(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】搬送装置および搬送方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20231120BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20231120BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
H02P25/064
G01N35/04 H
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2019112486
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】神原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-271741(JP,A)
【文献】特開2017-227648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
G01N 35/04
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物側に設けられた第1磁性体と、
第2磁性体からなるコアおよび前記コアの外側に巻かれた巻線を有する磁気回路と、
前記磁気回路の前記巻線に電流を供給する駆動回路と、を備え、
前記磁気回路は、第1磁気回路と、前記第1磁気回路に隣接し、かつ、前記被搬送物が搬送される側に位置する第2磁気回路と、を含み、
前記第1磁気回路および前記第2磁気回路に同じ絶対値の所定電流を流したと仮定した場合に、
前記第1磁性体が、前記第1磁気回路から第1所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなり、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置から前記第2磁気回路までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力よりも小さくなる、搬送装置において、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第1磁気回路側に位置する場合に、
前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第2磁気回路との間に発生する電磁吸引力が主な推力となるように、
前記第2磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給せず、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第2磁気回路側に位置する場合に、
前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第1磁気回路との間に発生する電磁反発力が主な推力となるように、
前記第1磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第2磁気回路の巻線には電流を供給しない搬送装置。
【請求項2】
被搬送物側に設けられた第1磁性体と、
第2磁性体からなるコアおよび前記コアの外側に巻かれた巻線を有する磁気回路と、
前記磁気回路の前記巻線に電流を供給する駆動回路と、を備え、
前記磁気回路は、第1磁気回路と、前記第1磁気回路に隣接し、かつ、前記被搬送物が搬送される側に位置する第2磁気回路と、を含み、
前記第1磁気回路および前記第2磁気回路に同じ絶対値の所定電流を流したと仮定した場合に、
前記第1磁性体が、前記第1磁気回路から第1所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなり、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置から第2所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力よりも小さくなり、
前記第1磁性体が、前記第2所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記第1磁性体が、前記第2所定位置から前記第2磁気回路までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記第1磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなる、搬送装置において、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第1磁気回路側に位置する場合に、
前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第2磁気回路との間に発生する電磁吸引力が主な推力となるように、
前記第2磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給せず、
前記第1磁性体が、前記第1所定位置と前記第2所定位置との間に位置する場合に、
前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第1磁気回路との間に発生する電磁反発力が主な推力となるように、
前記第1磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第2磁気回路の巻線には電流を供給せず、
前記第1磁性体が、前記第2所定位置よりも前記第2磁気回路側に位置する場合に、
前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第2磁気回路との間に発生する電磁吸引力が主な推力となるように、
前記第2磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給しない搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送装置を搭載した検体分析システムであって、
前記被搬送
物は、検体容器を保持するホルダまたはラックであることを特徴とする検体分析システム。
【請求項4】
磁性体を有する被搬送体と、
巻線を有する磁気回路と、
前記磁気回路の巻線に電流を供給する駆動回路と、を備え、
前記磁気回路は、第1磁気回路と、前記第1磁気回路に隣接し、かつ、前記被搬送体が搬送される側に位置する第2磁気回路と、を含み、
前記第1磁気回路および前記第2磁気回路の巻線に同じ絶対値の所定電流を流したと仮定した場合に、
前記磁性体が、前記第1磁気回路から第1所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなり、
前記磁性体が、前記第1所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記磁性体が、前記第1所定位置から前記第2磁気回路までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力よりも小さくなる、搬送装置の搬送方法において、
前記磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第1磁気回路側に位置する場合に、
前記第2磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給しないことで、前記磁性体との間に発生する電磁吸引力を主な推力として、前記被搬送体を搬送し、
前記磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第2磁気回路側に位置する場合に、
前記第1磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第2磁気回路の巻線には電流を供給しないことで、前記磁性体との間に発生する電磁反発力も推力として、前記被搬送体を搬送する搬送方法。
【請求項5】
磁性体を有する被搬送体と、
巻線を有する磁気回路と、
前記磁気回路の巻線に電流を供給する駆動回路と、を備え、
前記磁気回路は、第1磁気回路と、前記第1磁気回路に隣接し、かつ、前記被搬送体が搬送される側に位置する第2磁気回路と、を含み、
前記第1磁気回路および前記第2磁気回路の巻線に同じ絶対値の所定電流を流したと仮定した場合に、
前記磁性体が、前記第1磁気回路から第1所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなり、
前記磁性体が、前記第1所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記磁性体が、前記第1所定位置から第2所定位置までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力よりも小さくなり、
前記磁性体が、前記第2所定位置に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力と等しくなり、
前記磁性体が、前記第2所定位置から前記第2磁気回路までの間に位置するときは、前記第2磁気回路により発生する前記磁性体への電磁吸引力
による推力が、前記第1磁気回路により発生する前記磁性体への電磁反発力
による推力よりも大きくなる、搬送装置の搬送方法において、
前記磁性体が、前記第1所定位置よりも前記第1磁気回路側に位置する場合に、
前記第2磁気回路の巻線に電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給しないことで、前記磁性体との間に発生する電磁吸引力を主な推力として、前記被搬送体を搬送し、
前記磁性体が、前記第1所定位置と前記第2所定位置との間に位置する場合に、
前記第1磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第2磁気回路の巻線には電流を供給しないことで、前記磁性体との間に発生する電磁反発力を主な推力として、前記被搬送体を搬送し、
前記磁性体が、前記第2所定位置よりも前記第2磁気回路側に位置する場合に、
前記第2磁気回路の巻線には電流を供給する一方で前記第1磁気回路の巻線には電流を供給しないことで、前記磁性体との間に発生する電磁吸引力を主な推力として、前記被搬送体を搬送する搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体分析システムでは、血液,血漿,血清,尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対し、指示された分析項目を検査するため、複数の機能の装置をつなげ、自動的に各工程を処理している。つまり、検体分析システムでは、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部を搬送ラインで接続し、1つの装置として運用がされている。
【0003】
こうした検体分析システムにおける検体の搬送装置は、一般に、電磁回路の巻線に電流を供給することで、検体を保持するホルダ等に設けた永久磁石との間に、電磁吸引力を発生させ、この電磁吸引力を推力に利用している。しかし、この電磁吸引力は、搬送面との間に摩擦も生じさせ得るため、永久磁石との間の電磁反発力を発生させ、この電磁反発力を推力に利用する試みもされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「第2の電磁アクチュエータは、結果として生成される、環状形状を有する第2の永久磁石に関する引っ張る力が生成されるように起動され、第3の電磁アクチュエータは、結果として生成される、前記第2の永久磁石に関する押す力が生成されるように起動される」(段落0111)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の搬送装置は、3つの隣接する電磁アクチュエータのうち、中央の電磁アクチュエータの上に、永久磁石が位置する場合に、一端の電磁アクチュエータを起動して、その電磁吸引力を推力に利用するとともに、他端の電磁アクチュエータを起動して、その電磁反発力も推力に利用するものである。すなわち、永久磁石から遠い場所にある電磁アクチュエータを起動させているため、その電磁反発力は小さく、無駄な電流損失を生じさせる。
【0007】
本発明の目的は、推力を効率よく高め、消費電力を抑制した、搬送装置および搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送装置は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、被搬送物側に設けられた第1磁性体と、第2磁性体からなるコアおよび前記コアの外側に巻かれた巻線を有する磁気回路と、前記磁気回路の前記巻線に電流を供給する駆動回路と、を備え、前記磁気回路は、第1磁気回路と、前記第1磁気回路に隣接し、かつ、前記被搬送物が搬送される側に位置する第2磁気回路と、を含み、前記第1磁性体が、前記第1磁気回路と前記第2磁気回路との間の第1所定位置よりも前記第2磁気回路側に位置する場合に、前記駆動回路は、前記第1磁性体と前記第1磁気回路との間に電磁反発力を発生させるように、前記第1磁気回路の巻線に電流を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、推力を効率よく高め、消費電力を抑制した、搬送装置および搬送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1の搬送装置の概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1の搬送装置の模式図である。
【
図3】本発明の実施例1における、位置に対する電磁吸引力及び電磁反発力の特性を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1における、電流パターンを示す図である。
【
図5】本発明の実施例2における、位置に対する電磁吸引力及び電磁反発力の特性を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2における、電流パターンを示す図である。
【
図7】本発明の実施例3における、位置に対する推力の特性および電流パターンを示す図である。
【
図8】本発明の実施例4の検体分析装置の一例を示す図である
【
図9】本発明の実施例4の検体前処理装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、
図1乃至
図9を参照して説明する。
【0012】
<実施例1>
本発明の搬送装置の実施例1について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
最初に本発明の搬送装置の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、2つの磁極25と永久磁石10が相対的に動作する搬送装置の概略を模式的に示した図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例の搬送装置1は、永久磁石(第1磁性体)10、磁極25、駆動回路50、電流検出部30、演算部40、電源55を備えている。永久磁石10は、被搬送物側に設けられており、好適にはネオジムやフェライトなどが用いられる。しかし、永久磁石10の代わりに、その他の磁石や軟磁性体を用いても構わない。
【0014】
永久磁石10が設けられた被搬送物の例として、検体容器を1本ずつ保持する検体ホルダや、検体容器を複数本保持する検体ラックがある。このような検体ホルダや検体ラックには、永久磁石10が一体となるように組み込まれており、永久磁石10が搬送されることで、検体容器およびホルダやラックが所望の位置まで搬送される。
【0015】
図1に示すように、搬送装置1には磁極25が少なくとも2つ以上設けられている。1つ1つの磁極25は、磁性体(第2磁性体)からなるコア22と、コア22の外周に巻かれた巻線21と、を有している。磁極25のうち円柱状のコア22が、永久磁石10に対向するように配置されている。
【0016】
磁極25の巻線21に駆動回路50が接続され、巻線21に流れる電流値を検出する電流検出部30が設けられている。なお、電流検出部30は、直列抵抗、カレントトランスによるもの、ホール電流センサを用いたものなどが考えられるが、これらに限定するものではない。駆動回路50は交流または電池などの直流の電源55に接続される。駆動回路50は、この電源55から電流を受け取り、磁極25の巻線21に電流を供給する。
【0017】
演算部40は、電流検出部30によって検出された電流値を基に、コア22と永久磁石10との相対位置関係を演算して、搬送装置1内における永久磁石10の位置を演算する。また、演算部40は、この演算した永久磁石10の位置情報を用いて、駆動回路50から永久磁石10の駆動に必要な電流を供給するタイミングを決定し、適切な巻線21に電流を供給させる。
【0018】
次に、
図2乃至
図4を用いて、電磁反発力を有効に活用する手法について説明する。本実施例は、永久磁石10の直径、磁極25aと磁極25bのピッチ、ギャップ長の比が、5:4:1の場合を示している。
【0019】
図2は、永久磁石10と2つの磁極25aと磁極25bの概略を示す模式図である。ただし、x=0は磁極25aの直上、x=Aは磁極25bの直上を表し、永久磁石10は
図2のX軸正方向に向かって移動する。搬送装置1では、巻線21に電流を流すことにより、永久磁石10に電磁力を作用させ、磁極25間を移動させる。電磁力を効率よく作用させるたり、所望の方向に移動させたりするためには、永久磁石10と磁極25の相対位置情報が必要となる。
【0020】
例えば、永久磁石10が磁極25aの直上にある場合、その直下の磁極25aの巻線21aに永久磁石の磁束90と逆向きの磁束80aを発生するように電流を流しても、搬送方向への力が発生しない。逆に、永久磁石10が直上に配置されていない磁極25bの巻線21bに、永久磁石10の磁束90と同じ向きの磁束80bを発生する電流を流すことにより、永久磁石10を磁極25bに引き寄せる電磁吸引力を発生させることができる。
【0021】
また、永久磁石10が磁極25aの直上から移動した際、永久磁石10と逆向きの磁束80aを発生するように磁極25aの巻線21aに電流を流すことで、永久磁石10を磁極25bに押し出す電磁反発力を発生させることができる。つまり、電磁力を効率よく作用させ、しかも電磁力を所望の方向に制御できることになる。
【0022】
図3は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)による推力と、巻線21bに+1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)による推力を示している。なお、
図3の推力は、永久磁石10がx=0からx=Aの区間に存在するときのものある。また、x=pは、巻線21aに所定電流を流したときに発生する電磁反発力(a)
による推力と、巻線21bに所定電流を流したときに発生する電磁吸引力(b)
による推力と、が等しくなる位置である。ただし、この位置x=pは、磁気回路の構造や永久磁石の構成により変動する。
【0023】
x=0とx=pの間では、巻線21bに1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)に比べ大きい。一方、x=pからx=Aの間では、巻線21bに1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)が、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)に比べ小さい。したがって、x=pからx=Aの間では、巻線21aに-1.0p.u.の電流を流し、電磁反発力(a)を主な推力として利用することで、消費電力を抑制しつつ、推力を効率よく高めることができる。
【0024】
図4は、永久磁石10の位置に対する巻線21aおよび巻線21bの電流波形を示している。本実施例では、x=pで電磁吸引力(b)と電磁反発力(a)の大きさが入れ替わる。したがって、
図4に示すように、x=0からx=pでは、永久磁石10を引き寄せる電磁吸引力(b)が発生する電流を巻線21bに流し、x=pからx=Aでは、永久磁石10を押し出す電磁反発力(a)が発生する電流を巻数21aに流す。このように、永久磁石の位置に応じて、電磁吸引力と電磁反発力を使い分けることにより、無駄な電流損失を抑制して効率よく推力を得ることができる。
【0025】
ここで、巻線21aに電流を流す区間と、巻線21bに電流を流す区間と、は重なっていても良い。その場合は、巻線21aと巻線21bに同時に通電する区間で、より大きな電磁力を得ることが可能となる。また、巻線21aに電流を流す区間と巻線21bに電流を流す区間との間に、いずれの巻線にも電流が流れていない区間があっても良い。その場合、いずれの巻線にも電流が流れていない区間においては、永久磁石10は慣性によって移動することになり、消費電力を削減できる。
【0026】
また、永久磁石10がx=0の位置にあるときに起動した場合、最初のx=0からx=pの区間において、まず電磁吸引力を作用させて搬送の方向を定め、その後に電磁反発力も推力として使うので、永久磁石10を所望の方向へ確実に移動させることができる。さらに、永久磁石10に推力を与えるに際し、互いに隣接する2つの磁極であって、永久磁石10との距離が最も近い磁極と次に近い磁極を用いているので、大きな電磁吸引力と電磁反発力を発生させることが可能である。
【0027】
<実施例2>
本発明の実施例2について、
図5乃至
図6を用いて説明する。電磁吸引力と電磁反発力の大小関係は、永久磁石10の直径、磁極25aと磁極25bのピッチ、ギャップ長により変化する。そのため、搬送装置1の構造によっては、電磁吸引力と電磁反発力の大小関係の入れ替わる点が2つ以上存在する場合がある。本実施例は、磁石の直径、磁極25aと磁極25bのピッチ、ギャップ長の比が1:2:1の場合を示している。
【0028】
図5は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)による推力と、巻線21bに+1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)による推力を示している。なお、
図5の推力は、永久磁石がx=0からx=Aの区間に存在するときのものである。また、x=pとx=p’は、巻線21aに所定電流を流したときに発生する電磁反発力(a)
による推力と、巻線21bに所定電流を流したときに発生する電磁吸引力(b)
による推力と、が等しくなる位置である。
【0029】
x=0とx=pの間では、永久磁石10が磁極25aの直上付近に存在するため、巻線21bに1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)に比べ大きい。次に、x=pからx=p’の間では、巻線21bに1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)に比べ小さい。そして、x=p’からx=Aの間では、巻線21bに1.0p.u.流した際の電磁吸引力(b)は、巻線21aに-1.0p.u.流した際の電磁反発力(a)に比べ大きい。したがって、x=0からx=pの間と、x=p’とx=Aの間では、主に巻線21bに電流を流し、電磁吸引力(b)で主な推力を得るのが望ましい。一方で、x=pとx=p’の間では、主に巻線21aに電流を流し、電磁反発力(a)で主な推力を得るのが望ましい。
【0030】
図6は、永久磁石10の位置に対する巻線21aおよび巻線21bの電流波形を示している。本実施例では、x=pとx=p’で電磁吸引力(b)と電磁反発力(a)の大きさが入れ替わる。したがって、
図6に示すように、x=0からx=pおよびx=p’からx=Aでは、電磁吸引力(b)を発生させるために巻線21bに電流を流し、x=pからx=p’では、電磁反発力(a)を発生させるために巻線21aに電流を流す。このように、永久磁石10の位置に応じて、電磁吸引力と電磁反発力を使い分けることにより、無駄な電流損失を抑制して効率よく推力を得ることができる。
【0031】
<実施例3>
本発明の実施例3について、
図7を用いて説明する。
図7は、巻線21の巻数を実施例1の半分とした場合における、電磁反発力(a)による推力と、電磁吸引力(b)による推力と、電磁反発力(a)および電磁吸引力(b)の合成による推力(c)を示したものである。ここで、電磁反発力(a)は巻線21aに-1.0p.u.流すことで発生させたものであり、電磁吸引力(b)は、巻線21bに+1.0p.u.流すことで発生させたものである。なお、(b)’は、実施例1における電磁吸引力による推力(b)’を、比較のために示したものである。
【0032】
一般に、巻数を減少させると、同じ電流で発生する起磁力が減少し、巻線21が発生させる推力は減少する。そこで、本実施例では、x=0からx=Aの区間で、巻線21aに-1.0p.u.を流して電磁反発力(a)を発生させるのと同時に、巻線21bに1.0p.u.を流して電磁吸引力(b)を発生するようにした。これにより、実施例1における電磁吸引力による推力(b)’と、ほぼ同様の特性の推力(c)が得られる。つまり、本実施例によれば、巻数を減少させても、電磁吸引力(b)と電磁反発力(a)を併用することで、巻数を半減する前と同等の起磁力が得られる。したがって、推力を低下させずに、巻線を減少させて磁気回路を短くし、小型・軽量化した搬送装置が実現できる。
【0033】
なお、電磁吸引力と異なり、電磁反発力によって得られる推力は、特定の方向に定まらないため、電磁反発力だけで推力を得ると、検体が蛇行したり、検体が搬送経路から逸脱したりする可能性がある。このため、電磁反発力を作用させる際には、電磁吸引力も常に作用させ、かつ、電磁吸引力による推力が電磁反発力による推力よりも常に大きくなるように制御するのが望ましい。
【0034】
<実施例4>
本実施例は、上述の実施例1乃至実施例3で述べた搬送装置を、検体分析装置100および検体前処理装置150に適用したものである。最初に、検体分析装置100の全体構成について、
図8を用いて説明する。
図8は、検体分析装置100の全体構成を概略的に示す図である。
【0035】
図8において、検体分析装置100は、反応容器に検体と試薬を各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定する装置であり、搬入部101、緊急ラック投入口113、第1搬送ライン102、バッファ104、分析部105、収納部103、表示部118、制御部120等を備える。
【0036】
搬入部101は、血液や尿などの生体試料を収容する検体容器122が複数収納された検体ラック111を設置する場所である。緊急ラック投入口113は、標準液を搭載した検体ラック(キャリブラック)や緊急で分析が必要な検体が収容された検体容器122を収納する検体ラック111を装置内に投入するための場所である。バッファ104は、検体ラック111中の検体の分注順序を変更可能なように、第1搬送ライン102によって搬送された複数の検体ラック111を保持する。分析部105は、バッファ104から第2搬送ライン106を経由して搬送された検体を分析するものであり、詳細は後述する。収納部103は、分析部105で分析が終了した検体を保持する検体容器122が収容された検体ラック111を収納する。表示部118は、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度の分析結果を表示するための表示機器である。制御部120は、コンピュータ等から構成され、検体分析装置100内の各機構の動作を制御するとともに、血液や尿等の検体中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0037】
ここで、第1搬送ライン102は、搬入部101に設置された検体ラック111を搬送するラインであり、上述の実施例1乃至実施例3で述べた搬送装置のいずれかと同等の構成である。本実施例では、磁性体、好適には永久磁石は、被搬送体である検体ラック111の裏面側に設けられている。
【0038】
また、分析部105は、第2搬送ライン106、反応ディスク108、検体分注ノズル107、試薬ディスク110、試薬分注ノズル109、洗浄機構112、試薬トレイ114、試薬IDリーダー115、試薬ローダ116、分光光度計121等により構成される。
【0039】
ここで、第2搬送ライン106は、バッファ104中の検体ラック111を分析部105に搬入するラインであり、上述の実施例1乃至実施例3で述べた搬送装置のいずれかと同等の構成である。
【0040】
また、反応ディスク108は、複数の反応容器を備えている。検体分注ノズル107は、回転駆動や上下駆動により検体容器122から反応ディスク108の反応容器に検体を分注する。試薬ディスク110は、複数の試薬を架設する。試薬分注ノズル109は、試薬ディスク110内の試薬ボトルから反応ディスク108の反応容器に試薬を分注する。洗浄機構112は、反応ディスク108の反応容器を洗浄する。分光光度計121は、光源(図示省略)から反応容器の反応液を介して得られる透過光を測定することにより、反応液の吸光度を測定する。試薬トレイ114は、検体分析装置100内への試薬登録を行う場合に、試薬を設置する部材である。試薬IDリーダー115は、試薬トレイ114に設置された試薬に付された試薬IDを読み取ることで試薬情報を取得するための機器である。試薬ローダ116は、試薬を試薬ディスク110へ搬入する機器である。
【0041】
上述のような検体分析装置100による検体の分析処理は、以下の順に従い実行される。
【0042】
まず、検体ラック111が搬入部101または緊急ラック投入口113に設置され、第1搬送ライン102によって、ランダムアクセスが可能なバッファ104に搬入される。
【0043】
検体分析装置100は、バッファ104に格納されたラックの中で、優先順位のルールに従い、最も優先順位の高い検体ラック111を第2搬送ライン106によって、分析部105に搬入する。
【0044】
分析部105に到着した検体ラック111は、さらに第2搬送ライン106によって反応ディスク108近くの検体分取位置まで移送され、検体分注ノズル107によって検体を反応ディスク108の反応容器に分取される。検体分注ノズル107により、当該検体に依頼された分析項目に応じて、必要回数だけ検体の分取を行う。
【0045】
検体分注ノズル107により、検体ラック111に搭載された全ての検体容器122に対して検体の分取を行う。全ての検体容器122に対する分取処理が終了した検体ラック111を、再びバッファ104に移送する。さらに、自動再検を含め、全ての検体分取処理が終了した検体ラック111を、第2搬送ライン106および第1搬送ライン102によって収納部103へと移送する。
【0046】
また、分析に使用する試薬を、試薬ディスク110上の試薬ボトルから試薬分注ノズル109により先に検体を分取した反応容器に対して分取する。続いて、撹拌機構(図示省略)で反応容器内の検体と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0047】
その後、光源から発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器を透過させ、透過光の光度を分光光度計121により測定する。分光光度計121により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介して制御部120に送信する。そして制御部120によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部118等にて表示させたり、記憶部(図示省略)に記憶させたりする。
【0048】
なお、検体分析装置100は、上述したすべての構成を備えている必要はなく、前処理用のユニットを適宜追加したり、一部ユニットや一部構成を削除したりできる。この場合も、分析部105と搬入部101との間を第1搬送ライン102により接続し、搬入部101から検体ラック111を搬送する。
【0049】
次に、検体前処理装置150の全体構成について、
図9を用いて説明する。
図9は、検体前処理装置150の全体構成を概略的に示す図である。
【0050】
図9において、検体前処理装置150は、検体の分析に必要な各種前処理を実行する装置である。
図9の左側から右側に向けて、閉栓ユニット152、検体収納ユニット153、空きホルダスタッカー154、検体投入ユニット155、遠心分離ユニット156、液量測定ユニット157、開栓ユニット158、子検体容器準備ユニット159、分注ユニット165、移載ユニット161を基本要素とする複数のユニットと、これら複数のユニットの動作を制御する操作部PC163とから構成されている。また、検体前処理装置150で処理された検体の移送先として、検体の成分の定性・定量分析を行うための検体分析装置100が接続されている。
【0051】
検体投入ユニット155は、検体が収容された検体容器122を検体前処理装置150内に投入するためのユニットである。遠心分離ユニット156は、投入された検体容器122に対して遠心分離を行うためのユニットである。液量測定ユニット157は、検体容器122に収容された検体の液量測定を行うユニットである。開栓ユニット158は、投入された検体容器122の栓を開栓するユニットである。子検体容器準備ユニット159は、投入された検体容器122に収容された検体を次の分注ユニット165において分注するために必要な準備を行うユニットである。分注ユニット165は、遠心分離された検体を、検体分析システムなどで分析するために小分けを行うとともに、小分けされた検体容器(子検体容器)122にバーコード等を貼り付けるユニットである。移載ユニット161は、分注された子検体容器122の分類を行い、検体分析システムへの移送準備を行うユニットである。閉栓ユニット152は、検体容器122や子検体容器122に栓を閉栓するユニットである。検体収納ユニット153は、閉栓された検体容器122を収納するユニットである。
【0052】
ここで、検体前処理装置150においては、検体容器122を1つずつ保持する検体ホルダ(図示せず)が、第3搬送ライン(図示せず)によって各処理ユニット間で搬送されている。そして、移載ユニット161では、検体前処理装置150における第3搬送ラインでの検体容器122の搬送に用いる検体ホルダと、検体分析装置100における第1搬送ライン102での検体容器122の搬送に用いる検体ラック111(5つの検体容器122を搭載する)と、の間で検体容器122の移載が行われる。つまり、検体前処理装置150での前処理が終了した検体容器122は、移載ユニット161を介して、検体分析装置100における第1搬送ライン102に搬出される。
【0053】
なお、検体前処理装置150は、上述したすべての構成を備えている必要はなく、更にユニットを追加したり、一部ユニットや一部構成を削除したりすることができる。また、
図9に示すように、検体前処理装置150と検体分析装置100を組み合わせた検体分析システム200であってもよい。この場合は、各装置内だけではなく、装置と装置との間を上述した実施例1乃至実施例3で述べた搬送装置にて接続し、検体容器122を搬送できる。
【0054】
本実施例の検体分析装置100や検体前処理装置150、さらにはこれらを組み合わせたシステムでは、実施例1乃至実施例3のような搬送装置を備えているので、検体ラック111や検体ホルダを、無駄な電流損失を抑制して効率よく搬送できる。
【0055】
<その他>
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上述の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0056】
例えば、実施例1乃至実施例4では、搬送装置で搬送する被搬送体が検体ラック111や検体ホルダである場合について説明したが、被搬送体は検体容器122を保持するラック、ホルダに限られず、大規模な搬送が求められる様々な物体を搬送対象にできる。
【符号の説明】
【0057】
1…搬送装置、10…永久磁石(第1磁性体)、11…搬送面、21,21a,21b…巻線、22,22a,22b…コア(第2磁性体)、25,25a,25b…磁極(磁気回路)、30…電流検出部、40…演算部、50…駆動回路、55…電源、80…電流の作る磁束の向き、90…永久磁石の磁束の向き、100…検体分析装置、101…搬入部、102…第1搬送ライン、103…収納部、104…バッファ、105…分析部、106…第2搬送ライン、107…検体分注ノズル、108…反応ディスク、109…試薬分注ノズル、110…試薬ディスク、111…検体ラック(被搬送体)、112…洗浄機構、113…緊急ラック投入口、114…試薬トレイ、115…試薬IDリーダー、116…試薬ローダ、118…表示部、120…制御部、121…分光光度計、122…検体容器,子検体容器、150…検体前処理装置、152…閉栓ユニット、153…検体収納ユニット、154…ホルダスタッカー、155…検体投入ユニット、156…遠心分離ユニット、157…液量測定ユニット、158…開栓ユニット、159…子検体容器準備ユニット、161…移載ユニット、163…操作部PC、165…分注ユニット、200…検体分析システム