(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】クックソン型誘導体化試薬、クックソン型誘導体化試薬の製造方法、エン化合物の製造方法、およびエン化合物の分析方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/18 20060101AFI20231120BHJP
G01N 33/82 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C07D487/18
G01N33/82
(21)【出願番号】P 2020525597
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023166
(87)【国際公開番号】W WO2019240143
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018112195
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018112196
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】福沢 世傑
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 正貴
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0301063(US,A1)
【文献】特開2018-054459(JP,A)
【文献】特開2018-081023(JP,A)
【文献】KISELEV, V. D., et al.,Features of the Diels-Alder reaction between 9,10-diphenylanthracene and 4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,Russian Journal of Physical Chemistry A,2014年,Vol.88(12),p.2073-2080
【文献】KISELEV Vladimir D., et al.,Why can the Diels-Alder reaction of 9,10-diphenylanthracene with 4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione,Mendeleev Communications,2013年,Vol.23(4),p.235-236
【文献】ROY Nabarun, et al.,Dynamic Covalent Chemistry: A Facile Room-Temperature, Reversible, Diels-Alder Reaction between Anth,Chemistry - An Asian Journal,2011年,Vol.6(9),p.2419-2425
【文献】FORD Jackson W., et al.,Solvent effects on the kinetics of a Diels-Alder reaction in gas-expanded liquids,Industrial & Engineering Chemistry Research,2008年,Vol.47(3),p.632-637
【文献】WERNER Stefan, et al.,Fluorous Dienophiles Are Powerful Diene Scavengers in Diels-Alder Reactions,Organic Letters,2003年,Vol.5(18),p.3293-3296
【文献】MENARD Cecilia, et al.,Ph3BiCO3. A mild reagent for in situ oxidation of urazoles to triazolinediones,Tetrahedron Letters,2003年,Vol.44(35),p.6591-6593
【文献】MALLAKPOUR Shadpour E., et al.,Synthesis of new heterocyclic compounds via cycloaddition reaction,Indian Journal of Chemistry, Section B: Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry,2002年,Vol.41B(4),p.812-816
【文献】THOMPSON R. Lee, et al.,Rate variations of a hetero-Diels-Alder reaction in supercritical fluid CO2,Industrial & Engineering Chemistry Research,1999年,Vol.38(11),p.4220-4225
【文献】ANGERMUND Klaus, et al.,Thermal and photochemical reactions of naphtho[1,2,3,4-def]chrysene with 4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,Chemische Berichte,1988年,Vol.121(9),p.1647-1650
【文献】KLOBUCAR W. Dirk, et al.,Thermal retrograde [2 + 2] aromatization of caged bicyclo[4.2.0]octa-2,4-diene derivatives,Journal of Organic Chemistry,1981年,Vol.46(13),p.2680-2683
【文献】BURRAGE Martin E., et al.,Substituent and solvent effects on the Diels-Alder reactions of triazolinediones,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry,1975年,Vol.12,p.1325-1334
【文献】MEEHAN Scott, et al.,A New Synthesis of Diazenes (Azoalkanes) Using 4-(S,S-Dimethylsulfoximino)-1,2,4-triazoline-3,5-dion,Journal of Organic Chemistry,1997年,Vol.62(11),p.3779-3781
【文献】SAUER Juergen, et al.,Diels-Alder reactions. VIII. 4-Phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione as a dienophile,Chemische Berichte,1967年,Vol.100(2),p.678-684
【文献】COOKSON Richard C., et al.,Diels-Alder reactions of 4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione,Journal of the Chemical Society [Section] C: Organic,1967年,Vol.19,p.1905-1909
【文献】FERNANDEZ-HERRERA, Maria A., et al.,A convenient methodology for the in situ oxidation of 4-substituted urazoles. Setting up a one-pot p,Heterocycles,2013年,Vol.87(3),p.571-582
【文献】島田和武、他,Cookson型誘導体化試薬を用いるビタミンDの高速液体クロマトグラフィー/質量分析,分析化学,2002年,Vol.51 No.7,p.487-493
【文献】茶谷仁、他,高プロトン親和性Cookson型試薬によるステロイド誘導体のESI-MS検出効率に及ぼすプロトン親和力の影響,第10回分子科学討論会、講演プログラム要旨集,2016年08月31日,3P098
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/
G01N 33/82
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)で示される
、クックソン型誘導体化試薬。
【化2】
(式中、R
1は、
ジアルキルアミノ基またはジアルキルアミノアルキル基であり、R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20
のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、lおよびmは、それぞれ独立に、0~4の整数であり、nは、0~2の整数である。)
【請求項2】
下記式(3)で示される
、クックソン型誘導体化試薬。
【化3】
(式中、R
1は、
ジアルキルアミノ基またはジアルキルアミノアルキル基であり、R
5、R
6、R
7、およびR
8、は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20
のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、pは、0~4の整数であり、qは、0~2の整数であり、rおよびsは、0または1の整数である。)
【請求項3】
下記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、
アントラセン環を有する化合物とを、ディールス・アルダー反応に付して、
請求項1または2記載のクックソン型誘導体化試薬を得る、
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【化4】
(式中、R
1は、
4-ジアルキルアミノフェニル基または4-ジアルキルアミノアルキルフェニル基である。)
【請求項4】
さらに、前記
クックソン型誘導体化試薬を精製する精製工程を含む、請求項
3に記載の
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【請求項5】
下記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、
アントラセン環を有する化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、
請求項1または2に記載のクックソン型誘導体化試薬を得る、
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【化5】
(式中、R
1は
、4-ジアルキルアミノフェニル基または4-ジアルキルアミノアルキルフェニル基である。)
【請求項6】
前記酸化剤は、超原子価ヨウ素化合物である、請求項
5に記載の
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、下記式(8)で示される超原子価ヨウ素化合物である、請求項
5または
6に記載の
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【化6】
(式中、XおよびYは、併せて一つの酸素原子、または互いに同一もしくは異なる、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、トシルアミノ基、メシルアミノ基、スルホニルオキシ基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Arは、フェニル基、複素環基、およびアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基を示す。)
【請求項8】
さらに、前記
クックソン型誘導体化試薬を精製する精製工程を含む、請求項
5~
7のいずれかに記載の
クックソン型誘導体化試薬の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のクックソン型誘導体化試薬と、
ビタミンD、ビタミンD代謝物または1,4-ジフェニルブタジエンとを反応させて
、エン化合物を得る、エン化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載のクックソン型誘導体化試薬と、
ビタミンD、ビタミンD代謝物または1,4-ジフェニルブタジエンとを反応させて
、エン化合物を得て、得られた該エン化合物を分析する、エン化合物の分析方法。
【請求項11】
前記分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法である、請求項
10に記載のエン化合物の分析方法。
【請求項12】
前記
ビタミンDは、ビタミンD3
であり、
前記ビタミンD代謝物は、25-ヒドロキシビタミンD3である、請求項
10または
11に記載のエン化合物の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾリンジオン付加体、トリアゾリンジオン付加体の製造方法、エン化合物の製造方法、およびエン化合物の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血中のビタミンDやビタミンD代謝物の分析の必要性が高まっている。そして、ビタミンDやビタミンD代謝物の分析方法としては、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬を用いて誘導体化し、その後に当該誘導体を分析する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1~4参照)。
【0003】
具体的には、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬は、緩和な条件下で、ビタミンD等のジエン誘導体と極めて速くディールス・アルダー反応を進行させ、エン化合物を定量的に与える(非特許文献1~4参照)。この反応特性を活かして、そのままでは定量が困難なビタミンD等を、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬と反応させ、分析感度の高いエン化合物へと変換した後に、当該エン化合物を定量する。
【0004】
上記のクックソン(Cookson)型誘導体化試薬としては、例えば、PTAD(4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン)やDAPTAD(4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン)等のトリアゾリンジオン化合物が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】S.Ogawa,et al., Rapid Commun.Mass Spectrom, 27(2013) 2453-2460
【文献】S.Ogawa,et al., Biomed.Chromatgr., 30(2016) 938-945
【文献】S.Ogawa,et al., J.Pharm.Biomed.Anal., 136(2017) 126-133
【文献】K.D.Bruycker,et al.,Chem.Rev., 116(2016) 3919-3974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、トリアゾリンジオン化合物は不安定であり、単離の過程で高比率の分解を伴っていた。また、単離した後の安定性も低いことから、化合物としてのハンドリング性も低い状況にあった。そこで、トリアゾリンジオン化合物を、製造原料、または定量試薬としてハンドリングするためには、より高い安定性が求められていた。
【0008】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定性を有するトリアゾリンジオン付加体およびその製造方法、ならびに当該トリアゾリンジオン付加体を用いたエン化合物の製造方法、およびジエン化合物の分析方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、トリアゾリンジオン化合物の前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物から、トリアゾリンジオン化合物に由来するエン化合物を、安定性高く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
トリアゾリンジオン化合物は、アントラセン等の多環式芳香族炭化水素と可逆的にディールス・アルダー反応して、付加体を与えることが知られている(例えば、N.Roy,et al.,Chem.Asian.J, 6(2011) 2419-2425や,V.D.Kiseleva,et al.,Russ.J.Phys.Chem.A, 88(2014) 2073-2080等参照)。すなわち、一旦得られたトリアゾリンジオン付加体は、加熱により、出発原料のトリアゾリンジオン化合物と多環式芳香族炭化水素へと、戻りの反応を起こす(retro-ディールス・アルダー反応)。
【0011】
本発明者らは、上記特性に着目し、不安定なトリアゾリンジオン化合物を安定な付加体へと変換し、使用時にトリアゾリンジオン化合物に戻しつつ反応させることで、トリアゾリンジオン化合物の安定性を確保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
また、本発明者らは、トリアゾリンジオン化合物の前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物を用いて、系内にトリアゾリンジオン化合物を生成させた後、ただちにジエンと反応させれば、安定性高くエン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明は、下記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体である。
【0014】
【化1】
(式中、R
1は、有機基であり、Aは、少なくとも1つの芳香環を含む3環以上の縮合環である。)
【0015】
上記式(1)におけるR1は、ジアルキルアミノ基またはジアルキルアミノアルキル基を含む置換フェニル基、または無置換のフェニル基であってもよい。
【0016】
下記式(2)で示されるトリアゾリンジオン付加体であってもよい。
【0017】
【化2】
(式中、R
1は、有機基であり、R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、lおよびmは、それぞれ独立に、0~4の整数であり、nは、0~2の整数である。)
【0018】
下記式(3)で示されるトリアゾリンジオン付加体であってもよい。
【0019】
【化3】
(式中、R
1は、有機基であり、R
5、R
6、R
7、およびR
8、は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、pは、0~4の整数であり、qは、0~2の整数であり、rおよびsは、0または1の整数である。)
【0020】
また別の本発明は、下記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、ディールス・アルダー反応に付して、トリアゾリンジオン付加体を得る、トリアゾリンジオン付加体の製造方法である。
【0021】
【0022】
上記トリアゾリンジオン付加体の製造方法は、さらに、上記トリアゾリンジオン付加体を精製する精製工程を含んでいてもよい。
【0023】
また別の本発明は、下記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、トリアゾリンジオン付加体を得る、トリアゾリンジオン付加体の製造方法である。
【化5】
(式中、R
1は有機基である。)
【0024】
上記酸化剤は、超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【0025】
上記酸化剤は、下記式(8)で示される超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【化6】
(式中、XおよびYは、併せて一つの酸素原子、または互いに同一もしくは異なる、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、トシルアミノ基、メシルアミノ基、スルホニルオキシ基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Arは、フェニル基、複素環基、およびアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0026】
上記トリアゾリンジオン付加体の製造方法は、さらに、上記トリアゾリンジオン付加体を精製する精製工程を含んでいてもよい。
【0027】
また別の本発明は、下記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、下記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させて、下記式(6)で示されるエン化合物を得る、エン化合物の製造方法である。
【0028】
【化7】
(式中、R
1は、有機基であり、Aは、少なくとも1つの芳香環を含む3環以上の縮合環である。)
【0029】
【化8】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、互いに結合または独立していてもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子からなる群より選ばれる原子を含んでいてもよい、炭素数1~100の、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、および複素環基からなる群より選ばれる基である。)
【0030】
【化9】
(式中、R
1は、上記式(1)と同様であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、上記式(5)と同様である。)
【0031】
また別の本発明は、下記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、下記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させて、下記式(6)で示されるエン化合物を得て、得られた該エン化合物を分析する、エン化合物の分析方法である。
【0032】
【化10】
(式中、R
1は、有機基であり、Aは、少なくとも1つの芳香環を含む3環以上の縮合環である。)
【0033】
【化11】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、互いに結合または独立していてもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子からなる群より選ばれる原子を含んでいてもよい、炭素数1~100の、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、および複素環基からなる群より選ばれる基である。)
【0034】
【化12】
(式中、R
1は、上記式(1)と同様であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、上記式(5)と同様である。)
【0035】
上記分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法であってもよい。
【0036】
上記ジエン化合物は、ビタミンD3または25-ヒドロキシビタミンD3であってもよい。
【0037】
また別の本発明は、下記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、下記式(5)で示されるジエン化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、下記式(6)で示されるエン化合物を得る、エン化合物の製造方法である。
【化13】
(式中、R
1は有機基である。)
【化14】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、互いに結合または独立していてもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子からなる群より選ばれる原子を含んでいてもよい、炭素数1~100の、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、および複素環基からなる群より選ばれる基である。)
【化15】
(式中、R
1は、上記式(7)と同様であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、上記式(5)と同様である。)
【0038】
上記酸化剤は、超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【0039】
上記酸化剤は、下記式(8)で示される超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【化16】
(式中、XおよびYは、併せて一つの酸素原子、または互いに同一もしくは異なる、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、トシルアミノ基、メシルアミノ基、スルホニルオキシ基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Arは、フェニル基、複素環基、およびアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0040】
また別の本発明は、下記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、下記式(5)で示されるジエン化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、下記式(6)で示されるエン化合物を得て、得られた該エン化合物を分析する、エン化合物の分析方法である。
【化17】
(式中、R
1は有機基である。)
【化18】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、互いに結合または独立していてもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子からなる群より選ばれる原子を含んでいてもよい、炭素数1~100の、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、および複素環基からなる群より選ばれる基である。)
【化19】
(式中、R
1は、上記式(7)と同様であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、上記式(5)と同様である。)
【0041】
上記酸化剤は、超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【0042】
上記酸化剤は、下記式(8)で示される超原子価ヨウ素化合物であってもよい。
【化20】
(式中、XおよびYは、併せて一つの酸素原子、または互いに同一もしくは異なる、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、トシルアミノ基、メシルアミノ基、スルホニルオキシ基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Arは、フェニル基、複素環基、およびアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0043】
上記分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法であってもよい。
【0044】
上記ジエン化合物は、ビタミンD3または25-ヒドロキシビタミンD3であってもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明のトリアゾリンジオン付加体は、使用時にはトリアゾリンジオン化合物に戻しつつ反応させることができ、使用時までは安定性を維持する化合物である。このため、不安定であったトリアゾリンジオン化合物の安定性を向上させることができ、トリアゾリンジオン化合物のハンドリング性を向上させることができる。
【0046】
また、本発明のトリアゾリンジオン付加体は、加熱により容易にトリアゾリンジオン化合物に戻り、ジエン化合物と反応して分析感度の高いエン化合物を発生させる。したがって、本発明のトリアゾリンジオン付加体は、ジエン化合物の定量試薬として、大変有意義な化合物となる。
【0047】
さらに、本発明のトリアゾリンジオン付加体は、トリアゾリンジオン化合物の等価体となるため、上記したジエン化合物の定量試薬の他、各種のエン化合物の製造に用いることができる。
【0048】
また、トリアゾリンジオン化合物の前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物を用いて、トリアゾリジンジオン化合物をジエンとともに仕込み、酸化反応を行えば、系内にトリアゾリンジオン化合物を生成させながら、ただちにジエンと反応させてエン化合物を得ることができる。これにより、不安定なトリアゾリンジオン化合物として存在する時間を削減でき、トリアゾリンジオン化合物由来のエン化合物を、高収率に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0050】
<トリアゾリンジオン付加体の製造方法(1)>
本発明の第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、下記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、ディールス・アルダー反応させて、トリアゾリンジオン付加体を得る、トリアゾリンジオン付加体の製造方法である。
【化21】
(式中、R
1は、有機基である。)
【0051】
[トリアゾリンジオン化合物]
上記式(4)におけるR1は、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい、同一または異なる、アルキル基、アラルキル基、およびアリール基からなる群より選ばれる置換基を有するジ置換アミノ基、ジ置換アミノアルキル基、ニトロ基、アジド基、アルコキシ基、ハロゲン基、アルキルチオ基、スルホニル基、リン酸基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、アミド基、フェロセニル基、および置換基を有するキノキサリニル基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい、フェニル基、含窒素複素環基、およびアルキル基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【0052】
さらに好ましくは、上記式(4)におけるR1は、置換フェニル基、置換または非置換の、メチル基、およびエチル基からなる群より選ばれる基である。フェニル基の置換基としては、ジアルキルアミノ基またはジアルキルアミノアルキル基が挙げられる。
【0053】
さらには、上記式(4)におけるR1は、メチル基、2-(6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロキノキサリニル)エチル基、4-ニトロフェニル基、フェロセニルメチル基、4-ジメチルアミノフェニル基、および4-ジメチルアミノメチルフェニル基からなる群より選ばれる基であることが特に好ましい。
【0054】
したがって、本発明の第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において用いられるトリアゾリンジオン化合物としては、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(PTAD)、4-メチル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(MTAD)、4-[2-(6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロキノキサリニル)エチル]-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DMEQTAD)、4-(4-ニトロフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(NPTAD)、4-フェロセニルメチル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(FMTAD)、4-(6-キノリル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(QTAD)、4-(4’-ジエチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DEAPTAD)、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)、および4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンからなる群より選ばれる化合物であることが、特に好ましい。これらの化合物は、クックソン型誘導体化剤となりうる。
【0055】
さらに、上記式(1)におけるR1は、4-ジメチルアミノフェニル基、または4-ジメチルアミノメチルフェニル基であることが最も好ましい。すなわち、本発明の第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いられるトリアゾリンジオン化合物としては、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)、または4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンであることが、最も好ましい。
【0056】
[少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物]
少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物としては、例えば以下の骨格を有する化合物が挙げられる。本発明においては、これらの骨格を有する縮合環化合物の一部の水素が、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-クロロプロピル基、1-クロロプロピル基、ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、1-ブロモプロピル基等のアルキル基;
ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-メチルベンジル基、4-メチルフェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、2-クロロビニル基、3-クロロアリル基、シンナミル基、スチリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、トリチル基等のフェニル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のアシル基;クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヨード基等のハロゲン基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ニトロ基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ルチジル基、等の複素環基;等が挙げられる。また、これらの骨格を有する縮合環化合物に、炭素数1~20の環状アルキル基、フェニル基、および複素環基から選ばれる少なくとも1種が、縮合していてもよい。
【0057】
【0058】
[反応条件]
(反応溶媒)
第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、ディールス・アルダー反応に付する際に用いる溶媒としては、エステル類、ハロゲン含有炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アミド類、アルキルニトリル類、ジアルキルエーテル類、および尿素類からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、反応させるジエン化合物そのものを溶媒として用いることもできる。
【0059】
上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とのディールス・アルダー反応は、可逆反応である。このため、反応を生成系へ平衡移動させるためには、生成物を結晶化できる溶媒が好ましい。すなわち、トリアゾリンジオン付加体の製造においては、付加体が結晶化し、トリアゾリンジオン付加体とジエン化合物との反応においては、付加体が溶解する溶媒を選択することが好ましい。
【0060】
例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-メチルTHF)、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)等の非プロトン性溶媒を挙げることができ、これらは、単独または混合溶媒として用いることができる。
【0061】
これらの中では、生成物の結晶性、収率、安定性、安全性、価格の観点から、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、クロロベンゼン、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0062】
反応に用いる溶媒の量は、反応基質1質量部に対して、5~1000体積量とすることが好ましい。
【0063】
(反応温度)
上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる温度は、-10~60℃の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0~40℃の範囲である。
【0064】
(反応時間)
また、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる時間は、10分~48時間とすることが好ましく、さらに好ましくは1~10時間の範囲である。
【0065】
(仕込量)
上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物との反応にあたり、縮合環化合物の使用量は、トリアゾリンジオン化合物1当量に対して、1.0~10000当量の範囲とすることが好ましい。
【0066】
(その他)
反応により発生する水を除去する目的で、反応溶媒に、モレキュラーシーブ等の脱水剤を添加し、反応を実施してもよい。
【0067】
[晶析条件]
第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させて、トリアゾリンジオン付加体を得るものであるが、得られるトリアゾリンジオン付加体は、晶析させて、固体として得ることも可能である。
【0068】
(晶析溶媒)
得られるトリアゾリンジオン付加体を晶析させるための溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、メシチレン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソヘキサン、イソオクタン、デカン等の非プロトン性溶媒、および、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、ブタノール等のプロトン性溶媒を挙げることができ、これらは、単独または混合溶媒として用いることができる。
【0069】
晶析に用いる溶媒の量は、得られたトリアゾリンジオン付加体1質量部に対して、5~1000体積量とすることが好ましい。
【0070】
(晶析温度)
トリアゾリンジオン付加体を晶析させる温度は、-10~40℃の範囲とすることが好ましい。
【0071】
(晶析時間)
また、トリアゾリンジオン付加体を晶析させる時間は、30分~24時間とすることが好ましく、さらに好ましくは1~10時間の範囲である。
【0072】
[精製工程]
第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、さらに、得られるトリアゾリンジオン付加体を精製する精製工程を含んでいてもよい。精製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーが挙げられる。展開溶媒としては、低極性溶媒と高極性溶媒との混合溶媒を用いることができる。低極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等を挙げることができ、高極性溶媒とてしては、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0073】
<トリアゾリンジオン付加体の製造方法(2)>
本発明の第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、下記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、トリアゾリンジオン付加体を得る、トリアゾリンジオン付加体の製造方法である。
【化23】
(式中、R
1は有機基である。)
【0074】
[トリアゾリジンジオン化合物]
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において、出発物質となる上記式(7)の化合物は、ウラゾール基を含むトリアゾリジンジオン化合物であり、すなわち、1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン基を有するトリアゾリジンジオン化合物である。
【0075】
上記式(7)におけるR1は、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい、同一または異なる、アルキル基、アラルキル基、およびアリール基からなる群より選ばれる置換基を有するジ置換アミノ基、ジ置換アミノアルキル基、ニトロ基、アジド基、アルコキシ基、ハロゲン基、アルキルチオ基、スルホニル基、リン酸基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、アミド基、フェロセニル基、および置換基を有するキノキサリニル基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい、フェニル基、含窒素複素環基、およびアルキル基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【0076】
さらに好ましくは、上記式(7)におけるR1は、置換または非置換の、フェニル基、メチル基、およびエチル基からなる群より選ばれる基である。
【0077】
特に好ましくは、上記式(7)におけるR1は、フェニル基、メチル基、2-(6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロキノキサリニル)エチル基、4-ニトロフェニル基、フェロセニルメチル基、6-キノリル基、4-ジエチルアミノフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、および4-ジメチルアミノメチルフェニル基からなる群より選ばれる基である。
【0078】
なかでも、本発明の第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いられるトリアゾリジンジオン化合物としては、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)、または4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンであることが、最も好ましい。
【0079】
[酸化剤]
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において用いる酸化剤は、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させて、トリアゾリンジオン付加体を生成できるものであれば、特に限定されるものではないが、超原子価ヨウ素化合物であることが好ましい。超原子価ヨウ素化合物であれば、トリアゾリジンジオン化合物からトリアゾリンジオン付加体へと円滑に変換することが可能となる。
【0080】
さらには、超原子価ヨウ素化合物の中でも、下記式(8)で示される化合物であることがより好ましい。
【0081】
【化24】
(式中、XおよびYは、併せて一つの酸素原子、または互いに同一もしくは異なる、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、トシルアミノ基、メシルアミノ基、スルホニルオキシ基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Arは、フェニル基、複素環基、およびアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基を示す。)
【0082】
上記式(8)で示される化合物としては、例えば、ヨードソベンゼン、ヨードベンゼンジアセタート、ヨードベンゼンジトリフラート、ヨードベンゼンジトシラート、ヨードベンゼンジメシラート、ヨードベンゼンジクロライド、ヨードベンゼンジブロマイド等が挙げられる。これらの中では、収率、安定性、価格の観点から、ヨードソベンゼン、またはヨードベンゼンジアセタートが特に好ましい。
【0083】
酸化剤の使用量は、出発原料となるトリアゾリジンジオン化合物に対して、1~10モル当量とすることが好ましく、1~5モル当量とすることがさらに好ましい。1~5モル当量の範囲であれば、反応後に存在している酸化剤およびその分解物の除去が容易となるため好ましい。
【0084】
[少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物]
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いうる少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物としては、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いられるものと、同様である。
【0085】
[反応条件]
(反応溶媒)
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを、酸化剤の存在下で反応させる際に用いる溶媒は、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いられるものと、同様である。また、その使用量も、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と、同様である。
【0086】
(反応温度)
上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる温度は、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と、同様である。
【0087】
(反応時間)
また、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる時間は、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と、同様である。
【0088】
(仕込量)
上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物との反応にあたり、縮合環化合物の使用量は、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と、同様である。
【0089】
(その他)
上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と同様に、反応により発生する水を除去する目的で、反応溶媒に、モレキュラーシーブ等の脱水剤を添加して、反応を実施してもよい。
【0090】
[晶析条件]
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と同様に、得られるトリアゾリンジオン付加体を、晶析させて、固体として得ることも可能である。晶析に用いる溶媒の種類、その使用量、晶析温度、晶析時間は、第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と同様である。
【0091】
[精製工程]
第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法は、さらに、得られるトリアゾリンジオン付加体を精製する精製工程を含んでいてもよい。精製方法としては、特に限定されるものではなく、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と同様とすることができる。
【0092】
<トリアゾリンジオン付加体>
本発明のトリアゾリンジオン付加体は、下記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体である。
【0093】
【化25】
(式中、R
1は、有機基であり、Aは、少なくとも1つの芳香環を含む3環以上の縮合環である。)
【0094】
本発明のトリアゾリンジオン付加体は、加熱によって、出発原料である、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物へと、戻りの反応を起こす(retro-ディールス・アルダー反応)。このため、使用時にはトリアゾリンジオン化合物に戻しつつ反応を進行させ、使用時までは安定性を維持した化合物となる。
【0095】
戻りの反応における温度は、-78~200℃の範囲とし、反応時間は、0.01~48時間の範囲とする。retro-ディールス・アルダー反応によりトリアゾリンジオン付加体からトリアゾリンジオン化合物を生成させるのに最適な溶媒としては、例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、アセトン等が挙げられる。retro-ディールス・アルダー反応においては、トリアゾリンジオン付加体の濃度が高い方が、トリアゾリンジオン化合物を高濃度で生成できることから、トリアゾリンジオン付加体の濃度は、1mmol/L以上であることが好ましく、より好ましくは5mmol/L以上、特に好ましくは10mmol/L以上である。また、retro-ディールス・アルダー反応は吸熱反応であるため、高温の方がトリアゾリンジオン化合物の生成には有利である。
【0096】
上記式(1)で示される本発明のトリアゾリンジオン付加体は、上記の本発明のトリアゾリンジオン付加体の製造方法によって得ることができる。
【0097】
上記式(1)におけるR1は、上記の本発明のトリアゾリンジオン付加体の製造方法で用いられる、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物におけるR1と、同様である。
【0098】
本発明のトリアゾリンジオン付加体としては、例えば、下記式(2)で示されるものが挙げられる。
【0099】
【化26】
(式中、R
1は、有機基であり、R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、lおよびmは、それぞれ独立に、0~4の整数であり、nは、0~2の整数である。)
【0100】
上記R2、R3、およびR4において、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-クロロプロピル基、1-クロロプロピル基、ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、1-ブロモプロピル基等のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-メチルベンジル基、4-メチルフェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、2-クロロビニル基、3-クロロアリル基、シンナミル基、スチリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、トリチル基等のフェニル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のアシル基;クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヨード基等のハロゲン基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ニトロ基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ルチジル基、等の複素環基;等が挙げられる。
【0101】
また、本発明のトリアゾリンジオン付加体としては、例えば、下記式(3)で示されるものが挙げられる。
【0102】
【化27】
(式中、R
1は、有機基であり、R
5、R
6、R
7、およびR
8、は、互いに独立していてもよい、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基であり、pは、0~4の整数であり、qは、0~2の整数であり、rおよびsは、0または1の整数である。)
【0103】
上記R5、R6、R7、およびR8において、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、および複素環基からなる群より選ばれる置換基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-クロロプロピル基、1-クロロプロピル基、ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、1-ブロモプロピル基等のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-メチルベンジル基、4-メチルフェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、2-クロロビニル基、3-クロロアリル基、シンナミル基、スチリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、トリチル基等のフェニル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のアシル基;クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヨード基等のハロゲン基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ニトロ基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ルチジル基、等の複素環基;等が挙げられる。
【0104】
<エン化合物の製造方法(1)>
本発明の第1のエン化合物の製造方法は、上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、下記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させて、下記式(6)で示されるエン化合物を得る、エン化合物の製造方法である。
【0105】
【化28】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、互いに結合または独立していてもよい、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子からなる群より選ばれる原子を含んでいてもよい、炭素数1~100の、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、および複素環基からなる群より選ばれる基である。)
【化29】
(式中、R
1は、前記式(1)と同様であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびR
14は、前記式(5)と同様である。)
【0106】
上記式(5)および式(6)におけるR9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、トリアゾリンジオン付加体の生成率、結晶性、適度な熱安定性、安全性、価格の観点から、上記置換基を有するアントラセン、およびナフタレンであることが好ましく、上記置換基を有するアントラセンであることがさらに好ましい。
【0107】
[ジエン化合物]
上記式(5)に示されるジエン化合物は、生成物の有用性、収率、安全性、価格の観点から、高分子、または低分子の天然物、医薬品を含む生理活性化合物、機能性材料、およびそれらの中間体からなる群より選ばれる化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、置換基を有する、アントラセン誘導体、キノリン誘導体、ビタミン、アミノ酸、ステロイド等を挙げることができる。
【0108】
[反応条件]
(反応溶媒)
上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させる際に用いる溶媒としては、上記した、本発明の第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる際に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0109】
上記したように、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とのディールス・アルダー反応は、可逆反応である。このため、反応を生成系へ平衡移動させるためには、生成物を結晶化できる溶媒が好ましい。すなわち、上記したトリアゾリンジオン付加体の製造においては、付加体が結晶化し、上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させてエン化合物を得る反応においては、付加体が溶解する溶媒を選択することが好ましい。
【0110】
本発明の第1のエン化合物の製造方法においては、溶解性、沸点、収率、安全性、価格の観点から、クロロホルム、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0111】
反応に用いる溶媒の量は、反応基質1質量部に対して、5~1000体積量とすることが好ましい。
【0112】
(反応温度)
上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させる温度は、20~350℃の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは40~200℃の範囲である。
【0113】
(反応時間)
また、上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させる時間は、1分~12時間とすることが好ましく、さらに好ましくは1分~8時間の範囲である。
【0114】
(仕込量)
上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体と、上記式(5)で示されるジエン化合物との反応にあたり、上記式(5)で示されるジエン化合物の使用量は、トリアゾリンジオン付加体1当量に対して、上記式(5)で示されるジエン化合物1~10当量の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは1~5当量の範囲である。
【0115】
<エン化合物の分析方法(1)>
本発明の第1のエン化合物の分析方法は、上記式(5)で示されるジエン化合物と、上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体とを反応させて、上記式(6)で示されるエン化合物を得て、得られた該エン化合物を分析する、ジエン化合物の分析方法である。
【0116】
(分析方法)
分析方法としては、特に限定されるものではないが、測定の感度、精度、容易性の観点から、マススペクトロメトリー、または高速液体クロマトグラフィーを用いる方法が好ましい。
【0117】
(ジエン化合物)
本発明の第1のエン化合物の分析方法に適用できるジエン化合物は、特に限定されるものではないが、本発明の上記式(1)で示されるトリアゾリンジオン付加体は、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬とし作用できることから、ビタミンD3または25-ヒドロキシビタミンD3であることが好ましい。
【0118】
<エン化合物の製造方法(2)>
本発明の第2のエン化合物の製造方法は、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを、酸化剤の存在下で反応させて、上記式(6)で示されるエン化合物を得る、エン化合物の製造方法である。
【0119】
〔反応式〕
本発明の第2のエン化合物の製造方法の代表的な反応式を、以下に示す。なお、以下は本発明の一例であって、本発明は以下に限定されるものではない。
【0120】
【0121】
[トリアゾリジンジオン化合物]
本発明の第2のエン化合物の製造方法において、出発物質となる上記式(7)の化合物は、上記した本発明の第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法の出発物質となる化合物と、同様である。
【0122】
したがって、本発明の第2のエン化合物の製造方法において、酸化反応によって系内に生成するトリアゾリンジオン化合物としては、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(PTAD)、4-メチル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(MTAD)、4-[2-(6,7-ジメトキシ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロキノキサリニル)エチル]-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DMEQTAD)、4-(4-ニトロフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(NPTAD)、4-フェロセニルメチル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(FMTAD)、4-(6-キノリル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(QTAD)、4-(4’-ジエチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DEAPTAD)、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)、および4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンからなる群より選ばれる化合物であることが、特に好ましい。
【0123】
[ジエン化合物]
上記式(5)に示されるジエン化合物は、上記した本発明の第1のエン化合物の製造方法に用いられる化合物と、同様である。
【0124】
[酸化剤]
本発明の第2のエン化合物の製造方法において用いる酸化剤は、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させて、上記式(6)で示されるエン化合物を生成できるものであれば、特に限定されるものではないが、上記した本発明の第2のトリアゾリンジオン付加体の製造方法に用いられる化合物と、同様であることが好ましい。すなわち、超原子価ヨウ素化合物であることが好ましく、さらには、超原子価ヨウ素化合物の中でも、上記式(4)で示される化合物であることがより好ましい。
【0125】
酸化剤の使用量についても、上記した本発明の第1のエン化合物の製造方法と同様であり、出発原料となるトリアゾリジンジオン化合物に対して、1~10モル当量とすることが好ましく、1~5モル当量とすることがさらに好ましい。
【0126】
[反応条件]
(反応溶媒)
本発明の第2のエン化合物の製造方法において用いる溶媒としては、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法において、上記式(4)で示されるトリアゾリンジオン化合物と、少なくとも2つの芳香環を含む縮合環化合物とを反応させる際に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0127】
中では、酸化反応の促進、酸化反応に対する安定性、および生成するエン化合物の安定性の観点から、塩化メチレン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、クロロベンゼン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0128】
反応に用いる溶媒の量は、反応基質1質量部に対して、1~5000体積量とすることが好ましい。
【0129】
(反応温度)
上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させる温度は、-10~60℃の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは10~40℃の範囲である。
【0130】
(反応時間)
また、上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、上記式(5)で示されるジエン化合物とを反応させる時間は、30分~48時間の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは1~10時間の範囲である。
【0131】
(仕込量)
上記式(7)で示されるトリアゾリジンジオン化合物と、上記式(5)で示されるジエン化合物との反応にあたり、上記式(5)で示されるジエン化合物の使用量は、上記した第1のトリアゾリンジオン付加体の製造方法と同様に、トリアゾリジンジオン化合物1当量に対して、ジエン化合物1~10モル当量の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは1~5モル当量の範囲である。
【実施例】
【0132】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0133】
<実施例1>
[アントラセン付加体(DAP-A)の合成]
遮光容器中にて、アントラセン81mg(0.45mmol)を、乾燥アセトニトリル10mLに溶解し、アントラセンが溶解したアセトニトリル溶液を得た。さらに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)98.2mg(0.45mmol)を加え、20℃で4時間攪拌し、懸濁液を得た。
【0134】
得られた懸濁液を濾過し、固体をヘキサン洗浄した後、乾燥することにより、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られたトリアゾリンジオン付加体は、5,10-ジヒドロ-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-5,10[1’,2’]-ベンゼノ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオン(DAP-A)であり、75mg、収率42%であった。
【0135】
〔反応式〕
実施例1にて実施した反応式を、以下に示す。
【0136】
【0137】
〔物性評価〕
得られたDAP-Aについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 217~218℃
IR(KBr): 1780,1717cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.20-7.75(m,8H),
6.50-7.15(m,4H),
6.25(s,2H),
3.00(s,6H)
【0138】
<実施例2>
[9-メチルアントラセン付加体(DAP-MA)の合成]
遮光容器中にて、9-メチルアントラセン87mg(0.45mmol)を、乾燥アセトニトリル5mLに溶解し、9-メチルアントラセンが溶解したアセトニトリル溶液を得た。さらに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)98.2mg(0.45mmol)を加え、20℃で2時間攪拌し、懸濁液を得た。
【0139】
得られた懸濁液を濾過し、固体をヘキサン洗浄した後、乾燥することにより、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られたトリアゾリンジオン付加体は、5,10-ジヒドロ-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-5-メチル-5,10[1’,2’]-ベンゼノ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオン(DAP-MA)であり、95mg、収率51.4%であった。
【0140】
〔反応式〕
実施例2にて実施した反応式を、以下に示す。
【0141】
【0142】
〔物性評価〕
得られたDAP-MAについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: >218℃
IR(KBr): 1765,1708cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.10-7.75(m,8H),
6.50-7.20(m,4H),
6.25(s,1H),
3.00(s,3H),
2.70(s,3H)
【0143】
<実施例3>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)の合成]
遮光容器中にて、9-フェニルアントラセン0.50g(1.97mmol)を、塩化メチレン50mLに溶解し、9-フェニルアントラセンが溶解した塩化メチレン溶液を得た。さらに、モレキュラーシーブス3Å(MS-3Å)50mgと、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)0.426g(1.95mmol)とを加え、20℃で2時間攪拌し、反応液を得た。
【0144】
得られた反応液を濾過し、濾液にヘキサン100mLを加えて、氷冷で2時間攪拌し、続いて、濾過して不溶物を濾別した。得られた濾液に、ヘキサン200mLを加え、室温で30分攪拌した。析出した結晶を、濾過、減圧乾燥することにより、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られたトリアゾリンジオン付加体は、5,10-ジヒドロ-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-5-フェニル-5,10[1’,2’]-ベンゼノ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオン(DAP-PA)であり、0.54g、収率58.6%であった。
【0145】
〔反応式〕
実施例3にて実施した反応式を、以下に示す。
【0146】
【0147】
〔物性評価〕
得られたDAP-PAについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: >200℃
IR(KBr): 1774,1714cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 6.25-8.10(m,17H),
2.80(s,6H)
【0148】
<実施例4>
[9,10-ジフェニルアントラセン付加体(DAP-DPA)の合成]
遮光容器中にて、9,10-フェニルアントラセン0.75g(2.27mmol)を、トルエン75mLに溶解し、9,10-ジフェニルアントラセンが溶解したトルエン溶液を得た。さらに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)0.495g(2.27mmol)を加え、室温で3時間攪拌し、反応液を得た。
【0149】
得られた反応液を濾過し、濾液をシリカゲルカラム(トルエン~トルエン/酢酸エチル=10:1)で精製することにより、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られたトリアゾリンジオン付加体は、12-ジヒドロ-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-6,11-ジフェニル-5,12-エテノ-1H-ベンゾ[g][1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオン(DAP-DPA)であり、43mg、収率3.4%であった。
【0150】
〔反応式〕
実施例4にて実施した反応式を、以下に示す。
【0151】
【0152】
〔物性評価〕
得られたDAP-DPAについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: >200℃
IR(KBr): 1764,1705cm-1
1H-NMR(DMSO-d6):
δ 7.30-8.00(m,16H),
6.70-7.30(m,4H),
5.50-5.80(m,2H),
2.90(s,6H)
【0153】
<実施例5>
[9-メチルアントラセン付加体(DAP-MA)とTTBとの反応(エン化合物の合成)]
9-メチルアントラセン付加体(DAP-MA)10mg(0.024mmol)と、trans,trans-ジフェニルブタジエン(TTB)10mg(0.048mmol)とを、ジメチルスルホキシド(DMSO)0.2gに溶解し、DMSO溶液を得た。
【0154】
得られたDMSO溶液を、120℃で3時間攪拌したところ、エン化合物であるTTB-DAPTAD付加体、すなわち、cis-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-5,8-ジフェニル-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-a]ピリダジン-1,3(2H)-ジオン(DAPTAC)が生成していた。転化率につき、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析した結果、60%であった。
【0155】
(分析条件)
サンプル濃度: 0.05%
注入量: 1.0μL
波長: 254nm
流速: 1.0mL/min
移動相: 0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
15~20min(CH3CN:水=100:0)
カラム温度:30℃
充填剤:X Bridge C18 5μm(4.6×150)
保持時間: DAPTAC:7.2min
TTB:11.4min
【0156】
反応液を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル)で精製することにより、DAPTACの純品を得た。
【0157】
〔反応式〕
実施例5にて実施した反応式を、以下に示す。
【0158】
【0159】
〔物性評価〕
得られたDAPTACについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 174~177℃
IR(KBr): 1772,1700cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.10-7.75(m,12H),
6.50-6.85(m,2H),
6.00(s,2H),
5.51(s,2H),
2.90(s,6H)
【0160】
<実施例6>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)とビタミンD3との反応(エン化合物の合成]
9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)50mg(0.106mmol)と、ビタミンD3 40mg(0.103mmol)とを、1,2-ジメトキシエタン(DME)5mLに溶解し、DME溶液を得た。得られたDME溶液を、70℃で5時間攪拌し、反応液を得た。
【0161】
得られた反応液を、実施例5と同一の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析した結果、エン化合物であるビタミンD3付加体、すなわち、(5S,7S)-2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-[(E)-[(1R,3aS、7aR)-1-[(1R)-1,5-ジメチルヘキシル]オクタヒドロ-7a-メチル-4H-インデン-4-イリデン]メチル]-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-7-ヒドロキシ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオンが、51.4mg(収率82.7%)含まれていた。また、ビタミンD3は、2.44mg(回収率:6.1%)含まれていた。
【0162】
得られた反応液を、減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1→2/1)で精製することにより、ビタミンD3付加体を単離した。
【0163】
〔反応式〕
実施例6にて実施した反応式を、以下に示す。
【0164】
【0165】
〔物性評価〕
得られたビタミンD3付加体について、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 125~129℃
IR(KBr)1762,1697cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.25(d,J=15Hz,2H),
6.75(d,J=15Hz,2H),
4.75-5.25(m,2H),
3.75-4.30(m,2H),
3.00(s,6H),
0.25-2.25(m,40H)
【0166】
<実施例7>
[9,10-ジフェニルアントラセン付加体(DAP-DPA)とビタミンD3との反応(エン化合物の合成)]
9,10-ジフェニルアントラセン付加体(DAP-DPA)50mg(0.106mmol)と、ビタミンD3 40mg(0.103mmol)とを、1,2-ジメトキシエタン(DME)5mLに溶解し、DME溶液を得た。得られたDME溶液を、70℃で5時間攪拌し、反応液を得た。
【0167】
得られた反応液を、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析した結果、エン化合物であるビタミンD3付加体、すなわち、(5S,7S)-2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-[(E)-[(1R,3aS,7aR)-1-[(1R)-1,5-ジメチルヘキシル]オクタヒドロ-7a-メチル-4H-インデン-4-イリデン]メチル]-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-7-ヒドロキシ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオンが、が51.4mg(収率82.7%)含まれていた。なお,ビタミンD3は、2.44mg(回収率:6.1%)含まれていた。
【0168】
(分析条件)
サンプル濃度: 0.05%
注入量: 1.0μL
波長: 254nm
流速: 1.0mL/min
移動相: 0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
15~20min(CH3CN:水=100:0)
カラム温度:30℃
充填剤:X Bridge C18 5μm(4.6×150)
保持時間: ビタミンD3付加体:13.2min
ビタミンD3:18.7min
【0169】
〔反応式〕
実施例7にて実施した反応式を,以下に示す。
【0170】
【0171】
<実施例8>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)4.00g(18.2mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン4.00g(18.2mmol;1.0eq.)、9-フェニルアントラセン4.63g(18.2mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム4.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル400mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、桃色の懸濁液となった。
【0172】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン400mLを加え、エバポレーターで210g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0173】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン200mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン200mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで紫色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた紫色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)であり、収量は6.30g、収率は73%、HPLC純度は96.0%であった。
【0174】
<実施例9>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)の合成]
1000mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)10.00g(45.4mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン9.99g(45.4mmol;1.0eq.)、9-フェニルアントラセン11.55g(45.4mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム10.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル1000mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、桃色の懸濁液となった。
【0175】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン1000mLを加え、エバポレーターで500g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0176】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン500mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン500mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで紫色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた紫色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)であり、収量は16.52g、収率は77%、HPLC純度は96.4%であった。
【0177】
<実施例10>
[9-メチルアントラセン付加体(DAP-MA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-メチルアントラセン4.36g(22.7mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム5.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0178】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0179】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで赤色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた赤色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-メチルアントラセン付加体(DAP-MA)であり、収量は6.62g、収率は71%、HPLC純度は96.3%であった。
【0180】
<実施例11>
[9-クロロメチルアントラセン付加体(DAP-CMA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-クロロメチルアントラセン5.15g(22.7mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム5.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0181】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0182】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで赤紫色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた赤紫色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-クロロメチルアントラセン付加体(DAP-CMA)であり、収量は8.79g、収率は87%、HPLC純度は97.1%であった。
【0183】
<実施例12>
[9-ブロモアントラセン付加体(DAP-BA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-ブロモアントラセン5.84g(22.7mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム5.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0184】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0185】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで赤紫色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた赤紫色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-ブロモアントラセン付加体(DAP-BA)であり、収量は8.09g、収率は75%、HPLC純度は96.4%であった。
【0186】
<実施例13>
[9-アセチルアントラセン付加体(DAP-AcA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-アセチルアントラセン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム5.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0187】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0188】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで赤紫色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた赤紫色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-アセチルアントラセン付加体(DAP-AcA)であり、収量は9.36g、収率は94%、HPLC純度は96.7%であった。
【0189】
<実施例14>
[9-(4’-ジメチルアミノフェニル)アントラセン付加体(DAP-DMAPA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-(4’-ジメチルアミノフェニル)アントラセン6.75g(22.7mmol;1.0eq.)、および無水硫酸マグネシウム5.0g、窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0190】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0191】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで黄色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた黄色固体のトリアゾリンジオン付加体は、し、黄色固体を得た。室温にて真空乾燥を15時間以上行い、DAPTAD-ジメチルアミノフェニルアントラセン付加体(DAP-DMAPA)であり、収量は7.96g、収率は68%、HPLC純度は96.9%であった。
【0192】
<実施例15>
[9-(4’-ニトロフェニル)アントラセン付加体(DAP-NPA)の合成]
500mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラーと温度計を取り付けて、反応装置を組み立てた。フラスコに、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、ヨードソベンゼン5.00g(22.7mmol;1.0eq.)、9-(4’-ニトロフェニル)アントラセン6.80g(22.7mmol;1.0eq.)、無水硫酸マグネシウム5.0g、および窒素バブリングにより溶存酸素を除いた酢酸エチル500mLを仕込み、室温にて撹拌した。このとき、反応混合物は紫色の懸濁液となり、1時間後には、薄い赤紫色の懸濁液となった。
【0193】
24時間以上撹拌した後、反応混合物にヘプタン500mLを加え、エバポレーターで250g程度まで濃縮した。このとき、付加体の析出が起こり、スラリー状になった。
【0194】
得られたスラリーを桐山ロート(φ60mm、No.5A)でろ過し、ヘキサン250mLで洗浄した。ろ紙上に残った固体を、ジクロロメタン250mLに溶解して回収し、得られたジクロロメタン溶液をエバポレーターで濃縮することで橙色固体を得て、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、トリアゾリンジオン付加体を得た。得られた橙色固体のトリアゾリンジオン付加体は、DAPTAD-ニトロフェニルアントラセン付加体(DAP-NPA)であり、収量は8.46g、収率は72%、HPLC純度は97.2%であった。
【0195】
<実施例16>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)の精製]
ガラス製カラム(φ5.4cm×60cm)に、シリカゲル(ワコーシルC-300;富士フィルム和光)150gを湿式充填した。充填の溶媒には、ヘキサン/酢酸エチル=7/3を用いた。
【0196】
実施例9で得られた紫色固体であるDAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)3.00gを、クロロホルム10mLに溶解してカラムにチャージした。その後、ヘキサン/酢酸エチル=7/3を用いて展開した。
【0197】
目的の付加体のスポットのあるフラクション400mLをエバポレーターで濃縮後、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、DAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)を白色固体として得た。収量は1.02g、収率は34%、HPLC純度は98.2%であった。
【0198】
<実施例17>
[9-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)の精製]
ガラス製カラム(φ5.4cm×60cm)に、シリカゲル(ワコーシルC-300;富士フィルム和光)150gを湿式充填した。充填の溶媒には、ヘキサン/テトラヒドロフラン=5/5を用いた。
【0199】
実施例9で得られた紫色固体であるDAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)3.00gを、クロロホルム10mLに溶解してカラムにチャージした。その後、ヘキサン/テトラヒドロフラン=5/5を用いて展開した。
【0200】
目的の付加体のスポットのあるフラクション600mLをエバポレーターで濃縮後、室温にて真空乾燥を15時間以上実施することで、DAPTAD-フェニルアントラセン付加体(DAP-PA)を白色固体として得た。収量は1.55g、収率は52%、HPLC純度は98.8%であった。
【0201】
<実施例18>
[DMUとTTBの混合溶液へPIDAを加えて、DAPTACを得る]
4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)0.10g(0.45mmol)、およびtrans,trans-ジフェニルブタジエン(TTB)0.09g(0.43mmol)を、1,2-ジメトキシエタン(DME)100mLに添加し、DME懸濁液を得た。
【0202】
得られた懸濁液に、ヨードベンゼンジアセタート(PIDA)0.15g(0.46mmol)を20℃で加え、同温で4時間攪拌し、cis-2-(4-ジメチルアミノフェニル)-5,8-ジフェニル-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-a]ピリダジン-1,3(2H)-ジオン(DAPTAC)を含む反応液を得た。
【0203】
得られた反応液について、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を実施することにより、DAPTACのアッセイ収率を算出した。DAPTACのアッセイ収率は、76.8%であった。
(分析条件)
サンプル濃度: 50%
注入量: 1.0μL
波長: 254nm
流速: 1.0mL/min
移動相: 0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
15~20min(CH3CN:水=100:0)
カラム温度: 30℃
充填剤: X Bridge C18 5μm(4.6×150)
保持時間: DMU:2.1min
DAPTAC:7.2min
TTB:11.4min
【0204】
〔反応式〕
実施例1にて実施した反応式を、以下に示す。
【0205】
【0206】
[DAPTACの単離]
得られた反応液を、5%重曹水、続いて水にて洗浄した後、減圧濃縮を行い、濃縮残渣をシリカゲルカラムで精製した(溶出溶媒:酢酸エチル)。生成物を含むフラクションを減圧濃縮後、濃縮残渣を酢酸エチル10mLにて加熱分散し、室温で冷却することにより、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、ヘキサン洗浄、および、減圧乾燥することにより、固体状のDAPTACを得た。
【0207】
〔物性評価〕
得られたDAPTACについて、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 174~177℃
IR(KBr): 1772,1700cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.10-7.75(m,12H),
6.50-6.85(m,2H),
6.00(s,2H),
5.51(s,2H),
2.90(s,6H)
【0208】
<実施例19>
[DMUとビタミンD3の混合溶液へPIDAを加えて、ビタミンD3付加体を得る]
4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)0.01g(0.045mmol)、およびビタミンD3 0.017g(0.044mmol)を、1,2-ジメトキシエタン(DME)10mLに添加し、DME懸濁液を得た。
【0209】
得られた懸濁液に、ヨードベンゼンジアセタート(PIDA)0.015g(0.045mmol)を20℃で加え、同温で3時間攪拌し、(5S,7S)-2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-[(E)-[(1R,3aS,7aR)-1-[(1R)-1,5-ジメチルヘキシル]オクタヒドロ-7a-メチル-4H-インデン-4-イリデン]メチル]-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-7-ヒドロキシ-1H-[1,2,4]トリアゾロ[1,2-b]フタラジン-1,3(2H)-ジオン(ビタミンD3付加体)を含む反応液を得た。
【0210】
得られた反応液について、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を実施することにより、ビタミンD3付加体のアッセイ収率を算出した。ビタミンD3付加体のアッセイ収率は、84.3%であった。
(分析条件)
サンプル濃度: 50%(反応液を同重量のTHFに希釈し測定を行った)
注入量: 1.0μL
波長: 254nm
流速: 1.0mL/min
移動相: 0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
15~20min(CH3CN:水=100:0)
カラム温度: 30℃
充填剤: X Bridge C18 5μm(4.6×150)
保持時間: DMU:2.1min
ビタミンD3付加体:13.2min
ビタミンD3:18.8min
【0211】
〔反応式〕
実施例2にて実施した反応式を、以下に示す。
【0212】
【0213】
[ビタミンD3付加体の単離]
得られた反応液を、5%重曹水、続いて水にて洗浄した後、減圧濃縮を行い、濃縮残渣をシリカゲルカラムで精製することにより(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1→2/1)により、ビタミンD3付加体を得た。
【0214】
〔物性評価〕
得られたビタミンD3付加体について、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 125~129℃
IR(KBr): 1762,1697cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.25(d,J=15Hz,2H),
6.75(d,J=15Hz,2H),
4.75-5.25(m,2H),
3.75-4.30(m,2H),
3.00(s,6H),
0.25-2.25(m,40H)
【0215】
<比較例1>
[DMUとPIDAからDAPTAD溶液を得て、これにTTBを加えDAPTACを得る]
4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)0.30g(1.36mmol)を、1,2-ジメトキシエタン(DME)10mLに添加し、DME懸濁液を得た。
【0216】
得られたDME懸濁液に、ヨードベンゼンジアセタート(PIDA)0.44g(1.36mmol)を20℃で加え、同温で3時間攪拌し、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(DAPTAD)を含む反応液を得た。
【0217】
得られたDAPTADを含む反応液に、trans,trans-ジフェニルブタジエン(TTB)0.28g(1.36mmol)を20℃で加え、同温で2時間攪拌し、DAPTACを生成させた。
【0218】
得られた反応液について、実施例1と同様にHPLC分析を実施し、DAPTACのアッセイ収率が31.1%であることが分かった。
【0219】
〔反応式〕
比較例1にて実施した反応式を、以下に示す。
【0220】
【0221】
<実施例20>
[DMUとアントラセンの混合溶液へPIOを加えて、アントラセン付加体を得る]
遮光容器に、アントラセン81mg(0.45mmol)を秤量し、乾燥アセトニトリル(10mL)を加えて溶解させた。得られた溶液に、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(DMU)100mg(0.45mmol)を加え、次いでヨードソベンゼン(PIO)110mg(0.50mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。得られた懸濁液を濾過し、得られたた結晶を、ヘキサン洗浄、および乾燥することにより、アントラセン付加体(DAP-A)を得た。得られたアントラセン付加体(DAP-A)は、75mg、収率41.7%であった。
【0222】
〔反応式〕
実施例3にて実施した反応式を、以下に示す。
【化41】
【0223】
〔物性評価〕
得られたアントラセン付加体(DAP-A)について、各種分析を実施した。結果を以下に示す。
Mp: 217~218℃
IR(KBr): 1780,1717cm-1
1H-NMR(CDCl3):
δ 7.20-7.75(m,8H),
6.50-7.15(m,4H),
6.25(s,2H),
3.00(s,6H)