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特許7388324ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/005 20120101AFI20231121BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231121BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20231121BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20231121BHJP
【FI】
B24B37/005 Z
H01L21/304 621D
H01L21/304 622F
H01L21/304 622R
B24B37/32 Z
B24B37/005 A
B24B37/24 A
B24B37/24 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020151290
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021091081
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019220689
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉森 勝久
(72)【発明者】
【氏名】中島 敏治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋三
(72)【発明者】
【氏名】小佐々 和明
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025352(JP,A)
【文献】特開2014-199847(JP,A)
【文献】特開2003-142437(JP,A)
【文献】特開2010-069551(JP,A)
【文献】特開2007-144554(JP,A)
【文献】特開2010-040993(JP,A)
【文献】特開2017-202556(JP,A)
【文献】特開2004-160603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの片面研磨方法であって、
研磨ヘッドに保持されたウェーハを、定盤の表面に固定された研磨パッドに押しつけ、前記研磨ヘッドおよび前記定盤を回転させることにより、前記ウェーハの被研磨面に研磨加工を施す研磨工程を備え、
前記研磨工程において、前記研磨ヘッドに対する前記ウェーハの自転の程度を表す自転率が25度/min以上60度/min以下となるような研磨条件で前記ウェーハを研磨する
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、前記研磨パッドとして、圧縮率が58.5%以上70%以下のナップ層を有する研磨パッドを用いることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、前記研磨パッドとして、前記ウェーハを研磨する面の表面における純水に対する接触角が、前記純水の滴下から1800秒後に58度以上70度以下である研磨パッドを用いることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、前記研磨パッドとして、不織布を用いないナップ層単体の研磨パッドを用いることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、前記ウェーハを保持するリテーナリングの内径は、前記リテーナリングの内径と前記ウェーハの直径との比率が次式
リテーナリング内径/ウェーハ直径=1.0015以上1.0067以下
で表されるリテーナリングを用いることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、前記定盤の研磨時の回転数を、15rpm以上80rpm以下とすることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、研磨加圧を、100g/cm以上300g/cm以下とすることである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法において、
予め研磨条件とウェーハの自転率との関係を求め、前記関係を基に前記研磨条件を決定する
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項9】
請求項8に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨条件が、研磨パッドの圧縮率、接触角、リテーナリングの内径と前記ウェーハの直径との比率、研磨定盤の回転数、研磨加圧量のいずれかまたはその組み合わせである
ことを特徴とするウェーハの片面研磨方法。
【請求項10】
ウェーハの製造方法であって、
前記ウェーハの少なくとも一方の面を仕上げ加工する片面仕上げ工程を備え、
前記片面仕上げ工程において、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のウェーハの片面研磨方法により、前記ウェーハの被研磨面に研磨加工を施す
ことを特徴とするウェーハの製造方法。
【請求項11】
ウェーハの片面研磨装置であって、
前記ウェーハを保持する研磨ヘッドが設けられたヘッド回転軸部材と、
表面に研磨パッドが固定された定盤と、
前記ヘッド回転軸部材を駆動するヘッド駆動手段と、
前記定盤を駆動する定盤駆動手段と、
前記ウェーハを前記研磨パッドに押圧する圧力を調整するウェーハ加圧力調整手段と、
研磨条件を決定する研磨条件決定部と、を備え、
前記研磨条件決定部は、前記研磨ヘッドに対するウェーハの自転の程度を表す自転率が25度/min以上60度/min以下となるように研磨条件を決定する
ことを特徴とするウェーハの片面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの製造においては、種々の工程が行われる。そのうちの一つに、ウェーハの研磨工程がある。ウェーハの研磨工程では、目的に応じて、ウェーハの両面を研磨する両面研磨、またはウェーハの片面のみを研磨する片面研磨が行われる。
【0003】
ウェーハの片面研磨においては、ウェーハ表面の高い平坦度が要求される。
例えば、特許文献1には、被研磨物の表面の平坦性に優れた研磨パッドおよびその製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ウェーハの外周ダレを効果的に防止するウェーハの研磨方法およびそのウェーハの研磨方法に好適に用いられるウェーハ研磨用研磨パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/178289号
【文献】特開2003-142437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、デバイスの微細化およびウェーハのデバイス形成領域の拡大の観点から、ウェーハの最外周付近でも高い平坦度が要求され、ウェーハの最外周付近の平坦度および表面変位量のみならず、その外周の周方向においても、平坦化が求められている。
しかし、前記特許文献1に記載の研磨パッドにおいては、多層構造の研磨パッドにより、微小な欠陥を低減しようとするもので、平坦度の指標としてはESFQRの変化を測定するのみで、ウェーハの周方向のバラツキに対して注目するものではない。
また、前記特許文献2に記載の研磨パッドにおいては、研磨パッド表面粗さと圧縮率の関係を基にウェーハの外周ダレを改善しようとするものであるが、ウェーハの周方向のバラツキに対して注目するものではない。
【0007】
なお、本明細書における「ESFQR(Edge Site flatness Frontreference least sQuare Range)」とは、SEMIM67に規定されるESFQRの最大値と最小値の差分を意味する。
具体的には、ESFQRの測定には、平坦度測定装置(KLA-Tencor社製:Wafer sight 2)を用いる。ESFQRは、ウェーハの外周部(エッジ)でのサイトフラットネスを示す指標である。ESFQRは、ウェーハの外周部を多数(例えば72個)の扇形の領域(サイト)に分割し、サイト内でのデータを最小二乗法にて算出したサイト内平面を基準とし、このサイト内平面からの変位量のことであり、各サイトには1つのデータを持つ。
また、本明細書における「ESFQR Range」とは、扇形の各サイトで算出されたESFQRの最大量と最小量の差分のことで、そのウェーハの周方向のばらつき量を示す。
本明細書におけるESFQR Rangeのサイトは、例えば、直径300mmのウェーハにおいて、最外周から直径方向に2mmの領域を除外領域とし、それよりも内側の外周基準端から径方向中心側に伸びるセクター長が300mmの2本の直線と、ウェーハ外周方向5度(±2.5度)に相当する円弧により囲まれた略矩形の72個の分割されたサイトである。そして、ESFQR Rangeはそれら72個のESFQRの値のうち、最大値と最小値の差分で算出される値である。
【0008】
本発明の目的は、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できる、ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置を提供することにある。
【0009】
本発明者らが、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できる研磨方法について、鋭意検討した結果、チャックに保持されたウェーハの自転率を高めることで、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減することができることを見出した。これは、研磨装置のチャック等の凹凸等に基づいてウェーハ裏面へ転写される面圧のばらつきが、平均化するためと考えられる。
【0010】
本発明者らが特性の異なる各種研磨パッドを作成して検討した結果によれば、ウェーハの自転率を高める要素としては、(1)研磨パッドの圧縮率、(2)研磨パッドの純水に対する接触角、(3)研磨パッドの構成、(4)ウェーハ外周とリテーナリング内周との隙間、(5)研磨ヘッドおよび定盤の研磨時の回転数、並びに(6)研磨加圧力等がある。これらの要素を管理することで、ウェーハの自転率を管理でき、平坦度のばらつき量を低減できる。なお、ウェーハの自転率を高める要素は、単独で適用してもよいし、これらの要素の複数を適用してもよい。換言すると、ウェーハの自転率を高める各要素に求められる範囲は、全ての要素が同時にそれらの範囲を満足している必要はなく、少なくとも単独でその範囲を満足していれば良い。
【0011】
本発明者らの検討によるウェーハの自転率を高める各要素とウェーハの自転率との関係を図4図8に基づいて簡単に説明する。
これらの図4図8は、特性の異なる各種研磨パッドを作成して取得したデータに基づいて作成した。
図4は、ウェーハの自転率(度/min)とESFQR Range(nm)との関係を示すグラフである。
図4によれば、自転率が大きくなるほどESFQR Range(nm)が小さくなる(改善される)ことが分かる。
従って、ウェーハの自転率が大きくなるような対策を取ることにより、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減するという本発明の目標を達成できることとなる。
【0012】
図5は、研磨パッドが有するナップ層の圧縮率(Nap圧縮率)(%)とウェーハの自転率(a.u.)との関係を示すグラフである。
図5によれば、Nap圧縮率(%)が大きいほど、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなることが分かる。
従って、Nap圧縮率(%)をある程度大きくすることにより、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなって、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減することができる。
ここにおいて、図5から後述の図8までのウェーハの自転率(a.u.)の具体的単位としては、例えば、(度/min)である。
【0013】
図6は、研磨パッドのウェーハを研磨する面(ウェーハ研磨面)の表面における純水に対する接触角(度)とウェーハの自転率(a.u.)との関係を示すグラフである。
図6によれば、研磨パッドのウェーハ研磨面の表面における純水に対する接触角(度)が大きくなるほどウェーハの自転率(a.u.)が大きくなることが分かる。
従って、研磨パッドのウェーハ研磨面の表面における純水に対する接触角(度)をある程度大きくすることにより、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなって、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減することができる。
【0014】
図7は、リテーナリングの内径(mm)とウェーハの自転率(a.u.)との関係を示すグラフである。図7において使用されたウェーハの直径は300mmである。
図7によれば、リテーナリングの内径が大きいほど、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなることが分かる。
従って、リテーナリングの内径(mm)をある程度大きくすることにより、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなって、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減することができる。
リテーナリングの内径(mm)が大きいと言うことは、ウェーハ外周との間の隙間が大きくなり、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなると考えられる。
【0015】
図8はウェーハ研磨時の研磨加圧(g/cm)とウェーハの自転率(a.u.)との関係を示すグラフである。
図8によれば、直線的関係ではないが、研磨加圧(g/cm)が大きくなるほど、ウェーハの自転率(a.u.)大きくなることが分かる。
従って、研磨加圧(g/cm)をある程度大きくすることにより、ウェーハの自転率(a.u.)が大きくなって、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の研磨方法は、ウェーハの片面研磨方法であって、研磨ヘッドに保持されたウェーハを、定盤の表面に固定された研磨パッドに押しつけ、前記研磨ヘッドおよび前記定盤を回転させることにより、前記ウェーハの被研磨面に研磨加工を施す研磨工程を備え、前記研磨工程において、前記ウェーハの自転率が25度/min以上60度/min以下となるように前記ウェーハを研磨することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できる。
【0018】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記研磨パッドとして、圧縮率が58.5%以上70%以下のナップ層を有する研磨パッドを用いることが好ましい。
【0019】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記研磨パッドとして、前記ウェーハを研磨する面の表面における純水に対する接触角が、前記純水の滴下から1800秒後に58度以上70度以下である研磨パッドを用いることが好ましい。
【0020】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記研磨パッドとして、不織布を用いないナップ層単体の研磨パッドを用いることが好ましい。
【0021】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記ウェーハを保持するリテーナリングの内径は、前記リテーナリングの内径と前記ウェーハの直径との比率が次式
リテーナリング内径/ウェーハ直径=1.0015以上1.0067以下
で表されるリテーナリングを用いることが好ましい。
【0022】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記定盤の研磨時の回転数を、15rpm以上80rpm以下とすることが好ましい。
【0023】
上記ウェーハの片面研磨方法において、研磨加圧を、100g/cm以上300g/cm以下とすることが好ましい。
【0024】
上記ウェーハの片面研磨方法において、予め研磨条件とウェーハの自転率との関係を求め、前記関係を基に研磨条件を決定することが好ましい。
【0025】
上記ウェーハの片面研磨方法において、前記研磨条件が、研磨パッドの圧縮率、接触角、リテーナリングの内径と前記ウェーハの直径との比率、研磨定盤の回転数、研磨加圧量のいずれかまたはその組み合わせであることが好ましい。
【0026】
また、本発明の製造方法は、ウェーハの製造方法であって、前記ウェーハの少なくとも一方の面を仕上げ加工する片面仕上げ工程を備え、前記片面仕上げ工程において、上記ウェーハの片面研磨方法により、前記ウェーハの被研磨面に研磨加工を施すことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の研磨装置は、ウェーハの片面研磨装置であって、前記ウェーハを保持する研磨ヘッドが設けられたヘッド回転軸部材と、表面に研磨パッドが固定された定盤と、前記ヘッド回転軸部材を駆動するヘッド駆動手段と、前記定盤を駆動する定盤駆動手段と、前記ウェーハを前記研磨パッドに押圧する圧力を調整するウェーハ加圧力調整手段と、研磨条件を決定する研磨条件決定部と、を備え、前記研磨条件決定部は、ウェーハの自転率が25度/min以上60度/min以下となるように研磨条件を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できる、ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の片面研磨方法に用いられる本発明の一実施形態に係る研磨装置の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の片面研磨方法に用いられる本発明の一実施形態に係る研磨装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る片面研磨方法を用いる本発明の一実施形態に係るシリコンウェーハの製造方法について説明するフローチャートである。
図4】ウェーハの自転率とESFQR Rangeとの関係を示すグラフである。
図5】研磨パッドが有するナップ層の圧縮率(Nap圧縮率)とウェーハの自転率との関係を示すグラフである。
図6】研磨パッドのウェーハを研磨する面の表面における純水に対する接触角とウェーハの自転率との関係を示すグラフである。
図7】リテーナリングの内径とウェーハの自転率との関係を示すグラフである。
図8】ウェーハ研磨時の研磨加圧とウェーハの自転率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
〔研磨装置の構成〕
まず、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る片面研磨装置1について説明する。
図1および図2に示すように、片面研磨装置1は、複数のヘッド回転軸部材11と、各ヘッド回転軸部材11に設けられた研磨ヘッド12と、各研磨ヘッド12に設けられたバックパッド13と、各バックパッド13に設けられたリテーナリング14と、定盤15と、定盤15に設けられた研磨パッド16と、各ヘッド回転軸部材11を駆動するヘッド駆動手段20と、定盤駆動手段30と、研磨液供給手段40と、各研磨ヘッド12に保持されたウェーハWを研磨パッド16に押圧する際の圧力を調整するウェーハ加圧力調整手段50と、研磨制御手段60と、研磨条件決定部70と、を備える。
【0031】
ヘッド回転軸部材11は、軸状部材から構成される。ヘッド回転軸部材11は、軸回りに回転可能であり、モータ等の回転駆動源を備えたヘッド駆動手段20の回転軸に接続され、研磨ヘッド12を回転させる。
【0032】
研磨ヘッド12は、ヘッド回転軸部材11の下端部に接続される。研磨ヘッド12は、ヘッド回転軸部材11の回転中心を中心とする円形の厚肉板状体から構成される。研磨ヘッド12は、水の表面張力等により、ウェーハWの被研磨面(表面)とは反対側の面(裏面)を保持する。
【0033】
バックパッド13は、研磨ヘッド12の下面に設けられており、研磨ヘッド12と同径の円形板状体である。バックパッド13は、例えば、多孔質樹脂材により構成され、水等の液体を含むことができる。
【0034】
リテーナリング14は、バックパッド13の下面の外周部に設けられており、リング状部材から形成されている。リテーナリング14は、ウェーハWの外周端部に接触し、ウェーハWがバックパッド13と後述する研磨パッド16の隙間から外れないように保持している。
ウェーハWの研磨にあたり、研磨中にリテーナリング14を研磨パッド16に接触させる場合とさせない場合とがある。接触させる場合にはリテーナリング14の厚みのバラツキがウェーハWの外周部周方向の平坦度バラツキに影響するが、本発明の方法により、コストを増加させることなく周方向のバラツキを低減できる。
【0035】
定盤15は、複数の研磨ヘッド12に対向して設けられており、円形状に形成されている。定盤15は、回転自在に支持され、研磨ヘッド12の回転方向と同方向または逆方向に回転する。定盤15の上面には、ウェーハWの被研磨面を研磨するための研磨パッド16が貼り付けられている。
【0036】
研磨パッド16は、基材としての不織布と、当該不織布の一方の面に積層されたナップ(Nap)層により構成される。ウェーハWの表面(研磨パッド16に対向する面)が所定の力で研磨パッド16のナップ層に押圧されることにより、ウェーハWの研磨が行われる。ここで、ナップ層とは発泡により形成された多数の孔を有する層をいう。
【0037】
ヘッド駆動手段20は、研磨ヘッド12のヘッド回転軸部材11を回転させる。
【0038】
定盤駆動手段30は、モータなどから構成され、定盤15の下面に接続された定盤回転軸部材31を回転させる。
【0039】
研磨液供給手段40は、定盤15の上方に設けられており、ノズル41により、研磨パッド16とウェーハWとの接触面にスラリー状の研磨液を供給するように構成されている。
【0040】
ウェーハ加圧力調整手段50は、固定加圧方式であり、ウェーハWを研磨パッド16に押圧する圧力を調整する。固定加圧方式では、シリンダー加圧によって研磨ヘッド12全体が押し下げられ、研磨ヘッド12がバックパッド13を介してウェーハWの上面に押し付けられることにより、ウェーハWの被研磨面が定盤15上の研磨パッド16に押し付けられる。
【0041】
研磨制御手段60は、研磨条件決定部70により決定された所定の研磨条件に基づき、ヘッド駆動手段20、定盤駆動手段30、研磨液供給手段40、およびウェーハ加圧力調整手段50のうち少なくとも1つを制御して、片面研磨装置1の動作を制御する。
【0042】
研磨条件決定部70は、予め求めた研磨条件とウェーハの自転率との関係を記憶しており、記憶した関係を基に研磨条件を決定する。その際、計算機等を用いて自動で研磨条件を決定してもよい。
【0043】
〔研磨方法〕
次に、片面研磨装置1を用いた、ウェーハの片面研磨方法の一例について説明する。
片面研磨装置1の研磨条件決定部70では、ウェーハWの研磨に先立ち、予め研磨条件とウェーハの自転率との関係を求め、記憶する。
片面研磨装置1は、ウェーハWの研磨を開始する旨の指令が設定入力されると、研磨条件決定部70において、記憶している研磨条件とウェーハの自転率との関係を基に、研磨条件を決定する。
そして、決定した研磨条件で、研磨制御手段60により、ヘッド駆動手段20、定盤駆動手段30、研磨液供給手段40、ウェーハ加圧力調整手段50を制御して、ウェーハWの研磨工程を実施する。
具体的には、まず、決定された研磨条件に適合した研磨パッド16を選定し、定盤15に配置する。ついで、定盤15の研磨パッド16上に、研磨液供給手段40により研磨液を所定量供給する。そして、ウェーハWを保持した研磨ヘッド12を、ヘッド駆動手段20の駆動によって回転させながら下降させ、定盤駆動手段30の駆動によって回転している定盤15の研磨パッド16上にウェーハWを接触させる。その後、ウェーハ加圧力調整手段50がウェーハWを研磨パッド16に押圧する圧力を調整して、ウェーハWの被研磨面を研磨する研磨工程が行われる。
【0044】
本実施形態では、研磨工程において、ウェーハWの自転率が25度/min以上60度/minとなるように制御して、ウェーハWの被研磨面に研磨加工を施す。
ウェーハWの自転率を25度/min以上に制御することで、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できる。また、ウェーハWの自転率を60度/min以下とすることで、ウェーハWのすれ傷、およびウェーハ飛び出し等を防止することができる。
一方、ウェーハWの自転率が60度/minを超えると、バックパッドがウェーハを保持できなくなる可能性がある。
ウェーハWの自転率は、より好ましくは、25度/min以上40度/min以下であり、さらに好ましくは、26度/min以上30度/min以下である。なお、ウェーハWの自転率に関しては、25度/min以上60度/min以下の範囲内において、最も好ましい26度/min以上30度/min以下の範囲に近づくほど、本発明の効果が発揮できる。したがって、25度/min以上60度/min以下の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できる。
【0045】
ウェーハWの自転率は、研磨条件の選択時に確認すればよい。あるいは、シミュレーションにて、自転率を求めてもよい。また、研磨前後のウェーハWのノッチ位置を観察する、またはセンサ等によりリアルタイムに検知する等して、実際の研磨時のウェーハWの自転率を直接観察してもよい。
ノッチ位置を観察してウェーハWの自転率を求める際は、具体的には、研磨前後のウェーハWのノッチ位置を観察し、ノッチ位置が移動した角度を研磨時間(分)で割ることにより、1分あたりの自転率(度/min)を計算する。
【0046】
本実施形態において、自転率の制御により、ESFQR Rangeを6.5nm以下に制御することが好ましい。
【0047】
本実施形態において、例えば、研磨パッド16として、圧縮率が58.5%以上のナップ層を有する研磨パッドを用いることで、研磨工程におけるウェーハWの自転率を25度/min以上となるように制御できる。
ナップ層の圧縮率は、例えば、ショッパー型厚さ測定器を用い、以下の方法で測定できる。
(1) 所定の初荷重で一定時間加圧し、その厚さ(t)を測る。
(2) その上に所定の追加荷重を載せ、一定時間後に厚さ(t)を測る。
(3) 次式にて圧縮率を計算する。
圧縮率(%)={(t-t)/t}×100
研磨によるナップ層の摩耗が少なくて済むことから、ナップ層の圧縮率は70%以下であることが好ましい。ナップ層の圧縮率は、より好ましくは、58.5%以上63%以下である。なお、ナップ層の圧縮率に関しては、58.5%以上70%以下の範囲内において、より好ましい58.5%以上63%以下の範囲に近づくほど、本発明の効果が発揮できる。したがって、58.5%以上70%以下の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できる。
【0048】
また例えば、本実施形態において、研磨パッド16として、ウェーハWを研磨する面の表面における純水に対する接触角が58度以上70度以下の研磨パッドを用いることで、研磨工程におけるウェーハWの自転率を25度/min以上60度/min以下となるように制御できる。
研磨パッド16のウェーハWを研磨する面の表面における純水に対する接触角が70度を超える研磨パッドは、生産上作成が困難である。
なお、本明細書における接触角は、研磨パッド16の表面に純水を1μm滴下し、前記純水の滴下から1800秒後に、側面からの画像解析により測定した水滴と研磨パッド表面との接触角である。
【0049】
上述のナップ層の圧縮率および研磨パッドの接触角は、例えば、研磨パッド16を構成する樹脂および添加剤等の選定、並びに成膜プロセス条件およびバフィングの取代量の制御により、所望の値に調整できる。例えば、圧縮率は、樹脂の種類によって調整し、接触角は添加剤の種類によって調整する等、圧縮率および接触角は、それぞれ独自に調整できる。
研磨パッドを構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、顔料、成膜安定剤、および発泡形成剤等が挙げられる。さらに、顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。成膜安定剤としては、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。発泡形成剤としては、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
本実施形態において、自転率をより向上させる観点から、ウェーハWの直径に対する内径の比率(リテーナリング14の内径/ウェーハWの直径)が1.0015以上1.0067以下のリテーナリングを用いることが好ましい。例えば、ウェーハWの直径が300mmの場合、リテーナリング14の内径は、300.5mm以上302mm以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態において、自転率をより向上させる観点から、定盤15の研磨時の回転数は、15rpm以上であることが好ましい。一方、外周ダレ防止の観点から、定盤15の研磨時の回転数は、80rpm以下であることが好ましい。
定盤15の研磨時の回転数は、より好ましくは、20rpm以上40rpm以下である。上記回転数が40rpm以下であれば、平坦度の絶対値が悪化する恐れもない。なお、上記回転数に関しては、15rpm以上80rpm以下の範囲内において、より好ましい20rpm以上40rpm以下の範囲に近づくほど、本発明の効果が発揮できる。したがって、15rpm以上80rpm以下の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できる。
【0052】
本実施形態において、ウェーハWの自転率をより向上させる観点から、研磨加圧(研磨時にウェーハWを研磨パッド16に押圧する圧力)は、100g/cm以上とすることが好ましい。一方、ウェーハの割れ防止の観点から、研磨加圧は、300g/cm以下とすることが好ましい。
研磨加圧は、より好ましくは、125g/cm以上200g/cm以下である。研磨加圧が200g/cm以下であれば、研磨パッド16とウェーハWとの間へのスラリーの流入を阻害することがなく、ウェーハWに傷を発生させてしまう恐れもない。なお、研磨加圧に関しては、100g/cm以上300g/cm以下の範囲内において、より好ましい125g/cm以上200g/cm以下の範囲に近づくほど、本発明の効果が発揮できる。したがって、100g/cm以上300g/cm以下の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できる。
【0053】
本実施形態において、研磨対象のウェーハWは特に限定されない。ウェーハWとしては、例えば、シリコンウェーハ、およびSiCウェーハ等が挙げられる。
また、本実施形態において、研磨対象のウェーハWの直径は、特に限定されない。例えば、直径150mmのウェーハ、直径200mmのウェーハ、および直径300mmのウェーハ等が挙げられる。
これらの異なる直径のウェーハを研磨する場合も、前述と同様に、ウェーハを保持するリテーナリングの内径とウェーハの直径との比率は、次式で表されるリテーナリングを用いることが好ましい。
リテーナリング内径/ウェーハ直径=1.0015以上1.0067以下
【0054】
本実施形態の研磨方法に用いる研磨液は、特に制限されない。ウェーハの研磨に用いられる一般的な研磨液を、本実施形態においても用いることができる。
【0055】
〔ウェーハの製造方法〕
次に、本実施形態の片面研磨方法を含むシリコンウェーハの製造方法について説明する。
シリコンウェーハの製造方法の概略は、チョクラルスキー法を用いてシリコンウェーハを製造し、上記片面研磨方法でウェーハWの研磨を行う方法である。
【0056】
図3に示されるように、シリコンウェーハの製造方法は、引き上げ工程S1と、ブロック加工工程S2と、スライス工程S3と、前処理工程S4と、両面同時研磨工程S5と、片面研磨装置セット工程S6と、研磨条件決定工程S7と、研磨工程S8と、ウェーハ取り出し工程S9と、を有する。
【0057】
ここにおいて、片面研磨装置セット工程S6、研磨条件決定工程S7、研磨工程S8およびウェーハ取り出し工程S9により、片面仕上げ工程S20が構成されている。
【0058】
引き上げ工程S1は、チョクラルスキー法を用いてシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程である。これにより、円柱状の単結晶インゴットが得られる。
ブロック加工工程S2は、単結晶インゴットをブロックに加工する工程である。ブロック加工工程S2では、単結晶インゴットの外周研削を行い、結晶方位に応じてノッチ加工を行った後、例えばバンドソーにより、単結晶インゴットを複数のブロックに切断する。
【0059】
スライス工程S3では、内周刃切断機やワイヤーソーにより、ブロックが例えば厚さ1mm程度の複数のシリコンウェーハにスライスされる。
前処理工程S4では、面取り加工を行うとともに、ウェーハ両面が平行になるように、例えばアルミナ研磨材などで粗研磨(ラッピング)を行い、必要に応じてエッチングなどを施した後、ウェーハ表面の凹凸をなくす平坦化加工を行う。
【0060】
両面同時研磨工程S5では、前処理が行われたウェーハは平坦度の高い鏡面仕上げが行われる。例えばコロイダルシリカ液などを用いて両面研磨(ポリッシング)が行われて、平坦度がさらに作り込まれ、所定平坦度のウェーハとされる。
【0061】
所定平坦度のウェーハは片面研磨装置セット工程S6で片面研磨装置にセットされる。
研磨条件決定工程S7では、研磨制御手段における研磨条件決定部の研磨条件を決定し、決定された研磨条件に適合した研磨パッドを定盤に配置するとともに、片面研磨装置の各部、具体的には、ヘッド駆動手段、定盤駆動手段、研磨液供給手段、ウェーハ加圧力調整手段に決定された研磨条件を指令する。
研磨工程S8では、決定された研磨条件に従って、研磨が行われ、ウェーハ取り出し工程S9においてウェーハが取り出される。
片面研磨装置セット工程S6、研磨条件決定工程S7、研磨工程S8およびウェーハ取り出し工程S9による片面仕上げ工程S20において、研磨加工を施すことで、前記平坦度加工後のシリコンウェーハの表面の傷およびダメージを除去すると同時に、シリコンウェーハの表面粗さを整えることができる。
【0062】
ウェーハ取り出し工程S9で取り出された各々のシリコンウェーハは、洗浄工程S10では、例えばアルカリ性溶液などによる洗浄が行われる。
【0063】
ウェーハ最終検査工程S11は、ウェーハ表面検査装置などを用いて、シリコンウェーハ上に存在する表面パーティクルや、傷などを検査する工程である。
ウェーハの品質上必要な検査が行われた後、合格品は、梱包され、出荷される。
【0064】
[実施形態の作用効果]
上述のように、本発明者らの知見によれば、片面研磨は、ウェーハの裏面をチャックして表面側を研磨する機構であることから、保持する側のチャックの形状ばらつき、バックパッドの保持材厚みばらつき、およびリテーナリングの厚み等、副資材による影響を受けて、ウェーハ裏面へ転写される面圧にばらつきが生じ、シリコンウェーハ外周部の周方向の取代がばらついてしまうことがわかっている。
上記実施形態によれば、ウェーハの自転率を高めることで、上述のような副資材による裏面へ転写される面圧のばらつきを平均化できる。よって、ウェーハの周方向の平坦度ばらつき量を低減できる。
【0065】
上記実施形態においては、ウェーハの自転率を高める要素として研磨パッドの圧縮率、接触角、リテーナリングの内径と前記ウェーハの直径との比率、研磨定盤の回転数、研磨加圧量に着目し、各要素のいずれかを単独またはその組み合わせで所望のウェーハの自転率を得られるようにしたから、研磨条件選定の自由度が高く、ウェーハの状況に応じた研磨を行えるという効果がある。
【0066】
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の改良および設計の変更などが可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、片面研磨装置1におけるバックパッド13およびリテーナリング14として、バックパッド13の下面の外周部にリテーナリング14が設けられて一体となったテンプレートタイプを用いた例を説明したが、研磨装置本体がリテーナリングを有していてもよい。
【0068】
また、例えば、上記実施形態においては、片面研磨装置1における研磨パッド16として、基材としての不織布とナップ層とを有する研磨パッドを用いた例を説明したが、研磨パッドは、不織布を用いないナップ層単体の研磨パッドを用いてもよい。不織布を用いないナップ層単体の研磨パッドを用いることで、不織布などの他のベース層の厚みうねりおよび密度の粗密の影響を受けることがなく、ESFQR Rangeの悪化を抑制できる。あるいは、樹脂フィルム等を基材とした研磨パッドを用いてもよい。
【実施例
【0069】
ポリウレタン樹脂の選定、CB(カーボンブラック)、成膜安定剤および溶剤(DMF)等の添加剤、成膜プロセス条件、並びにバフィングの取代量を調整することで、圧縮率と接触角の異なる研磨パッド(パッドA~C)を制作した。なお、パッドA~Cにおいて、圧縮率と接触角以外の物性は変化しないように制御した。パッドA~Cの各物性を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
研磨には、研磨パッドとして、上記記載のパッドA~Cを用いた。また、バックパッドおよびリテーナリングとしては、これらが一体となったテンプレートタイプを用いた。なお、当該テンプレートとして、リテーナリングの内径が301mm、バックパッドの直径が290mm位置の周方向Thicknessrange(36点測定)が10μmの、フジボウ製のテンプレート(POLYPAS_Template)を用いた。
【0072】
研磨対象のウェーハは、直径300mmの単結晶シリコンウェーハで、片面研磨(SMP)前のESFQD平均値が0nm以上5nm以下の物を各60枚準備した。研磨加圧は、150g/cmとし、研磨ヘッドおよび定盤の回転数は、各々30rpmとした。研磨液には、粒径が35nmのコロイダルシリカを0.3wt%含む物を用い、4分間ウェーハを研磨し、取代量が500nm以上1000nm以下となるようにした。
【0073】
[自転率の測定]
研磨前後のノッチ位置を観察することで、ウェーハWの自転率を測定した。結果を表2に示す。
【0074】
[ESFQR Rangeの算出]
研磨後のウェーハについて、以下の方法により、ESFQR Rangeを算出し、外周部の周方向の平坦度ばらつき量の評価を行った。結果を表2に示す。
ウェーハ最外周から直径方向に2mmの領域を除外領域とし、それよりも内側の外周基準端から径方向中心側に伸びるセクター長が300mmの2本の直線と、ウェーハ外周方向5度(±2.5度)に相当する円弧により囲まれた略矩形の72個の分割されたサイトを、ESFQR Rangeのサイトとした。そして、それら72個のサイトにおけるESFQRを、平坦度測定装置(KLA-Tencor社製:Wafer sight 2)を用いて測定した。ESFQR Rangeは、測定した72個のESFQRの値のうち、最大値と最小値の差分により算出した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、ウェーハの自転率が25度/min以上60度/min以下となるように制御してウェーハを研磨することで、ウェーハ外周部の周方向の平坦度ばらつき量を低減できた。
【符号の説明】
【0077】
1…片面研磨装置、11…ヘッド回転軸部材、12…研磨ヘッド、13…バックパッド、14…リテーナリング、15…定盤、16…研磨パッド、20…ヘッド駆動手段、30…定盤駆動手段、40…研磨液供給手段、50…ウェーハ加圧力調整手段、60…研磨制御手段、70…研磨条件決定部、W…ウェーハ、S20…片面仕上げ工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8