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特許7387883ABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20231120BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20231120BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231120BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231120BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231120BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L55/02
C08K3/013
C08K3/04
C08L83/04
C08J5/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022520108
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2021007209
(87)【国際公開番号】W WO2022065630
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123587
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジノ・ナム
(72)【発明者】
【氏名】スンフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・リョン・キム
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-331026(JP,A)
【文献】特開2001-323127(JP,A)
【文献】特開2002-020574(JP,A)
【文献】特開昭51-100145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物非グラフト共重合体60~80重量%のみからなる樹脂混合物100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン1.5~2.5重量部と;を含み、
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であることを特徴とする、ABS系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、アルキレンオキシドで変性されたポリジアルキルシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、側鎖型ポリエーテル変性ポリシロキサン、末端型ポリエーテル変性ポリシロキサン、及び側鎖末端型ポリエーテル変性ポリシロキサンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、重量平均分子量が10,000~50,000g/molであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項6】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物非グラフト共重合体は、芳香族ビニル化合物60~80重量%及びビニルシアン化合物20~40重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項7】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物非グラフト共重合体は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項8】
無機顔料0.1~5重量部を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機顔料はカーボンブラックであることを特徴とする、請求項8に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項10】
色差計(Color-Eye 7000A、SCIモード)を用いて測定したColor L値が28.5以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項11】
グロスメーターVG7000により45°で測定した光沢度(gloss)が86以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項12】
ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”で測定した衝撃強度が30kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物。
【請求項13】
ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物非グラフト共重合体60~80重量%のみからなる樹脂混合物100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン1.5~2.5重量部と;を含んで200~250℃及び100~400rpmの条件下で溶融混練した後、押出するステップを含むことを特徴とする、ABS系樹脂組成物の製造方法であって、
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体である、製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のABS系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年09月24日付の韓国特許出願第10-2020-0123587号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れたABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂に代表されるビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、「ABS系樹脂」という)は、既存の高強度ポリスチレン(High-Impact PolyStyrene;HIPS)の欠点である低い耐熱性及び剛性を解決したもので、高い耐衝撃性、耐化学性、熱安定性、着色性、耐疲労性、剛性、加工性などの物性に優れ、その中でも特に加工性に優れる。このような特性により、ABS系樹脂は、自動車用内/外装材、事務用機器、各種電気/電子製品などの部品または玩具類などの材料として使用されている。
【0004】
但し、さらに高い衝撃強度を有するABS系樹脂が必要な場合に、シリコーンなどの添加剤を混合してABS系樹脂の衝撃強度を向上させる。
【0005】
しかし、ABS系樹脂に衝撃強度を向上させるためにシリコーンなどの添加剤を混合すれば、衝撃強度は向上するが、物性間のトレードオフの関係により、着色性及び光沢度が低下するという欠点を有する。
【0006】
したがって、ABS系樹脂本来の物性が低下しないながらも、衝撃強度、着色性及び光沢度が同時に向上するABS系樹脂組成物などの開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2001-0056186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れたABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン0.1~5重量部とを含むことを特徴とするABS系樹脂組成物を提供する。
【0011】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、アルキレンオキシドで変性されたポリジアルキルシロキサンであってもよい。
【0012】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、側鎖型ポリエーテル変性ポリシロキサン、末端型ポリエーテル変性ポリシロキサン及び側鎖末端型ポリエーテル変性ポリシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0013】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、重量平均分子量が10,000~50,000g/molであってもよい。
【0014】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、好ましくは、共役ジエンゴム40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよい。
【0015】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、芳香族ビニル化合物60~80重量%及びビニルシアン化合物20~40重量%を含んでなってもよい。
【0016】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであってもよい。
【0017】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、無機顔料0.1~5重量部を含むことができる。
【0018】
前記無機顔料は、好ましくはカーボンブラックであってもよい。
【0019】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、色差計(Color-Eye 7000A、SCIモード)を用いて測定したColor L値が28.5以下であってもよい。
【0020】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、グロスメーターVG7000により45°で測定した光沢度(gloss)が86以上であってもよい。
【0021】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”で測定した衝撃強度が30kgf・cm/cm以上であってもよい。
【0022】
本発明は、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン0.1~5重量部と;を含んで200~250℃及び100~400rpmの条件下で溶融混練した後、押出させるステップを含むことを特徴とするABS系樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、前記ABS系樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れたABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のABS系樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を詳細に説明する。
【0026】
本発明者らは、ABS系樹脂とSAN系樹脂を所定の比率で混合し、これに所定のポリエーテル変性ポリシロキサンを所定の含量で含ませる場合、従来、ABS系樹脂に適用されていた衝撃強度と着色性及び光沢度とのトレードオフの関係が成立せず、予想外に衝撃強度、着色性及び光沢度が全て向上することを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0027】
本発明のABS系樹脂組成物は、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン0.1~5重量部とを含むことを特徴とし、この場合、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度が全て向上するという利点がある。
【0028】
本発明のABS系樹脂組成物を構成する各成分を分けて詳細に説明すると、次の通りである。
【0029】
ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体
本発明のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例としてベース樹脂中に20~40重量%、好ましくは20~35重量%、より好ましくは20~30重量%、さらに好ましくは23~27重量%含まれてもよく、この範囲内で、機械的強度、流動性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0030】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、好ましくは、共役ジエンゴム40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0031】
より好ましくは、前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム45~70重量%、芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0032】
さらに好ましくは、前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム50~65重量%、芳香族ビニル化合物20~35重量%及びビニルシアン化合物5~15重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0033】
前記共役ジエンゴムは、好ましくは平均粒径が50~500nmであってもよく、より好ましくは100~500nm、さらに好ましくは150~400nm、より一層好ましくは200~350nm、最も好ましくは250~320nmであり、この範囲内で、ABS系樹脂組成物の機械的物性、着色性などの物性に優れるという効果がある。
【0034】
本発明において、共役ジエンゴムの平均粒径は、ダイナミックレーザ光散乱方法により米国Nicomp社のNicomp 370HPL機器を用いてガウスモードでインテンシティ(intensity)値で測定することができる。その具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint) 300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μ秒として測定することができる。
【0035】
前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0036】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、p-エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0037】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0038】
前記共役ジエンゴムは、好ましい実施例としては、ブタジエン重合体、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体及びこれらから誘導された重合体のうちの1種以上であってもよいが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0039】
本発明において、誘導された重合体というのは、元々共重合体に含まれていない他の単量体や重合体が共に共重合されたもの、またはその単量体の誘導体で共重合されたものを意味する。
【0040】
本発明において、誘導体は、原化合物の水素原子又は原子団が他の原子又は原子団で置換された化合物であり、一例として、ハロゲン又はアルキル基で置換された化合物を意味する。
【0041】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などを含む公知の重合方法により製造可能であり、好ましくは乳化重合で製造されてもよい。
【0042】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体を乳化重合により製造する方法は、好ましくは、前記グラフト共重合体に含まれる共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総100重量部を基準として、共役ジエンゴム40~80重量%、乳化剤0.1~5重量部、分子量調節剤0.1~3重量部及び重合開始剤0.05~1重量部からなる混合溶液に、ビニルシアン化合物1~20重量%及び芳香族ビニル化合物10~40重量%を含む単量体混合物を連続又は一括投入して重合するステップを含むことができる。
【0043】
前記乳化剤は、一例として、アリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルスルホネート、スルホン化アルキルエステル、脂肪酸石鹸及びロジン酸アルカリ塩からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、重合反応の安定性に優れるという効果がある。
【0044】
前記分子量調節剤は、一例として、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン及び四塩化炭素からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはt-ドデシルメルカプタンである。
【0045】
前記重合開始剤は、一例として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、重合効率及び製造される重合体の物性に優れるという効果がある。
【0046】
前記乳化重合により収得されたラテックスは、一例として、硫酸、MgSO、CaClまたはAl(SOなどの凝集剤で凝集した後、熟成、脱水及び乾燥して粉末状態で得ることができる。
【0047】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常使用される条件、方法及び装置などを用いる場合、特に制限されない。
【0048】
芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本発明の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、ベース樹脂中に60~80重量%、好ましくは65~80重量%、より好ましくは70~80重量%、さらに好ましくは73~77重量%含まれてもよく、この範囲内で、機械的強度、流動性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0049】
本発明において、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、この技術分野で一般的に意味する芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(SAN系樹脂)であれば、特に制限されず、好ましくは、芳香族ビニル化合物60~80重量%及びビニルシアン化合物20~40重量%を含んでなってもよく、この場合、ABS系樹脂組成物の流動性の向上により、加工性及び生産性に優れるという利点がある。
【0050】
他の一例として、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物70~80重量%及びビニルシアン化合物20~30重量%を含んでなってもよく、この場合、ABS系樹脂組成物の加工性及び生産性に優れながらも、衝撃強度などの機械的物性、耐熱性及び着色性などに優れるという利点がある。
【0051】
更に他の一例として、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなってもよく、この場合、ABS系樹脂組成物の加工性及び生産性に優れながらも、衝撃強度などの機械的物性、耐熱性及び着色性などに優れるという効果がある。
【0052】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、塊状重合または乳化重合により製造できるが、製造コストの面で塊状重合により製造することが好ましい。
【0053】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは50,000~200,000g/molであってもよく、より好ましくは80,000~180,000g/mol、さらに好ましくは100,000~150,000g/mol、より一層好ましくは120,000~150,000g/molであり、この範囲内で、目的とする流動性を獲得して加工性、生産性などに優れ、着色性に優れるという利点がある。
【0054】
前記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ法(Gel Permeation Chromatograph;GPC)で測定することができ、具体例として、GPCで測定した標準ポリスチレンに対する換算数値で測定することができる。
【0055】
本発明において、重量平均分子量は、詳細な測定例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定条件の例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/分、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0056】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の製造方法は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常使用される条件、方法及び装置などを用いる場合、特に制限されない。
【0057】
ポリエーテル変性ポリシロキサン
本発明のポリエーテル変性ポリシロキサンは、一例として、ベース樹脂100重量部を基準として、0.1~5重量部含まれてもよく、好ましくは0.2~3重量部、より好ましくは0.3~3重量部、さらに好ましくは0.4~2.5重量部、より一層好ましくは0.5~2.5重量部、特に好ましくは1~2.5重量部、特にさらに好ましくは1.5~2.5重量部であり、この範囲内で、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れ、特に耐化学性に優れるという利点がある。
【0058】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはテトラメチレンオキシドなどのアルキレンオキシドで変性されたポリシロキサンであってもよく、より好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドで変性されたポリジアルキルシロキサンであり、この場合、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0059】
前記ポリジアルキルシロキサンは、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、ポリジブチルシロキサン及びポリジペンチルシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0060】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、側鎖型ポリエーテル変性ポリシロキサン、末端型ポリエーテル変性ポリシロキサン、及び側鎖末端型ポリエーテル変性ポリシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、側鎖型ポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサン、末端型ポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサン、及び側鎖末端型ポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0061】
前記側鎖型ポリエーテル変性は、ポリシロキサンの主鎖に対してポリエーテル残基が側鎖(side chain)に結合されることを意味し、前記末端型ポリエーテル変性は、ポリエーテル残基が末端(chain end)に結合されることを意味し、前記側鎖末端型ポリエーテル変性は、ポリエーテル残基が側鎖と末端の両方に結合されることを意味する。
【0062】
前記側鎖型ポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサンは、より好ましくは、下記化学式1で表される重合体であってもよく、この場合、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0063】
【化1】
【0064】
前記化学式1において、PEは、ポリエーテル残基を示し;Rは、アルキル基を示し;Rは、アルキレン基を示し;x、y及びzは、任意の数であり、具体的には50~1,000の整数である。
【0065】
本発明において、アルキル基は、一例として炭素数1~20のアルキル基、好ましくは炭素数1~16のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、より一層好ましくは炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0066】
前記アルキル基は、一例として、線状、分岐状または環状であってもよい。
【0067】
前記アルキル基は、具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0068】
また、前記アルキル基は、任意に1つ以上の置換基で置換されたものであってもよい。
【0069】
本発明において、アルキレン基は、一例として炭素数1~20のアルキレン基、好ましくは炭素数1~16のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~12のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキレン基、より一層好ましくは炭素数1~4のアルキレン基であってもよい。
【0070】
前記アルキレン基は、一例として、線状、分岐状または環状であってもよい。
【0071】
また、前記アルキレン基は、任意に1つ以上の置換基で置換されたものであってもよい。
【0072】
前記アルキル基又はアルキレン基に置換される置換基は、一例として、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、チオール基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアリール基などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0073】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは、表面張力が15~30mN/mであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0074】
本発明において、表面張力は、本発明の属する技術分野で通常用いられる方法により測定する場合、特に制限されないが、具体例として液滴法により測定することができる。
【0075】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンは、好ましくは重量平均分子量が10,000~50,000g/mol、より好ましくは20,000~35,000g/molであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れるという利点がある。
【0076】
前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値で測定することができる。
【0077】
前記ポリエーテル変性ポリシロキサンの製造方法は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常使用される条件、方法及び装置などを用いる場合、特に制限されない。
【0078】
無機顔料
本発明の無機顔料は、好ましくは、カーボンブラック、二酸化チタン(TiO)またはこれらの混合物であってもよく、この場合、機械的物性を維持しながらも着色性に優れ、変色度が低いという効果がある。
【0079】
前記カーボンブラックは、好ましくは、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ファーネスブラック(furnace black)及びチャンネルブラック(channel black)からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、機械的物性を維持しながらも着色性に優れ、変色度が低いという効果がある。
【0080】
前記カーボンブラックは、好ましくは、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体と混合されたマスターバッチであってもよく、この場合、機械的物性を維持しながらも着色性に優れ、変色度が低いという効果がある。
【0081】
前記カーボンブラックマスターバッチは、好ましくは、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~70重量%及びカーボンブラック30~70重量%を含むことができ、より好ましくは、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~70重量%及びカーボンブラック30~50重量%を含むことができ、この範囲内で、機械的物性を維持しながらも着色性に優れ、変色度が低いという効果がある。
【0082】
前記無機顔料は、好ましくは、ベース樹脂100重量部に対して、0.1~5重量部、より好ましくは0.5~3重量部、さらに好ましくは0.5~2重量部、より一層好ましくは0.5~1.5重量部含まれてもよく、この範囲内で、機械的物性を維持しながらも着色性に優れ、変色度が低いという効果がある。
【0083】
ABS系樹脂組成物
本発明のABS系樹脂組成物は、好ましくは、220℃及び10kgの条件下で測定した溶融指数(MFR)が15~25g/10分であってもよく、より好ましくは18~25g/10分、さらに好ましくは18~23g/10分であり、この範囲内で、加工性に優れ、物性バランスに優れるという利点がある。
【0084】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、色差計(Color-Eye 7000A、SCIモード)を用いて測定したColor L値が28.5以下であってもよく、より好ましくは28以下、さらに好ましくは27.5以下であり、この範囲内で、着色性に優れ、物性バランスに優れるという利点がある。
【0085】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、グロスメーターVG7000により45°で測定した光沢度(gloss)が86以上であってもよく、より好ましくは87以上、さらに好ましくは88以上であり、この範囲内で、光沢度に優れ、物性バランスに優れるという利点がある。
【0086】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、1.1%の応力(Strain)を有する曲率ジグ(Jig)に200mm×12.7mm×3.2mmの試験片を固定し、シンナー1ccを塗布した後、試験片にクラック(crack)が発生する時間として測定する耐化学性が400秒以上であってもよく、より好ましくは450秒以上、さらに好ましくは480秒以上、より一層好ましくは500秒以上、特に好ましくは550秒以上、最も好ましくは600秒以上であり、この範囲内で、耐化学性に優れながらも、物性バランスに優れるという利点がある。
【0087】
前記ABS系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”で測定した衝撃強度が30kgf・cm/cm以上であってもよく、より好ましくは32kgf・cm/cm以上、さらに好ましくは33kgf・cm/cm以上であり、好ましい例としては30~35kgf・cm/cm、より好ましい例としては32~35kgf・cm/cm、さらに好ましい例としては33~35kgf・cm/cmであり、この範囲内で、衝撃強度に優れ、物性バランスに優れるという利点がある。
【0088】
前記ABS系樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、顔料(但し、無機顔料を除く)、染料及び無機物添加剤からなる群から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して、一例として0.5~5重量部、好ましくは1~4重量部、より好ましくは1.5~3重量部含むことができ、この範囲内で、本発明が目的とする効果を阻害せず、添加剤本来の効果が良好に発現されるという利点がある。
【0089】
前記滑剤は、一例として、ワックス、シリコーンオイル及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0090】
前記シリコーンオイルは、一例として、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロゲンシリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル及びシリコーンアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0091】
前記熱安定剤は、一例として、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(tris(nonylphenyl)phosphite)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4-di-t-butyl phenyl)phosphite;TBPP)、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(2,4,6-tri-tert-butylphenyl-2-butyl-2-ethyl-1,3-propanediol phosphite)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト(diisodecyl pentaerythritol diphosphite)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(distearyl pentaerythritol diphosphite)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-di-t-butylphenyl)pentaerythritol diphosphite;PEP24)、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-di-cumylphenyl)pentaerythritol diphosphite)、及びテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホネート(tetrakis(2,4-di-tert-butylphenyl)[1,1-biphenyl]-4,4’-diyl bisphosphonate)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0092】
前記酸化防止剤は、一例として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、またはこれらの混合であってもよい。
【0093】
ABS系樹脂組成物の製造方法
本発明のABS系樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;ポリエーテル変性ポリシロキサン0.1~5重量部と;を含んで200~250℃及び100~400rpmの条件下で溶融混練した後、押出するステップを含むことを特徴とし、この場合、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度がいずれも優れたABS系樹脂組成物を提供するという効果がある。
【0094】
前記溶融混練及び押出するステップは、好ましくは、210~250℃及び200~350rpm下、より好ましくは、210~240℃及び250~350rpm下で行われてもよく、この範囲内で、本発明の目的とする効果が良好に発現されるという利点がある。
【0095】
前記溶融混練時に、一例として、滑剤、難燃剤、熱安定剤、滴下防止剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、顔料(但し、無機顔料は除く)、染料及び無機物添加剤からなる群から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して、0.1~5重量部、好ましくは0.3~4重量部、より好ましくは0.5~3重量部さらに投入することができ、この範囲内で、本発明が目的とする効果を阻害せず、添加剤本来の効果が良好に発現されるという利点がある。
【0096】
前記溶融混練及び押出ステップを通じた押出物は、好ましくはペレットであってもよい。
【0097】
前記ABS系樹脂組成物に含まれたビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、ポリエーテル変性ポリシロキサン及び無機顔料などは、上述した内容と同一であるので、その記載を省略する。
【0098】
成形品
本発明の成形品は前記ABS系樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、従来、衝撃強度を向上させると着色性及び光沢度が悪くなり、反対に、着色性及び光沢度を向上させると衝撃強度が悪くなるトレードオフの関係により同時に向上させることが難しかった衝撃強度、着色性及び光沢度が全て向上した成形品を提供するという利点がある。
【0099】
前記成形品は、好ましくは射出成形品であってもよく、より好ましくは自動車内外装材または家電外装材であってもよく、この場合、当該製品に要求される物性を全て大きく満足するという利点がある。
【0100】
前記成形品は、好ましくは、本発明のABS系樹脂組成物またはそのペレットを射出成形するステップを含んで製造されてもよく、前記射出成形は、好ましくは射出温度210~250℃、より好ましくは215~240℃、さらに好ましくは220~230℃;及び、好ましくは射出速度7~13mm/秒、より好ましくは75~85mm/秒の条件で行われてもよく、この範囲内で、本発明の目的とする効果が良好に発現されるという利点がある。
【0101】
前記成形品の製造方法は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常使用される条件、方法及び装置などを用いる場合、特に制限されない。
【0102】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0103】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で使用した成分は、次の通りである。
【0104】
(A)乳化重合ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体:平均粒径300nmのブタジエン重合体60重量%、アクリロニトリル10重量%及びスチレン30重量%を含むLG化学のDP270を使用した。
(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体:アクリロニトリル27重量%を含み、重量平均分子量が130,000g/molであるLG化学の92HRを使用した。
(C-1)ポリエーテル変性ポリシロキサン:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK-333)を使用した。
(C-2)ポリエーテル変性ポリシロキサン:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK-378)を使用した。
(C-3)未変性ポリシロキサン:ポリジメチルシロキサン(信越シリコーン、KF-96-100cs)を使用した。
(D)無機顔料:カーボンブラックマスターバッチ(ムイル化成社製、製品名BK50)を使用した。
【0105】
実施例1~4及び比較例1~3
下記表1に記載された成分及び含量を二軸押出機に投入し、220℃及び600rpm下で溶融混練及び押出してABS系樹脂組成物ペレットを製造した。前記ABS系樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥させた後、射出機で射出温度220℃、金型温度60℃及び射出速度30mm/秒の条件下で射出成形して、物性の測定のための試験片を製造した。
【0106】
[試験例]
前記実施例1~4及び比較例1~3で製造された試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0107】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):厚さ1/4”の試験片を用いて、ASTM D256に準拠して測定した。
【0108】
*流動性(g/10分):ASTM D256に準拠して、220℃及び10kgの条件下で溶融粘度を測定した。
【0109】
*光沢(gloss):グロスメーター(gloss meter)VG7000により45°で測定した(1/8インチの射出光沢)。
【0110】
*Color L:色差計(Colar-Eye 7000A、SCIモード)を用いて試験片のColor L、a、b値を測定した。参考に、L値は、明るさを示す数値であって、値が低いほど黒色の程度が強く、a値は、赤色と緑色の程度を示す数値であって、値が低いほど緑色の程度が強いことを示し、bは、黄色と青色の程度を示す数値であって、値が低いほど青色の程度が強いことを示す。
【0111】
*耐化学性(ESCR、秒):1.1%の応力(Strain)を有する曲率ジグ(Jig)に200mm×12.7mm×3.2mmの試験片を固定し、シンナー1ccを塗布した後、試験片にクラック(crack)が発生する時間を測定した。クラックが600秒まで発生しない場合、耐化学性の評価を通過したものと判断した。耐化学性の評価を通過したものは>600と記載した。
【0112】
【表1】
【0113】
前記表1に示したように、本発明に係るABS系樹脂組成物(実施例1~4)は、本発明に係るポリエーテル変性ポリシロキサンを含まないか、またはその含量範囲を外れるABS系樹脂組成物(比較例1~3)と比較して、流動性は、加工が容易な範囲内で維持されながら、衝撃強度、光沢度及び着色性がいずれも優れることが確認できた。
【0114】
総合すると、従来のように、比較例1のABS系樹脂組成物に衝撃強度を向上させるために比較例2~3のようにポリジメチルシロキサンを混合すると、衝撃強度は向上するが、反対に光沢度及び着色性が悪くなるトレードオフの関係が現れるが、実施例1~4のように本発明に係るポリエーテル変性ポリシロキサンを所定の含量で混合すると、前記のトレードオフの関係がなくなり、衝撃強度、着色性及び光沢度が同時に全て向上する。