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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】耐寒性ポリウレタン製剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20231120BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20231120BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/48 033
C08G18/40 018
C08G18/42 008
C08G18/66 003
C08G18/76 057
C08G18/50 021
C08G18/32
C08G101:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019540430
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018051435
(87)【国際公開番号】W WO2018138048
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】17153114.8
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】モーマイアー,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】グラールマン,オノ
(72)【発明者】
【氏名】グリーザー-シュミッツ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンハルト,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】エスラバ,ジュゼップ-ダニエル
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529264(JP,A)
【文献】特表2012-511600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐寒性ポリウレタン断熱材の製造方法であって、
a)ポリイソシアネートを
b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、
c)発泡剤、
d)触媒、
e)可塑剤、及び任意に、
f)さらなる添加剤
と混合して、反応混合物を得、前記混合物を表面に適用し、硬化して断熱材を形成し、
イソシアネート(a)及びイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)、発泡剤(c)、触媒(d)、可塑剤及び任意にさらなる添加剤(e)が、イソシアネート指数が100~200の範囲にあるような量で反応され、
イソシアネートに対して反応性である基を有する前記化合物(b)が、少なくとも1種のポリエーテルオール(b1)、少なくとも1種のポリエーテルオール(b2)、少なくとも1種のポリエステルオール(b3)、並びに、鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)を含み、前記ポリエーテルオール(b1)が、4以上の公称官能価、前記ポリエーテルオール(b1)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、60質量%を超える割合のプロピレンオキシド、及び少なくとも300mg KOH/gのOH価を有し、前記ポリエーテルオール(b2)が、3.5以下の公称官能価、50%を超える割合の第1級OH基及び300mg KOH/g未満のOH価を有し、前記少なくとも1種のポリエステルオール(b3)が、2~2.5の官能価及び100~400mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、前記鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)が60~200g/molの分子量を有する二官能又は三官能アミン及びアルコールであり、
前記ポリエーテルオール(b2)が少なくとも1種のポリエーテルオール(b2a)及び少なくとも1種のポリエーテルオール(b2b)を含み、前記ポリエーテルオール(b2a)が、3.5以下の公称官能価、前記ポリエーテルオール(b2a)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、少なくとも80質量%の割合のエチレンオキシド、80%を超える割合の第1級OH基、及び100mg KOH/g超から300mg KOH/g未満までのOH価を有し、前記ポリエーテルオール(b2b)が、3.5以下の公称官能価、60%を超える割合の第1級OH基、及び20mg KOH/g超から80mg KOH/g未満までのOH価を有し、
含水量が、前記成分(b)~(e)の総質量に基づいて0.5質量%未満である、方法。
【請求項2】
前記ポリエーテルオール(b1)の製造において、エチレンジアミンを出発分子として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリエステルオール(b3)が二酸とジオールとの縮合によって得られ、前記二酸成分が芳香族二酸を含み、前記ジオール成分がジエチレングリコールを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)の化合物の少なくとも1種がアミン末端基を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
いずれの場合にも前記成分(b)の総質量に基づいて、前記成分(b1)の割合が15~35質量%であり、前記成分(b2)の割合が15~35質量%であり、前記成分(b3)の割合が20~35質量%であり、前記成分(b4)の割合が10~35質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成分(b)が、前記成分(b1)~(b4)以外に、20質量%未満のイソシアネートに対して反応性である基を有するさらなる化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
モノマージフェニルメタンジイソシアネート(MMDI)と、2個を超える環を有するジフェニルメタンジイソシアネートの高級同族体との混合物が、ポリイソシアネートとして使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる添加剤(f)が、成分(b)~(e)の総質量に基づいて5~25質量%の難燃剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記難燃剤がトリエチルホスフェートを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物が、噴霧によって前記表面に適用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリウレタン断熱材の密度が30~80g/lであり、物理発泡剤が発泡剤として使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリウレタン断熱材のCTSR係数が1.5を超える、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるポリウレタン断熱材を、船上での液化天然ガスタンクを断熱することに使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐寒性(cold-flexible)ポリウレタン断熱材の製造方法に関し、該方法において、(a)ポリイソシアネートを、(b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、(c)発泡剤、(d)触媒、(e)可塑剤、及び任意に(f)さらなる添加剤と混合し、反応混合物を得、該混合物を表面に適用し硬化して断熱材を形成し、ここで、イソシアネート(a)及びイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)、発泡剤(c)、触媒(d)、可塑剤及び任意にさらなる添加剤(e)が、イソシアネート指数が100~200の範囲にあるような量で反応され、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)が、少なくとも1種のポリエーテルオール(b1)、少なくとも1種のポリエーテルオール(b2)、少なくとも1種のポリエステルオール(b3)、並びに、鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)を含み、ポリエーテルオール(b1)が、4以上の公称官能価(nominal functionality)、ポリエーテルオール(b1)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、60質量%を超える割合のプロピレンオキシド、及び少なくとも300mg KOH/gのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2)が、3.5以下の公称官能価、50%を超える割合の第1級OH基、及び300mg KOH/g未満のOH価を有し、ポリエーテルオール(b2)が少なくとも1種のポリエーテルオール(b2a)及び少なくとも1種のポリエーテルオール(b2b)を含み、ポリエーテルオール(b2a)が、3.5以下の公称官能価、ポリオール(b2a)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、少なくとも80質量%の割合のエチレンオキシド、80%を超える割合の第1級OH基、及び100mg KOH/g超から300mg KOH/g未満までのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2b)が、3.5以下の公称官能価、60%を超える割合の第1級OH基、及び20mg KOH/g超から80mg KOH/g未満までのOH価を有し、含水量が、成分(b)~(e)の総質量に基づいて0.5質量%未満である。さらに、本発明は、本発明による方法によって得ることができるポリウレタン断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は別として、天然ガスは私たちの時代の最も重要なエネルギー源の一つである。天然ガスは、とりわけ乗用車、貨物自動車、航空機などの移動輸送手段で、又は特に船上で、比較的にクリーンなエネルギー源としてこれまで以上にしばしば使用されている。そこでは、特に港湾都市のような人口密集地域だけでなく、北海及びバルト海のような沿岸水域でも、現在海運における主要なエネルギー源として使用されている重質燃料油の燃焼を不要にし、クリーンなエネルギー源として天然ガスを使用することが試みられている。しかしながら、ここでは、通常の条件下で天然ガスが広いスペースを必要とすることが問題となっている。したがって、所要スペースを低下させるために、天然ガスは液化されている。天然ガスは、約-160℃の非常に低い温度でしか液化することができず、また、これらの温度で貯蔵及び輸送しなければならないので、蒸発による液化ガスの損失を低く保つために、タンクを可能な限り断熱することが必要となる。
【0003】
液化天然ガスタンクは、現在、例えば、パーライト又は硬質ポリウレタンフォームをベースとする断熱ボードで断熱されている。したがって、ポリウレタンをベースとする断熱ボード、及び船上での液化天然ガスタンクの断熱にそれらを使用する方法が、例えばEP 1698649、WO 2008083996及びWO 2008/083996に記載されている。これらの文献には、どのように断熱パネルをサイズにカットし、合板シート及び樹脂含浸ガラス繊維マットと一緒に接着接合するかが記載されている。また、これらの要素がその後に、タンクの構築に直接使用されることも記載されている。この方法の欠点は、それが複雑な手順であることである。さらに、利用可能な十分なスペースがないので、それは液化天然ガスのタンクの改造に使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP 1698649
【文献】WO 2008083996
【文献】WO 2008/083996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、特に船上での液化天然ガスタンクの断熱に適し、かつ、容易に取り付けることができるポリウレタン材料を提供することを目的とした。特に、本発明の目的は、例えば船上でのこのようなタンクの改造に、非常に狭い場所で液化天然ガスタンクを断熱する方法を提供することである。得られたポリウレタンは、低温で特に好ましい特性を有し、特にCINI(工業用断熱材委員会(Committee Industrial Insulation))に従って高いCTSR(極低温熱ストレス耐性(cryogenic thermal stress resistance))係数を有すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、耐寒性ポリウレタン断熱材の製造方法によって達成され、該方法において、(a)ポリイソシアネートを、(b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、(c)発泡剤、(d)触媒、(e)可塑剤、及び任意に(f)さらなる添加剤と混合し、反応混合物を得、該混合物を表面に適用し硬化して断熱材を形成し、ここで、イソシアネート(a)及びイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)、発泡剤(c)、触媒(d)、可塑剤及び任意にさらなる添加剤(e)が、イソシアネート指数が100~200の範囲にあるような量で反応され、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)が、少なくとも1種のポリエーテルオール(b1)、少なくとも1種のポリエーテルオール(b2)、少なくとも1種のポリエステルオール(b3)、並びに、鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)を含み、ポリエーテルオール(b1)が、4以上の公称官能価、ポリエーテルオール(b1)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、60質量%を超える割合のプロピレンオキシド、及び少なくとも300mg KOH/gのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2)が、3.5以下の公称官能価、50%を超える割合の第1級OH基、及び300mg KOH/g未満のOH価を有し、ポリエーテルオール(b2)が少なくとも1種のポリエーテルオール(b2a)及び少なくとも1種のポリエーテルオール(b2b)を含み、ポリエーテルオール(b2a)が、3.5以下の公称官能価、ポリオール(b2a)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、少なくとも80質量%の割合のエチレンオキシド、80%を超える割合の第1級OH基、及び100mg KOH/g超から300mg KOH/g未満までのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2b)が、3.5以下の公称官能価、60%を超える割合の第1級OH基、及び20mg KOH/g超から80mg KOH/g未満までのOH価を有し、含水量が、成分(b)~(e)の総質量に基づいて0.5質量%未満である
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的のために、ポリイソシアネート(a)は、1個の分子当たり少なくとも2個の反応性イソシアネート基を含み、すなわち、官能価が少なくとも2である有機化合物である。使用されたポリイソシアネート又は複数のポリイソシアネートの混合物が同一の官能価を有しない場合、使用された成分a)の官能価の数平均が少なくとも2である。ポリイソシアネートa)の平均イソシアネート官能価が、好ましくは少なくとも2.2、特に好ましくは2.2~4である。
【0008】
使用可能なポリイソシアネートa)は、それ自体公知の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び好ましくは芳香族の多官能イソシアネートである。このような多官能イソシアネートは、それ自体公知であるか、又はそれ自体公知の方法で製造することができる。多官能イソシアネートは特に、混合物として使用することもでき、その結果、この場合に成分a)は種々の多官能イソシアネートを含む。ポリイソシアネートとして考慮される多官能イソシアネートは、1個の分子当たり2個(以下、ジイソシアネートと称される)又は2個を超えるイソシアネート基を有する。
【0009】
特に、特定の例は以下である:アルキレンラジカル中に4~12個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート、例えばドデカン1,12-ジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン1,4,2-ジイソシアネートメチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、及び好ましくはヘキサンメチレン1,6-ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えばシクロヘキサン1,3-及び1,4-ジイソシアネート、並びにまた、これらの異性体の任意の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、ヘキサヒドロトリレン2,4-及び2,6-ジイソシアネート、並びにまた、対応する異性体混合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,2’-及び2,4’-ジイソシアネート、並びにまた、対応する異性体混合物、好ましくは芳香族ポリイソシアネート、例えばトリレン2,4-及び2,6-ジイソシアネート、並びに、対応する異性体混合物、ジフェニルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート、並びに、対応する異性体混合物、ジフェニルメタン4,4’-及び2,4’-ジイソシアネートの混合物、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネートとフェニルポリメチレンポリイソシアネート(粗MDI)との混合物、並びに、粗MDIとトリレンジイソシアネートとの混合物。
【0010】
特に好適なポリイソシアネートは、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はp-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン-1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、ブチレン-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び/又は-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、並びに、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネートである。
【0011】
修飾ポリイソシアネート、すなわち、有機ポリイソシアネートの化学反応によって得られ、かつ、1個の分子当たり少なくとも2個の反応性イソシアネート基を有する生成物もしばしば使用されている。特定の例には、しばしば未反応のポリイソシアネートと共に、エステル、ウレア、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、イソシアヌレート、ウレトジオン、カルバメート及び/又はウレタン基を含むポリイソシアネートである。
【0012】
特に好ましくは、成分a)のポリイソシアネートは、2,2’-MDI若しくは2,4’-MDI若しくは4,4’-MDI(モノマージフェニルメタン又はMMDIとも称される)、若しくは2個を超える環を有するMDIの高級同族体(少なくとも3個の芳香族環及び少なくとも3の官能価を有する)からなるオリゴマーMDI、又は2種若しくは3種の上述したジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、又はMDIの製造で得られる粗MDI、又は好ましくは少なくとも1種のMDIのオリゴマーと、少なくとも1種の上述した低分子量MDI誘導体2,2’-MDI、2,4’-MDI若しくは4,4’-MDIとの混合物(ポリマーMDIとも称される)を含む。MDIの異性体及び同族体は通常、粗MDIの蒸留によって得られる。
【0013】
ポリマーMDIは好ましくは、2環MDIに加えて、2を超え、特に3又は4又は5の官能価を有するMDIの多環縮合生成物の1種以上を含む。ポリマーMDIは、知られており、しばしばポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートとも称される。
【0014】
ポリマーMDIを含むポリイソシアネートの(平均)官能価は、約2.2~約4、特に2.4~3.8、特に2.6~3.0の範囲内で変化することができる。異なる官能価を有し、MDIをベースとする多官能イソシアネートのこのような混合物は特に、MDIの製造における中間生成物として得られる粗MDIである。
【0015】
MDIをベースとする多官能イソシアネート又は複数の多官能イソシアネートの混合物は、知られており、例えばBASF Polyurethanes GmbHによってLupranat(登録商標)M20又はLupranat(登録商標)M50の商品名で販売されている。
【0016】
成分(a)は、成分(a)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%、特に100質量%の、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI及びMDIのオリゴマーからなる群から選択された1種以上のイソシアネートを含む。ここでは、オリゴマーMDIの含有量は、成分(a)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも20質量%、特に好ましくは30質量%超から80質量%未満までである。
【0017】
イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)について、少なくとも2個のイソシアネートに対して反応性である基、例えばOH-、SH-、NH-及びCH-酸基を有する全ての化合物を使用することが可能である。イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)は通常、イソシアネートに対して反応性であり、かつ、イソシアネートに対して反応性である2~8個の水素原子を有する基を有するポリマー化合物、例えばポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含む。ここでは、ポリエーテルオール及びポリエステルオールの分子量は300g/mol以上であり、鎖延長剤及び架橋剤は300g/mol未満の分子量を有する。
【0018】
ポリエーテルオールは、公知の方法によって、例えば触媒の存在下で、2~8個、好ましくは2~6個の結合形態での反応性水素原子を含む少なくとも1種の出発分子を添加してアルキレンオキシドをアニオン重合することによって得られる。したがって、ポリエーテルオールの公称官能価は、2~8、好ましくは2~6であり、出発分子の官能価に対応する。異なる官能価を有する出発分子の混合物を使用する場合、部分官能価(fractional functionalities)を得ることができる。例えば二次反応による官能価への影響は、公称官能価では考慮されない。触媒について、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、又はアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド若しくはカリウムイソプロポキシドを使用することが可能である。あるいは、カチオン重合の場合、ルイス酸、例えば五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素エーテラート又は漂白土を触媒として使用することが可能である。さらに、DMC触媒として知られている複金属シアン化物化合物も触媒として使用することができる。
【0019】
アルキレンオキシドについて、いずれの場合も単独で又は混合物の形態で、1種以上の、アルキレンラジカル中に2~4個の炭素原子を有する化合物、例えばテトラヒドロフラン、1,3-プロピレンオキシド、1,2-又は2,3-ブチレンオキシド、並びに、好ましくはエチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシドを使用することが好ましい。
【0020】
使用可能な出発分子は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖類誘導体、例えばスクロース、ヘキシトール誘導体、例えばソルビトール、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’-メチレンジアニリン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び他の二価若しくは多価アルコール又は単官能若しくは多官能アミンである。
【0021】
ポリエステルアルコールは通常、2~12個の炭素原子を有する多官能アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール又はペンタエリスリトールと、2~12個の炭素原子を有する多官能カルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の異性体、又は上述した酸の無水物との縮合によって製造される。
【0022】
ポリエステルの製造におけるさらなる出発材料について、疎水性材料を併用することもできる。疎水性材料は、非極性有機ラジカルを含み、かつ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸エステル及びそれらの混合物の中から選択された少なくとも1つの反応性基も有する水不溶性材料である。好ましくは、疎水性材料の当量は130~1000g/molの範囲にある。また、例えば、脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸又はリノール酸、並びにまた、脂肪及びオイル、例えばひまし油、トウモロコシ油、ひまわり油、大豆油、ココナッツ油、オリーブ油又はトール油を使用することも可能である。ポリエステルが疎水性材料を含む場合、ポリエステルアルコールのモノマー総含有量に基づく疎水性材料の割合は、好ましくは1~30モル%、特に好ましくは4~15モル%である。
【0023】
ここでは、ポリエステルオールは、好ましくは1.5~5、特に好ましくは1.8~3.5、特に1.9~2.2の官能価を有する。
【0024】
本発明によれば、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)は、少なくとも1種のポリエーテルオール(b1)、少なくとも1種のポリエーテルオール(b2)、少なくとも1種のポリエステルオール(b3)、並びに、鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)を含み、ポリエーテルオール(b1)が、4以上の公称官能価、ポリエーテルオール(b1)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、60質量%を超え、好ましくは80質量%を超え、特に好ましくは90質量%を超え、特に100質量%の割合のプロピレンオキシド、及び好ましくは50%を超え、特に好ましくは70%を超え、より好ましくは90%を超え、特に100%の割合の第2級OH基、及び少なくとも300mg KOH/g、好ましくは少なくとも400mg KOH/gのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2)が、3.5以下、好ましくは2.0~3.5、特に好ましくは2.8~3.2の公称官能価、50%を超え、好ましくは70%を超え、特に好ましくは80%を超える割合の第1級OH基、及び300mg KOH/g未満のOH価を有する。成分(b1)~(b3)について、いずれの場合にも、個々の化合物又は混合物を使用することが可能であり、ここで、使用されたそれぞれの化合物が(b1)~(b3)の定義に含まれる。
【0025】
ポリエーテルオール(b1)は、ポリエーテルオール(b1)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、好ましくは80質量%を超え、特に好ましくは90質量%を超え、特に100質量%の割合のプロピレンオキシドを有する。第2級OH基の割合は、好ましくは50%を超え、特に好ましくは70%を超え、より好ましくは90%を超え、特に100%である。ポリエーテルオール(b1)のOH価は、好ましくは300~1000、特に好ましくは400~800である。好ましい実施態様において、4官能アミン、好ましくはエチレンジアミンは、ポリエーテルオール(b1)の製造におけるスターターとして使用される。
【0026】
ポリエーテルオール(b2)は、少なくとも1種のポリエーテルオール(b2a)及び少なくとも1種のポリエーテルオール(b2b)を含み、ポリエーテルオール(b2a)が、3.5以下の公称官能価、ポリオール(b2a)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、特に少なくとも100質量%の割合のエチレンオキシド、80質量%を超え、好ましくは90質量%を超え、特に100質量%の割合の第1級OH基、及び100mg KOH/g超から300mg KOH/g未満までのOH価を有し、ポリエーテルオール(b2b)が、3.5以下の公称官能価、ポリオール(b2b)中のアルキレンオキシドの総質量に基づいて、好ましくは少なくとも50質量%、特に好ましくは60~90質量%の割合のプロピレンオキシド、50%を超え、好ましくは60~90%の割合の第1級OH基、及び20mg KOH/g超から80mg KOH/g未満まで、好ましくは25mg KOH/g超から60mg KOH/g未満まで、特に好ましくは30mg KOH/g超から50mg KOH/g未満までのOH価を有する。
【0027】
ポリエステルポリオール(b3)は好ましくは、2.0~2.5の官能価、及び100mg KOH/g~400mg KOH/g、特に好ましくは200~300mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。ポリエステルポリオール(b3)は好ましくは、二酸とジオールとの縮合によって得られ、ここで、該二酸成分が好ましくは、芳香族二酸を含む。特に好ましくは、ポリエステルポリオール(b3)の製造において、芳香族二酸以外に、任意のさらなる二酸を使用しない。特に好ましくは、フタル酸、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を二酸として使用する。好ましくは、ジオール成分はジエチレングリコールを含む。
【0028】
鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)について、特に好ましくは、いずれの場合にも、250g/mol未満、好ましくは60~250g/mol、特に60~200g/molの分子量を有する、二官能又は三官能アミン及びアルコール、特にジオール、トリオール又はその両方を使用する。ここでは、二官能の化合物は鎖延長剤と呼ばれ、三官能以上の化合物は架橋剤と呼ばれる。例えば、2~14個、好ましくは2~10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-、1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-ペンタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-、1,3-、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びビス-(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、トリオール、例えば1,2,4-、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、エチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシドをベースとする低分子量ヒドロキシルを含むポリアルキレンオキシド、並びに、出発分子としての上述したジオール及び/又はトリオール、並びに、アミン、例えば3,6-ジオキサオクタメチレンジアミンが使用可能である。三官能アルコール、例えばグリセロール及びトリエタノールアミン、並びにジアミン、例えば3,6-ジオキサオクタメチレンジアミンを使用することが好ましい。好ましくは、鎖延長剤及び/又は架橋剤(b4)は、少なくとも1種のアミン末端基を有する化合物を含む。
【0029】
いずれの場合にも成分(b)の総質量に基づいて、成分(b1)の割合は好ましくは15~35質量%であり、成分(b2)の割合は好ましくは15~35質量%であり、成分(b3)の割合は好ましくは20~35質量%であり、成分(b4)の割合は好ましくは10~35質量%である。
【0030】
特に好ましい実施態様において、成分(b)は、成分(b1)~(b4)以外に、20質量%未満、特に好ましくは10質量%未満のイソシアネートに対して反応性である基を有するさらなる化合物を含み、特にイソシアネートに対して反応性である基を有するさらなる化合物を含まない。イソシアネートプレポリマーをイソシアネート(a)として使用する場合、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)の含有量は、イソシアネートプレポリマーの製造に使用されるイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)を含めて計算される。
【0031】
さらに、発泡剤(c)が、本発明の耐寒性ポリウレタン断熱材の製造において存在する。発泡剤(c)について、化学的に作用する発泡剤及び/又は物理的に作用する化合物を使用することが可能である。本発明の目的のために、化学発泡剤は、イソシアネートとの反応によって気体生成物を生成する化合物、例えば水又はギ酸である。本発明の目的のために、物理発泡剤は、ポリウレタンの製造のための出発材料中に溶解又は乳化し、ポリウレタン形成の条件下で蒸発する化合物である。これらは、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、並びに、過フッ素化アルカンのような他の化合物、例えばペルフルオロヘキサン、クロロフルオロカーボン、並びに、エーテル、エステル、ケトン及び/又はアセタール、例えば4~8個の炭素原子を有する(シクロ)脂肪族炭化水素、フッ素化炭化水素、例えばSolkane(登録商標)365 mfc、又はHFC 245-fa、又はガス、例えば二酸化炭素である。好ましい実施態様において、物理発泡剤、好ましくは不燃性物理発泡剤が発泡剤として使用される。特に、フッ素化炭化水素が発泡剤として使用される。これらは、少量の化学発泡剤、好ましくは水を含むことができる。ここでは、水の割合は、成分(b)~(e)の総質量に基づいて、0.5質量%未満、好ましくは0.2質量%未満、特に0.1質量%未満である。好ましい実施態様において、物理発泡剤の含有量は、成分(b)~(e)の総質量に基づいて、5~30質量%、特に10~25質量%の範囲にある。
【0032】
本発明の耐寒性ポリウレタン断熱材の密度が、好ましくは30~80g/リットル、特に好ましくは50~70g/リットルであるような量で、発泡剤を使用する。
【0033】
触媒(d)について、イソシアネート-水の反応又はイソシアネート-ポリオールの反応を促進する全ての化合物を使用することが可能である。このような化合物は、知られており、例えば「Kunststoffhandbuch,第7巻,Polyurethane」,Carl Hanser Verlag,1993年第3版,第3.4.1章に記載されている。これらには、アミンをベースとする触媒、及び有機金属化合物をベースとする触媒が含まれる。
【0034】
有機金属化合物をベースとする触媒について、例えば、有機スズ化合物、例えば有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えばスズ(II)アセテート、スズ(II)オクトエート、スズ(II)エチルヘキソエート及びスズ(II)ラウレート、並びに、有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレアート及びジオクチルスズジアセテート、並びにまた、ビスマスカルボキシレート、例えばビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエート、又はカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば酢酸カリウム又はギ酸カリウムを使用することが可能である。
【0035】
第3級アミンを含む化合物は通常、アミンをベースとする触媒として使用される。これらも、イソシアネートに対して反応性である基、例えばOH、NH又はNH基を有することができる。最もよく使用される触媒の一部は、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N,N,N-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N-トリエチルアミノエトキシエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、ジメチルアミノプロピルアミン、N-エチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンである。
【0036】
好ましくは、少なくとも1種の第3級アミン、及び少なくとも1種の有機金属化合物をベースとする触媒を含む混合物は、触媒(d)として使用される。
【0037】
可塑剤(e)について、例えば、多塩基、好ましくは二塩基カルボン酸と一価アルコールとのエステルが挙げられる。このようなエステルの酸成分は、例えば、任意にモノマー脂肪酸との混合物で、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、クエン酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸及び/又はヘキヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸無水物、フマル酸及び/又は二量体及び/又は三量体脂肪酸、例えばオレイン酸に由来することができる。このようなエステルのアルコール成分は、例えば、1~20個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンチルアルコールの様々な異性体、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール(例えば、2-エチルヘキサノール)、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールに、及び/又は天然の脂肪アルコール及びワックスアルコール、若しくは天然のカルボン酸の水素化によって得ることができる脂肪アルコール及びワックスアルコールに由来することができる。また、使用可能なアルコール成分は、脂環式及び/又は芳香族のヒドロキシ化合物、例えばシクロヘキサノール及びそれらの同族体、フェノール、クレゾール、チモール、カルバクロール、ベンジルアルコール及び/又はフェニルエタノールである。一塩基カルボン酸と二価アルコールとのエステル、例えば、テキサノールエステルアルコール、例えば2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチラート(TXIB)又は2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート;オリゴアルキレングリコールとアルキルカルボン酸とのジエステル、例えばトリエチレングリコールジヘキサノエート又はテトラエチレングリコールジヘプタノエート、及び類似化合物も、可塑剤として使用することができる。
【0038】
さらに、上述したアルコールとリン酸とのエステルが可塑剤(e)として使用可能である。また、任意に、ハロゲン化アルコールに由来するリン酸エステル、例えばトリクロロエチルホスフェートを使用することができる。後者の場合、難燃効果は、可塑剤効果と同時に達成することができる。もちろん、上述したアルコールとカルボン酸又はリン酸の混合エステルを使用することも可能である。
【0039】
また、可塑剤は、高分子可塑剤、例えばアジピン酸、セバシン酸及び/又はフタル酸のポリエステルであり得る。
【0040】
さらに、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、例えばフェニルパラフィンスルホネート、及び芳香族スルホンアミド、例えばエチルトルエンスルホンアミドも、可塑剤として使用することができる。ポリエーテル、例えばトリエチレングリコールジメチルエーテルを可塑剤として使用することも可能である。
【0041】
さらに、一般に難燃剤として使用される有機ホスフェート、例えばトリスクロロプロピルホスフェート(TCPP)、ジエチルエタンホスホネート(DEEP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルプロピルホスホネート(DMPP)、ジフェニルクレシルホスフェート(DPC)又はトリエチルホスフェートも、可塑化効果を有し、可塑剤(e)として使用することができる。
【0042】
可塑剤()は好ましくは、有機ホスフェート、特に好ましくはトリスクロロプロピルホスフェート及び/又はトリエチルホスフェート、好ましくはトリスクロロプロピルホスフェート及びトリエチルホスフェートを含む。ここでは、トリスクロロプロピルホスフェートのトリエチルホスフェートに対する質量比は、1:10~10:1、好ましくは1:5~2:1、特に好ましくは1:2~1:1である。特に好ましい実施態様において、トリスクロロプロピルホスフェート及びトリエチルホスフェート以外に、さらなる可塑剤を使用しない。
【0043】
可塑剤は、成分(b)~(e)の総質量に基づいて、好ましくは0.1~30質量%、特に好ましくは5~25質量%、特に10~20質量%の量で使用される。硬質ポリウレタンフォームの機械的特性は、特に低温で、可塑剤の添加によってさらに向上することができる。
【0044】
さらなる添加剤()について、難燃剤、泡安定剤、さらなる充填剤、及び他の添加剤、例えば酸化防止剤を使用することが可能である。



【0045】
難燃剤について、一般に、先行技術から知られている難燃剤を使用することが可能である。好適な難燃剤は、例えば、臭素化エーテル(Ixol B 251)、臭素化アルコール、例えばジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール及びPHT-4-ジオール、並びにまた、同様に可塑剤として機能する、塩素化ホスフェート、例えば化合物トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェート(TCPP)、トリス(1,3-ジクロロソプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート及びテトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェート、又はそれらの混合物である。
【0046】
上述したハロゲン置換ホスフェート以外に、無機難燃剤、例えば赤リン、赤リンを含む製剤、膨張黒鉛、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、アンモニウムポリホスフェート、及び硫酸カルシウム、又はシアヌル酸誘導体、例えばメラミン、又は少なくとも2種の難燃剤の混合物、例えばアンモニウムポリホスフェートとメラミンとの混合物、並びに、任意にデンプンを、本発明に従って製造される硬質ポリウレタンフォームを製造することに、難燃剤として使用することも可能である。
【0047】
さらなるハロゲンを含まない液体難燃剤について、同様に可塑化効果を有し、従って可塑剤として使用することもできる、ジエチルエタンホスホネート(DEEP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルプロピルホスホネート(DMPP)、ジフェニルクレシルホスフェート(DPC)及びその他を使用することが可能である。
【0048】
本発明の目的のために、好ましくは、難燃剤は、成分(b)~(e)の総質量に基づいて0~25%の量で使用される。有機リン化合物を可塑剤として使用する場合、さらなる難燃剤を使用しないことが好ましい。
【0049】
本発明の目的のために、泡安定剤は、発泡中に規則的な気泡構造の形成を促進する材料である。例として、以下のものが挙げられる:シリコーン含有泡安定剤、例えばシロキサン-オキシアルキレンコポリマー、及び他の有機ポリシロキサン。さらに、脂肪アルコールのアルコキシル化生成物、オキソアルコール、脂肪アミン、アルキルフェノール、ジアルキルフェノール、アルキルクレゾール、アルキルレゾルシノール、ナフトール、アルキルナフトール、ナフチルアミン、アニリン、アルキルアニリン、トルイジン、ビスフェノールA、アルキル化ビスフェノールA、ポリビニルアルコール、並びにまた、さらに、ホルムアルデヒドとアルキルフェノール、ホルムアルデヒドとジアルキルフェノール、ホルムアルデヒドとアルキルクレゾール、ホルムアルデヒドとアルキルレゾルシノール、ホルムアルデヒドとアニリン、ホルムアルデヒドとトルイジン、ホルムアルデヒドとナフトール、ホルムアルデヒドとアルキルナフトール、及びまた、ホルムアルデヒドとビスフェノールAの縮合生成物のアルコキシル化生成物、又はこれらの泡安定剤の2種以上の混合物が挙げられる。
【0050】
泡安定剤は、存在する場合に、成分(b)~(e)の総質量に基づいて、好ましくは0.5~4質量%、特に好ましくは1~3質量%の量で使用される。
【0051】
本発明の目的のために、さらなる充填剤、特に補強充填剤は、それ自体が知られている従来の有機及び無機充填剤、補強材料などである。特定の例は以下である:無機充填剤、例えば、ケイ質鉱物(siliceous minerals)、例えば、層状ケイ酸塩、例えばアンチゴライト、蛇紋岩、ホルンブレンド、角閃石、クリソタイル、タルク;金属酸化物、例えばカオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化鉄、金属塩、例えばチョーク、バライト、並びに、無機顔料、例えば硫化カドミウム、硫化亜鉛、並びにまた、ガラス及びその他。カオリン(陶土)、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウムとケイ酸アルミニウムの共沈物、並びにまた、天然及び合成の繊維状鉱物(fibrous minerals)、例えばウォラストナイト、任意にサイズでコーティングすることができる金属繊維、特に様々な長さのガラス繊維を使用することが好ましい。中空ガラス微小球を使用することもできる。使用可能な有機充填剤は、例えば以下である:カーボン、メラミン、ロジン、シクロペンタジエニル樹脂及びグラフトポリマー、並びにまた、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、芳香族及び/又は脂肪族ジカルボン酸エステルをベースとするポリエステル繊維、特に炭素繊維。
【0052】
無機及び有機充填剤は、単独で又は混合物として使用することができ、存在する場合に、成分(a)~(e)の総質量に基づいて、有利に0.5~30質量%、好ましくは1~15質量%の量で反応混合物中に組み込まれる。
【0053】
反応混合物は好ましくは、噴霧によって断熱すべき表面に適用される。断熱すべき表面は、好ましくはタンク、特に好ましくは液化天然ガスのためのタンクである。これは、金属又はプラスチックからなることもできる。この目的のために、好ましくは、成分(b)~(d)及び任意に(e)を混合して、ポリオール成分を得る。その後、これらは好ましくは、低圧混合装置、100バール未満の対応圧力(reduced pressure)での高圧混合装置又は高圧機で、イソシアネート成分(a)と混合され、噴霧ノズルによって断熱すべき表面に直接適用される。表面は任意に、接着性を改善するために、例えば既知の結合剤の適用により、既知の方法で前処理することができる。
【0054】
イソシアネート(a)及びイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)、発泡剤(c)、触媒(d)、可塑剤及び任意にさらなる添加剤(e)は好ましくは、イソシアネート指数が100~200、好ましくは100~150の範囲であるような量で反応される。
【0055】
本発明の目的のために、イソシアネート指数は、100を乗じた、イソシアネート基のイソシアネートに対して反応性である基に対する化学量論比である。本発明の目的のために、イソシアネートに対して反応性である基は、イソシアネートに対して反応性であり、かつ、化学発泡剤を含むが、イソシアネート基自体ではない反応混合物中に含まれる全ての基である。
【0056】
さらに、本発明は、本発明による方法によって得ることができるポリウレタン断熱材を提供する。好ましくは、本発明のポリウレタン断熱材は好ましくは、船上での液化天然ガスタンク、特に船上でエネルギーを生成するための液化天然ガスを含む船上での液化天然ガスタンクを断熱することに使用され、断熱タンク、好ましくは液化天然ガスタンクを取り囲む。本発明のポリウレタン断熱材は優れた耐寒性を示す;ここで、発泡方向に垂直な方向及び発泡方向に平行な方向の両方で、CTSR係数(低温熱応力耐性(cryogenic thermal stress resistance))は、好ましくは少なくとも1.2、特に好ましくは少なくとも1.5である。ここでは、本発明の目的のために、CTSR係数は、以下のように決定される(温度範囲:-163~30℃):
【数1】
σZT=EN ISO 527に従って、-165℃での、kPaで表示する引張強度、
υ=ポアソン比;横ひずみ/縦ひずみ曲線の初期線形部分内で測定された、引張方向に垂直な2つの軸の1つに沿ったひずみ増加Δεnの引張方向の対応するひずみ増加Δεlに対する負の比、
E=EN ISO 527に従って、-165℃での、kPaで表示する弾性係数、
α=DIN 53752に従って、mm/(mm・k)で表示する長さ変化係数、
ΔT=温度差(193K)。
【0057】
さらに、本発明のポリウレタン断熱材は、好ましくは0.0220W/(m・k)未満、特に好ましくは0.0210W/(m・k)、特に0.0200W/(m・k)の、発泡方向に垂直及び平行な方向の両方で、EN 14320-1-C.3に従って、10℃(平均温度)で発泡を製造した後に測定された、優れた熱伝導率を示す。劣化した後、発泡方向に垂直及び平行な方向の両方で、EN 14320-1-C.4又はEN 14320-1-C5に従う熱伝導率は、0.0280W/(m・k)未満、好ましくは0.024W/(m・k)未満、特に0.0220W/(m・k)未満である。EN ISO 4590に従う独立気泡の割合は、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも94%である。さらに、本発明のポリウレタン断熱材は、少なくとも0.3N/mm、特に好ましくは少なくとも0.4N/mm、特に少なくとも0.5N/mmのEN ISO 826に従って室温での優れた圧縮強度、及び少なくとも0.3N/mm、特に好ましくは少なくとも0.4N/mm、特に少なくとも0.5N/mmのEN 527-2に従って室温での引張強度を有する。-165℃で、EN ISO 826に従う引張強度は、少なくとも0.5N/mm、特に好ましくは少なくとも0.5N/mm、特に少なくとも0.7N/mmである。したがって、本発明のポリウレタン断熱材は、例えば乗り物上の液化天然ガスタンクを断熱することに、特に船上でエネルギーを生成するための液化天然ガスを含む船上での液化天然ガスタンクを断熱することに非常に適している。
【0058】
以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例
【0059】
発泡拡張の平行方向及び垂直方向で、生成物のCTSR係数及び熱伝導率を決定する。この目的のために、少なくとも800mm(幅)×800mm(長さ)×300mm(厚さ)の寸法を有する大きな多層フォームブロックを製造する。フォームコアから以下のフォームテスト試料を切り取る:
発泡拡張の平行方向で低温での引張強度及び弾性係数を決定するための、80mm×80mm×200mm(発泡拡張の平行方向で200mmの厚さ)の寸法をそれぞれに有する、12個(ピース)。
発泡拡張の垂直方向で低温での引張強度及び弾性係数を決定するための、80mm×80mm×200mm(発泡拡張の垂直方向で200mmの厚さ)の寸法を有する、12個(ピース)。
発泡拡張の平行方向で長さ変化を決定するための、50mm×50mm×150mm(発泡拡張の平行方向で150mmの厚さ)の寸法を有する、2個(ピース)。
発泡拡張の垂直方向で長さ変化を決定するための、50mm×50mm×150mm(発泡拡張の垂直方向で150mmの厚さ)の寸法を有する、2個(ピース)。
発泡拡張の平行方向で熱伝導率を決定するための、200mm×200mm×35mm(発泡拡張の平行方向で35mmの厚さ)の寸法を有する、2個(ピース)。
発泡拡張の垂直方向で熱伝導率を決定するための、200mm×200mm×35mm(発泡拡張の垂直方向で35mmの厚さ)の寸法を有する、2個(ピース)。
【0060】
実施例1及び比較例C1に従って本発明による硬質ポリウレタンフォームを製造するために、表1に従って、攪拌によって、イソシアネート反応性化合物を、触媒、安定剤、可塑剤及び発泡剤と混合し、次にイソシアネートと混合し、発泡し、硬質ポリウレタンフォームを生成した。いずれの場合にも、イソシアネート指数は125であった。その後、反応混合物を複数の層で基材上に噴霧して硬化させた。これにより、少なくとも800mmの幅×800mmの長さ×300mmの厚さの寸法を有する多層フォームブロックを得る。
【0061】
実施例1及び比較例C1に従って硬質ポリウレタンフォームを製造するための反応混合物の組成、及びそれらの機械的特性を表1に記載している(数値を質量部で表示する)。
【0062】
上記の手順に従って、機械的特性を決定した。
【0063】
【表1】
【0064】
ここでは、以下の出発材料を使用した:
ポリオール1 エチレンジアミン開始のプロピレンオキシド;OH価が470
ポリオール2 エチレンジアミン開始のプロピレンオキシド;OH価が750
ポリオール3 ソルビトール開始のプロピレンオキシド、OH価が490
ポリオール4 トリメチロールプロパン開始のエチレンオキシド、OH価が250
ポリオール5 グリセロール開始のポリエチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド(エチレンエンドキャップを有し、OH価が35である)
ポリオール6 フタル酸、ジエチレングリコール及びモノエチレングリコールをベースとするポリエステルオール、O価が240
可塑剤1 トリスクロロプロピルホスフェート(TCPP)
可塑剤2 トリエチルホスフェート
架橋剤1 グリセロール
架橋剤2 トリエタノールアミン
架橋剤3 3,6-ジオキサオクタメチレンジアミン
触媒1 スズ触媒
触媒2 Tert.アミン触媒1
触媒3 Tert.アミン触媒2
泡安定剤1 ノニルフェノールをベースとする安定剤
泡安定剤2 シリコーンをベースとする安定剤1
泡安定剤3 シリコーンをベースとする安定剤2
分散剤 オレイン酸
Iso1 ポリマーMDI