(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】フレーム洗浄機構
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231117BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01L21/304 648E
H01L21/78 L
H01L21/304 644A
(21)【出願番号】P 2019171238
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋浩
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175461(JP,A)
【文献】特開2018-093178(JP,A)
【文献】特開2006-073788(JP,A)
【文献】特開2007-073670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0054498(US,A1)
【文献】特開2018-134723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を固定した状態の環状のフレームを洗浄するフレーム洗浄機構であって、
前記フレームを載置するテーブルと、
前記テーブルを回転させるテーブル回転装置と、
洗浄液を供給するノズルであって、前記テーブルに対向する先端に多孔質弾性体を有するノズルと、
を備えるフレーム洗浄機構。
【請求項2】
前記テーブルに対して前記ノズルを前記テーブルに垂直な方向に相対的に移動させるノズル駆動部を更に備える、請求項1に記載のフレーム洗浄機構。
【請求項3】
前記フレームを洗浄する場合に、前記ノズル駆動部は前記多孔質弾性体を前記テーブル上の前記フレームに接触させる、請求項2に記載のフレーム洗浄機構。
【請求項4】
前記フレームを洗浄する場合に、前記ノズル駆動部は前記多孔質弾性体を前記テーブル上の前記フレームから離隔させる、請求項2に記載のフレーム洗浄機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハを固定するフレームを洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造では、ダイシングテープを用いてウェハ(ワーク)を環状のフレームに固定し、フレームに固定した状態でウェハを各種の加工装置に搬送し、種々の膜をウェハの表面上に形成しつつ、ウェハを加工している。例えば、露光時にはウェハの表面にレジスト膜を形成したり、グルービング(溝加工)の際にはデバイス層を保護する保護膜を形成したりする。
【0003】
これらの膜を形成するために種々の塗布装置が用いられている。例えば、回転塗布装置では、加工対象物の表面の中心付近に塗布液を供給し、その加工対象物の中心軸(回転テーブルの中心軸)を回転軸として加工対象物を回転させることにより、遠心力を用いて塗布液を加工対象物の表面全体に塗布している。フレームはウェハの外周側にあるため、回転塗布装置で塗布液をウェハに塗布する際、塗布液がフレーム上に飛散することがある。また、ウェハの搬送中にフレームに汚れが付着することもある。
【0004】
フレームが塗布液等で汚染された状態で以降の加工工程に進むと、その汚れがウェハに付着してウェハ上に形成されるチップに欠陥が生じる問題や、汚れの粘着性のためにウェハの搬送時にフレームが吸着パッドから離脱しにくくなるという問題が生じることがある。このような問題を避けるため、フレームを洗浄する工程が加工工程の間に行われることがある。
【0005】
例えば、特許文献1はフレーム洗浄工程を含む水溶性樹脂被膜方法を開示している。特許文献1に記載されたフレーム洗浄工程では、フレームと一体になったウェハをスピンナーテーブル(回転テーブル)上に保持した状態で、ウェーハフレームの上方に設けられた洗浄水ノズルからフレームの上面に向けて洗浄水を噴出させると共にスピンナーテーブルを回転させることにより、樹脂被膜を形成する際にフレームの上面に付着した塗布液又は塗布膜を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたフレーム洗浄工程では、ノズルからフレームに向けて噴出させた洗浄水がフレームからウェハ上に飛散(水跳ね)することにより、ウェハ上に形成された塗布膜の品質が低下する(洗浄水で汚染される)という問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、フレームを洗浄する場合に洗浄液の飛散を抑制することが可能なフレーム洗浄機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係わるフレーム洗浄機構は、フレームは加工対象物を固定した状態でフレームを洗浄する洗浄機構であって、フレームを載置するテーブルと、テーブルを回転させるテーブル回転装置と、洗浄液を供給するノズルであって、テーブルに対向する先端に多孔質弾性体を有するノズルと、を備える。
【0010】
第1の態様に係わるフレーム洗浄機構において、洗浄液はノズルの先端の多孔質弾性体から沁みだしてテーブル上に載置されたフレームに緩やかに流れる。これにより、フレームを洗浄する場合にノズルから供給された洗浄液がフレーム上で水跳ねすることを抑制することができる。
【0011】
フレームを洗浄する場合に洗浄液の飛散(水跳ね)を抑制することができるため、フレームに固定された加工対象物が洗浄液で汚染されることを抑制しつつ良好にフレームを洗浄することができる。
【0012】
ここで、好ましくは、上記フレーム洗浄機構は、テーブルに対してノズルを相対的に移動させるノズル駆動部を更に備える。これにより、フレームを洗浄する際に、ノズル駆動部によりノズルとテーブル(テーブル上のフレーム)との相対的位置を変更することが可能となる。例えば、フレームを洗浄する際に、ノズル駆動部により多孔質弾性体をテーブル上のフレームに接触させてもよい。これにより、洗浄液で汚れを溶かしながら、多孔質弾性体の弾性力によってフレームを機械的に洗浄することができる。よって、洗浄液がフレーム上で水跳ねすることを抑制しつつ、フレームを効果的に洗浄することが可能となる。あるいは、フレームを洗浄する際に、ノズル駆動部により多孔質弾性体をテーブル上のフレームから離隔させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の方向の変位を高精度に測定可能なフレーム洗浄機構であって、単純な構成を有するフレーム洗浄機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、例として加工対象物(ワーク)をウェハとするが、加工対象物を限定する趣旨ではない。
【0016】
まず、フレーム洗浄機構10の構成について説明する。
図1及び
図2は本実施形態に係るフレーム洗浄機構10の概略構成を示す平面図及び正面図である。なお、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに直交する方向であり、X軸方向は水平方向、Y軸方向はX軸方向に直交する水平方向、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)である。
図1及び
図2に示すフレーム洗浄機構10は、テーブル14と、ノズル20と、ノズル駆動部30と、テーブル回転装置40と、制御部50とを備える。
【0017】
テーブル14は水平方向に平行であり、不図示の吸引装置を用いてウェハ12(フレーム18)を吸着保持する。例えば、平板状(flat plate-shaped)のウェハ12はダイシングテープ16を介してフレーム18に固定された状態で、ウェハ12の中心がテーブル14の中心とほぼ一致するように、テーブル14上に載置される。
【0018】
ノズル20はフレーム18を洗浄する洗浄液を供給する。ノズル駆動部30はノズル20をZ軸方向に移動させる(後述)。テーブル回転装置40は、不図示のモータを用いて、テーブル14の中心を通りテーブル14面に垂直な(Z軸に平行な)回転軸を中心にしてテーブル14を回転させる。制御部50は、ノズル20、ノズル駆動部30、及びテーブル回転装置40の制御を行う(後述)。なお、
図2では一例として制御部50はノズル駆動部30内に設けられているが、当然ながら、制御部50は任意の場所に設けることが可能である。
【0019】
図3はノズル20の近傍の概略構成図である。
図3において、位置関係が分かりやすいように、ウェハ12、テーブル14、ダイシングテープ16及びフレーム18については断面図を示す。ノズル20はテーブル14上に載置されたフレーム18に対向するように配置され、その先端に多孔質弾性体21を有する。多孔質弾性体21として例えばスポンジが挙げられる。多孔質弾性体21の大きさ(フレーム18と当接する部分の大きさ)は、例えば、環状のフレーム18の幅と同程度である。多孔質弾性体21は弾性体ホルダ25によってノズル20に固定される。
図3において弾性体ホルダ25は略L字形の部材として示されているが、弾性体ホルダ25の形状及び材質は特に限定されない。また、例えば、弾性体ホルダ25を用いずに、接着剤で多孔質弾性体21をノズル20に固定してもよい。ノズル20は洗浄液配管22を介して洗浄液タンク23に接続され、洗浄液配管22上には制御弁24が配置される。洗浄液は洗浄液配管22を介してノズル20に供給され、ノズル20の先端の多孔質弾性体21から沁みだす。使用される洗浄液は半導体の製造段階に応じて適宜選択される。洗浄液として例えば、水(純水)が挙げられる。
【0020】
図4はノズル駆動部30の概略構成図である。ノズル駆動部30は、ノズルホルダ31、アーム32、アクチュエータ33、アクチュエータ固定ブロック37、及び、制御部50を備える。
図4では、例としてシリンダを用いるアクチュエータ33を示す。シリンダとして、エアシリンダ、水圧シリンダ、油圧シリンダ等、任意の種類のシリンダを用いることが可能である。また、例えば、シリンダを用いるアクチュエータの他に、ボールねじとモータとを用いたアクチュエータ等、任意のアクチュエータを使用してもよい。
【0021】
ノズルホルダ31は例えばZ軸に平行に配置される。ノズルホルダ31の一方端にはノズル20の先端がフレーム18に対向するようにノズル20が固定され、ノズルホルダ31の他方端はアーム32に固定される。アーム32は例えばX-Y平面に並行に配置された直棒である。アーム32はノズルホルダ31とアクチュエータ33とを連結する。
【0022】
アクチュエータ33は、カップリング34、回転軸シャフト35及び回転用モータ36を備える。アクチュエータ33の構成は公知であるため、詳しい説明は省略する。回転軸シャフト35はZ軸に平行に(上下方向に)配置されており、回転軸シャフト35のZ軸方向の移動によってアーム32を介してノズルホルダ31もZ軸方向に移動する。これにより、アクチュエータ33はノズル20とテーブル14とのZ軸方向の相対的位置(相対的距離)を変更することができる。
【0023】
アクチュエータ33は回転軸シャフト35の移動量を測定する位置センサ(不図示、例えばエンコーダ)を備える。位置センサによって測定された回転軸シャフト35の移動量から、ノズル20とテーブル14との相対的位置を取得することができる。
【0024】
図5は制御部50の機能ブロック図である。制御部50は、例えば、インターフェース51、ノズル駆動制御部52、流量制御部53及びテーブル回転制御部54を備える。インターフェース51はユーザや各機器との間で命令やデータをやり取りする手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ、スピーカ、データ通信機器(ネットワーク接続機器)等である。
【0025】
ノズル駆動制御部52はユーザからの命令及びアクチュエータ33の位置センサからのデータに基づいてノズル駆動部30を制御する。流量制御部53は制御弁24を制御することによりノズル20に供給される洗浄液の流量を制御する。テーブル回転制御部54はテーブル回転装置40を制御する。ノズル駆動制御部52、流量制御部53及びテーブル回転制御部54は、例えばプロセッサを用いて実現される。
図5では機能に応じてノズル駆動制御部52、流量制御部53及びテーブル回転制御部54を別々に分けて示しているが、実際は1つのプロセッサで実現することも可能である。さらに、制御部50は、ROM(Read Only Memory)(不図示)及びRAM(Random Access Memory)(不図示)等を備える。ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがプロセッサによって実行されることにより、各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0026】
次に、フレーム洗浄機構10によるフレーム18の洗浄の一例について
図3を用いて説明する。この例では、フレーム18を洗浄する際に、まず、ウェハ12が固定された状態のフレーム18をテーブル14上に載置した後、ノズル駆動部30によりノズル20をZ軸方向に移動させ、ノズル20の多孔質弾性体21をフレーム18に当接させる(接触させる)。
【0027】
この状態で、ノズル20の先端の多孔質弾性体21から沁みだすように洗浄液の流量を流量制御部53により制御しつつ、テーブル回転装置40によりテーブル14を1周以上(360°以上)回転させる。このように、ノズル20から沁みだした洗浄液で環状のフレーム18の全体を洗浄する。洗浄中、ノズル20の先端に設けられた多孔質弾性体21の多孔質部からフレーム18上に沁みだした洗浄液は緩やかにフレーム18上から流れ出る。したがって、フレーム洗浄機構10は洗浄液のウェハ12上への飛散を抑制することができる。
【0028】
更に、洗浄中に多孔質弾性体21はフレーム18に当接しているため、洗浄液で汚れを溶かしながら(化学的洗浄)、多孔質弾性体21の弾性力によってフレーム18をこすり洗い(機械的洗浄)することができる。このため、フレーム18を効果的に洗浄することが可能となる。
【0029】
続いて、フレーム洗浄機構10によるフレーム18の洗浄の変形例について
図6を用いて説明する。
図6に示す変形例では、
図3に示す例と比べて、ノズル20の多孔質弾性体21はフレーム18に当接していない(機械的に干渉していない)点が異なるだけであり、その他は
図3に示す例と同じである。多孔質弾性体21とフレーム18との間の距離は洗浄液の粘度等に応じて適宜調整される。
【0030】
この変形例において、ノズル20の先端に設けられた多孔質弾性体21の多孔質部から沁みだした洗浄液は緩やかにフレーム18上に落ち(滴り)、フレーム18上から緩やかに流れ出る。
図3に示す例と同様に、この変形例でもフレーム洗浄機構10は洗浄液のウェハ12上への飛散を抑制することができる。
【0031】
<効果>
以上説明したように、本実施形態に係わるフレーム洗浄機構10によれば、ノズル20の先端に設けられた多孔質弾性体21から沁みだした洗浄液でテーブル14上のフレーム18を洗浄する。これにより、フレーム18上で洗浄液が飛散することを抑制することができる。
【0032】
また、フレーム洗浄機構10では多孔質弾性体21をフレーム18に当接させてフレーム18を洗浄することが可能である。洗浄液で汚れを溶かしながら、多孔質弾性体21の弾性力によってフレーム18を機械的に洗浄することができるため、フレーム18を効果的に洗浄することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0034】
例えば、上記において、ウェハ12が固定された状態のフレーム18をテーブル14に載置して、フレーム18を洗浄する場合について説明したが、フレーム18だけをテーブル14に載置してフレーム18を洗浄することも当然可能である。
【符号の説明】
【0035】
10…フレーム洗浄機構、12…ウェハ、14…テーブル、16…ダイシングテープ、18…フレーム、20…ノズル、21…多孔質弾性体、22…洗浄液配管、23…洗浄液タンク、24…制御弁、25…弾性体ホルダ、30…ノズル駆動部、31…ノズルホルダ、32…アーム、33…アクチュエータ、37…アクチュエータ固定ブロック、40…テーブル回転装置、50…制御部、51…インターフェース、52…ノズル駆動制御部、53…流量制御部、54…テーブル回転制御部