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特許7387685半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/52 20060101AFI20231120BHJP
   C23C 16/08 20060101ALI20231120BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20231120BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20231120BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20231120BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C23C16/52
C23C16/08
C23C16/56
H01L21/285 C
H01L29/58 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021151868
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044039
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 幸永
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】水野 謙和
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102780(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045299(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/046909(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179354(WO,A1)
【文献】特開2015-056633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/285
H01L 29/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)処理容器内に収容された基板に金属元素含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に還元ガスを供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記膜に改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する工程と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記処理容器に隣接する移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室に搬出する工程と、
(f)(a)の前に、前記処理容器内と、前記移載室内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、前記基板を前記移載室内から前記処理容器内に搬入する工程と、
(g)(f)から(e)の間で、前記移載室内を、前記希ガスを除く不活性ガス雰囲気から前記希ガス雰囲気に変える工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
(e)は、(c)および(d)における前記処理容器内および前記移載室内の温度設定を維持した状態で行われる
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(d)では、前記改質ガスとして、水素化シリコンガスまたはクロロシラン系ガスを用いて、前記膜の表面にシリコン含有層を形成する
請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(d)では、前記改質ガスとして、酸素含有ガスを用いて、前記膜の表面に酸化層を形成する
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(d)では、前記改質ガスとして、窒素含有ガスを用いて、前記膜の表面に窒化層を形成する
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(d)では、前記改質ガスとして、ボロン含有ガスを用いて、前記膜の表面にボロン含有層を形成する
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(d)では、前記改質ガスとして、フッ素含有ガスを用いて、前記膜の表面にフッ素含有層を形成する
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(d)では、前記改質ガスとして、リン含有ガスを用いて、前記膜の表面にリン含有層を形成する
請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(d)では、(a)から(c)と比較して、前記処理容器内の温度設定を維持する、または、前記処理容器内の温度設定を下げる
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)から(d)で供給されるキャリアガスおよびパージガスとして、希ガスが用いられる
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(a)処理容器内に収容された基板に金属元素含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に還元ガスを供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記膜に改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する工程と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記処理容器に隣接する移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室に搬出する工程と、
(f)(a)の前に、前記処理容器内と、前記移載室内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、前記基板を前記移載室内から前記処理容器内に搬入する工程と、
(g)(f)から(e)の間で、前記移載室内を、前記希ガスを除く不活性ガス雰囲気から前記希ガス雰囲気に変える工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(a)処理容器内に収容された基板に金属元素含有ガスを供給する手順と、
(b)前記基板に還元ガスを供給する手順と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する手順と、
(d)(c)の後、前記膜に改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する手順と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記処理容器に隣接する移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室に搬出する手順と、
(f)(a)の前に、前記処理容器内と、前記移載室内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、前記基板を前記移載室内から前記処理容器内に搬入させる手順と、
(g)(f)から(e)の間で、前記移載室内を、前記希ガスを除く不活性ガス雰囲気から前記希ガス雰囲気に変える手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項13】
処理容器と、
前記処理容器に隣接する移載室と、
基板を搬送する搬送系と、
前記処理容器内に金属元素含有ガスを供給する金属元素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に還元ガスを供給する還元ガス供給系と、
前記処理容器内に改質ガスを供給する改質ガス供給系と、
前記処理容器内、および、前記移載室内に希ガスを供給する希ガス供給系と、
前記処理容器内、および、前記移載室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内、および、前記移載室内を排気する排気系と、
(a)前記処理容器内に収容された基板に前記金属元素含有ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に前記還元ガスを供給する処理と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する処理と、
(d)(c)の後、前記膜に前記改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する処理と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室内に搬出する処理と、
(f)(a)の前に、前記処理容器内と、前記移載室内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、前記基板を前記移載室内から前記処理容器内に搬入する処理と、
(g)(f)から(e)の間で、前記移載室内を、前記希ガスを除く不活性ガス雰囲気から前記希ガス雰囲気に変える処理と、
を行わせるように、前記搬送系、前記金属元素含有ガス供給系、前記還元ガス供給系、前記改質ガス供給系、前記希ガス供給系、および、前記排気系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAMのワードラインとして例えば低抵抗なタングステン(W)膜が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-66263号公報
【文献】国際公開第2019/058608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3次元構造のNAND型フラッシュメモリの高層化に伴ってエッチングが困難となっているために、ワード線の薄膜化が課題となっている。
【0005】
この課題を解決するために、上述したようなTiN膜とW膜を用いる代わりに、例えばモリブデン(Mo)を含有した膜を用いて、薄膜化と低抵抗化を図ることがあるが、製造工程においてMo膜に窒素(N)と酸素(O)の少なくともいずれかが混入または、Mo膜の表面に吸着し、Mo膜の抵抗が高くなってしまう場合がある。
【0006】
本開示は、金属元素を含有する膜の抵抗の増加を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内に収容された基板に金属元素含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に還元ガスを供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記膜に改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する工程と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記処理容器に隣接する移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室に搬出する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、金属元素を含有する膜の抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に好適に用いられる基板処理装置を示す概略構成図である。
図2】本開示の一実施形態における基板処理装置の処理炉を示す立断面図である。
図3図2におけるA-A線概略横断面図である。
図4】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図5】本開示の一実施形態における基板処理工程を示す図である。
図6図6(A)は、Mo含有膜上にSiキャップ層を形成する前の状態を示す図であり、図6(B)は、Mo含有膜上にSiキャップ層を形成した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の一実施形態>
以下、図面を参照しつつ本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、必ずしも一致していない。
【0011】
[基板処理装置の構成]
先ず、図1において、本開示が実施される基板処理装置10について説明する。基板処理装置10は、筐体111を備え、該筐体111の正面壁111aの下部にはメンテナンス可能な様に設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、該正面メンテナンス口103は正面メンテナンス扉104によって開閉される。
【0012】
筐体111の正面壁111aにはポッド搬入搬出口112が筐体111の内外を連通する様に開設されており、ポッド搬入搬出口112はフロントシャッタ113によって開閉され、ポッド搬入搬出口112の正面前方側にはロードポート(搬送容器受渡し台)114が設置されており、ロードポート114は載置されたポッド110を位置合せする様に構成されている。
【0013】
ポッド110は、密閉式の基板の搬送容器であり、図示しない工程内搬送装置によってロードポート114上に搬入され、又、ロードポート114上から搬出される様になっている。
【0014】
筐体111内の前後方向の略中央部に於ける上部には、回転式ポッド棚(搬送容器格納棚)105が設置されており、回転式ポッド棚105は複数個のポッド110を格納する様に構成されている。
【0015】
回転式ポッド棚105は垂直に立設されて間欠回転される支柱116と、該支柱116に上中下段の各位置に於いて放射状に支持された複数段の棚板(搬送容器載置棚)117とを備えており、棚板117はポッド110を複数個宛載置した状態で格納する様に構成されている。
【0016】
回転式ポッド棚105の下方には、ポッドオープナ(搬送容器蓋体開閉機構)121が設けられ、ポッドオープナ121はポッド110を載置し、又ポッド110の蓋を開閉可能な構成を有している。
【0017】
ロードポート114と回転式ポッド棚105、ポッドオープナ121との間には、ポッド搬送機構(容器搬送機構)118が設置されており、ポッド搬送機構118は、ポッド110を保持して昇降可能、水平方向に進退可能となっており、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ121との間でポッド110を搬送する様に構成されている。
【0018】
筐体111内の前後方向の略中央部に於ける下部には、サブ筐体119が後端に亘って設けられている。サブ筐体119の正面壁119aにはウエハ200をサブ筐体119内に対して搬入搬出する為のウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が一対、上下2段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口120に対してポッドオープナ121がそれぞれ設けられている。
【0019】
ポッドオープナ121はポッド110を載置する載置台122と、ポッド110の蓋を開閉する開閉機構123とを備えている。ポッドオープナ121は載置台122に載置されたポッド110の蓋を開閉機構123によって開閉することにより、ポッド110のウエハ出入口を開閉する様に構成されている。
【0020】
サブ筐体119はポッド搬送機構118や回転式ポッド棚105が配設されている空間(ポッド搬送空間)から気密となっている移載室124を構成している。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を載置する所要枚数(図示では5枚)のウエハ載置プレート125cを具備し、ウエハ載置プレート125cは水平方向に直動可能、水平方向に回転可能、又昇降可能となっている。ウエハ移載機構125はボート(基板保持体)217に対してウエハ200を装填および払出しする様に構成されている。ポッド110からウエハ200をボート217に移載する際、ポッド110はウエハ搬入搬出口120と密着し、ポッド110内と移載室124内とが同じ気体雰囲気となる。
【0021】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成され、待機部126の上方には縦型の処理炉202が設けられている。処理炉202は内部に処理室201を形成し、処理室201の下端部は炉口部となっており、炉口部はシールキャップ219により開閉される様になっている。
【0022】
筐体111の右側端部とサブ筐体119の待機部126の右側端部との間にはボート217を昇降させる為のボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台に連結されたアーム128には蓋体としてのシールキャップ219が水平に取付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、ボート217を処理室201に装入した状態で炉口シャッタ147を気密に閉塞可能となっている。
【0023】
ボート217は、複数枚(例えば、50枚~125枚程度)のウエハ200をその中心に揃えて水平姿勢で多段に保持する様に構成されている。
【0024】
サブ筐体119の背面壁119bには、移載室124内の雰囲気を排気する排気管131が設けられている。排気管131には、上流側から順に、移載室124内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ145,APC(Auto Pressure Controller)バルブ143,真空排気装置としての真空ポンプ146が接続されている。APCバルブ143は、真空ポンプ146を作動させた状態で弁を開閉することで、移載室124内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ146を作動させた状態で弁開度を調節することで、移載室124内の圧力を調整することができる。主に、排気管131,APCバルブ143および圧力センサ145により、移載室124および移載室124に密着したポッド110に対する排気系が構成される。真空ポンプ146を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
また、サブ筐体119の背面壁119bには、希ガスを除く不活性ガスを供給するガス供給管150と、希ガスを供給するガス供給管151とがそれぞれ接続されている。ガス供給管150には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC152および開閉弁であるバルブ154がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管151には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC153および開閉弁であるバルブ155がそれぞれ設けられている。
【0026】
ガス供給管150からは、希ガスを除く不活性ガスが、MFC152およびバルブ154を介して移載室124内に供給される。希ガスを除く不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス等を用いることができる。ガス供給管150から不活性ガスを流す場合、主に、ガス供給管150、MFC152、および、バルブ154により、移載室124および移載室124に密着したポッド110に対する不活性ガス供給系が構成される。
【0027】
ガス供給管151からは、希ガスが、MFC153およびバルブ155を介して移載室124内に供給される。希ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等を用いることができる。ガス供給管151から希ガスを流す場合、主に、ガス供給管151、MFC153、および、バルブ155により、移載室124および移載室124に密着したポッド110に対する希ガス供給系が構成される。
【0028】
また、移載室124内には温度検出器としての温度センサ163が設置されており、この温度センサ163により検出された温度情報に基づきヒータ107への通電量を調整することで、移載室124内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。主に、ヒータ107により、移載室124に対する加熱系が構成される。
【0029】
次に、図2および図3において、処理室201の周辺の構成について説明する。処理室201は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0030】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0031】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。少なくとも、アウタチューブ203と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。インナチューブ204を処理容器に含めてもよい。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0032】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0033】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁およびインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0034】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、希ガスを除く不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530と、希ガスを供給するガス供給管511,521,531とがそれぞれ接続されている。
【0035】
ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,532および開閉弁であるバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管511,521,531には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC513,523,533および開閉弁であるバルブ515,525,535がそれぞれ設けられている。
【0036】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁およびインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0037】
ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0038】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0039】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、金属元素含有ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。金属元素含有ガスとしては、例えば、モリブデン(Mo)含有ガス、ルテニウム(Ru)含有ガス、タングステン(W)含有ガス等を用いることができる。
【0040】
ガス供給管310から金属元素含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により、処理室201に対する金属元素含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410を金属元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0041】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。還元ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、活性化した水素を含むガス等を用いることができる。
【0042】
ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により、処理室201に対する還元ガス供給系が構成されるが、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0043】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、改質ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201内に供給される。改質ガスとしては、例えば、水素化シリコンガス、クロロシラン系ガス、酸素(O)含有ガス、窒素(N)含有ガス、ボロン(B)含有ガス、フッ素(F)含有ガス、リン(P)含有ガス等の内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0044】
ガス供給管330から改質ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により、処理室201に対する改質ガス供給系が構成されるが、ノズル430を改質ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0045】
ガス供給管510,520,530からは、希ガスを除く不活性ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。希ガスを除く不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス等を用いることができる。
【0046】
ガス供給管510,520,530から不活性ガスを流す場合、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534、ガス供給管310,320,330により、処理室201に対する不活性ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430を不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0047】
ガス供給管511,521,531からは、希ガスが、それぞれMFC513,523,533、バルブ515,525,535、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。希ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等を用いることができる。
【0048】
ガス供給管511,521,531から希ガスを流す場合、主に、ガス供給管511,521,531、MFC513,523,533、バルブ515,525,535、ガス供給管310,320,330により、処理室201に対する希ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430を希ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0049】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a、ノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0050】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0051】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0052】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243および圧力センサ245により、処理室201に対する排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0053】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。
【0054】
シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置として構成されている。主に、ボートエレベータ115およびウエハ移載機構125により、搬送系が構成される
【0055】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0056】
図3に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、この温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。主に、ヒータ207により、処理室201内の加熱系が構成される。
【0057】
図4に示すように、制御部であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0058】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピおよび制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0059】
I/Oポート121dは、上述のMFC152,153,312,322,332,512,513,522、523,532,533、バルブ154,155,314,324,334,514,515,524、525,534,535、圧力センサ145,245、APCバルブ143,243、真空ポンプ146,246、ヒータ107,207、温度センサ163,263、回転機構267、ボートエレベータ115、ウエハ移載機構125等に接続されている。
【0060】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC152,153,312,322,332,512,513,522、523,532,533による各種ガスの流量調整動作、バルブ154,155,314,324,334,514,515,524、525,534,535の開閉動作、
【0061】
APCバルブ143,243の開閉動作およびAPCバルブ143,243による圧力センサ145,245に基づく圧力調整動作、温度センサ163,263に基づくヒータ107,207の温度調整動作、真空ポンプ146,246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ウエハ移載機構125によるポッド110とボート217との間のウエハ200の移載動作等を制御するように構成されている。
【0062】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0063】
[基板処理工程]
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、例えば3DNANDのコントロールゲート電極として用いられるMo含有膜を形成する工程の一例について、図5図6(A)および図6(B)を用いて説明する。ここでは、図6(A)に示すように、表面に、Mo含有膜が形成されたウエハ200上に、図6(B)に示すように、シリコン(Si)キャップ膜を形成する。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0064】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)処理室201内に収容されたウエハ200に金属元素含有ガスを供給する工程と、
(b)ウエハ200に還元ガスを供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、ウエハ200に金属元素を含有する膜を形成する工程と、
(d)(c)の後、金属元素を含有する膜に改質ガスを供給し、膜の表面に改質ガスが含有する元素を含む層を形成する工程と、
(e)(d)の後、処理室201内、および、移載室124内を希ガス雰囲気として、ウエハ200を処理室201から移載室124に搬出する工程と、
を有する。
【0065】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0066】
〔ウエハ搬入〕
バルブ154,314,324,334を開き、ガス供給管150,310,320,330内に希ガス以外の不活性ガスである窒素(N2)ガスを流す。N2ガスは、MFC152,512,522,532により流量調整され、処理室201内、移載室124内、および、移載室124に密着したポッド110内に供給される。
【0067】
処理室201内、移載室124内、および、移載室124に密着したポッド110内を、N2ガス雰囲気とした状態で、複数枚のウエハ200が、ポッド110からボート217に移載(ウエハチャージ(ステップS10))される。
【0068】
その後、図2に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード(ステップS11))され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0069】
その後、移載室124に設けられた排気管131のAPCバルブ143を開き、真空ポンプ146により移載室124内、および、移載室124に密着したポッド110内を真空排気し、移載室124内およびポッド110内に残留するN2ガスを移載室124内およびポッド110内から排除する。次に、APCバルブ143を閉じるとともに、バルブ155を開き、ガス供給管151に希ガスであるArガスを流して、移載室124内およびポッド110内をArガス雰囲気に置換する(雰囲気置換(ステップS12))。なお、移載室124内およびポッド110内の雰囲気置換は、必ずしもステップS11の直後に行う必要はなく、後述のステップS22のボートアンロードまでに行えばよい。
【0070】
〔圧力調整および温度調整(ステップS13)〕
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0071】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば、300℃~650℃の範囲内の温度となるような温度に設定される。また、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまで、すなわちステップS20までの間は継続して行われ、処理室201内の温度が一定に保たれる。
【0072】
〔金属元素含有ガス供給(ステップS14)〕
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスである金属元素含有ガスを流す。金属元素含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して金属元素含有ガスが供給される。
【0073】
このとき同時にバルブ515を開き、ガス供給管511内に希ガスであるArガスを流す。ガス供給管511内を流れたArガスは、MFC513により流量調整され、金属元素含有ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。Arガスはキャリアガスとして作用し、処理室201内への金属元素含有ガスの供給を促進する効果を得ることができる。
【0074】
このとき、ノズル420およびノズル430内への金属元素含有ガスの侵入を防止するために、バルブ525,535を開き、ガス供給管521,531内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管320,330、ノズル420,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0075】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御する金属元素含有ガスの供給流量は、例えば0.1~1.0slm、好ましくは0.1~0.5slmの範囲内の流量とする。MFC513,523,533で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0076】
このとき処理室201内に流しているガスは、金属元素含有ガスと希ガスであるArガスのみである。ここで金属元素含有ガスとしては、Mo含有ガスを用いることができる。Mo含有ガスとしては、例えば、五塩化モリブデン(MoCl5)ガス、二酸化二塩化モリブデン(MoO2Cl2)ガス、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)ガスを用いることができる。金属元素含有ガスの供給により、ウエハ200上に金属元素含有層が形成される。ここで、金属元素含有ガスとして、MoO2Cl2ガスを用いた場合、金属元素含有層はMo含有層である。Mo含有層は、ClやOを含むMo層であってもよいし、MoO2Cl2の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。また、Mo含有層は、Moを主成分とする膜であり、Mo元素の他にCl,O,H等の元素を含み得る膜である。
【0077】
〔残留ガス除去(ステップS15)〕
金属元素含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって、例えば0.01~10秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、金属元素含有ガスの供給を停止する。つまり、金属元素含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~10秒の範囲内の時間とする。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属元素含有層形成に寄与した後の金属元素含有ガスを処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする(第1パージ工程)。
【0078】
このときバルブ515,525,535は開いたままとして、Arガスの処理室201内への供給を維持する。Arガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属元素含有層形成に寄与した後の金属元素含有ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0079】
〔還元ガス供給(ステップS16)〕
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、還元ガスを流す。還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、還元ガスが供給される。
【0080】
このとき同時にバルブ525を開き、ガス供給管521内に希ガスであるArガスを流す。ガス供給管521内を流れたArガスは、MFC523により流量調整され、還元ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。Arガスはキャリアガスとして作用し、処理室201内への還元ガスの供給を促進する効果を得ることができる。
【0081】
このとき、ノズル410およびノズル430内への金属元素含有ガスの侵入を防止するために、バルブ515,535を開き、ガス供給管511,531内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管310,330、ノズル410,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0082】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~39900Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する還元ガスの供給流量は、例えば1~50slm、好ましくは15~30slmの範囲内の流量とする。MFC513,523,533で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~120秒の範囲内の時間とする。
【0083】
このとき処理室201内に流しているガスは、還元ガスと希ガスであるArガスのみである。ここで、還元ガスとしては、例えば水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、活性化した水素を含むガス等を用いることができる。還元ガスとしてH2ガスを用いた場合、H2ガスは、ステップS14でウエハ200上に形成されたMo含有層の少なくとも一部と置換反応する。すなわち、Mo含有層中のOや塩素(Cl)が、H2と反応し、Mo層から脱離して、水蒸気(H2O)や塩化水素(HCl)や塩素(Cl2)等の反応副生成物として処理室201内から排出される。そして、ウエハ200上にMoを含みClとOを実質的に含まない金属元素含有層(Mo層)が形成される。
【0084】
〔残留ガス除去(ステップS17)〕
金属元素含有層を形成した後、バルブ324を閉じて、還元ガスの供給を停止する。そして、上述したステップS15(第1パージ工程)と同様の処理手順により、Arガスをパージガスとして用いて、処理室201内に残留する未反応もしくは金属元素含有層の形成に寄与した後の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする(第2パージ工程)。
【0085】
〔所定回数実施(ステップS18)〕
上記したステップS14~ステップS17の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.5~20.0nm)の金属元素含有膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。また、ステップS14~ステップS17の工程をそれぞれ少なくとも1回以上行ってもよい。
【0086】
〔改質ガス供給(ステップS19)〕
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ334を開き、ガス供給管330内に、改質ガスを流す。改質ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、改質ガスが供給される。
【0087】
このとき同時にバルブ535を開き、ガス供給管531内に希ガスであるArガスを流す。ガス供給管531内を流れたArガスは、MFC533により流量調整され、還元ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。Arガスはキャリアガスとして作用し、処理室201内への改質ガスの供給を促進する効果を得ることができる。
【0088】
このとき、ノズル410およびノズル420内への金属元素含有ガスの侵入を防止するために、バルブ515,525を開き、ガス供給管511,521内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0089】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御する改質ガスの供給流量は、例えば0.1~30slm、好ましくは0.1~10slmの範囲内の流量とする。MFC513,523,533で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。改質ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば1~1200秒の範囲内の時間とする。
【0090】
このとき処理室201内に流しているガスは、改質ガスと希ガスであるArガスのみである。ここで、改質ガスとしては、水素化シリコンガス、クロロシラン系ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガス、ボロン含有ガス、フッ素含有ガス、リン含有ガス等の内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0091】
改質ガスを供給することにより、ウエハ200上の膜の表面に改質ガスが含有する元素を含む層を形成することができる。言い換えると、膜の表面を改質することができる。改質ガスとして水素化シリコンガスを用いた場合、ステップS14でウエハ200上に形成されたMo含有膜の表面にシリコン(Si)を含む層(キャップ層)を形成することができる。なお、水素化シリコンガスとしては、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si26)ガス、トリシラン(Si38)ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0092】
図6(A)に示すように、Mo含有膜がSiキャップ層で覆われていない場合、大気雰囲気中の窒素(N)によりMo含有膜が窒化され、Mo含有膜の抵抗が高くなってしまう等の影響が生じる場合がある。これに対して、本実施形態では、図6(B)に示すように、Mo含有膜上にSiキャップ層を形成しているため、大気雰囲気中の窒素によるMo含有膜の窒化を抑制でき、窒素による影響を少なくすることができる。
【0093】
〔残留ガス除去(ステップS20)〕
キャップ層を形成した後、バルブ334を閉じて、改質ガスの供給を停止する。そして、上述したステップS15(第1パージ工程)と同様の処理手順により、Arガスをパージガスとして用いて、処理室201内に残留する未反応もしくはキャップ層の形成に寄与した後の改質ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする(アフターパージ工程)。
【0094】
〔大気圧復帰(ステップS21)〕
処理室201内の雰囲気がArガスに置換された後、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0095】
〔ウエハ搬出〕
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端から移載室124内に搬出(ボートアンロード(ステップS22))される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217からポッド110に移載(ウエハディスチャージ(ステップS23))される。なお、ウエハ200の搬出は、好ましくは、処理室201内の温度設定を成膜時から維持した状態で行われる。処理室201内の温度設定を成膜時から維持した状態で行うことで、処理室201の温度の調整にかかる時間を短縮することができる。
【0096】
ステップS12において移載室124内およびポッド110内はArガス雰囲気とされており、ステップS20において処理室201内もArガス雰囲気とされている。従って、処理済のウエハ200の処理室201からポッド110への移載は、移載室124を介してArガス雰囲気下で行われる。このような雰囲気とすることで、処理室201内の温度を基板処理時から維持した状態(すなわち、高温状態)で、Mo含有膜上に大気雰囲気中の窒素によるMo含有膜の窒化を抑制することができる。
【0097】
本実施形態では、Mo含有膜上にSiキャップ層を形成しているため、Mo含有膜の表面に大気雰囲気中の窒素が吸着(窒化)することを抑制でき、窒素による影響を少なくすることができるが、このようにArガス雰囲気下でウエハディスチャージを行って、ウエハディスチャージの際にウエハ200が窒素に触れないようにすることで、Mo含有膜の窒化をさらに抑制することができる。
【0098】
[本実施形態による効果]
上述の様に、ウエハ200に形成された金属元素を含有する膜の表面に改質ガスが含有する元素を含む層を形成する改質処理を行うことにより、ウエハ200の膜の表面に酸素が吸着することや窒素が吸着することを抑制することができる。なお、酸素の吸着は酸化とも呼ぶ。また、窒素の吸着は窒化とも呼ぶ。
【0099】
また、ウエハ200の膜のみならず、処理室201内壁の膜を改質することができる。これにより、ウエハ200の搬入時に窒素ガスが処理室201内に入りこんでも、窒素が処理室201内壁の膜に吸着することを抑制できる。処理室201内壁の膜に窒素が吸着した場合、成膜時にこの窒素が脱離して、ウエハ200に成膜される膜に取り込まれる可能性がある。そのため、処理室201内壁の膜を改質することで、これらを抑制できる。
【0100】
本実施形態における半導体装置の製造方法においては、(c)および(d)における処理室201内の温度設定を維持した状態で行われることが好ましい。
【0101】
このように、成膜時の温度設定を維持したまま搬出を行うことで、処理室201内の温度調整にかかる時間を短縮することができる。この結果として、製造スループットを向上させることができる。また、処理室201内および移載室124内の一部の温度が低下することにより熱応力が発生するのを抑えることができるため、熱応力による膜剥がれを生じ難くすることができる。
【0102】
また、(f)(a)の前に、処理室201内と、移載室124内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、ウエハ200を移載室124内から処理室201内に搬送する工程と、(g)(f)から(e)の間で、処理室201内および移載室124内を希ガスを除く不活性ガス雰囲気から希ガス雰囲気に変える工程と、を有することが好ましい。
【0103】
このように、成膜前は安価な不活性ガスを用い、成膜後のみ高価な希ガスを用いることにより、高価な希ガスの使用量を抑えることができる。
【0104】
また、(d)では、改質ガスとして、水素化シリコンガスまたはクロロシラン系ガスを用いて、膜の表面にシリコン(Si)含有層を形成してもよい。水素化シリコンガスとしては、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si26)ガス、トリシラン(Si38)ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。クロロシラン系ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(HCDS)を用いることができる。
【0105】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、金属元素を含有する膜の表面にシリコン(Si)含有層を形成することにより、処理室201外に存在する窒素による膜の窒化を抑制することができる。
【0106】
また、(d)では、改質ガスとして、酸素(O)含有ガスを用いて、膜の表面に酸化層を形成してもよい。酸素含有ガスとしては、酸素(O2)ガス、水蒸気(H2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、オゾン(O3)ガス、水素(H2)と酸素(O2)の混合ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0107】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、金属元素を含有する膜の表面を酸化させておくことや、膜の表面における窒素と結合できるサイトを酸素で埋めておくことにより、処理室201外に存在する窒素が膜の表面に吸着(窒化)することを抑制することができる。
【0108】
また、(d)では、改質ガスとして、窒素含有ガスを用いて、膜の表面に窒化層を形成してもよい。窒素含有ガスとしては、アンモニア(NH3)ガス、ヒドラジン(N24)ガス、ジアゼン(N22)ガス、窒素(N2)ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0109】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、自然窒化では無く、膜の表面に完全な改質層(窒化層)を形成してもよい。なお、完全な改質層とは、膜の表面に、他の元素が結合しにくい状態を意味する。Mo膜の場合、表面にMoNの層を形成することを意味する。このような層を形成することにより、後に、窒化層を除去する際のウエハ200毎に均一性を向上させることができる。ウエハ200毎に形成される改質層の組成を均一化することができる。改質層の組成をウエハ200毎に均一化することにより、組成の違いによる改質の除去率の発生を抑制することができる。また、このような窒化層を形成することにより、大気中の酸素が、膜の表面に吸着することを抑制できる。すなわち、膜の表面における酸素と結合できるサイトを窒素で埋めておくことで、膜表面への酸素の吸着を抑制できる。
【0110】
また、(d)では、改質ガスとして、ボロン(B)含有ガスを用いて、膜の表面にボロン含有層を形成してもよい。ボロン含有ガスとしては、ジボラン(B26)ガス、三塩化ボロン(BCl3)ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0111】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、金属元素を含有する膜の表面にボロン含有層を形成することにより、処理室201外に存在する窒素や酸素の吸着を抑制することができる。
【0112】
また、(d)では、改質ガスとして、フッ素(F)含有ガスを用いて、膜の表面にフッ素含有層を形成してもよい。フッ素含有ガスとしては、六フッ化タングステン(WF6)ガス、フッ素(F2)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、三フッ化塩素(ClF3)ガス、フッ化水素(HF)ガスの内、1種類のガス、または少なくとも1つ以上のガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0113】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、金属元素を含有する膜の表面をフッ化することにより、処理室201外に存在する窒素や窒素による膜の酸化や窒化を抑制することができる。
【0114】
また、(d)では、改質ガスとして、リン(P)含有ガスを用いて、膜の表面にリン(P)含有層を形成してもよい。リン含有ガスとしては、ホスフィン(PH3)ガス、またはホスフィン(PH3)ガスを含む混合ガスを用いることができる。
【0115】
改質ガスとして、これらのガスを用いて、金属元素を含有する膜の表面にリン(P)含有層を形成することにより、処理室201外に存在する窒素や酸素の吸着や反応を抑制することができる。
【0116】
また、(d)では、(a)から(c)と比較して、処理室201内の温度設定を維持するか、または、処理室201内の温度設定を下げてもよい。処理室201内の温度設定を維持した場合、製造スループットを向上させることができるが、膜の改質工程において膜中まで酸化や窒化してしまう可能性がある。そのため、膜の改質工程において、膜の表面にSi含有層、酸素含有層、窒素含有層、リン含有層の少なくともいずれかの層を形成することが好ましい。
【0117】
また、(a)から(d)で供給されるキャリアガスおよびパージガスとして、希ガスが用いられることが好ましい。これにより、成膜中および改質中の膜の窒化を抑制することができる。
【0118】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0119】
例えば、上記実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0120】
また、本開示の実施形態における基板処理装置は、半導体を製造する半導体製造装置だけではなく、LCD装置の様なガラス基板を処理する装置でも適用可能である。また、基板に対する処理は、例えば、CVD、PVD、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理等を含む。また、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置等の各種基板処理装置にも適用可能であるのは言うまでもない。
【0121】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0122】
[付記1]
(a)処理容器内に収容された基板に金属元素含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に還元ガスを供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを所定回数行うことにより、前記基板に金属元素を含有する膜を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記膜に改質ガスを供給し、前記膜の表面に前記改質ガスが含有する元素を含む層を形成する工程と、
(e)(d)の後、前記処理容器内、および、前記処理容器に隣接する移載室内を希ガス雰囲気として、前記基板を前記処理容器から前記移載室に搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法。
【0123】
[付記2]
付記1の方法であって、
(e)は、(c)および(d)における前記処理容器内の温度設定を維持した状態で行われる。
【0124】
[付記3]
付記1または2の方法であって、
(f)(a)の前に、前記処理容器内と、前記移載室内とを、希ガスを除く不活性ガス雰囲気として、前記基板を前記移載室内から前記処理容器内に搬入する工程と、
(g)(f)から(e)の間で、前記移載室内を前記希ガスを除く不活性ガス雰囲気から前記希ガス雰囲気に変える工程と、
を有する。
【0125】
[付記4]
付記1から3のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、水素化シリコンガスまたはクロロシラン系ガスを用いて、前記膜の表面にシリコン含有層を形成する。
【0126】
[付記5]
付記1から4のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、酸素含有ガスを用いて、前記膜の表面に酸化層を形成する。
【0127】
[付記6]
付記1から5のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、窒素含有ガスを用いて、前記膜の表面に窒化層を形成する。
【0128】
[付記7]
付記1から6のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、ボロン含有ガスを用いて、前記膜の表面にボロン含有層を形成する。
【0129】
[付記8]
付記1から7のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、フッ素含有ガスを用いて、前記膜の表面にフッ素含有層を形成する。
【0130】
[付記9]
付記1から8のいずれかの方法であって、
(d)では、前記改質ガスとして、リン含有ガスを用いて、前記膜の表面にリン含有層を形成する。
【0131】
[付記10]
付記1から9のいずれかの方法であって、
(d)では、(a)から(c)と比較して、前記処理容器内の温度設定を維持する、または、前記処理容器内の温度設定を下げる。
【0132】
[付記11]
付記1から10のいずれかの方法であって、
(a)から(d)で供給されるキャリアガスおよびパージガスとして、希ガスが用いられる。
【0133】
[付記12]
付記1の各手順(各工程)をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム、又は当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0134】
[付記13]
処理容器と、
前記処理容器に隣接する移載室と、
基板を搬送する搬送系と、
前記処理容器内に金属元素含有ガスを供給する金属元素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に還元ガスを供給する還元ガス供給系と、
前記処理容器内に改質ガスを供給する改質ガス供給系と、
前記処理容器内、および、前記移載室内に希ガスを供給する希ガス供給系と、
前記処理容器内、および、前記移載室内を排気する排気系と、
付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記搬送系、前記金属元素含有ガス供給系、前記還元ガス供給系、前記改質ガス供給系、前記希ガス供給系、および、前記排気系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【符号の説明】
【0135】
10 基板処理装置
124 移載室
200 ウエハ(基板の一例)
201 処理室(処理容器の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6