(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】マルチモーダル極低温適合性GUIDグリッド
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20231117BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20231117BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01J37/20 A
G01N1/42
G01N1/28 F
G01N1/28 W
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020142380
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-14
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マールテン カウペル
(72)【発明者】
【氏名】オンドレイ ルドミル シャーネル
(72)【発明者】
【氏名】マティユス ペトラス ヴァン デン ブーガード
(72)【発明者】
【氏名】プレウン ドナ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156964(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179145(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207062(US,A1)
【文献】特開2006-244742(JP,A)
【文献】特表2017-500722(JP,A)
【文献】Agar Scientific, Grids,2017年,http://www.agarscientific.com/media/import/01-grids_pgs_1-22_date_17_06_10_web.pdf,https://web.archive.org/web/20170804232735/https://www.agarscientific.com/media/import/01-grids_pgs_1-22_date_17_06_10_web.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
G01N 1/42
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温適合性試料グリッドであって、
1つ以上の試料を保持するための前記極低温適合性試料グリッドの領域を画定する外部支持構造と;
複数の開口部を画定する複数の内部支持構造であって、個々の開口部はそれぞれ、試料を保持するように構成され
ている、内部支持構造と;
前記外部支持構造上に位置する第1の識別子と;
前記1つ以上の試料を保持するための前記
極低温適合性試料グリッドの前記領域内に位置する第2の識別子であって、
前記第2の識別子は、電子顕微鏡で読み取り可能
であり、複数の穴、切り欠きまたは歯を含み、前記極低温適合性試料グリッドに関連付けられたグローバル識別子をコード化する、第2の識別子とを備える、極低温適合性試料グリッド。
【請求項2】
前記第1の識別子
は、試料保管デバイス、試料移送デバイス、試料修正デバイス、ガラス化デバイス、または電子顕微鏡のうちの1つ以上で実装された可視光検出器で読み取り可能である、請求項1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項3】
前記1つ以上の試料を受容し、
前記1つ以上の試料がガラス化されるガラス化プロセスを実行し、
ガラス化後の前記電子顕微鏡によるガラス化試料の検査を容易にするように構成される、請求項1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項4】
前記第1の識別子
は、
レーザーまたはイオンビームによる前記外部支持構造の表面の粗面化;
レーザーまたはイオンビームによる表面構造化;
前記外部支持構造の前記表面への機械的な刻印;
前記外部支持構造の前記表面を変形させるための機械的引っかき;
前記外部支持構造の表面材料を除去するための化学エッチング;
前記外部支持構造の表面材料を除去するための放電加工(EDM);
前記外部支持構造への追加マーキング;
前記外部支持構造の前記表面の化学的着色;
前記外部支持構造の穿孔;および
前記外部支持構造の前記表面を着色するためのフォトレジストプロセスの使用
、
のうちの少なくとも1つにより、前記極低温適合性試料グリッド上で生成され
たものである、請求項1
に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項5】
前記第1の識別子
は、グローバルに一意の識別子をコード化する第1の部分と、前記極低温適合性試料グリッドの特定の特性をコード化する第2の部分と備える、請求項1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項6】
前記第2の識別子
は、極低温適合性試料グリッドがガラス化プロセスに供された後に読み取り可能である、請求項1
に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項7】
前記第2の識別子
は、前記複数の内部支持構造の特定の内部支持構造から外向きに、
かつ対応する開口部内に突出する1つ以上の歯を備え、前記1つ以上の歯の各歯は、1μ~10μの範囲内の距離だけ互いに離間している、請求項6に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項8】
前記第2の識別子
は、複数の穴を含み、前記複数の穴のそれぞれは、1μ~10μの範囲内の直径を有する、請求項6に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項9】
前記複数の穴の少なくとも1つが、前記複数の穴の異なる穴とは異なるサイズを有する、請求項8に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項10】
前記複数の穴
は、前記複数の内部支持構造の内部支持構造に沿って位置付けられる線形配置で配置される、請求項8に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項11】
前記第2の識別子を構成する1つ以上の歯または穴がガラス化プロセスからの氷で充填されると、前記第2の識別子が読み取り可能である、請求項6に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項12】
前記1つ以上の試料を保持するための前記
極低温適合性試料グリッドの前記領域
は、前記第2の識別子を含む識別表面を含み、前記識別表面は、前記識別表面を前記内部支持構造と接続する1つ以上の接続ブリッジによって、前記複数の内部支持構造から熱的に隔離されている、請求項6に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項13】
前記第2の識別子がまた、前記極低温適合性試料グリッドの向きを識別する、請求項1
に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項14】
前記第2の識別子が、マーカーに近接して位置付けられ、前記マーカーは低倍率で視認
可能である、請求項1
に記載の極低温適合性試料グリッド。
【請求項15】
極低温適合性試料グリッドを識別するための方法であって、
1つ以上の試料を保持するように構成された前記極低温適合性試料グリッドの
一部の電子顕微鏡画像を生成することであって、前記極低温適合性試料グリッドはガラス化プロセスに供されている、生成することと;
前記
極低温適合性試料グリッド内の複数の穴、切り欠き、または歯を備えるガラス化適合性識別子を含む前記電子顕微鏡画像の領域を識別すること
であって、前記複数の穴、切り欠き、または歯は、前記極低温適合性試料グリッドに関連付けられたグローバル識別子をコード化する、識別することと;
前記1つ以上の試料を保持するように構成された前記極低温適合性試料グリッドの前記一部内に位置する前記ガラス化適合性識別子に基づいて、前記極低温適合性試料グリッドの同一性を決定することとを含む方法。
【請求項16】
前記ガラス化適合性識別子に基づいて、前記極低温適合性試料グリッド上の試料の同一性を決定することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
電子顕微鏡は、前記電子顕微鏡画像を生成するときに有効な対物レンズを有する透過型電子顕微鏡である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電子顕微鏡画像を生成することは、前記極低温適合性試料グリッドの底面に電子ビームを集束することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記極低温適合性試料グリッドは、光学的識別子をさらに有し、
前記方法はさらに、
前記光学的識別子を走査することと、
前記光学的識別子に関連付けられたデータベースに、前記極低温適合性試料グリッドおよび/または前記極低温適合性試料グリッド上の試料についての情報を保存することとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラス化適合性識別子に関連付けられたオブジェクト設定にアクセスすることと、
前記ガラス化適合性識別子に関連付けられたオブジェクト設定にしたがって電子顕微鏡を動作させることとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
極低温電子顕微鏡(極低温EM)は、極低温で試料が調査される電子顕微鏡技術である。具体的には、極低温EMでは、試料が水溶液に浸漬され、溶液が試料グリッド内に配置され、次いで試料グリッドがガラス化プロセスに供される。ガラス化プロセス中、試料グリッド/その上の溶液(複数可)は急速に冷却されるため、水溶液中の水分子は結晶化する時間がなく、それに懸濁した試料の構造にほとんど、または全く損傷を与えない非晶質固体が形成される。次いで、試料は電子顕微鏡で極低温で評価される。
【背景技術】
【0002】
現在、科学者は、現在の試料グリッドにはガラス化プロセスが発生するとグローバルに識別される方法がないため、極低温EM技術を使用して電子顕微鏡で評価されている試料を識別するのに困難を覚えている。これは、試料グリッドがガラス化プロセスに供されると、現在の識別手法は信頼性がなくなる、もしくは機能しなくなる、および/またはそれらがガラス化プロセスに干渉する過剰な熱質量を導入するためである。
【0003】
これは、ガラス化および評価が異なる時間、異なる機械、および/または異なる場所で行われることが多く、その結果、試料グリッドが長期間ガラス化されたままになるため、極低温EMワークフローに大きな追跡問題をもたらす。さらに、多くの試料/試料グリッドが同時にガラス化および/または保管され得るため、極低温EMワークフロー中に試料グリッドが交換される大きな機会がある。現在、場所ベースの記録保持システムを使用して試料グリッドが識別されているが、これは急速に複雑化し、誤認が発生しやすくなる。例えば、一部のラボでは、試料グリッドが4~6個の試料グリッドを収容できる小さな保管ボックスに収納されているが、これはその後、5~10個の保管ボックスを保持できる保管フラスコに保管され、6つの保管フラスコを保持し得るフラスコホルダーに設置され得る。一部の実験室の引き出しは10個のフラスコホルダーを保持できるため、そのような1つの引き出しは1200~3600以上の試料グリッドを収容できる。したがって、科学者は、ガラス化の前と後の両方で機能し得る試料グリッドを識別および追跡するグローバルな方法を必要としている。
【発明の概要】
【0004】
本開示によるマルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する極低温適合性試料グリッドは、1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域を画定する外部支持構造と、複数の開口部を画定する複数の内部支持構造とを含む。個々の開口部はそれぞれ、試料を保持するように構成される。極低温適合性試料グリッドはさらに、外部支持構造上に位置する第1の識別子と、1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域内に位置する第2の識別子とを含み、第2の識別子は電子顕微鏡で読み取り可能である。第1の識別子は、光学検出器で読み取り可能であり、第2の識別子は、電子検出器(例えば電子顕微鏡内)で読み取り可能である。具体的には、第2の識別子を構成する1つ以上の歯および/または穴がガラス化プロセスからの氷で充填されると、第2の識別子は電子検出器で読み取り可能である。
【0005】
本開示によるマルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する極低温適合性試料グリッドを識別するための方法は、電子顕微鏡を使用して、ガラス化プロセスに供された極低温適合性試料グリッドの電子顕微鏡画像を生成することと、ガラス化適合性識別子を含む電子顕微鏡画像の領域を識別することと、ガラス化適合性識別子に基づいて、極低温適合性試料グリッドの同一性を決定することとを含む。方法はさらに、ガラス化適合性識別子に関連付けられたデータベースの場所に試料グリッドに関する情報を保存すること、そのようなデータベースの場所に保存された情報にアクセスすること、および/またはそのようなデータベースの場所に保存された情報に基づいて1つ以上のアクションを実行することを含んでもよい。方法はさらに、光学センサを用いて試料グリッド上に位置する追加の識別子を読み取ることを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
詳細な説明は、添付の図を参照して説明される。これらの図では、参照番号の最も左側の数字(複数可)で、当該参照番号が最初に現われる図を同定する。異なる図の同じ参照番号は、類似または同一の項目を示している。
【
図1】マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド(複数可)の例を示す図である。
【
図2】マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド(複数可)の代替例を示す図である。
【
図3】マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドの準備、ガラス化、検査、および保管のための極低温EM環境の例を示す図である。
【
図4】マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドで試料を評価するための試料プロセスを示す図である。
【
図5】穴の非線形配置を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図6】内部支持構造の交点に位置する個々の穴を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図7】内部支持構造に沿った穴の線形配置を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図8】開口部内に突出する複数の歯を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図9】支持構造内に突出する切り欠きを備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図10】識別表面上の穴の非線形配置を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッドの一部を示す図である。
【
図11】試料グリッドのガラス化後の第2モードの極低温EM GUIDの性能を示す、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドの断面図を示す図である。
【
図12】極低温EM適合性GUIDの穴内の氷および/または汚れを通る300kV散乱角のグラフ表示である。
【
図13】300kVでの極低温EM適合性GUIDの穴内の氷および/または汚れを透過する入射電子の部分のグラフ表示である。 同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。一般に、これらの図では、所定の例に含まれる可能性が高い要素が実線で示されているのに対し、所定の例には任意選択的である要素は破線で示されている。しかしながら、実線で示される要素は、本開示の全ての例に必須である訳ではなく、実線で示される要素は、特定の例から、本開示の範囲から逸脱しない限り省略されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドが開示される。より具体的には、本開示は、光学的に読み取り可能な第1の識別子と、試料グリッドがガラス化プロセスに供された後に電子顕微鏡で読み取り可能な第2の識別子とを含む、改良された極低温EM試料グリッドを含む。さらに、本開示は、電子顕微鏡においてガラス化極低温EM試料グリッドを識別するための方法を説明する。そのような方法は、データを自動的に保存する、および/または第2の識別子に基づいて1つ以上の他のオプションを実行する電子顕微鏡を含み得る。
【0008】
図1は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド100の図である。
図1は、1つ以上の試料を保持するためのグリッド104の領域を画定する外部支持構造102を備えるものとして試料グリッド100を示している。試料グリッド100は、円形の形状を有するものとして示されているが、本発明を回避する他の形状を有してもよい。具体的には、試料グリッド100は、ガラス化デバイス、電子顕微鏡、試料グリッド保持デバイス、または試料評価ワークフロー内の他のデバイス(複数可)への装填および/またはその中での操作を可能にする任意の形状を有することができる。例えば、試料グリッド100は、1つ以上の試料を試料グリッド100に装填し、1つ以上の試料がガラス化されるガラス化プロセスに通す、および/または電子顕微鏡でのガラス化試料の検査を容易にするための、1つ以上のデバイスおよび/またはセットアップと適合するような形状であってもよい。
【0009】
1つ以上の試料を保持するためのグリッド104の領域は、複数の開口部108を画定する1つ以上の内部支持構造106を含む。内部支持構造(複数可)106は、1つ以上の開口部108内で試料を支持および/または保持するように構成された剛性支持構造である。例えば、
図1は、試料を保持するための複数の正方形の開口108を形成する複数のバー(例えば銅バー)として、1つ以上の内部支持構造106を示している。例示的な内部支持構造(複数可)106は、これらに限定されないが、銅、金、モリブデン、ケイ素、窒化ケイ素、別の結晶性材料、別の金属、またはそれらの組み合わせ等の、試料を支持および/または保持することができる多くの異なる材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、内部支持構造は、外側支持体102の構成要素部分であってもよく、外部支持構造102に締結、接着、溶接、もしくは他の手法で取り付けられた別個の構造であってもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。試料は、溶液中に懸濁した生物学的試料を含んでもよい。このようにして、溶液は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド100内の開口部108内に配置され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の内部支持構造106は、単一の内部支持構造を含む。例えば、そのような内部支持構造は、複数の開口部108を画定するグリッド状構造を含み得る。代替として、内部支持構造(複数可)106は、様々な厚さの領域を有する単一の構造であってもよく、複数の開口部108は、入射電子が通過するのを可能にし、これらの領域を透過型電子顕微鏡での観察時に透明にする厚さを有する単一の構造の領域に対応する。
【0010】
図1には示されていないが、開口部108は、メッシュ、箔等の、開口部108内に溶液を含む試料/溶液を保持するように構成された構造を含んでもよい。例えば、1つ以上の内部支持構造106の上に箔(例えばカーボン箔)の層が存在し、複数の内部支持構造108のうちの1つ以上の上に延在してもよい。このようにして、試料が箔の上に配置されると、箔により、試料は複数の内部支持構造108の上に位置付けられ得る。このようにして、電子は箔を通過できるため、試料は透過型電子顕微鏡で観察され得る。
【0011】
図1にさらに示されるように、試料グリッド100は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する。具体的には、試料グリッド100は、1つ以上の第1のモードの極低温EM適合性GUID110、および1つ以上の第2のモードの極低温EM適合性GUID112を有する。第1のモードの極低温EM適合性GUID110および第2のモードの極低温EM適合性GUID112はそれぞれ、ガラス化適合性である。すなわち、それらは、(1)試料グリッド100がガラス化プロセスに供される前および後の両方で読み取り可能であり、(2)ガラス化プロセスに干渉する、および/またはグリッド104の領域内に保持される溶液(複数可)のガラス化に干渉する追加の熱質量を試料グリッドに導入しない。
【0012】
第1のモードの極低温EM適合性GUID110は、外部支持構造102上に位置し、光学検出器で読み取られるように構成される。第1モードの極低温EM適合性GUID110は、外部支持構造102上に印刷されてもよく、表面を変形させるために機械的に刻印もしくは引っかかれてもよく、追加的にマーキングされてもよく、レーザーエッチングされてもよく、レーザーもしくはイオンビームで表面が粗面化されてもよく、レーザーもしくはイオンビームで表面が再構造化されてもよく、化学的に着色されてもよく、表面材料を除去するために化学的にエッチングされてもよく、表面材料を除去するために放電加工(EDM)されてもよく、穿孔されてもよく、またはフォトレジストプロセスが適用されてもよい。例えば、第1のモードの極低温EM適合性GUID110は、バーコード114、QRコード(登録商標)116、英数字コード118、データ行列、または別の光学的に読み取り可能なIDを含んでもよい。
【0013】
第2のモードの極低温EM適合性GUID112は、試料を保持するためのグリッド104の領域内に位置し、電子顕微鏡で読み取り可能である。すなわち、第2のモードの極低温EM適合性GUID112は、試料グリッド100のガラス化後、および試料の検査中/検査と同時に電子顕微鏡によって読み取られるように構成される。
図1は、試料を保持するための領域104の部分領域152の拡大
図150を含む。第2のモードの極低温EM適合性GUID112は、電子が通過すること、および/または1つ以上の検出器に移動することを可能にする穴または切り欠きを備える。すなわち、内部支持構造106は、試料を支持するのに十分な機械的強度を有さなければならないため、内部支持構造106の厚さは、それらが電子をブロックするような厚さである。このため、透過型電子顕微鏡で評価および/または分析すると、内部支持構造106は(電子が顕微鏡検出器に到達するのを防ぐために)暗い特徴として表示され、第2のモードの極低温EM適合性GUID112の個々の穴または切り欠きは、(電子が内部支持構造106を通過することを可能にするため)内部支持構造106内の明るい特徴として表示される。
【0014】
図1に描写される穴は、実質的に円形の形状であるが、異なる実施形態において、星形、正方形等の様々な他の形状を有してもよい。代替として、穴は、内部支持構造体106の縁に半円または四角形の切り欠きを含んでもよい。第2のモードの極低温EM適合性GUID112における穴のパターンは、試料グリッド100のグローバルな識別を可能にするように構成される。例えば、穴のサイズ、穴の位置付け、穴の形状、穴の間のスペースは、試料グリッド100に関連する1つ以上の識別子をコード化するように、変化および/または他の手法でパターン化され得る。いくつかの実施形態において、第2のモードの極低温EM適合性GUID112は、試料グリッド100に関する向き情報をさらにコード化し得る。例えば、第2のモードの極低温EM適合性GUID112は、試料グリッド100上の第2のモードの極低温EM適合性GUID112の場所、および/または試料グリッド100に対する第2のモードの極低温EM適合性GUID112の向きに関する情報をコード化し得る。
【0015】
図1は、内部支持構造106の交差点に配置された大きい切り欠き120、単一の内部支持構造106に沿って配置された複数の小さい切り欠き122、および穴の線形配列124のパターンを含むものとして、第2のモードの極低温EM適合性GUID112を示している。単一の試料グリッド100は、複数のタイプの第2のモードの極低温EM適合性GUID112を含んでもよく、および/または単一のタイプの第2のモードの極低温EM適合性GUID112が、1つ以上の試料を保持するためのグリッド104の領域内の複数の場所で繰り返されてもよい。
【0016】
図2は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する代替の試料グリッド200の図である。
図2は、試料グリッド200が、1つ以上の試料を保持するためのグリッド204の半円形状領域を画定する外部支持構造202を備えていることを示す。1つ以上の試料を保持するためのグリッド204の領域は、複数の開口部208を画定する複数の内部支持構造206を含む。
【0017】
図2にさらに示されるように、試料グリッド200は、1つ以上の第1のモードの極低温EM適合性GUID210と、1つ以上の第2のモードの極低温EM適合性GUID212とを有する。第1のモードの極低温EM適合性GUID210および第2のモードの極低温EM適合性GUID212のそれぞれは、ガラス化適合性である。
図2は、識別領域214内の同じ場所に位置するものとして、第1のモードの極低温EM GUID210を示している。各タイプの第1モードの極低温EM GUIDは、試料グリッド200で1回だけ発生するように示されているが、他の実施形態において、GUIDは、試料グリッド200上の複数の場所で繰り返されてもよい。さらに、
図2は、非中央場所216に配置されているものとして、第2のモードの極低温EM適合性GUID212を示している。非中央場所216の拡大挿入
図218に示されるように、第2のモードの極低温EM適合性GUID212は、2つの隣接する内部支持構造に沿った小さい穴220の非線形パターンと、様々なサイズの一連の穴222とを含む。
図2は、開口部内に位置し、穴の非線形パターンを含む挿入構造224をさらに示す。挿入構造224は、内部支持構造から熱的に隔離されている。
【0018】
図3は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド302の準備、ガラス化、検査、および保管のための例示的な極低温EM環境300の図である。具体的には、
図3は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド302の検査のための例示的な極低温EMシステム(複数可)304を含むものとして、例示的な極低温EM環境300を示す。例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304は、極低温電子顕微鏡304を含み得る。
図3は、極低温TEMシステム306として、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304を示す。
【0019】
例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304は、荷電粒子ビーム310を放出軸312に沿って加速レンズ314に向けて放出する荷電粒子源308(例えば、熱電子源、ショットキー放出源、電界放出源等)を含む。放出軸312は、荷電粒子源108から例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304の長さに沿って、かつ試料グリッド302を通って走る中心軸である。加速レンズ314は、電子ビーム310を集束カラム316に向けて加速/減速、集束、および/または方向付ける。集束カラム316は、電子ビーム310を集束し、それが試料グリッド302内の試料318に入射するようにする。さらに、集束カラム316は、電子ビーム310の収差(例えば、幾何学的収差、色収差)を補正および/または調整し得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、集束カラム316は、開口320および上部対物レンズ324のうちの1つ以上を含み得る。集束カラム316は、電子源308からの電子を試料318上に集束する。
【0021】
試料グリッド302は、試料ホルダ324によって保持され得る。試料318を通過および/またはそれにより放出される電子または荷電粒子326は、プロジェクタ328に入ることができる。一実施形態において、プロジェクタ328は、集束カラム316とは別個の部品であってもよい。他の実施形態において、プロジェクタ328は、集束カラム316内のレンズからのレンズ視野の延長部であってもよい。プロジェクタ328は、直接電子または荷電粒子326が試料318を通過し、顕微鏡検出器システム330に衝突するように、コンピューティングデバイス350によって調整され得る。
【0022】
低倍率TEM(LMモード)では、試料グリッド302の2番目の識別子を構成する穴は、最小限の量の氷で充填されると観察不可能となり得る。この現象は、対物レンズがオフになっているため、LMモードでの投影レンズシステムの小さな開口(瞳機能)が原因であると考えられる(すなわち、氷等の材料は電子を受容角よりも大きな角度で散乱させるため、LMでは電子がカメラに到達することはほとんどない)。しかしながら、例示的な極低温EM304が、対物レンズを有効にしてSAモードで動作しているTEMの場合には、この現象は克服される。しかしながら、例示的な極低温EM304は、本開示においてTEMであることに限定されないことに留意されたい。
【0023】
図3はさらに、コンピューティングデバイス(複数可)350、試料調製デバイス/セットアップ(複数可)352、光学走査デバイス354、ガラス化デバイス/セットアップ356、および試料グリッド保管セットアップ358を任意選択で含むものとして、例示的な極低温EM環境300を示している。
図3は、コンピューティングデバイス(複数可)350、試料調製デバイス/セットアップ352、光学走査デバイス(複数可)354、ガラス化デバイス/セットアップ356、および試料グリッド保管セットアップ358を別個のものとして示しているが、様々な実施形態において、これらの要素の1つ以上が組み合わせされてもよい。例えば、コンピューティングデバイス350および/または光学走査デバイス354は、単一のデバイスおよび/または他のデバイス(例えば、試料調製デバイス/セットアップ(複数可)352、ガラス化デバイス/セットアップ356、および試料グリッド保管セットアップ358等)に組み込まれてもよい、
【0024】
当業者であれば、
図3に示されるコンピューティングデバイス350は単なる例示であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。コンピューティングシステムおよびデバイスは、コンピュータ、ネットワークデバイス、インターネット家電製品、PDA、無線電話、コントローラ、オシロスコープ、増幅器等を含む、指定された機能を実行することができるハードウェアまたはソフトウェアの任意の組み合わせを含み得る。コンピューティングデバイス350はまた、図示されていない他のデバイスに接続されてもよく、または代わりに、スタンドアロンシステムとして動作してもよい。さらに、図示の構成要素により実現される機能は、いくつかの実施態様では、より少ない構成要素に組み合わせることができる、または追加の構成要素に分散させることができる。同様に、いくつかの実施態様では、図示の構成要素のうちいくつかの構成要素の機能は実現されなくてもよい、および/または他の追加機能を利用可能とすることができる。
【0025】
コンピューティングデバイス(複数可)350は、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304の構成要素であってもよく、ネットワーク通信インターフェースを介して例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304と通信する、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304とは別個のデバイス、またはそれらの組み合わせであってもよい。例えば、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304は、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304の構成要素部分である第1のコンピューティングデバイス350を含んでもよく、これは、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304の動作を駆動するコントローラとして機能する(例えば、走査コイルを動作させることによって、試料グリッド302上の走査場所を調整する、等)。そのような実施形態において、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304はまた、例示的な荷電粒子顕微鏡システム(複数可)304とは別個のデスクトップコンピュータである第2のコンピューティングデバイス350を含んでもよく、これは、顕微鏡検出器システム330から受信したデータを処理して、試料グリッド302上の試料(複数可)の画像を生成する、および/または他のタイプの分析を行うように実行可能である。コンピューティングデバイス350は、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン等を介して、ユーザ選択を受信し得る。
【0026】
試料調製デバイス/セットアップ352は、試料を調製し、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド302に試料を追加するための実験室セットアップを含む。例えば、試料調製デバイス/セットアップ(複数可)352は、試料が溶液中に懸濁するように、溶液中で例示的な極低温EMシステム(複数可)304によって検査される試料を混合するためのデバイス、および/または、溶液/そこに懸濁した試料を試料グリッド302の1つ以上の開口部に追加するためのデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、試料を調製することは、コンピューティングデバイス350を用いて試料グリッド302上の個々の試料の場所を保存することを含んでもよい。例えば、コンピューティングデバイス350は、試料グリッド302に保存される個々の試料のマッピングおよび/または試料グリッド302上の各試料の場所を保存してもよい。
【0027】
光学走査デバイス354は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド上の第1の識別子を光学的に読み取ることができる任意のデバイスに対応し得る。例えば、光学走査デバイス354は、第1の識別子を検出し、識別プロセスを実行して試料グリッド302を識別する、および/またはコンピューティングデバイス350と相互作用して試料グリッド302を識別することができるバーコードスキャナ、QRスキャナ、カメラ等を含んでもよい。代替として、または追加して、光学走査デバイス354は、試料グリッド302に関連する情報データベースに情報を保存させてもよい(例えば、試料情報、試料グリッド上の試料の場所、タイムスタンプ、研究室識別子、研究情報等)。いくつかの実施形態において、光学走査デバイス354は、コンピューティングデバイス350の構成要素センサであってもよい。
【0028】
ガラス化デバイス/セットアップ356は、試料グリッド302をガラス化プロセスに供するための実験室セットアップを含む。ガラス化プロセスは、試料グリッド302に含まれる溶液をガラス化させ、そこに懸濁した試料を例示的な極低温EMシステム304で観察することができるようにする。いくつかの実施形態において、ガラス化デバイス/セットアップ356は、試料グリッドがガラス化デバイス/セットアップ356内にあるときに、試料グリッド上の第1の識別子を走査するように位置付けられた光学走査デバイス354を含み得る。第1の識別子を検出する光学走査デバイス354に基づいて、ガラス化デバイス/セットアップ356は、試料グリッドに関連付けられたデータベースにアクセスし、データベース内の情報に従ってアクションを実行し得る(例えば、設定を調整する、ガラス化を実行する、追加情報をデータベース内に保存させる、ガラス化デバイス/セットアップ356に関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース上でユーザに情報が提示されるようにする)。
【0029】
試料グリッド302がガラス化プロセスに供されたら、溶液がガラス化したままであるように、試料グリッド302を極低温に維持しなければならない。これは、光学走査デバイス354が、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド302の第1の識別子を走査する能力を阻害する。試料保管セットアップ358は、試料グリッド302がガラス化デバイス/セットアップ356と例示的な極低温EMシステム(複数可)304との間で輸送されることを可能にする短期保管ユニット(例えば輸送フラスコ)を含み得る。代替として、試料保管セットアップ358は、試料グリッド302が例示的な極低温EMシステム(複数可)304によって検査される前および/または後に保持され得る長期保管を含み得る。
【0030】
図3は、コンピューティングデバイス350の例示的なコンピューティングアーキテクチャ370を示す概略図をさらに含む。例示的なコンピューティングアーキテクチャ370は、本開示で説明される技術を実装するために使用され得るハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントの追加の詳細を示している。例示的なコンピューティングアーキテクチャ370では、コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ372と、1つ以上のプロセッサ372に通信可能に結合されたメモリ374とを含む。
【0031】
例示的なコンピューティングアーキテクチャ370は、メモリ374に保存された識別モジュール376および制御モジュール378を含んでもよい。例示的なコンピューティングアーキテクチャ370はさらに、メモリ374に保存された識別マッピング380および情報データベース382を含むものとして示されている。識別マッピング380は、第1の識別子、第2の識別子、および試料グリッド302に関する識別情報を一緒にマッピングするデータ構造である。情報データベース382は、試料グリッド302および/または他の試料グリッドに関連する情報を含むデータベースである。例えば、情報データベース382は、試料グリッド302上に存在する試料(複数可)に関する情報、試料グリッド302上の試料の場所、試料グリッド302の場所、試料グリッドおよび/またはその上の試料の生成されたセンサデータ/画像データ、EM顕微鏡設定、EMプロトコル等を含み得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「モジュール」という用語は、説明の目的で実行可能な命令の例示的な区分を表すように意図されており、あらゆるタイプの要件または必要な方法、方式または編成を表すようには意図されていない。したがって、様々な「モジュール」が説明されているが、それらの機能および/または同様の機能は、異なって配置されることができる(例えば、より少数のモジュールに結合、より多数のモジュールに分割等)。さらに、特定の機能およびモジュールは、本明細書ではプロセッサ上で実行可能なソフトウェアおよび/またはファームウェアによって実装されるものとして説明されているが、他の例では、任意または全てのモジュールは、説明された機能を実行するようにハードウェア(例えば、特殊な処理ユニット等)によって全体または部分的に実装されることができる。様々な実施態様において、例示的なコンピューティングアーキテクチャ370に関連して本明細書で説明されるモジュールは、複数のコンピューティングデバイス350にわたって実行され得る。
【0033】
識別モジュール376は、第1の識別子または第2の識別子に少なくとも部分的に基づいて試料グリッド302の同一性を決定するために、プロセッサ372によって実行可能であってもよい。識別モジュール376はまた、第2の識別子に基づいて、例示的な極低温EMシステム(複数可)304における試料グリッド302の向きを識別することもできる。例えば、識別モジュール376は、識別マッピング380にアクセスし、第1の識別子または第2の識別子に基づいて試料グリッド302の同一性を決定することができる。第2の識別子を示す例示的な極低温EMシステム(複数可)304からセンサ情報を受信するコンピューティングデバイス350に応答して、識別モジュール376は、試料グリッド302の同一性を決定することができる。いくつかの実施形態において、識別モジュール376は、第2の識別子が例示的な極低温EMシステム(複数可)304のセンサデータ内に位置することを自動的に検出するように構成されてもよく、試料グリッド302の自動検出に基づいて試料グリッド302を自動的に識別してもよい。
【0034】
識別モジュール376が、第2の識別子の一部が例示的な極低温EMシステム(複数可)304のセンサデータ内に位置することを検出した場合、識別モジュール376は、第2の識別子の残りの部分がセンサデータ内に含まれるように、例示的な極低温EMシステム(複数可)304の1つに、試料グリッド302および/または集束カラム316を操作させる。例えば、第2の識別子の可視性を改善するために、識別モジュール376は、電子ビーム310が電子源308から離れる方を向いた試料グリッド302の底面に集束されるように電子ビーム310の焦点をずらす集束カラム316の調整をもたらす。いくつかの実施形態において、識別モジュール376は、第2の識別子の全体が含まれるようにセンサデータを互いにモンタージュおよび/またはスティッチングしてもよく、モンタージュおよび/またはスティッチングされたセンサデータに基づいて試料グリッド302の識別を実行してもよい。別の例では、コンピューティングデバイス350が第1の識別子を示す光学走査デバイス354からセンサ情報を受信することに応答して、識別モジュール376は、識別マッピング380を使用して、試料グリッド302の同一性を決定してもよい。識別モジュール376はさらに、試料グリッド302の同一性を、例示的な極低温EMシステム(複数可)304、光学走査デバイス354、および/またはコンピューティングデバイス350のディスプレイ384に送信および/または提示させるように実行可能であってもよい。
【0035】
制御モジュール378は、コンピューティングデバイス250および/または例示的な極低温EMシステム(複数可)304に、1つ以上のアクションを実行させる、および/または情報を提示させるように、プロセッサ372によって実行可能であってもよい。いくつかの実施形態において、制御モジュール378は、例示的な極低温EMシステム(複数可)304の設定を調整し、例示的な極低温EMシステム(複数可)304に特定の動作、またはそれらの組み合わせを実行させるように実行可能であってもよい。例えば、制御モジュール378は、試料グリッド302および/またはその上の試料の顕微鏡設定を識別する試料グリッド302に関連する情報データベース382の一部にアクセスし、次いで例示的な極低温EMシステム(複数可)304が情報データベース382で識別された顕微鏡設定を有するように実行可能であってもよい。別の例では、制御モジュール378は、試料グリッド302上の試料の場所を識別する情報データベース382の一部にアクセスしてもよく、例示的な極低温EMシステム(複数可)304に試料グリッド302上の試料を自動的に撮像させてもよい。例示的な極低温EMシステム(複数可)304が集束イオンビーム(FIB)を含む場合、制御モジュール378はまた、試料グリッドの1つ以上を移動させる、および/またはFIBを調整させ、次いで極低温EMシステム(複数可)304に自動的にミリングプロセスを開始させるように実行可能であってもよい。例えば、データベースは、ミリングされるある特定の領域に対する命令を含んでもよく、極低温EMシステム(複数可)304は、命令に基づいてそれらのある特定の領域を自動的にミリングしてもよい。
【0036】
代替として、または追加して、制御モジュール378は、ディスプレイ384に、ユーザに提示されるプロトコルの提示、試料グリッド302に関する情報の提示等を行わせてもよい。いくつかの実施形態において、制御モジュール378は、ディスプレイ384に、ユーザが試料グリッド302に関連するデータを入力および/もしくは変更する、ならびに/または例示的な極低温EMシステム(複数可)304によって実行されるプロトコルステップを選択することを可能にする選択可能インターフェースを含むグラフィカルユーザインターフェースを提示させてもよい。制御モジュール378は、例示的な極低温EMシステム(複数可)304、光学走査デバイス354からの情報、および/またはユーザによってコンピューティングデバイス350に入力された情報を情報データベース382に保存するようにさらに実行可能であってもよい。例えば、制御モジュール378は、例示的な極低温EMシステム(複数可)304からのセンサデータおよび/または画像を、第1の識別子、第2の識別子、および/または試料グリッド302に関連して情報データベース382に保存させてもよい。
【0037】
コンピューティングデバイス350は、1つ以上のプロセッサがアクセス可能なメモリ(複数可)に保存された命令、アプリケーション、またはプログラムを実行するように構成された1つ以上のプロセッサを含む。いくつかの例では、1つ以上のプロセッサは、これらに限定されないが、ハードウェア中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)等を含むハードウェアプロセッサを含むことができる。多くの事例では、本技術は本明細書において、1つ以上のプロセッサにより実行されるものとして説明されているが、いくつかの事例では、本技術は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラマブルロジック装置(CPLD)、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SoC)、またはこれらの組み合わせのような1つ以上のハードウェアロジックコンポーネントにより実現することができる。
【0038】
1つ以上のプロセッサにアクセス可能なメモリは、コンピュータ可読媒体の例である。コンピュータ可読媒体は、2つのタイプのコンピュータ可読媒体、すなわちコンピュータ記憶媒体および通信媒体を含むことができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータのような情報を格納する任意の方法もしくは技術で実現される揮発性媒体および不揮発性媒体、着脱可能媒体、および着脱不能媒体を含むことができる。コンピュータ記憶媒体は、これらに限定されないが、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、もしくは他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、または他の磁気ストレージ装置、もしくは所望の情報を格納するために使用することができ、かつコンピューティングデバイスによりアクセスすることができる任意の他の非伝送媒体を含む。一般に、コンピュータ記憶媒体は、1つ以上の処理装置により実行されると、本明細書において説明される様々な機能および/または操作を実行するようになるコンピュータ実行可能命令を含むことができる。これとは異なり、通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールを具体化する、または搬送波のような変調データ信号の他のデータを具体化する、もしくは他の伝送機構を具体化する。本明細書において定義されるように、コンピュータ記憶媒体は通信媒体を含まない。
【0039】
当業者であれば、項目またはその一部分が、メモリと他のストレージ装置との間で転送されて、メモリ管理およびデータ完全性を確保することができることを理解することもできるであろう。代替として、他の実施態様では、ソフトウェアコンポーネントのいくつかは、または全ては、別のデバイスのメモリで実行し得、コンピューティングデバイス350と通信し得る。システムコンポーネントまたはデータ構造のいくつかは、または全ては、非一時的なコンピュータアクセス可能媒体に格納する、または適切なドライブにより読み取られるポータブル製品に格納することもでき(例えば、命令または構造化データとして)、適切なドライブの様々な例は、上に説明されている。いくつかの実施態様において、コンピューティングデバイス350とは別個のコンピュータアクセス可能媒体に保存されている命令が、無線リンク等の通信媒体を介して伝達される電気信号、電磁信号、またはデジタル信号等の伝送媒体または信号を介して、コンピューティングデバイス350に伝送されてもよい。様々な実施態様は、コンピュータアクセス可能媒体に関するこれまでの記述に従って実現される命令および/またはデータを受信する、送信する、または格納することをさらに含むことができる。
【0040】
図4は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実装され得る一連の操作を表す論理フローグラフのブロックの集合として示された例示的なプロセスのフロー図である。ソフトウェアの状況では、ブロックは、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体に格納されているコンピュータ実行可能命令を表わし、コンピュータ実行可能命令が1つ以上のプロセッサにより実行されると、列挙される操作を実行するようになる。一般に、コンピュータ実行可能命令は、特定の機能を実行する、または特定の抽象データタイプを実現するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。操作が記述される順序は、限定として解釈されるべきではなく、任意の数の記述ブロックは、任意の順序で組み合わせる、および/または同時に行われるように組み合わせてプロセスを実現することができる。
【0041】
図4は、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドで試料を評価するための試料プロセス400を示す。プロセス400は、例示的な極低温EM環境300のいずれかにおける、および/もしくは上述のコンピューティングデバイス(複数可)350による、または他の環境およびコンピューティングデバイスにおいて、試料グリッド100および200のいずれかを用いて実装され得る。
【0042】
402では、試料が調製され、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド上に配置される。いくつかの実施形態において、試料を調製することは、試料が溶液中に懸濁するように、溶液中の極低温EMで評価される試料を混合すること、および/または溶液/その中に懸濁した試料を、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドの1つ以上の開口部に加えることを含む。
【0043】
ステップ404では、試料グリッドの第1のモードのGUIDがスキャンされる。具体的には、試料グリッドの第1のモードのGUIDは、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッド上の第1のモードのGUIDを光学的に読み取ることができる光学走査デバイスでスキャンされる。例えば、光学走査デバイスは、バーコードスキャナ、QRスキャナ、カメラ、または第1のモードのGUIDを検出することができる他のタイプの光学スキャナであってもよい。いくつかの実施形態において、試料グリッドをスキャンすることは、第1のモードのGUIDに基づいて試料グリッドを識別することを含む。いくつかの実施形態において、試料の調製および/または試料グリッド上の試料の配置の前に、試料グリッドの第1のモードのGUIDがスキャンされる。
【0044】
ステップ406では、試料グリッドおよび/またはその上の試料に関する情報が保存される。具体的には、試料グリッドおよび/またはその上の試料に関する情報が、第1のモードのGUID、第2のモードのGUID、および/または試料グリッドに関連するデータベースの場所に保存される。情報は、試料情報、試料グリッド上の試料の場所、タイムスタンプ、ラボ識別子、研究情報、または試料グリッドに関連する他の情報を含む。情報は、ユーザによって入力されてもよく、または情報は、光学スキャナおよび/または別のデバイスによって自動的に生成されてもよい。例えば、光学スキャナが保存システムに関連付けられている場合、保存システムは、試料グリッドが保存されている場所をデータベースに含ませることができる。
【0045】
408では、試料グリッドおよびその上の試料は、ガラス化プロセスに供される。ガラス化プロセスにより、試料グリッドに含まれる溶液がガラス化され、そこに懸濁した試料を極低温EMで観察することができる。いくつかの実施形態において、ガラス化デバイスは、試料グリッド上の第1のモードのGUIDを走査するように位置付けられた光学走査デバイスを含んでもよく、次にガラス化デバイスは、試料グリッドに関連付けられたデータベースにアクセスし、データベース内の情報に従ってアクションを実行し得る(例えば、設定を調整する、ガラス化を実行する、追加情報をデータベース内に保存させる、ガラス化デバイスに関連付けられたディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース上でユーザに情報が提示されるようにする)。試料グリッドがガラス化プロセスに供されたら、溶液をガラス化したままにするために、試料グリッドを極低温に維持しなければならない。
【0046】
410で、試料は第2のモードのGUIDで識別される。具体的には、極低温EMは、評価されている試料グリッドの領域内に第2のモードのGUIDが位置すると判断し、第2のモードのGUIDに基づいて試料グリッドを識別する。例えば、第2のモードのGUIDは、電子が試料グリッドを通過できるようにする穴、歯、または切り欠きを含み、それらが極低温EMの1つ以上の検出器によって検出されるようにする。このようにして、第2の識別子を構成する歯、切り欠き、穴の1つ以上がガラス化プロセスの氷で充填された場合でも、極低温EMは第2のモードのGUIDを視覚化することができる。第2のモードのGUIDの可視性を向上させるために、第2のモードのGUIDを構成する試料グリッドの底面および/または穴の出口面に焦点を合わせるように極低温EMの電子ビームの焦点を調整され得る。例えば、いくつかの実施形態において、極低温EM適合性GUIDを読み取ることは、極低温EMが、電子顕微鏡の電子ビームの焦点を自動的にずらして、試料グリッドの内部支持構造の底面に焦点が合うようにすることを含んでもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、極低温EMは、第2のモードのGUIDの一部が試料グリッドの第1の領域に存在することを検出することができ、第2のモードのGUIDの残りの部分が極低温EMによって検出されるように試料グリッドの第2の領域が観察されるようにし得る。いくつかの実施形態において、試料グリッドは、第2のモードのGUIDの第1部分で識別され、試料グリッドの向きおよび/または試料グリッド上の第2のモードのGUIDの場所は、第2のモードのGUIDの第2の部分で識別される。
【0048】
ステップ412では、第2のモードのGUIDおよび/または試料グリッドに関連する情報が任意選択でアクセスされる。いくつかの実施形態において、試料グリッドおよび/または試料に関する情報は、第1のモードのGUID、第2のモードのGUID、および/または試料グリッドに関連するデータベースの場所に保存され得る。第2のモードのGUIDおよび/または試料グリッドに関連する情報は、極低温EM顕微鏡または関連するコンピューティングデバイスのディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース上に表示される。代替として、または追加して、アクセスされた情報を使用して、極低温EMに1つ以上のアクションを実行させ、例えば極低温EMの設定を変更し、極低温EMに試料グリッド上の試料を自動的に画像化させ、試料グリッドの1つ以上を移動させ、および/またはFIBを調整させ、次いでミリングプロセスを開始することができる。
【0049】
414では、試料グリッドおよび/またはその上の試料は、極低温EMで検査される。例えば、マルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドは、対物レンズを有効にしてSAモードで動作する透過型電子顕微鏡で検査され得る。動作条件が第2のモードのGUIDおよび/または試料グリッドに関連してデータベース内に保存されるいくつかの実施形態において、極低温EMの設定は、保存された動作条件に従って変更されてもよい。このようにして、極低温EMは、第2のモードのGUIDおよび/または試料グリッドに関連して以前に保存された情報および/または設定に基づいて、その性能および/または評価プロセスを自動的に調整し得る。
【0050】
416では、試料グリッドおよび/またはその上の試料に関する情報が、任意選択で保存されてもよい。具体的には、試料グリッドおよび/またはその上の試料に関する情報は、第1のモードのGUID、第2のモードのGUID、および/または試料グリッドに関連するデータベースの場所に保存される。この情報は、極低温EMによって生成された試料グリッド上の試料の画像、試料に関する情報、極低温EMに関する情報等を含む。情報は、極低温EM(または関連するコンピューティングデバイス)によって生成されてもよく、またはユーザにより入力されてもよい。
【0051】
図5~
図10は、ガラス化プロセスに曝露された後、極低温EMで画像化され得る例示的極低温EM適合性GUIDの図である。本発明による極低温EM適合性GUIDは、
図5~10に示されるものに限定されない。さらに、
図5~10に示される極低温EM適合性GUIDは、互いに組み合わせて使用されてもよく、または本開示による極低温EM適合性GUIDは、異なる
図5~10に示される特徴の組み合わせを含んでもよい。
【0052】
図5は、穴の非線形配置を備える極低温EM適合性GUIDを含む極低温EM適合性試料グリッド500の一部を示す。具体的には、
図5は、試料を保持するための複数の開口部108を画定する複数の内部支持構造106を含む、極低温EM適合性試料グリッド500の一部を示す。
図5には示されていないが、開口部108は、試料が極低温EMシステムによって検査されることを可能にする一方で、試料を保持するように構成されたカーボン箔を含んでもよい。穴502の非線形配置は、実質的に円形の穴の配置として示されている。いくつかの実施形態において、穴の非線形配置の一部は、グローバル識別子をコード化することができ、穴の非線形配置の異なる部分は、識別子および/または試料グリッドの向きをコード化することができる。
【0053】
図6は、内部支持構造の交点に位置する個々の穴を備える極低温EM適合性GUID602を含む極低温EM適合性試料グリッド600の一部を示す。
図7は、内部支持構造に沿った穴の線形配置を備える極低温EM適合性GUID702を含む極低温EM適合性試料グリッド700の一部を示す。
図5~7は、試料のサイズおよび形状の穴としてGUID502、602、および702の穴をそれぞれ示しているが、他の実施形態において、個々の穴は、異なるサイズおよび/または形状を有し得る。
【0054】
図8は、開口部108内に突出する複数の歯を備える極低温EM適合性GUID802を含む極低温EM適合性試料グリッド800の一部を示す。同様に、
図9は、支持構造106内に突出する切り欠きを備える極低温EM適合性GUID902を含む極低温EM適合性試料グリッド900の一部を示す。いくつかの実施形態において、
図8および
図9のそれぞれにおいて均一なサイズおよび形状を有するものとして示されているが、切り欠きおよび/または歯のサイズおよび形状は、GUID内で様々であってもよい。
【0055】
図10は、識別表面1004上の穴の非線形配置を備える極低温EM適合性GUID1002を含む極低温EM適合性試料グリッド1000の一部を示す。識別表面1004は、開口部108内に位置し、1つ以上の接続ブリッジ1006によって複数の内部支持構造106から熱的に隔離されている。個々の接続ブリッジ10006はそれぞれ、1つ以上の内部支持構造106から識別表面1004を熱的に隔離するように構成されている。
【0056】
図11は、試料グリッドのガラス化後の第2のモードの極低温EM GUIDの性能を示すマルチモーダル極低温EM適合性GUIDを有する試料グリッドの断面
図1100を示す。具体的には、
図11は、内部支持構造1104の長さに沿って分断される試料グリッド1102の断面図を示す。試料グリッド1102は、顕微鏡での評価のために位置付けられた場合に電子源に面する上面1106と、上面1106の反対側である底面1108とを有するものとして示されている。
図11は、試料グリッド1102の上面1106上に位置付けられた箔1110(例えばカーボン箔)をさらに示す。内部支持構造1104に穿孔された複数の穴1114を備える極低温EM適合性GUID1112もまた示されている。
【0057】
さらに、
図11は、試料グリッド1102のガラス化後の極低温EM適合性GUID1112の動作を示す、試料グリッド1102の領域1118の分解
図1120を含む。具体的には、分解
図1120は、複数の穴1114の1つ以上が汚れまたは氷1122によって部分的または完全に隠されている場合の極低温EM適合性GUID1112の検出可能性を示している。電子入口経路1124は、電子源からの電子が試料グリッド1102に入射するために取る電子軸1126に沿って示され、電子散乱経路1128は、穴1114内の汚れまたは氷1122により散乱された後の電子の経路を示す。分解
図1116はまた、顕微鏡がLMモード(対物レンズがオフの状態)である場合のプロジェクターレンズの第1の瞳孔径1130、および顕微鏡がSAモード(対物レンズが有効化された状態)である場合のプロジェクターレンズの第2の瞳孔径1132を示す。LMモードで動作する場合、そのような典型的なプロジェクターレンズは、13mradに相当する半角を有するが、SAモードで動作する場合、そのようなプロジェクターレンズは典型的には130mradに相当する半角を有する。
【0058】
上述したように、電子は個々の穴1114を通過して、電子を検出システムに方向付けるレンズに入ることができるため、個々の穴1114は電子顕微鏡で観察され得る。これは、個々の穴1114が電子顕微鏡で観察され得るようにするためには、電子散乱経路1128がプロジェクターレンズの瞳孔径を横切らなければならないことを意味する。このため、顕微鏡がSAモードで動作している場合、極低温EM適合性GUID1112は電子顕微鏡でより観察されやすくなる。複数の穴1114を通過する電子の検出のさらなる改善は、内部支持構造1104の底面1108および/または複数の穴1114の穴の出口面に電子ビームの焦点をずらすことによって達成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、極低温EM適合性GUID1112を読み取ることは、電子顕微鏡の電子ビームを、試料グリッドの内部支持構造1104の底面1108に集束させることを含んでもよい。
【0059】
図12および13は、モデル材料のガラス質カーボンの異なる高さ/厚さを通過する電子のシミュレーションの結果のグラフ表示である。ガラス質カーボンは、極低温EM適合性GUIDの穴を充填し得るガラス化試料溶液の予想される混合物に比較的近い密度および原子質量を有する。
図12は、極低温EM適合性GUIDの穴内の材料を通る300kV散乱角のグラフ表示1200である。具体的には、
図12は、モデル材料のガラス質カーボンの異なる高さ/厚さでの各散乱角(mradで測定)を示すシミュレートされた電子の数(10万個中)を示している。シミュレーションでは、透過した電子の出口軌道の広がりが、ガラス質カーボンのスラブの底面で記録される。
【0060】
図13は、300kVで極低温EM適合性GUIDの穴内の材料を透過する入射電子の一部のグラフ表示1300である。具体的には、
図13は、異なる対物レンズ半角(mradで測定)で電子顕微鏡の投影レンズ系の対物レンズによって透過される、モデル材料のガラス質カーボンの各高さ/厚さでの電子の部分を示す。グラフ表示1200では、対物レンズが無効になっている場合(すなわち、TEMがLMモードで動作している場合)に13mrad未満等の小さな半角を使用すると、穴を埋める数ミクロンの材料の薄層でさえも電子軌道を投影レンズ系の許容角の外に移動させることが分かる。しかしながら、グラフ表示1200はまた、受光角が大幅に大きい(典型的には130mrad以上の範囲内)投影レンズシステムで対物レンズを有効にすることで(すなわち、TEMがSAモードで動作している場合)、より多くの散乱電子が捕獲されることを示している。その結果、TEMがSAモードで動作する場合、極低温EM適合性GUIDの穴全体が30ミクロンの材料で充填されていても、十分に大きな検出可能な信号が得られる。
【0061】
本開示による本発明の主題の例は、以下に列挙される段落で説明される。
【0062】
A1.極低温適合性試料グリッドであって、
【0063】
1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域を画定する外部支持構造と;
【0064】
複数の開口部を画定する複数の内部支持構造であって、個々の開口部はそれぞれ、試料を保持するように構成される、内部支持構造と;
【0065】
外部支持構造上に位置する第1の識別子と;
【0066】
1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域内に位置する第2の識別子であって、電子顕微鏡で読み取り可能な第2の識別子とを備える、極低温適合性試料グリッド。
【0067】
A1.1.第1の識別子が、光学検出器で読み取り可能である、段落A1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0068】
A1.1.1.第1の識別子が、試料保管デバイス、試料移送デバイス、試料修正デバイス、ガラス化デバイス、または電子顕微鏡のうちの1つ以上に実装された可視光検出器で読み取り可能である、段落A1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0069】
A1.2.第2の識別子が、電子検出器で読み取り可能である、段落A1~A1.1いずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0070】
A2.
【0071】
1つ以上の試料を受容し、
【0072】
1つ以上の試料がガラス化されるガラス化プロセスを実行し、
【0073】
ガラス化後の電子顕微鏡によるガラス化試料の検査を容易にするように構成される、段落A1~A1.2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド
【0074】
A3.第1の識別子および第2の識別子のそれぞれが、ガラス化適合性である、段落A1およびA2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0075】
A3.1.第1の識別子および第2の識別子のそれぞれが、極低温適合性試料グリッドに熱質量を追加しない、段落A3に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0076】
A4.第1の識別子が、ガラス化プロセスの前に読み取り可能である、段落A1~A3.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0077】
A4.1.第1の識別子が、ガラス化プロセス後に読み取り可能である、段落A4に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0078】
A4.2.第1の識別子が、
【0079】
レーザーまたはイオンビームによる外部支持構造の表面の粗面化;
【0080】
レーザーまたはイオンビームによる表面構造化;
【0081】
外部支持構造の表面への機械的な刻印;
【0082】
外部支持構造の表面を変形させるための機械的引っ掻き;
【0083】
外部支持構造への追加マーキング;
【0084】
外部支持構造の表面の化学的着色;
【0085】
外部支持構造の表面材料を除去するための化学エッチング;
【0086】
外部支持構造の表面材料を除去するための放電加工(EDM);
【0087】
外部支持構造の穿孔;および
【0088】
外部支持構造の表面を着色するためのフォトレジストプロセスの使用のうちの少なくとも1つにより、極低温適合性試料グリッド上で生成される、段落A4~A4.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0089】
A4.3.第1の識別子が、バーコード、QRコード、データ行列、および英数字コードのうちの1つである、段落A4~A4.2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0090】
A4.4.第1の識別子が、グローバル一意識別子である、段落A4~A4.3のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0091】
A4.5.第1の識別子が、グローバル一意識別子をコード化する第1の部分と、試料グリッドの特定の特性をコード化する第2の部分とを含む、段落A4~A4.4のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0092】
A5.第2の識別子が、ガラス化プロセス後に読み取り可能である、段落A2~A4.4のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0093】
A5.1.第2の識別子が、1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域内の複数の場所で繰り返される、段落A5の極低温適合性試料グリッド。
【0094】
A5.2.第2の識別子が、複数の内部支持構造の特定の内部支持構造から外向きに、対応する開口内に突出する1つ以上の歯を備える、段落A5~A5.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0095】
A5.2.1.1つ以上の歯の各歯が、1μ~10μの範囲内の距離だけ離間している、段落A5.2に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0096】
A5.3.第2の識別子が、複数の穴を備える、段落A5~A5.2.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0097】
A5.3.1.複数の穴の少なくとも1つが、複数の穴の異なる穴とは異なるサイズを有する、段落A5.3に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0098】
A5.3.2.複数の穴のそれぞれが、実質的に円形の形状である、段落A5.3~A5.3.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0099】
A5.3.2.1.複数の穴の個々の穴が、内部支持構造の交点に位置する、段落A5.3.2に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0100】
A5.3.3.複数の穴が、線形配置で配置される、段落A5.3~A5.4.3.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0101】
A5.3.3.1.線形配置が、複数の内部支持構造の内部支持構造に沿って位置付けられる、段落A5.3.3に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0102】
A5.3.3.1.1.線形配置が、カーボンを有する開いた窓の小片が観察され得るように、複数の内部支持構造の縁に沿って位置付けられる、段落A5.3.3.1に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0103】
A5.3.3.2.第2の識別子が複数の場所で繰り返され、第2の識別子の線形配置または各インスタンスが、複数の内部支持構造の異なる内部支持構造に沿って位置付けられる、段落A5.3.3に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0104】
A5.3.4.複数の穴が、非線形配置で配置される、段落A5.3~A5.3.2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0105】
A5.3.4.1.非線形配置が、長方形または直交パターンではない、段落A5.3.4に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0106】
A5.3.5.第2の識別子が、第2の識別子を構成する1つ以上の歯および/または穴がガラス化プロセスからの氷で充填されると読み取り可能である、段落A5.3~A5.3.2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0107】
A5.3.6.複数の穴のそれぞれが、1μ~10μの範囲内の直径を有する、段落A5.3~A5.5のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0108】
A5.4.1つ以上の試料を保持するためのグリッドの領域が、識別表面を含み、識別表面は、第2の識別子を含む、段落A5.3~A5.3.2、5.3.4.1、および5.3.6のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0109】
A5.4.1.識別表面が、複数の内部支持構造から熱的に隔離されている、段落A5.4に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0110】
A5.4.2.識別表面が、1つ以上の接続ブリッジによって1つ以上の内部支持構造に接続される、段落A5.4~A5.4.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0111】
A5.4.2.1.個々の接続ブリッジが、1つ以上の内部支持構造から識別表面を熱的に絶縁するように構成される、段落A5.4.2に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0112】
A5.5.第2の識別子が、グローバル一意識別子である、段落A5~A5.5.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0113】
A5.5.1.第2の識別子が、第1の識別子に関連付けられる、段落A5.5に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0114】
A5.5.2.第2の識別子が、第1の識別子と同じである、段落A5.5に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0115】
A5.5.3.第2の識別子が、試料グリッドの向きも識別する、段落A5.5~A5.5.2のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0116】
A5.6.第2の識別子の個々の構成要素は、モンタージュおよび/またはステージ移動なしに画像化され得るような密集度で位置付けられる、段落A5~A5.5.3のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0117】
A5.7.第2の識別子が、マーカーに近接して位置付けられ、マーカーは低倍率で観察され得る、段落A5~A5.6のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0118】
A6.1つ以上の試料の個々の試料が、1つ以上の標本を含む溶液を含む、段落A1~A5.8のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッド。
【0119】
A6.1.ガラス化プロセスが、溶液がガラス化されるように溶液を凍結し、電子顕微鏡による1つ以上の標本の検査を容易にする、段落A6に記載の極低温適合性試料グリッド。
【0120】
B1.極低温適合性試料グリッドを識別するための方法であって、
【0121】
電子顕微鏡で極低温適合性試料グリッドの電子顕微鏡画像を生成することであって、極低温適合性試料グリッドはガラス化プロセスに供されている、生成することと;
【0122】
ガラス化適合性識別子を含む電子顕微鏡画像の領域を識別することと;
【0123】
ガラス化適合性識別子に基づいて、極低温適合性試料グリッドの同一性を決定することとを含む方法。
【0124】
B1.1.ガラス化適合性識別子に基づいて、試料グリッド上の試料の同一性を決定することをさらに含む、段落B1に記載の方法。
【0125】
B1.2.電子顕微鏡が、使用可能な対物レンズを有する透過型電子顕微鏡である、段落B1またはB1.1に記載の方法。
【0126】
B1.3.電子顕微鏡画像を生成することは、電子顕微鏡の焦点ずらしを、適合性試料グリッドの内部支持構造の底部に向けて、試料を支持する箔から離して設定することを含む、段落B1~B1.2のいずれかに記載の方法。
【0127】
電子顕微鏡の焦点ずらしを適合性試料グリッドの内部支持構造の底部に向けて設定することが、試料グリッドの底面の平面に電子ビームを集束させることを含む、段落B1.3に記載の方法。
【0128】
電子顕微鏡の焦点ずらしを適合性試料グリッドの内部支持構造の底部に向けて設定することが、内部支持構造の底面の平面に電子ビームを集束させることを含む、段落B1.3に記載の方法。
【0129】
電子顕微鏡の焦点ずらしを適合性試料グリッドの内部支持構造の底部に向けて設定することが、ガラス化適合性識別子の穴、歯、または切り欠きの出口面に電子ビームを集束させることを含む、段落B1.3に記載の方法。
【0130】
B2.ガラス化適合性識別子が、段落A1~A6.1のいずれかに記載の第2の識別子であり、極低温適合性試料グリッドが、段落A1~A6.1のいずれかに記載の第1の識別子をさらに含む、段落B1~B1.3のいずれかに記載の方法。
【0131】
B2.1.極低温適合性試料グリッドが、段落A1~A6.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッドである、段落B1またはB2に記載の方法。
【0132】
B3.
【0133】
第1の識別子を走査することと;
【0134】
極低温適合性試料グリッドおよび/または極低温適合性試料グリッド上の試料に関する情報を、第1の識別子に関連付けられたデータベース内に保存することとをさらに含む、段落B2またはB2.1に記載の方法。
【0135】
B3.1.第1の識別子に基づいてデータベースにアクセスすることをさらに含む、段落B3に記載の方法。
【0136】
B3.1.1.
【0137】
第1の識別子に基づいてデータベースから情報を取得することと;
【0138】
この情報に基づいてガラス化デバイスでアクションを実行することとをさらに含む、段落B3.1に記載の方法。
【0139】
B3.2.極低温適合性試料グリッドに関する情報をデータベース内に保存することをさらに含む、段落B3またはB3.1に記載の方法。
【0140】
B4.第2の識別子に基づいてデータベースにアクセスすることをさらに含む、段落B1~B3.2のいずれかに記載の方法。
【0141】
B4.1.極低温適合性試料グリッドに関する情報をデータベース内に保存することをさらに含む、段落B4に記載の方法。
【0142】
B4.1.1.情報が、電子顕微鏡画像を含む、段落B4.1に記載の方法。
【0143】
B4.2.電子顕微鏡に、第2の識別子およびデータベース内の情報に基づいてアクションを実行させることをさらに含む、段落B4~B4.1.1のいずれかに記載の方法。
【0144】
B4.2.1.電子顕微鏡にアクションを実行させることが、
【0145】
第2の識別子に関連付けられたオブジェクト設定にアクセスすることと;
【0146】
電子顕微鏡を、第2の識別子に関連付けられたオブジェクト設定に従って動作させることとを含む、段落B4.2に記載の方法。
【0147】
B4.2.2.電子顕微鏡にアクションを実行させることが、
【0148】
第2の識別子に関連付けられたオブジェクト設定にアクセスすることと;
【0149】
試料グリッドをミリング位置に移動させ、集束イオンビームによるミリングを開始することとを含む、段落B4.2に記載の方法。
【0150】
B4.2.3.電子顕微鏡にアクションを実行させることが、
【0151】
第2の識別子に関連付けられたオブジェクト設定にアクセスすることと;
【0152】
電子顕微鏡に試料グリッドの画像をキャプチャさせることとを含む、段落B4.2に記載の方法。
【0153】
B4.3.第2の識別子に基づいてプロトコルを呼び出すことをさらに含む、段落B4~B4.2.3のいずれかに記載の方法。
【0154】
B4.3.1.プロトコルが、極低温適合性試料グリッド内の1つ以上の試料を画像化するための選択肢を提示するグラフィカルユーザインターフェースを提供することを含む、段落B4.3に記載の方法。
【0155】
B4.3.2.プロトコルが、極低温適合性試料グリッド内の1つ以上の試料を画像化するための選択肢を提示するグラフィカルユーザインターフェースを提供することを含む、段落B4.3またはB4.3.1に記載の方法。
【0156】
B5.電子顕微鏡で極低温適合性試料グリッドの電子顕微鏡画像を生成することが、
【0157】
電子顕微鏡で第2の識別子の第1の部分の第1の画像を生成することと;
【0158】
識別子の第1の部分と少なくとも部分的に異なる第2の識別子の第2の部分の第2の画像を生成することとを含む、段落B2~B4.3.2のいずれかに記載の方法。
【0159】
B5.1.第1の画像および第2の画像に基づいて、極低温適合性試料グリッドを識別することをさらに含む、段落B5に記載の方法。C1.段落A1~A6.1に記載のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッドの使用。
【0160】
C1.段落A1~A6.1に記載のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッドの使用。
【0161】
D1.段落B1~B5.1のいずれかに記載の方法を実行するための、段落A1~A6.1のいずれかに記載の極低温適合性試料グリッドの使用。