧電フィルム12同士を貼着する貼着層14を有することが好ましい。
【0065】
図1に示すように、圧電フィルム12の第1電極24および第2電極26には、圧電フィルム12を伸縮させる駆動電圧を印加する電源16が接続される。
電源16には、制限はなく、直流電源でも交流電源でもよい。また、駆動電圧も、各圧電フィルム12の圧電体層20の厚さおよび形成材料等に応じて、各圧電フィルム12を適正に駆動できる駆動電圧を、適宜、設定すればよい。
【0066】
第1電極24および第2電極26から電極の引き出し方法には、制限はなく、公知の各種の方法が利用可能である。
一例として、第1電極24および第2電極26に銅箔等の導電体を接続して外部に電極を引き出す方法、および、レーザ等によって第1保護層28および第2保護層30に貫通孔を形成して、この貫通孔に導電性の材料を充填して外部に電極を引き出す方法、等が例示される。
好適な電極の引き出し方法として、特開2014-209724号公報に記載される方法、および、特開2016-015354号公報に記載される方法等が例示される。
また、積層圧電素子10から圧電フィルム12が突出する突出部を設け、この突出部の第1電極24および第2電極26を、外部の電源と接続してもよい。この点に関しては、後に詳述する。
【0067】
図1に示すように、本発明の積層圧電素子10は、圧電フィルム12を折り返すことで、圧電フィルム12を、複数層、積層した構成を有する。
ここで、本発明の積層圧電素子10は、折り返して積層される2層の圧電フィルム12、すなわち、折り返されることで積層された、積層方向に隣接する2層の圧電フィルム12において、折り返し部が、中央部の厚さよりも厚い部分を有する。
具体的には、折り返して積層された隣接する圧電フィルム12において、折り返し方向の中央部の厚さを中央厚さ、折り返し方向における折り返し部の端部から中央部までの長さをL、折り返し方向の折り返し部の端部から中央部に向かって長さLの1/3の領域を折り返し部、とした際に、折り返し部が、中央厚さより厚い部分を有する。
【0068】
より具体的には、
図6に概念的に示すように、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察した積層圧電素子10の折り返し方向の断面において、折り返し方向の中央部Cの厚さすなわち中央厚さを厚さtとする。
図示例のように、積層圧電素子10が、折り返して積層された隣接する2層の圧電フィルム12を貼着する貼着層14を有する場合には、中央部Cの厚さtは、折り返して積層された隣接する2層の圧電フィルム12の厚さと、その間の貼着層14の厚さとの合計、すなわち、『中央部Cの厚さt=圧電フィルム12の厚さ+貼着層14の厚さ+圧電フィルム12の厚さ』となる。積層圧電素子10が、貼着層14を有さない場合には、中央部Cの厚さtは、折り返して積層された隣接する2層の圧電フィルム12の厚さの合計、すなわち、『中央部Cの厚さt=圧電フィルム12の厚さ+圧電フィルム12の厚さ』となる。
また、この断面において、折り返し方向における折り返しの先端側の端部から、中央部Cまでの長さをLとする。
さらに、この断面において、折り返し方向における折り返しの先端側の端部から、長さLの1/3の領域(L/3の領域)を折り返し部40とする。
本発明の積層圧電素子10は、圧電フィルム12を折り返した全ての折り返し部40において、厚さが、中央部Cの厚さtよりも厚い部分を有する。
なお、本発明において、厚さtとは、圧電フィルム12の積層方向の厚さである。また、折り返し方向の中央部Cとは、積層圧電素子10を積層方向に見た平面形状における、圧電フィルム12の折り返し方向の中央部である。積層方向とは、言い換えれば、圧電フィルム12の主面(最大面)と直交する方向である。
【0069】
さらに、本発明の積層圧電素子10は、この折り返し部40において、折り返し部40を形成する圧電フィルム12の間、すなわち、折り返されて隣接する圧電フィルム12の間に、
図6に示すように、空隙40aを有する。
または、本発明の積層圧電素子10は、
図7に概念的に示すように、この折り返し部40において、折り返し部40を形成する圧電フィルム12の間が、貼着層14すなわち硬化後の貼着剤によって満たされている。
なお、本発明の積層圧電素子10において、折り返し部40を形成する圧電フィルム12の間に空隙40aを有する構成は、例えば
図8に概念的に示すように、折り返し部40の任意の一部または複数の部位が空隙40aになっていればよい。すなわち、折り返し部40において、空隙40aの位置には制限はない。
【0070】
本発明の積層圧電素子10は、一枚のシート状物を、蛇腹状に返してなるものである。このような本発明の積層圧電素子10は、折り返して積層された、隣接する2層の圧電フィルム12において、折り返し方向と直交する方向では、折り返し部の形状、折り返し部の最大厚さ、および、中央部Cの厚さは、全域で、ほぼ、同じである。折り返し方向と直交する方向とは、
図1および
図6~
図8において、紙面と直交する方向である。
従って、本発明の積層圧電素子10においては、このような観察を、折り返し方向の任意の1断面で行い、この任意の1断面において、全ての折り返し部が上記の条件を満たしていればよい。
なお、顕微鏡による積層圧電素子10の断面の観察は、一例として、観察する試料をエポキシ樹脂等の透明な樹脂に包埋し、ミクロトームおよびイオンミリングを用いて積層圧電素子10を折り返し方向に断面加工して行えばよい。
なお、走査型電子顕微鏡による観察時には、必要に応じて、切断面にオスミウムコートを設けてもよい。
【0071】
本発明の積層圧電素子10は、このような構成を有することにより、折り返し部40において、第1電極24および第1保護層28、ならびに、第2電極26および第2保護層30が、圧電体層20からの剥離すること、および、第1電極24および第2電極が破断すること等を防止して、目的とする圧電性能を得ることができる。
【0072】
特許文献1にも記載されるように、複数枚の圧電フィルムを積層して積層体とすることにより、全体として圧電フィルムの剛性を高くして、圧電効果を向上し、優れた圧電特性を発現できる。
このような積層体において、特許文献1に記載されるように、1枚の圧電フィルムを折り返して積層することにより、構成を簡易にして、かつ、製造も容易になる。加えて、1枚の圧電フィルムを折り返すので、複数の圧電フィルムを積層した場合のように、個々の圧電フィルムに駆動電力を供給する必要が無く、外部電源との接続も用意である。
【0073】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、圧電フィルムを折り返して、複数層、積層にした構成では、折り返し部において、圧電フィルムの外側は伸長された状態となり、内側は収縮された状態となる。
そのため、折り返し部では、電極層にストレスが掛かってしまい、折り返しの外側では、電極層が破断する可能性が有る。また、折り返しの内側では、収縮されたストレスによって電極層が圧電体層から剥離して、浮き上がってしまう場合も有る。
電極層が破断すれば、その部分に電力が集中して、発熱する等の不都合が生じる。また、電極層が剥離すれば、圧電体層は駆動できす、さらに、剥離部の比誘電率が変わってしまうので、目的とする圧電特性が得られない。
【0074】
これに対して、本発明の積層圧電素子10は、折り返して積層される圧電フィルム12、すなわち、折り返しによって隣接する圧電フィルム12は、折り返し部40が中央部Cの厚さtよりも厚い部分を有し、かつ、折り返し部40が空隙を有し、または、貼着層14で満たされている。
そのため、本発明の積層圧電素子10は、折り返し部40における圧電フィルム12の折り返しが緩やかになる。すなわち、本発明の積層圧電素子10は、折り返し部40における、折り返される圧電フィルム12の曲率を大きくできる。
これにより、本発明の積層圧電素子10は、折り返し部40において、電極および保護層に掛かるストレスを低減できる。そのため、本発明の積層圧電素子10は、折り返し部40において、第1電極24および第1保護層28、ならびに、第2電極26および第2保護層30が、圧電体層20からの剥離すること、および、第1電極24および第2電極26の破断を防止できる。その結果、本発明の積層圧電素子10は、目的とする圧電性能を安定して発現することが可能になる。
【0075】
本発明の積層圧電素子10においては、中央部Cの厚さtに対する折り返し部40の厚さには、制限はない。すなわち、本発明の積層圧電素子10において、折り返し部40は、中央部Cの厚さtよりも厚い部分を有すればよい。
本発明においては、基本的に、折り返し部40の厚さと、中央部Cの厚さtとの差が大きいほど、圧電体層20と第1電極24および第2電極26との剥離等を好適に防止できる。
この点を考慮すると、本発明の積層圧電素子10において、折り返し部40の最大厚さtmaxは、中央部Cの厚さtの1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましい。
なお、折り返し部40の厚さが厚すぎると、積層圧電素子10が不要に厚くなる、積層圧電素子10において、折り返し部40に対応する位置と中央部Cとの厚さの差が大きくなる等の不都合を生じる可能性がある。
この点を考慮すると、折り返し部40の最大厚さtmaxは、中央部Cの厚さtの10倍以下が好ましい。
なお、中央部Cの厚さtは、上述した折り返し部40の厚さと同様の方法で観察を行って、測定すればよい。
【0076】
このような本発明の積層圧電素子10は、各種の方法で作製できる。
例えば、
図6に示すような、折り返し部40の外側端部近傍が空隙40aとなっている積層圧電素子10は、一例として、
図9に示すように作製すればよい。
この方法では、まず、上段に示すように、圧電フィルム12に貼着層14となる貼着剤14aを塗布して、かつ、円柱状の棒状体42を圧電フィルム12に当接する。
次いで、中段に示すように、棒状体42を支点にして圧電フィルム12を折り返して、貼着剤14aに積層する。
その後、貼着剤14aを硬化して、折り返した圧電フィルム12を貼着した後、下段に示すように、棒状体42を抜き取る。
これを繰り返すことで、折り返し部40の外側端部近傍が空隙40aとなっている積層圧電素子10を作製できる。
【0077】
この作製方法において、棒状体42を残したままにしておくと、棒状体42が圧電フィルム12の振動を阻害する上に、部分的に重量が重くなってしまう。その結果、積層圧電素子の圧電特性が変わってしまい、目的とする性能を得ることができなくなってしまう。
しかも、棒状体42が圧電フィルム12の振動を阻害することで、第1電極24および第2電極26、ならびに、第1保護層28および第2保護層30の1以上が破損してしまう可能性も有る。
従って、この製造方法では、必ず、棒状体42は除去する必要がある。
【0078】
図7に示すように、折り返し部40が貼着層14で満たされている積層圧電素子10は、一例として、
図10に示すように作製すればよい。
この方法では、まず、上段に示すように、圧電フィルム12に貼着層14となる貼着剤14aを塗布する。この際に、貼着剤14aは、積層圧電素子10において想定する貼着層14の厚さよりも厚くする。
次いで、上から2段目に示すように、圧電フィルム12を折り返して、貼着剤14aに積層する。
次いで、上から3段目に示すように、ローラ46によって、中央側から折り返し部の端部に向かって積層した圧電フィルム12を押圧する。これにより、下段に示すように、折り返し部40を貼着剤14aで満たすことができる。その後、貼着剤14aを硬化して、貼着層14とする。
これを繰り返すことで、折り返し部40が貼着層14で満たされている積層圧電素子10を作製できる。
【0079】
上述したように、本発明の積層圧電素子10は、圧電フィルム12を折り返すことで、圧電フィルム12を複数層、積層した構成を有するものであり、折り返して積層された圧電フィルム12は、折り返し部40に中央部よりも厚い部分を有する。
そのため、本発明の積層圧電素子10は、3回以上の折り返しを行って、折り返し部40が積層された場合には、折り返し部40の厚さによっては、積層圧電素子10の折り返し方向の端部が、中央部よりも厚くなってしまう可能性が有る。
【0080】
これを防止するために、本発明の積層圧電素子は、3回以上、圧電フィルム12を折り返す場合には、
図11に概念的に示す積層圧電素子10Aように、圧電フィルム12の積層方向に隣接する折り返し部40の端部の位置を、圧電フィルム12の折り返し方向に異なる位置とすることが好ましい。すなわち、圧電フィルム12の積層方向に隣接する折り返し部40は、端部の位置を圧電フィルム12の折り返し方向にずらすことが好ましい。
これにより、積層圧電素子10Aの厚さを、全面的に均一にできる。
折り返し部40において、折り返し方向の端部の位置のズレ量には、制限はなく、積層圧電素子の厚さが、面方向で均一になるズレ量を、適宜、設定すればよい。従って、少なくとも、積層方向に隣接する折り返し部40において、最大厚さt
maxの位置が、折り返し方向に異なっていればよい。
なお、上述のように、本発明の積層圧電素子は、圧電フィルム12を、1回以上折り返した積層圧電素子を、複数、積層したものであってもよい。この際においても、同様に、積層方向に隣接する折り返し部において、端部の位置を折り返し方向にずらすことが好ましい。
【0081】
このような本発明の積層圧電素子10は、一例として、
図12に概念的に示すように、貼着層52によって振動板50に貼着(固定)されて、振動板50から音を発生するための、エキサイターとして用いられる。言い換えれば、振動板50と積層圧電素子10とは、貼着層52を介して、互いに接触して固定されており、積層圧電素子10は、振動板50から音を発生するための、エキサイターとして作用する。
すなわち、
図12には、本発明の電気音響変換器の一例が示される。
【0082】
上述したように、本発明の積層圧電素子10において、複数層が積層される圧電フィルム12を構成する圧電体層20は、マトリックス34に圧電体粒子36を分散してなるものである。また、圧電体層20を厚さ方向で挟むように、第1電極24および第2電極26が設けられる。
【0083】
このような圧電体層20を有する圧電フィルム12の第1電極24および第2電極26に電圧を印加すると、印加した電圧に応じて圧電体粒子36が分極方向に伸縮する。その結果、圧電フィルム12(圧電体層20)が厚さ方向に収縮する。同時に、ポアゾン比の関係で、圧電フィルム12は、面方向にも伸縮する。
この伸縮は、0.01~0.1%程度である。
上述したように、圧電体層20の厚さは、好ましくは8~300μm程度である。従って、厚さ方向の伸縮は、最大でも0.3μm程度と非常に小さい。
これに対して、圧電フィルム12すなわち圧電体層20は、面方向には、厚さよりもはるかに大きなサイズを有する。従って、例えば、圧電フィルム12の長さが20cmであれば、電圧の印加によって、最大で0.2mm程度、圧電フィルム12は伸縮する。
【0084】
上述したように、振動板50は、貼着層52によって積層圧電素子10に貼着されている。従って、圧電フィルム12の伸縮によって、振動板50は撓み、その結果、振動板50は、厚さ方向に振動する。
この厚さ方向の振動によって、振動板50は、音を発する。すなわち、振動板50は、圧電フィルム12に印加した電圧(駆動電圧)の大きさに応じて振動して、圧電フィルム12に印加した駆動電圧に応じた音を発生する。
【0085】
ここで、PVDF等の高分子材料からなる一般的な圧電フィルムは、分極処理後に一軸方向に延伸処理することで、延伸方向に対して分子鎖が配向し、結果として延伸方向に大きな圧電特性が得られることが知られている。そのため、一般的な圧電フィルムは、圧電特性に面内異方性を有し、電圧を印加された場合の面方向の伸縮量に異方性がある。
これに対して、本発明の積層圧電素子10において、マトリックス34中に圧電体粒子36を分散してなる高分子複合圧電体からなる圧電フィルム12は、分極処理後に延伸処理をせずとも大きな圧電特性が得られるため、圧電特性に面内異方性がなく、面方向では全方向に等方的に伸縮する。すなわち、本発明の積層圧電素子10において、圧電フィルム12は、等方的に二次元的に伸縮する。このような等方的に二次元的に伸縮する圧電フィルム12を積層した本発明の積層圧電素子10によれば、一方向にしか大きく伸縮しないPVDF等の一般的な圧電フィルムを積層した場合に比べ、大きな力で振動板50を振動させることができ、より大きく、かつ、美しい音を発生できる。
【0086】
上述したように、本発明の積層圧電素子は、このような圧電フィルム12を折り返すことで、複数層、積層したものである。図示例の積層圧電素子10は、好ましい態様として、さらに、隣接する圧電フィルム12同士を、貼着層14で貼着している。
そのため、1枚毎の圧電フィルム12の剛性が低く、伸縮力は小さくても、圧電フィルム12を積層することにより、剛性が高くなり、積層圧電素子10としての伸縮力は大きくなる。その結果、本発明の積層圧電素子10は、振動板50がある程度の剛性を有するものであっても、大きな力で振動板50を十分に撓ませて、厚さ方向に振動板50を十分に振動させて、振動板50に音を発生させることができる。
また、圧電体層20が厚い方が、圧電フィルム12の伸縮力は大きくなるが、その分、同じ量、伸縮させるのに必要な駆動電圧は大きくなる。ここで、上述したように、本発明の積層圧電素子10において、好ましい圧電体層20の厚さは、最大でも300μm程度であるので、個々の圧電フィルム12に印加する電圧が小さくても、十分に、圧電フィルム12を伸縮させることが可能である。
【0087】
本発明の積層圧電素子を用いる本発明の電気音響変換器において、積層圧電素子10と振動板50とを貼着する貼着層52には、制限はなく、公知の各種の粘着剤および接着剤が利用可能である。
一例として、上述した貼着層14と同様のものが例示される。好ましい貼着層52(貼着剤)も、貼着層14と同様である。
【0088】
本発明の積層圧電素子を用いる本発明の電気音響変換器において、振動板50にも、制限はなく、各種の物品が利用可能である。
振動板50としては、一例として、樹脂製の板およびガラス板等の板材、看板などの広告・告知媒体、テーブル、ホワイトボードおよび投映用スクリーン等のオフィス機器および家具、有機エレクトロルミネセンス(OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイおよび液晶ディスプレイ等の表示デバイス、コンソール、Aピラー、天井およびバンパー等自動車などの車両の部材、ならびに、住宅の壁などの建材等が例示される。
【0089】
本発明の電気音響変換器において、本発明の積層圧電素子10を貼着する振動板50は、可撓性を有することが好ましく、巻き取り可能であることがより好ましい。
可撓性を有する振動板50としては、フレキシブルディスプレイパネルなどの可撓性を有するパネル状の表示デバイスが、特に好適に例示される。また、表示デバイスも、巻き取り可能であることが、より好ましい。
ここで、本発明の電気音響変換器は、振動板50が巻き取られた際に、積層圧電素子10が振動板50から剥離することが無いように、振動板50の巻き取りの曲率に応じて、積層圧電素子10も振動板50と共に曲がるものであることが好ましい。なお、圧電フィルム12は、好適な可撓性を有するので、本発明の積層圧電素子10も、基本的に、良好な可撓性を発現する。
この際において、振動板50の巻き取りの曲率は、基本的に特定の曲率であるが、振動板50の巻き取りの曲率は、可変であってもよい。
後述する、積層圧電素子が、長手方向の端部から突出し、かつ、長手方向の長さが、積層圧電素子の長手方向の10%以上である突出部58を有する構成は、このような巻取り可能な振動板50を用いる本発明の電気音響変換器において、特に効果を発現し、音圧を向上できる。
【0090】
本発明の電気音響変換器において、表示デバイスを振動板50とする際には、積層圧電素子10は、表示デバイスの背面側、すなわち、表示デバイスの非画像表示面側に貼着されることが好ましい。
この際において、貼着層52の面方向のサイズは、積層圧電素子10の平面形状のサイズと同サイズ、あるいは、それ以下のサイズであることが好ましい。
なお、本発明の電気音響変換器において、振動板50として表示デバイスを利用する際には、フレキシブルディスプレイパネル等の表示デバイス自体を振動板50としてもよく、あるいは、表示デバイスに設けられる板状の部材または表示デバイスに係合する板状の部材を振動板50としてもよい。
また、本発明の電気音響変換器を表示デバイスに利用する際には、本発明の電気音響変換器を表示デバイスに組み込んでもよく、あるいは、本発明の電気音響変換器の振動板50で表示デバイスに設けられる板状の部材を振動させてもよく、あるいは、本発明の電気音響変換器を表示デバイスと共にケーシング等に組み込んでもよい。
【0091】
本発明の電気音響変換器において、振動板50が巻き取り可能なものである場合には、積層圧電素子10は、長手方向を振動板50の巻き取り方向と一致させて、振動板50に貼着されることが好ましい。積層圧電素子の長手方向および短手方向に関しては、後に詳述する。
振動板50の巻き取り方向と、積層圧電素子10の長手方向とが一致していることにより、振動板50の巻き取り方向と、積層圧電素子10の短手方向とが一致している場合に比して、より少ない力で振動板50および積層圧電素子10を巻き取ることができる。
【0092】
本発明の電気音響変換器において、振動板50が巻き取り可能である場合には、振動板50を巻き取ってない状態で積層圧電素子10に駆動電流が通電され、振動板50が巻き取られた際には、積層圧電素子10は通電しないようにすることが好ましい。
また、本発明の電気音響変換器において、振動板50が、表示デバイスのように電気駆動するものである場合には、振動板50を巻き取ってない状態で積層圧電素子10および/または振動板50に駆動電流が通電され、振動板50が巻き取られた際には、積層圧電素子10および/または振動板50には通電しないようにすることが好ましい。
これらの通電および非通電を切替える方法は、公知の方法が、各種、利用可能である。
【0093】
上述のように、本発明の電気音響変換器は、貼着層52を用いて、振動板50に、積層圧電素子10を貼着(固定)してなるものである。
このような本発明の電気音響変換器は、振動板50の端部(端辺)を壁等に固定し、および/または、端部を梁等の固定手段によって固定する場合がある。
また、本発明の電気音響変換器において、振動板50の形状には制限はないが、四角形である場合が多い。例えば、上述のように、本発明の電気音響変換器においては、振動板50として、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ等の表示デバイスも好適に利用可能である。表示デバイスを振動板とする場合には、通常、振動板50は長方形である。
【0094】
振動板50が長方形および正方形などの四角形である場合には、振動板50を安定して固定するために、
図22に概念的に示すように、対向する2辺を固定手段70によって固定して、振動板50を支持する場合も多い。
ここで、
図22に概念的に示すように、四角形の振動板50の対向する2辺を固定する2つの固定手段70の距離、すなわち、振動板50の固定端間の距離をLとする。
本発明の電気音響変換器においては、四角形の振動板50の対向する2辺を固定する場合には、固定手段70の振動板内方側の端部、すなわち、振動板50の固定端から、0.1×L以上離間して、積層圧電素子10を振動板50に貼着することが好ましい。
【0095】
すなわち、四角形の振動板50の対向する2辺を固定する場合には、振動板50の固定端と、積層圧電素子10との間に、若干の間隙を有することが好ましい。
このような構成を有することにより、振動板50の固定が、上述した積層圧電素子10の伸縮を阻害することを抑制し、より好適に振動板50を振動して、より音圧の高い音を出力することが可能になる。
【0096】
なお、この際において、
図12に示されるように、積層圧電素子10の端部が、面方向において貼着層52の外方に突出している場合には、貼着層52の端部を、積層圧電素子10の端部と見なす。すなわち、この際には、貼着層52の端部が、振動板50の固定端から0.1×L以上離間するように、積層圧電素子を貼着する。
逆に、積層圧電素子10の端部が、面方向に貼着層52の内部に位置する場合には、積層圧電素子10の端部が、振動板50の固定端から0.1×L以上離間するように、積層圧電素子を貼着すればよい。
【0097】
図26に、四角形の振動板に、種々の大きさの積層圧電素子を貼着した際における、振動板の固定端から積層圧電素子までの距離と、振動板の変位との関係のシミュレーション結果を示す。
【0098】
振動板は、大きさが10×10mm、厚さが0.3mmのステンレス製の正方形の板材を用い、対向する2辺の端部(端辺)を固定した。
積層圧電素子は、正方形の
図2に示す圧電フィルム12を、4層、積層して、各層を貼着層によって貼着した物を用いた。
積層圧電素子は、全面に貼着層を設けて、各辺の方向を一致して振動板の中心に貼着した。従って、積層圧電素子の大きさが異なると、振動板の固定端から積層圧電素子までの距離が異なる。
図26における面積比とは、
図27に概念的に示すように、振動板の固定端間の距離Lを100%とした場合における、一次元的な面積比である。すなわち、面積比100%とは、振動板の固定端から固定端まで、全面に積層圧電素子を貼着した場合である。また、面積比60%とは、
図27の上段に示すように、振動板の固定端から0.2×Lmm、離間して、振動板に積層圧電素子を貼着した場合である。さらに、面積比20%とは、
図27の下段に示すように、振動板の固定端から0.4×Lmm、離間して、振動板に積層圧電素子を貼着した場合である。
【0099】
図26において、破線は、振動板において積層圧電素子が存在しない領域であり、実線は、振動板において積層圧電素子が貼着された領域である。
図26に示されるように、面積比100%、すなわち、振動板の固定端から固定端まで積層圧電素子を貼着した場合には、振動板の変位すなわち振動は、小さい。
これに対して、面積比80%、すなわち、振動板の固定端から0.1×Lmm、離して、振動板に積層圧電素子を貼着することにより、十分に大きく振動板を振動させることができ、すなわち、高い音圧を得られる。
また、本例では、面積比を60%とした場合、すなわち、
図27の上段に示すように、振動板の固定端から0.2×Lmm、離して、振動板に積層圧電素子を貼着した場合に、より大きく振動板50が変位しており、すなわち、より高い音圧が得られている。
以上のように、本発明の電気音響変換器において、四角形の振動板の対向する2辺を固定する際に、振動板の固定端から0.1×Lmm以上、離して、振動板に積層圧電素子を貼着することにより、より好適に振動板を振動して、より音圧の高い音を出力することができる。
また、本例では、面積比を40%とした場合、すなわち、振動板の固定端から0.3×Lmm離して、振動板に積層圧電素子を貼着した場合に、十分大きく振動板50が変位しており、すなわち、十分に高い音圧が得られている。
また、本例では、面積比を20%とした場合、すなわち、
図27の下段に示すように、振動板の固定端から0.4×Lmm離して、振動板に積層圧電素子を貼着した場合にも、面積比100%とした場合に比べて十分大きく振動板50が変位しており、すなわち、十分に高い音圧が得られている。
したがって、本発明の電気音響変換器において、四角形の振動板の対向する2辺を固定する際に、振動板の固定端から0.4×Lmm以下離して、振動板に積層圧電素子を貼着することにより、好適に振動板を振動して、音圧の高い音を出力することができる。
【0100】
本発明の電気音響変換器において、振動板50の辺を固定する固定手段70には、制限はなく、板状物(シート状物、フィルム)の辺(端辺)を固定する、公知の各種の手段が利用可能である。一例として、板状物の辺を支持可能な梁(片持ち梁を含む)、投影用スクリーンの辺の支持に用いられる固定部材、および、例えばパトローネのような巻回したシート状物を引出しおよび巻取り自在に収容する容器のシート引出し口に設けられるシート状物の固定機構等が例示される。
また、振動板50の固定は、固定手段70を用いるのに制限はされない。例えば、貼着剤等を用いて、壁および支持体となる板状物等に、振動板50の端部(端面)を、直接、貼着することで、振動板50を固定してもよい。この場合には、振動板の端部が、振動板50の固定端となる。
【0101】
本発明の電気音響変換器は、積層圧電素子10を1つ有するのに制限はされない。
例えば、電気音響変換器において、音声をステレオ再生すなわち2チャンネルで再生する場合には、
図23に概念的に示すように、固定端間の距離L方向に離間して、2つの積層圧電素子10を振動板50に貼着してもよい。この場合でも、積層圧電素子10は、2つの固定手段70の距離、すなわち、振動板50の固定端間の距離をLとして、振動板50の固定端から、0.1×L以上離間して、振動板50に貼着することが好ましい。
【0102】
また、本発明の電気音響変換器においては、例えば額縁のように、長方形(正方形)の振動板50の4辺を全て固定してもよい。
この場合にも、同様に、1つの対向する2辺を固定する固定手段70a、および、他方の対向する2辺を固定する固定手段70bの、それぞれに対応して、同様に、積層圧電素子10の固定位置を決定することが好ましい。
この際には、
図24に概念的に示すように、振動板50の一方の対向する辺を固定する2つの固定手段70aの距離、すなわち、この対向する辺における振動板50の固定端間の距離をL1とする。また、振動板50の他方の対向する辺を固定する固定する2つの固定手段70bの距離、すなわち、この対向する辺における振動板50の固定端間の距離をL2とする。
その上で、
図24に示すように、振動板50において、固定手段70aの端部すなわち固定手段70aによる固定端から0.1×L1以上、離間し、かつ、固定手段70bの端部すなわち固定手段70bによる固定端から0.1×L2以上、離間する位置に、積層圧電素子50を貼着することが好ましい。
【0103】
本発明の電気音響変換器においては、長方形の振動板50の4辺を全て固定する場合でも、積層圧電素子10を1つのみ有するのに制限はされない。
例えば、電気音響変換器において、音声をステレオ再生し、かつ、センタースピーカを設けるような、2.5チャンネルで再生する場合も有る。この際には、
図25に概念的に示すように、長い固定端間である距離L1の方向に対して、端部近傍に2つのステレオ再生用の積層圧電素子10を設け、中央にセンタースピーカ用の積層圧電素子10を設けてもよい。
この場合でも、積層圧電素子10は、一方の対向する辺を固定する固定手段70aによる固定端間の距離L1と、他方の対向する辺を固定する固定手段70bによる固定端間の距離L2とに応じて、固定手段70aによる固定端から0.1×L1以上、離間し、かつ、固定手段70bによる固定端から0.1×L2以上、離間する位置に、3つの積層圧電素子50を貼着することが好ましい。
【0104】
上述のように、本発明の電気音響変換器においては、四角形の振動板50の対向する辺を固定する固定手段の端部、すなわち、四角形の振動板50の対向する辺の固定端から、0.1×L以上、離間して、積層圧電素子10を振動板に貼着することが好ましい。
ここで、より高い音圧すなわち振動板50の変位量を得られる等の点で、振動板50の固定端から積層圧電素子10までの距離は、0.15×L以上がより好ましく、0.2×L以上がさらに好ましい。
【0105】
一方で、積層圧電素子10の位置が、振動板50の固定端から離間しすぎると、必要な大きさの積層圧電素子10を振動板50に貼着できなくなる、必要な数の積層圧電素子10を振動板50に貼着できなくなる、ステレオ再生などの多チャンネル再生が困難になる、多チャンネル化した場合に積層圧電素子10同士の距離が近すぎてクロストークが発生する等の不都合を生じる可能性がある。
この点を考慮すると、振動板50の固定端から積層圧電素子10までの距離は、0.4×L以下が好ましく、0.3×L以下がより好ましい。
【0106】
振動板50を固定することによる、振動板の振動への影響は、振動板50の剛性によって異なり、振動板50の剛性が高いほど、影響は大きい。すなわち、積層圧電素子10の固定位置を、振動板50の固定端から離間することの効果は、振動板50の剛性が高い場合に、より大きく得ることができる。
この点を考慮すると、四角形の振動板50の対向する2辺を固定し、かつ、振動板50の固定端から0.1×L以上、離間して積層圧電素子10を振動板50に貼着する場合には、振動板50の剛性が、ある程度、高いことが好ましい。
具体的には、振動板50の対向する2辺を固定し、積層圧電素子10の固定位置を、振動板50の固定端から0.1×L以上、離間する場合には、振動板50のバネ定数は、1×104~1×107N/mが好ましく、1×105~1×106N/mがより好ましい。なお、振動板のような板状物のバネ定数は、形成材料のヤング率に、板状物の厚さを乗じることで算出できる。
【0107】
本発明において、振動板の形状は、長方形および正方形に制限はされず、ひし形、台形、および、平行四辺形などの、様々な形状の四角形が利用可能である。
この場合には、
図28に振動板50aを例示して概念的に示すように、固定手段70によって固定される対向する2辺間において、他方の対向する辺の離間方向の様々な位置で、L1、L2、L3…のように、固定端間の距離Lを設定する。
その上で、固定端間の距離がL1の位置では、積層圧電素子10が固定端から0.1×L1以上離間するように、固定端間の距離がL2の位置では、積層圧電素子10が固定端から0.1×L2以上離間するように、固定端間の距離がL3となる位置では、積層圧電素子10が固定端から0.1×L3以上離間するように……となるように、振動板50aにおける積層圧電素子10の貼着位置を決定すればよい。
【0108】
なお、本発明の電気音響変換器において、振動板50の四角形、特に長方形および正方形は、完全な四角形に制限はされない。
すなわち、本発明において、四角形の振動板50は、角部を面取りした形状でもよく、角部を曲線状(R状、ラウンド状)にした形状でもよく、オーバル形状でもよい。
【0109】
また、発明の電気音響変換器において、四角形の振動板における対抗する2辺の固定は、辺の全域に制限はされず、振動板の剛性および振動板の大きさ等に応じて、辺の一部の領域を固定するものでもよい。
この際においては、1辺の50%以上の領域を固定することが好ましく、1辺の70%以上の領域を固定することがより好ましく、1辺の90%以上の領域を固定することがさらに好ましく、1辺の全域を固定することが特に好ましい。
また、上述のように、四角形の角部が面取りされている場合、および、曲線状にされている場合には、面取り等を行われていない領域を1辺の全域としてもよく、あるいは、面取り等を行われている領域を含めて1辺の全域としてもよい。
【0110】
本発明の電気音響変換器において、振動板の形状は、四角形に制限はされず、円形、楕円形、および、四角形以外の多角形等、様々な形状の振動板が利用可能である。
ここで、振動板を固定した場合には、振動板の固定端から、ある程度離間して、振動板に積層圧電素子10を貼着することにより、高い音圧等が得られるという好ましい効果は、振動板の形状によらず、四角形以外の各種の振動板でも同様である。
【0111】
例えば、振動板が六角形および八角形等のように、対向する辺を有する多角形状である場合には、対向する2辺で固定を行い、四角形の振動板50の場合と同様に固定端間の距離Lを設定して、固定端から0.1×L以上離間して、振動板50に積層圧電素子10を貼着することが好ましい。
【0112】
また、
図29に概念的に示すような円形の振動板50bの場合には、振動板50bの全周を囲むように円形(円環状)の固定手段70cを設けることが考えられる。この場合には、固定手段70cの内側が固定端となるので、固定手段70cの内径φを固定端間の距離Lとして、振動板50の固定端から0.1×L以上離間する位置に、積層圧電素子10を貼着すればよい。
また、
図29に示すような円形の振動板50bでは、
図29に円環状の固定手段70cに重ねてハッチで示す固定手段70dおよび固定手段70eのように、円弧状の固定手段で、振動板50bの固定を行うことも考えられる。この際にも、同様に、固定手段の円弧の内径φを固定端間の距離Lとして、振動板50bの固定端から0.1×L以上離間する位置に、積層圧電素子10を貼着すればよい。
【0113】
振動板が三角形および五角形のように、対向する辺を有さない多角形の場合も有る。この場合には、多角形の1辺と、対向する頂点とを固定することが考えられる。
例えば、
図30に概念的に示すように、振動板50cが三角形である場合には、三角形の一辺を固定手段70で固定し、この一辺と対向する頂点を固定手段70fで固定することが考えられる。
この場合には、固定手段70fで固定する頂点から、固定される対向する辺まで垂線Pを下ろし、頂点から固定される辺までの垂線の距離を、固定端間の距離Lとして、振動板50cの固定端(一方は頂点)から0.1×L以上離間する位置に、積層圧電素子10を貼着すればよい。
【0114】
なお、このようなエキサイタとして作用する圧電素子の振動板への貼着位置に関しては、エキサイタとして作用する圧電素子が1枚の圧電フィルムで構成される場合、および、エキサイタとして作用する圧電素子が、カットシート状の圧電フィルムを積層して、好ましくは隣接する圧電フィルムを貼着した積層圧電素子である場合も、同様である。
【0115】
ところで、本発明のように、1枚の圧電フィルムを折り返すことで、複数の圧電フィルムを積層した積層圧電素子は、2つの構成が考えられる。
1つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成である。すなわち、1つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に一致する構成である。
2つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に沿う構成である。すなわち、2つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に一致する構成である。
言い換えれば、圧電フィルムを折り返して積層した積層圧電素子は、圧電フィルムの折り返しによって形成される稜線が、積層圧電素子の長手方向に一致する構成と、積層圧電素子の短手方向に一致する構成とが考えられる。
【0116】
なお、積層圧電素子の長手方向および短手方向とは、具体的には、積層圧電素子を、圧電フィルム12の積層方向に観察した平面形状における長手方向および短手方向である。
積層圧電素子を圧電フィルム12の積層方向に観察した平面形状とは、言い換えれば、積層圧電素子を、圧電フィルム12の主面と直交する方向から観察した際における形状である。
【0117】
具体的には、1枚の圧電フィルムを折り返すことで、5層の圧電フィルムを積層して、20×5cmの積層圧電素子を作製する場合には、以下の2つの構成が考えられる。
なお、以下に示す積層圧電素子においては、図面を簡略化するため、折り返し部における厚さの変化は省略し、折り返して、複数層、積層される圧電フィルム12の厚さは、均一に示す。
1つ目の構成は、
図13に概念的に示すように、20×25cmの矩形の圧電フィルム12Laを、25cmの方向に、5cmずつ4回、折り返すことにより、5層の圧電フィルム12Laを積層した積層圧電素子56Aである。この積層圧電素子56Aでは、圧電フィルム12Laの折り返しによる屈曲部は、積層圧電素子56Aの長手方向である20cmの方向に沿う。すなわち、この積層圧電素子56Aでは、圧電フィルム12Laを折り返すことによって形成される稜線が、積層圧電素子56Aの長手方向に一致する。
2つ目の構成は、
図14に概念的に示すように、100×5cmの矩形の圧電フィルム12Lbを、100cmの方向に、20cmずつ4回、折り返すことにより、5層の圧電フィルム12Lbを積層した積層圧電素子56Bである。この積層圧電素子56Bでは、圧電フィルム12Lbの折り返しによる屈曲部は、積層圧電素子56Bの短手方向である5cmの方向に沿う。すなわち、この積層圧電素子56Bでは、圧電フィルム12Lbを折り返すことによって形成される稜線が、積層圧電素子56Bの短手方向に一致する。
【0118】
本発明において、圧電フィルムを折り返して積層した積層圧電素子は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成、および、積層圧電素子の短手方向に沿う構成の、いずれも好適に利用可能である。
すなわち、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成と、短手方向に沿う構成とは、それぞれに利点が有る。従って、いずれの構成を利用するかは、積層圧電素子の用途等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0119】
また、積層圧電素子には、電源装置などの外部装置と接続するために、第1電極24および第2電極26に接続して、積層圧電素子の外部に至る、引出配線を設けてもよい。なお、引出配線は、必ずしも物理的に外部に突出している必要はなく、電極から電気的に引出すものであることを意味する。
引出配線は、上述した方法を利用して形成可能である。例えば、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、圧電体層20を設けずに、第1電極24および第2電極26をむき出しにして、此処に接続して設けられる。別の例として、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、保護フィルムおよび電極層を剥離して、圧電体層20と電極層との間に銅箔テープ等を挿入するようにして、設けられる。さらに別の例として、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、圧電フィルムの保護層に貫通孔を設け、貫通孔に銀ペーストなどの導電性ペーストを用いて導通部材を形成し、この導通部材に銅箔テープ等を接続して、設けられる。
【0120】
ここで、圧電フィルム12の圧電体層20は、好ましい厚さが8~300μmで、非常に薄い。そのため、ショートを防止するためには、引出配線は、圧電フィルムの面方向に異なる位置に設けることが好ましい。すなわち、引出配線は、圧電フィルムの面方向にオフセットして設けることが好ましい。
【0121】
本発明の積層圧電素子においては、圧電フィルム12が積層圧電素子から突出する突出部を設け、この突出部に引出配線を接続することが好ましい。
例えば、圧電フィルム12Laの折り返しによる屈曲部が、長手方向に沿う積層圧電素子56Aであれば、
図15に概念的に示すように、折り返し方向の一方の端部に出島状の突出部58を設け、此処に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
また、圧電フィルム12Lbの折り返しによる屈曲部が、短手方向に沿う積層圧電素子56Bであれば、
図16に概念的に示すように、折り返し方向の一方の端部を延長して突出部58とし、この突出部に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
さらに、圧電フィルム12Lbの折り返しによる屈曲部が、短手方向に沿う積層圧電素子56Bであれば、
図17に概念的に示すように、折り返し方向と直交する方向の端部、すなわち、圧電フィルム12Lbの長手方向の端部に、出島状の突出部58を設け、此処に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
【0122】
ここで、本発明の積層圧電素子においては、圧電フィルムの突出部は、積層圧電素子の長手方向の端部から突出し、かつ、積層圧電素子の長手方向における突出部58の長さが、積層圧電素子の長手方向の長さの10%以上であることが好ましい。
以下の説明では、積層圧電素子の長手方向における突出部の長さを、単に、『突出部の長さ』ともいう。
なお、本発明の積層圧電素子において、突出部58が積層圧電素子の短手方向の端部から突出する場合には、突出部58の短手方向の長さは、積層圧電素子の短手方向の長さの50%以上であることが好ましい。
【0123】
図18の積層圧電素子56Bの概念図を用いて、具体的に説明する。
この積層圧電素子56Bは、圧電フィルム12Lbの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に沿う積層圧電素子である(
図14および
図17参照)。従って、積層圧電素子56Bの長手方向は、
図18に示すように、圧電フィルム12Laの折り返し方向と直交する方向である。すなわち、積層圧電素子56Bの長手方向は、圧電フィルム12Laの長手方向に一致する。
図18に示すように、積層圧電素子56Bの長手方向の長さをLとする。本発明においては、突出部58は、長手方向の長さLaが、長さLの10%以上すなわち『La≧L/10』となるようにすることが好ましい。
これにより、引出配線から積層圧電素子に駆動電流を流す経路における電流密度を下げられるので、電圧降下を少なくして、圧電特性を向上できる。例えば、上述した電気音響変換器であれば、音圧を向上できる。
【0124】
突出部58の長さLaは、積層圧電素子の長手方向の長さLの50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましく、積層圧電素子56Bの平面形状の長手方向の長さと同じ、または、それ以上であることが最も好ましい。
従って、
図13および
図15に示す、圧電フィルム12Laの折り返しによる屈曲部が、長手方向に沿う積層圧電素子56Aの場合には、
図16に示す積層圧電素子56Bと同様、折り返し方向の一方の端部を延長して突出部とし、この突出部に、引出配線62および引出配線64を接続することが好ましい。この場合には、突出部の長さLaは、積層圧電素子の長手方向の長さLと一致する。すなわち、この場合には、突出部は、積層圧電素子の長手方向の全域となる。
【0125】
なお、突出部58は、折り返して積層される圧電フィルムのいずれの層に設けてもよいが、圧電効率等の点で、最上層または最下層に設けることが好ましい。
また、突出部は、圧電フィルムの最上層と最下層、および、最上層と中間の層と最下層など、複数層に設けてもよく、圧電フィルムの全ての層に設けてもよい。突出部58を圧電フィルムの複数層に設ける場合、突出部58は、全てを積層圧電素子の短手方向の端部に設けてもよく、あるいは、全てを長手方向の端部に設けてもよく、あるいは、短手方向の端部の突出部58と、長手方向の端部の突出部58とが、混在してもよい。
【0126】
例えば、
図19に積層圧電素子56Bで例示するように、積層された圧電フィルム12Lbの5層、全ての層の長手方向の端部から突出して、突出部58を設けてもよい。
このような積層圧電素子56Bは、一例として、
図20に示すような、折り返し部(一点鎖線)に応じて突出部58を設けた圧電フィルム12Lbを用いて作製すればよい。
なお、
図20に示すような圧電フィルム12Lbでは、2以上の突出部58、特に全ての突出部58を連結して設けてもよい。この際には、突出部58は、積層圧電素子56Bの長手方向の端部において、貼着層14よりも突出している部分を突出部58とする。この点に関しては、後述する
図21に示す積層圧電素子56Aも同様である。
【0127】
別の例として、
図21に積層圧電素子56Aで例示するように、図中の最上層は、折り返し方向に圧電フィルム12Laを延長して、積層圧電素子56Aの長手方向の端部から突出する突出部58とし、2層目、3層面、4層目および最下層は、積層圧電素子56Aの短手方向の端部から突出する突出部58を設けてもよい。
この構成においては、例えば、積層圧電素子56Aの短手方向の端部から突出する突出部58を2層目、3層面および4層目とし、最下層も、最上層と同様に、折り返し方向に圧電フィルム12Laを延長して、積層圧電素子56Aの長手方向の端部から突出する突出部58としてもよい。
【0128】
以上、本発明の積層圧電素子および電気音響変換器について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0129】
各種の部材に当接して音を発生させるエキサイター等として、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
10,10A,56A,56B 積層圧電素子
12,12La,12Lb 圧電フィルム
12a、12c シート状物
12b 積層体
14,52 貼着層
16 電源
20 圧電体層
24 第1(薄膜)電極
26 第2(薄膜)電極
28 第1保護層
30 第2保護層
34 マトリックス
36 圧電体粒子
40 折り返し部
40a 空隙
42 棒状体
46 ローラ
50,50a,50b,50c 振動板
58 突出部
62,64 引出配線
70,70a,70b,70c,70d,70e,70f 固定手段