(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20231120BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231120BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20231120BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20231120BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20231120BHJP
B28D 7/00 20060101ALI20231120BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B24B27/06 J
B24B49/10
B24B45/00 A
B23Q17/00 D
B23Q17/00 B
B28D1/24
B28D7/00
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019214138
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】新田 秀次
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 治信
(72)【発明者】
【氏名】松下 嘉男
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023139(JP,A)
【文献】特開2009-255242(JP,A)
【文献】特開2009-194326(JP,A)
【文献】特開2013-188836(JP,A)
【文献】特開2018-094682(JP,A)
【文献】特開2010-140308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 49/10
B24B 45/00
B23Q 17/00
B28D 1/24
B28D 7/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置であって、
該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、
該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、
該連通路には圧力計が配設され、該圧力計には制御手段が接続されており、
該制御手段は、該切削ブレードを該マウントに装着する前の該圧力計の値が第一の所定値未満の場合は、該吸引孔に異物が詰まっていると判断して異物の除去を指示する吸引チェック機能と、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第一の所定値よりも小さい第二の所定値に達しない場合は該回転軸の回転開始を阻止し、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第二の所定値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容する装着チェック機能と、を備え
、
該制御手段は、該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値未満の場合は該装着チェック機能の実行を阻止し、かつ該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値以上の場合は該装着チェック機能の実行を許容する切削装置。
【請求項2】
操作パネルを備え、該吸引チェック機能が終了した後、該吸引チェック機能のボタンの色が変化する請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、保持手段と切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
本出願人は、切削ブレードをナットでマウントに締結する際に必要な特殊工具の回避、切削ブレードをナットでマウントに締結する際の個人差の回避、を可能にした切削装置を提案した(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、保持手段と切削手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含む。切削手段は、回転軸と、回転軸を回転可能に支持するハウジングと、回転軸の先端に形成され切削ブレードを保持するマウントとを備える。マウントは、切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、ボス部の外周に形成され切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、ボス部と支持部との間に開口し切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、吸引孔を吸引源に連通する連通路とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マウントと切削ブレードとの間に異物が介在し充分な吸引力が得られない状態で切削ブレードを回転させて切削加工を施すとウエーハおよび切削ブレードを損傷させるという問題がある。
【0007】
また、マウントに形成された切削ブレードを吸引保持する吸引孔に異物が詰まっていると吸引圧力が適正な値でも切削ブレードを充分に保持できず、切削ブレードを回転させて切削加工を施すと上記同様にウエーハおよび切削ブレードを損傷させるという問題がある。
【0008】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、ウエーハおよび切削ブレードを損傷させることがない切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために以下の切削装置を提供する。すなわち、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置であって、該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、該連通路には圧力計が配設され、該圧力計には制御手段が接続されており、該制御手段は、該切削ブレードを該マウントに装着する前の該圧力計の値が第一の所定値未満の場合は、該吸引孔に異物が詰まっていると判断して異物の除去を指示する吸引チェック機能と、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第一の所定値よりも小さい第二の所定値に達しない場合は該回転軸の回転開始を阻止し、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第二の所定値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容する装着チェック機能と、を備え、該制御手段は、該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値未満の場合は該装着チェック機能の実行を阻止し、かつ該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値以上の場合は該装着チェック機能の実行を許容する切削装置を本発明は提供する。
【0010】
好ましくは、操作パネルを備え、該吸引チェック機能が終了した後、該吸引チェック機能のボタンの色が変化する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、該連通路には圧力計が配設され、該圧力計には制御手段が接続されており、該制御手段は、該切削ブレードを該マウントに装着する前の該圧力計の値が第一の所定値未満の場合は、該吸引孔に異物が詰まっていると判断して異物の除去を指示する吸引チェック機能と、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第一の所定値よりも小さい第二の所定値に達しない場合は該回転軸の回転開始を阻止し、該切削ブレードを該マウントに装着した後の該圧力計の値が該第二の所定値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容する装着チェック機能と、を備え、該制御手段は、該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値未満の場合は該装着チェック機能の実行を阻止し、かつ該吸引チェック機能を実行した際の該圧力計の値が該第一の所定値以上の場合は該装着チェック機能の実行を許容するので、ウエーハおよび切削ブレードを損傷させることがない。また、本発明の切削装置においては、切削ブレードをマウントに装着する前に、マウントに形成された吸引孔に異物が詰まっている場合は、圧力計で異物の詰まりが検出され異物の除去が指示されるので、切削ブレードをマウントに装着した際の圧力計の値が適正であっても切削ブレードが十分に保持できておらず、切削ブレードを回転させて切削加工を施したときにウエーハおよび切削ブレードを損傷させるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って構成された切削装置の一部斜視図。
【
図2】(a)
図1に示す切削手段の一部斜視図、(b)(a)に示す状態から可動部を跳ね上げた状態を示す斜視図、(c)(b)に示す状態から切削ブレードを取り外した状態を示す斜視図。
【
図3】切削ブレードをマウントに装着する前における
図1に示す切削手段の一部断面図。
【
図4】切削ブレードをマウントに装着した後における
図1に示す切削手段の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された切削装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示す切削装置2は、被加工物を保持する保持手段4と、保持手段4に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段6と、保持手段4と切削手段6とを相対的に加工送りする送り手段8と、を含む。なお、
図1には、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向がそれぞれ矢印X、Y、Zで示されている。X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0015】
保持手段4は、X軸方向に移動自在に基板12に搭載されたX軸可動板14と、X軸可動板14の上面に固定された支柱16と、支柱16の上端に固定されたカバー板18とを備える。カバー板18には円形開口18aが形成され、円形開口18aを通って上方に延びるチャックテーブル20が支柱16の上端に回転自在に搭載されている。チャックテーブル20は、支柱16に内蔵されたチャックテーブル用モータ(図示していない。)によって上下方向に延びる軸線を中心として回転される。
【0016】
チャックテーブル20の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形状の吸着チャック22が配置されている。そして、チャックテーブル20においては、吸引手段で吸着チャック22の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック22の上面に載せられた被加工物を吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル20の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ24が配置されている。
【0017】
図示の実施形態の切削手段6は、互いにY軸方向に間隔をおいて切削ブレードが対向するように2個配設された第一の切削手段6aおよび第二の切削手段6bを有している。図示の実施形態の切削手段6においては、保持手段4に保持された被加工物を2個の切削ブレードによって同時に切削加工を施すことができるようになっている。
図2ないし
図4を参照して説明すると、第一の切削手段6aは、回転軸26(
図3および
図4参照)と、回転軸26を回転可能に支持するハウジング28と、回転軸26の先端に形成され切削ブレード30を保持するマウント32と、から少なくとも構成されている。
【0018】
回転軸26の他端には、回転軸26を回転させるためのモータ(図示していない。)が連結されている。
図2に示すとおり、ハウジング28の先端にはブレードカバー34が装着されている。ブレードカバー34は、ハウジング28の先端に固定された主部36と、主部36に揺動自在に支持された可動部38とを含む。切削ブレード30は、円筒状の基台40と、基台40の片側面の外周部に装着された環状の切り刃42とを有する。基台40の中央部には円形状の開口40aが形成されている。なお、
図3および
図4においては、便宜上、ブレードカバー34を省略している。
【0019】
図3および
図4を参照して説明を続けると、マウント32は、切削ブレード30の中央に形成された開口40aに挿入されるボス部44と、ボス部44の外周に形成され切削ブレード30の切り刃42を露出させて支持するリング状の支持部46と、ボス部44と支持部46との間に開口し切削ブレード30を吸引保持する吸引孔50と、吸引孔50を吸引源52に連通する連通路54とを含む。
【0020】
ボス部44は円柱状に形成されており、ボス部44の直径は切削ブレード30の基台40の開口40aの直径に対応している。支持部46の外径は切削ブレード30の切り刃42の外径よりも小さく、マウント32に切削ブレード30が装着された際に、マウント32から切り刃42が露出するようになっている。また、支持部46のY軸方向先端面は、ボス部44のY軸方向先端面よりも後退している。
【0021】
ボス部44と支持部46との間には、支持部46の先端よりもY軸方向に更に後退した環状凹所48が設けられており、この環状凹所48には、切削ブレード30を吸引保持するための吸引孔50が形成されている。図示の実施形態のマウント32には一対の吸引孔50が設けられている。吸引孔50は1個でもよいが、回転バランスを良好にするために等角度間隔で2個以上形成されているのが好ましい。
図3および
図4に示すとおり、各吸引孔50は吸引源52に連通路54を介して連通している。連通路54には、連通路54内の圧力を計測する圧力計56と、連通路54を開閉するためのバルブ58とが配設されている。そして、マウント32においては、バルブ58を開けた状態で吸引源52を作動することにより、ボス部44に嵌め合わされた切削ブレード30を吸引保持するようになっている。
【0022】
また、第一の切削手段6aは、
図1に示すとおり、Y軸方向に移動自在に適宜の支持部材(図示していない。)に支持されたY軸可動片60と、Z軸方向に移動自在にY軸可動片60に支持されたZ軸可動片62とを含む。Z軸可動片62の下端には、上記ハウジング28が固定されている。なお、第二の切削手段6bについては、第一の切削手段6aと同一の構成でよいので第一の切削手段6aの構成と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
図2に示すとおり、図示の実施形態の切削装置2は、切削ブレード30と被加工物に切削水を供給する切削水供給手段63を備える。切削水供給手段63は、ブレードカバー34の主部36に付設された円筒状の供給口63aと、供給口63aに連通する一対のノズル63bとを含む。供給口63aは切削水供給源(図示していない。)に連通しており、供給口63aと切削水供給源とを連通する水路(図示していない。)には、この水路を開閉するバルブ(図示していない。)が設けられている。
図2(b)および
図2(c)に示すとおり、ノズル63bには複数の噴射孔63cが形成されている。そして、切削水供給手段63においては、保持手段4に保持された被加工物に切削手段6によって切削加工を施す際に、切削水供給源から供給口63aに供給された切削水をノズル63bの噴射孔63cから切削水を切削ブレード30および被加工物に向かって噴射するようになっている。
【0024】
図3および
図4に示すとおり、圧力計56には、切削装置2の作動を制御する制御手段64が電気的に接続されており、圧力計56で計測した値が制御手段64に送られるようになっている。コンピュータから構成されている制御手段64は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを有する(いずれも図示していない。)。
【0025】
制御手段64は、切削ブレード30をマウント32に装着する前の圧力計56の値が第一の所定値(たとえば、絶対圧0.09MPa程度)未満の場合は、マウント32の吸引孔50に異物が詰まっていると判断して異物の除去を指示する吸引チェック機能と、切削ブレード30をマウント32に装着した後の圧力計56の値が第一の所定値よりも小さい第二の所定値(たとえば、絶対圧0.03MPa程度)に達しない場合は回転軸26の回転開始を阻止し、切削ブレード30をマウント32に装着した後の圧力計56の値が第二の所定値に達した場合は回転軸26の回転開始を許容する装着チェック機能と、を備える。
【0026】
制御手段64には、操作指示等を入力するための操作パネル66が電気的に接続されている。操作パネル66は、たとえば、タッチパネルやキーボードから構成され得る。
図3および
図4に示すとおり、操作パネル66には、吸引チェック機能の開始を制御手段64に指示するための吸引チェック開始ボタン68と、装着チェック機能の開始を制御手段64に指示するための装着チェック開始ボタン70とが表示されている。
【0027】
制御手段64は、吸引チェック機能を実行した際の圧力計56の値が第一の所定値未満の場合は装着チェック機能の実行を阻止し、かつ吸引チェック機能を実行した際の圧力計56の値が第一の所定値以上の場合は装着チェック機能の実行を許容するようになっているのが好適である。これによって、吸引孔50から異物の除去がなされないまま、装着チェック機能が実行されてしまうことが防止される。
【0028】
たとえば、制御手段64は、吸引チェック機能が実行された際の圧力計56の値が第一の所定値以上でなければ、装着チェック開始ボタン70が押されても装着チェック機能を実行しないように設定され得る。あるいは、操作パネル66がタッチパネルである場合には、吸引チェック機能が実行された際の圧力計56の値が第一の所定値以上でなければ、制御手段64は装着チェック開始ボタン70を操作パネル66に表示させないようになっていてもよい。
【0029】
図示の実施形態の送り手段8は、
図1に示すとおり、X軸送り手段72と、基台12をまたいで配設された門型フレーム(図示せず)に配設された第一・第二のY軸送り手段74a、74bと、第一・第二のZ軸送り手段76a、76bとを含む。X軸送り手段72は、X軸可動板14に連結されX軸方向に延びるボールねじ78と、ボールねじ78を回転させるモータ80とを有する。そして、X軸送り手段72は、ボールねじ78によりモータ80の回転運動を直線運動に変換してX軸可動板14に伝達し、切削手段6に対して保持手段4をX軸方向に相対的に加工送りする。
【0030】
第一のY軸送り手段74aは、Y軸可動片60に連結されY軸方向に延びるボールねじ82と、ボールねじ82を回転させるモータ84とを有する。そして、第一のY軸送り手段74aは、ボールねじ82によりモータ84の回転運動を直線運動に変換してY軸可動片60に伝達し、保持手段4に対して第一の切削手段6aをY軸方向に相対的に加工送り(割り出し送り)する。また、第一のY軸送り手段74aにおいてはモータ84がボールねじ82のY軸方向一端部に接続されている一方、第二のY軸送り手段74bにおいてはモータ84がボールねじ84のY軸方向他端部に接続されている点を除き、第二のY軸送り手段74bは第一のY軸送り手段74aと同一の構成でよい。そして、第二のY軸送り手段74bは、保持手段4に対して第二の切削手段6bをY軸方向に相対的に加工送り(割り出し送り)する。
【0031】
第一のZ軸送り手段76aは、Z軸可動片62に連結されZ軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ86とを有する。そして、第一のZ軸送り手段76aは、ボールねじによりモータ86の回転運動を直線運動に変換してZ軸可動片62に伝達し、保持手段4に対して第一の切削手段6aをZ軸方向に相対的に加工送り(切り込み送り)する。また、第一のZ軸送り手段76aと同一の構成でよい第二のZ軸送り手段76bは、保持手段4に対して第二の切削手段6bをZ軸方向に相対的に加工送り(切り込み送り)する。
【0032】
上述したとおりの切削装置2を用いて切削加工を行う際は、まず、制御手段64の吸引チェック機能を実行させ、吸引孔50に異物が詰まっていないかどうか、すなわち、適正な吸引保持力で切削ブレード30がマウント32に吸引保持され得るか否かをチェックする。
【0033】
吸引チェック機能を実行する前には、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の切削ブレード30をマウント32から外した状態で、バルブ58を開けると共に吸引源52を作動させる。そして、操作パネル66の吸引チェック開始ボタン68を押して吸引チェック機能を実行させる。そうすると、圧力計56が計測した連通路54内の圧力の値が制御手段64に送られる。
【0034】
吸引チェック機能を実行する際は、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の切削ブレード30をマウント32から外した状態であることから、吸引孔50に異物が詰まっていなければ、吸引源52を作動させても連通路54内の圧力は大気圧に近い第一の所定値(たとえば、絶対圧0.09MPa程度)となる。したがって、制御手段64に送られた圧力計56の値が第一の所定値未満の場合、制御手段64は、マウント32の吸引孔50に異物が詰まっていると判断し、適正な吸引保持力で切削ブレード30がマウント32に吸引保持されないおそれがあるので、吸引孔50からの異物の除去を指示する旨の表示を操作パネル66に表示させる。
【0035】
一方、制御手段64に送られた圧力計56の値が第一の所定値以上の場合、制御手段64は、マウント32の吸引孔50に異物が存在せず、適正な吸引保持力で切削ブレード30がマウント32に吸引保持され得ると判断して、マウント32に切削ブレード30を装着可能である旨の表示を操作パネル66に表示させると共に、吸引チェック機能を終了する。
【0036】
吸引チェック機能を終了する前においては、
図3に示すとおり、操作パネル66の吸引チェック開始ボタン68が操作パネル66において比較的目立つ色(たとえば黄色等)に表示され、吸引チェック機能が終了すると(切削ブレード30をマウント32に装着可能である旨が表示されると)、
図4に示すとおり、吸引チェック開始ボタン68が操作パネル66において比較的目立たない色(たとえば灰色等)に表示されるようになっているのが好ましい。
【0037】
制御手段64の吸引チェック機能を実行させた後、制御手段64の装着チェック機能を実行させ、適正な吸引保持力で切削ブレード30がマウント32に吸引保持されたか否かをチェックする。
【0038】
装着チェック機能チェックを実行する前には、吸引源52の作動を停止させ、あるいはバルブ58を閉じた状態で、切削ブレード30の開口40aをマウント32のボス部44に嵌め合わせる。次いで、吸引源52を作動させ、あるいはバルブ58を開けて、マウント32の吸引孔50に吸引力を生成し、切削ブレード30をマウント32に吸引保持(装着)させる。そして、操作パネル66の装着チェック開始ボタン70を押して装着チェック機能を実行させる。そうすると、圧力計56が計測した連通路54内の圧力の値が制御手段64に送られる。
【0039】
制御手段64に送られた圧力計56の値が、第一の所定値よりも小さい第二の所定値(たとえば、絶対圧0.03MPa程度)に達しない場合、制御手段64は、マウント32と切削ブレード30との間に異物等が介在していると判断して、回転軸26の回転開始を阻止する。マウント32と切削ブレード30との間に異物等が介在していると、マウント32と切削ブレード30との間に隙間が生じ、この隙間から連通路54内に空気が流入するため、連通路54内の圧力が第二の所定値まで下がらず、マウント32が切削ブレード30を保持する吸引力が所要値に達することがない。したがって、圧力計56が計測した値が第二の所定値に達しない場合、制御手段64は回転軸26の回転開始を阻止する。
【0040】
一方、マウント32と切削ブレード30との間に異物等が介在していない場合、切削ブレード30をマウント32に吸引保持(装着)させた際に、マウント32の支持部46と切削ブレード30とが密着することになる。そうすると、連通路54内の圧力が第二の所定値まで下がり、所要の吸引力で切削ブレード30がマウント32に保持される。したがって、圧力計56が計測した値が第二の所定値に達した場合、制御手段64は回転軸26の回転開始を許容する。なお、装着チェック機能は、第一・第二の切削手段6a、6bについて別々に実行してもよく、同時に実行してもよい。
【0041】
以上のとおりであり、図示の実施形態の切削装置2においては、制御手段64の装着チェック機能により、切削ブレード30をマウント32に装着した後の圧力計56の値が第二の所定値に達しない場合は回転軸26の回転開始が阻止され、切削ブレード30をマウント32に装着した後の圧力計56の値が第二の所定値に達した場合は回転軸26の回転開始が許容されるので、マウント32と切削ブレード30との間に異物が介在し充分な吸引力が得られない場合には切削加工が開始されないため、ウエーハおよび切削ブレード30を損傷させることがない。
【0042】
また、図示の実施形態の切削装置2においては、制御手段64の吸引チェック機能により、切削ブレード30をマウント32に装着する前に、マウント32に形成された吸引孔50に異物が詰まっている場合は、圧力計56で異物の詰まりが検出され異物の除去が指示されるので、切削ブレード30をマウント32に装着した際の圧力計56の値が適正であっても切削ブレード30が十分に保持できておらず、切削ブレード30を回転させて切削加工を施したときにウエーハおよび切削ブレード30を損傷させるという問題が発生することがない。
【0043】
なお、図示の実施形態の切削装置2において切削手段6を2個備える例を説明したが、切削手段6は1個であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
2:切削装置
4:保持手段
6:切削手段
6a:第一の切削手段
6b:第二の切削手段
8:送り手段
26:回転軸
28:ハウジング
30:切削ブレード
32:マウント
42:切り刃
44:ボス部
46:支持部
50:吸引孔
52:吸引源
54:連通路
56:圧力計
64:制御手段
66:操作パネル