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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】ドレス方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20231117BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B24B53/00 K
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019129382
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021013984
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュア ホック シュー
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144206(JP,A)
【文献】特開2006-218571(JP,A)
【文献】特開2002-036233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 - 53/14
H01L 21/301
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルの先端に固定された切削ブレードのフラットドレス方法であって、
保持テーブル上に粘着テープを介して保持されたドレスボードを撮像手段で撮像し、該ドレスボードの外周縁の位置を検出する位置検出ステップと、
該ドレスボードの一端から他端に向かう方向を該スピンドルの軸心と平行に位置付けるとともに、該位置検出ステップで検出された該ドレスボードの外周縁の位置をもとに該ドレスボードの一端の外側で、該ドレスボードに切り込む所定の高さであるとともに、該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる余裕幅となる位置に該切削ブレードの下端を位置付ける位置付けステップと、
該位置付けステップを実施した後、該切削ブレードを該ドレスボードに対して相対移動させて該ドレスボードの該一端から他端へと該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置まで移動させて切削することで該切削ブレードの先端を平坦化するドレスステップと、を備えたドレス方法。
【請求項2】
該ドレスステップで切削した該ドレスボードの切削済み領域に関する情報を記憶する切削済み領域記憶ステップと、
該ドレスステップを実施した後、該保持テーブル上から該ドレスボードを搬出して該保持テーブルで被加工物を保持し、該切削ブレードで該保持テーブル上の被加工物を切削する加工ステップと、
該加工ステップを実施した後、該保持テーブル上から被加工物を搬出し、該保持テーブルで該ドレスボードを保持し、該位置検出ステップで検出された該ドレスボードの外周縁の位置と該切削済み領域記憶ステップで記憶された該ドレスボードの切削済み領域に関する情報に基づいて該ドレスボードの一端の外側で、該ドレスボードに切り込む所定の高さであるとともに、該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置に該切削ブレードの下端を位置付ける第2位置付けステップと、
該第2位置付けステップを実施した後、該切削ブレードを該ドレスボードに対して相対移動させて該ドレスボードの該一端から他端へと該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置まで移動させて切削する第2ドレスステップと、を備えた請求項1に記載のドレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードのフラットドレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)、サファイアなどからなる半導体基板や樹脂パッケージ基板、セラミックス基板など各種板状の被加工物を切削ブレードで切削する切削装置は、被加工物を切削すると、切削ブレードの切り刃の先端が断面円弧状に変形してしまうことがある。
【0003】
切削装置は、定期的に切削ブレードの切り刃の先端をスピンドルの軸心に沿って平坦化するフラットドレスが行われるものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたドレス方法は、テープに貼着してフレームに装着されたドレスボードの一端から他端まで切削ブレードをスピンドルの軸心方向に移動させて、切削ブレードでドレスボードを切削することでフラットドレスしている。このため、切削装置は、予めドレスボードの大きさを記憶しておき、ドレスボードの大きさに基づいて、切削ブレードの移動距離を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたドレス方法は、搬送ユニットがフレームを保持して、フレーム中心と保持テーブル中心が重なるように搬送する。このために、ドレス方法は、フレームに対するドレスボードの貼着位置の誤差や搬送誤差によりチャック中心とドレスボード中心がかならずしも合致しないため、ドレスボードの外周縁よりも余裕幅分外側の位置間で切削ブレードを移動していた。しかしながら、特許文献1に示されたドレス方法は、余裕幅の分、切削ブレードの移動距離が長くなるため、ドレスに要する時間が長時間し、ドレスに要する時間を短縮したいと切望されていた。
【0006】
特にフラットドレスは、通常のダイシングのようにX軸方向に切削ブレードを相対移動させて被加工物を切削する場合に比べて、切削ブレードに負荷がかかるので、相対移動速度を低速に設定する。このために、フラットドレスは、できるだけ余裕幅を短く設定したいと切望されていた。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラットドレスに要する時間を抑制することができるドレス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のドレス方法は、スピンドルの先端に固定された切削ブレードのフラットドレス方法であって、保持テーブル上に粘着テープを介して保持されたドレスボードを撮像手段で撮像し、該ドレスボードの外周縁の位置を検出する位置検出ステップと、該ドレスボードの一端から他端に向かう方向を該スピンドルの軸心と平行に位置付けるとともに、該位置検出ステップで検出された該ドレスボードの外周縁の位置をもとに該ドレスボードの一端の外側で、該ドレスボードに切り込む所定の高さであるとともに、該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる余裕幅となる位置に該切削ブレードの下端を位置付ける位置付けステップと、該位置付けステップを実施した後、該切削ブレードを該ドレスボードに対して相対移動させて該ドレスボードの該一端から他端へと該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置まで移動させて切削することで該切削ブレードの先端を平坦化するドレスステップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記ドレス方法において、該ドレスステップで切削した該ドレスボードの切削済み領域に関する情報を記憶する切削済み領域記憶ステップと、該ドレスステップを実施した後、該保持テーブル上から該ドレスボードを搬出して該保持テーブルで被加工物を保持し、該切削ブレードで該保持テーブル上の被加工物を切削する加工ステップと、該加工ステップを実施した後、該保持テーブル上から被加工物を搬出し、該保持テーブルで該ドレスボードを保持し、該位置検出ステップで検出された該ドレスボードの外周縁の位置と該切削済み領域記憶ステップで記憶された該ドレスボードの切削済み領域に関する情報に基づいて該ドレスボードの一端の外側で、該ドレスボードに切り込む所定の高さであるとともに、該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置に該切削ブレードの下端を位置付ける第2位置付けステップと、該第2位置付けステップを実施した後、該切削ブレードを該ドレスボードに対して相対移動させて該ドレスボードの該一端から他端へと該ドレスボードからの距離が加工条件に含まれる該余裕幅となる位置まで移動させて切削する第2ドレスステップと、を備えても良い。
【発明の効果】
【0010】
本願発明のドレス方法は、フラットドレスに要する時間を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るドレス方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の切削ブレードをフラットドレスするドレスボードの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るドレス方法のフラットドレス前の切削ブレードの切り刃の先端の断面図の一例である。
図4図4は、図3に示された切削ブレードのフラットドレス後の切削ブレードの切り刃の先端の断面図の一例である。
図5図5は、実施形態1に係るドレス方法のドレス開始位置及びドレス収容位置等を示すドレスボードの平面図である。
図6図6は、実施形態1に係るドレス方法の切り込み深さ等を示すドレスボードの側断面図である。
図7図7は、実施形態1に係るドレス方法の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示されたドレス方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。
図9図9は、図7に示されたドレス方法の位置検出ステップの被加工物の平面図である。
図10図10は、図7に示されたドレス方法の位置付けステップの切削ユニット及びドレスボードを一部断面で示す側面図である。
図11図11は、図10に示された切削ユニット及びドレスボードの平面図である。
図12図12は、図7に示されたドレス方法のドレスステップの切削ユニット及びドレスボードを一部断面で示す側面図である。
図13図13は、図12に示された切削ユニット及びドレスボードの平面図である。
図14図14は、図7に示されたドレス方法のドレスステップ後のドレスボードの平面図である。
図15図15は、図7に示されたドレス方法の第2位置付けステップの切削ユニット及びドレスボードの平面図である。
図16図16は、図7に示されたドレス方法の第2ドレスステップの切削ユニット及びドレスボードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るドレス方法を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係るドレス方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の切削ブレードをフラットドレスするドレスボードの一例を示す斜視図である。図3は、実施形態1に係るドレス方法のフラットドレス前の切削ブレードの切り刃の先端の断面図の一例である。図4は、図3に示された切削ブレードのフラットドレス後の切削ブレードの切り刃の先端の断面図の一例である。図5は、実施形態1に係るドレス方法のドレス開始位置及びドレス収容位置等を示すドレスボードの平面図である。図6は、実施形態1に係るドレス方法の切り込み深さ等を示すドレスボードの側断面図である。
【0014】
実施形態1に係るドレス方法は、図1に示す切削装置1により実施される。図1に示す切削装置1は、板状物である被加工物200を切削(加工)する装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、ガラス板等でも良い。被加工物200は、裏面204に円板状の粘着テープ206に貼着され、粘着テープ206の外周縁に内径が被加工物200の外径よりも大きな環状の環状フレーム205が貼着されて、環状フレーム205の内側の開口に支持されている。
【0015】
図1に示された切削装置1は、分割予定ライン202を備える被加工物200を保持テーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削する装置である。切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持する保持テーブル10と、保持テーブル10に保持された被加工物200をスピンドル22に装着した切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像手段である撮像ユニット30と、制御手段である制御ユニット100とを備える。
【0016】
また、切削装置1は、図1に示すように、保持テーブル10を水平方向及び装置本体2の短手方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット41と、切削ユニット20を水平方向及び装置本体2の長手方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット43と、保持テーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するとともにX軸移動ユニット41により保持テーブル10とともにX軸方向に加工送りされる回転移動ユニット44とを少なくとも備える。
【0017】
保持テーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、保持テーブル10は、X軸移動ユニットにより移動自在で回転駆動源により回転自在に設けられている。保持テーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、被加工物200を吸引、保持する。また、保持テーブル10の周囲には、環状フレーム211をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0018】
切削ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を装着するスピンドル22を備えるものである。切削ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0019】
切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、保持テーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0020】
切削ユニット20は、切削ブレード21と、切削ブレード21を先端に装着したスピンドル22とに加え、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動されかつスピンドル22を軸心回りに回転自在に収容したスピンドルハウジング23と、スピンドルハウジング23内に収容されかつスピンドル22を軸心回りに回転する図示しないスピンドルモータとを備える。
【0021】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル22は、切削ブレード21を回転させることで被加工物200を切削する。スピンドル22は、スピンドルハウジング23内に収容され、スピンドルハウジング23は、Z軸移動ユニット43に支持されている。切削ユニット20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0022】
X軸移動ユニット41は、保持テーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0023】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ及び保持テーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0024】
また、切削装置1は、保持テーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、パルスモータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、保持テーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、各位置は、予められた基準位置からのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の距離で定められる。
【0025】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット60と、カセット51に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0026】
カセット51は、環状フレーム205に支持された被加工物200をZ軸方向に間隔をあけて複数収容する。また、カセット51は、図2に示すドレスボード90を1枚収容する。図2に示すドレスボード90は、被加工物200の切削を繰り返して切り刃24の先端が例えば図3に示すように断面円弧状となった切削ブレード21をフラットドレスするためのものである。フラットドレスとは、図3に示す切削ブレード21をスピンドルの軸心と平行なY軸方向に移動させながらドレスボード90に切り込ませて、図4に示すように、切り刃24の先端をY軸方向に沿って平坦に形成することをいう。
【0027】
実施形態1において、ドレスボード90は、平面形が矩形の平板状に形成されている。ドレスボード90は、樹脂やセラミックスのボンド材に、WA(ホワイトアランダム、アルミナ系)、GC(グリーンカーボナイト、炭化ケイ素系)などの砥粒が混ぜ込まれて構成されている。ドレスボード90は、被加工物200と同様に、一方の表面に円板状の粘着テープ206が貼着され、粘着テープ206の外周縁に環状フレーム205が貼着されて、環状フレーム205の内側の開口に支持されている。なお、ドレスボード90は、環状フレーム205の中央に配置されるが、環状フレーム205に対する相対的な位置が予め定められた位置に設定されているが予め定められた位置からずれていることがある。
【0028】
ドレスボード90は、環状フレーム205に支持されて、カセット51のZ軸方向の予め定められた所定の位置に収容され、フラットドレスを実施する際に、カセット51外に搬出された後、保持テーブル10に吸引保持され、環状フレーム205がクランプ部12によりクランプされる。フラットドレスの際、ドレスボード90は、保持テーブル10に保持された状態で、Y軸方向に移動する切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃24が切り込んで、上面から凹の切削溝95(図5に点線で示す)が形成されて、切削ブレード21をフラットドレスする。
【0029】
フラットドレスにおいて、切削ブレード21は、保持テーブル10に保持されたドレスボード90のX軸方向の一端91から他端92、または、他端92から一端91に向かってドレスボード90に対してY軸方向に相対的に移動されて、切削溝95を形成する。フラットドレスにおいて、切削ブレード21は、切削溝95を形成後、X軸方向に移動されて、保持テーブル10に保持されたドレスボード90のX軸方向の他端92から一端91、または、一端91から他端92に向かってドレスボード90に対してY軸方向に相対的に移動されて、切削溝95を形成する。
【0030】
実施形態1において、フラットドレスでは、切削ブレード21は、X軸方向の一端93から他端94に向かって順にY軸方向と平行な切削溝95を順に形成する。また、フラットドレスは、ドレスボード90に対して切削ブレード21を相対的にX軸方向に移動させる通常のドレスよりも、切削ブレード21をY軸方向に移動させるために切削ブレード21のドレスボード90に対する相対的な移動速度が遅い。
【0031】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように固定されている。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0032】
また、撮像ユニット30は、フラットドレスを実施する際に、保持テーブル10に保持されたドレスボード90の外周縁を撮像し、撮像して得た画像を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、撮像ユニット30は、ドレスボード90の全ての外周縁の長手方向の中央を撮像する。撮像ユニット30がドレスボード90の外周縁を撮像する時の保持テーブル10に対する相対的な位置は、予め定められ、撮像ユニット30の視野範囲は、環状フレーム205に対して位置ずれしたドレスボード90であっても外周縁を撮像することが可能な範囲に設定されている。
【0033】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作及びフラットドレスを切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。
【0034】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットと、報知ユニット110とに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット110は、制御ユニット100により制御されて、光と音との少なくとも一方を発することで、オペレータに報知する。
【0035】
制御ユニット100の記憶装置は、加工条件が入力ユニットから登録される。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されている加工条件、コンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。なお、実施形態1において、加工条件は、図5に示すX軸方向余裕幅301、Y軸方向余裕幅302、X軸方向送り幅303、切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数、及び図6に示す切り込み深さ304を含む。これらのX軸方向余裕幅301、Y軸方向余裕幅302、X軸方向送り幅303、切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数、及び切り込み深さ304は、切削装置1がフラットドレスを実施する際の加工条件である。
【0036】
X軸方向余裕幅301は、フラットドレスが実施されていないドレスボード90のX軸方向の一端93から最初にフラットドレスを実施する際のドレス開始位置401又はドレス終了位置402までのX軸方向の距離である。なお、ドレス開始位置401は、フラットドレスを実施する際に、保持テーブル10に保持されたドレスボード90の外側でかつ切削ユニット20がドレスボード90に対してY軸方向に移動を開始する時の切削ブレード21の切り刃24の下端の位置である。ドレス終了位置402は、フラットドレスを実施する際に、保持テーブル10に保持されたドレスボード90の外側でかつ切削ユニット20がドレスボード90に対してY軸方向の移動を終了する時の切削ブレード21の切り刃24の下端の位置である。
【0037】
Y軸方向余裕幅302は、ドレスボード90のY軸方向の端からドレス開始位置401又はドレス終了位置402までのY軸方向の距離である。なお、Y軸方向余裕幅302は、フラットドレスの切削ブレード21のドレスボード90に対する相対的な移動速度が、通常のドレスの切削ブレード21のドレスボード90に対する相対的な移動速度よりも遅いために、極力短い距離であるのが望ましい。
【0038】
X軸方向送り幅303は、ドレス開始位置401とドレス終了位置402とのX軸方向の距離、即ち、フラットドレスの際にドレスボード90に対してY軸方向に移動させた後に切削ブレード21をドレスボード90に対してX軸方向に移動させる時の距離である。
【0039】
切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数は、一回のフラットドレスにおいて、切削ブレード21をドレスボード90に対してY軸方向に移動させる回数、向きを示すものである。実施形態1において、切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数は、切削ブレード21を保持テーブル10に保持されたドレスボード90のX軸方向の一端91から他端92に向かって移動し、その後、他端92から一端91に向かってドレスボード90に対してY軸方向に相対的に移動する回数、向きを示すが、本発明では、これに限定されない。
【0040】
切り込み深さ304は、切削ブレード21のドレスボード90に切り込む所定の高さ位置であり、フラットドレス時にドレスボード90に切り込む切削ブレード21の切り刃24の下端のドレスボード90の上面からの距離を示している。また、制御ユニット100は、切削ブレード21の切り刃24の外径に関する情報を記憶している。切削ブレード21の切り刃24の外径に関する情報は、入力ユニットから登録される、又は切削装置1の図示しない基準位置設定機構により記憶装置に登録される。
【0041】
また、制御ユニット100は、図1に示すように、切削済み領域記憶部101と、ドレス範囲設定部102と、制御部103とを備える。切削済み領域記憶部101は、フラットドレスにおいて、切削ブレード21の切り刃24が切り込まれて形成されたドレスボード90の切削済み領域601(図14に示す)に関する情報を記憶するものである。実施形態1では、切削済み領域601に関する情報として、フラットドレス時のドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数の累積回数を記憶する。
【0042】
ドレス範囲設定部102は、切削済み領域記憶部101に切削済み領域601に関する情報としての移動回数が零回であると記憶されている場合、撮像ユニット30がフラットドレスが実施されていないドレスボード90の外周縁を撮像して得た画像からドレスボード90の外周縁の位置を算出し、余裕幅301,302、X軸方向送り幅303、フラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数及び切り込み深さ304に基づいて、フラットドレス時のドレス開始位置401及びドレス終了位置402を設定するものである。
【0043】
ドレス範囲設定部102は、切削済み領域記憶部101に切削済み領域601に関する情報として移動回数が1回以上であると記憶されている場合、切削済み領域601に記憶されたフラットドレス時のドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数の累積回数、余裕幅301,302、X軸方向送り幅303、フラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数及び切り込み深さ304に基づいて、フラットドレス時のドレス開始位置401及びドレス終了位置402を設定するものである。
【0044】
制御部103は、切削装置1の構成要素を制御して、被加工物200に対する加工動作及びフラットドレスを切削装置1に実施させるものである。
【0045】
切削済み領域記憶部101は、記憶装置により機能が実現される。ドレス範囲設定部102及び制御部103の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0046】
次に、本明細書は、前述した切削装置1の加工動作即ち実施形態1に係るドレス方法を説明する。図7は、実施形態1に係るドレス方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る切削装置1の加工動作即ちドレス方法は、被加工物200を個々のデバイス203に分割するとともに、スピンドル22の先端に固定された切削ブレード21のフラットドレス方法である。
【0047】
前述した構成の切削装置1は、オペレータが加工条件を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200及びドレスボード90を収容したカセット51がカセットエレベータ50に設置される。その後、切削装置1は、入力ユニットを介してオペレータから加工動作の開始指示を受け付けると、加工動作即ち実施形態1に係るドレス方法を開始する。切削装置1は、加工動作を開始すると、制御ユニット100の制御部103が、スピンドルモータを駆動して、スピンドル22を加工条件で設定された回転数で軸心回りに回転するとともに、フラットドレスタイミングであるか否かを判定する(ステップST1)。
【0048】
フラットドレスタイミングは、切削ユニット20の切削ブレード21をフラットドレスするタイミングであることをいう。実施形態1において、フラットドレスタイミングは、例えば、予め設定された数の被加工物200を切削する毎であり、加工条件の一部として制御ユニット100に登録される。また、本発明のフラットドレスタイミングは、予め設定された数の被加工物200を切削する毎に限定されない。切削装置1は、制御ユニット100の制御部103がフラットドレスタイミングではないと判定する(ステップST1:No)と、加工ステップST2に進む。
【0049】
(加工ステップ)
図8は、図7に示されたドレス方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。加工ステップST2は、保持テーブル10で被加工物200を保持し、切削ブレード21で保持テーブル10上の被加工物200を切削するステップである。
【0050】
加工ステップST2では、制御ユニット100の制御部103は、搬送ユニットを制御して切削加工前の被加工物200をカセット51から取り出させて粘着テープ206を介して裏面204側を保持テーブル10の保持面11に載置する。制御ユニット100の制御部103は、真空吸引源等を制御して、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を保持テーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。制御ユニット100の制御部103は、X軸移動ユニット41を制御して保持テーブル10を切削ユニット20の下方に向かって移動させて、撮像ユニット30を制御して被加工物200を撮影させて、撮像ユニット30が撮影して得た画像に基づいて、アライメントを遂行する。
【0051】
加工ステップST2では、制御ユニット100の制御部103は、切削ユニット20及び各移動ユニット41,42,43,44を制御して、分割予定ライン202に沿って被加工物200と切削ユニット20とを相対的に移動させて、図8に示すように、切削ブレード21を各分割予定ライン202に切り込ませて被加工物200を個々のデバイス203に分割する。加工ステップST2では、制御ユニット100の制御部103は、搬送ユニットを制御して、個々のデバイス203に分割された被加工物200を洗浄ユニット60に搬送し、洗浄ユニット60を制御して被加工物200を洗浄した後、搬送ユニットを制御して被加工物200をカセット51に収容して、ステップST13に進む。
【0052】
また、制御ユニット100の制御部103がフラットドレスタイミングであると判定する(ステップST1:Yes)と、切削済み領域記憶部101に切削済み領域601に関する情報が記憶されているか否か、即ち切削済み領域記憶部101に記憶された切削済み領域601に関する情報としての移動回数が零回であると記憶されているか否か(ステップST3)を判定する。
【0053】
制御ユニット100の制御部103が、切削済み領域記憶部101に切削済み領域601に関する情報が記憶されていない、即ち切削済み領域記憶部101に記憶された切削済み領域601に関する情報としての移動回数が零回であると記憶されている(ステップST3:No)と判定すると、位置検出ステップST4に進む。
【0054】
(位置検出ステップ)
図9は、図7に示されたドレス方法の位置検出ステップの被加工物の平面図である。位置検出ステップST4は、保持テーブル10上に保持されたドレスボード90を撮像ユニット30で撮像し、ドレスボード90の外周縁の位置を検出するステップである。
【0055】
位置検出ステップST4では、制御ユニット100の制御部103は、搬送ユニットを制御してドレスボード90をカセット51から取り出させて粘着テープ206を介してドレスボード90を保持テーブル10の保持面11に載置する。制御ユニット100の制御部103は、真空吸引源等を制御して、粘着テープ206を介してドレスボード90を保持テーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。制御ユニット100の制御部103は、X軸移動ユニット41を制御して保持テーブル10を切削ユニット20の下方に向かって移動させて、撮像ユニット30を制御してドレスボード90の外周縁を撮像する。
【0056】
実施形態1において、位置検出ステップST4では、撮像ユニット30は、図9に点線で示す撮像範囲501内の各外周縁の中央部を撮像し、撮像範囲501内の各外周縁の中央部の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。位置検出ステップST4では、制御ユニット100の制御部103は、撮像範囲501内の画像、各位置検出ユニットの検出結果等に基づいて、保持テーブル10に保持されたドレスボード90の外周縁の位置を算出し、記憶装置に記憶し、ドレス範囲設定ステップST5に進む。
【0057】
(ドレス範囲設定ステップ)
ドレス範囲設定ステップST5は、フラットドレスのドレス開始位置401、ドレス終了位置402を設定するステップである。ドレス範囲設定ステップST5では、制御ユニット100のドレス範囲設定部102が、記憶装置に記憶したドレスボード90の外周縁の位置、加工条件の余裕幅301,302、X軸方向送り幅303、フラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数及び切り込み深さ304を参照して、ドレス開始位置401及びドレス終了位置402を算出する。
【0058】
実施形態1では、ドレス範囲設定ステップST5では、ドレス範囲設定部102が、ドレスボード90のX軸方向の一端93からX軸方向余裕幅301分他端94寄りの位置で、ドレスボード90のY軸方向の一端91からY軸方向余裕幅302分ドレスボード90の外側の位置を最初のドレス開始位置401と算出する。実施形態1では、ドレス範囲設定ステップST5では、ドレス範囲設定部102が、ドレスボード90のX軸方向の一端93からX軸方向余裕幅301分他端94寄りの位置で、ドレスボード90のY軸方向の他端92からY軸方向余裕幅302分ドレスボード90の外側の位置を最初のドレス終了位置402と算出する。ドレス範囲設定ステップST5は、ドレス開始位置401及びドレス終了位置402を算出すると、位置付けステップST6に進む。
【0059】
(位置付けステップ)
図10は、図7に示されたドレス方法の位置付けステップの切削ユニット及びドレスボードを一部断面で示す側面図である。図11は、図10に示された切削ユニット及びドレスボードの平面図である。
【0060】
位置付けステップST6は、記憶装置に記憶したドレスボード90の外周縁の位置に基づいて、ドレスボード90の一端91から他端92に向かう方向をスピンドル22の軸心即ちY軸方向と平行に位置付けるとともに、位置検出ステップST4で検出されたドレスボード90の外周縁の位置をもとにドレスボード90の一端91の外側で、ドレスボード90に切り込む切り込み深さ304に切削ブレード21の切り刃24の下端を位置付けるステップである。
【0061】
位置付けステップST6では、制御ユニット100の制御部103は、回転移動ユニット44を制御してドレスボード90の一端91から他端92に向かう方向がY軸方向と平行となるように保持テーブル10の軸心回りの向きを調整する。位置付けステップST6では、制御ユニット100の制御部103は、各移動ユニット41,42,43を制御して、ドレス範囲設定ステップST5で算出した最初のドレス開始位置401に切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃24の下端を位置付けて、ドレスステップST7に進む。
【0062】
(ドレスステップ)
図12は、図7に示されたドレス方法のドレスステップの切削ユニット及びドレスボードを一部断面で示す側面図である。図13は、図12に示された切削ユニット及びドレスボードの平面図である。図14は、図7に示されたドレス方法のドレスステップ後のドレスボードの平面図である。
【0063】
ドレスステップST7は、位置付けステップST6を実施した後、切削ブレード21をドレスボード90に対して相対移動させてドレスボード90の一端91から他端92へと切削することで切削ブレード21の切り刃24の先端を平坦化するステップである。ドレスステップST7では、制御ユニット100の制御部103は、Y軸移動ユニット42を制御してドレスボード90の一端91から他端92に向かって切削ユニット20をY軸方向に移動して、図12及び図13に示すように、ドレスボード90に切削ブレード21の切り刃24を切り込ませて、切削溝95を形成する。ドレスステップST7では、制御ユニット100の制御部103は、X軸移動ユニット41及びY軸移動ユニット42を制御して、ドレス終了位置402で切削ブレード21のY軸方向の移動を停止した後、X軸方向送り幅303分、切削ブレード21をX軸方向の他端94側に移動させて、次のドレス開始位置401に位置付ける。
【0064】
ドレスステップST7では、制御ユニット100の制御部103は、Y軸移動ユニット42を制御してドレスボード90の他端92から一端91に向かって切削ユニット20をY軸方向に移動して、ドレスボード90に切削ブレード21の切り刃24を切り込ませて、切削溝95を形成する。実施形態1において、ドレスステップST7では、制御ユニット100の制御部103は、加工条件のフラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数、切削ブレード21をY軸方向に移動して、切削ブレード21の切り刃24の先端を平坦化する。実施形態1において、ドレスステップST7では、図14に示すように、切削溝95を2本形成すると、切削済み領域記憶ステップST8に進む。
【0065】
(切削済み領域記憶ステップ)
切削済み領域記憶ステップST8は、切削済み領域記憶部101が、ドレスステップST7において、フラットドレスで切削したドレスボード90の切削済み領域601に関する情報を記憶するステップである。実施形態1において、切削済み領域記憶ステップST8では、切削済み領域記憶部101が、切削済み領域601に関する情報として、ドレスステップST7においてドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数を既に記憶済みの回数に加えた累積回数を記憶する。切削済み領域記憶ステップST8では、切削済み領域記憶部101が、切削済み領域601に関する情報として、フラットドレス時のドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数の累積回数を記憶すると、ステップST13に進む。
【0066】
また、制御ユニット100の制御部103が、切削済み領域記憶部101に切削済み領域601に関する情報が記憶されている、即ち切削済み領域記憶部101に記憶された切削済み領域601に関する情報としての移動回数が1回以上であると記憶されている(ステップST3:Yes)と判定すると、第2ドレス範囲設定ステップST9に進む。
【0067】
(第2ドレス範囲設定ステップ)
第2ドレス範囲設定ステップST9は、ドレスボード90に切削済み領域601即ち切削溝95が形成されている場合に、フラットドレスのドレス開始位置401、ドレス終了位置402を設定するステップである。
【0068】
第2ドレス範囲設定ステップST9では、制御ユニット100のドレス範囲設定部102が、切削済み領域記憶部101が記憶したフラットドレス時のドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数の累積回数、記憶装置に記憶したドレスボード90の外周縁の位置、加工条件の余裕幅301,302、X軸方向送り幅303、フラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数及び切り込み深さ304を参照して、ドレス開始位置401及びドレス終了位置402を算出する。
【0069】
実施形態1では、第2ドレス範囲設定ステップST9では、ドレス範囲設定部102が、ドレスステップST7または第2ドレスステップST11において最近に形成した切削溝95の幅方向の中央の位置を算出し、算出した最近に形成した切削溝95の幅方向の中央の位置からX軸方向送り幅303分他端94寄りの位置で、ドレスボード90のY軸方向の一端91からY軸方向余裕幅302分ドレスボード90の外側の位置を最初のドレス開始位置401と算出する。実施形態1では、第2ドレス範囲設定ステップST9では、ドレス範囲設定部102が、算出した最近に形成した切削溝95の幅方向の中央の位置からX軸方向送り幅303分他端94寄りの位置で、ドレスボード90のY軸方向の他端92からY軸方向余裕幅302分ドレスボード90の外側の位置を最初のドレス終了位置402と算出する。第2ドレス範囲設定ステップST9は、ドレス開始位置401及びドレス終了位置402を算出すると、第2位置付けステップST10に進む。
【0070】
(第2位置付けステップ)
図15は、図7に示されたドレス方法の第2位置付けステップの切削ユニット及びドレスボードの平面図である。第2位置付けステップST10は、保持テーブル10でドレスボード90を保持し、位置検出ステップST4で検出されたドレスボード90の外周縁の位置と切削済み領域記憶ステップST8で記憶されたドレスボード90の切削済み領域に関する情報に基づいてドレスボード90の一端91の外側で、ドレスボード90に切り込む所定の高さ位置である切り込み深さ304に切削ブレード21の切り刃24の下端を位置付けるステップである。
【0071】
実施形態1において、第2位置付けステップST10では、制御ユニット100の制御部103は、搬送ユニットを制御してドレスボード90をカセット51から取り出させて粘着テープ206を介してドレスボード90を保持テーブル10の保持面11に載置する。制御ユニット100の制御部103は、真空吸引源等を制御して、粘着テープ206を介してドレスボード90を保持テーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。
【0072】
第2位置付けステップST10では、制御ユニット100の制御部103は、記憶装置に記憶したドレスボード90の外周縁の位置に基づいて、回転移動ユニット44を制御してドレスボード90の一端91から他端92に向かう方向がY軸方向と平行となるように保持テーブル10の軸心回りの向きを調整する。第2位置付けステップST10では、制御ユニット100の制御部103は、各移動ユニット41,42,43を制御して、第2ドレス範囲設定ステップST9で算出した最初のドレス開始位置401に切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃24の下端を位置付けて、第2ドレスステップST11に進む。
【0073】
(第2ドレスステップ)
図16は、図7に示されたドレス方法の第2ドレスステップの切削ユニット及びドレスボードの平面図である。第2ドレスステップST11は、第2位置付けステップST10を実施した後、切削ブレード21をドレスボード90に対して相対移動させてドレスボード90の一端91から他端92へと切削することで切削ブレード21の切り刃24の先端を平坦化するステップである。
【0074】
第2ドレスステップST11では、制御ユニット100の制御部103は、Y軸移動ユニット42を制御してドレスボード90の一端91から他端92に向かって切削ユニット20をY軸方向に移動して、図16に示すように、ドレスボード90に切削溝95を形成する。第2ドレスステップST11では、制御ユニット100の制御部103は、X軸移動ユニット41及びY軸移動ユニット42を制御して、ドレス終了位置402で切削ブレード21のY軸方向の移動を停止した後、X軸方向送り幅303分、切削ブレード21をX軸方向の他端94側に移動させて、次のドレス開始位置401に位置付ける。
【0075】
第2ドレスステップST11では、制御ユニット100の制御部103は、Y軸移動ユニット42を制御してドレスボード90の他端92から一端91に向かって切削ユニット20をY軸方向に移動して、ドレスボード90に切削ブレード21を切り込ませて切削溝95を形成する。実施形態1において、第2ドレスステップST11では、制御ユニット100の制御部103は、加工条件のフラットドレス時の切削ブレード21のドレスボード90に対する移動回数、切削ブレード21をY軸方向に移動して、切削ブレード21の切り刃24の先端を平坦化する。実施形態1において、第2ドレスステップST11では、切削溝95を2本形成すると、第2切削済み領域記憶ステップST12に進む。
【0076】
(第2切削済み領域記憶ステップ)
第2切削済み領域記憶ステップST12は、切削済み領域記憶部101が、第2ドレスステップST11において、フラットドレスで切削したドレスボード90の切削済み領域601に関する情報を記憶するステップである。実施形態1において、切削済み領域記憶ステップST8では、切削済み領域記憶部101が、切削済み領域601に関する情報として、第2ドレスステップST11においてドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数を既に記憶済みの回数に加えた累積回数を記憶する。切削済み領域記憶ステップST8では、切削済み領域記憶部101が、切削済み領域601に関する情報を記憶すると、ステップST13に進む。
【0077】
制御ユニット100の制御部103は、ステップST13において、保持テーブル10に保持されたドレスボード90を用いて切削ブレード21のフラットドレスが可能か否かを判定する。実施形態1において、制御ユニット100の制御部103は、第2ドレスステップST11において最近に形成した切削溝95の幅方向の中央の位置を算出し、算出した最近に形成した切削溝95の幅方向の中央の位置からX軸方向送り幅303分他端94寄りの位置を算出する。制御ユニット100の制御部103は、X軸方向送り幅303分他端94寄りの位置と他端94までの距離がX軸方向余裕幅301未満であると、保持テーブル10に保持されたドレスボード90を用いて切削ブレード21のフラットドレスが不可能であると判定(ステップST13:No)し、報知ユニット110を動作させてオペレータに報知する(ステップST14)。
【0078】
制御ユニット100の制御部103は、X軸方向送り幅303分他端94寄りの位置と他端94までの距離がX軸方向余裕幅301以上であると、ステップST1に戻る。このために、実施形態1に係るドレス方法において、2回目以降の加工ステップST2では、ドレスステップST7と第2ドレスステップST11の少なくとも一方を実施した後、保持テーブル10上からドレスボード90を搬出して、ドレスボード90をカセット51内に収容する。また、実施形態1に係るドレス方法において、第2位置付けステップST10では、加工ステップST2を実施した後、保持テーブル10上から被加工物200を搬出してカセット51内に収容し、保持テーブル10でドレスボード90を保持する。
【0079】
前述したように、実施形態1に係るドレス方法は、位置検出ステップST4と、位置付けステップST6と、ドレスステップST7と、切削済み領域記憶ステップST8と、加工ステップST2と、第2位置付けステップST10と、第2ドレスステップST11とを備える。
【0080】
以上のように、実施形態1に係るドレス方法及び切削装置1は、ドレスボード90の外周縁の位置を検出する位置検出ステップST4を実施するため、過度にY軸方向余裕幅302を設定する必要がなく、Y軸方向余裕幅302自体を抑制できる。その結果、ドレス方法及び切削装置1は、フラットドレスに要する時間を抑制することができるという効果を奏する。
【0081】
また、実施形態1に係るドレス方法及び切削装置1は、ドレスステップST7,ST11後、ドレスボード90の切削済み領域601に関する情報として切削済み領域記憶部101に記憶する。その結果、ドレス方法及び切削装置1は、切削済み領域601を避けてフラットドレスを行うことができる。
【0082】
また、実施形態1に係るドレス方法及び切削装置1は、ドレスボード90の切削済み領域601に関する情報として、フラットドレス時のドレスボード90に対して切削ブレード21がY軸方向に移動された移動回数の累積回数を切削済み領域記憶部101に記憶する。その結果、ドレス方法及び切削装置1は、切削済み領域601を確実に避けてフラットドレスを行うことができる。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 切削装置
10 保持テーブル
21 切削ブレード
22 スピンドル
30 撮像ユニット(撮像手段)
90 ドレスボード
91 一端
92 他端
200 被加工物
304 切り込み深さ(所定の高さ位置)
601 切削済み領域
ST2 加工ステップ
ST4 位置検出ステップ
ST6 位置付けステップ
ST7 ドレスステップ
ST8 切削済み領域記憶ステップ
ST10 第2位置付けステップ
ST11 第2ドレスステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16