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特許7388049エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
C08G59/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019154621
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031617
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 厚子
(72)【発明者】
【氏名】森永 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/018458(WO,A1)
【文献】特開平09-048915(JP,A)
【文献】特開2011-140661(JP,A)
【文献】特開2017-171804(JP,A)
【文献】特開2013-256663(JP,A)
【文献】特開2013-087253(JP,A)
【文献】EPICLON エポキシ樹脂&硬化剤,DIC株式会社,2023年03月02日,p.5,https://www.dic-global.com/pdf/products/catalog/dic_epoxy_ja.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダゾール化合物(A)と、
脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(B)と、を含有することを特徴とし、前記イミダゾール化合物(A)が、1-メチルイミダゾールであり、前記脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)中の金属が、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス又はレアアースであるエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項2】
25℃での粘度が3,000Pa・s以下の液状である請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)中の脂肪酸が、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸又はナフテン酸である請求項1~の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項4】
前記アルミニウムキレート化合物(B3)がジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート又はビス[エチル-3-(オキソ-κO)ブタノアト-κO’](2-プロパノラト)アルミニウムである請求項1~2の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項5】
前記イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)又は脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)との使用割合が、イミダゾール化合物1モルに対して、脂肪酸金属塩(B1)又は脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)中の金属のモル数が0.01~3.00の範囲である請求項1~の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項6】
前記イミダゾール化合物(A)と、アルミニウムキレート化合物(B3)との使用割合が、イミダゾール化合物1モルに対して、アルミニウムキレート化合物(B3)のアルミニウムのモル数が0.01~3.00の範囲である請求項1、2又は記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(C)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(C)が25℃での粘度が500Pa・s以下の液状エポキシ樹脂である請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂(C)100質量部に対して、請求項1~の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤を0.5~20質量部配合してなるものである請求項又は記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として用いることができるエポキシ樹脂用硬化剤とそれを含むエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。エポキシ樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と、アミン系化合物、酸無水物等の硬化剤を主成分とする硬化剤とを使用直前に混合して用いる、二液型エポキシ樹脂組成物と、潜在性硬化剤として、ジシアンジアミド等をあらかじめエポキシ樹脂に混合して組成物として保管し、使用時に加熱等を実施して硬化させる、一液型エポキシ樹脂組成物が知られている。
【0003】
一般に、二液型エポキシ樹脂組成物の欠点として、配合時の計量ミスによる硬化不良や配合後のポットライフが短い等が挙げられる。また、硬化剤にポリアミドアミン、脂肪族アミン等を用いた場合、硬化物の耐熱性が低く、耐熱性が要求される封止材等には使用しにくいという問題がある。また、同様に酸無水物を用いた場合は、硬化温度を高くしなければならないという欠点がある。従って、最近では材料ロスが少なく生産性の高い一液型液状エポキシ樹脂組成物が求められている。
【0004】
一方、一液型エポキシ樹脂組成物は材料ロスが少なく、使用時に混合の必要がないことから、製造工程の自動化が進む小型電子部品または電気部品の封止材として広く使用されている。しかしながら、電子、電気部品の小型化、軽量化や高密度化に伴い、各種部品の接着部分や封止部分における隙間の間隔が非常に狭くなる傾向にあり、このような電子、電気部品の封止に一液型エポキシ樹脂組成物を使用した場合には、液状エポキシ樹脂と硬化剤との分離が生じ、微細部での硬化不良が生じるという問題が発生することがある。
【0005】
前記課題の解決手段の一つとして、イミダゾール化合物と、水酸基を1つ以上有する亜リン酸化合物とを混合してなる、常温で液状の潜在性硬化剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)と安息香酸とをあらかじめ混合し塩を形成したものを潜在性硬化剤として用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、高度化する要求、特には、室温~40℃程度での保存安定性と、加熱時の硬化速度とのバランスがとりにくく、改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-168516号公報
【文献】特開2008-019350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、室温~40℃程度での保存安定性と、加熱時の硬化性のバランスに優れ、一液型エポキシ樹脂組成物の硬化剤として好適に用いることができるエポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂組成物の硬化剤としてイミダゾール化合物と金属石鹸等とを併用することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(B)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤、当該硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物とその硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、室温での保存安定性と加熱下での硬化性とをバランスよく兼備し、潜在性硬化剤として好適に用いることができるエポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(B)とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明で用いるイミダゾール化合物(A)は、特に限定されるものではなく、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
これらの中でも、加熱時の硬化性が良好であり、又後述する脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)、アルミニウムキレート化合物(B3)と混合した際に、液状の硬化剤とすることが容易な観点から、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール又は1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールを用いることが好ましい。
【0014】
本発明で用いる脂肪酸金属塩(B1)は、市販のものであっても、調整したものであってもよい。脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸等のカルボン酸と、マンガン、コバルト、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅、ストロンチウム、バリウム、カリウム、セリウム、レアアース等の金属との塩(以下、「金属石鹸」という場合がある。)が挙げられ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明で用いる脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)は、市販のものであっても、調整したものであってもよく、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
【化1】
(式中、Mはマンガン、コバルト、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅、ストロンチウム、バリウム、カリウム、セリウム、レアアース等の金属原子を表し、R~Rはそれぞれ独立にオクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸等のカルボン酸基を表す。なお、前記カルボン酸基は、カルボン酸が有するカルボキシル基の水素原子を除いた残基を意味する。)
【0017】
前記脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)の製造方法は、特に限定されないが、目的とする金属塩が効率的に得られる点から、例えば、特公昭63-63551号公報に記載されている方法で製造することが好ましい。
【0018】
これらの中でも、加熱時の硬化性が良好であり、又前記イミダゾール化合物(A1)と混合した際に、液状の硬化剤とすることが容易な観点から、前記脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)中の金属が、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス又はレアアースであり、また脂肪酸としては、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸又はナフテン酸であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いるアルミニウムキレート化合物(B3)としては、市販のものであっても、調整したものであってもよく、又1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
アルミニウムキレート化合物(B3)としては、下記一般式(2)で表される3つのβ-ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が挙げられる。
【0021】
【化2】
ここで、R、R、Rは、それぞれ独立的にアルキル基又はアルコキシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(2)で表されるアルミニウムキレート化合物(B3)の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられ、加熱時の硬化性が良好であり、又前記イミダゾール化合物(A1)と混合した際に、液状の硬化剤とすることが容易な観点から、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート又はビス[エチル-3-(オキソ-κO)ブタノアト-κO’](2-プロパノラト)アルミニウムを用いることが好ましい。
【0023】
前記アルミニウムキレート化合物(B3)としては、そのまま用いてもよく、或いは、多孔質型のマイクロカプセル化されたものを使用してもよいが、より微小空間での使用の際の硬化不良の抑制、取扱い上の容易性等の観点から、液状であることが好ましい。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、前述のように、潜在性(保存安定性)と硬化性との両立の観点から、イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(B)とを併用するものであるが、より取扱い上の容易性、硬化反応の均一性、微小空間での硬化性等の観点からは、25℃での粘度が3,000Pa・s以下の液状であることが好ましく、特に500Pa・s以下であることが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂用硬化剤を液状とする方法としては、例えば、脂肪酸として、ネオデカン酸、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸等の常温で液状の化合物を用いる方法、イミダゾール化合物として、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール又は1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等の常温で液状の化合物を用いる方法等、目的とする粘度や使用方法によって、適宜選択することが可能である。
【0026】
本発明でのエポキシ樹脂用硬化剤においては、前述のように、潜在性(保存安定性)と硬化性との両立の観点から、イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(B)とを併用するものであるが、よりそのバランスに優れる観点からは、前記イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)又は脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)との使用割合が、イミダゾール化合物1モルに対して、脂肪酸金属塩(B1)又は脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)中の金属のモル数が0.01~3.00の範囲であることが好ましく、特に0.02~1.0の範囲であることが好ましい。
【0027】
同じく、前記イミダゾール化合物(A)と、アルミニウムキレート化合物(B3)との使用割合が、イミダゾール化合物1モルに対して、アルミニウムキレート化合物(B3)のアルミニウムのモル数が0.01~3.00の範囲であることが好ましく、特に0.02~1.0の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、各種エポキシ樹脂(C)と混合してエポキシ樹脂組成物として用いるが、特に一液型エポキシ樹脂組成物として好適に用いることができる。さらに、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、これをエポキシ樹脂と混合し、加熱すると、イミダゾール化合物(A)と、脂肪酸金属塩(B1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(B2)及びアルミニウムキレート化合物(B3)とが組成物中で分離し、従来知られているようなイミダゾール化合物によるエポキシ樹脂の硬化反応が促進されるとともに、分離した金属塩は特に基材との密着性の向上に寄与するものであり、塗料、接着剤、あるいは封止材、複合材等として用いた際に、イミダゾール化合物を単独で使用した場合よりもその密着性(接着性)が向上する点からも、好適に用いることができるものである。
【0029】
前記エポキシ樹脂(C)としては特に限定なく多種多様な化合物を用いることができる。また、エポキシ樹脂(C)は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。エポキシ樹脂(C)の具体例の一部としては、例えば、ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルオキシナフタレン、脂肪族エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応物型エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物-アルコキシ基含有芳香族化合物共縮合型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、これら以外のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
前記脂肪族エポキシ樹脂は、例えば、各種の脂肪族ポリオール化合物のグリシジルエーテル化物が挙げられる。前記脂肪族ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,2,2-トリメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-3-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。中でも、硬化物における機械強度に一層優れる組成物となることから、前記脂肪族ジオール化合物のグリシジルエーテル化物が好ましい。
【0031】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビフェノールやテトラメチルビフェノール等のビフェノール化合物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。中でも、エポキシ当量が150~200g/eqの範囲であるものが好ましい。
【0032】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。中でも、エポキシ当量が158~200g/eqの範囲であるものが好ましい。
【0033】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール、ビフェノール等、各種フェノール化合物の一種乃至複数種からなるノボラック樹脂をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0034】
前記トリフェノールメタン型エポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(3)で表される構造部位を繰り返し構造単位として有するものが挙げられる。
【0035】
【化3】
[式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は構造式(3)で表される構造部位と*印が付されたメチン基を介して連結する結合点の何れかである。nは1以上の整数である。]
【0036】
前記フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルオキシベンゼン又はグリシジルオキシナフタレン構造が、下記構造式(4-1)~(4-3)の何れかで表される構造部位にて結節された分子構造を有するものが挙げられる。
【0037】
【化4】
(式中Xは炭素原子数2~6のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基の何れかである。]
【0038】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、4,4’-メチレンビス[N,N-ジグリシジルアニリン]、トリグリシジルアミノフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジルキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0039】
前記ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂の一例としては、例えば、下記構造式(5-1)~(5-3)の何れかで表されるビス(ヒドロキシナフタレン)型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
【化5】
【0041】
前記エポキシ樹脂(C)の中でも、本発明の効果がより発現される観点から、25℃での粘度が500Pa・s以下、好ましくは50Pa・s以下の液状エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、硬化物における耐熱性と機械強度とのバランスに優れる観点からは、脂肪族エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、前記構造式(5-1)~(5-3)の何れかで表されるビス(ヒドロキシナフタレン)型エポキシ樹脂のいずれかを用いることが好ましい。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の使用割合としては、硬化性が良好で、得られる硬化物の特性により優れる観点から、エポキシ樹脂(C)100質量部に対して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を0.5~20質量部配合することが好ましく、また、イミダゾール量として0.5~2質量部配合することが好ましい
【0043】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、前記エポキシ樹脂(C)の硬化剤或いは硬化促進剤として用いるものであるが、目的とする用途や性能に応じて、従来のエポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。この場合は、潜在性硬化剤としての機能は損なわれるが、硬化性が良好であったり、或いは前述のように、塗料、接着剤、封止材、複合材等として用いる際の基材、充填材や繊維強化材との密着性が良好となったりするため、好ましい。
【0044】
従来のエポキシ樹脂用硬化剤としては、アミン化合物が挙げられ、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト等の脂肪族アミン化合物;
【0045】
ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等、分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物;
【0046】
シクロヘキシルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、メチレンビス(メチルシクロヘキサンアミン)等の脂環族アミン化合物;
【0047】
ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、キヌクリジン(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピロール、ピラゾール、ピリジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-1,3,5-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン等の複素環式アミン化合物;
【0048】
フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジエチルトルエンジアミン、キシリレンジアミン、α-メチルベンジルメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香環含有アミン化合物;
【0049】
2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物等が挙げられる。
【0050】
又、その他の硬化剤あるいは硬化促進剤として、例えば、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドエチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等の酸無水物;
【0051】
ジシアンジアミド、或いは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と前記アミン化合物(B)とを反応させて得られるアミド化合物;
【0052】
フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、アントラセノール、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、ビフェノール、ビスフェノール、これらの芳香核上にメチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等の置換基を一つ乃至複数有するフェノール性水酸基含有化合物;
【0053】
前記フェノール性水酸基含有化合物の一種乃至複数種からなるノボラック型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、テトラフェノールエタン型フェノール樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型フェノール樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型フェノール樹脂樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応物型フェノール樹脂、フェノール性水酸基含有化合物-アルコキシ基含有芳香族化合物共縮合型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;
【0054】
p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素等の尿素化合物;
【0055】
リン系化合物;有機酸金属塩;ルイス酸;アミン錯塩等を目的に応じて使用してもよい。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、目的とする用途や性能に応じて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、酸変性ポリブタジエン、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0057】
前記酸変性ポリブタジエンは、エポキシ樹脂(C)との反応性を有する成分であり、酸変性ポリブタジエンを併用することにより、得られる硬化物において優れた機械強度、耐熱性、および耐湿熱性を発現させることができる。
【0058】
前記酸変性ポリブタジエンとしては、ブタジエン骨格に、1,3-ブタジエンや、2-メチル-1,3-ブタジエン由来の骨格を有するものが挙げられる。1,3-ブタジエン由来のものとしては、1,2-ビニル型、1,4-トランス型、1,4-シス型のいずれかの構造を有するものやこれらの構造を2種以上有するものが挙げられる。2-メチル-1,3-ブタジエン由来のものとしては、1,2-ビニル型、3,4-ビニル型、1,4-シス型、1,4-トランス型のいずれかの構造を有するものや、これらの構造を2種以上有するものが挙げられる。
【0059】
前記酸変性ポリブタジエンの酸変性成分としては、特に限定されないが、不飽和カルボン酸を挙げることができる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、反応性の点から無水イタコン酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0060】
前記酸変性ポリブタジエン中の不飽和カルボン酸の含有量は、前記エポキシ樹脂(C)との反応性の観点から、酸変性ポリブタジエンが1,3-ブタジエン由来のものから構成される場合には、その酸価は5mgKOH/g~400mgKOH/gであることが好ましく、20mgKOH/g~300mgKOH/gであることがより好ましく、50mgKOH/g~200mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリブタジエン中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。酸変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は1,000~100,000の範囲であることが好ましい。
【0061】
酸変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものをそのまま用いてもよい。市販のものとしては、例えば、エボニック・デグサ社製無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(polyvest MA75、Polyvest EP MA120等)、クラレ社製無水マレイン酸変性ポリイソプレン(LIR-403、LIR-410)などを使用することができる。
【0062】
組成物中の前記酸変性ポリブタジエンの含有量は、得られる硬化物の伸び、耐熱性、耐湿熱性が良好となる点から、組成物の樹脂成分の合計質量を100質量部としたとき、1質量部~40質量部の割合で含まれていることが好ましく、3質量部~30質量部の割合で含まれていることがさらに好ましい。
【0063】
前記ポリエーテルスルホン樹脂は、熱可塑性樹脂であり、組成物の硬化反応において、架橋ネットワークには含まれないが、高Tgを有する優れた改質剤効果により、得られる硬化物において、さらに優れた機械強度と耐熱性を発現させることができる。
【0064】
組成物中の前記ポリエーテルスルホン樹脂の含有量は、得られる硬化物の機械強度と、耐熱性が良好となる点から、組成物の樹脂成分の合計質量を100質量部としたとき、1質量部~30質量部の割合で含まれていることが好ましく、3質量部~20質量部の割合で含まれていることがさらに好ましい。
【0065】
前記ポリカーボネート樹脂は、例えば、2価又は2官能型のフェノールとハロゲン化カルボニルとの重縮合物、或いは、2価又は2官能型のフェノールと炭酸ジエステルとをエステル交換法により重合させたものが挙げられる。
【0066】
前記2価又は2官能型のフェノールは、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これら2価のフェノールの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料としたものが特に好ましい。
【0067】
他方、2価又は2官能型のフェノールと反応させるハロゲン化カルボニル又は炭酸ジエステルは、例えば、ホスゲン;二価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物などが挙げられる。
【0068】
また、前記ポリカーボネート樹脂は、そのポリマー鎖の分子構造が直鎖構造であるもののほか、これに分岐構造を有していてもよい。斯かる分岐構造は、原料成分として、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o-クレゾール)等を用いることにより導入することができる。
【0069】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-14-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0070】
この中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルが好ましく、2-(ジアルキルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニットや2-(N-アルキル-N-フェニルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含むポリフェニレンエーテルであってもよい。
【0071】
前記樹脂は、その樹脂構造にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、シリル基、水酸基、無水ジカルボキル基等の反応性官能基を、グラフト反応や、共重合等何らかの方法で導入した変性ポリフェニレンエーテル樹脂も本発明の目的を損なわない範囲で使用できる。
【0072】
前記アクリル樹脂は、硬化物における機械強度、特に破壊靱性を向上させる目的で添加することができる。
【0073】
前記アクリル樹脂の構成モノマーや重合方式等は所望の性能によって適宜選択される。構成モノマーの具体例の一部としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸(フルオロ)アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、無水マレイン酸等の酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン等の芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物等が挙げられる。中でも、硬化物における機械強度に一層優れる組成物となることから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル樹脂が好ましい。
【0074】
前記アクリル樹脂は、異なるモノマー構成のブロック重合体が複数共重合したブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体としては、A-B型のジブロック型、A-B-A型或いはA-B-C型のトリブロック型等が挙げられる。中でも、硬化物における機械強度に一層優れる組成物となることから、(メタ)アクリル酸メチルを主成分とするブロックと、(メタ)アクリル酸ブチルを主成分とするブロックの両方を有することが好ましい。より具体的には、ポリメチルメタクリレートブロック-ポリブチルアクリレートブロック-ポリメチルメタクリレートブロックからなるトリブロック型アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレートブロック-ポリブチルアクリレートブロックからなるジブロック型アクリル樹脂が好ましく、ジブロック型アクリル樹脂が特に好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は1,000~500,000の範囲であることが好ましい。
【0075】
組成物中の前記アクリル樹脂の含有量は特に限定されず、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整される。中でも、硬化物における機械強度に一層優れる組成物となることから、組成物の樹脂成分の合計質量を100質量部としたとき、0.1~20質量部の範囲であることが好ましく、0.5~10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0076】
本発明の組成物は、難燃剤/難燃助剤、充填材、添加剤、有機溶剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。組成物を製造する際の配合順序は、本発明の効果が達成できる方法であれば特に限定されない。すなわち、すべての成分を予め混合して用いてもよいし、適宜順番に混合して用いてもよい。また、配合方法は、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造することができる。以下で、本発明の組成物に含有可能な各種部材について説明する。
【0077】
・難燃剤/難燃助剤
本発明の組成物は、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を含有していてもよい。
【0078】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0079】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0080】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0081】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド等の環状有機リン化合物が挙げられる。
【0082】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0083】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0084】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0085】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0086】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部~10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1質量部~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0087】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0088】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0089】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部~20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0090】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0091】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0092】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0093】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0094】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0095】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0096】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO-MgO-HO、PbO-B系、ZnO-P-MgO系、P-B-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V-TeO系、Al-HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0097】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部~20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5質量部~15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0098】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0099】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.005質量部~10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0100】
・充填材
本発明の組成物は、充填材を含有していてもよい。本発明の組成物が充填材を含有すると、得られる硬化物において優れた機械特性を発現させることができるようになる。
【0101】
充填材としては、例えば、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、硼酸マグネシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミや、ケナフ繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、石英繊維等の繊維状補強剤や、非繊維状補強剤等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。また、これらは、有機物や無機物等で被覆されていてもよい。
【0102】
また、充填材としてガラス繊維を用いる場合、長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して用いることが出来る。ガラス繊維は使用する樹脂用に表面処理した物を用いるのが好ましい。充填材は配合されることによって、燃焼時に生成する不燃層(又は炭化層)の強度を一層向上させることができる。燃焼時に一度生成した不燃層(又は炭化層)が破損しにくくなり、安定した断熱能力を発揮できるようになり、より大きな難燃効果が得られる。さらに、材料に高い剛性も付与することができる。
【0103】
・添加剤
本発明の組成物は、添加剤を含有していてもよい。本発明の組成物が添加剤を含有すると、得られる硬化物において剛性や寸法安定性等、他の特性が向上する。添加剤としては、例えば可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、応力緩和剤、離型剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防カビ剤、防汚剤、導電性高分子等を添加することも可能である。
【0104】
・有機溶剤
本発明の組成物は、フィラメントワインディング法にて繊維強化樹脂成形品を製造する場合などには、有機溶剤を含有していてもよい。ここで使用し得る有機溶剤としては、メチルエチルケトンアセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
【0105】
本発明の組成物は、硬化速度が高く、硬化物における耐熱性や機械強度に優れる特徴を生かし、塗料や電気・電子材料、接着剤、成型品等、様々な用途に用いることができる。本発明の組成物はそれ自体を硬化させて用いる用途の他、繊維強化複合材料や繊維強化樹脂成形品等にも好適に用いることができる。以下にこれらについて説明する。
【0106】
・組成物の硬化物
本発明の組成物から硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよく、例えば加熱温度条件は、用途等によって、適宜選択すればよい。例えば、組成物を、120~250℃程度の温度範囲で加熱する方法が挙げられる。成形方法なども組成物の一般的な方法が用いること可能であり、特に本発明の組成物に特有の条件は不要である。
【0107】
・繊維強化複合材料
繊維強化複合材料とは、組成物を強化繊維に含浸させた後の硬化前の状態の材料のことである。ここで、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化複合材料において優れた成形性を有することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械的強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。
【0108】
本発明の組成物から繊維強化複合材料を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、組成物を構成する各成分を均一に混合してワニスを製造し、次いで、前記で得られたワニスに強化繊維を一方向に引き揃えた一方向強化繊維を浸漬させる方法(プルトルージョン法やフィラメントワインディング法での硬化前の状態)や、強化繊維の織物を重ねて凹型にセットし、その後、凸型で密閉してから樹脂を注入し圧力含浸させる方法(RTM法での硬化前の状態)等が挙げられる。
【0109】
繊維強化複合材料は、前記組成物が必ずしも繊維束の内部まで含浸されている必要はなく、繊維の表面付近に該組成物が局在化している態様であっても良い。
【0110】
さらに、繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料の全体積に対する強化繊維の体積含有率が40%~85%であることが好ましく、強度の点から50%~70%の範囲であることがさらに好ましい。体積含有率が40%未満の場合、前記組成物の含有量が多すぎて得られる硬化物の難燃性が不足したり、比弾性率と比強度に優れる繊維強化複合材料に要求される諸特性を満たすことができなかったりする場合がある。また、体積含有率が85%を超えると、強化繊維と樹脂組成物の接着性が低下してしまう場合がある。
【0111】
・繊維強化樹脂成形品
繊維強化樹脂成形品とは、強化繊維と組成物の硬化物とを有する成形品であり、繊維強化複合材料を熱硬化させて得られるものである。繊維強化樹脂成形品として、具体的には、繊維強化成形品における強化繊維の体積含有率が40%~85%の範囲であることが好ましく、強度の観点から50%~70%の範囲であることが特に好ましい。そのような繊維強化樹脂成形品としては、例えば、フロントサブフレーム、リアサブフレーム、フロントピラー、センターピラー、サイドメンバー、クロスメンバー、サイドシル、ルーフレール、プロペラシャフトなどの自動車部品、電線ケーブルのコア部材、海底油田用のパイプ材、印刷機用ロール・パイプ材、ロボットフォーク材、航空機の一次構造材、二次構造材などを挙げることができる。
【0112】
本発明の組成物から繊維強化成形品を得る方法としては、特に限定されないが、引き抜き成形法(プルトルージョン法)、フィラメントワインディング法、RTM法などを用いることが好ましい。引き抜き成形法(プルトルージョン法)とは、繊維強化複合材料を金型内へ導入して、加熱硬化したのち、引き抜き装置で引き抜くことにより繊維強化樹脂成形品を成形する方法であり、フィラメントワインディング法とは、繊維強化複合材料(一方向繊維を含む)を、アルミライナーやプラスチックライナー等に回転させながら巻きつけたのち、加熱硬化させて繊維強化樹脂成形品を成形する方法であり、RTM法とは、凹型と凸型の2種類の金型を使用する方法であって、前記金型内で繊維強化複合材料を加熱硬化させて繊維強化樹脂成形品を成形する方法である。なお、大型製品や複雑な形状の繊維強化樹脂成形品を成形する場合には、RTM法を用いることが好ましい。
【0113】
繊維強化樹脂成形品の成形条件としては、繊維強化複合材料を50℃~250℃の温度範囲で熱硬化させて成形することが好ましく、70℃~220℃の温度範囲で成形することがより好ましい。かかる成形温度が低すぎると、十分な速硬化性が得られない場合があり、逆に高すぎると、熱歪みによる反りが発生しやすくなったりする場合があるためである。他の成形条件としては、繊維強化複合材料を50℃~100℃で予備硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120℃~200℃の温度条件で処理するなど、2段階で硬化させる方法などを挙げることができる。
【0114】
本発明の組成物から繊維強化成形品を得る他の方法としては、金型に繊維骨材を敷き、前記ワニスや繊維骨材を多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法などが挙げられる。
【実施例
【0115】
次に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0116】
実施例1
DICNATE NBC-2(DIC株式会社製ネオデカン酸ホウ酸コバルト)7.4gと1-メチルイミダゾール92.6gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤1を得た。
【0117】
実施例2
DICNATE 5000(DIC株式会社製ネオデカン酸コバルト)16.3gと1-メチルイミダゾール83.7gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤2を得た。
【0118】
実施例3
DICNATE SG-160(DIC株式会社製ネオデカン酸マンガン)をそのまま用いた。(1-メチルイミダゾール:70%)硬化剤3とする。
【0119】
実施例4
DICNATE Fe 5%(DIC株式会社製ネオデカン酸鉄)32.4gと1-メチルイミダゾール67.6gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤4を得た。
【0120】
実施例5
DICNATE425(DIC株式会社製2-エチルヘキサン酸ビスマス)87.1gと1-メチルイミダゾール12.9gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤5を得た。
【0121】
実施例6
DICNATE AL-500(DIC株式会社製アルミキレート)24.7gと1-メチルイミダゾール75.3gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤6を得た。
【0122】
実施例7
DICNATE 5000(DIC株式会社製ネオデカン酸コバルト)30.0gと1-メチルイミダゾール70.0gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤7を得た。
【0123】
実施例8
DICNATE 5000(DIC株式会社製ネオデカン酸コバルト)44.6gと1-メチルイミダゾール55.4gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤8を得た。
【0124】
実施例9
DICNATE 5000(DIC株式会社製ネオデカン酸コバルト)61.8gと1-メチルイミダゾール38.2gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤9を得た。
【0125】
実施例10
Co-OCTOATE 12%(DIC株式会社製2-エチルヘキサン酸コバルト)13.7gと2-エチル-4-メチルイミダゾール86.3gを80℃にて攪拌混合し、25℃にて液状の硬化剤10を得た。
【0126】
実施例11~20、比較例1~2
エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850S」ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量 188g/当量)100gに対し、実施例1~10で得られた硬化剤1~10、および1-メチルイミダゾール(1MI)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)とを表1~2に記載の質量で用いて混合し、増粘率と硬化性を下記に従い評価した。
【0127】
<増粘率>
ブルックフィールド粘度計「DV2T」(英弘精機株式会社製)を用いて、40℃の粘度を測定し、配合直後の初期粘度に対する5時間後の粘度を増粘率とした。
【0128】
<硬化性>
配合直後の組成物を150℃に熱したホットプレート上に0.15gを載せ、スパチュラで撹拌しながらゲル状になるまでの時間(秒)を測定した。同操作を三回繰り返し、その平均値で評価した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
実施例21~24、比較例3
エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850S」ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量 188g/当量)10.53gと、酸無水物(DIC株式会社製「EPICLON B-570-H」メチルテトラヒドロフタル酸)9.3gに硬化剤を表3に記載の質量で配合し、増粘率を測定した。
【0132】
【表3】