(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】超音波内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2022510067
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011306
(87)【国際公開番号】W WO2021193402
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020055657
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】木ノ本 昇
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149815(WO,A1)
【文献】特開2009-207758(JP,A)
【文献】特開2011-083410(JP,A)
【文献】特開平08-280686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端部に超音波振動子を備え、観察系と照明系とが前記超音波振動子よりも先端側に配置されたラジアル型の超音波内視鏡であって、
前記先端部は、
前記先端部にバルーンを着脱自在に取り付けるためのバルーン取付部であって、前記超音波振動子
の基端側に、前記先端部の外周にわたって設けられた第1バルーン溝を有するバルーン取付部と、
前記先端部に取り付けられた前記バルーンの内部空間に開口した出入口を有する連通路であって、前記バルーンの内部空間に対して流体を供給又は吸引するための連通路と、
を備え、
前記連通路の前記出入口は、前記挿入部の長手軸に対して斜めに傾斜して形成され、
前記第1バルーン溝は、前記先端部の周方向において他の部分よりも溝の深さが浅く形成された浅溝部を有し、
前記浅溝部が形成された前記先端部の内側領域に、前記連通路の前記出入口が設けられている、
超音波内視鏡。
【請求項2】
前記バルーン取付部は、前記超音波振動子の先端側に、前記先端部の外周にわたって設けられた第2バルーン溝を有し、
前記第2バルーン溝の深さは、前記先端部の周方向において均一に形成されている、
請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記挿入部の長手軸に直交する断面において、前記第1バルーン溝の底面形状は、円
の一部を膨らませた形状であ
り、
前記出入口が前記膨らませた形状の内側に配置される、
請求項1又は2に記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
前記超音波振動子の中心軸と前記先端部の中心軸とが一致している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
前記連通路は、前記出入口よりも基端側が前記挿入部の長手軸に対して平行に形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波内視鏡に係り、特に、体腔内に挿入される挿入部の先端部にバルーンを装着可能な超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において超音波内視鏡が利用されている。超音波内視鏡は、被検体の体腔内に挿入される挿入部の先端部に、撮像素子と超音波トランスデューサとを一体的に配置したものである。超音波トランスデューサは、体腔内の被観察部位に向けて超音波を発生し、被観察部位で反射したエコー信号を受信し、受信したエコー信号に応じた電気信号が超音波観測装置に出力される。そして、超音波観測装置において各種の信号処理がなされた後、超音波断層画像としてモニタ等に表示される。
【0003】
超音波及びエコー信号は、空気中で著しく減衰するため、超音波トランスデューサと被観察部位の間に、水又はオイル等の超音波伝達媒体を介在させる必要がある。そこで、超音波内視鏡の先端部に伸縮性のバルーンを装着し、このバルーンに超音波伝達媒体を注入して膨張させ、被観察部位に当接させている。これにより、超音波トランスデューサと被観察部位の間から空気が排除され、超音波及びエコー信号の減衰が防止される。
【0004】
バルーンの内部に超音波伝達媒体を供給及び排出するため、または、バルーンを膨らませるための空気を供給及び排出するために、超音波内視鏡の挿入部の内部には連通路が挿通されている。連通路は、挿入部の先端部に開口する先端開口を有し、この先端開口を介してバルーンの内部に超音波伝達媒体又は空気が供給又は排出されるようになっている。
【0005】
超音波内視鏡は検査後に洗浄及び消毒が行われ、連通路はブラッシングを行う必要がある。洗浄ブラシで連通路の洗浄を容易にするため、例えば、下記の特許文献1には、バルーン吸着管路又は/及びバルーン注水管路(「連通路」に相当)の出入口を挿入部の軸線に対して傾斜させた超音波内視鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、連通路の出入口を挿入部の軸線に対して斜めに傾斜した構成とする場合、次のような問題がある。すなわち、連通路の先端開口の位置を変更せず、出入口を傾斜すると、連通路の出入口が先端部の長手軸に対して垂直に形成されている場合と比べて、出入口が外側に配置されるため、バルーンの基端側の端部を取り付けるバルーン溝と出入口が干渉する。そのため、バルーン溝を基端側に移動させる必要がある。バルーン溝を基端側に配置すると、先端部の全長が長くなり、湾曲部で湾曲させる際、先端部軌跡の半径が大きくなり、より大きなスペースが必要となっていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、先端部の長尺化を防ぐとともに、ブラシ洗浄性を向上させることができる超音波内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る超音波内視鏡は、挿入部の先端部に超音波振動子を備え、観察系と照明系とが超音波振動子よりも先端側に配置されたラジアル型の超音波内視鏡であって、先端部は、先端部にバルーンを着脱自在に取り付けるためのバルーン取付部であって、超音波振動子の少なくとも基端側に、先端部の外周にわたって設けられた第1バルーン溝を有するバルーン取付部と、先端部に取り付けられたバルーンの内部空間に開口した出入口を有する連通路であって、バルーンの内部空間に対して流体を供給又は吸引するための連通路と、を備え、連通路の出入口は、挿入部の長手軸に対して斜めに傾斜して形成され、第1バルーン溝は、先端部の周方向において他の部分よりも溝の深さが浅く形成された浅溝部を有し、浅溝部が形成された先端部の内側領域に、連通路の出入口が設けられている。
【0010】
本発明の一形態は、バルーン取付部は、超音波振動子の先端側に、先端部の外周にわたって設けられた第2バルーン溝を有し、第2バルーン溝の深さは、先端部の周方向において均一に形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の一形態は、挿入部の長手軸に直交する断面において、第1バルーン溝の底面形状は、円を出入口が設けられている箇所に向かって膨らませた形状であることが好ましい。
【0012】
本発明の一形態は、超音波振動子の中心軸と先端部の中心軸とが一致していることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態は、連通路は、出入口よりも基端側が挿入部の長手軸に対して平行に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、先端部の長尺化を防ぐとともに、連通路のブラシ洗浄性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】超音波内視鏡を備える内視鏡装置のシステム構成図である。
【
図2】超音波内視鏡の挿入部の先端部を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の先端部と比較例の先端部とのバルーン取付部の比較を説明する概略図である。
【
図6】超音波内視鏡の先端部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波内視鏡の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波内視鏡を備える内視鏡装置の一例を示すシステム構成図である。
図2は、超音波内視鏡の挿入部の先端部を示す斜視図である。
図3は、超音波内視鏡の先端部の側断面図である。
【0018】
図1に示すように内視鏡装置1としては、ラジアル型の超音波内視鏡10、バルーン60、及び、バルーン制御装置70で構成される。超音波内視鏡10は、操作部14と、この操作部14に連設され、体内に挿入される挿入部12とを備える。操作部14には、ユニバーサルコード16が接続され、このユニバーサルコード16は途中で枝分かれして、一方は、超音波断層画像を生成する超音波観測装置17に着脱自在に接続される。超音波観測装置17で生成された超音波診断画像は、モニタ50に表示される。また、ユニバーサルコード16の他方は、先端にLGコネクタ18が設けられる。LGコネクタ18は光源装置20に着脱自在に連結され、これによって挿入部12の先端に設けた照明窓54に照明光が送られる。また、LGコネクタ18には、ケーブル22を介して電気コネクタ24が接続され、この電気コネクタ24がプロセッサ26に着脱自在に連結される。
【0019】
操作部14には、送気送水ボタン28、吸引ボタン30、シャッターボタン32、及び機能切替ボタン34が並設されるとともに、一対のアングルノブ36、36が設けられる。
【0020】
挿入部12は、操作部14側から順に軟性部40、湾曲部42、及び先端部44で構成される。軟性部40は、螺旋状に巻回された金属板の外周にネットを被せ、その外周を被覆することにより構成されており、十分な可撓性を有している。
【0021】
湾曲部42は、操作部14のアングルノブ36、36を回動することによって遠隔的に湾曲するように構成される。たとえば、湾曲部42は、円筒状の複数の節輪をピンによって回動自在に連結するとともに、その節輪の内部に複数本の操作ワイヤを挿通させてピンにガイドさせている。そして、操作ワイヤを押し引き操作することによって、節輪同士が回動して湾曲部42が湾曲操作されるようになっている。この湾曲部42を湾曲操作することによって、先端部44を所望の方向に向けることができる。
【0022】
図2に示すように、先端部44の外周面には、超音波断層画像を得るための複数の超音波振動子92が並設された、超音波送受信面を有する超音波トランスデューサ94が配置されている。超音波トランスデューサ94は、被観察部位に向けて超音波を放射し、そのエコー信号を受信する。また、超音波断層検査を行う際には、先端部44の外周面に、超音波トランスデューサ94を覆うようにしてバルーン60が装着される。
【0023】
図2に示すように、超音波トランスデューサ94よりも先端側である、先端部44の先端面45には、観察窓(観察系)52、照明窓(照明系)54、54、送気送水ノズル56、及び、処置具導出口58が設けられる。また、
図3に示すように、観察窓52の後方にはプリズム(不図示)を介して、観察光学系及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子140が配設され、この撮像素子140を支持する基板142に信号ケーブル144が接続される。信号ケーブル144は挿入部12、操作部14、及び、ユニバーサルコード16等に挿通されて電気コネクタ24まで延設され、プロセッサ26に接続される。よって、観察窓52で取り込まれた観察像が撮像素子140の受光面に結像されて電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブル144を介してプロセッサ26に出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサ26に接続されたモニタ50に観察画像が表示される。
【0024】
照明窓54は、
図3に示すように、その後方に照明光学系及びライトガイド146の出射端が配設される。ライトガイド146は挿入部12、操作部14及びユニバーサルコード16に挿通されてLGコネクタ18内にその入射端が配設される。したがって、LGコネクタ18を光源装置20に連結することによって、光源装置20から照射された照明光がライトガイド146を介して照明光学系に伝送され、照明窓54から前方に照射される。
【0025】
先端部44に設けた送気送水ノズル56は、送気送水ボタン28によって操作されるバルブ(不図示)に連通される。このバルブがLGコネクタ18に設けた送気送水コネクタ48に連通される。送気送水コネクタ48には不図示の送気送水手段が接続され、エア及び水が供給される。したがって、送気送水ボタン28を操作することによって、送気送水ノズル56からエア又は水が観察窓52に向けて噴射される。
【0026】
先端部44に設けた処置具導出口58は、処置具挿通チャンネル47を介して処置具挿入部46に連通される。よって、処置具挿入部46から鉗子等の処置具を挿入することによって、処置具を処置具導出口58から導出することができる。また、処置具導出口58は、吸引ボタン30によって操作されるバルブ(不図示)に連通され、このバルブがLGコネクタ18の吸引コネクタ49に接続される。したがって、吸引コネクタ49に不図示の吸引手段を接続し、吸引ボタン30で操作することによって、処置具導出口58から病変部等を吸引することができる。
【0027】
超音波内視鏡10の挿入部12の先端部44の外周には、バルーン60を着脱自在に取り付けるためのバルーン取付部152を有する。バルーン取付部152は、超音波振動子92の基端側に、先端部44の外周にわたって、設けられた第1バルーン溝154と、超音波振動子92の先端側に先端部44の外周にわたって設けられた第2バルーン溝156とを有する。バルーン60は、シリコンゴム等の弾性材料から構成される。バルーン60は、第1バルーン溝154に装着される第1筒部60Aと、第2バルーン溝156に装着される第2筒部60Bと、第1筒部60Aと第2筒部60Bとの間に設けられるバルーン本体60Cと、を有する。第1筒部60A及び第2筒部60Bは、バルーン本体60Cに対して絞られた略筒状に形成されている。
【0028】
このバルーン60は、挿入部12を挿通させることによって、バルーン取付部152の第1バルーン溝154及び第2バルーン溝156に配置される。第1バルーン溝154及び第2バルーン溝156は、装着されるバルーン60の第1筒部60A及び第2筒部60Bの端部の位置に合わせてそれぞれ設けられており、第1筒部60A及び第2筒部60Bの端部は、第1バルーン溝154及び第2バルーン溝156にそれぞれ嵌合する。第1筒部60A及び第2筒部60Bは、装着前状態では、超音波内視鏡10の挿入部12の外径より小さな内径で構成される。バルーン60が挿入部12に装着されると、第1筒部60Aの弾性力、及び、第2筒部60Bの弾性力は、挿入部12の径方向内側に向けて作用する。すなわち、挿入部12に装着されることで、広がった第1筒部60A及び第2筒部60Bは、元のサイズに戻ろうと収縮する。この第1筒部60Aと第2筒部60Bの収縮力により、バルーン60は挿入部12の所定の位置に保持される。
【0029】
先端部44には、超音波振動子92の基端側で第1バルーン溝154の先端側に、バルーン取付部152に取り付けられたバルーン60の内部空間に開口した連通路90の出入口91を有する。連通路90は、出入口91を介して、バルーン60の内部空間に対して、流体を供給又は吸引する。流体としては、超音波伝達媒体として脱気水を挙げることができる。脱気水をバルーン60内に供給し、バルーンを膨張させて、体内の被観察部位に当接させる。これにより、被観察部位と、超音波トランスデューサ94の間、すなわち、超音波の走査領域から空気が排除されて、超音波及びエコー信号の減衰が防止される。なお、被検者の体内から挿入部12を引き出す際は、バルーン60内の脱気水を連通路90から排出して、バルーン60を収縮させる。
【0030】
連通路90は、
図1に示す操作部14のバルーン送気口38に連通される。バルーン送気口38には、
図1のチューブ80が接続され、このチューブ80を介してバルーン制御装置70が接続される。バルーン制御装置70は、バルーン60に流体を供給及び吸引する装置であり、このバルーン制御装置70から、流体を供給又は吸引することによって、バルーン60に流体を供給又は吸引することができる。バルーン60は流体を供給することによって略球状に膨張し、流体を吸引することによって挿入部12の外表面に張り付くようになっている。
【0031】
図1に示すように、バルーン制御装置70は主として、装置本体72と、リモートコントロール用のハンドスイッチ74で構成される。装置本体72の前面には、電源スイッチSW1、停止スイッチSW2、圧力表示部76が設けられる。圧力表示部76はバルーン60の圧力値を表示するパネルであり、バルーン破れ等の異常発生時にはこの圧力表示部76にエラーコードが表示される。
【0032】
装置本体72の前面には、バルーン60への流体の供給及び吸引を行うチューブ80が接続される。チューブ80と装置本体72との接続部分にはバルーン60が破れた時の体液の逆流を防止するための逆流防止ユニット82が設けられる。逆流防止ユニット82は、装置本体72に着脱自在に装着された中空円盤状のケース(不図示)の内部に気液分離用のフィルタを組み込むことによって構成されており、装置本体72内に液体が流入することをフィルタによって防止する。
【0033】
一方、ハンドスイッチ74には、各種のスイッチが設けられる。たとえば、装置本体72側の停止スイッチSW2と同様の停止スイッチや、バルーン60の加圧及び減圧を指示するON/OFFスイッチ、バルーン60の圧力を保持するためのポーズスイッチなどが設けられる。このハンドスイッチ74はコード84を介して装置本体72に電気的に接続されている。なお、
図1には示してないが、ハンドスイッチ74には、バルーン60の送気状態、或いは排気状態を示す表示部が設けられている。
【0034】
バルーン制御装置70は、バルーン60に流体を供給して膨張させるとともに、その圧力値を一定値に制御してバルーン60を膨張した状態に保持する。また、バルーン60から流体を吸引して収縮させるとともに、その圧力値を一定値に制御してバルーン60を収縮した状態に保持する。
【0035】
バルーン制御装置70は、バルーン専用モニタ86に接続されており、バルーン60を膨張及び収縮させる際に、バルーン60の圧力値や膨張及び収縮状態をバルーン専用モニタ86に表示する。なお、バルーン60の圧力値や膨張及び収縮状態は、超音波内視鏡10の観察画像にスーパーインポーズしてモニタ50に表示するようにしてもよい。
【0036】
連通路90は、
図3に示すように、連通路90の出入口91が、挿入部12の長手軸Aに対して斜めに傾斜して形成されており、出入口91より基端側は、挿入部12の長手軸に対して平行に形成されている。連通路90の出入口91を、挿入部12の長手軸に対して斜めに傾斜して形成することで、洗浄ブラシを用いて連通路90の洗浄を行う際に、連通路90の基端側から挿入した洗浄ブラシを、連通路90の出入口91に沿って挿通することができる。したがって、出入口91付近の体液及び残渣等を洗浄ブラシで効率的に洗浄することができる。
【0037】
図4は、
図3のIV-IV線(第1バルーン溝154の位置)で切断した断面図(挿入部12の長手軸に直交する断面図)である。なお断面IVAは、先端部44内の連通路90の出入口以外の内容物については、省略して記載している。また、断面IVBは、断面IVAから第1バルーン溝154の底面形状のみを記載した図である。
図4に示すように、先端部44の外形は円形の形状で形成されている。そして、第1バルーン溝154の底面形状は、断面視において、先端部44の外形に沿って形成された円形の形状の一部を、外側に向かって膨らませた形状である。第1バルーン溝154の底面形状の一部を外側に向かって膨らませた形状とすることで、第1バルーン溝154は、先端部44の周方向において、他の部分よりも溝の深さが浅く形成された浅溝部158を有する。
【0038】
第1バルーン溝154に浅溝部158を設けることで、溝の深さを浅くした領域分、先端部44の内部の内側領域に空間を設けることができる。本実施形態においては、連通路90の出入口91を、この浅溝部158の内側領域に設けることで、第1バルーン溝154の長手軸方向の位置を変更することなく、また、先端部44の外形を変更することなく、連通路90の出入口91を挿入部12の長手軸に対して斜めに傾斜して形成することができる。
【0039】
図5は、本実施形態の先端部と比較例の先端部とのバルーン取付部の比較を説明する概念図である。比較例1の先端部344は、連通路
390が、先端部344の基端側から先端部344の長手軸Aに沿って平行に形成され、出入口391が長手軸Aに対して垂直に形成されている。この場合、連通路390を基端側から洗浄ブラシで洗浄する際、出入口391まで洗浄ブラシを挿通し、洗浄することが困難となる。
【0040】
一方、比較例2の先端部444においては、連通路490の出入口491を長手軸Aに対して斜めに傾斜して形成している。これにより、連通路490の基端側から挿入した洗浄ブラシを出入口491に挿通し、洗浄することができる。ただし、この場合、出入口490を斜めに形成することで、バルーン60の基端側の端部を取り付ける第1バルーン溝454と干渉するため、第1バルーン溝454の位置を、比較例1の先端部344の第1バルーン溝354の位置P1から位置P2に変更する必要がある。そのため、先端部444においては、バルーンを取り付ける基端側の位置が先端から離れるため、先端部444の長さを長くする必要があり、湾曲部42を湾曲させる際、先端部軌跡の半径が大きくなる。
【0041】
これに対し、本実施形態の先端部44は、第1バルーン溝154に浅溝部158を設け、その内側領域に連通路90の出入口91を設けることで、出入口91と第1バルーン溝154とが干渉することを防止することができる。そのため、第1バルーン溝154の位置を先端部344と同じ位置P1に設けることができる。したがって、出入口91を斜めに形成しても、先端部44の長尺化を防止することができる。
【0042】
また、本実施形態のように、第1バルーン溝154に浅溝部158を設け、浅溝部158の内側に、連通路90の出入口91を配置することで、先端部44内の内蔵物の配置を変更することなく、連通路90の出入口91を先端部44内部の外側方向に移動させることができる。
【0043】
このように、本実施形態においては、先端部44の第1バルーン溝154に浅溝部158を設けることで、第1バルーン溝154の位置を基端側に移動させることなく、連通路90の出入口91を斜めに傾斜して形成されている。したがって、先端部44の外形を変更せずに、本実施形態の構成とすることができるので、
図2に示すように、超音波振動子92の長手方向の中心軸と、先端部44の長手方向の中心軸とが一致した構成とすることができる。なお、「超音波振動子の長手方向の中心軸と、先端部の長手方向の中心軸が一致している」とは、中心軸が完全に一致していることに限定されず、製造誤差による中心軸のバラツキは、発明の範囲に含まれる。
【0044】
また、バルーン取付部152の超音波振動子92の先端側に設けられた第2バルーン溝156は、溝の深さが、先端部44の周方向において均一に形成されている。なお、「深さが周方向において均一に形成されている」とは、周方向で完全に均一であることに限定されず、製造誤差による深さのバラツキは、発明の範囲に含まれる。第2バルーン溝156の深さを、周方向において均一にすることで、先端部44に取り付けたバルーンを外れにくくすることができる。
【0045】
第1バルーン溝154の深さとしては、例えば、次のようにすることができる。第1バルーン溝154は、浅溝部158の深さH1を、0.1mm以上0.2mm以下とすることができ、浅溝部158以外の他の部分の深さH2を0.45mm以上0.55mm以下とすることができる。また、バルーン60の第1筒部60A、第2筒部60Bの口巻の太さTは、例えば、φ1.5mmとすることができる。バルーン60の第1筒部60A、第2筒部60Bの口巻の太さTと、第1バルーン溝154の深さH2は、第1バルーン溝154の最も深い部分で、バルーン60の第1筒部60A、第2筒部60Bの口巻の1/4以上1/3以下である。浅溝部158の深さH1は、バルーン60の第1筒部60A、第2筒部60Bの口巻に対して、バルーンのズレ、又は、脱落が起きない程度の深さとすることが好ましい。
【0046】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、先端部44の長手軸方向の長さの長尺化を防止することができるとともに、連通路90のブラシ洗浄性を向上させることができる。
【0047】
以上、本発明に係る超音波内視鏡について説明したが、本発明は、上記の例には限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。以下、変形例について説明する。
【0048】
<変形例>
図6は、超音波内視鏡の先端部の変形例を示す断面図である。変形例の超音波内視鏡は、断面視において、先端部244の内形が円形の形状であり、この先端部244の外形に対して、オフセットして配置されている。また、第1バルーン溝254の底面形状が、円形の形状であり、先端部244の外形に対して、オフセットして配置されている。
【0049】
内部空間及び第1バルーン溝254を従来の円形の形状とし、先端部244の外形に対して、オフセットして配置することで、オフセットした方向に、浅溝部258を形成することができる。内部空間もオフセットすることで、連通路90の出入口91を従来より外側に配置することができる。これにより、第1バルーン溝254の位置を先端部44の長手軸に対して基端側に移動することなく、連通路90の出入口91を斜めに傾斜して形成することができる。したがって、先端部244の長尺化を防止することができるとともに、洗浄ブラシによる連通路90の洗浄を行うことができる。また、先端部の内部空間の形状は変わらないため、超音波内視鏡の内部の配置を変更することがない。
【符号の説明】
【0050】
1 内視鏡装置
10 超音波内視鏡
12 挿入部
14 操作部
16 ユニバーサルコード
17 超音波観測装置
18 LGコネクタ
20 光源装置
22 ケーブル
24 電気コネクタ
26 プロセッサ
28 送気送水ボタン
30 吸引ボタン
32 シャッターボタン
34 機能切替ボタン
36 アングルノブ
38 バルーン送気口
40 軟性部
42 湾曲部
44、244 先端部
45 先端面
46 処置具挿入部
47 処置具挿通チャンネル
48 送気送水コネクタ
49 吸引コネクタ
50 モニタ
52 観察窓
54 照明窓
56 送気送水ノズル
58 処置具導出口
60 バルーン
60A 第1筒部
60B 第2筒部
60C バルーン本体
70 バルーン制御装置
72 装置本体
74 ハンドスイッチ
76 圧力表示部
80 チューブ
82 逆流防止ユニット
84 コード
86 バルーン専用モニタ
90、390、490 連通路
91、391、491 出入口
92 超音波振動子
94 超音波トランスデューサ
140 撮像素子
142 基板
144 信号ケーブル
146 ライトガイド
152 バルーン取付部
154、254、354、454 第1バルーン溝
156 第2バルーン溝
158、258 浅溝部