(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】アクリル重合化ポリシロキサン、これを含んでなる組成物、およびこれを用いた硬化膜
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20231117BHJP
C08G 77/442 20060101ALI20231117BHJP
C08F 30/08 20060101ALI20231117BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20231117BHJP
G03F 7/022 20060101ALI20231117BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20231117BHJP
H01L 21/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C08L83/04
C08G77/442
C08F30/08
C08F299/08
G03F7/022 601
G03F7/075 511
H01L21/00
(21)【出願番号】P 2021523750
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2019082657
(87)【国際公開番号】W WO2020109347
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018223644
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克人
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-238887(JP,A)
【文献】特表2006-504827(JP,A)
【文献】特開2012-068417(JP,A)
【文献】特開2015-127829(JP,A)
【文献】特表2012-532981(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08G 77/00-77/62
C08F 30/08
C08F 299/08
G03F 7/075
G03F 7/023
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
a1は、水素またはメチルであり、
maは、それぞれ独立に、1~6の整数である)、および
式(a)で示されるアクリル重合単位:
【化2】
(式中、
R
a2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、
R
a3は、水素または1~6価の、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、アミノ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、R
a3が多価の場合、R
a3は、式(a)中のカルボニルオキシと、式(a)で表される、他の繰り返し単位に含まれるカルボニルオキシとを連結しており、
naは、0以上の整数である)
を含んでなり、
少なくとも1つの式(Ia)中の繰り返し単位の*が、式(Ia)で表される、他の繰り返し単位の*と直接的に、または前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されている、アクリル重合化ポリシロキサン
と、
ジアゾナフトキノン誘導体と、
溶媒と
を含んでなる、ポリシロキサン組成物。
【請求項2】
式(Ia)で示される繰り返し単位の個数比が、アクリル重合化ポリシロキサンのシロキサンの繰り返し単位の総数に対して、10~100モル%である、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの式中(Ia)の繰り返し単位の*が、他の式(Ia)の繰り返し単位の*と、前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されている、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記アクリル重合化ポリシロキサンが、式(Ib):
【化3】
(式中、
R
b1は、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、R
b1はヒドロキシ、アルコキシではない)で示される繰り返し単位
をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項5】
前記アクリル重合化ポリシロキサンが、以下の式(Ic):
【化4】
で示される繰り返し単位、および/または
以下の式(Id):
【化5】
(式中、
R
d1は、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である)
で示される繰り返し単位
をさらに含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項6】
前記アクリル重合化ポリシロキサンが、以下の式(Ie):
【化6】
(式中、
R
e1は、それぞれ独立に、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、R
e1はヒドロキシ、アルコキシではない)
で示される繰り返し単位
をさらに含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項7】
シラノール縮合触媒をさらに含んでなる、請求項
1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物を、基板に塗布し、加熱することを含んでなる、硬化膜の製造方法。
【請求項9】
350℃で加熱後、スタッドプル試験により測定された、前記硬化膜の無アルカリガラス基板に対する密着強度が35MPa以上である、請求項
8に記載の硬化膜
の製造方法。
【請求項10】
請求項
8または9に記載の硬化膜
の製造方法を含んでなる電子素子
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル重合化ポリシロキサンおよびアクリル重合化ポリシロキサンを含んでなる組成物に関するものである。また、本発明はアクリル重合化ポリシロキサンを含んでなる組成物を用いて製造された硬化膜およびそれを用いた素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ・発光ダイオード・太陽電池などの光学素子において、さらなる光利用効率の向上や省エネルギーのためのさまざまな提案がなされている。例えば、液晶ディスプレイにおいて、透明な平坦化膜をTFT素子上に被覆形成し、この平坦化膜上に画素電極を形成させることにより、表示装置の開口率を上げる方法が知られている。
【0003】
このようなTFT基板用平坦化膜の材料としては、アクリル系樹脂とキノンジアジド化合物を組み合わせた材料が知られている。これらの材料は平坦化特性と感光性を備えている為、コンタクトホールやその他のパターンをつくることができる。しかしながら、解像度やframe frequencyが向上するにつれて配線がより複雑になる為、平坦化が厳しくなりこれらの材料では対応が困難になっている。
【0004】
高耐熱性、高透明性、高解像度の硬化膜を形成させるための材料としてポリシロキサンが知られている。特にシルセスキオキサン誘導体は、低誘電率、高透過率、高耐熱性、UV耐性、および塗布均一性に優れている為、広く用いられてきた。シルセスキオキサンは、3官能性のシロキサン構造単位RSi(O1.5)からなるポリマーで、化学構造的には無機シリカ(SiO2)と有機シリコーン(R2SiO)の中間的存在であるが、有機溶媒に可溶性でありながら、それから得られた硬化物は無機シリカに近い、特徴的な高い耐熱性を示す特異的な化合物である。
【0005】
ポリシロキサンを含む組成物を用いて硬化膜を形成させた場合に、硬化膜と基板との密着性を改善することが求められており、例えば、多官能のシロキサンを含むモノマーが共重合されたポリマーを含む感光性組成物(特許文献1)や、加水分解性シリル基を含むアクリル系共重合体を含む組成物(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-37595号公報
【文献】特開2014-129550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化膜が形成された場合に、基板と硬化膜との密着性を改善することができる新規なポリシロキサンを提供するものである。形成された硬化膜は、耐熱性および透明性に優れている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
a1は、水素またはメチルであり、
maは、それぞれ独立に、1~6の整数である)、および
式(a)で示されるアクリル重合単位:
【化2】
(式中、
R
a2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、
R
a3は、水素または1~6価の、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、アミノ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、R
a3が多価の場合、R
a3は、式(a)中のカルボニルオキシと、式(a)で表される、他の繰り返し単位に含まれるカルボニルオキシとを連結しており、
naは、0以上の整数である)
を含んでなり、
少なくとも1つの式(Ia)中の繰り返し単位の*が、式(Ia)で表される、他の繰り返し単位の*と直接的に、または前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されているものである。
【0009】
また、本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
以下の工程:
(1)式(ia):
【化3】
(式中、
R
a1’は、水素またはメチルであり、
ma’は、1~6の整数であり、かつ
R
iaは、直鎖または分岐の、C
1~6アルキルである)
で示されるシランモノマー、またはその混合物
を加水分解し、重合させ、アクリル基含有ポリシロキサンを得ること、および
(2)得られたアクリル基含有ポリシロキサン中の炭素間2重結合を開裂し、重合させること
によって得られたものである。
【0010】
また、本発明によるポリシロキサン組成物は、上記のポリシロキサンと溶媒とを含んでなるものである。
【0011】
また、本発明による硬化膜の製造方法は、上記の組成物を、基板に塗布し、加熱することを含んでなるものである。
【0012】
また、本発明による電子素子は、上述の硬化膜を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、高耐熱性および透明性に優れた硬化膜を形成させることができる。また、得られた硬化膜と基板との密着性に優れている。本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンを含んでなる組成物は、感光性を付与することにより、ポジ型またはネガ型のパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下、本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0015】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0016】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。 本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。これらの脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基は必要に応じて、フッ素、オキシ、ヒドロキシ、アミノ、カルボニル、またはシリル等を含む。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0017】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0018】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0019】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0020】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかであってよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0021】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0022】
本明細書において、ポリシロキサンとは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主鎖とするポリマーのことをいう。また本明細書において、一般的なポリシロキサンとしては、式(RSiO1.5)nで表わされるシルセスキオキサンポリマーも含まれるものとする。また、本明細書において、ポリシロキサンとは、アクリル重合化ポリシロキサンも含まれるものとする。
【0023】
本明細書において、アクリルは、メタクリルも含むものとする。
【0024】
<アクリル重合化ポリシロキサン>
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化4】
(式中、
R
a1は、水素またはメチルであり、
maは、それぞれ独立に、1~6の整数、好ましくは1~3の整数、最も好ましくは3である)、および
式(a)で示されるアクリル重合単位:
【化5】
(式中、
R
a2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、
R
a3は、水素または1~6価の、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、アミノ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、R
a3が多価の場合、R
a3は、式(a)中のカルボニルオキシと、式(a)で表される、他の繰り返し単位に含まれるカルボニルオキシとを連結しており、
naは、0以上の整数である)
を含んでなり、
少なくとも1つの式(Ia)中の繰り返し単位の*が、式(Ia)で表される、他の繰り返し単位の*と直接的に、または前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されている。
【0025】
式(a)で示されるアクリル重合単位において、式(a)が他の式(a)と結合し、ブロックを形成していてもよいが、アクリル重合単位が多いと耐熱性が下がる傾向にあるため、アクリル重合化ポリシロキサンの1分子中において、
naの総和/((Ia)で示される繰り返し単位の数+naの総和)=0.15以下であることが好ましく、より好ましくは0.05以下である。
naは上記をみたすものであれば、特に限定されないが、好ましくは0~6であり、より好ましくは0~4であり、さらに好ましくは1~2である。なお、(a)が複数含まれる場合に、それぞれのnaはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
Ra3は、炭素数が多いと耐熱性が下がる傾向にあるため、炭素数が1~30であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~20である。
式(a)で示されるアクリル重合単位は、必須ではないが、密着性向上のために、含まれていることが好ましい。
【0026】
R
a3としては、例えば、以下が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【0027】
上記のうち、好ましくは、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
なお、式(a)で示される繰り返し単位が、二重結合を複数含むアクリル化合物に由来する基である場合、その全ての二重結合が開裂している必要は無い。すなわち、アクリル重合化ポリシロキサンが、開裂していない二重結合を含んでいてもよい。ただし、化合物の安定性などの観点から、開裂していない二重結合の割合は少ないことが好ましい。
【0028】
式(a)で示される重合単位のうち、Ra3が、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基で置換された炭化水素基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数、好ましくは2つまたは3つ、の水素を除去した基(好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から2つまたは3つの水素を除去した基、最も好ましくは、ピペリジン誘導体、ピロリジン誘導体、またはイソシアヌレート誘導体から2つまたは3つの水素を除去した基)であるアクリル重合単位であってもよい。
【0029】
式(Ia)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、耐熱性が下がるため、アクリル重合化ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して10~100モル%であることが好ましい。
本明細書において、「アクリル重合化ポリシロキサンの繰り返し単位の総数」とは、アクリル重合化ポリシロキサンのシロキサンの繰り返し単位の総数のことを意味するものであり、例えば、式(a)で示されるアクリル重合単位は、この総数に含めないものとする。
【0030】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
式(Ib):
【化9】
(式中、
R
b1は、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、R
b1はヒドロキシ、アルコキシではない)で示される繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
また、上記の「フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており」とは、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基中の炭素原子に直結する水素原子が、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置き換えられていることを意味する。本明細書において、他の同様の記載においても同じである。
【0031】
式(Ib)で示される繰り返し単位において、
Rb1としては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Rb1がメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、Rb1がフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、Rb1がヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0032】
本発明によるアクリル重合ポリシロキサンとしては、例えば、以下の構造を含んでなるものが挙げられる。
【化10】
【0033】
式(Ib)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、形成される硬化膜の強度、耐熱性が上がるが密着性が下がるため、アクリル重合化ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して0~90モル%であることが好ましい。
【0034】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
以下の式(Ic):
【化11】
で示される繰り返し単位、および/または
以下の式(Id):
【化12】
(式中、
R
d1は、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である)
で示される繰り返し単位
をさらに含んでなることが好ましい。
【0035】
式(Id)における、Rd1としては、好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から複数、より好ましくは2つまたは3つ、の水素を除去した基である。例えばピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートから2つまたは3つの水素を除去した基であることが挙げられる。式(Id)中の酸素と結合していない基は、複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する。
【0036】
式(Id)および式(Ic)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、アクリル重合化ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、
以下の式(Ie):
【化13】
(式中、
R
eは、それぞれ独立に、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただしR
e1はヒドロキシ、アルコキシではない)
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
【0038】
式(Ie)で示される繰り返し単位において、
Re1としては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Re1がメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、Re1がフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、Re1がヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0039】
上記式(Ie)の繰り返し単位を有することによって、本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的には、式(Ie)の繰り返し単位は、アクリル重合化ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して30モル%以下であることが好ましい。
【0040】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、上記したような繰り返し単位やブロックが結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、-O0.5Hが結合したものである。
【0041】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンの質量平均分子量は、特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常1,500~20,000であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から2,000~15,000であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0042】
また、本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンが感光性を有する組成物に含まれる場合は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、ポジ型組成物の場合には露光部における塗膜(ネガ型組成物の場合には未露光部における塗膜)は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたポリシロキサンを適切に選択すべきである。組成物に含まれる感光剤やシラノール縮合触媒の種類や添加量により異なるが、例えば、膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、ポジ型組成物の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~5,000Å/秒が好ましく、さらに200~3,000Å/秒であることがより好ましい。ネガ型の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~20,000Å/秒が好ましく、さらに1,000~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0043】
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、用途や要求特性に応じ、上記範囲の何れかのADRを有するポリシロキサンを選択すればよい。本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンと、(Ib)~(Ie)の何れかを含み(Ia)を含まないポリシロキサンとを組合せて所望のADRを有する混合物にすることもできる。
【0044】
アルカリ溶解速度や質量平均分子量の異なるポリシロキサンとしては、触媒、反応温度、反応時間あるいは重合体を変更することで調製することができる。アルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンを組合せて用いることで、現像後の残存不溶物の低減、パターンだれの低減、パターン安定性などを改良することができる。
【0045】
このようなポリシロキサンは、例えば
(M)プリベーク後の膜が、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が200~3,000Å/秒であるポリシロキサンが挙げられる。
【0046】
また、必要に応じ
(L)プリベーク後の膜が、5質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン、または
(H)プリベーク後の膜の、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度が4,000Å/秒以上であるポリシロキサンと
混合し、所望の溶解速度を有する組成物を得ることができる。
【0047】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
ポリシロキサンまたはその混合物のアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液としてTMAH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0048】
ポリシロキサンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)に35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したポリシロキサン溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0049】
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をポリシロキサンの溶解速度とする。
【0050】
<本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンの合成方法>
本発明によるアクリル重合化ポリシロキサンは、例えば、
以下の工程:
(1)式(ia):
【化14】
(式中、
R
a1’は、水素またはメチルであり、
ma’は、1~6の整数であり、好ましくは1~3の整数、最も好ましくは3であり、かつ
R
iaは、直鎖または分岐の、C
1~6アルキルである)
で示されるシランモノマー、またはその混合物
を必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、加水分解し、重合させ、アクリル基含有ポリシロキサンを得ること、および
(2)得られたアクリル基含有ポリシロキサン中の炭素間2重結合を開裂し、重合させること
によって得ることができる。
ここで、上記した混合物は、式(ia)で示されるシランモノマーと、別の式(ia)で示されるシランモノマーとの混合物であってもよいし、式(ib)~(ie)に記載のシランモノマーとの混合物であってもよいし、シランモノマー以外の化合物との混合物であってもよい。
【0051】
上記の工程によって得られるアクリル重合化ポリシロキサンは、すぐれた特性を示す組成物を与えるものであり、得られる構造は、例えば上記に例示したものが包含されるが、モノマーの種類や配合比などに応じて種々の構造を取り得るため、上記の例示以外の構造も取り得ることが考えられる。
【0052】
[工程(1)]
式(ia)において、好ましいRiaは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、Riaは複数含まれるが、それぞれのRiaは、同じでも異なっていてもよい。
【0053】
式(ia)で示されるシランモノマーに、式(ib):
Rb1’-Si-(ORib)3 (ib)
(式中、
Rb1’は、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、Rb1’はヒドロキシ、アルコキシではなく、
Ribは、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである)
で示されるシランモノマーをさらに組み合わせることが好ましい。
式(ib)において、好ましいRb1’は、上記好ましいRb1と同じである。好ましいRibは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。
【0054】
式(ib)で表されるシランモノマーの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。式(ib)で表されるシランモノマーは、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0055】
上記式(ia)および/または(ib)で表されるシランモノマーに、下記式(ic)および/または(id)で表わされるシランモノマーをさらに組み合わせて、アクリル重合化ポリシロキサンを得ることもできる。このように式(ic)および/または式(id)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ic)および/または(Id)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(ORic)4 (ic)
Rd1’-Si-(ORid)3 (id)
式中、
RicおよびRidは、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。RicおよびRidは、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRicおよびRidは、同じでも異なっていてもよく、
Rd1’は、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である。好ましいRd1’は、上記好ましいRd1と同じである。
【0056】
式(ic)で示されるシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
式(id)で示されるシランモノマーの具体例としては、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0058】
さらに、以下の式(ie)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(ie)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ie)を含むポリシロキサンを得ることができる。
(Re1’)2-Si-(ORie)2 (ie)
式中、
Rieは、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。Rieは、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRieは、同じでも異なっていてもよく、
Re1’は、それぞれ独立に、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、Re1’はヒドロキシ、アルコキシではない。好ましいRe1’は、上記好ましいRe1と同じである。
【0059】
式(ie)で示されるシランモノマーの具体例としては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0060】
[工程(2)]
工程(2)では、得られたアクリル基含有ポリシロキサン中のアクリル基の炭素間2重結合を開裂し、重合させる。この反応には、重合開始剤として、例えば、2,2’-アザビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルなどのアゾ系開始剤、過酸化ジベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)、α,α-ジメチルベンジルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシドなどの過酸化物系開始剤を用いることが好ましい。アクリル基の炭素間二重結合が開裂し重合させるが、その一部が開裂・重合せずに残っていてもよい。
重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、アクリル官能基の数に対して、0.1~500モル%とすることが好ましい。
【0061】
工程(2)において、
式(a’):
【化15】
(式中、
R
a2’は、水素またはメチルであり、
R
a3’は、水素またはC
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、アミノ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、好ましいR
a3’は、上記好ましいR
a3と同じであり、かつ
xは、1~6の整数、好ましくは3~6の整数である)
で示されるアクリル酸エステルモノマーを共存させて、重合反応させることが好ましい。上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
【0062】
また、式(a’)で示されるアクリル酸モノマーは、分子中に、複数のアクリル酸エステルを有していてもよい、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物(好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、最も好ましくは、ピペリジン誘導体、ピロリジン誘導体、またはイソシアヌレート誘導体)であってもよい。
【0063】
式(a’)で示されるアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソステアリルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートである。
【0064】
また、ラジカル重合反応に際しては、適宜、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤、分子量調整剤などを用いて分子量制御することができる。さらに、重合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。重合反応の温度は特に限定されないが、典型的には50℃~200℃、好ましくは80℃~150℃の範囲内である。
【0065】
工程(2)でアクリル重合化されたポリシロキサンは、アクリル重合化による複雑な三次元構造を有するため、耐熱性および基板との密着性の向上に寄与すると考えられる。
【0066】
工程(1)で得られたアクリル基含有ポリシロキサンの質量平均分子量に対する、工程(2)で得られたアクリル重合化ポリシロキサンの質量平均分子量が、1.4~5倍であることが好ましく、より好ましくは1.4~3倍である。
【0067】
<ポリシロキサン組成物>
本発明による組成物は、上記のアクリル重合化ポリシロキサンと溶媒とを含んでなる。
【0068】
[溶媒]
溶媒は、組成物に含まれる各成分を均一に溶解または分散させるものから選択される。具体的には、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロパノール、プロパンジオールなどのアルコール類などが挙げられる。好ましくは、PGMEA、PGMEである。これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0069】
溶媒の配合比は、塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。例えば、スプレーコートの場合は、ポリシロキサンと任意の成分との総質量を基準として、90質量%以上になったりするが、ディスプレイの製造で使用される大型ガラス基板のスリット塗布では、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下とされる。
【0070】
本発明による組成物は、必要に応じて更なる添加剤を含むことができる。これらの添加剤について以下に説明する。
【0071】
なお、本発明による組成物は、非感光性組成物であるか、ポジ型感光性組成物またはネガ型感光性組成物である。本発明において、ポジ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が増し、現像によって露光部が除去され、ポジ像を形成できる組成物をいう。ネガ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部がアルカリ現像液に対して不溶化し、現像によって、未露光部が除去され、ネガ像を形成できる組成物をいう。
【0072】
[ジアゾナフトキノン誘導体]
本発明によるポジ型感光性組成物は、感光剤としてジアゾナフトキノン誘導体を含んでなることが好ましい。ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなる組成物は、露光部分が、アルカリ現像液に可溶になることにより現像によって除去されるポジ像を形成することができる。露光により、露光部は、発生したインデンカルボン酸により、アルカリ現像液に対する溶解性が上がるが、未露光部は、ポリシロキサン中に残存するシラノール基との相互作用により、溶解性が下がるからである。
【0073】
好ましいジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性ヒドロキシを有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物である。特にその構造について制限されないが、好ましくはフェノール性ヒドロキシを1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長やシラノール縮合触媒の種類に応じて、適切な感光剤を選択することが好ましい。そしてシラノール縮合触媒として熱酸発生剤、熱塩基発生剤、または感光剤の前記波長領域に吸収が低い光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤を選択した場合には、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を用いることが好ましい。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0074】
フェノール性ヒドロキシを有する化合物としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、BisP-AF、BisOTBP-A、Bis26B-A、BisP-PR、BisP-LV、BisP-OP、BisP-NO、BisP-DE、BisP-AP、BisOTBP-AP、TrisP-HAP、BisP-DP、TrisP-PA、BisOTBP-Z、BisP-FL、TekP-4HBP、TekP-4HBPA、TrisP-TC(商品名、本州化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0075】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度、露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、好ましくはポリシロキサンの総質量100質量部に対して1~20質量部であり、さらに好ましくは3~15質量部である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が1質量部以上であると、露光部と未露光部との溶解コントラストが高くなり、良好な感光特性を有する。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには3質量部以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が少ない程、硬化膜の無色透明性が向上し、透過率が高くなるため好ましい。
【0076】
[シラノール縮合触媒]
本発明によるネガ型感光性組成物は、光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、および光熱塩基発生剤からなる群から選択されるシラノール縮合触媒をいずれか1つ以上を含んでなることが好ましい。ポジ型の感光性を付与する場合においても、同様に、いずれか1つ以上のシラノール縮合触媒を含んでなることが好ましく、より好ましくは光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤から選択されるシラノール縮合触媒である。これらは、硬化膜製造プロセスにおいて利用する重合反応や架橋反応に応じて、選択されることが好ましい。
なお、本発明において、光酸発生剤には、上記のジアゾナフトキノン誘導体は、含まれないものとする。
【0077】
これらの含有量は、分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、ポリシロキサンの総質量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.5~5質量部である。添加量が0.1質量部より少ないと、発生する酸または塩基の量が少なすぎて、ポストベークの際の重合が加速されず、パターンだれを起こしやすくなる。一方、添加量が10質量部より多い場合、形成される硬化膜にクラックが発生したり、これらの分解による着色が顕著になることがあるため、硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化膜の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、硬化膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0078】
本発明において、光酸発生剤または光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸または塩基を発生する化合物のことをいう。発生した酸または塩基は、ポリシロキサンの重合化に寄与すると考えられる。ここで、光としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
ポジ型感光性組成物に用いられる光酸発生剤または光塩基発生剤は、パターンを投影するための像様露光(以下、最初の露光という)ではなく、その後に行う全面露光の際に、酸または塩基が発生することが好ましく、最初の露光時の波長には吸収が少ないことが好ましい。例えば、最初の露光をg線(ピーク波長436nm)および/またはh線(ピーク波長405nm)で行い、2回目の露光時の波長をg+h+i線(ピーク波長365nm)にするときは、光酸発生剤または光塩基発生剤は波長436nmおよび/または405nmにおける吸光度よりも、波長365nmにおける吸光度が大きくなる方が好ましい。
具体的には、波長365nmにおける吸光度/波長436nmにおける吸光度、または波長365nmにおける吸光度/波長405nmにおける吸光度が、2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは100以上である。
ここで、紫外可視吸収スペクトルは、溶媒としてジクロロメタンを用いて測定される。測定装置は特に限定されないが、例えばCary 4000 UV-Vis 分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製)が挙げられる。
【0079】
光酸発生剤は、一般的に使用されているものから任意に選択できるが、例えば、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0080】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルーp-トルエンスルホナート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジルトリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
また、5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル等は、h線の波長領域に吸収をもつため、h線に吸収を持たせたくない場合には使用を避けるべきである。
【0081】
光塩基発生剤の例としては、アミド基を有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくはその構造を含むものが挙げられる。
また、アニオンとしてアミドアニオン、メチドアニオン、ボレートアニオン、ホスフェートアニオン、スルホネートアニオン、またはカルボキシレートアニオン等を含むイオン型の光塩基発生剤も用いることができる。
【0082】
本発明において、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤とは、露光により化学構造が変化するが、酸または塩基を発生させず、その後、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらのうち、光熱塩基発生剤が好ましい。光熱塩基発生剤として、以下の式(II)で表されるものが挙げられ、より好ましくはその水和物または溶媒和物が挙げられる。式(II)で表される化合物は、露光によりシス型に反転し不安定になるために、分解温度が下がり、その後の工程でベーク温度が100℃程度であっても塩基を発生させる。
ポジ型の感光性を付与する場合、光熱塩基発生剤は、ジアゾナフトキノン誘導体の吸収波長と調整する必要はない。
【化16】
ここで、xは、1以上6以下の整数であり、
R
a’~R
f’は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、スルフィド、シリル、シラノール、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホナト、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスホナト、アミノ、アンモウム、置換基を含んでもよいC
1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
6~22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
1~20のアルコキシ、または置換基を含んでもよいC
6~20のアリールオキシである。
【0083】
これらのうち、Ra’~Rd’は、特に水素、ヒドロキシ、C1~6の脂肪族炭化水素基、またはC1~6のアルコキシが好ましく、Re’およびRf’は、特に水素が好ましい。R1’~R4 ’のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。このとき、その環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよい。
Nは含窒素複素環の構成原子であり、その含窒素複素環は3~10員環であり、その含窒素複素環は1つ以上の、式(II)中に示されたCxH2XOHと異なる置換基を含んでもよい、C1~20、特にC1~6の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい。
【0084】
Ra’~Rd’は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル、アルキニルなどの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロなどが用いられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0085】
【0086】
本発明による組成物が非感光性組成物である場合、熱酸発生剤または熱塩基発生剤を含有することが好ましい。本発明において、熱酸発生剤または熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらは、組成物の塗布後、プリベーク時の熱では酸または塩基を発生しない、もしくは少量しか発生しないことが好ましい。
熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0087】
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0088】
その他の添加剤としては、界面活性剤、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、または増感剤などが挙げられる。
【0089】
界面活性剤は塗布性を改善することができるため、用いることが好ましい。本発明におけるポリシロキサン組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0090】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレートなどのアセチレンアルコール誘導体、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0091】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0092】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0093】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、組成物の総質量に対し、通常50~10,000ppm、好ましくは100~5,000ppmである。
【0094】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、本発明の組成物が感光性である場合、形成される塗布膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。
その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.05~15質量部が好ましく、さらに0.1~10質量部が好ましい。
【0095】
また、本発明の組成物が感光性である場合に、必要に応じ増感剤を添加することができる。ポジ型で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、アセトフェノン類、並びにピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。
【0096】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。増感剤を使用する場合、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましい。
【0097】
本発明の組成物が感光性である場合、重合阻害剤として、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンおよびこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01~20質量部とすることが好ましい。
【0098】
消泡剤としては、アルコール(C1~18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10,000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10,000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.1~3質量部とすることが好ましい。
【0099】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、硬化後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましい。
【0100】
これらのその他の添加剤は単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは0.05~15質量部である。
【0101】
<硬化膜およびそれを具備した電子素子>
本発明による硬化膜は、本発明によるポリシロキサン組成物を基板に塗布して、加熱することにより製造することができる。本発明による組成物が感光性組成物である場合は、パターン形成された硬化膜を形成することができる。
【0102】
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。
また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0103】
本発明による組成物の塗膜を形成した後、その塗膜の乾燥、および溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~150℃、好ましくは90~120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~90秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0104】
非感光性の組成物の場合は、その後、加熱し、塗膜を硬化させる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は200℃以上であることが好ましく、350℃以上がより好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0105】
感光性の組成物の場合は、その後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2,000mJ/cm2、好ましくは10~1,000mJ/cm2とする。照射光エネルギーが5mJ/cm2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2,000mJ/cm2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0106】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0107】
露光後、露光個所に発生した酸または塩基により膜内のポリマー間反応を促進させるため、特にネガ型の場合、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸または塩基が未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウェハー面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸または塩基の拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。露光後加熱は、ポジ型感光性組成物を用いる場合は、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤または熱塩基発生剤の酸または塩基が本段階で発生しないよう、またポリマー間の架橋を促進させないため、行わない方が好ましい。
【0108】
その後、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア水、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、TMAH水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0109】
その後、通常全面露光(フラッド露光)の工程を行う。光酸発生剤または光塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において酸または塩基を発生させる。光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤の化学構造が変化する。また、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が存在する場合は、光分解して、膜の光透明性がさらに向上するので、透明性を求める場合は、全面露光工程を行うことが好ましい。熱酸発生剤または熱塩基発生剤が選択される場合には、全面露光は必須ではないが、上記の目的で全面露光を行うことが好ましい。全面露光の方法としては、アライナー(例えば、キヤノン株式会社製PLA-501F)などの紫外可視露光機を用い、100~2,000mJ/cm2程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する方法がある。
【0110】
得られたパターン膜を加熱することにより塗膜の硬化が行われる。加熱条件は、上述の非感光性の組成物を用いた場合と同様である。
【0111】
350℃で60分間加熱した場合に、スタッドプル試験により測定された、硬化膜の無アルカリガラス基板に対する密着強度が35Mpa以上であることが好ましく、より好ましくは40Mpa以上である。スタッドプル試験は、具体的には、硬化膜を基板とともに小片に切断し、プラスチック製スタッドと硬化膜とをエポキシ樹脂層を介して接合し、スタッドを引っ張り、剥離時の荷重を薄膜密着強度測定機を用いて行うことができる。
【0112】
また、本発明による硬化膜は、高い透過率を有するものである。具体的には、硬化膜の最終膜厚が2μmのときに、350℃で30~60分間の加熱硬化後、波長400nmの光に対する透過率が、90%以上であることが好ましく、また、230℃で30~60分間の加熱硬化後、波長400nmの光に対する透過率が、99%以上であることが好ましい。
【0113】
このようにして形成された硬化膜は、フラットパネルディスプレー(FPD)など、各種素子の平坦化膜や層間絶縁膜、透明保護膜などとして、さらには、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜などとして、多方面で好適に利用することができる。また、硬化膜を光学デバイス材料などとして用いることもできる。
【0114】
形成された硬化膜は、その後、必要に応じて、基板にさらに加工や回路形成などの後処理がなされ、電子素子が形成される。これらの後処理は、従来知られている任意の方法を適用することができる。
【0115】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0116】
<比較合成例1:ポリシロキサンaの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液49.0g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロート中にメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、およびテトラメトキシシラン15.2gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサンa溶液を得た。
得られたポリシロキサンaの分子量(ポリスチレン換算)をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)にて測定したところ、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)=1800であった。また、得られた樹脂溶液をシリコンウェハーにプリベーク後の膜厚が2μmになるようにスピンコーター(MS-A100(ミカサ製))により塗布し、プリベーク後2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度(以下「ADR」と略記することがある。)を測定したところ、1200Å/秒であった。
【0117】
<比較合成例2:ポリシロキサンbの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液30.6g、IPA600ml、水2.5gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン6.8g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン62.1gの混合溶液を調整した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサンb溶液を得た。
得られたポリシロキサンbのMw=3,323、ADR=775Å/秒であった。
【0118】
<合成例1:アクリル重合ポリシロキサンAの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、上記ポリシロキサンb溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.205g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンA溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンAのMw=7,112、ADR=658Å/秒であった。
【0119】
<合成例2:アクリル重合ポリシロキサンBの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液36.7g、IPA600ml、水3.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン17g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン43.4gの混合溶液を調整した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=3722であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.144g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンB溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンBのMw=5,966であった。
【0120】
<合成例3:アクリル重合ポリシロキサンC合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液42.8g、IPA600ml、水3.5gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン27.2g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン24.8gの混合溶液を調整した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=1592、ADR=14500Å/秒であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.082g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンC溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンCのMw=2,365であった。
【0121】
<合成例4:アクリル重合ポリシロキサンDの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液80.0g、IPA600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン17.0g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート30.8gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン43.4gの混合溶液を調整した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=8693、であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.144g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンD溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンDのMw=14,171であった。
【0122】
<合成例5:アクリル重合ポリシロキサンEの合成>
合成例2と同様にして、ポリシロキサン溶液を得た。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.410g、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを0.85g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンE溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンEのMw=6,236であった。
【0123】
<合成例6:アクリル重合ポリシロキサンFの合成>
合成例4と同様にして、ポリシロキサン溶液を得た。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.410g、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを2.36g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンF溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンFのMw=6,428であった。
【0124】
<合成例7:アクリル重合ポリシロキサンGの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液39.7g、IPA600ml、水3.3gを仕込み、次いで滴下ロートに3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン124gの混合溶液を調整した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=1,622であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を20.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.288g仕込み80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンG溶液を得た。
得られたアクリル重合ポリシロキサンGのMw=5,756であった。
【0125】
<合成例8:アクリル重合ポリシロキサンHの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液36.7g、IPA600ml、水3.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン17g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン43.4gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=3722であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を14.7g、メタクリル酸を0.35g、アザビスイソブチロニトリルを0.63g仕込み、80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンH溶液を得た。得られたアクリル重合ポリシロキサンHのMw=5,966であった。
【0126】
<合成例9:アクリル重合ポリシロキサンIの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液36.7g、IPA600ml、水3.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン17g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン43.4gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=3722であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を14.7g、メタクリル酸を0.35g、メタクリル酸メチル0.4g、アザビスイソブチロニトリルを0.63g仕込み、80℃にて4時間撹拌し、アクリル重合ポリシロキサンI溶液を得た。得られたアクリル重合ポリシロキサンIのMw=7,890であった。
【0127】
<非感光性の組成物101~107、ならびに比較組成物101および102の調製>
アクリル重合ポリシロキサンA溶液に対して、固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、組成物101を得た。
同様に、アクリル重合ポリシロキサンB~G溶液に対して、固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、それぞれ、組成物102~107を得た。
同様に、ポリシロキサンaおよびb溶液に対して、固形分濃度25質量%なるようにPGMEAを添加調整し、それぞれ、比較組成物101および102を得た。
これらの組成物(以下の組成物においても同じ)には、必要に応じて、界面活性剤(KF-53(信越化学工業株式会社製)を0.1質量部)を加えた。さらに、必要に応じて、硬化剤として熱酸発生剤(SI-100 三新化学社製500ppm)または熱塩基発生剤(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩500ppm)を加えた。
【0128】
<非感光性の組成物108および109>
アクリル重合ポリシロキサンHおよびIに対して、固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、それぞれ、組成物108および109を得た。
【0129】
<ポジ型感光性を有する組成物201および比較組成物201の調製>
アクリル重合ポリシロキサンA溶液100質量部に対して、感光剤として4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体を8質量部、光酸発生剤として1,8-ナフタルイミジルトリフレート(商品名「NAI-105」、みどり化学株式会社製(これは、波長400~800nmに吸収ピークをもたない))を1質量部を加えて、撹拌し、固形分濃度25質量%になるようにPGMEAを添加調製し、ポジ型感光性を有する組成物201を調製した。
アクリル重合ポリシロキサンA溶液に代えて、ポリシロキサンa溶液を用いた以外は、組成物201と同様にして、ポジ型感光性を有する比較組成物201を調製した。
【0130】
上記で調製した組成物201および比較組成物201を、それぞれ、4インチのシリコンウェハーにスピンコーティングにより、最終膜厚が2μmとなるように塗布した。得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶媒を蒸発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F型、製品名、キヤノン株式会社製)により100~200mJ/cm2でパターン露光した。その後2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。どちらの組成物を用いても、5μm、1:1のコンタクトホールで露光部に残渣が無く、良好なパターンが得られていることが確認できた。
【0131】
<ネガ型感光性を有する組成物301および比較組成物301の調製>
アクリル重合ポリシロキサンA溶液100質量部に対して、光酸発生剤として1,8-ナフタルイミジルトリフレートを2質量部を加えて、撹拌し、固形分濃度25質量%になるようにPGMEAを添加調製し、ネガ型感光性を有する組成物301を調製した。
アクリル重合ポリシロキサンA溶液に代えて、ポリシロキサンa溶液を用いた以外は、組成物301と同様にして、ネガ型感光性を有する比較組成物301を調製した。
【0132】
上記で調製した組成物301および比較組成物301を、それぞれ4インチのシリコンウェハーにスピンコーティングにより、最終膜厚が2μmとなるように塗布した。得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶媒を蒸発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナーにより100~200mJ/cm2でパターン露光した。露光後100℃で60秒間加熱し、その後2.38%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。5μm、1:1のコンタクトホールで未露光部に残渣が無く、良好なパターンが得られていることが確認できた。
【0133】
<密着性評価(スタッドプル試験)>
7cmx7cmの無アルカリガラス基板に組成物101~301および比較組成物101~301をスピンコーティングにより塗布し、得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークした。
ポジ型感光性を有する組成物201および比較組成物201については、プリベーク後、2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間静置し、さらに純水で60秒間リンスした。
ネガ型感光性を有する組成物301および比較組成物301については、プリベーク後、g+h+i線マスクアライナーにより100mJ/cm
2で露光後、100℃で60秒間加熱し、その後2.38%TMAH水溶液を用いて60秒間静置し、さらに純水で60秒間リンスした。
その後組成物201および301、ならびに比較組成物201および301は、g+h+i線マスクアライナーにより1,000mJ/cm
2でフラッド露光を行った。
そして、組成物101~301および比較組成物101~301から得られた塗膜を230℃で30分間、さらに350℃で60分間加熱し硬化し、硬化膜を形成させた。得られた硬化膜を、この硬化膜を基板とともに小片に切断し、プラスチック製スタッドと硬化膜とをエポキシ樹脂層を介して接合した。次に、スタッドを引っ張り、剥離時の荷重を薄膜密着強度測定機(ロミュラス、クアッドグループ社製)で測定した。得られた結果は表1の通りであった。
【表1】
【0134】
[透過率]
得られた硬化膜について、株式会社島津製作所製MultiSpec-1500により400nmにおける透過率を測定したところ、230℃で30分の加熱を行った場合は、いずれも99%以上であり、350℃で60分の加熱を行った場合は、いずれも90%以上であった。