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特許7386988正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231117BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231117BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022524004
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2020014606
(87)【国際公開番号】W WO2021080384
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132505
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・シグ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヨン・チェ
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0032119(KR,A)
【文献】特開2008-034369(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104488(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/060105(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110063(WO,A1)
【文献】特開2011-096655(JP,A)
【文献】特表2017-536685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム以外の遷移金属の全モル数に対して60モル%以上のニッケルを含み、一次粒子が凝集した二次粒子の形態であるリチウム遷移金属酸化物を含み、
下記式(1)の条件を満たす正極活物質であって、
式(1) -0.021x+4.0≦y≦-0.021x+5.5
前記式(1)中、xは、前記正極活物質の結晶粒のサイズ(nm単位)であり、前記yは、前記正極活物質の結晶粒のアスペクト比であり、
前記結晶粒のアスペクト比yは、前記正極活物質をX線回折分析して得られたXRDデータに示されるそれぞれのピークの半値全幅(FWHM)を下記式(2)に適用した後、最小二乗近似法により得られた短軸長さcに対する長軸長さaの比率であり、
【数1】
前記式(2)中、d(hkl)は、当該ピークでの半値全幅、h、k、lは、当該ピークの結晶面でのミラー指数、Kは、シェラー定数、θは、ブラッグ角、λは、X線波長、aは、結晶粒の長軸長さ、cは、結晶粒の短軸長さである、正極活物質。
【請求項2】
前記式(1)において、100≦x≦180である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記式(1)において、120≦x≦160である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記式(1)において、1≦y≦2.5である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記式(1)において、1.3≦y≦2.5である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記結晶粒のサイズxは、前記正極活物質をX線回折分析して得られたXRDデータに示されるすべてのピークの半値全幅(FWHM)をCagliotiの式でフィッティングして測定された値である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li1+xNiCo
前記化学式1中、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり、Mは、B、Al、Zr、Y、Mo、Cr、V、W、TaおよびNbからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、-0.1≦x≦0.2、0.6≦y<1.0、0<z<0.4、0<w<0.4、0≦e≦0.1である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記化学式1中、MがMn、またはMnおよびAlの組み合わせであり、
0.85≦y<1.0、0<z<0.15、0<w<0.15、0≦e≦0.05である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層をさらに含む請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
請求項1に記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項11】
請求項10に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月23日付けの韓国特許出願第10-2019-0132505号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含む正極およびリチウム二次電池に関し、より具体的には、結晶粒のサイズおよびアスペクト比が特定の条件を満たす正極活物質と、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属酸化物が用いられており、中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOのリチウムコバルト酸化物が主に使用されていた。しかし、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化によって熱的特性が非常に劣り、また、高価であるため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoOの代わりに使用可能な材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePOなど)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiOなど)などが開発されている。中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有して大容量の電池の実現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に関する研究開発がより活発になされている。しかし、前記LiNiOは、LiCoOに比べて熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じると、正極活物質自体が分解され、電池の破裂および発火を引き起こす問題があった。そのため、LiNiOの優れた可逆容量は維持し、且つ低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケルの一部をコバルトで置換したLiNi1-αCoα(α=0.1~0.3)、またはニッケルの一部をMn、CoまたはAlで置換したリチウムニッケルコバルト金属酸化物が開発された。最近、Li[NiCoMn]O、Li[NiCoAl]O、Li[NiCoMnAl]Oのように、2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発され、広く使用されている。
【0006】
前記2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物は、通常、数十~数百個の一次粒子が凝集した球状の二次粒子の形態に製造されるが、一次粒子の配向形態や一次粒子の形状(アスペクト比)などによってリチウムイオンの移動性や電解液含浸性などの物性が変化する。そのため、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)や透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)分析により正極活物質粒子の一次粒子形状(アスペクト比など)や配向特性を分析し、これを用いて正極活物質の性能を向上しようとする研究が試みられている。
【0007】
しかし、TEM分析の場合、粒子の全体ではなく、一部の領域に関する情報だけ得ることができ、正極活物質粒子の全体の特性を知ることが難しいという問題がある。また、正極活物質の物性は、一次粒子の形態や配向性だけでなく、結晶粒(Crystalline)の構造によっても変化するため、一次粒子の形態や配向性が類似する場合であっても、互いに異なる物性を示し得る。
【0008】
したがって、より優れた特性を有する正極活物質を開発するためには、結晶粒構造が制御された正極活物質の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1技術的課題は、結晶粒のサイズおよび結晶粒のアスペクト比が特定の条件を満たし、優れた電気化学的特性を有する正極活物質を提供することである。
【0010】
本発明の第2技術的課題は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一具現例によると、本発明は、遷移金属の全モル数に対して60モル%以上のニッケルを含み、一次粒子が凝集した二次粒子の形態であるリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質であって、前記正極活物質が下記式(1)の条件を満たす正極活物質を提供する。
式(1) -0.021x+4.0≦y≦-0.021x+5.5
前記式(1)中、xは、前記正極活物質の結晶粒のサイズ(nm単位)であり、前記yは、前記正極活物質の結晶粒のアスペクト比である。
【0012】
好ましくは、前記式(1)において、100≦x≦180または120≦x≦160であることができ、1≦y≦2.5または1.3≦y≦2.5であることができる。
【0013】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されることができる。
[化学式1]
Li1+xNiCo
前記化学式1中、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり、Mは、B、Al、Zr、Y、Mo、Cr、V、W、TaおよびNbからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、-0.1≦x≦0.2、0.6≦y<1.0、0<z<0.4、0<w<0.4、0≦e≦0.1である。好ましくは、前記化学式1中、MがMnまたはMnおよびAlの組み合わせであり、0.85≦y<1.0、0<z<0.15、0<w<0.15、0≦e≦0.05であることができる。
【0014】
他の具現例によると、本発明は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のように、結晶粒のサイズと結晶粒のアスペクト比が特定の条件を満たす正極活物質を使用すると、リチウム二次電池の抵抗特性および寿命特性を著しく改善することができる。正極活物質の結晶粒のサイズとアスペクト比が本発明の条件を満たす場合、結晶粒が正極活物質粒子の中心から表面方向に配列されてリチウム移動性が増加し、リチウム移動距離が短くなって優れた抵抗特性を示し、充放電過程で粒子の収縮膨張エネルギーが分散して粒子破砕が減少し、寿命特性を向上する効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0018】
本発明において、「結晶粒」は、規則的な原子配列を有する単結晶粒子単位を意味する。
【0019】
前記結晶粒のサイズは、正極活物質粉末をX線回折分析して得られたXRDデータをRietveld refinement方法で分析して測定した値である。
【0020】
本発明において、「変形率(strain)」は、結晶格子の変形程度を示す値であり、X線回折データのRietveld refinement分析により測定されることができる。
【0021】
前記結晶粒のサイズと変形率は、Malvern社製のXRDデータrefinementプログラムであるHighscoreを用いて測定することができ、具体的には、XRDデータで示されるすべてのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)をCaglioti(カリオティ)の式でフィッティング(fitting)して求めることができる。
【0022】
本発明において、結晶粒のアスペクト比(aspect ratio)は、XRDデータで示されるそれぞれのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)を楕円形モデリング(ellipsoid modelling)を適用して変形したシェラーの式に適用して計算された結晶粒の短軸長さcに対する長軸長さaの比a/cを意味する。具体的には、前記結晶粒のアスペクト比yは、正極活物質をX線回折分析して得られたXRDデータで示されるそれぞれのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)を下記式(2)に適用した後、最小二乗近似法により得られた短軸長さcに対する長軸長さaの比率を意味する。
【0023】
【数1】
【0024】
前記式(2)中、d(hkl)は、当該ピークでの半値全幅、h、k、lは、当該ピークの結晶面でのミラー指数、Kは、シェラー定数、θは、ブラッグ角(Bragg angle)、λは、X線波長、aは、結晶粒の長軸長さ、cは、結晶粒の短軸長さである。
【0025】
本発明において、「一次粒子」は、走査型電子顕微鏡(SEM)により正極活物質の断面を観察した時に、1個の塊として区別される最小粒子単位を意味し、一つの結晶粒からなることもでき、複数個の結晶粒からなることもできる。本発明において、前記一次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面SEMデータで区別されるそれぞれの粒子サイズを測定する方法で測定されることができる。
【0026】
本発明において、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成される二次構造体を意味する。前記二次粒子の平均粒径は、粒度分析装置を用いて測定されることができ、本発明では、粒度分析装置としてMicrotrac社製のs3500を使用した。
【0027】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0028】
本発明者らは、優れた電気化学的特性を実現することができる正極活物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、正極活物質の結晶粒のサイズと結晶粒のアスペクト比が特定の関係を満たす時に、リチウム二次電池の容量特性および寿命特性を著しく改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
正極活物質
本発明による正極活物質は、リチウム以外の遷移金属の全モル数に対して60モル%以上のニッケルを含み、一次粒子が凝集した二次粒子の形態であるリチウム遷移金属酸化物を含み、下記式(1)の条件を満たすことを特徴とする。
【0030】
式(1) -0.021x+4.0≦y≦-0.021x+5.5
【0031】
前記式(1)中、xは、前記正極活物質の結晶粒のサイズ(nm単位)であり、前記yは、前記正極活物質の結晶粒のアスペクト比である。好ましくは、前記式(1)において、100≦x≦180または120≦x≦160であることができ、1≦y≦2.5または1.3≦y≦2.5であることができる。
【0032】
正極活物質の結晶粒のサイズおよび結晶粒のアスペクト比が前記式(1)の条件を満たす場合、抵抗特性および寿命特性の向上において優れた効果を示す。
【0033】
一方、本発明において、前記結晶粒のサイズxは、前記正極活物質をX線回折分析して得られたXRDデータで示されるそれぞれのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)をCaglioti(カリオティ)の式でフィッティング(fitting)して求めた値であり、前記結晶粒のアスペクト比yは、前記正極活物質をX線回折分析して得られたXRDデータで示されるそれぞれのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)を楕円形モデリング(ellipsoid modelling)して得られた短軸長さに対する長軸長さの比率である。
【0034】
以下、前記結晶粒のサイズxおよび結晶粒のアスペクト比yの測定方法について具体的に説明する。
【0035】
先ず、正極活物質に対して、X線回折分析を行って、XRDデータを得る
【0036】
この際、前記X線回折分析は、Malyer panalytical社製のEmpyreon XRD装備を用いて、下記のような条件で行われることができる。
【0037】
<X線回折分析条件>
光源:Cu-ターゲット、45kV、40mA出力
検出器:GaliPIX3D
試料準備:約5g程度の試料を直径2cmのホルダーに満たし、回転ステージ(rotation stage)にローディング
測定時間:約30分
測定領域:2θ=15゜~85゜
【0038】
次に、前記のような条件で測定されたXRD rawデータをMalyer panalytical社製のHighscoreプログラムを用いて処理し、結晶粒のサイズxと結晶変形率を求める。この際、半値全幅はCaglioti(カリオティ)の式、ピークプロファイル(peak profile)は擬フォークト関数(Psedo Voigt function)を用いて測定するように設定した。
【0039】
一方、本発明による結晶粒のアスペクト比は、前記XRDデータで示されるそれぞれのピークの半値全幅(full width at half‐maximum、FWHM)を求め、前記それぞれのピークの半値全幅を楕円形モデリング(ellipsoid modelling)を適用して変形されたシェラーの式である下記式(2)に適用して得られた式を非線形方程式解法である最小二乗近似法(least squares approximation)でフィッティング(fitting)して長軸長さaおよび短軸長さcを求めた後、前記短軸長さcに対する長軸長さaの比率(a/c)を計算して測定することができる。
【0040】
【数2】
【0041】
前記式(2)中、d(hkl)は、当該ピークでの半値全幅であり、h、k、lは、当該ピークの結晶面でのミラー指数であり、Kは、シェラー定数、θは、ブラッグ角(Bragg angle)、λは、X線波長、aは、結晶粒の長軸長さ、cは、結晶粒の短軸長さである。
【0042】
一方、本発明において、前記結晶粒のサイズxは、100nm~180nm、または120nm~160nm程度であることが好ましい。また、前記結晶粒のアスペクト比yは、1~2.5または1.3~2.5程度であることが好ましい。結晶粒のサイズとアスペクト比が前記範囲を満たす時に、容量特性、抵抗特性および寿命特性がいずれも優秀に示される。結晶粒のサイズが小さすぎるか、アスペクト比が大きすぎる場合には、電解液との接触面積が増加して退化が速く起こり得、結晶粒のサイズが大きすぎるか、アスペクト比が小さい場合には、岩塩(rock salt)相が形成されて抵抗特性および寿命特性が低下し得る。また、結晶粒のサイズとアスペクト比が前記範囲を満たしても、式(1)の条件から逸脱する場合には、容量特性、抵抗特性または寿命特性の改善効果が低下する。
【0043】
一方、本発明による正極活物質は、リチウム以外の遷移金属の全モル数に対して60モル%以上のニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物を含む。
【0044】
具体的には、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されることができる。
【0045】
[化学式1]
Li1+xNiCo
【0046】
前記化学式1中、前記Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり、好ましくは、MnまたはMnおよびAlの組み合わせであることができる。
【0047】
前記Mは、B、Al、Zr、Y、Mo、Cr、V、W、TaおよびNbからなる群から選択される少なくともいずれか一つであることができる。
【0048】
前記1+xは、遷移金属の全モル数に対するLiのモル数の比を示し、-0.1≦x≦0.2、好ましくは0≦x≦0.2、より好ましくは0≦x≦0.1であることができる。
【0049】
前記yは、遷移金属の全モル数に対するNiのモル数の比を示し、0.6≦y<1、好ましくは0.8≦y<1、より好ましくは0.85≦y<1であることができる。
【0050】
前記zは、遷移金属の全モル数に対するCoのモル数の比を示し、0<z<0.4、好ましくは0<z<0.2、より好ましくは0<z<0.15であることができる。
【0051】
前記wは、遷移金属の全モル数に対するMのモル数の比を示し、0<w<0.4、好ましくは0<w<0.2、より好ましくは0<w<0.15であることができる。
【0052】
前記eは、遷移金属の全モル数に対するMのモル数の比を示し、0≦e≦0.1、好ましくは0≦e≦0.05であることができる。
【0053】
本発明によるリチウム遷移金属酸化物が前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含む時に、高容量特性を示すことができる。
【0054】
本発明によると、前記リチウム遷移金属酸化物は、一次粒子が凝集してなる二次粒子の形態を有するものである。前記リチウム遷移金属酸化物が一次粒子が凝集した二次粒子の形態に形成される場合、高い比表面積を有するとともに高い圧延密度を実現することができ、これを適用する時に、体積当たりエネルギー密度を増加させることができる。
【0055】
一方、本発明による正極活物質は、上述のリチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層をさらに含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層をさらに含む場合、前記コーティング層によってリチウム遷移金属酸化物と電解液の接触が遮断され、電解液との副反応による遷移金属の溶出およびガスの発生を減少させることができる。
【0056】
前記コーティング層は、Li、B、W、Al、Zr、Na、S、PおよびCoからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むことができる。
【0057】
また、前記正極活物質は、一次粒子の平均粒径が0.05μm~4μm、好ましくは0.1μm~2μmであることができる。一次粒子の平均粒径が大きすぎると、岩塩(rock salt)相が形成されて抵抗特性および寿命特性が低下し得、一次粒子の平均粒径が小さすぎると、電解液との接触面積が増加し、劣化が速く起こり得る。
【0058】
また、前記正極活物質は、二次粒子の平均粒径が2μm~25μm、好ましくは4μm~18μmであることができる。二次粒子の平均粒径が前記範囲を満たす時に、圧延工程で正極活物質粒子が破砕するか、スラリーの製造時に工程性が低下することを防止することができる。
【0059】
また、前記正極活物質は、変形率が0.04%~0.25%、好ましくは0.06~0.15%であることができる。変形率が大きすぎると、寿命特性が低下し、小さすぎると、リチウムイオン移動性が低下する。
【0060】
正極活物質の結晶粒のサイズおよび結晶粒のアスペクト比は、正極活物質の製造時に使用される前駆体の組成、前駆体の結晶粒の形状および配向性、正極活物質粒子のサイズ、焼成条件などによって変化する。したがって、前駆体の種類、焼成条件などを適切に調節することで、本発明の式(1)を満たす正極活物質を製造することができる。
【0061】
例えば、焼成時に遷移金属の全モル比に対するリチウムモル比(Li/Me比)が増加するか、焼成温度が高くなると、結晶粒のサイズが大きくなり、結晶粒のアスペクト比は低くなり得る。逆に、Li/Me比が減少するか、焼成温度が本願発明範囲内で低くなると、結晶粒のサイズは小さくなり、アスペクト比は大きくなる。したがって、焼成時のLi/Meの比率または焼成温度などを調節することで、結晶粒のサイズおよびアスペクト比を適切な範囲に調節することができる。
【0062】
これに限定されるものではないが、本発明による正極活物質は、遷移金属の全モル数に対して60モル%以上のニッケルを含む遷移金属水酸化物とリチウム原料物質をLi/Meが1超1.2以下、好ましくは1.03~1.1、より好ましくは1.03~1.05になるように混合し、700℃~800℃で焼成して製造されることができる。
【0063】
また、正極活物質の結晶粒のサイズおよびアスペクト比は、原料物質である正極活物質前駆体の結晶粒のサイズおよびアスペクト比の影響を受けるため、適切な結晶粒構造を有する正極活物質前駆体を原料物質として選択して使用することで、本発明の結晶粒のサイズおよびアスペクト比の関係を満たす正極活物質を製造することができる。正極活物質前駆体の結晶粒のサイズおよびアスペクト比は、前駆体の製造条件、例えば、反応溶液中の遷移金属溶液とアンモニア溶液のモル比のような反応溶液の投入量や、反応溶液pH、温度、撹拌速度、反応時間などの共沈反応条件を調節して制御することができる。
【0064】
正極
また、本発明は、上述の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0065】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、前記の正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0066】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0067】
前記正極活物質層は、正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0068】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98重量%の含量で含まれることができる。前記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0069】
この際、前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0070】
前記バインダーは、正極活物質の粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0071】
前記正極は、前記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極製造方法によって製造されることができる。具体的には、前記の正極活物質、および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集全体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0072】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0073】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0074】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0075】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータおよび電解質とを含み、前記正極は、上述と同様であるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0076】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0077】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0078】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で使用されることができる。
【0079】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダーおよび導電材を含む。
【0080】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0081】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量100重量部に対して80重量部~99重量部含まれることができる。
【0082】
前記バインダーは、導電材、活物質と集電体との結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量100重量部に対して0.1重量部~10重量部添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0083】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0084】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合剤を塗布して乾燥することで製造されるか、または前記負極合剤を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0085】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合剤を塗布し乾燥するか、または前記負極合剤を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0086】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ電解液含湿能に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造で使用されることができる。
【0087】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0088】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0089】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、底粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、優れた電解液の性能を示すことができる。
【0090】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用されることができる。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0091】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾールリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量100重量部に対して0.1~5重量部含まれることができる。
【0092】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0093】
これにより、本発明の他の一具現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0094】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0095】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0096】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されることだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0097】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0098】
製造例1:正極活物質前駆体Aの製造
NiSO、CoSO、およびMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が88:6:6になるようにする量で蒸留水の中で混合し、2.4M濃度の遷移金属水溶液を準備した。
【0099】
次いで、前記反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。次に、7.96M NaOHを投入して反応器内のpHが11.9を維持するようにした。
【0100】
次に、前記遷移金属水溶液を前記反応器内に850mL/hrの速度で投入し、NaOH水溶液を510mL/hr、NHOH水溶液を160mL/hrの速度でそれぞれ投入しながら反応温度50℃、pH11.4、撹拌速度600rpmの条件で40時間共沈反応を行い、平均粒径15μmのNi0.88Co0.06Mn0.06(OH)で表される正極活物質前駆体Aを製造した。
【0101】
製造例2:正極活物質前駆体Bの製造
NiSO、CoSO、およびMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が88:6:6になるようにする量で蒸留水の中で混合し、2.4M濃度の遷移金属水溶液を準備した。
【0102】
次いで、前記反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気にした。次に、7.96M NaOHを投入して反応器内のpHが11.9を維持するようにした。
【0103】
次に、前記遷移金属水溶液を前記反応器内に850mL/hrの速度で投入し、NaOH水溶液を510mL/hr、NHOH水溶液を540mL/hrの速度でそれぞれ投入しながら反応温度50℃、pH11.4、撹拌速度600rpmの条件で40時間共沈反応を行い、平均粒径15μmのNi0.88Co0.06Mn0.06(OH)で表される正極活物質前駆体Bを製造した。
【0104】
製造例3:正極活物質前駆体Cの製造
共沈反応を12時間行った以外は、前記製造例2と同じ方法で、平均粒径5μmのNi0.88Co0.06Mn0.06(OH)で表される正極活物質前駆体Cを製造した。
【0105】
実施例1
製造例1で製造された正極活物質前駆体AとLiOHをLi/Meのモル比が1.03になるように混合し、760℃で10時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0106】
次いで、前記リチウム遷移金属酸化物を水と1:1の重量比になるように混合し、水洗した。
【0107】
水洗後、リチウム遷移金属酸化物100重量部に対してBが500ppm含まれるようにホウ酸を混合し、これを300℃で熱処理してリチウム遷移金属酸化物の表面にBコーティング層を形成した正極活物質を製造した。
【0108】
実施例2
Li/Meのモル比が1.05になるように混合する以外は、前記実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0109】
実施例3
770℃で10時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造し、これを用いる以外は、前記実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0110】
実施例4
780℃で10時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造し、これを用いる以外は、前記実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0111】
比較例1
製造例2で製造された正極活物質前駆体BとLiOHをLi/Meのモル比が1.01になるように混合し、750℃で15時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0112】
次いで、前記リチウム遷移金属酸化物を水と1:1の重量比になるように混合し、水洗した。
【0113】
水洗後、リチウム遷移金属酸化物100重量部に対してBが500ppm含まれるようにホウ酸を混合し、これを300℃で熱処理してリチウム遷移金属酸化物の表面にBコーティング層を形成した正極活物質を製造した。
【0114】
比較例2
製造例3で製造された正極活物質前駆体CとLiOHをLi/Meのモル比が1.09になるように混合し、780℃で15時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0115】
次いで、前記リチウム遷移金属酸化物を水と1:1の重量比になるように混合し、水洗した。
【0116】
水洗後、リチウム遷移金属酸化物100重量部に対してBが500ppm含まれるようにホウ酸を混合し、これを300℃で熱処理してリチウム遷移金属酸化物の表面にBコーティング層を形成した正極活物質を製造した。
【0117】
実験例1:正極活物質粒子の特性確認
前記実施例1~4および比較例1~2で製造した正極活物質粉末に対するX線回折分析(Empyrean、Malvern panalytical社)を行って結晶粒のサイズ、結晶粒のアスペクト比および変形率を測定した。この際、X線回折分析条件および結晶粒のサイズ、変形率および結晶粒のアスペクト比の測定方法は、上述のとおりである。測定結果は、下記表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
実験例2
前記実施例1~4および比較例1~2でそれぞれ製造した正極活物質、カーボンブラック導電材およびポリビニリデンフルオライドバインダーを97.5:1.0:1.5の重量比でN‐メチルピロリドン溶媒の中で混合し、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥してから圧延して正極を製造した。一方、負極活物質としてカーボンブラックおよびポリビニリデンフルオライドバインダーを97.5:2.5の重量比で混合し、溶媒であるN‐メチルピロリドンに添加して負極活物質スラリーを製造した。これを厚さが16.5μmの銅箔上に塗布し、乾燥した後、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0120】
前記で製造した正極と負極との間に多孔性ポリエチレンセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。この際、電解液としてエチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)を3:4:3の比率で混合した有機溶媒に1MのLiPFを溶解させた電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。
【0121】
前記のように製造されたリチウム二次電池それぞれに対して、25℃で0.2Cの定電流で4.25Vまで充電を実施し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電を実施した後、これを1サイクルとし、1サイクルで充放電効率および初期抵抗特性を測定した。
【0122】
その後、前記リチウム二次電池を45℃で0.33Cの定電流で4.25Vまで充電し、0.33Cの定電流で2.5Vまで放電することを1サイクルとし、50サイクルの充放電を実施した。1サイクル後の放電容量に対する50サイクル後の放電容量維持率(%)を50サイクル寿命特性として評価した。測定結果は、下記表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
前記表1および表2に示されているように、本発明の式(1)を満たす実施例1~4の正極活物質を適用したリチウム二次電池は、式(1)を満たさない比較例1~2の正極活物質を適用したリチウム二次電池と比較して、初期容量特性は同等水準に示され、抵抗特性および寿命特性は大幅に改善したことを確認することができる。