(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ジエステル系物質の連続式製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20231121BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/82 A
(21)【出願番号】P 2021564149
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 KR2020008660
(87)【国際公開番号】W WO2021002700
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0080460
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョー、ヨン ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、スク グー
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512229(JP,A)
【文献】特開昭52-019601(JP,A)
【文献】特開平11-049726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応ユニットから第N反応ユニットまで総N個の反応ユニットが直列に連結された反応部を用いたジエステル系物質の連続式製造工程において、
テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上のジカルボン酸と炭素数が3~10である第一級アルコールを投入するステップを含み、
前記第一級アルコールは、第1反応ユニットに投入される前端投入と、第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択される1以上の反応ユニットに投入される後端投入とで分割投入され、
前記後端投入により投入される前記第一級アルコールの量は、反応部内の第一級アルコールの総投入量に対して
20~50重量%であり、
前記Nは3~6の整数である、ジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項2】
前記反応部内の前記ジカルボン酸の投入量および前記第一級アルコールの総投入量のモル比は1:2~1:5である、請求項
1に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項3】
前記反応部内の前記ジカルボン酸の投入量および前記第一級アルコールの総投入量のモル比は1:2.5~1:4である、請求項1
又は2のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項4】
前記反応ユニットは、
前記ジカルボン酸と前記第一級アルコールのエステル化反応が行われる反応器と、
前記反応器からエステル化反応中に気化した前記第一級アルコールおよび水が流入されて気液分離が行われ、液相は下部の前記反応器に投入され、気相は上部に排出されるカラムと、
前記カラムの上部に排出された前記気相を液化して液相混合物に転換する凝縮器と、
前記液相混合物が有機層および水層として層分離が行われ、分離された前記有機層は前記カラムの上端に投入される層分離器とを含む、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項5】
前記後端投入は、第2反応ユニットに投入される、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項6】
前記後端投入は、第2反応ユニットと、
第3反応ユニット~第N反応ユニットから選択されるいずれか一つの反応ユニットに投入される、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項7】
前記第一級アルコールの前端投入は、前記反応部の前端に設置されたミキサまたは前記第1反応ユニットに投入される、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項8】
前記Nは3~5である、請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【請求項9】
前記後端投入の投入位置は、反応器投入ラインへの生成物ライン投入A、反応器への反応器投入B、カラム上部投入Cおよびカラム上部ライン投入Dからなる群から選択される、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載のジエステル系物質の連続式製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月4日付けの韓国特許出願第10-2019-0080460号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、投入される原料のうち一部を分割して投入する含量と投入位置を調節するジエステル系物質の連続式製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フタレート系可塑剤は、20世紀まで世界の可塑剤市場の92%を占めており(Mustafizur Rahman and Christopher S.Brazel 「The plasticizer market an assessment of traditional plasticizers and research trends to meet new challenges」 Progress in Polymer Science 2004,29,1223-1248参照)、主に、ポリ塩化ビニル(以下、PVCとする)に柔軟性、耐久性、耐寒性などを与え、溶融時に粘度を下げて加工性を改善するために使用される添加物であり、PVCに様々な含量で投入されて、硬いパイプのような硬質製品から、柔らかく伸びやすくて食品包装材および血液バッグ、床材などに使用可能な軟質製品に至るまで、如何なる材料よりも実生活と密接な関連性を有して人体との直接な接触が不可避な用途で広く使用されている。
【0004】
しかし、フタレート系可塑剤は、PVCとの相溶性および優れた軟質付与性にもかかわらず、最近、フタレート系可塑剤が含有されたPVC製品を実生活で使用する際、製品の外部に少しずつ流出され、内分泌系障害(環境ホルモン)推定物質および重金属水準の発癌物質として作用し得るという有害性論難が提起されている(N.R.Janjua et al.「Systemic Uptake of Diethyl Phthalate,Dibutyl Phthalate,and Butyl Paraben Following Whole-body Topical Application and Reproductive and Thyroid Hormone Levels in Humans」 Environmental Science and Technology 2008,42,7522-7527参照)。特に、1960年代の米国でフタレート系可塑剤のうちその使用量が最も多いジエチルヘキシルフタレート(di-(2-ethylhexyl)phthalate、DEHP)がPVC製品の外部に流出されるという報告が発表されてから、1990年代に入って環境ホルモンに関する関心が高まり、フタレート系可塑剤の人体有害性に関する様々な研究をはじめ、汎世界的な環境規制が行われ始めた。
【0005】
これに対して、多数の研究陣は、フタレート系可塑剤、特に、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートの流出による環境ホルモンの問題および環境規制に対応すべく、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートの製造時に使用される無水フタル酸が排除された新たな非フタレート系代替可塑剤を開発したり、フタレート系ではあるが、可塑剤の流出が抑制されて工業用として使用可能なジ(2-エチルヘキシル)フタレートの代わりに使用できるフタレート系可塑剤を開発するだけでなく、フタレート系可塑剤の流出を抑制して人体為害性を著しく低減することは言うまでもなく、環境基準にも合致することができる流出抑制技術を開発するために研究を行っている。
【0006】
このように、ジエステル系の可塑剤として、既存の環境的問題があるジ(2-エチルヘキシル)フタレートの代わりに使用可能な環境的問題から自由である物質の開発が活発に行われており、優れた物性を有するジエステル系可塑剤を開発する研究は言うまでもなく、このような可塑剤を製造するための設備に関する研究も活発に行われており、工程設計の面でより効率的且つ経済的であり、簡素な工程の設計が望まれている。
【0007】
一方、上記のジエステル系可塑剤を製造する工程は、ほとんどの産業現場で回分式工程が適用されており、回分式工程として、反応器内の未反応物の還流と副反応物の効率的な除去のための気液分離システムに関する発明(韓国公開特許公報第10-2019-0027622号)と、回分式工程の設備を簡素化するために、1次直接エステル化反応および2次トランスエステル化反応の設備を統合したシステムに関する発明(韓国公開特許公報第10-2019-0027623号)が開示されている。しかし、このような発明は、回分式工程として、還流量やスチーム量の改善に限界があり、生産性が非常に低く、改善のために適用可能な技術に限界がある、という状況である。
【0008】
また、連続式工程として、2機以上の反応器を直列に連結して反応部を構成している工程に関する発明(韓国登録特許公報第10-1663586号)も開示されているが、目標転換率の達成のための反応器の反応温度の制御に関する発明であって、工程の改善および省エネルギーには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0027622号公報
【文献】韓国公開特許第10-2019-0027623号公報
【文献】韓国登録特許第10-1663586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、連続してジエステル系物質を製造する工程において、反応器に供給されるスチーム量を低減し、気化によって発生する還流量を低減して、最終製品のコスト競争力を確保するために、投入される原料を分割し、分割されて投入される量と位置を制御したジエステル系物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1反応ユニットから第N反応ユニットまで総N個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含むジエステル系物質の連続式製造工程において、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上のジカルボン酸と炭素数が3~10である第一級アルコールを投入するステップを含み、前記第一級アルコールは、第1反応ユニットに投入される前端投入と、第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択される1以上の反応ユニットに投入される後端投入とで分割投入され、前記後端投入により投入される前記第一級アルコールの量は、反応部内の第一級アルコールの総投入量に対して5~80重量%であり、前記Nは3~6の整数であるジエステル系物質の連続式製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ジエステル系物質を製造する原料のうち第一級アルコールを2以上に分割して投入し、且つ分割投入される量と分割投入される位置を制御することで、反応器に必要なスチーム量と反応器で気化した未反応物がまた反応器に戻る還流量を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に適用された一つの反応ユニットを示した工程図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるジエステル系物質の連続式製造工程を示した工程図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるジエステル系物質の連続式製造工程で分割投入される原料の位置を表した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本発明の一実施形態によると、ジエステル系物質の連続式製造方法は、第1反応ユニットから第N反応ユニットまで総N個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式製造工程で行われる。
【0017】
また、前記製造方法は、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上のジカルボン酸と炭素数が3~10である第一級アルコールを投入するステップを含む。
【0018】
また、前記第一級アルコールは、第1反応ユニットに投入される前端投入と、第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択される1以上の反応ユニットに投入される後端投入とで分割投入され、前記後端投入量は、第一級アルコールの総投入量に対して5~80重量%であり、前記Nは3~6の整数である。
【0019】
以下、本発明の一実施形態による製造方法に適用される反応について説明する。
【0020】
本発明の製造方法は、ジエステル系物質を製造する方法であって、ジカルボン酸と第一級アルコールが反応する直接エステル化反応が適用される方法であることができる。
【0021】
前記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上が適用され、前記第一級アルコールは、炭素数が3~10であるものが適用され、この炭素数さえ満たせば、直鎖状または分岐状のアルキル基を有することができ、直鎖状と分岐状が混合された異性体の混合物であることができ、前記分岐状は、1以上の構造異性体を含む混合物であることができる。
【0022】
これにより製造されるジエステル系物質としては、代表的に、アルキル基が前記第一級アルコールから由来したものが結合したテレフタレート、イソフタレート、フタレート、シクロヘキサン1,2-ジエステル、シクロヘキサン1,3-ジエステルまたはシクロヘキサン1,4-ジエステルが挙げられ、これらの物質は、環境問題を引き起こすジ(2-エチルヘキシル)フタレート可塑剤の代わりに使用可能な可塑剤系である。ただし、ジカルボン酸としてフタル酸が適用される場合、第一級アルコールとしては2-エチルヘキサノールが適用されることを排除することができるが、本発明のジエステル系物質の連続式製造方法は、前記物質の基本的な条件として、ジカルボン酸および炭素数3~10の第一級アルコールであることを満たせば、適用が可能である。
【0023】
本発明の一実施形態による製造方法は、直接エステル化反応として直接エステル化反応が行われることができる反応温度および時間、触媒の種類および含量は、当業界に適用される一般的な条件がそのまま適用されることができ、場合に応じて、工程運営に適するように調節して適用することができる。
【0024】
前記ジエステル系物質の製造に投入される原料は、前述のように、ジカルボン酸と第一級アルコールであり、これらは、理論上、1:2のモル比で反応する。これによって、投入される原料として、ジカルボン酸の投入量と反応部に投入される第一級アルコールの総投入量は、モル比で1:2~1:5であり得る。
【0025】
このモル比は、反応に必要な最小量を満たす範囲であり、過剰な量のアルコールの投入によって発生する不要な還流によるエネルギー損失を防止するためのものであることができ、反応の転換率の達成と最小限の滞留時間の制御の面で必要なアルコール超過量を考慮したものであることができ、好ましくは、1:2~1:4であってもよく、これを最適に反映するためには1:2.5~1:4、または1:2.5~1:3.5のモル比が適用されることができる。
【0026】
以下、前記製造方法が適用される工程について、添付の図面を参照して説明する。
【0027】
本発明の一実施形態によると、ジエステル系物質の連続式製造方法は、第1反応ユニットから第N反応ユニットまで、総N個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式製造工程で行われる。
【0028】
前記反応部は、総N個の反応ユニットが直列に連結されて構成されたものであり、反応の転換率の制御と各反応ユニットでの滞留時間などを考慮して、達成するための製品の組成を考慮して設計されることができ、反応ユニットは、3個~6個であることができ、好ましくは、3個~5個であることができ、3個または4個の反応ユニットが最適に適用されることができる。
【0029】
図1は
、1個の反応ユニット
10を図示した図であり、この反応ユニット10は、ジカルボン酸と第一級アルコールのエステル化反応が行われる反応器11と、前記反応器からエステル化反応中に気化した第一級アルコールおよび水が流入されて気液分離が行われ、液相は下部の反応器に投入され、気相は上部に排出されるカラム12と、前記カラムの上部に排出された気相を液化して液相混合物に転換する凝縮器19と、前記液相混合物が有機層および水層として層分離され、分離された有機層は、前記カラムの上端に投入される層分離器13とを含むことができる。
【0030】
より具体的には、ジカルボン酸と第一級アルコールが、原料投入ライン11bに投入されてエステル化反応が行われるが、前記原料投入ライン11bは、前端にプレミキサ(図示せず)をさらに設置し、プレミキサに原料を投入して反応器に供給することができ、一つの原料投入ライン11bでラインミキシングを行って供給することもでき、原料別に異なる投入ラインで供給することもできる。原料の投入方法は、反応器内に原料が供給されることができる方法であれば、特に制限されない。
【0031】
反応器11では、反応が行われて第一級アルコールが反応に参加するが、反応に参加せず、第一級アルコールの沸点以上でエステル化反応が起こることによって気化する量が必ず存在することができ、これとともに、反応生成物としてジエステル系物質の他、水が発生し、水は、第一級アルコールとともに気化して反応器11上部のカラム12に移動され、この際、気相排出ライン14を介して移動されることができる。一方、反応器11で反応が所定転換率以上に行われると、反応により生成されたジエステル系物質は、生成物ライン11aを介して次の反応ユニットに移送されることができる。
【0032】
カラム12では、反応器11から流入された気相の第一級アルコールおよび水が、層分離器13から有機層ライン17を介してカラム12の上端に投入される液相の第一級アルコールによって液化することができ、ほとんどの場合、気相の第一級アルコールが選択的に液化し、液相流入ライン15を介して再度反応器11に液相の第一級アルコールが投入され、これは、反応にまた参加することであり得る。
【0033】
カラム上部ライン16を介してカラム12の上端に気相の水と液化していない第一級アルコールの一部は層分離器13に流入されることができ、層分離器では、第一級アルコールと水が、それぞれ、有機層および水層として分離されることができ、分離された有機層は、有機層ライン17を介してカラム12に、水層は、水層ライン18を介して系外部に排出されるか、様々なルートで生成水が活用されることができる。
【0034】
一方、前記層分離器13は、液相の第一級アルコールおよび水が層分離される設備であり、この点で、層分離器13でまたは層分離器13への投入前に、気相の第一級アルコールおよび水は液化される必要がある。そのため、本発明の一実施形態による製造方法の反応ユニットには、カラム12と層分離器13を連結するカラム上部ライン16の中間に凝縮器19が設置され、気相の第一級アルコールおよび水の熱を凝縮器19により除去することで、層分離器13への投入前に液化することができる。
【0035】
図2は本発明の一実施形態による製造方法が適用される反応部の全体を図示した工程図であり、第1反応ユニット10、第2反応ユニット20に続き、最終の第N反応ユニットN0まで図示されている。
【0036】
図2に図示されているそれぞれの反応ユニット10、20、N0の構成は、互いに同じ機能を果たす設備が組み合わされたものであり得、各反応ユニット間の前端反応ユニットの反応生成物の移動は、前端反応器から後端反応器に、生成物ライン11a、21a、N1aを介して起こることができ、各反応ユニット内の反応器の転換率と滞留時間、各反応ユニット内の還流量やスチーム量は互いに相違することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によるジエステル系物質の連続式製造方法では、前記第一級アルコールは、第1反応ユニットに投入される前端投入と、第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択される1以上の反応ユニットに投入される後端投入とで分割投入され、前記後端投入量は、反応部内の第一級アルコールの総投入量に対して5~80重量%である。
【0038】
前述のように、本発明の製造方法では、適用される反応であるエステル化反応が平衡反応であるという点で、反応物の濃度を高く維持するための目的と、反応物である第一級アルコールの沸点以上の温度で反応が行われることから発生するアルコールの気化によって消失する反応物の補償の目的などの目的の下で、第一級アルコールを当量比以上の超過量で投入することが一般的である。
【0039】
このような第一級アルコールの超過量投入は、回分式工程でも適用されることができ、この場合、全工程に必要な最適な超過量を計算し、最初の反応器に一括投入した後反応を行い、既存の連続式工程でも全工程に必要な最適な超過量を計算して、プレミキサにより原料を混合し、混合物として一括投入するか各反応物ごとに別のラインを備えて反応器に一括投入することが一般的である。
【0040】
しかし、前記超過量のアルコールを最初の反応器に一括投入する場合、最初の反応器で行われることができる反応の転換率には限界があるが、その限界以上にアルコールが投入され無駄に還流量が増加し、原料量の増加によって反応器の加熱のために必要なスチーム量が増加し、全工程の運転費用の上昇とエネルギー費用の上昇によって製品コスト競争力を低下させる問題がある。
【0041】
そのため、本発明の一実施形態によるジエステル系物質の製造方法では、投入される第一級アルコールを第1反応ユニットに投入する前端投入と、その後の反応ユニットに投入する後端投入とに分離して分割投入することを適用することで、アルコールの還流量と反応器加熱に必要なスチーム量を著しく低減することができるようになった。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記後端投入量は、前述のように、反応部内の第一級アルコールの総投入量に対して5~80重量%の量が適用される。後端投入される第一級アルコールの含量が、全量に対して5重量%より少ない場合、第1反応ユニットに投入される前端投入量の相対的な増加によって第1反応ユニットでの還流量の減少が発生せず、80重量%より大きい場合には、第1反応ユニットで反応物が減少することから転換率が増加せず、第2反応ユニットに移動することで、転換率が増加していない反応のロードを第2反応ユニット以降の反応ユニットがそのまま受けるようになり、最終的に、後端投入される反応ユニット以降での還流量が大きく増加することができる。
【0043】
そのため、還流量の減少と反応器の加熱のためのスチーム量の減少のためには、第一級アルコールの後端投入量を5~80重量%に制御することが必要であり、好ましくは、10~70重量%に適用することができ、10~50重量%であることがより好ましく、20~50重量%であることが最適の効果を期待することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記第一級アルコールは、第1反応ユニットに前端投入され、前述の後端投入量が、第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択される1以上に後端投入されるが、後端投入は、1個のルートで第2反応ユニット~第N反応ユニットから選択されるいずれか一つの反応ユニットに投入されることができるが、好ましくは、第2反応ユニットに投入されることができる。反応の転換率の観点から、できるだけ第1反応ユニットと近い反応ユニットに投入することが好ましい。
【0045】
もしくは、前記後端投入は、2個のルートで第2反応ユニットに一部が投入され、残部は第3反応ユニット~第N反応ユニットから選択されるいずれか一つの反応ユニットに投入されることができるが、この場合には、好ましくは、第N-1反応ユニットまたは第N反応ユニットに投入されることができ、スチーム量と還流量の低減の面では、第N反応ユニットに投入されることが好ましいが、転換率の観点では、第N-1反応ユニットに投入されることが有利であり得る。
【0046】
さらに、3個のルートとして、第2反応ユニットおよび第3反応ユニットそれぞれに後端投入量の一部が投入されることができ、残部が第4反応ユニット~第N反応ユニットから選択されるいずれか一つの反応ユニットに投入されることができ、好ましくは、第4反応ユニットに投入されることができる。
【0047】
前記後端投入されるルートは、総反応ユニットの個数に応じて適切に選択されることができ、後端投入されるルートの数は、最大N-1であってもよく、好ましくは、N-2であってもよいが、総反応ユニットの個数とは別に、ルートの数は、工程設計の面、ラインの単純化の面を考慮すると、複数のルートを設けることに比べて得られる還流量およびスチーム量の低減の効果が相対的に少ない可能性があるため、2個を超えないことが好ましい。
【0048】
また、前記第一級アルコールの前端投入は、第1反応ユニットに投入されるが、この場合は、
図1に図示されているように原料投入ライン11bを介して投入されることができ、この原料投入ライン11bは、第一級アルコールおよびジカルボン酸が流れる別のラインとして形成されたものであってもよく、製造工程内の反応部の前端にミキサをさらに含み、ミキサに第一級アルコールが前端投入されるものであり得る。前記ミキサの適用は、原料混合物と触媒の接触時点を異ならせるためであり得、触媒との接触の前に原料混合物の予熱により触媒との副反応を防止する効果を得ることができ、熱交換網の構築においてより効率的に熱交換システムを構築するようにする設備であることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記第一級アルコールは、後端投入される際、その投入される位置が様々に適用されることができる。
図3は後端投入される第一級アルコールの位置を図示した図であり、第1反応ユニットから第2反応ユニットに、各反応ユニットの反応器から反応器に移動するラインで投入される生成物ライン投入Aと、第2反応ユニットの反応器21に直接投入される反応器投入Bと、第2反応ユニットのカラム22の上端に投入されるカラム上部投入Cと、カラム22の上端に投入されるラインでのカラム上部ライン投入Dがあり得る。前記3種類の投入位置のうち、C投入を適用することが、カラムでの気液分離効率の向上の面で好ましい。
【0050】
ここで、
図3に図示されていることは、後端投入される第一級アルコールのルートが1個である場合を例示したことであり、前述のように、ルートは2個以上であってもよく、ルートが1個である場合にも第2反応ユニットではなく第3反応ユニットに後端投入が適用されることができる。すなわち、第一級アルコールの後端投入の際、投入位置は、後端投入される第N反応ユニットの反応器に流入されるラインでのライン投入A、反応器への直接投入B、カラム上部投入Cおよびカラムの上端に投入されるラインでのライン投入Dと理解することができる。
【0051】
実施例
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0052】
下記の実施例および比較例では、商用工程模擬プログラムのASPEN PLUS内のCONTINUOUS MODELERを用いて、本発明によるジエステル系物質の連続式製造方法による工程システムをシミュレーションした。
【0053】
実験例1
前記プログラムを用いてシミュレーションする際、
図2に図示されている工程としてNが4である場合を適用し、原料物質として、ジカルボン酸はテレフタル酸、第一級アルコールは2-エチルヘキサノール、この二つの原料のモル比は1:2.5とし、後端投入は、ルート1個の第2反応ユニットとして適用し、投入位置はカラム上部とし、後端投入量は、下記表1に記載のように変化させながらシミュレーションし、4個の反応ユニットの全体で反応器の総スチーム量を測定し、カラム上部の総流量の確認により還流量を測定した。すべての比較例と実施例は、転換率が99.9%に
達する条件で、反応器のスチーム量および全体のカラム上部の流量を比較した。
【0054】
【表1】
*スチーム量および還流量は、比較例1-1を100%とした時の相対的な%である。
【0055】
前記表1を参照すると、後端投入される第一級アルコールの投入量に応じて、反応器の加熱に必要なスチーム量と第一級アルコールの還流量が大きく変化することを確認することができる。分割投入自体を適用していない比較例1-1の場合、実施例1-1~1-4に比べてスチーム量および還流量が相当大きいことを確認することができる。
【0056】
実験例2
前記プログラムを用いてシミュレーションする際、
図2に図示されている工程としてNが4である場合を適用し、原料物質として、ジカルボン酸はテレフタル酸、第一級アルコールは2-エチルヘキサノール、この二つの原料のモル比は1:3とし、後端投入は、ルート1個の第2反応ユニットとして適用し、投入位置はカラム上部とし、後端投入量は、下記表2に記載のように変化させながらシミュレーションし、4個の反応ユニットの全体で反応器の総スチーム量を測定し、カラム上部の全流量の確認により還流量を測定した。すべての比較例と実施例は、転換率が99.9%に
達する条件で、反応器のスチーム量および全体のカラム上部の流量を比較した。
【0057】
【表2】
*スチーム量および還流量は、比較例2-1を100%とした時の相対的な%である。
【0058】
前記表2を参照すると、後端投入される第一級アルコールの含量に応じて、反応器の加熱に必要なスチーム量と第一級アルコールの還流量が大きく変化することを確認することができる。分割投入自体を適用していない比較例2-1の場合、実施例2-1~2-4に比べて、スチーム量および還流量が相当大きいことを確認することができる。
【0059】
実験例3
前記プログラムを用いてシミュレーションする際、
図2に図示されている工程としてNが4である場合を適用し、原料物質として、ジカルボン酸はテレフタル酸、第一級アルコールは2-エチルヘキサノール、この二つの原料のモル比は1:4とし、後端投入は、ルート1個の第2反応ユニットとして適用し、投入位置はカラム上部とし、後端投入量は、下記表3に記載のように変化させながらシミュレーションし、4個の反応ユニットの全体で反応器の総スチーム量を測定し、カラム上部の全流量の確認により還流量を測定した。すべての比較例と実施例は、転換率が99.9%に
達する条件で、反応器のスチーム量および全体のカラム上部の流量を比較した。
【0060】
【表3】
*スチーム量および還流量は、比較例3-1を100%とした時の相対的な%である。
【0061】
前記表3を参照すると、後端投入される第一級アルコールの投入量に応じて、反応器の加熱に必要なスチーム量と第一級アルコールの還流量が大きく変化することを確認することができる。比較例3-1の場合、実施例3-1~3-4に比べて、スチーム量および還流量が相当大きいことを確認することができる。
【0062】
実験例4
前記プログラムを用いてシミュレーションする際、
図2に図示されている工程としてNが4である場合を適用し、原料物質として、ジカルボン酸はテレフタル酸、第一級アルコールは2-エチルヘキサノール、この二つの原料のモル比は1:2.5とし、後端投入は、ルート1個または2個で下記表4に表示したように適用し、投入位置も下記表4に記載のように変化させ、後端投入量は、下記表4に記載のように変化させながらシミュレーションし、4個の反応ユニットの全体で反応器の総スチーム量を測定し、カラム上部の全流量の確認により還流量を測定した。すべての比較例と実施例は、転換率が99.9%に
達する条件で、反応器のスチーム量および全体のカラム上部の流量を比較した。
【0063】
【表4】
*スチーム量および還流量は、比較例1-1を100%とした時の相対的な%である。
【0064】
前記表4を参照すると、後端投入される第一級アルコールの投入位置に応じて反応器の加熱に必要なスチーム量と第一級アルコール還流量が大きく変化することを確認することができる。反応器に注入する実施例4-1と4-2がカラム上部に注入する実施例4-3よりスチーム量と還流量が多少大きくなるが、これは、後端投入されるアルコールを反応器の温度までに昇温するために投入される熱量が反応器スチームからすぐ供給されるためである。一方、カラムの上部に注入されると、カラムの気体と気/液分離が行われるに伴い熱交換も同時に起こり、スチームに注入される熱量が、実施例4-1および4-2より減少することを確認することができる。実施例4-4と4-5は、後端投入される位置が2ケ所に分けられた場合であり、2番目の反応ユニットには共通して注入し、それぞれ3番目、4番目の反応ユニットに対して後端投入を実施した。投入位置のみ異なるだけであって、スチーム量および還流量減少効果は、特に相違しないと評価され、実施例4-5は、最後の4番目の反応ユニットに注入するため、目標転換率の達成のために温度を増加させなければならず、このため、実施例4-4より供給するスチーム量および第一級アルコール還流量が増加することを確認することができた。
【符号の説明】
【0065】
10、20、N0 反応ユニット
14、24、N4 気相排出ライン
11、21、N1 反応器
15、25、N5 液相流入ライン
11a、21a、N1a 生成物ライン
16、26、N6 カラム上部ライン
11b、21b、N1b 原料投入ライン
17、27、N7 有機層ライン
12、22、N2 カラム
18、28、N8 水層ライン
13、23、N3 層分離器
19、29、N9 凝縮器