(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】収量推定プログラム、収量推定方法及び収量推定装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20231117BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20231117BHJP
A01G 7/00 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2019111196
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018113610
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110006
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26~30年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願、及び、平成29年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】安 東赫
(72)【発明者】
【氏名】東出 忠桐
(72)【発明者】
【氏名】河崎 靖
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 岳士
(72)【発明者】
【氏名】太田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 泰永
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007630(JP,A)
【文献】特開2011-103870(JP,A)
【文献】J.W. Jones,E. Dayan,L.H. Allen,H. Van Keulen,H Challa,A Dynamic tomato growth and yield model(TOMGRO),American Society of Agricultural Engineers,Vol. 34(2),米国,1991年04月01日,663-672
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の葉面積に関する情報を取得し、
作物が生育する環境情報を取得し、
前記葉面積に関する情報と、前記環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の収量を推定する、
処理をコンピュータに実行させるための収量推定プログラム。
【請求項2】
前記葉面積に関する情報は、前記作物の葉の長さと幅の測定結果を含み、
前記推定する処理では、前記作物の葉の長さと幅の測定結果に基づいて算出した葉1枚当たりの面積を、前記作物の収量の推定に用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の収量推定プログラム。
【請求項3】
前記推定する処理では、前記環境情報に含まれる平均気温に基づいて予測した前記
作物の葉の枚数を、前記作物の収量の推定に用いる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の収量推定プログラム。
【請求項4】
前記推定する処理では、前記環境情報に含まれる空気中の二酸化炭素濃度に基づいて算出した光利用効率を、前記作物の収量の推定に用いる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の収量推定プログラム。
【請求項5】
作物の葉面積に関する情報を取得し、
作物が生育する第1の環境情報を取得し、
前記葉面積に関する情報と、前記第1の環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の第1の収量を推定し、
前記葉面積に関する情報と、前記第1の環境情報とは異なる第2の環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の第2の収量を推定し、
前記第1の収量と前記第2の収量とに基づく情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させるための収量推定プログラム。
【請求項6】
前記出力する処理において、前記第1の収量と前記第2の収量に基づいて、環境を調整する装置を制御するための制御信号を出力する、ことを特徴とする請求項5に記載の収量推定プログラム。
【請求項7】
作物の葉面積に関する情報を取得し、
作物が生育する環境情報を取得し、
前記葉面積に関する情報と、前記環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の収量を推定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする収量推定方法。
【請求項8】
作物の葉面積に関する情報を取得する第1取得部と、
作物が生育する環境情報を取得する第2取得部と、
前記葉面積に関する情報と、前記環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の収量を推定する推定部と、
を備える収量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収量推定プログラム、収量推定方法及び収量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の収穫前に収量がある程度推定できれば、収穫時に必要な作業者数、運搬用燃料、梱包資材数量、収穫用設備等を見積もることができるため、生産や流通における効率化を図ることが可能である。しかるに、従来においては、作物の収量推定は、管理者等が栽培状況を把握した上で、過去の収量データや経験に基づいて行うのみであった。
【0003】
これに対し、最近では、衛星データなどのリモートセンシングデータから得た対象地域の光反射率及びNDVI、又はGNDVIから作物の収量を予測する技術(例えば特許文献1等参照)や、生育が水温に依存する有用生物(例えば藻類)の生産予測に関する技術(例えば、特許文献2等参照)が知られている。また、空撮画像と時系列気象データを用いて収量を予測する技術も知られている(例えば、特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-166851号公報
【文献】特開2012-203875号公報
【文献】特開2015-49号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~3等の技術は、例えばトマトなどの果菜類栽培における収量の推定に適用することができず、汎用的でない。
【0006】
本発明は、作物の収量を精度よく推定することが可能な収量推定プログラム、収量推定方法及び収量推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の収量推定プログラムは、作物の葉面積に関する情報を取得し、
作物が生育する環境情報を取得し、前記葉面積に関する情報と、前記環境情報に含まれる積算日射量と、に基づいて前記作物における積算受光量を算出し、算出した前記積算受光量に基づいて前記作物により生産される乾物量を推定し、推定した前記乾物量に基づいて、前記作物の収量を推定する、処理をコンピュータに実行させるためプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の収量推定プログラム、収量推定方法及び収量推定装置は、作物の収量を精度よく推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る農業システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、サーバのハードウェア構成を示す図であり、
図2(b)は、利用者端末のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】光合成特性に基づく作物の収量の推定手順を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、推定収量DBのデータ構造を示す図であり、
図6(b)は、出力部による出力例を示す図である。
【
図7】時刻ごとの収量の推移を表したグラフの例を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、翌日の環境情報が前日の環境情報と同一であると仮定した場合の時刻ごとの収量のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図8(b)~
図8(d)は、シミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、農業システムの一実施形態について、
図1~
図8に基づいて詳細に説明する。
図1には、一実施形態に係る農業システム100の構成が概略的に示されている。本実施形態の農業システム100は、トマトなどの作物を栽培する大規模施設(例えばハウス)において、作物の収量を推定し、推定した収量が改善するように施設内の機器を制御するシステムである。
【0011】
農業システム100は、
図1に示すように、サーバ10と、利用者端末70と、環境情報取得装置72と、制御対象機器74と、を備える。サーバ10、利用者端末70、環境情報取得装置72、及び制御対象機器74は、インターネットなどのネットワーク80に接続されている。
【0012】
サーバ10は、データセンタ等に設置される情報処理装置であり、環境情報取得装置72において取得される環境情報や、利用者端末70から入力される情報に基づいて、作物の収量を推定する。また、サーバ10は、推定した収量の情報を利用者端末70に出力したり、推定した収量等に基づいて、制御対象機器74を制御するための制御情報を出力する。なお、サーバ10の構成や処理の詳細については後述する。
【0013】
利用者端末70は、作業者、管理者等が利用可能なPC(Personal Computer)等の端末であり、管理者等による作物の生体情報の入力を受け付けてサーバ10に対して送信したり、サーバ10により推定された作物の収量の情報を受信して、表示したりする。利用者端末70は、
図2(b)に示すようなハードウェア構成を有する。すなわち、利用者端末70は、
図2(b)に示すように、CPU(Central Processing Unit)190、ROM(Read Only Memory)192、RAM(Random Access Memory)194、記憶部(ここではHDD(Hard Disk Drive))196、ネットワークインタフェース197、表示部193、入力部195、及び可搬型記憶媒体191の読み取りが可能な可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。これら利用者端末70の構成各部は、バス198に接続されている。表示部193は、液晶ディスプレイ等を含み、入力部195は、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。
【0014】
図1に戻り、環境情報取得装置72は、気温や日射量、CO
2濃度を測定するセンサを含み、サーバ10に対してセンサの測定結果を送信する機能を有している。ここで、環境情報取得装置72は、気温や日射量、CO
2濃度を、例えば5分ごとに測定し、1日の間に測定された測定結果の平均値や積算値を、サーバ10に送信する。なお、環境情報取得装置72は、測定結果を、測定後すぐにサーバ10に送信してもよい。この場合、サーバ10では、受信した測定結果を用いて、1日の間に測定された測定結果の平均値や積算値を求めるようにすればよい。
【0015】
制御対象機器74は、例えば、ハウス内の温度やCO2濃度を調整する空調装置や、日射量を調整する日射量調整装置を含む。制御対象機器74は、サーバ10から制御情報を受信すると、当該制御情報に基づいてハウス内の作物の生育環境を調整する。
【0016】
(サーバ10について)
図2(a)には、サーバ10のハードウェア構成が示されている。
図2(a)に示すように、サーバ10は、コンピュータとしてのCPU90、ROM92、RAM94、記憶部(ここではHDD)96、ネットワークインタフェース97、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。これらサーバ10の構成各部は、バス98に接続されている。サーバ10では、ROM92あるいはHDD96に格納されているプログラム(収量推定プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラム(収量推定プログラムを含む)をCPU90が実行することにより、
図3に示す各部の機能が実現される。なお、
図3の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0017】
図3には、サーバ10の機能ブロック図が示されている。サーバ10においては、CPU90がプログラムを実行することにより、
図3に示すように、第1取得部としての生体情報取得部30、第2取得部としての環境情報取得部32、推定部としての収量推定部34、出力部36、及び修正受付部38として機能する。なお、
図3には、サーバ10のHDD96等に格納されている推定収量DB28についても図示されている。
【0018】
生体情報取得部30は、利用者端末70から入力される作物の生体情報を取得し、収量推定部34に送信する。本実施形態では、生体情報は、作物の葉長及び葉幅、植栽密度を含む。作業者は、作物が有する葉のうち大きさ・形状が平均的な葉を特定し、特定した葉の葉長及び葉幅を測定して、利用者端末70に入力する。また、作業者は、作物の植え付け時に定めた植栽密度を利用者端末70に入力する。ここで、葉長とは、平均的な大きさの葉身の長さを意味し、葉幅とは、葉身が最も広くなる箇所の寸法を意味する。また、栽植密度は、単位土地面積(1m2)当たりの植え付け株数を意味する。
【0019】
環境情報取得部32は、環境情報取得装置72から送信されてくる環境情報を取得し、収量推定部34に送信する。環境情報には、平均気温、積算日射量、平均CO2濃度が含まれる。
【0020】
収量推定部34は、作物の光合成特性を考慮して、生体情報取得部30及び環境情報取得部32から取得した情報に基づいて作物の収量を推定する。収量推定部34は、推定した収量の情報を推定収量DB28に格納する。なお、収量推定部34の具体的な処理、及び推定収量DB28のデータ構造の詳細については後述する。
【0021】
出力部36は、例えば利用者端末70からの求めに応じて、推定収量DB28に格納されている情報を読み出し、利用者端末70に対して送信する。
【0022】
修正受付部38は、利用者端末70から実際の収量の情報が入力された場合に、推定収量DB28に格納されている推定収量を実際の収量で修正する。
【0023】
(サーバ10の処理について)
以下、サーバ10の処理について、
図4のフローチャート及び
図5を用いて詳細に説明する。
図5は、光合成特性に基づく作物の収量の推定手順を示す図である。
図5において、破線枠で示されているデータは、生体情報取得部30が利用者端末70から取得する生体情報であり、グレーの枠で示されているデータは、環境情報取得部32が環境情報取得装置72から取得する環境情報である。また、一点鎖線枠で示されているデータは、予め設定されている情報であり、実線枠で示されているデータは、収量推定部34が計算により求める情報である。なお、
図5においては、
図4の各処理と対応する箇所に、
図4で用いているステップ番号を表示している。
【0024】
図4の処理は、例えば、1日のうち予め定められた時刻に実行されるものとする。なお、
図4の処理が開始される段階では、利用者端末70から、当日(定植後n日目)の作物の生体情報(平均的な葉の葉長及び葉幅、栽植密度)が入力され、当該生体情報を生体情報取得部30が取得しているものとする。また、環境情報取得装置72において当日(定植後n日目)の環境情報が取得され、当該環境情報を環境情報取得部32が取得しているものとする。
【0025】
図4の処理では、まず、ステップS12において、収量推定部34が、利用者端末70から入力され、生体情報取得部30が取得した葉長(mm/leaf)、葉幅(mm/leaf)、栽植密度(plants/m
2)の情報を取得する。なお、生体情報は、作業者が利用者端末70に手入力する場合に限らず、カメラで撮影した画像を解析することにより取得するようにしてもよい。
【0026】
次いで、ステップS14では、収量推定部34が、環境情報取得部32から取得した平均気温に基づいて、展開葉数を計算する。展開葉数とは、展開した(広がった)葉の数を意味し、過去の展開葉数と平均気温の関係を示すデータと、取得した平均気温の値とから、現在の展開葉数を算出(推定)することができる。なお、展開葉数としては、作業者が実際に葉数を計数して利用者端末70に入力した値を用いることとしてもよい。この場合、環境情報取得部32は平均気温の情報を取得しなくてもよい。
【0027】
次いで、ステップS16では、収量推定部34が、葉長と葉幅から個葉面積(平均的な大きさ及び形状の葉1枚の面積)を計算する。この場合、収量推定部34は、葉長と葉幅の積に所定の係数をかけた値を個葉面積(m2/leaf)とすることができる。なお、所定の係数は、過去に得られた葉のデータから予め求めておくなどすればよい。
【0028】
次いで、ステップS18では、収量推定部34が、展開葉数と個葉面積から個体あたり葉面積(m2/plant)を計算する。この場合、収量推定部34は、展開葉数と個葉面積の積を個体あたりの葉面積とする。次いで、ステップS20では、収量推定部34が、個体あたり葉面積と栽植密度から葉面積指数(LAI:Leaf Area Index)を計算する。ここで、葉面積指数は、単位土地面積(1m2)に対する作物の全葉面積(m2)を意味する。すなわち、葉面積指数(m2/m2)は、個体あたり葉面積と栽植密度の積であるといえる。
【0029】
次いで、ステップS22では、収量推定部34が、葉面積指数(LAI)、積算日射量(MJ/m2)、吸光係数から一日の積算受光量を計算する。具体的には、収量推定部34は、次式(1)に基づいて一日の積算受光量(MJ/(m2・d))を算出する。なお、次式(1)の「ILn」は、定植後n日目の積算受光量であり、「k」は、吸光係数であり、「LAIn」は、定植後n日目の葉面積指数であり、「Srn」は、定植後n日目の屋外全天日射である。
ILn=(1-e-k・LAIn)・0.55・0.5・Srn …(1)
【0030】
ここで、0.55は、施設内(ハウス内)の光透過係数を意味し、0.5は、光合成有効放射(PAR:photosynthetically active radiation)に換算するための係数を意味する。
【0031】
次いで、ステップS24では、収量推定部34が、平均CO2濃度から光利用効率を計算する。具体的には、収量推定部34は、次式(2)に基づいて、光利用効率(g/MJ)を算出する。なお、次式(2)の「LUEn」は、n日目の光利用効率であり、「CO2n」は、n日目の日中CO2濃度(n日目の平均CO2濃度)である。また、「m」、「o」は、実測値から得られた係数である。
LUEn=m・CO2n-o …(2)
【0032】
次いで、ステップS26では、収量推定部34が、一日の積算受光量ILnと光利用効率LUEnから一日の総乾物生産量を計算する。具体的には、収量推定部34は、次式(3)に基づいて、一日(n日目)の総乾物生産量DMn(g/(m2・d))を計算する。
DMn=ILn・LUEn …(3)
【0033】
次いで、ステップS28では、収量推定部34が、一日の総乾物生産量と果実分配率から一日の乾物果実収量を計算する。具体的には、収量推定部34は、過去データに基づいて算出される果実分配率と、一日(n日目)の総乾物生産量(DMn)の積を、一日(n日目)の乾物果実収量とする。
【0034】
次いで、ステップS30では、収量推定部34が、一日の乾物果実収量と果実乾物率から一日の生鮮果実収量を計算する。具体的には、収量推定部34は、一日(n日目)の乾物果実収量を、過去データに基づいて算出される果実乾物率で除した値を、一日(n日目)の生鮮果実収量とする。
【0035】
次いで、ステップS32では、収量推定部34が、生鮮果実収量のn日目までの積算値(TDMn)を計算する。このTDMnがn日目までの推定収量となる。
【0036】
以上のようにして推定された収量の情報は、推定収量DB28に格納される。ここで、推定収量DB28は、
図6(a)に示すようなデータ構造を有する。具体的には、推定収量DB28は、「ハウス名」、「年月日」、「生鮮果実収量」のほか、生鮮果実収量(推定収量)を算出する際に用いた、又は算出する際に算出された値(平均気温、平均CO
2濃度、積算日射量、葉長、葉幅、展開葉数、総葉面積、LAI、光利用効率)を格納する。
【0037】
以上により、収量推定部34による
図4の処理は終了する。
【0038】
ここで、管理者等が利用者端末70に対して推定収量を表示する旨の指示を入力したとする。この場合、出力部36は、利用者端末70からその旨の指示を受信すると、推定収量DB28からデータを読み出して、利用者端末70に送信する。例えば、ハウスAの2018年4月6日~13日の推定収量を表示する旨の指示が入力された場合には、出力部36は、推定収量DB28から当該年月日の情報(
図6(a)の8行分のデータ)を読み出して
図6(b)に示すような画面を生成し、利用者端末70に送信する。
【0039】
この場合、例えば、
図6(b)に示す画面において、管理者等が一部情報を修正する場合がある。例えば実際の収量が推定収量と異なる場合には、「生鮮果実収量」の値を変更することがある。この場合には、修正受付部38は、当該修正された情報を取得し、推定収量DB28を更新する。
【0040】
なお、収量推定部34は、
図4の処理を日単位で行う場合に限らず、時間単位で行う機能も有する。すなわち、収量推定部34は、例えば1時間ごとの収量の推移を推定することができる。より具体的には、収量推定部34は、1時間毎の平均気温や平均CO
2濃度、積算日射量を用いることで、1時間毎の収量の推移を推定することができる。この場合、出力部36は、
図7に示すように、時刻ごとの収量の推移を表したグラフを表示する画面を出力することとしてもよい。
【0041】
また、収量推定部34は、例えばハウス内の気温を変化させたり、CO
2濃度を変化させた場合に、推定収量がどのように変化するかをシミュレーションする機能も有する。例えば、収量推定部34が、翌日の環境情報が前日の環境情報と同一であると仮定して収量をシミュレーションしたとする。この場合の時刻ごとの収量の推移を示すグラフが、
図8(a)に示すようなグラフであったとする。この場合、収量推定部34は、例えば、CO
2濃度を所定濃度上昇させた場合、気温を所定温度上昇させた場合、CO
2濃度と気温を上昇させた場合、などについて
図4と同様の処理によりシミュレーションすることができる。
図8(b)は、CO
2濃度を所定濃度上昇させた場合の時刻ごとの収量の推移を示すグラフであり、
図8(c)は、気温を所定温度上昇させた場合の時刻ごとの収量の推移を示すグラフであり、
図8(d)は、CO
2濃度と気温を上昇させた場合の時刻ごとの収量の推移を示すグラフである。なお、
図8(b)~
図8(d)においては、シミュレーションの結果求められた収量の推移が破線で示されており、
図8(a)の推移が実線で示されている。例えば、出力部36は、
図8(b)~
図8(d)のグラフを利用者端末70に出力することで、管理者等にシミュレーション結果を提供する。そして、管理者等がいずれかのグラフを選択した場合には、出力部36は、翌日のハウス内の環境が選択されたグラフに対応する環境になるように、制御対象機器74に対して制御情報を出力する(制御指示を出す)。これにより、管理者等が希望する収量となるようにハウス内の環境を調整することができる。なお、出力部36は、シミュレーション結果のうち収量(推定値)が最も大きくなる環境を特定し、特定した環境になるように制御対象機器74に対して制御情報を出力するようにしてもよい。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、生体情報取得部30が作物の生体情報を取得するとともに、環境情報取得部32が作物が生育する環境情報を取得し、収量推定部34が、取得した生体情報と環境情報とに基づいて、作物の収量を推定する(S14~S30)。これにより、本実施形態では、作物の収量を光合成特性に基づいて推定することで、精度よく収量を推定することができる。また、本実施形態では、管理者等が葉長や葉幅、栽植密度を入力するだけで、簡易に収量を推定することができる。また、収量を精度よく推定できることにより、収穫時に必要な作業者数、運搬用燃料、梱包資材数量、収穫用設備等を正確に見積もることが可能である。
【0043】
また、本実施形態では、生体情報には、葉面積を算出するための情報(葉長及び葉幅)が含まれ、収量推定部34は、生体情報と積算日射量とに基づいて作物における積算受光量を算出し、算出した積算受光量に基づいて作物の収量を推定する。これにより、本実施形態では、作物の葉の状態と葉における日射量とに基づいて、光合成特性に基づく収量の推定を行うため、精度よく作物の収量を推定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、収量推定部34が、作物の葉面積を、葉長と葉幅に基づいて算出するため、管理者等が葉面積を測定しなくてもよくなり、管理者等の手間を省くことができる。
【0045】
また、本実施形態では、収量推定部34は、平均気温に基づいて展開葉数を計算するため、実際の作物の葉数を数えなくてもよい。これにより管理者等の手間を省くことができる。
【0046】
また、本実施形態では、収量推定部34は、環境情報を変化させて収量のシミュレーションを行う機能を有している。これにより、CO2濃度や気温などを変化させた場合に、収量がどのように変化するかを確認することができる。また、出力部36は、シミュレーション結果に基づいて、制御対象機器74の制御情報を出力するため、収量が上がるように制御対象機器74を制御することが可能である。
【0047】
なお、上記実施形態で説明した収量推定方法は、一例である。すなわち、上述した式の一部を改変してもよい。また、上記実施形態において計算で求めた値を実測するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、サーバ10が収量を推定する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、サーバ10の機能(
図3の機能)を各利用者端末70が有していても良い。
【0049】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0050】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0051】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0052】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 サーバ(収量推定装置)
30 生体情報取得部(第1取得部)
32 環境情報取得部(第2取得部)
34 収量推定部(推定部)