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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20231117BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231117BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20231117BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/42
C23C16/455
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020038628
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021141229
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幸二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智也
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209081(US,A1)
【文献】特開2008-53326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/42
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内において多数枚の基板に一括でシリコン酸化膜を形成する成膜方法であって、
前記処理容器内に有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含むシリコン原料ガスを供給するステップと、
1~10Torr(133~1333Pa)の圧力に調整された前記処理容器内に酸化ガスを供給するステップと、
を含む複数回のサイクルを実行
前記酸化ガスを供給するステップにおいて、前記シリコン酸化膜の膜厚の面内均一性が±2%以下かつ前記シリコン酸化膜の膜厚の面間均一性が±3%以下となるように、前記酸化ガスを供給するステップにおける酸化時間を調整する、
成膜方法。
【請求項2】
前記有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物は、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンである、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記酸化ガスは、Oガスを含む、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記酸化ガスを供給するステップにおける前記処理容器内の圧力は、1.5~10Torr(200~1333Pa)である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記処理容器は、前記多数枚の基板を上下方向に間隔を有して棚状に保持する基板保持具を収容可能である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪素含有膜の堆積のための前駆体として有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含む組成物を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-154615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、処理容器内において多数枚の基板に一括でシリコン酸化膜を形成する成膜方法であって、前記処理容器内に有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含むシリコン原料ガスを供給するステップと、1~10Torr(133~1333Pa)の圧力に調整された前記処理容器内に酸化ガスを供給するステップと、を含む複数回のサイクルを実行前記酸化ガスを供給するステップにおいて、前記シリコン酸化膜の膜厚の面内均一性が±2%以下かつ前記シリコン酸化膜の膜厚の面間均一性が±3%以下となるように、前記酸化ガスを供給するステップにおける酸化時間を調整する
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図
図2図1の縦型熱処理装置の処理容器を説明するための図
図3】実施形態の成膜方法の一例を示すフローチャート
図4】酸化圧力を変化させたときの膜厚の面内均一性を示す図
図5】酸化圧力を変化させたときの膜厚の面間均一性を示す図
図6】酸化時間を変化させたときの膜厚の面内均一性を示す図
図7】酸化時間を変化させたときの膜厚の面間均一性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜装置〕
図1及び図2を参照し、実施形態の成膜装置の一例について説明する。以下、成膜装置として、多数枚の基板に対して一括で処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置を例に挙げて説明する。図1は、縦型熱処理装置の構成例を示す縦断面図である。図2は、図1の縦型熱処理装置の処理容器を説明するための図である。
【0010】
縦型熱処理装置1は、全体として縦長の鉛直方向に延びた形状を有する。縦型熱処理装置1は、縦長で鉛直方向に延びた処理容器10を有する。
【0011】
処理容器10は、円筒体の内管12と、内管12の外側に同心的に載置された有天井の外管14との二重管構造を有する。内管12及び外管14は、石英、炭化珪素等の耐熱材料により形成されている。処理容器10は、内部に多数枚(例えば25~200枚)の半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を上下方向に間隔を有して棚状に保持する基板保持具であるウエハボート16を収容可能に構成される。
【0012】
内管12の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズルを収容するノズル収容部18が形成されている。例えば図2に示されるように、内管12の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部20を形成し、凸部20内をノズル収容部18として形成している。
【0013】
処理容器10の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド22によって支持されている。マニホールド22の上端にはフランジ部24が形成されており、フランジ部24上に外管14の下端を設置して支持するようになっている。外管14の下端とフランジ部24との間にはOリング等のシール部材26を介在させて外管14内を気密状態にしている。
【0014】
マニホールド22の上部の内壁には、円環状の支持部28が設けられており、支持部28上に内管12の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド22の下端の開口には、蓋体30がOリング等のシール部材32を介して気密に取り付けられており、処理容器10の下端の開口、即ち、マニホールド22の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体30は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0015】
蓋体30の中央部には、磁性流体シール部34を介して回転軸36が貫通させて設けられている。回転軸36の下部は、ボートエレベータよりなる昇降部38のアーム38Aに回転自在に支持されている。
【0016】
回転軸36の上端には回転プレート40が設けられており、回転プレート40上に石英製の保温筒42を介してウエハWを保持するウエハボート16が載置されるようになっている。従って、昇降部38を昇降させることによって蓋体30とウエハボート16とは一体として上下動し、ウエハボート16を処理容器10内に対して挿脱できるようになっている。
【0017】
マニホールド22の下部の側壁であって、支持部28の下方には、内管12の内部へ各種のガスを導入するためのガス供給部44が設けられている。
【0018】
ガス供給部44は、複数(例えば3本)の石英製のガスノズル46,48,50を有している。各ガスノズル46,48,50は、内管12内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド22を貫通するようにして支持されている。
【0019】
ガスノズル46には、配管を介してシリコン原料ガスの供給源が接続され、流量が制御されたシリコン原料ガスが導入される。シリコン原料ガスは、例えば以下の構造式Aで示される2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(商品名LTO890)等の有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含む。
【0020】
【化1】
【0021】
ガスノズル48には、配管を介して酸化ガスの供給源が接続され、流量が制御された酸化ガスが導入される。酸化ガスは、例えば酸素(O)ガス、オゾン(O)ガスである。
【0022】
ガスノズル50には、配管を介してパージガスの供給源が接続され、流量が制御されたパージガスが導入される。パージガスは、例えばアルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガスである。
【0023】
ガスノズル46,48,50は、図2に示されるように、内管12のノズル収容部18内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガスノズル46,48,50には、その長手方向に沿って所定間隔で複数のガス孔46h,48h,50hが形成されている。各ガス孔46h,48h,50hは、水平方向に向けて各ガスを放出する。これにより、ウエハWの周囲からウエハWの主面と略平行に各ガスが供給される。所定間隔は、例えばウエハボート16に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔46h,48h,50hが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。
【0024】
マニホールド22の上部の側壁であって、支持部28の上方には、ガス出口52が形成されており、内管12と外管14との間の空間を介して内管12内のガスを排気できるようになっている。ガス出口52には、排気部54が設けられる。排気部54は、ガス出口52に接続された排気通路56を有する。排気通路56には、圧力調整弁58及び真空ポンプ60が順次介設されて、処理容器10内を真空引きできるようになっている。
【0025】
外管14の外周側には、外管14を覆うように円筒形状の加熱部62が設けられている。加熱部62は、処理容器10内に収容されるウエハWを加熱する。
【0026】
縦型熱処理装置1には、例えばコンピュータからなる制御部90が設けられている。制御部90は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部等を備えている。プログラムには、制御部90から縦型熱処理装置1の各部に制御信号を送り、後述の成膜方法を実行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。プログラムは、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク等の記憶媒体に格納されて制御部90にインストールされる。
【0027】
ところで、シリコン原料ガスと酸化ガスとを交互に供給してシリコン酸化膜を形成する場合、ウエハWの表面に吸着したシリコン原料に含まれるSi-H結合、Si-CH結合等が酸化ガスの作用により切断されてSi-OH結合が生成される。そして、再びシリコン原料ガスが供給されるとSi-OH結合の水酸基(OH基)がシリコン原料に置き換わることにより、シリコン酸化膜が堆積する。すなわち、Si-H結合、Si-CH結合等の数が多いほど、1サイクルあたりに多くのシリコン酸化膜が堆積する。
【0028】
例えば、有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物の一例である2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンは、前述の構造式Aに示されるように、3つのSi-H結合及び4つのSi-CH結合を含む。
【0029】
一方、有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物ではないシリコン原料であるジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)は、以下の構造式Bで示されるようにSi-H結合が3つである。
【0030】
【化2】
【0031】
このことから、シリコン原料ガスとして2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン等の有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を用いることにより、DIPASを用いるよりも成膜速度が向上すると考えられる。
【0032】
しかし、Si-H結合、Si-CH結合等の数が多い場合には、Si-H結合、Si-CH結合を切断してOH基で終端するためには多くの酸化ガスを要し、酸化に要する時間が長くなる。言い換えると、シリコン酸化膜を高い生産性で形成することが困難である。
【0033】
特に、縦型熱処理装置1においては、処理容器10内に多数枚のウエハWを収容して処理を実行するため、枚葉式の成膜装置と比べて、酸化剤によってOH基で終端させる対象のSi-H結合及びSiCH結合の数がウエハWの枚数に比例して多くなる。その結果、特に多くの酸化ガスを要し、酸化に要する時間が長時間化する。言い換えると、シリコン酸化膜を高い生産性で形成することが特に困難である。
【0034】
そこで、本発明者らは、鋭意検討したところ、酸化ガスを供給する際の処理容器10内の圧力を所定の圧力範囲に調整することにより、均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できることを見出した。以下、均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できる成膜方法について説明する。
【0035】
〔成膜方法〕
図3を参照し、縦型熱処理装置1により実行されるシリコン酸化膜の成膜方法の一例について説明する。図3は、実施形態の成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、制御部90は、昇降部38を制御して、多数枚のウエハWを保持したウエハボート16を処理容器10内に搬入する。また、制御部90は、蓋体30により処理容器10の下端の開口を気密に塞ぎ密閉する。
【0037】
続いて、制御部90は、排気部54を制御して処理容器10内を設定圧力に調整し、加熱部62を制御してウエハWを設定温度に調整する。また、制御部90は、ウエハボート16を回転させる。
【0038】
続いて、制御部90は、ガスノズル46から処理容器10内に有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含むシリコン原料ガスを供給する(ステップS11)。これにより、ウエハWの上にシリコンが吸着する。ステップS11の設定圧力は、例えば1~2Torr(133~267Pa)である。
【0039】
続いて、制御部90は、ガスノズル50から処理容器10内にArガス、Nガス等のパージガスを供給しながら、排気部54を制御して、処理容器10内を排気する(ステップS12)。これにより、処理容器10内に残存するシリコン原料ガスがパージされる。ただし、制御部90は、パージガスの供給と処理容器10内の排気とを交互に行ってもよい。
【0040】
続いて、制御部90は、ガスノズル48から所定の圧力に調整された処理容器10内に酸化ガスを供給する(ステップS13)。これにより、ウエハWの上に吸着したシリコンが酸化される。より具体的には、ウエハWの表面に吸着したシリコン原料に含まれるSi-H結合及びSi-CH結合が酸化ガスの作用により切断されてSi-OH結合が生成される。このとき、所定の圧力は、良好な面内均一性が得られるという観点から、1Torr(133Pa)以上であることが好ましく、良好な面内均一性に加えて良好な面間均一性が得られるという観点から、1.5Torr(200Pa)以上であることがより好ましい。また、所定の圧力は、後述のステップS14において短時間で酸化ガスをパージできるという観点から、10Torr(1333Pa)以下であることが好ましい。
【0041】
続いて、制御部90は、ガスノズル50から処理容器10内にArガス、Nガス等のパージガスを供給しながら、排気部54を制御して、処理容器10内を排気する(ステップS14)。これにより、処理容器10内に残存する酸化ガスがパージされる。ただし、制御部90は、パージガスの供給と処理容器10内の排気とを交互に行ってもよい。
【0042】
続いて、制御部90は、ステップS11~S14の繰り返し回数が設定回数に到達したか否かを判定する(ステップS15)。設定回数は、形成するシリコン酸化膜の膜厚に応じて予め定められている。繰り返し回数が設定回数に到達していない場合、制御部90は処理をステップS11へ戻す。一方、繰り返し回数が設定回数に到達した場合、制御部90は処理を終了する。これにより、ウエハWの上に所望の膜厚を有するシリコン酸化膜が形成される。
【0043】
〔実施例〕
実施例として、縦型熱処理装置1を用い、ウエハボート16の上部、中央部及び下部を含んで多数枚のウエハWを搭載して、前述の成膜方法によって多数枚のウエハWの表面にシリコン酸化膜を形成した。
【0044】
実施例では、ステップS13における時間(以下「酸化時間」という。)を10秒に固定し、ステップS13における設定圧力(以下「酸化圧力」という。)を変化させて複数回の成膜処理を行った。酸化圧力は、0.5Torr(67Pa)、1.0Torr(133Pa)、1.5Torr(200Pa)、2.8Torr(373Pa)、3.9Torr(520Pa)である。また、実施例では、有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物として2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用し、酸化ガスとしてOガスとOガスとの混合ガスを使用した。
【0045】
続いて、ウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載された各ウエハWについて、面内における複数箇所の膜厚を測定した。そして、測定した複数箇所の膜厚に基づいて、ウエハWの面内における膜厚の均一性(以下「面内均一性」という。)及び面間における膜厚の均一性(以下「面間均一性」という。)を算出した。
【0046】
図4は、酸化圧力を変化させたときの膜厚の面内均一性を示す図である。図4中、縦軸は膜厚の面内均一性[±%]を示し、横軸は酸化圧力[Torr]を示す。また、「○」印、「△」印及び「□」印は、それぞれウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載されたウエハWでの測定結果を示す。
【0047】
図4に示されるように、酸化圧力が1Torr以上である場合には、ウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載されたウエハWにおいて膜厚の面内均一性が±2%以下であり、面内均一性が良好であることが確認された。一方、酸化圧力が0.5Torrである場合には、ウエハボート16の下部に搭載されたウエハWにおいて膜厚の面内均一性が±4.7%であり、面内均一性が大きく悪化することが確認された。このことから、酸化圧力を1Torr以上にすることにより、短い酸化時間(10秒)で面内均一性の良好なシリコン酸化膜を形成できると考えられる。
【0048】
図5は、酸化圧力を変化させたときの膜厚の面間均一性を示す図である。図5中、縦軸は膜厚の面間均一性[±%]を示し、横軸は酸化圧力[Torr]を示す。
【0049】
図5に示されるように、酸化圧力を高くするほど、膜厚の面間均一性が向上することが確認された。特に、酸化圧力が1.5Torr以上である場合には、膜厚の面間均一性が±3%以下であり、面間均一性が良好であることが確認された。このことから、酸化圧力を1.5Torr以上にすることにより、短い酸化時間(10秒)で面間均一性の良好なシリコン酸化膜を形成できると考えられる。
【0050】
〔参考例〕
参考例として、縦型熱処理装置1を用い、ウエハボート16の上部、中央部及び下部を含んで多数枚のウエハWを搭載して、前述の成膜方法によって多数枚のウエハWの表面にシリコン酸化膜を形成した。
【0051】
参考例では、酸化圧力を0.5Torr(67Pa)に固定し、酸化時間を変化させて複数回の成膜処理を行った。酸化時間は、10秒、19秒、60秒である。また、実施例では、有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物として2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用し、酸化ガスとしてOガスとOガスとの混合ガスを使用した。
【0052】
続いて、ウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載された各ウエハWについて、面内における複数箇所の膜厚を測定した。そして、測定した複数箇所の膜厚に基づいて、膜厚の面内均一性及び面間均一性を算出した。
【0053】
図6は、酸化時間を変化させたときの膜厚の面内均一性を示す図である。図6中、縦軸は膜厚の面内均一性[±%]を示し、横軸は酸化時間[sec]を示す。また、「○」印、「△」印及び「□」印は、それぞれウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載されたウエハWでの測定結果を示す。
【0054】
図6に示されるように、酸化時間を長くするほど、ウエハボート16の上部、中央部及び下部に搭載されたウエハWにおいて膜厚の面内均一性が向上することが確認された。このことから、酸化時間を長くすることにより面内均一性の良好なシリコン酸化膜を形成できると考えられる。しかし、酸化時間を長くすると成膜処理に要する時間が長くなり、生産性が低下する。すなわち、高い生産性と良好な面内均一性との両立が困難である。
【0055】
図7は、酸化時間を変化させたときの膜厚の面間均一性を示す図である。図7中、縦軸は膜厚の面間均一性[±%]を示し、横軸は酸化時間[sec]を示す。
【0056】
図7に示されるように、酸化時間を長くするほど、膜厚の面間均一性が向上することが確認された。このことから、酸化時間を長くすることにより面間均一性の良好なシリコン酸化膜を形成できると考えられる。しかし、酸化時間を長くすると成膜処理に要する時間が長くなり、生産性が低下する。すなわち、高い生産性と良好な面間均一性との両立が困難である。
【0057】
以上、実施例及び参考例によれば、酸化圧力を1Torr以上にすることにより、面内均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できると考えられる。具体的には、図4及び図6に示されるように、酸化圧力を1Torrにすることにより、短い酸化時間(10秒)であっても酸化時間が20秒のときと同等の面内均一性が得られる。また、図4及び図6に示されるように、酸化圧力を2.8Torrにすることにより、短い酸化時間(10秒)であっても酸化時間が60秒のときと同等の面内均一性が得られる。
【0058】
また、実施例及び参考例によれば、酸化圧力を1.5Torr以上にすることにより、面間均一性が良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できると考えられる。具体的には、図5及び図7に示されるように、酸化圧力を1.5Torrにすることにより、短い酸化時間(10秒)であっても酸化時間が20秒のときよりも良好な面間均一性が得られる。また、図5及び図7に示されるように、酸化圧力を2.8Torrにすることにより、短い酸化時間(10秒)であっても酸化時間が60秒のときと同等の面間均一性が得られる。さらに、図5及び図7に示されるように、酸化圧力を3.9Torrにすることにより、短い酸化時間(10秒)であっても酸化時間が60秒のときよりも良好な面間均一性が得られる。
【0059】
以上に説明したように、実施形態の成膜方法によれば、ウエハWに有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含むシリコン原料ガスを供給してウエハWの上にシリコンを吸着させる。これにより、該化合物を含まないシリコン原料ガスを用いるよりも成膜速度が向上し、生産性が向上する。
【0060】
また、実施形態の成膜方法によれば、1~10Torr(133~1333Pa)の圧力に調整された処理容器10内に酸化ガスを供給することにより、ウエハWの表面に吸着した有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物を含むシリコン原料ガスを酸化する。これにより、シリコン酸化膜の膜厚の均一性が向上する。
【0061】
このように実施形態の成膜方法によれば、均一性の良好なシリコン酸化膜を高い生産性で形成できる。
【0062】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0063】
なお、上記の実施形態では、有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物が2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、及び2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状の有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物であってもよい。また、例えば1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-5-メトキシトリシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-7-メトキシトリシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-5-アセトキシトリシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-7-アセトキシトリシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,9-ウンデカメチルペンタシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,3,3,5,5,7,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,3,3,5,5,7,7,9,9,9-デカメチルペンタシロキサン、1-ジメチルアミノ-3,3,5,5,7,7,7-ヘプタメチルテトラシロキサン、1-ジメチルアミノ-3,3,5,5,7,7,9,9,9-ノナメチルペンタシロキサン、1-ジメチルアミノ-1,3,5,7,7,7-ヘキサメチルテトラシロキサン、及び1-ジメチルアミノ-1,3,5,7,9,9,9-ヘプタメチルペンタシロキサン等の直鎖状の有機アミノ官能化オリゴシロキサン化合物であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 処理容器
16 ウエハボート
W ウエハ
図1
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図7