(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】発情検知装置、発情検知方法、発情検知プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A01K29/00 A
(21)【出願番号】P 2020126539
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 耕治
(72)【発明者】
【氏名】細江 実佐
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A61D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを用いて撮像した家畜の画像を取得する取得部と、
前記取得部が取得した画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成し、当該結合画像データにおける対象画像と当該対象画像の1フレーム前の画像を含む比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して前記家畜の活動量を算出する算出部と、
前記活動量を発情期の家畜の活動量と比較して、前記家畜の発情を判定する判定部と
を備
え、
前記算出部は、前記結合画像データに含まれる各画像間の差分の合計を前記活動量として算出する、発情検知装置。
【請求項2】
前記算出部は、算出した前記差分を表す領域の面積を前記活動量として算出し、当該活動量と、所定時間前の画像における前記差分を表す領域の面積との比を活動量比として算出する、請求項1に記載の発情検知装置。
【請求項3】
前記算出部は
、前記結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計を前記活動量として算出し、当該活動量と、当該結合画像データよりも前に作成された前記結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計との比を活動量比として算出する、請求項1又は2に記載の発情検知装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記結合画像データに含まれる各画像間のフレーム間隔が一定になるように前記結合画像データを補正する、請求項3に記載の発情検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記活動量比が所定の閾値を超えた場合に、前記家畜が発情していると判定する、請求項2から4のいずれか1項に記載の発情検知装置。
【請求項6】
前記家畜は、つなぎ飼育されている家畜である、請求項1から5のいずれか1項に記載の発情検知装置。
【請求項7】
カメラを用いて撮像した家畜の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成し、当該結合画像データにおける対象画像と当該対象画像の1フレーム前の画像を含む比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して前記家畜の活動量を算出する算出ステップと、
前記活動量を発情期の家畜の活動量と比較して、前記家畜の発情を判定する判定ステップと
を含
み、
前記算出ステップにおいて、前記結合画像データに含まれる各画像間の差分の合計を前記活動量として算出する、発情検知方法。
【請求項8】
請求項7に記載の発情検知方法をコンピュータに実行させるための発情検知プログラムであって、
カメラを用いて撮像した家畜の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成し、当該結合画像データにおける対象画像と当該対象画像の1フレーム前の画像を含む比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して前記家畜の活動量を算出する算出ステップと、
前記活動量を発情期の家畜の活動量と比較して、前記家畜の発情を判定する判定ステップと
を含
み、
前記算出ステップにおいて、前記結合画像データに含まれる各画像間の差分の合計を前記活動量として算出する、発情検知プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の発情検知プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発情検知装置、発情検知方法、発情検知プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の発情状態を管理することは、畜産経営を良好に行なう上で非常に重要である。近年、畜産従事者の減少と高齢化が進む一方、一戸当たりの家畜飼養頭数は増加傾向にあり、各個体に対して発情状態管理のための行動観察時間を十分に割くことが困難となりつつある。
【0003】
家畜の行動観察するための技術として、家畜に装着して行動を観察するためのウェアラブルセンサが広く用いられている。また、画像解析により家畜の行動観察する技術も知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2017/158698
【文献】特開2020-14421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
行動観察のためのウェアラブルセンサの多くは、家畜の大きな動きや移動を検知するものであるため、放飼の牛を対象としており、つなぎ飼いの牛を対象としたものは非常に限られている。一方、国内の乳用牛農家の約70%、肉用繁殖牛農家の約35%では、牛のつなぎ飼育を採用しており、つなぎ飼育下においても行動観察可能な技術の開発が望まれている。また、最近ではアニマルウェルフェアへの関心も高まってきており、ウェアラブルセンサよりも侵襲性が低い行動観察技術が望まれている。
【0006】
特許文献1及び2に記載された技術は、画像解析により家畜の行動を観察するが、行動観察を分娩予測に利用することに特化した技術であり、発情検知に利用するものではない。そのため、発情状態を検知する技術の開発が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、非侵襲的に家畜の発情状態を検知する技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発情検知装置は、カメラを用いて撮像した家畜の画像を取得する取得部と、前記画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して前記家畜の活動量を算出する算出部と、前記活動量を参照して、前記家畜の発情を判定する判定部とを備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発情検知方法は、カメラを用いて撮像した家畜の画像を取得する取得ステップと、前記画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して前記家畜の活動量を算出する算出ステップと、前記活動量を参照して、前記家畜の発情を判定する判定ステップとを含んでいる。
【0010】
本発明の各態様に係る発情検知装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記発情検知装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記発情検知装置をコンピュータにて実現させる発情検知装置の発情検知制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、非侵襲的に家畜の発情状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発情検知システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発情検知システムによる発情検知の対象となる家畜の飼育形態の例を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る発情検知システムが備えるカメラを用いて、家畜を前方、上方、及び後方から撮像した画像を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る発情検知システムにおける画像処理の概要を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る発情検知システムによる発情検知処理を示すフローチャートである。
【
図6】家畜の排卵からの時間に対する、ピクセル数比を示すグラフである。
【
図7】各方向におけるピクセル数間の相関を示すグラフである。
【
図8】従来の加速度センサを用いた活動量と、本発明の一実施形態に係る発情検知システムを用いたピクセル数との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔発情検知システム〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る発情検知システムは、家畜の画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して活動量を算出し、家畜の発情を検知するシステムである。ここで発情とは、動物が生殖活動に伴う興奮状態にあることを意味しており、人工授精が成功する可能性の高い状態であり得る。
【0014】
図1を参照して本発明の一実施形態に係る発情検知システムについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発情検知システムの要部構成を示すブロック図である。
図1に示すように、発情検知システム100は、カメラ10、発情検知装置20、及び利用者端末30を備えている。カメラ10と、発情検知装置20と、利用者端末30とは、ネットワークを介して相互に接続される。発情検知装置20は、取得部21、算出部22、判定部23、記憶部24、及び表示部25を備えている。
【0015】
(検知対象)
発情検知システム100による検知の対象となる動物は家畜である。家畜から乳製品、皮、肉等を得る畜産において、家畜の繁殖を制御することは極めて重要である。家畜の人工授精時期を推定し、繁殖を制御するために、家畜の発情状態を個体毎に正確に管理することが望ましい。発情検知システム100は、家畜の発情状態を検知することができる。発情検知システムによる検知の対象となる家畜の例として、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ等が挙げられ、特にウシである。
【0016】
図2を参照して、発情検知システム100による検知の対象となる家畜の飼育形態について説明する。
図2は、発情検知システム100による発情検知の対象となる家畜の飼育形態の例を説明する図である。
【0017】
発情検知システム100は、
図2に示すような、つなぎ飼育されている家畜の発情を検知することができる。つなぎ飼育されている家畜とは、具体的には、屋内の区切られた領域に鎖等でつながれた状態で飼育されているつなぎ飼いの家畜である。
【0018】
(カメラ)
図3を参照して、発情検知システム100が備えるカメラ10について説明する。
図3は、カメラ10を用いて、家畜を前方、上方、及び後方から撮像した画像を示す図である。
図3の左列は、昼間に可視光カメラによって撮像された可視光画像である。
図3の右列は、夜間に赤外線カメラによって撮像された赤外線カメラによって撮像された赤外線画像である。
【0019】
発情検知システム100が備えるカメラ10は、発情の検知の対象となる家畜を撮像する。カメラ10が撮像した画像は、取得部21に送られる。カメラ10は、所定期間継続して撮像するように制御されてもよいし、ユーザからの入力に基づき撮像するように制御されてもよい。カメラ10において、撮像、及び、レンズの向き、画角、ピントやズームの調整等の制御は、発情検知装置20の制御部(図示せず)により制御される。
【0020】
発情検知システム100は、複数のカメラ10を備えていることが好ましい。これにより、様々な方向から撮像した複数の画像が得られるので、これらの画像に基づき、発情の検知をより精度よく行うことができる。カメラ10の数は特に限定されない。カメラ10の設置位置は特に限定されないが、家畜の行動を妨げない位置であって、撮像可能範囲が広くなるような位置に設置することが好ましい。
【0021】
図2に示すつなぎ飼育されている家畜を撮像する場合、
図2における点線丸印に示すように、例えば、家畜を前方、上方、及び後方のうち少なくとも1方向から、より好ましくは2方向から、さらに好ましくは3方向から撮像可能な位置にカメラ10を設置すればよい。
【0022】
カメラ10は、可視光カメラ及び赤外線カメラの少なくとも一方である。カメラ10は、少なくとも1台の可視光カメラと、少なくとも1台の赤外線カメラとを含むことが好ましい。これにより、例えば、
図3の左列に示すように、昼間は可視光カメラにより撮像し、
図3の右列に示すように、夜間は赤外線カメラにより撮像することで、昼夜問わず家畜の撮像が可能である。
【0023】
可視光カメラは、レンズ等の光学系や光検出素子等を含み、被写体から光を検出して可視光画像データを生成する。赤外線カメラは、レンズ等の光学系や赤外線検出素子等を含み、被写体から発せられる赤外線を感知して赤外線画像データを生成する。
【0024】
(取得部)
取得部21は、カメラ10を用いて撮像した家畜の画像を取得する。画像は、可視光画像及び赤外線画像の少なくとも一方である。取得部21は、動画像として、可視光画像及び赤外線画像の少なくとも一方を取得する。取得部21は、複数のカメラ10を用いて撮像した複数の画像を取得する。取得部21は、無線又は有線による通信インタフェースとして実装されている。取得部21は、取得した画像データを算出部22に送る。また、取得部21は、取得した画像データを記憶部24に送ってもよい。
【0025】
(算出部)
算出部22は、取得部21が取得した画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して家畜の活動量を算出する。算出部22は、取得部21が取得した複数の画像のそれぞれから、家畜の活動量を算出する。算出部22は、取得部21が取得した画像と、当該画像の前に撮像し、記憶部24に記憶された比較画像との差分を算出して、当該差分を参照して家畜の活動量を算出する。
【0026】
図4を参照して、発情検知システム100が備える算出部22について具体的に説明する。
図4は、発情検知システム100における画像処理の概要を示した図である。
【0027】
算出部22は、取得部21が取得した画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成する。算出部22は、例えば、取得部21が取得した動画像を、1時間毎に時系列に24時間分結合した結合画像データを作成する。結合画像データの作成には、例えば、Aviutl等のソフトウェアを用いることができる。
【0028】
算出部22は、結合画像データをグレースケール化する。昼間に撮像されたカラー画像である可視光画像と、夜間に撮像されたグレースケールである赤外線画像とが含まれる結合画像データをグレースケールに統一することにより、昼夜間の影響を低減することができる。
【0029】
取得部21が取得した各画像間のフレーム間隔が一定でない場合、算出部22は、結合画像データに含まれる各画像間のフレーム間隔が一定になるように結合画像データを補正する。例えば、取得部21が取得した画像が~25fpsの可変フレームレートの動画像である場合、算出部22は、可変フレームレートの動画像を5fpsの固定フレームレートの動画像に補正する。グレースケール化及び固定フレームレート化には、例えば、HandBrake等のソフトウェアを用いることができる。
【0030】
算出部22は、結合画像データにおいて、背景差分法又はフレーム間差分法を用いて、画像間の差分を取得し得る。すなわち、算出部22は、固定フレームレート化した結合画像データに含まれる、取得部21が取得した画像(
図4の1001)に対応する画像(家畜の発情を判定する時点の対象画像(
図4の1002))と当該画像の前に撮像した比較画像(背景モデル画像(
図4の1003))との差分を算出する。差分の算出に使用する背景モデルの作成には、例えば、k近傍法(k-nearest neighbor;KNN)、MOG(Mixture of Gaussian Distribution)等のプログラムを用いてもよい。例えば、背景モデル画像は、動画像の最初の任意の数(例えば、1~500フレーム程度)を用いて背景モデルの初期化(Background Initialization)を行なう。すなわち、初期背景モデルを作成する。その後、適宜、背景モデルの動的更新(Background Update)を行なう。例えば、1フレーム毎、画像の輝度の振幅が初期背景モデルを作成したときよりも大きくなった場合等に、背景モデルを更新する。背景モデルを更新することにより、入力画像の背景の少なくとも一部が刻々と変化した場合であっても追跡する対象領域を絞ることができる。初期背景モデルの作成、背景モデルの動的更新、及び背景差分処理の一連の処理は、例えば、OpenCV(Open Computer Vision)ライブラリ等を用いて行なえばよい。そして、作成した背景モデル画像は記憶部24に記憶され、算出部22は、記憶部24から背景モデル画像を取得する。算出部22は、差分として背景差分画像を得る。
【0031】
算出部22は、算出した差分である背景差分画像を二値化する。差分の算出及び二値化は、OpenCVライブラリ等を用いてまとめて行なってもよい。算出部22は、差分として、二値化した背景差分画像(
図4の1004)を得る。
図4の1004に示す二値化した背景差分画像における白色の領域は、算出した差分を表す領域である。当該領域の面積は、家畜の活動量に相当する。白色の領域の面積をピクセル数としてカウントする。活動量は、1時間の平均値として算出する。
【0032】
算出部22は、算出した差分を表す領域の面積を活動量として算出し、当該活動量と、所定時間前の画像における差分を表す領域の面積との比を活動量比として算出する。具体的には、算出部22は、結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計を活動量として算出し、当該活動量と、当該結合画像データよりも前に作成された結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計との比を活動量比として算出する。例えば、算出部22は、過去24時間の差分ピクセル数の合計値を活動量比として算出し、当該活動量と、過去24~48時間の差分ピクセル数の合計値との比を活動量比として算出する。
【0033】
算出部22は、算出した活動量比を判定部23に送る。また、算出部22は、作成した結合画像データ、補正した結合画像データ、算出した活動量、及び算出した活動量比を記憶部24に送ってもよい。
【0034】
(判定部)
判定部23は、算出部22が算出した活動量比を参照して、家畜の発情を判定する。家畜は発情期(例えば、排卵の24時間前~排卵までの期間)に活動量が増加するため、判定部23は、活動量比が所定の閾値(第1の所定の閾値)を超えた場合に、家畜が発情していると判定する。
【0035】
例えば、判定部23は、活動量比が好ましくは1.2、より好ましくは1.3を超えた場合に、家畜が発情していると判定してもよい。また、判定部23は、活動量比の指数移動平均値が所定の閾値を超えた場合に、家畜が発情していると判定することが好ましい。例えば、判定部23は、高感度(例えば、83.3%以上)で発情を検知することが可能である観点から、活動量比の指数移動平均値が1.1を超えた場合に、家畜が発情していると判定することが好ましい。所定の閾値は、各撮像方向(例えば、前方、上方、及び後方)のデータ毎にそれぞれ別の閾値を設定してもよい。
【0036】
判定部23は、発情周期を考慮して、家畜の発情を判定してもよい。家畜は、発情期ではなくても、他の要因による興奮状態にある場合等にも日常行動とは異なる活動を取る場合がある。判定部23が発情周期を考慮して判定することにより、発情期の活動と他の非日常の活動とを区別することができる。例えば、ウシの発情周期は約21日であるため、判定部23は、所定の期間、例えば発情周期である21日間における活動量比が所定の閾値を超えた場合には家畜が発情していると判定する。
【0037】
また、家畜は、排卵日の48時間前~24時間前の間に活動量が一旦低下する傾向がある。そのため、判定部23は、活動量が第1の所定の閾値を超えたと判定した後、判定した対象時点よりも所定の期間前から当該対象時点までの期間における活動量が、第2の所定の閾値未満であるか否かを判定してもよい。例えば、対象時点よりも48時間前から当該対象時点までの期間における活動量が、第2の所定の閾値未満として0.95であるか否かを判定してもよい。判定部23は、対象時点よりも所定の期間前から当該対象時点までの期間における活動量が第2の所定の閾値未満であると判定した場合に、対象時点において家畜が発情していると判定する。このように、2段階の閾値を設定することにより、家畜の発情検知の精度を高めることができる。
【0038】
判定部23は、家畜が発情していると判定した場合、判定結果を表示部25に送る。判定部23は、判定結果を記憶部24に送ってもよい。
【0039】
(記憶部)
記憶部24は、発情検知装置20の機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、記憶部24は、取得部21が取得した画像データ、算出部22が作成した結合画像データ、算出部22が補正した結合画像データ、算出部22が算出した活動量、及び判定部23が判定した判定結果等を記憶する。
【0040】
(表示部)
判定部23が、家畜が発情していると判定した場合、表示部25は、利用者端末30を介してユーザにその旨を通知する。利用者端末30は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話等である。
【0041】
(発情検知処理)
発情検知システム100を用いた発情検知処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、発情検知システム100による発情検知処理を示すフローチャートである。以下の発情検知処理は、発情検知装置20の制御部(図示せず)が制御する処理である。
【0042】
図5に示すように、まず、カメラ10を用いて撮像した画像を取得する(ステップS1)。ステップS1においては、取得部21が、カメラ10から画像を取得する。取得部21は、取得した画像を算出部22に送る。
【0043】
次に、ステップS1において取得した画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成する(ステップS2)。ステップS2においては、算出部22が、画像を、所定時間毎に時系列に結合した結合画像データを作成する。
【0044】
そして、ステップS2において作成した結合画像データをグレースケール化する(ステップS3)。ステップS3においては、算出部22が、結合画像データをグレースケール化する。
【0045】
そして、ステップS3においてグレースケール化した結合画像データに含まれる各画像間のフレーム間隔が一定になるようにグレースケール化した結合画像データを補正する(ステップS4)。つまり、グレースケール化した結合画像データを固定フレームレート化する。ステップS4においては、算出部22が、グレースケール化した結合画像データを固定フレームレート化する。
【0046】
そして、ステップS4において固定フレームレート化した結合画像データに含まれる対象画像と背景モデル画像との差分を算出する(ステップS5)。ステップS5においては、算出部22が、固定フレームレート化した結合画像データに含まれる対象画像と背景モデル画像との差分を算出する。
【0047】
そして、ステップS5において算出した差分を二値化する(ステップS6)。ステップS6においては、算出部22が、算出した差分を二値化する。算出部22は、二値化した背景差分画像における、家畜の活動量を表す領域の面積をピクセル数としてカウントする。
【0048】
そして、ステップS6においてカウントした、結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計を活動量として算出し、当該活動量と、当該結合データよりも前に作成された結合データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計との比を活動量比として算出する(ステップS7)。ステップS7においては、算出部22が、結合画像データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計を活動量として算出し、当該活動量と、当該結合データよりも前に作成された結合データに含まれる各画像間の差分を表す領域の面積の合計との比を活動量比として算出する。算出部22は、算出した活動量比を判定部23に送る。このように、ステップS2~S7において、算出部22が、取得部21が取得した画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して家畜の活動量を算出する。
【0049】
そして、ステップS7において算出した活動量を参照して、家畜の発情を判定する(ステップS8)。ステップS8において、判定部23が、活動量を参照して、家畜の発情を判定する。判定部23は、活動量比が所定の閾値を超えていると判定した場合(ステップS8のYes)、ステップS9の処理に進む。ステップS9においては、判定部23が、発情していると判定し、表示部25が、利用者端末30を介してユーザに通知する。判定部23が、活動量比が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS8のNo)、処理を終了する。また、判定部23は、判定結果を記憶部24に送ってもよい。
【0050】
また、以上の方法によれば、カメラ10を用いて撮像した画像を取得する取得ステップ(ステップS1)と、画像と当該画像の前に撮像した比較画像との差分を算出し、当該差分を参照して家畜の活動量を算出する算出ステップ(ステップS2~7)と、活動量を参照して、家畜の発情を判定する判定ステップとを含む、発情検知方法が実現される。
【0051】
発情検知システムは、家畜を撮像した画像に基づき家畜の発情を判定するため、家畜の行動を常時目視で確認したり、家畜から体液を採取したりすることなく、容易に発情検知することができる。また、発情検知システムは、家畜にセンサを装着する必要がないため、非侵襲的であり、家畜への負担が少ない。
【0052】
〔ソフトウェアによる実現例〕
発情検知システム100が備える発情検知装置20の制御ブロック(取得部21、算出部22、及び判定部23)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0053】
後者の場合、発情検知装置20は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0054】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
〔実施例〕
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0056】
6頭の各ウシの前方、上方、及び後方に可視光カメラ及び赤外線カメラを備えたカメラ(100万画素、可変フレームレート)を設置した。昼間は可視光カメラにより可視光画像を取得し、夜間は赤外線カメラにより赤外線画像を取得した。Aviutlを用いて、取得した画像を1時間毎に時系列に24時間分結合した結合画像データを作成した。動画の最初の1フレームを初期背景モデルとし、その後、1フレーム毎に対象フレームの直前の500フレームを基準として背景モデルを更新した。そして、差分として、二値化した背景差分画像を得た。初期背景モデルの作成、背景モデルの動的更新、及び背景差分処理の一連の処理は、OpenCVライブラリを用いた。算出した差分を表す領域のピクセル数を1時間の平均値として算出した。そして、過去24時間の差分ピクセル数の合計値と、過去24~48時間の差分ピクセル数の合計値との比を活動量として算出した。活動量は6頭のウシの平均値として算出した。結果
図6に示す。
【0057】
結果を
図6に示す。
図6は、家畜の排卵からの時間に対する、ピクセル数比を示すグラフである。ピクセル数比は、過去48時間前~24時間前の合計に対する、過去24時間前~0時間前の差分ピクセルの合計である。なお、実際の排卵時点を0時間とした。超音波画像診断装置を用いて2時間間隔で卵巣を描出し、大卵胞の消失を確認した時刻から1時間前を実際の排卵時点とした。
【0058】
図7は、各方向におけるピクセル数間の相関を示すグラフである。
図7に示すように、前方、上方、及び後方のいずれの方向から撮像した画像であっても相関が高く、カメラの撮像方向に依存しないことが分かった。
【0059】
図8は、従来の加速度センサを用いた活動量と、本実施例におけるピクセル数との相関を示すグラフである。従来の加速度センサを用いた活動量は、上述の画像処理により発情を判定した6頭のウシの尾部に加速度センサを装着して検知された、上述の画像処理と同一時期の活動量の平均値である。
図8に示すように、本発明により算出した活動量は、加速度センサを用いた活動量と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、畜産分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 カメラ
20 発情検知装置
21 取得部
22 算出部
23 判定部
24 記憶部
25 表示部
30 利用者端末
100 発情検知システム