IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

特許7388363共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法
<>
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図1
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図2
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図3A
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図3B
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図3C
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図3D
  • 特許-共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法 図3E
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/04 20060101AFI20231121BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20231121BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20231121BHJP
【FI】
C08F8/04
C03C27/12
C08L53/02
C09J11/06
C09J153/00
C09J153/02
H01L31/04 560
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020553097
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039706
(87)【国際公開番号】W WO2020080202
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018195913
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019080313
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【弁理士】
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】松田 弘明
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111650(JP,A)
【文献】国際公開第00/008079(WO,A1)
【文献】特開2018-048236(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085504(WO,A1)
【文献】特開2005-060564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/04
C03C 27/12
C08L 53/02
C09J 153/02
C09J 153/00
C09J 11/06
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン単量体単位とを含む共重合体の水素化物であって、
前記水素化物は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする1つの重合体ブロック[B]とからなるトリブロック共重合体を水素化した共重合体水素化物であり、
前記重合体ブロック[A]に含まれる前記芳香族ビニル単量体単位が、スチレンおよびその誘導体から選択される単量体由来の構造単位であり、
前記共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、
前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が1.50以上であり、前記第2ピーク分子量が1000以上である、共重合体水素化物。
【請求項2】
前記第1ピーク分子量が15000以上200000以下である、請求項1に記載の共重合体水素化物。
【請求項3】
トリブロック共重合体中の全芳香族ビニル単量体単位が前記トリブロック共重合体全体に占める質量分率をwAとし、前記トリブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン単量体単位が前記トリブロック共重合体全体に占める質量分率をwBとしたときの、wAとwBとの比(wA:wB)が20:80~60:40であるトリブロック共重合体の、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化してなる、請求項1または2に記載の共重合体水素化物。
【請求項4】
前記トリブロック共重合体の芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化率90%以上で水素化してなる、請求項3に記載の共重合体水素化物。
【請求項5】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤およびフェノール系老化防止剤の少なくとも何れかと、を含む共重合体水素化物含有組成物であって、
前記リン系酸化防止剤および前記フェノール系老化防止剤の合計含有量が、前記共重合体水素化物100質量部に対して0.001質量部以上1.0質量部以下である、共重合体水素化物含有組成物。
【請求項6】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物と、加工助剤とを含む共重合体水素化物含有組成物であって、
前記加工助剤の含有量が、前記共重合体水素化物100質量部に対して40質量部以下である、共重合体水素化物含有組成物。
【請求項7】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物を製造する製造方法であって、
有機リチウム化合物を含む開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体とを共重合させる共重合工程と、
前記共重合工程により得られた共重合体を水素化する水素化工程と、を含む、共重合体水素化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記アルコキシシリル基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体を含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記酸無水物基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項10に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
2層以上の合わせガラス用中間膜が積層されてなる合わせガラス用中間膜積層体であって、少なくとも一方の最外層が請求項から11の何れかに記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス用中間膜積層体。
【請求項13】
一方の最外層が請求項またはに記載の合わせガラス用中間膜であり、他方の最外層が請求項10または11に記載の合わせガラス用中間膜である、請求項12に記載の合わせガラス用中間膜積層体。
【請求項14】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物を含む、封止材。
【請求項15】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、封止材。
【請求項16】
前記アルコキシシリル基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項15に記載の封止材。
【請求項17】
前記共重合体水素化物からなる層と、前記共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体からなる層とを備える多層構造である、請求項14から16の何れかに記載の封止材。
【請求項18】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物を含む、光学フィルム。
【請求項19】
請求項に記載の共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる、医療用成形体。
【請求項20】
請求項19に記載の医療用成形体を製造する医療用成形体の製造方法であって、
前記フェノール系老化防止剤の配合量が、前記共重合体水素化物100質量部に対し、下記式1で表されるW質量部以上0.50質量部以下である共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体を、照射線量Eで、高エネルギー線照射することを含む、医療用成形体の製造方法。
W=[0.46×(100-H)+0.04]×(E/25)・・・式1
(式1中、Wは、共重合体水素化物100質量部に対するフェノール系酸化防止剤の質量部を表し、Hは、共重合体水素化物のパーセント単位で表示された水素化率を表し、Hは99~100の数値である。Eは、高エネルギー線のkGy単位で表示される照射線量を表す。)
【請求項21】
請求項1からの何れかに記載の共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、接着剤。
【請求項22】
有機溶剤をさらに含み、前記有機溶剤の含有量が前記変性体100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下であり、前記変性体が前記有機溶剤に溶解している、請求項21に記載の接着剤。
【請求項23】
前記有機溶剤の沸点が90℃以上である、請求項22に記載の接着剤。
【請求項24】
シランカップリング剤をさらに含み、前記シランカップリング剤の含有量が前記変性体100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、請求項21から23の何れかに記載の接着剤。
【請求項25】
架橋助剤および有機過酸化物をさらに含む、請求項21から24の何れかに記載の接着剤。
【請求項26】
耐熱性樹脂と金属とを接着する、請求項21から25の何れかに記載の接着剤。
【請求項27】
請求項21に記載の接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとが接着されてなる、接合体。
【請求項28】
請求項27に記載の接合体を製造する接合体の製造方法であって、
前記接着剤シートおよび前記熱可塑性樹脂シートのいずれか一方の接着面に、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種の活性化処理を行う工程(1)と、
前記接着剤シートおよび前記熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加圧圧縮する工程(2)と、を含む、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体水素化物およびその製造方法、共重合体水素化物含有組成物、合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜積層体、封止材、光学フィルム、医療用成形体およびその製造方法、接着剤、ならびに、接合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる共重合体の水素化物は、例えば、(i)保持力、タック、粘着力の性能のバランスに優れ、かつ低溶融粘度の粘接着剤用組成物のベースポリマー(例えば、特許文献1)や、(ii)流動性、圧縮永久ひずみ性、柔軟性に優れる熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献2)、など、様々な目的乃至用途に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-126822号公報
【文献】特開2016-20508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の共重合体の水素化物は、金型転写性を向上させるという点において改善の余地があった。さらに、上記従来の共重合体の水素化物を用いたフィルム成形における膜厚ムラを抑制するという点においても改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した改善点を有利に解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、最も溶出時間の早いピークトップを示す所定の共重合体水素化物由来ピーク(第1ピーク)と、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す所定の共重合体水素化物由来ピーク(第2ピーク)とを有する共重合体水素化物を用いることで、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書において、膜厚ムラは、「Tダイ押出によりフィルムを成形する際の引張方向の厚み変動」を意味し、この厚み変動膜厚ムラが小さいことが求められる。
【0007】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の共重合体水素化物は、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン(直鎖状共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)単量体単位とを含む共重合体の水素化物であって、前記共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が1.50以上であり、前記第2ピーク分子量が1000以上である、ことを特徴とする。このように、共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピーク(第1ピーク)と、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピーク(第2ピーク)とを有し、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量に対する第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量の比が所定範囲内であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量が所定範囲内である共重合体水素化物を用いることで金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる。
なお、本発明において、共重合体が「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た共重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0008】
そして、本発明の共重合体水素化物において、前記第1ピーク分子量が15000以上200000以下である、ことが好ましい。
前記第1ピーク分子量が15000以上200000以下である共重合体水素化物を用いれば、金型転写性、フィルム成型加工性を良好に維持することができるからである。
【0009】
そして、本発明の共重合体水素化物において、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体を水素化した共重合体水素化物であって、前記ブロック共重合体中の全芳香族ビニル単量体単位が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwAとし、前記ブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwBとしたときの、wAとwBとの比(wA:wB)が20:80~60:40であるブロック共重合体の、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化してなる、ことが好ましい。
wAとwBとの比(wA:wB)が20:80~60:40であるブロック共重合体の、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化してなる共重合体水素化物を用いれば、共重合体水素化物の低温下での耐衝撃性および剛性が低下するのを抑制することができるからである。
なお、本発明において、「芳香族ビニル単量体単位」は、「芳香族ビニル単量体(芳香族ビニル化合物)に由来する構造単位」を意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位」は、「鎖状共役ジエン単量体(鎖状共役ジエン化合物)に由来する構造単位」を意味し、「芳香族ビニル単量体単位を主成分とする」は、「芳香族ビニル単量体単位を50質量%超含有する」ことを意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする」は、「鎖状共役ジエン単量体単位を50質量%超含有する」ことを意味する。
また、本発明において、「水素化率」とは、共重合体に含まれる全不飽和結合のうち水素化された不飽和結合の割合を示し、本明細書の実施例に記載の1H-NMRを用いた手法で求めることができる。
【0010】
そして、本発明の共重合体水素化物において、ブロック共重合体の芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化率90%以上で水素化してなる、ことが好ましい。
wAとwBとの比(wA:wB)が20:80~60:40であるブロック共重合体の、芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化率90%以上で水素化してなる共重合体水素化物を用いれば、共重合体水素化物の低温下での耐衝撃性および剛性が低下するのをより抑制することができるからである。
【0011】
そして、本発明の共重合体水素化物において、前記ブロック共重合体がトリブロック共重合体またはペンタブロック共重合体である、ことが好ましい。
トリブロック共重合体またはペンタブロック共重合体の水素化物である共重合体水素化物を用いれば、金型転写性、およびフィルム成形加工性を維持したまま、低温化での耐衝撃性、剛性を低下させることない樹脂を得ることができるからである。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の共重合体水素化物含有組成物は、上述した何れかの共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤およびフェノール系老化防止剤の少なくとも何れかと、を含む共重合体水素化物含有組成物であって、前記リン系酸化防止剤および前記フェノール系老化防止剤の合計含有量が、前記共重合体水素化物100質量部に対して0.001質量部以上1.0質量部以下である、ことを特徴とする。
このように、上述した何れかの共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤およびフェノール系老化防止剤の少なくとも何れかとを所定量含有する共重合体水素化物含有組成物を用いることで、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の共重合体水素化物含有組成物は、上述した何れかの共重合体水素化物と、加工助剤とを含む共重合体水素化物含有組成物であって、前記加工助剤の含有量が、前記共重合体水素化物100質量部に対して40質量部以下である、ことを特徴とする。
このように、上述した何れかの共重合体水素化物と、加工助剤とを所定量含有する共重合体水素化物含有組成物を用いることで、合わせガラス用の中間膜とした場合に、耐熱性の低下を抑制すると共に、溶出物が増加するのを抑制することができる。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、上述した何れかの共重合体水素化物の製造方法であって、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体とを共重合させる共重合工程と、前記共重合工程により得られた共重合体を水素化する水素化工程と、を含む、ことを特徴とする。
このように、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体とを共重合させることにより得られた共重合体を水素化することで、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる共重合体水素化物を効率的に製造することができる。
【0015】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の合わせガラス用中間膜は、上述した何れかの共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、ことを特徴とする。
このように、共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含むことにより、保存後の接着性が低下するのを抑制することができる。
【0016】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜において、前記アルコキシシリル基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、ことが好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が、共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下であることで、保存後の接着性が低下するのを確実に抑制することができる。
【0017】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の合わせガラス用中間膜は、上述した何れかの共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体を含む、ことを特徴とする。
このように、共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体を含むことにより、保存後の接着性が低下するのを抑制することができる。
【0018】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜において、前記酸無水物基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、ことが好ましい。
酸無水物基の導入量が、共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下であることで、保存後の接着性が低下するのを確実に抑制することができる。
【0019】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の合わせガラス用中間膜積層体は、2層以上の合わせガラス用中間膜が積層されてなる合わせガラス用中間膜積層体であって、少なくとも一方の最外層が上述した何れかの合わせガラス用中間膜である、ことを特徴とする。
このように、少なくとも一方の最外層が上述した何れかの合わせガラス用中間膜であることにより、耐衝撃性を向上させることができる。
【0020】
そして、本発明の合わせガラス用中間膜積層体において、一方の最外層が上述した何れかの共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む合わせガラス用中間膜であり、他方の最外層が上述した何れかの共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体を含む合わせガラス用中間膜である、ことが好ましい。
一方の最外層が共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む合わせガラス用中間膜であり、他方の最外層が共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体を含む合わせガラス用中間膜であることで、耐衝撃性を向上させることができるからである。
【0021】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の封止材は、上述した何れかの共重合体水素化物を含む、ことを特徴とする。
このように、共重合体水素化物を含むことにより、保存後の接着性が低下するのを抑制することができる。
【0022】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の封止材は、上述した何れかの共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、ことを特徴とする。
このように、共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含むことにより、保存後の接着性が低下するのを抑制することができる。
【0023】
そして、本発明の封止材において、前記アルコキシシリル基の導入量が、前記共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下である、ことが好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が、共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下であることで、保存後の接着性が低下するのを確実に抑制することができる。
【0024】
そして、本発明の封止材において、前記共重合体水素化物からなる層と、前記共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体からなる層とを備える多層構造である、ことが好ましい。
共重合体水素化物からなる層と、共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体からなる層とを備える多層構造であることで、保存後の接着力の低下を抑制することができるからである。
【0025】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の光学フィルムは、上述した何れかの共重合体水素化物を含む、ことを特徴とする。
このように、上述した何れかの共重合体水素化物を含むことにより、レタデーションの精度を向上させることができると共に、保存後の光漏れを抑制することができる。
【0026】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の医療用成形体は、上述した何れかの共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる、ことを特徴とする。
このように、上述した何れかの共重合体水素化物含有組成物から形成されてなることにより、強度の精度を向上させることができる。
【0027】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の医療用成形体の製造方法は、上述した医療用成形体を製造する医療用成形体の製造方法であって、前記フェノール系老化防止剤の配合量が、前記共重合体水素化物100質量部に対し、下記式1で表されるW質量部以上0.50質量部以下である共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体を、照射線量Eで、高エネルギー線照射することを含む、ことを特徴とする。
W=[0.46×(100-H)+0.04]×(E/25)・・・式1
(式1中、Wは、共重合体水素化物100質量部に対するフェノール系酸化防止剤の質量部を表し、Hは、共重合体水素化物のパーセント単位で表示された水素化率を表し、Hは99~100の数値である。Eは、高エネルギー線のkGy単位で表示される照射線量を表す。)
このように、フェノール系老化防止剤の配合量が、共重合体水素化物100質量部に対し、式1で表されるW質量部以上0.50質量部以下である共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体を、照射線量Eで、高エネルギー線照射することにより、溶出を低減することができる。
【0028】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接着剤は、上述した何れかの共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含む、ことを特徴とする。
このように、上述した何れかの共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含むことにより、保存後の接着力を向上させることができる。
【0029】
そして、本発明の接着剤において、有機溶剤をさらに含み、有機溶剤の含有量が変性体100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下であり、変性体が有機溶剤に溶解している、ことが好ましい。
有機溶剤をさらに含み、有機溶剤の含有量が変性体100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下であり、変性体が有機溶剤に溶解していることで、保存後の接着力を向上させることができるからである。
【0030】
そして、本発明の接着剤において、有機溶剤の沸点が90℃以上であることが好ましい。
有機溶剤の沸点が90℃以上であることで、保存後の接着力を確実に向上させることができるからである。
【0031】
そして、本発明の接着剤において、シランカップリング剤をさらに含み、前記シランカップリング剤の含有量が前記変性体100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
シランカップリング剤をさらに含み、シランカップリング剤の含有量が変性体100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることで、保存後の接着力を確実に向上させることができるからである。
【0032】
そして、本発明の接着剤において、架橋助剤および有機過酸化物をさらに含むことが好ましい。
架橋助剤および有機過酸化物をさらに含むことで、保存後の接着力をさらに向上させることができるからである。
【0033】
そして、本発明の接着剤により、耐熱性樹脂と金属とを良好に接着することができる。
【0034】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接合体は、上述のいずれかの接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとが接着されてなる、ことを特徴とする。
このように、上述のいずれかの接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとが接着されてなることにより、保存後の接着力を向上させることができる。
【0035】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接合体の製造方法は、上述の接合体を製造する接合体の製造方法であって、前記接着剤シートおよび前記熱可塑性樹脂シートのいずれか一方の接着面に、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種の活性化処理を行う工程(1)と、前記接着剤シートおよび前記熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加圧圧縮する工程(2)と、を含む、ことを特徴とする。
このように、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートのいずれか一方の接着面に、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種の活性化処理を行い、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加圧圧縮することにより、保存後の接着力を向上した接合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる共重合体水素化物、該共重合体水素化物を含有する共重合体水素化物含有組成物、該共重合体水素化物を製造する方法、該共重合体水素化物の変性体を含む合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の2層以上が積層されてなる合わせガラス用中間膜積層体、該共重合体水素化物を含む封止材、該共重合体水素化物の変性体を含む封止材、該共重合体水素化物を含む光学フィルム、該共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体、該医療用成形体を製造する製造方法、該共重合体水素化物の変性体を含む接着剤、該接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートが積層されてなる接合体、および該接合体を製造する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線の一例を説明するための図である。なお、図1の縦軸は、ポリスチレン換算分子量(左縦軸)または感度(mV)(右縦軸)を示し、図1の横軸は、溶出時間(分)を示す。
図2】金型転写評価用金型の断面図を示す。
図3A】本発明の合わせガラス用中間膜積層体の一例を示す(その1)。
図3B】本発明の合わせガラス用中間膜積層体の一例を示す(その2)。
図3C】本発明の合わせガラス用中間膜積層体の一例を示す(その3)。
図3D】本発明の合わせガラス用中間膜積層体の一例を示す(その4)。
図3E】本発明の合わせガラス用中間膜積層体の一例を示す(その5)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の共重合体水素化物は、本発明の共重合体水素化物含有組成物の調製に用いられる。また、本発明の共重合体水素化物は、本発明の共重合体水素化物の製造方法により得られる。
【0039】
(共重合体水素化物)
本発明の共重合体水素化物は、芳香族ビニル単量体単位と鎖状共役ジエン単量体単位とを含む共重合体の水素化物であって、共重合体の水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークを有し、前記少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとしたときに、前記第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する前記第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(前記第1ピーク分子量/前記第2ピーク分子量)が所定範囲内であり、前記第2ピーク分子量が所定範囲内である、ことを特徴とする。
そして、本発明の共重合体水素化物は、共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線が、最も溶出時間の早いピークトップを示す所定の共重合体水素化物由来ピーク(第1ピーク)と、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す所定の共重合体水素化物由来ピーク(第2ピーク)とを有するため、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる。
【0040】
<共重合体>
共重合体は、本発明の共重合体水素化物の前駆体である。
共重合体は、芳香族ビニル単量体単位および鎖状共役ジエン単量体単位を含む重合体であればその構造は特に限定されず、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、テーパードブロック共重合体、などの何れであってもよい。そして、低温衝撃強度および引張強度の観点から、共重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを含有するブロック共重合体であることが好ましい。
なお、テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体部分のみならずランダム共重合部分を含むブロック共重合体、または、ブロック共重合体部分の組成比が連続的に変化するブロック共重合体を意味する。なお、テーパードブロック共重合体は、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成のランダム共重合部分を含むブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの結合部分にA,B組成が連続的に組成変化するブロック共重合体であってもよい。
以下、共重合体が上述したブロック共重合体である場合の組成および構造について詳述するが、共重合体の構造は、ブロック共重合体に限定されるものではなく、この記載に限定されるものではない。
【0041】
ここで、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。共重合体の重合平均分子量が7000以上であれば、押出成形にてフィルム成形をすることができ、190000以下であれば、金型転写性を改良することができる。
また、共重合体(1)の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。分子量分布が6以下であれば、金型転写性と膜厚ムラを改善することができる。
なお、本発明において、重合体の「重量平均分子量」および「分子量分布」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0042】
<<芳香族ビニル単量体単位>>
芳香族ビニル単量体単位を形成しうる芳香族ビニル単量体としては、スチレンおよびその誘導体が挙げられ、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、4-モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン、および4-フェニルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないもの、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、および4-フェニルスチレンが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<<鎖状共役ジエン単量体単位>>
鎖状共役ジエン単量体単位を形成しうる鎖状共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、工業的な入手の容易さから1,3-ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
<<重合体ブロック[A]>>
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[A]中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル単量体単位の含有割合が80質量%以上であれば、共重合体水素化物中の重合体ブロック[A]由来のミクロ相分離ドメインを維持することができ、引張強度および芳香族単量体ブロックの耐熱性を維持することができる。
【0045】
なお、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、鎖状共役ジエン単量体単位であってもよい。また、その他の単量体単位を形成しうる単量体としては、吸湿性を低減すべく、極性基を含有しないものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンが挙げられる。
なお、ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[A]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[A]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
<<重合体ブロック[B]>>
重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[B]中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合が60質量%以上であれば、共重合体中の重合体ブロック[B]由来のガラス転移温度(Tg)を得ることができ、低温衝撃強度を維持することができる。
【0047】
なお、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよく、そのようなその他の単量体単位は、芳香族ビニル単量体単位であってもよいし、その他の単量体単位は「重合体ブロック[A]」の項で上述した鎖状オレフィン、環状オレフィンから形成されてもよい。
なお、ブロック共重合体である共重合体が重合体ブロック[B]を複数有する場合は、複数の重合体ブロック[B]の単量体組成は同一あってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
<<ブロック共重合体>>
ブロック共重合体は、本発明の共重合体水素化物の1種であるブロック共重合体水素化物の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とを含有する高分子である。
ここで、ブロック共重合体である共重合体中の重合体ブロック[A]の数は、通常5つ以下、好ましくは4つ以下、より好ましくは3つ以下であり、更に好ましくは2つである。
また、ブロック共重合体である共重合体中の重合体ブロック[B]の数は、通常4つ以下、好ましくは3つ以下、より好ましくは2つ以下、また、更に好ましくは1つである。
【0049】
-wA:wB-
ブロック共重合体中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をwAとし、ブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、好ましくは20:80~60:40、より好ましくは、25:75~60:40、更に好ましくは、40:60~60:40である。
wAが多過ぎる場合は、共重合体から得られる共重合体水素化物の低温下での耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、wAが少な過ぎる場合は、共重合体から得られる共重合体水素化物の剛性が低下するおそれがある。
なお、「wAとwBとの比(wA:wB)」については、ブロック共重合体を製造する過程において、ブロック共重合体の重合に用いた芳香族ビニル単量体、鎖状共役ジエン単量体およびその他のビニル系化合物の部数と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定されたブロック共重合体の各ブロックの重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率により、各単量体単位の質量分率を算出することができる。
【0050】
-ブロック構造-
ブロック共重合体である共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。また、ブロック共重合体である共重合体は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合した構造(すなわち、A-B-Aの順に並んだ構造)を少なくとも1箇所有することが好ましい。
そしてブロック共重合体である共重合体の特に好ましい形態としては、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合してなるトリブロック共重合体(A-B-A)、および、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該2つの重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合してなるペンタブロック共重合体(A-B-A-B-A)が挙げられ、トリブロック共重合体(A-B-A)が最も好ましい。
【0051】
<共重合体の水素化>
上述した共重合体中の不飽和結合(例えば、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合などを含む)を水素化することで、共重合体水素化物を得ることができる。
【0052】
-水素化率-
そして、水素化による得られる共重合体水素化物の水素化率は、90モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることが好ましく、99モル%以上であることがより好ましい。水素化率が90モル%以上であれば、耐候性を改良することができる。
【0053】
-分子量-
ここで、共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。共重合体の重合平均分子量が7000以上であれば、押出成形にてフィルム成形をすることができ、190000以下であれば、金型転写性を改良することができる。
また、共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、7以下であることが好ましく、6以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。分子量分布が7以下であれば、金型転写性および膜厚ムラを改善することができる。
【0054】
共重合体水素化物の、鎖状共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、共重合体および共重合体水素化物の1H-NMRを測定することにより、求めることができる。
【0055】
共重合体中の不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法に従って行えばよい。
共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を選択的に水素化する方法としては、例えば、特開2015-78090号公報等に記載された公知の水素化方法が挙げられる。
また、共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法が挙げられる。
【0056】
水素化反応終了後においては、水素化触媒、或いは、水素化触媒および重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液から溶剤を除去して共重合体水素化物を回収することができる。
【0057】
-ブロック共重合体水素化物-
ブロック共重合体水素化物は、本発明の共重合体水素化物の1種である。
ブロック共重合体水素化物は、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよいし、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0058】
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、通常95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上であり、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
なおここで、「主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における鎖状共役ジエン化合物に由来の二重結合を水素化すること」を意味し、「芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における芳香環に由来の二重結合を水素化すること」を意味する。
【0059】
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する場合、水素化率は、全炭素-炭素不飽和結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
【0060】
<シラン変性>
上記得られた共重合体水素化物と、エチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応(シラン変性)させて、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入してもよい。
なお、導入されるアルコキシシリル基は、シラン変性に用いられる後述のエチレン性不飽和シラン化合物に対応するが、(i)ガラス、金属等の異種材料との接着、(ii)溶融シリカ、粉砕シリカ、モンモリロナイト等のいわゆるクレー、ガラスファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、金属粒子、等の分散性の観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましく、メトキシシリル基がより好ましい。ここで、アルコキシシリル基は、共重合体水素化物に直接結合されてもよく、アルキレン基やアルキレンオキシカルボニルアルキレン基などの2価の有機基を介して結合されてもよい。
【0061】
<<エチレン性不飽和シラン化合物>>
シラン変性に用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、共重合体水素化物と反応(例えばグラフト重合)して、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入しうるものであれば特に限定されない。このようなエチレン性不飽和シラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましく、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、共重合体水素化物100質量当たり、通常0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0062】
<<過酸化物>>
シラン変性に用いる過酸化物としては、1分間半減期温度が170~190℃のものが好ましく使用され、例えば、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
過酸化物の使用量は、共重合体水素化物100質量部当たり、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
【0063】
<<アルコキシシリル基の導入量>>
シラン変性を行うことにより共重合体水素化物に導入されるアルコキシシリル基の量は、共重合体水素化物100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが更に好ましい。
【0064】
-分子量-
上記シラン変性により得られた共重合体水素化物(シラン変性体)の重量平均分子量(Mw)は、通常、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いた共重合体水素化物のそれと大きくは変わらず、7000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、12000以上であることが更に好ましく、190000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。シラン変性体の重合平均分子量が7000以上であれば、シラン変性体の機械的強度を高めることができ、190000以下であれば、シラン変性体の加工性を確保することができる。
また、シラン変性体の分子量分布は、7.5以下であることが好ましく、6.5以下であることが好ましく、5.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が7.5以下であれば、共重合体水素化物から得られるシラン変性体の加工性や機械的強度を高めることができる。
なお、シラン変性体の分子量分布(Mw/Mn)は、過酸化物の存在下でシラン変性を行うため、重合体の架橋反応、切断反応が併発することにより、原料として用いた共重合体水素化物のそれよりも大きくなる傾向がある。
【0065】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線>
共重合体水素化物を含有する試料のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線における共重合体水素化物由来ピークの数は、少なくとも2つである限り、特に制限はないが、4つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つであることが特に好ましい。
ここで、溶出曲線は、共重合体水素化物由来ピークを検出可能なものであればよく、共重合体水素化物のみをGPC測定することにより得られた溶出曲線だけでなく、共重合体水素化物を含む組成物より得られた溶出曲線(例えば、老化防止剤と共重合体水素化物とを含む組成物)であってもよい。
なお、本明細書において、「ピーク」とは「ベースラインに対して突出した部分」を意味し、「ピークトップ」とは「示差屈折計(RI)の検出感度(mV)が一番高い頂点」を意味する。
ここで、少なくとも2つの共重合体水素化物由来ピークのうち、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第1ピークとし、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物由来ピークを第2ピークとする。例えば、図1では、Aが第1ピークであり、Bが第2ピークであり、溶出時間約16分で検出されるCが共重合体水素化物を製造するときに使われた溶媒(例えば、シクロヘキサン)に由来するピークであり、16.5分以降のマイナス側に検出される2つのピークはGPC測定で用いた溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF)に由来するピークである。Dは老化防止剤に由来するピークである。
また、図1において、EはGPCで測定された標準ポリスチレンの分子量のプロット(キャリブレーションカーブ)であり、図1に示すように、このキャリブレーションカーブとGPCで測定された共重合体水素化物の溶出時間から、「第1ピークの感度が最も高い溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)」および「第2ピークの感度が最も高い溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)」を算出する。
なお、図1の溶出曲線では、Dの老化防止剤由来のピークは、本発明の共重合体水素化物によるものではない。
【0066】
<<第1ピーク>>
第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)は、特に制限はないが、15000以上であることが好ましく、16300以上であることがより好ましく、20000以上であることが更に好ましく、25000以上であることが一層好ましく、45000以上であることがより一層好ましく、200000以下であることが好ましく、170000以下であることがより好ましく、140000以下であることが更に好ましく、96000以下であることが一層好ましく、88400以下であることがより一層好ましい。第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が、15000以上であれば、樹脂の衝撃強度を確保することができ、200,000以下であれば、フィルムを押し出し成型することができる。
【0067】
<<第2ピーク>>
第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)は、1000以上である限り、特に制限はないが、1200以上であることが好ましく、1300以上であることがより好ましく、1500以上であることが更に好ましく、1800以上であることが一層好ましく、9200以上であることがより一層好ましく、153800以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、50000以下であることが更に好ましく、47100以下であることが一層好ましい。第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が、1000以上であり、かつ、153800以下であれば金型転写性を改良することができる。
【0068】
第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)に対する第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)の比(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量)は、1.50以上である限り、特に制限はないが、2.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.89以上であることが更に好ましく、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、100以下であることが更に好ましく、73.85以下であることが一層好ましく、13.58以下であることがより一層好ましい。第2ピーク分子量に対する第1ピーク分子量の比が、2.0以上であり、かつ、200以下であれば、膜厚ムラをより改良することができる。
【0069】
第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)に対する第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)の比(第1ピークトップ感度(mV)/第2ピークトップ感度(mV))は、特に制限はないが、0.01以上であることが好ましく、0.015以上であることがより好ましく、0.02以上であることが更に好ましく、4.01以上であることが一層好ましく、6.88以上であることがより一層好ましく、9.36以上であることが更に一層好ましく、10.18以上であることが特に好ましく、99以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、26.39以下であることが一層好ましい。第2ピークトップ感度(mV)に対する第1ピークトップ感度(mV)の比が、0.01以上であれば、金型転写性をより改良することができ、99以下であれば、膜厚ムラをより改良することができる。
なお、本発明において、「示差屈折計(RI)の検出感度(mV)」は、GPC溶出曲線の各ピークにおけるピークトップ感度を意味し、例えば、図1では、「ピークトップ感度(mV)」に相当する。
【0070】
なお、水素化反応(水添反応)に供する共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)と、水素化温度(水添温度)と、水素化反応時間(水添反応時間)と、水素化反応(水添反応)における水素供給停止時間とを適宜調整することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線において所定の第1ピークと所定の第2ピークとを有する共重合体水素化物が得られる。
【0071】
(共重合体水素化物の製造方法)
本発明の共重合体水素化物の製造方法は、本発明の共重合体水素化物を製造する製造方法であり、共重合工程と、水素化工程とを含み、必要に応じて、シラン変性工程等のその他の工程を含む。
【0072】
<共重合工程>
共重合工程は、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体とを共重合させる工程である。
共重合の方法は、有機リチウム化合物を含む開始剤を用いた共重合である限り、特に限定されず、芳香族ビニル単量体と鎖状共役ジエン単量体を含む単量体組成物を、既知の方法で重合することにより、共重合体を調製することができる。
【0073】
-有機リチウム化合物-
有機リチウム化合物は、通常、アニオン重合に用いられるものであり、特に制限はなく、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5ージリチオペンタン、1,6ージリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;などが挙げられる。これらの中でも、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム等のモノ有機リチウム化合物が好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
<水素化工程>
水素化工程は、共重合工程により得られた共重合体を水素化する工程である。
共重合体中の不飽和結合を水素化する方法(水素化方法)としては、特に限定されず、既知の方法を採用することができるが、水素化率を高くしつつ、重合体鎖切断反応を抑制しうる水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号などに記載された方法を挙げることができる。
【0075】
<シラン変性工程>
シラン変性工程は、水素化工程により得られた共重合体水素化物をシラン変性する工程である。
共重合体水素化物をシラン変性する方法は、特に限定されないが、例えば、共重合体水素化物と、エチレン性不飽和シラン化合物と、過酸化物とを二軸押出機にて混練することにより、共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入することができる。混練温度は、通常180℃以上、好ましくは185℃以上、より好ましくは190℃以上、通常220℃以下、好ましくは210℃以下、より好ましくは200℃以下である。混練時間は、通常0.1分間以上、好ましくは0.2分間以上、より好ましくは0.3分間以上、通常10分間以下、好ましくは5分間以下、より好ましくは2分間以下程度である。このような混練温度、混練時間となるように適宜設定して、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0076】
(共重合体水素化物含有組成物)
本発明の共重合体水素化物含有組成物は、上述した本発明の共重合体水素化物と、リン系酸化防止剤、フェノール系老化防止剤、および加工助剤の少なくとも何れかと、を含み、必要に応じて、その他の成分を含む。
【0077】
<リン系酸化防止剤>
リン系酸化防止剤は、特に制限はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシリホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェノル)ホスファイト、トリス(2,4-ジーt-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9、10-ジヒドロ-9-オキサ-10ホスファフェナントレンー10-オキサイド等のモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0078】
<フェノール系老化防止剤>
フェノール系老化防止剤は、特に制限はなく、例えば、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本発明の共重合体水素化物含有組成物における、共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系老化防止剤の合計含有量は、0.001質量部以上1.0質量部以下である限り、特に制限はないが、0.003質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。共重合体水素化物100質量部に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系老化防止剤の合計含有量が、0.001質量部以上であれば、酸化を防止することができ、1.0質量部以下であれば、樹脂表面へのブリードを抑制することができる。
【0080】
<加工助剤>
加工助剤としては、共重合体水素化物に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量が300以上5,000以下の炭化水素系重合体がより好ましい。
【0081】
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリ-1-オクテン、ポリイソプレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリイソプレン-ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、透明性、耐光性を維持し、軟化効果に優れている点で、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500以上、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,500以下)のポリイソブチレン水素化物(HPB)が好ましい。
【0082】
低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、共重合体水素化物100質量部に対して、通常、40質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量が上記好ましい範囲内であれば、合わせガラス用の中間膜とした場合に、耐熱性が低下するのを抑制することができ、溶出物が増加するのを抑制することができる。
【0083】
<その他の成分>
その他の成分は、特に制限はなく、用途により例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロック共重合体水素化物以外の重合体、ペレットのブロッキング防止剤、赤外線遮蔽/吸収剤、金属石鹸、着色剤、酸無水物、無機酸化物(粉砕シリカ、焼成シリカ等)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明の共重合体水素化物または共重合体水素化物含有組成物は、合わせガラス用の中間膜(前記合わせガラスは、熱線反射膜、透明導電膜、調光膜、高弾性樹脂層等を含んでいてもよい)、封止材(太陽光発電素子、OLED等)、光学フィルム(位相差フィルム、偏光板保護フィルム等)、医療用成形体(バイアル、シリンジ、輸液バッグ、培養容器接着剤等)、接着シート、接着剤などに好適に使用される。
【0085】
(合わせガラス用中間膜)
本発明の合わせガラス用中間膜は、合わせガラスに用いられる中間膜であり、本発明の共重合体水素化物にアルコキシシリル基または酸無水物基が導入された変性体を含み、必要に応じて、加工助剤、紫外線吸収剤(UVA)等のその他の成分を含む。
合わせガラスは、上記合わせガラス用中間膜以外に、熱線反射膜、透明導電膜、調光膜、高弾性樹脂層等を含んでいてもよい。
合わせガラスの中間膜により接着される接着物としては、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のプラスチック、などが挙げられる。
なお、合わせガラスの詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2013/176258号、国際公開2016/006610号に記載の通りである。
【0086】
<アルコキシシリル基が導入された変性体>
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1~20アルキル)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;等が挙げられる。また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物(D)に、炭素数1~20のアルキレン基や、炭素数2~20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していてもよい。
【0087】
合わせガラス用中間膜における共重合体水素化物へのアルコキシシリル基の導入量は、共重合体水素化物100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、1.1質量部以上であることが一層好ましく、1.8質量部以上であることがより一層好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が上記下限以上であると、接着力を向上させることができ、一方、アルコキシシリル基の導入量が上記上限以下であると、異物の発生を抑制することができる。
アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、1H-NMRスペクトルにて算出することができる。
【0088】
共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入する方法は、特に限定されない。例えば、共重合体水素化物に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させることにより、アルコキシシリル基を導入する方法が挙げられる。
【0089】
なお、アルコキシシリル基の詳細および好適例などについては、例えば、特開2017-159590号公報、国際公開2015/105127号、国際公開2016/006610号、国際公開2012/043708号、国際公開2014/091941号、特開2017-171833号公報、に記載の通りである。
【0090】
<酸無水物基が導入された変性体>
酸無水物基が導入された変性体を調製する方法としては、特に限定されず、例えば、共重合体水素化物に有機過酸化物の存在下で、不飽和カルボン酸無水物をグラフト化反応させることにより、酸無水物基を導入することができる。
共重合体水素化物に酸無水物基を導入することにより熱可塑性樹脂との接着性を高めることができる。
グラフト化反応に使用する不飽和カルボン酸無水物としては、共重合体水素化物とグラフト化反応して、共重合体水素化物に酸無水物基を導入するものであれば、特に限定されない。
不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、アリルコハク酸無水物、2-フェニルマレイン酸無水物、cis-アコニット酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、無水マレイン酸、無水イタコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物が好適に用いられる。これらの不飽和カルボン酸無水物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
グラフト化反応に使用する有機過酸化物としては、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下のものが好ましく使用される。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
共重合体水素化物への酸無水物基の導入量は、共重合体水素化物100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが更に好ましく、1.8質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
酸無水物基の導入量が上限以下であると、得られる変性体の吸湿性が高くなるのを抑制して、腐食発生を抑制することができる。一方、酸無水物基の導入量が下限以上であると、変性体層の熱可塑性樹脂層に対する接着性を十分発現させることができる。
酸無水物基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、IRスペクトルの吸光度から算出することができる。
グラフト化反応に使用する不飽和酸無水物の量は、共重合体水素化物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが更に好ましく、1.8質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
同時に使用する有機過酸化物の量は、共重合体水素化物100質量部に対して、0.03質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましく、1.5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。
共重合体水素化物と不飽和カルボン酸無水物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、ブロック共重合体水素化物、不飽和カルボン酸無水物及び過酸化物からなる混合物を、二軸混練機にて溶融状態で所望の時間混練することにより、ブロック共重合体水素化物に酸無水物基を導入することができる。
なお、酸無水物基の詳細および好適例などについては、例えば、特開2017-159590号公報に記載の通りである。
【0091】
<加工助剤>
合わせガラス用中間膜における加工助剤としては、前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様であり、その好適例や添加量も前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様である
【0092】
<紫外線吸収剤(UVA)>
紫外線吸収剤(UVA)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、などが挙げられる。これらの中でも、耐光性の点で、ベンゾトリアゾール系が好ましい。
紫外線吸収剤(UVA)の添加量としては、特に制限はないが、共重合体水素化物100質量部当たり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることが特に好ましい。紫外線吸収剤(UVA)の添加量が上記下限以上であれば、耐光性を向上させることができ、一方、紫外線吸収剤(UVA)の添加量が上記上限以下であれば、紫外線吸収剤(UVA)のブリードアウトを抑制することができる。
【0093】
合わせガラス用中間膜の厚みとしては、特に制限はなく、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが特に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが特に好ましい。合わせガラス用中間膜の厚みが上記下限以上であれば、耐衝撃性を向上させることができ、一方、合わせガラス用中間膜の厚みが上記上限以下であれば、合わせガラス作製時の作業性の悪化を抑制することができる。
【0094】
(合わせガラス用中間膜積層体)
本発明のガラス用中間膜積層体は、2層以上の合わせガラス用中間膜が積層されてなる合わせガラス用中間膜積層体であって、少なくとも一方の最外層が本発明の合わせガラス用中間膜であり、例えば、図3Aに示すガラス用中間膜積層体300、図3Bに示すガラス用中間膜積層体310、図3Cに示すガラス用中間膜積層体320、図3Dに示すガラス用中間膜積層体330、図3Eに示すガラス用中間膜積層体340が挙げられる。なお、図3A図3Eにおいて、共重合体水素化物からなる層をHSIS層30とし、共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体からなる層をSi-HSIS層40とし、共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性体からなる層を酸無水物基変性HSIS層50としている。
ここで、本発明のガラス用中間膜積層体は、図3Dに示すガラス用中間膜積層体330、図3Eに示すガラス用中間膜積層体340などのように、一方の最外層がSi-HSIS層40であり、他方の最外層が酸無水物基変性HSIS層50であることが好ましい。
【0095】
合わせガラス用中間膜積層体の厚みとしては、特に制限はなく、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが特に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが特に好ましい。合わせガラス用中間膜積層体の厚みが上記下限以上であれば、耐衝撃性を向上させることができ、一方、合わせガラス用中間膜積層体の厚みが上記上限以下であれば、合わせガラス作製時の作業性の悪化を抑制することができる。
【0096】
(封止材)
本発明の封止材は、本発明の共重合体水素化物、または、本発明の共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含み、必要に応じて、加工助剤、紫外線吸収剤(UVA)等のその他の成分を含む。
封止材の具体例としては、特に制限はなく、太陽光発電素子用封止材、OLED用封止材、などが挙げられる。
また、封止材は、共重合体水素化物からなる層と、共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体からなる層とを備える多層構造であることが好ましい。
なお、封止材の詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2012/043708号、国際公開2015/099079号、国際公開2014/091941号に記載の通りである。
【0097】
<アルコキシシリル基が導入された変性体>
封止材におけるアルコキシシリル基が導入された変性体としては、前記合わせガラス用中間膜におけるアルコキシシリル基が導入された変性体と同様であり、その好適例も前記合わせガラス用中間膜におけるアルコキシシリル基が導入された変性体と同様である。
【0098】
<加工助剤>
封止材における加工助剤としては、前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様であり、その好適例や添加量も前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様である。
【0099】
<紫外線吸収剤(UVA)>
封止材における紫外線吸収剤(UVA)としては、前記合わせガラス用中間膜における紫外線吸収剤(UVA)と同様であり、その好適例や添加量も前記合わせガラス用中間膜における紫外線吸収剤(UVA)と同様である。
【0100】
封止材の厚みとしては、特に制限はなく、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが特に好ましく、10mm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。封止材の厚みが上記下限以上であれば、封止部の欠陥発生を抑制することができ、一方、封止材の厚みが上記上限以下であれば、封止時の作業性の低下を抑制することができる。
【0101】
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは、本発明の共重合体水素化物を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
光学フィルムの具体例としては、特に制限はなく、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、などが挙げられる。
なお、光学フィルムの詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2015/005292号、国際公開2016/060070号、国際公開2015/002020号に記載の通りである。
【0102】
(医療用成形体)
本発明の医療用成形体は、本発明の共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる。
医療用成形体の具体例としては、特に制限はなく、バイアル、シリンジ、輸液バッグ、培養容器接着剤、などが挙げられる。
なお、医療用成形体の詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2015/033876号に記載の通りである。
【0103】
(医療用成形体の製造方法)
本発明の医療用成形体の製造方法は、本発明の医療用成形体を製造する医療用成形体の製造方法であって、フェノール系老化防止剤の配合量が、共重合体水素化物100質量部に対し、下記式1で表されるW質量部以上0.50質量部以下である共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体を、照射線量Eで、高エネルギー線照射することを含む。
W=[0.46×(100-H)+0.04]×(E/25)・・・式1
(式1中、Wは、共重合体水素化物100質量部に対するフェノール系酸化防止剤の質量部を表し、Hは、共重合体水素化物のパーセント単位で表示された水素化率を表し、Hは99~100の数値である。Eは、高エネルギー線のkGy単位で表示される照射線量を表す。)
【0104】
<高エネルギー線照射による滅菌処理>
本発明の医療用成形体の製造方法は、本発明の医療用成形体を、照射線量Eで高エネルギー線照射することを特徴とする。
医療用成形体を、無菌状態を維持するために、菌を通過させない樹脂フィルムからなる密閉容器に内包させた状態で高エネルギー線を照射して滅菌処理を行うことが好ましい。滅菌処理された医療用成形体は、使用されるまでの間、樹脂フィルムからなる密閉容器中に無菌状態を維持して保管される。
実用的には、医療用成形体をポリエチレンなどの樹脂製袋に入れ、開口部をヒートシールなどの方法で密閉し、さらにその密閉袋を樹脂フィルムからなる袋などで多重に包装し、それをダンボール箱やプラスチックケース内に梱包して輸送できる状態にし、そのまま高エネルギー線を照射して滅菌処理する方法などが実施される。
【0105】
高エネルギー線照射による滅菌処理を行う際に、医療用成形体を内包させておく樹脂フィルムから密閉容器としては、樹脂で成形された単層又は多層の袋やケースが使用できる。用いる樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリアミド-12などが挙げられる。これらの樹脂は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
密閉方法としては、医療用成形体を樹脂製袋などに内包した後、開口部をヒートシールする方法などが利用できる。
【0106】
密閉容器を構成する樹脂フィルムとして、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド-6などからなる、酸素透過度が100cc/m2・day・atm以下のフィルムを使用し、医療用成形体を内包した密閉容器内に、脱酸素剤を同時に内包させるなどの方法により密閉容器内の酸素濃度を低下させた状態で、高エネルギー線照射による滅菌処理を行った場合は、滅菌処理後の医療用成形体から水中への溶出物によるpH変化がより抑制されるため好ましい。
【0107】
利用できる高エネルギー線としては、X線、ガンマ線、ベータ線、電子線、中性子腺などが挙げられ、滅菌処理としては、特にガンマ線又は電子線の照射による方法が汎用的で好ましく採用される。
医療用成形体の滅菌処理では、高エネルギー線の好ましい照射線量は、通常20kGy~35kGyである。照射線量がこれより少ない場合は滅菌効果が十分でなく、これより多い場合は、照射に時間を要することに加え、滅菌処理後のブロック共重合体水素化物からなる医療用成形体からの溶出物が増加する場合がある。
【0108】
滅菌済み医療用成形体としては、注射用の薬液容器、アンプル、輸液バッグ、固体薬容器、点眼薬容器、点滴薬容器、検査薬容器、栄養剤容器などの液体又は粉体、固体の薬品容器;血液検査用のサンプリング用試験管、採血管、検体容器などのサンプル容器;輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブ、コック等の配管材料;コンタクトレンズ用保存容器;義歯床、人工心臓、人工腎臓などの人工臓器やその部品などが例示される。これらの中でも、長期にわたり、薬品、特に液体薬品を保存する輸液バッグ、栄養剤容器、薬ビン、アンプルなどにおいては、容器からの溶出物量が少ないため、特に好ましい。
なお、医療用成形体の製造方法の詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2015/033876号に記載の通りである。
【0109】
(接着剤)
本発明の接着剤は、本発明の共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性体を含み、必要に応じて、有機溶剤、シランカップリング剤、架橋助剤、有機過酸化物、加工助剤、などをさらに含む。
本発明の接着剤は、耐熱性樹脂と金属とを接着してもよく、本発明の接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとが接着されていてもよい。
なお、接着剤の詳細および好適例などについては、例えば、特開2017-171833号公報、国際公開2017/154718号に記載の通りである。
【0110】
<アルコキシシリル基が導入された変性体>
接着剤におけるアルコキシシリル基が導入された変性体としては、前記合わせガラス用中間膜におけるアルコキシシリル基が導入された変性体と同様であり、その好適例も前記合わせガラス用中間膜におけるアルコキシシリル基が導入された変性体と同様である。
【0111】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;デカリン等の飽和炭化水系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;リモネン等のテルペン系溶剤;シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;などが挙げられる。
これらの有機溶剤はそれぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用
してもよい。
これらの中でも、基材へ塗布された接着剤からの溶剤の揮発性及び塗布工程での作業性の点で、トルエンが好ましい。
有機溶剤の沸点として、特に制限はないが、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることが特に好ましく、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが特に好ましい。有機溶剤の沸点が上記下限以上であれば、塗膜形成時に有機溶剤を容易に除去することができ、一方、有機溶剤の沸点が上記上限以下であれば、接着剤層を均質に形成することができる。
【0112】
有機溶剤の含有量としては、特に制限はないが、変性体100質量部当たり、100質量部以上であることが好ましく、150質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることが更に好ましく、300質量部以上であることが特に好ましく、1000質量部以下であることが好ましく、800質量部以下であることがより好ましく、600質量部以下であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が上記下限以上であれば、安定して塗工することができ、一方、有機溶剤の含有量が上記上限以下であれば、塗膜の乾燥時間を短縮することができる。
【0113】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤としては、特に制限はないが、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、エポキシシラン系カップリング剤が特に好ましい。
エポキシシラン系カップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノシラン系カップリング剤の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、接着性の点で、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
シランカップリング剤の含有量としては、特に制限はないが、変性体100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、1.0質量部以上であることが特に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記下限以上であれば、接着力を向上させることができ、一方、シランカップリング剤の含有量が上記上限以下であれば、接着剤の経時での粘度増加を抑制することができる。
【0114】
<架橋助剤>
架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、多価アクリル酸エステル、多価メタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの架橋助剤は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、接着力の向上の点で、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
架橋助剤の含有量としては、特に制限はないが、変性体100質量部当たり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましく、2質量部以上であることが特に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。架橋助剤の含有量が上記下限以上であれば、接着力を向上させることができ、一方、架橋助剤の含有量が上記上限以下であれば、接着剤の経時での粘度増加を抑制することができる。
【0115】
<有機過酸化物>
有機過酸化物としては、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルチクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、接着力の向上の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
有機過酸化物の含有量としては、特に制限はないが、変性体100質量部当たり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることが特に好ましい。有機過酸化物の含有量が上記下限以上であれば、接着力を向上させることができ、一方、有機過酸化物の含有量が上記上限以下であれば、接着剤の経時での粘度増加を抑制することができる。
【0116】
<加工助剤>
接着剤における加工助剤としては、前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様であり、その好適例や添加量も前記共重合体水素化物含有組成物における加工助剤と同様である。
【0117】
<耐熱性樹脂と金属との接着>
耐熱性樹脂としては、通常180℃以上、好ましくは220℃以上、より好ましくは260℃以上の耐熱変形性を有する耐熱性樹脂、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、などが挙げられる。耐熱変形性は、JIS K7919-1法(プラスチック-荷重たわみ温度の求め方)に従って求められる荷重たわみ温度で評価できる。
金属の具体例としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛等の金属;鉄合金、銅合金、アルミ合金、ニッケル合金、半田、ウッドメタル、超鋼合金、ホワイトゴールド等の合金;などが挙げられる。
接着時の加熱温度としては、特に制限はないが、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましく、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが特に好ましい。接着時の加熱温度が上記下限以上であれば、接着力を向上させることができ、一方、接着時の加熱温度が上記上限以下であれば、接着後の反りを抑制することができる。
【0118】
(接合体)
本発明の接合体は、本発明の接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとが接着されてなる。
本発明の接着剤を含む接着剤シートの厚みとしては、特に制限はないが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが特に好ましく、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。接着剤シートの厚みが上記下限以上であれば、接着力を向上させることができ、一方、接着剤シートの厚みが上記上限以下であれば、接着剤層のはみ出しを抑制することができる。
熱可塑性樹脂シートとしては、優れた透明性および機械的強度の点で、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が好適に挙げられる。
本発明の接合体の厚みとしては、特に制限はないが、0.02mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることが特に好ましく、10mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。接合体の厚みが上記下限以上であれば、接合体の破断を抑制することができ、一方、接合体の厚みが上記上限以下であれば、接合体の加工性の悪化を抑制することができる。
なお、接合体の詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2017/154718号に記載の通りである。
【0119】
(接合体の製造方法)
本発明の接合体の製造方法は、本発明の接合体を製造する接合体の製造方法であって、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートのいずれか一方の接着面に、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種の活性化処理を行う工程(1)と、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加圧圧縮する工程(2)と、を含む。
なお、接合体の製造方法の詳細および好適例などについては、例えば、国際公開2017/154718号に記載の通りである。
【0120】
<工程(1)>
工程(1)は、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートのいずれか一方の接着面に、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種の活性化処理を行う工程である。均一に表面処理を行うことが可能であることから、プラズマ照射および/またはコロナ放電処理が好ましい。
【0121】
<<活性化処理>>
活性化処理は、プラズマ照射、エキシマ紫外線照射、およびコロナ放電から選択される少なくとも1種である。
【0122】
-プラズマ照射-
プラズマ照射としては、大気圧下でプラズマ照射を行う常圧プラズマ照射、減圧下でプラズマ照射を行う減圧プラズマ照射が挙げられ、より簡便な方法により、均一に表面処理を行う観点から、常圧プラズマ照射が好ましい。
常圧プラズマ照射は、大気圧下、水素、ヘリウム、窒素、酸素、アルゴンから選択される少なくとも1種のガス雰囲気下で行うことが好ましく、大気圧下、窒素と乾燥空気、または、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で行うことがさらに好ましい。
窒素の流量は、50NL/分以上であることが好ましく、150NL/分以下であることが好ましい。乾燥空気または酸素の流量は、0.1NL/分以上であることが好ましく、5NL/分以下であることが好ましい。
プラズマ照射の出力は、0.5kW以上であることが好ましく、2kW以下であることが好ましい。
プラズマ照射の周波数は出力に対応した共振周波数であることが好ましく、具体的には10KHz以上であることが好ましく、100KHz以下であることが好ましい。
プラズマ照射の照射速度は1cm/分以上であることが好ましく、100cm/分以下であることが好ましい。
プラズマ発生源と、接着剤シートまたは熱可塑性樹脂シートとの距離は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
プラズマ照射を減圧下で行うときは、0.001kPa以上10kPa以下(絶対圧)の低圧ガス(アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、又はこれらの混合ガス等)を用いてプラズマ処理を行うことが好ましい。
低圧ガスとしては、窒素と酸素との混合ガスを用いることが特に好ましい。
窒素と酸素との混合比は体積比で10:1~1:10であることが好ましく、混合ガスの流量は0.1NL/分以上であることが好ましく、10NL/分以下であることが好ましい。
プラズマ照射の出力は、50W以上であることが好ましく、500W以下であることが好ましい。
【0123】
-エキシマ紫外線照射-
エキシマ紫外線照射は、窒素と乾燥空気または酸素との混合気体を流しながらエキシマ紫外線ランプを用いてエキシマ紫外線照射することが好ましい。該混合気体の酸素濃度は、通常1%以上であり、3%以上であることが好ましく、通常15%以下であり、5%以下であることが好ましい。混合気体の流量は、3リットル/分以上7リットル/分以下であることが好ましい。
エキシマ紫外線ランプと、接着剤シートまたは熱可塑性樹脂シートとの接着面との距離は、10mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。照射の強度は、20mW以上100mW以下であることが好ましく、30mW以上50mW以下であることがより好ましい。
【0124】
-コロナ放電-
コロナ放電は、乾燥空気雰囲気下で行うことが好ましく、乾燥空気の流量は10NL/分以上であることが好ましく、100NL/分以下であることが好ましい。コロナ放電の出力は、250W以上であることが好ましく、1000W以下であることが好ましく、放電電量は、20W・分/m2以上であることが好ましく、550W・分/m2以下であることが好ましい。電極と、接着剤シートまたは熱可塑性樹脂シートとの距離は、1mm以上であることが好ましく、20mm以下であることが好ましい。
【0125】
<工程(2)>
工程(2)は、接着剤シートおよび熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加圧圧縮する工程である。
接着剤シートの接着面および熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、加熱圧着する方法は、特に制限はなく、例えば、接着剤シートの接着面及び熱可塑性樹脂シートの接着面を重ね合わせ、更に必要に応じて、その他の部材を重ね合わせ、得られる積層物を可撓性の袋(以下、「バッグ」ということがある。)に入れて、バッグ内の空気を脱気しながら、加熱して貼り合わせる方法;前記積層物をバックに入れて、バッグ内の空気を脱気した後、オートクレーブ中で、加熱加圧して貼り合わせる方法:などが挙げられる。
【0126】
オートクレーブ中で加圧する場合、加圧圧力は、通常、0.1MPa以上であり、0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、通常、1.5MPa以下であり、1.2MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以下であることがより好ましい。
加熱する場合、温度は、通常、80℃以上であり、90℃以上であることが好ましく、通常、180℃以下であり、160℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましい。
温度及び圧力が上記範囲であれば、十分な接着強度が得られ、また、接着面に気泡等の不良も発生し難い。
オートクレーブ中で加圧する時間は、通常、10分以上であり、15分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましく、通常、60分以下であり、50分以下であることが好ましく、40分以下であることがより好ましい。
バッグに入れて加熱加圧して接合体を成形する方法は、自動車用合わせガラス等のように曲面形状を有する接合体を製造する方法として特に有用である。
【0127】
また、接合体が平面形状の物であれば、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の加圧機を使用して加圧し、圧着する方法等も適用できる。
加圧時の圧力は、通常、0.1MPa以上であり、0.5MPa以上であることが好ましく、通常、10MPa以下であり、3MPa以下であることが好ましい。
加圧の時間は、通常、1分以上であり、5分以上であることが好ましく、通常、30分以下であり、10分以下であることが好ましい。
【0128】
以上のようにして得られる接合体は、接着剤シートと熱可塑性樹脂シートとの界面が強固に接着しており、高温高湿環境下に長時間暴露した後であっても、強固な接着強度を維持し、剥離等の不具合が発生し難いものである。
【実施例
【0129】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量および分子量分布並びにGPC溶出曲線分析、共重合体水素化物の水素化率、共重合体水素化物の重量平均分子量およびGPC溶出曲線分析(第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)、第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV))、共重合体水素化物シラン変性体の重量平均分子量およびGPC溶出曲線分析、共重合体水素化物およびそのシラン変性体の金型転写性、共重合体水素化物およびそのシラン変性体を用いたフィルム成形における膜厚ムラ、および、ガラス密着強度は、下記の方法で評価した。
【0130】
<共重合体の重量平均分子量および分子量分布並びにGPC溶出曲線分析>
テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、40℃において、0.6cc/分の速度で測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel SuperH G5000HLX、G4000HLX,G2000HLX3本を直列につなぎ、ポリマー量4mg/1ccの濃度に調整し測定した。
【0131】
<共重合体水素化物の水素化率>
共重合体水素化物の水素化率(モル%)は、1H-NMR測定(測定溶媒:CDCl3)を実施し、共重合体中に存在した全不飽和結合のうち消失した不飽和結合の割合を算出することで導出した。
【0132】
<共重合体水素化物の重量平均分子量およびGPC溶出曲線分析>
テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、40℃において、0.6cc/分の速度で測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel SuperH G5000HLX、G4000HLX,G2000HLX3本を直列につなぎ、ポリマー量4mg/1ccの濃度に調整し測定した。
【0133】
<共重合体水素化物シラン変性体の重量平均分子量およびGPC溶出曲線分析>
テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、40℃において、0.6cc/分の速度で測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用い、カラムはTSKgel SuperH G5000HLX、G4000HLX,G2000HLX3本を直列につなぎ、ポリマー量4mg/1ccの濃度に調整し測定した。
【0134】
<共重合体水素化物およびそのシラン変性体の金型転写性>
Tダイ押し出し機で得られたフィルムをミカドテクノス(株)真空熱加圧装置VS30-3030を用い、温度170℃、真空度-100kPaの減圧で1分予熱し、0.4MPaの圧力で5秒プレスした。評価に使用した金型は図2に示す。
得られたサンプルの断面をKEYENCEデジタルマイクロスコープVHX-1000を使い、2つの頭頂部に基準線を引き、谷部分の深さを測定した。求めた測定結果より下式により金型転写性(%)を求めた。
金型転写性(%)=(谷部の測定結果/金型設計深さ)×100
なお、金型転写性は、100%に近いことが好ましく、90%~105%の範囲であればよい。
【0135】
<共重合体水素化物およびそのシラン変性体を用いたフィルム成形における膜厚ムラ>
株式会社テクノベルのKZW15TW-60MG-NH(100)2軸押し出し機にTダイを取り付けた装置を使い、170℃の温度条件で、目標膜厚470μmを狙いフィルムを成形し、搬送される長尺のフィルムの幅方向中央部の膜厚を連続的に測定した。測定装置としては、KEYENCE社製の分光干渉変異タイプ多層膜厚測定機SI-T10を用いた。膜厚の周期が観察される範囲で観察を行い、当該周期における最大厚みtmax、最小厚みtmin、平均厚みtaveを求めた。これらを元に、下式に従い膜厚ムラ(%)を算出した。
膜厚ムラ(%)=((tmax-tmin)/tave)×100
評価基準は下記の通りである。
◎:膜厚ムラ15%以内
○:膜厚ムラ15%超25%以内
△:膜厚ムラ25%超35%以内
×:膜厚ムラ35%超
【0136】
<ガラス密着強度>
作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)50mm×75mmの短辺方向に、カッターを用いて、基材としてのフロートガラスが完全に切断される状態まで、10mm幅で切り込みを入れた。切り込みの一端を剥離試験でチャック可能な程度に剥き出し、引張試験用サンプルを作製した。なお、測定には、厚みが不均一である両端を使用せず、厚みが均一な中央部を用いた。万能測定器(Instron製、Instron5580)を用いて、「JIS K 6854-2」に記載された「180°剥離」に基づいて、引張速度100mm/min、試験片幅10mmにて、「180°剥離試験」を行い、S-Sカーブが安定した数値を剥離強度として記録した。
評価基準は下記の通りである。
◎:20N/10mm以上
○:10N/10mm以上20N/10mm未満
×:10N/10mm未満
【0137】
(製造例1)
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n-ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n-ブチルリチウム(15%n-ヘキサン溶液)2.93部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。
得られたブロック共重合体1は、重量平均分子量(Mw)が11700、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が12400であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.02であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
【0138】
(製造例2)
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n-ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n-ブチルリチウム(15%n-ヘキサン溶液)2.34部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。
得られたブロック共重合体2は、重量平均分子量(Mw)が15300であり、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が16100であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.03であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
【0139】
(製造例3)
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n-ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n-ブチルリチウム(15%n-ヘキサン溶液)0.90部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。
得られたブロック共重合体3は、重量平均分子量(Mw)が42900であり、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が44300であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.03であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
【0140】
(製造例4)
十分に窒素置換された攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部、n-ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながら、n-ブチルリチウム(15%n-ヘキサン溶液)0.47部を加えて重合を開始した。65℃で60分間重合反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合添加率は99.9%であった。次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間撹拌を続けた。この時点での重合添加率は99.6%であった。その後、更に脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。この時点での重合添加率はほぼ100%であった。ここでメタノール2.0部添加し反応を停止した。
得られたブロック共重合体4は、重量平均分子量(Mw)が93100であり、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が95100であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.06であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
【0141】
(実施例1)
上記製造例2に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製、ニッケル含有量33%)4部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、15分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。15分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し5時間水素化反応を行った(水素化率:99.8%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が16400であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が1200であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.16であり、重量平均分子量(Mw)は15200であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が13.67であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が26.39であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
(実施例2)
上記製造例3に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)5部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、20分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。20分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行った(水素化率:99.5%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が23500であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.66であり、重量平均分子量(Mw)は37800であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が1.91であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が4.01であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0143】
(実施例3)
上記製造例3に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)4部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、60分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。60分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行った(水素化率:99.9%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が9200であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.45であり、重量平均分子量(Mw)は43900であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が4.89であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が10.18であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
(実施例4)
上記製造例3に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)5部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で190℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が190℃となったところで、70分間水素の供給をせず、190℃の温度を一定に保った。70分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行った(水素化率:99.7%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が1100であり、分子量分布(Mw/Mn)が5.55であり、重量平均分子量(Mw)が24700であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が40.91であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が6.88であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0145】
(実施例5)
上記製造例4に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)6部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で200℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が200℃となったところで、122分間水素の供給をせず、200℃の温度を一定に保った。122分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し8時間水素化反応を行った(水素化率:97.2%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が96000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が1300であり、分子量分布(Mw/Mn)が6.98であり、重量平均分子量(Mw)が51800であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が73.85であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が2.33であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
(実施例6)
下記に示すように、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」および「ガラス積層体の作製」を行った。
ここで、共重合体水素化物のシラン変性体のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が16300であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が1200であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.23であり、重量平均分子量(Mw)は14900であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が13.58であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が25.02であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物のシラン変性体について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体を用いて作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)にてガラス密着強度を測定し評価した。結果を表1に示す。
【0147】
<共重合体水素化物のシラン変性体の調製>
実施例1で得られた共重合体水素化物のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ(登録商標)25B」)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(株式会社テクノベル製、商品名:KZW15TW-60MG-NH(100))を用いて、樹脂温度200℃、混練時間60秒~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押し出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、共重合体水素化物のアルコキシシラン変性体(アルコキシシラン変性体A)のペレット97部を得た。
得られたアルコキシシラン変性体Aのペレットを上記二軸押出機にTダイを取り付けた装置を使い、170℃の温度条件で、目標膜厚330μmでフィルムを成形した。搬送される長尺のフィルムを50mm×75mmに裁断した(表2)。
【0148】
<ガラス積層体(基材+樹脂シート)の作製>
樹脂シートとしての「上記長尺のフィルム(アルコキシシラン変性体[A]、50mm×75mm)」、および、基材としての「厚み規格FL3のフロートガラス(所定寸法50mm×75mm)」を準備し、基材と樹脂シートを貼り合わせて、積層体(基材+樹脂シート)を作製した。なお、ガラス表面の油膜や付着物を除去するため、予め超音波洗浄機にて洗浄後に乾燥処理したフロートガラスを基材として用いた。
熱板を150℃に加熱した真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス(株)製、商品名:PVL-1100)にテフロン(登録商標)-ガラスクロスシートを敷いた上で、基材と樹脂シートを貼り合わせた積層体(基材+樹脂シート)を、熱板側を基材面として設置した。さらに、真空ラミネーターに設置した積層体(基材+樹脂シート)の樹脂シート面の上にテフロン-ガラスクロスシートを被せて、真空ラミネーターのチャンバーを閉じ、直ちに真空排気を開始した。真空排気開始から時間を計測し、5分間排気加熱を行った後、上部チャンバーを大気解放し、1気圧でプレスを10分間行い、ラミネートを行った。10分間プレスした後に下部チャンバーを大気解放し、ラミネートサンプルを取り出し、室温まで冷却し、ガラス積層体(基材+樹脂シート)を作製した。
【0149】
(実施例7)
実施例6において、実施例1で得られた共重合体水素化物を用いる代わりに、実施例3で得られた共重合体水素化物を用いたこと以外は、実施例6と同様に、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」および「ガラス積層体の作製」を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体(アルコキシシラン変性体B)について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体を用いて作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)にてガラス密着強度を測定し評価した。結果を表1に示す。
ここで、共重合体水素化物のシラン変性体のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45100であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が9200であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.53であり、重量平均分子量(Mw)は44100であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が4.90であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が9.36であり、wA:wB=50:50であった。
【0150】
(比較例1)
上記製造例1に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)4部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で190℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が190℃となったところで、14分間水素の供給をせず、190℃の温度を一定に保った。14分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し5時間水素化反応を行った(水素化率:99.8%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が13000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が900であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.21であり、重量平均分子量(Mw)が10400であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が14.44であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が29.74であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0151】
(比較例2)
上記製造例3に記載の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)4部および脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で170℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が170℃となったところで、20分間水素の供給をせず、170℃の温度を一定に保った。20分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し7時間水素化反応を行った(水素化率:99.8%)。水素化反応後の共重合体水素化物のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が45000であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が31200であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.76であり、重量平均分子量(Mw)が39500であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が1.44であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が2.36であり、wA:wB=50:50であった。
さらに、得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
(比較例3)
実施例6において、実施例1で得られた共重合体水素化物を用いる代わりに、比較例1で得られた共重合体水素化物を用いたこと以外は、実施例6と同様に、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」および「ガラス積層体の作製」を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体(アルコキシシラン変性体C)について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体を用いて作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)にてガラス密着強度を測定し評価した。結果を表1に示す。
ここで、共重合体水素化物のシラン変性体のGPC溶出曲線において、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が12900であり、第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第2ピーク分子量)が900であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.25であり、重量平均分子量(Mw)は9900であった。第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が14.33であり、第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第1ピークトップ感度)(mV)/第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(第2ピークトップ感度)(mV)が28.93であり、wA:wB=50:50であった。
【0153】
(実施例8)
実施例3で得られた共重合体水素化物100部に対してフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.1部添加した共重合体水素化物含有組成物Aについて、実施例3と同様に、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。
【0154】
(実施例9)
実施例3で得られた共重合体水素化物を、液状物を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出機(製品名「TEM37BS」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度190℃で押し出し、サイドフィーダーから加工助剤としてポリイソブチレン水素化物(HPB)(製品名「日油ポリブテン(登録商標)10SH」、日油社製)を共重合体水素化物100部に対して15部の割合になるように連続的に添加し、得られた混練物を、ストランド状に押し出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、共重合体水素化物含有組成物Bのペレットを得た。
さらに、得られた共重合体水素化物含有組成物Bについて、実施例3と同様に、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。
【0155】
(実施例10)
実施例9において、実施例3で得られた共重合体水素化物を用いる代わりに、実施例7で得られたアルコキシシラン変性体Bを用いたこと以外は、実施例9と同様に、共重合体水素化物組成物を作製し、得られた共重合体水素化物含有組成物Cについて、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。さらに、得られた共重合体水素化物含有組成物Cを用いて作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)にてガラス密着強度を測定し評価した。
【0156】
なお、以下に示す表1中、
「第1ピーク分子量」は第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量を示し、
「第2ピーク分子量」は第2ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量を示し、
「第1ピークトップ感度(mV)」は第1ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(mV)を示し、
「第2ピークトップ感度(mV)」は第2ピークのピークトップが示す示差屈折計(RI)の検出感度(mV)を示す。
【0157】
(製造例X)
製造例3において、2回目の脱水スチレンを加える際に75℃にしたこと以外は、製造例3と同様にしてブロック共重合体Xを得た。
得られたブロック共重合体Xは、重量平均分子量(Mw)が44800であり、第1ピークの溶出時間に基づく標準ポリスチレン換算分子量(第1ピーク分子量)が85800であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.64であり、S-I-S(スチレンブロック-イソプレンブロック-スチレンブロック)のトリブロック共重合体であった。
【0158】
(実施例11)
製造例Xで得られたブロック共重合体の重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に
移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)5部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、20分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。20分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行って共重合体水素化物(第1ピーク分子量:88400、第2ピーク分子量:47000、第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.88、分子量分布(Mw/Mn):1.96、重量平均分子量(Mw):40300、第1ピークトップ感度(mV):4.3、第2ピークトップ感度(mV):112.7、第1ピークトップ感度(mV)/第2ピークトップ感度(mV):0.04、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)を得た。得られた共重合体水素化物について、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
【0159】
(実施例12)
実施例6において、実施例1で得られた共重合体水素化物を用いる代わりに、実施例11で得られた共重合体水素化物を用いたことと、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.8部に変更した以外は、実施例6と同様に、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」および「ガラス積層体の作製」を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体(アルコキシシラン変性体D、第1ピーク分子量:88100、第2ピーク分子量:47100、第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.87、分子量分布(Mw/Mn):2.05、重量平均分子量(Mw):39700、第1ピークトップ感度(mV):3.4、第2ピークトップ感度(mV):101.7、第1ピークトップ感度(mV)/第2ピークトップ感度(mV):0.03、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)を得た。得られたシラン変性体Dについて、金型転写性およびフィルム成形における膜厚ムラの評価を行い、得られた共重合体水素化物のシラン変性体を用いて作製したガラス積層体(基材+樹脂シート)にてガラス密着強度を測定し評価した。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【表2】
【0161】
表1より、実施例1~10は、最も溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物(そのシラン変性体も含む)由来ピーク(第1ピーク)と、2番目に溶出時間の早いピークトップを示す共重合体水素化物(そのシラン変性体も含む)由来ピーク(第2ピーク)とを有し、第1ピーク分子量/第2ピーク分子量が1.50以上であり、第2ピーク分子量が1000以上である共重合体水素化物(そのシラン変性体も含む)を用いているので、上記を満たさない比較例1~3と比較して、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができることが分かる。
さらに、水素化反応(水添反応)に供する共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)と、水素化温度(水添温度)と、水素化反応時間(水添反応時間)と、水素化反応(水添反応)における水素供給停止時間とを適宜調整することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した溶出曲線において、所定の第1ピークと所定の第2ピークとを有する共重合体水素化物が得られることが分かった。
表1より、実施例1および3で得られた共重合水素化物をシラン変性した変性体を用いて作製したガラス積層体(実施例6、7および10)は、比較例1で得られた共重合水素化物をシラン変性した変性体を用いて作製したガラス積層体(比較例3)よりも、ガラス密着強度が高いことが分かった。
【0162】
(製造例5)
実施例2で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.91、第2ピーク分子量:23500、水素化率:99.5%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物1(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0163】
(製造例6)
実施例3で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.89、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物2(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0164】
(製造例7)
比較例1で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:14.44、第2ピーク分子量:900、水素化率:99.8%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物3(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0165】
(製造例8)
比較例2で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.44、第2ピーク分子量:31200、水素化率:99.8%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物4(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0166】
(製造例9)
実施例3で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.89、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)100部に対して加工助剤であるポリイソブチレン水素化物(HPB)(製品名「日油ポリブテン(登録商標)10」、日油社製)を15部添加した組成物5(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0167】
(製造例10)
実施例6において、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.8部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして得られたシラン変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:13.58、第2ピーク分子量:1200、水素化率:99.5%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物6(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0168】
(製造例11)
実施例7において、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.8部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして得られたシラン変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.90、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物7(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0169】
(製造例12)
実施例7において、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.1部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして得られたシラン変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.90、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物8(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0170】
(製造例13)
実施例7において、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.8部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして得られたシラン変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.90、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)100部に対して加工助剤であるポリイソブチレン水素化物(HPB)(製品名「日油ポリブテン(登録商標)10」、日油社製)を15部添加した組成物9(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0171】
(製造例14)
比較例3において、ビニルトリメトキシシランの添加量を2.0部から1.8部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして得られたシラン変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:14.33、第2ピーク分子量:900、水素化率:99.8%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物10(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0172】
(製造例15)
実施例7において、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」を行う代わりに、下記の「共重合体水素化物の変性体の製造」を行ったこと以外は、実施例7と同様にして得られた変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:5.05、第2ピーク分子量:9100、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物11(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0173】
<共重合体水素化物の変性体の調製>
実施例3で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.89、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)のペレット100部に対して、無水マレイン酸1.8部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製、製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(株式会社テクノベル製、商品名:KZW15TW-60MG-NH(100))を用いて、樹脂温度200℃、混練時間60秒~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押し出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、共重合体水素化物の変性体のペレット96部を得た。
【0174】
(製造例16)
比較例3において、「共重合体水素化物のシラン変性体の製造」を行う代わりに、下記の「共重合体水素化物の変性体の製造」を行ったこと以外は、比較例3と同様にして得られた変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:14.53、第2ピーク分子量:900、水素化率:99.8%)をそのまま組成物12(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0175】
<共重合体水素化物の変性体の調製>
比較例1で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:14.44、第2ピーク分子量:900、水素化率:99.8%、wA:wB=50:50)のペレット100部に対して、無水マレイン酸1.8部、および、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製、製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(株式会社テクノベル製、商品名:KZW15TW-60MG-NH(100))を用いて、樹脂温度200℃、混練時間60秒~70秒で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押し出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、共重合体水素化物の変性体のペレット96部を得た。
【0176】
(製造例17)
実施例3で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.89、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)100部に対してフェノール系老化防止剤(酸化防止剤)であるペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.10部添加した組成物13(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0177】
(製造例18)
実施例3で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:4.89、第2ピーク分子量:9200、水素化率:99.9%)100部に対してフェノール系老化防止剤(酸化防止剤)であるペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.55部添加した組成物14(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0178】
(製造例19)
製造例3において、2回目の脱水スチレンを加える際に75℃にしたこと以外は同様にして重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応容器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(製品名:T-8400RL、クラリアント触媒(株)社製)5部、および、脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて反応内部を水素ガスにて置換しゲージ圧力で2MPa加圧した状態で180℃まで昇温した。耐圧反応容器の内部温度が180℃となったところで、20分間水素の供給をせず、180℃の温度を一定に保った。20分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し6時間水素化反応を行って得られた重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.88、第2ピーク分子量:47000、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物15(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0179】
(製造例20)
製造例10において、実施例1で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:13.58、第2ピーク分子量:1200、水素化率:99.5%、wA:wB=50:50)を用いる代わりに、製造例19で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.88、第2ピーク分子量:47000、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)を用いたこと以外は、製造例10と同様にして得られた変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.87、第2ピーク分子量:47100、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)をそのまま組成物16(表2-2参照)として用いて、後述の実施例での評価を行った。
【0180】
(製造例21)
製造例20で得られた変性体(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.87、第2ピーク分子量:47100、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)100部に対して加工助剤であるポリイソブチレン水素化物(HPB)(製品名「日油ポリブテン(登録商標)10」、日油社製)を15部添加した組成物17(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0181】
(製造例22)
製造例19で得られた共重合体水素化物(第1ピーク分子量/第2ピーク分子量:1.88、第2ピーク分子量:47000、水素化率:99.9%、wA:wB=50:50)100部に対してフェノール系老化防止剤(酸化防止剤)であるペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.10部添加した組成物18(表2-2参照)について、後述の実施例での評価を行った。
【0182】
【表2-2】
【0183】
(実施例A1)
下記のように、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」、「保存後の接着強度の精度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
<合わせガラス用中間膜の作製>
製造例11で得られた組成物7を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて50℃で4時間加熱して、溶存空気を除去した後、25mmφのスクリューを備えた樹脂溶融押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅300mm)を使用し、押出し機から組成物7を溶融温度200℃、Tダイ温度200℃、ロール温度50℃の成形条件にて、厚さ500μm、幅280mmのシートを押出し成形して、合わせガラス用中間膜シート(500μm)を作製した。
<合わせガラスの作製>
作製した合わせガラス用中間膜シートを、厚さ3.2mm、幅200mm、長さ200mmの2枚の白板ガラス板に挟み、真空ラミネータにて、150℃の温度で、5分間真空脱気した後、5分間真空加圧接着し、その後170℃で更に10分間真空加圧接着することにより、ガラス/中間膜シート/ガラスの構成の合わせガラス試験片を作製した。
<保存後の接着強度の評価>
中間膜シート端部に非接着部位を設けて厚さ2mm、幅75mm、長さ65mmの白板ガラス板と重ね合わせ、真空ラミネータ(PVL0202S、日清紡メカトロニクス社製、以下にて同じ。)にて、170℃の温度で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧接着することにより、剥離試験用合わせガラス試験片を作製した。作製した剥離試験用合わせガラス試験片を、高温高湿環境下(85℃、湿度85%)に1000時間保管した。
中間膜シート面に10mm幅に切れ目を入れ、試験片当たり5か所の剥離部を設け、それぞれの剥離部について中間膜シートの非接着部位から、剥離速度50mm/分で、JIS K 6854-2に基づいて180度剥離試験を行うことにより、保存後の接着強度(平均)およびその精度(変動係数)を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<接着強度の評価基準>>
◎:30N/cm以上
○:25N/cm以上、30N/cm未満
△:20N/cm以上、25N/cm未満
×:20N/cm未満
<<精度の評価基準>>
◎:2%以下
○:2%超、5%以下
△:5%超、10%以下
×:10%超
<耐衝撃性の評価>
作製した合わせガラス試験片を使用して、恒温恒湿槽中で、-40℃で3時間保存した後、恒温恒湿槽から取り出し直後に、JIS R 3212の方法を参照して、重さ2kgの鋼球を2mの高さからガラス面に落下させ、割れの状況を目視観察して、耐衝撃性を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:鋼球が貫通なし、かつガラス破片の脱落なし
○:鋼球が貫通なし、かつガラス破片が一部脱落
△:鋼球が貫通なし、かつガラス破片の脱落多数
×:鋼球が貫通
【0184】
(実施例A2)
実施例A1において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例12で得られた組成物8を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」、「保存後の接着強度の精度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0185】
(実施例A3)
実施例A1において、製造例11で得られた組成物7を用いてガラス/中間膜シート/ガラスの構成の合わせガラスを作製する代わりに、製造例15で得られた組成物11を用いて下記に示す「合わせガラスの作製」を行ってプラスチック/中間膜シート/プラスチックの構成の合わせガラスを作製したこと以外は、実施例A1と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「保存後の接着強度の評価」、「保存後の接着強度の精度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
<合わせガラスの作製>
作製した合わせガラス用中間膜シートを、厚さ3.2mm、幅200mm、長さ200mmの2枚のプラスチック板(ポリカーボネート樹脂板)に挟み、真空ラミネータにて、150℃の温度で、5分間真空脱気した後、5分間真空加圧接着し、その後170℃で更に10分間真空加圧接着することにより、プラスチック/中間膜シート/プラスチックの構成の合わせガラス試験片を作製した。
【0186】
(実施例A4)
実施例A1と同様に、製造例11で得られた組成物7を用いて、「合わせガラス用中間膜シートの作製」を行って中間膜シートA(250μm)を得た。
実施例A3と同様に、製造例15で得られた組成物11を用いて、「合わせガラス用中間膜シートの作製」を行って中間膜シートB(250μm)を得た。
その後、下記のように「合わせガラスの作製」を行い、実施例A1と同様に、「保存後の接着強度の評価」、「保存後の接着強度の精度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
<合わせガラスの作製>
作製した中間膜シートA,Bの2枚を重ねて、厚さ3.2mm、幅200mm、長さ200mmの白板ガラス板とプラスチック板(ポリカーボネート樹脂板)との間に挟み、真空ラミネータにて、150℃の温度で、5分間真空脱気した後、5分間真空加圧接着し、その後170℃で更に10分間真空加圧接着することにより、ガラス/中間膜シートA/中間膜シートB/プラスチックの構成の合わせガラスを作製した。
【0187】
(実施例A5)
実施例A1と同様に、製造例11で得られた組成物7を用いて、「合わせガラス用中間膜シートの作製」を行って中間膜シートA(40μm)を得た。
実施例A1において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例9で得られた組成物5を用いたこと以外は、「合わせガラス用中間膜シートの作製」を行って中間膜シートC(420μm)を得た。
その後、下記のように「合わせガラスの作製」を行い、実施例A1と同様に、「保存後の接着強度の評価」、「保存後の接着強度の精度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
<合わせガラスの作製>
作製した中間膜シートA,C,Aの3枚を重ねて、厚さ3.2mm、幅200mm、長さ200mmの2枚の白板ガラス板に挟み、真空ラミネータにて、150℃の温度で、5分間真空脱気した後、5分間真空加圧接着し、その後170℃で更に10分間真空加圧接着することにより、ガラス/中間膜シートA/中間膜シートC/中間膜シートA/ガラスの構成の合わせガラスを作製した。
【0188】
(実施例A6)
実施例A1において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例13で得られた組成物9を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0189】
(実施例A7)
実施例A6において、製造例13で得られた組成物9を用いる代わりに、製造例13で得られた組成物9に紫外線吸収剤(UVA)としての2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)を0.8部添加した組成物を用いたこと以外は、実施例A6と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0190】
(実施例A8)
実施例A6において、製造例13で得られた組成物9を用いる代わりに、製造例21で得られた組成物17を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0191】
(比較例A1)
実施例A1において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例14で得られた組成物10を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0192】
(比較例A2)
実施例A3において、製造例15で得られた組成物11を用いる代わりに、製造例16で得られた組成物12を用いたこと以外は、実施例A3と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0193】
(比較例A3)
実施例A5において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例14で得られた組成物10を用い、さらに、実施例A5において、製造例9で得られた組成物5を用いる代わりに、製造例7で得られた組成物3を用いたこと以外は、実施例A5と同様にして、「合わせガラス用中間膜シートの作製」、「合わせガラスの作製」、「保存後の接着強度の評価」および「耐衝撃性の評価」を行った。結果を表3に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
(実施例B1)
下記のように、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
<封止材の作製>
製造例6で得られた組成物2を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80~90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル化重合体を含有する太陽電池素子封止材のペレットを得た。
得られた太陽電池素子封止材のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて50℃で4時間加熱して、溶存空気を除去した後、25mmφのスクリューを備えた樹脂溶融押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅300mm)を使用し、太陽電池素子封止材を溶融温度200℃、Tダイ温度200℃、ロール温度50℃の成形条件にて、厚さ350μm、幅280mmのシートを押出し成形して、押出し成形シート(単層の封止材)を得た。得られた押出し成形シート(単層の封止材)はロールに巻き取り回収した。
<保存後の接着力の評価>
シート端部に非接着部位を設けて厚さ2mm、幅25mm、長さ65mmのソーダライムガラス基板と重ね合わせ、真空ラミネータ(PVL0202S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、50℃で10分間加熱加圧処理した後、更に180℃で10分間加熱加圧接着することにより、剥離試験用試験片を作製した。同様の剥離試験用試験片を作製し、得られた5個の剥離試験用試験片を、高温高湿環境下(85℃、湿度85%)に1000時間保管した後に、シート面の幅方向の中央部に10mm幅に切れ目を入れ、シートの非接着部位から、剥離速度50mm/分で、JIS K 6854-1に準じて90度剥離試験を行い、各試験片の剥離強度を測定して、保存後の接着力(平均)およびその精度(変動係数)を評価した。なお、評価基準は以下の通りとし、剥離強度が大きいほど、ガラスとの接着性が良い。
<<接着力の評価基準>>
◎:30N/cm以上
○:25N/cm以上、30N/cm未満
△:20N/cm以上、25N/cm未満
×:20N/cm未満
<<精度の評価基準>>
◎:2%以下
○:2%超、5%以下
△:5%超、10%以下
×:10%超
<保存後の透過率の評価>
得られた押出し成形シート(単層の封止材)を、高温高湿環境下(85℃、湿度85%)に1000時間保管した後に、真空ラミネータ(PVL0202S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、150℃で10分間加熱加圧処理した後、ASTM D-1003に従い測定することにより、保存後の透過率を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:90%以上
○:80%以上、90%未満
△:70%以上、80%未満
×:70%未満
【0196】
(実施例B2)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例11で得られた組成物7を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0197】
(実施例B3)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例12で得られた組成物8を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0198】
(実施例B4)
下記のように「封止材の作製」を行ったこと以外は、実施例B1と同様に、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
<封止材の作製>
製造例6で得られた組成物2を用いて、厚さを305μmにした以外は実施例B1と同様に、押出成形シート(単層の封止材)を得た。さらに、製造例11で得られた組成物7を用いて、厚さを50μmにした以外は実施例B1と同様に、押出成形シート(単層の封止材)を得た。得られた2枚の押出しシートを、200mm×200mmサイズに切り出し、2枚重ねて、さらに離形性PETフィルム(厚さ100μm)で挟み、真空ラミネータを使用して温度180℃で、5分間真空脱気し、更に10分間真空プレスして、厚さ350μmの2層の封止材を作製した。
【0199】
(実施例B5)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例13で得られた組成物9に紫外線吸収剤(UVA)としての2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)を0.8部添加した組成物を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0200】
(実施例B6)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例21で得られた組成物17を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0201】
(比較例B1)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例7で得られた組成物3を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0202】
(比較例B2)
実施例B1において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例14で得られた組成物10を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、「封止材の作製」、「保存後の接着力の評価」および「保存後の透過率の評価」を行った。結果を表4に示す。
【0203】
【表4】
【0204】
(実施例C1)
下記のように、「光学フィルムの作製」、「レタデーション精度の評価」、「光漏れの評価」および「保存後の光漏れの評価」を行った。結果を表5に示す。
<光学フィルムの作製>
製造例5で得られた組成物1を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて50℃で、4時間加熱処理を行った。この加熱処理後のペレットを1時間以内に、ポリマーフィルターおよび炭化タングステンを材質としたダイスリップ全幅における表面粗さRaの平均値0.03μmのダイスリップを有するT型ダイスを備えた押出し機に供給し、シリンダー温度230℃で、80℃に保持したキャスティングドラム上にシート状に押出し、延伸はせずに冷却し、厚さ150μmの長尺の溶融押出しフィルムを作製した。溶融押出しフィルムはロールに巻き取った。
次に、溶融押出しフィルムをロールから引き出して、国際公開第2015/005292号の図1に示すようなテンター延伸機に連続的に供給して、テンター延伸機の把持手段の走行速度はフィルム両端でほぼ等しくなるようにして、延伸ゾーン温度143℃にてθ1=45°で延伸を行い、幅1900mmの光学フィルム(斜め延伸フィルム)を得た。延伸後、得られた延伸フィルムの幅方向の中央部1340mmを残し両端部をトリミングし、ロールに巻き取り、幅1340mmの光学フィルムを得た。
<レタデーション精度の評価>
位相差計(製品名「KOBRA(登録商標)21-ADH」、王子計測社製)を用いて、波長590nmで、光学フィルムの幅方向に、フィルムの中央部1340mmにわたり5cm間隔で位相差を測定し、その平均値を測定値とした。また、位相差の最大値および最小値のそれぞれと平均値との差の大きい方をレタデーション精度(%)として評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:1%以下
○:1%超、2%以下
△:2%超、3%以下
×:3%超
<光漏れの評価>
作製した光学フィルム2枚を互いの延伸軸が直交するように貼りあわせて積層体を作製した。この積層体をそれぞれ延伸フィルムの延伸軸が偏光板の透過軸に対して45度となるようにして偏光板で挟んだ。次に、この偏光板を挟んだ積層体にバックライトにより光を透過させ、偏光板から法線方向の距離で30mmの所に照度計(横河メータ&インスツルメンツ社製、製品名「51001」)を配置し、照度を測定することにより、光漏れを評価した。なお、評価基準は以下の通りとし、バックライトは、照度5000ルクスのものと、10000ルクスのものを用いた。
<<評価基準>>
◎:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度200ルクス未満
○:バックライト5000ルクスで透過照度200ルクス未満、10000ルクスで透過照度200ルクス以上300ルクス未満
△:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度200ルクス以上300ルクス未満
×:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度300ルクス以上
<保存後の光漏れの評価>
作製した光学フィルムを高温高湿環境下(85℃、湿度85%)に1000時間保管した後に、上記光漏れの評価を行うことにより、保存後の光漏れを評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度200ルクス未満
○:バックライト5000ルクスで透過照度200ルクス未満、10000ルクスで透過照度200ルクス以上300ルクス未満
△:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度200ルクス以上300ルクス未満
×:バックライト5000ルクス、10000ルクス共に透過照度300ルクス以上
【0205】
(実施例C2)
実施例C1において、製造例5で得られた組成物1を用いる代わりに、製造例6で得られた組成物2を用いたこと以外は、実施例C1と同様にして、「光学フィルムの作製」、「レタデーション精度の評価」、「光漏れの評価」および「保存後の光漏れの評価」を行った。結果を表5に示す。
【0206】
(実施例C3)
実施例C1において、製造例5で得られた組成物1を用いる代わりに、製造例19で得られた組成物15を用いたこと以外は、実施例C1と同様にして、「光学フィルムの作製」、「レタデーション精度の評価」、「光漏れの評価」および「保存後の光漏れの評価」を行った。結果を表5に示す。
【0207】
(比較例C1)
実施例C1において、製造例5で得られた組成物1を用いる代わりに、製造例7で得られた組成物3を用いたこと以外は、実施例C1と同様にして、「光学フィルムの作製」、「レタデーション精度の評価」、「光漏れの評価」および「保存後の光漏れの評価」を行った。結果を表5に示す。
【0208】
(比較例C2)
実施例C1において、製造例5で得られた組成物1を用いる代わりに、製造例8で得られた組成物4を用いたこと以外は、実施例C1と同様にして、「光学フィルムの作製」、「レタデーション精度の評価」、「光漏れの評価」および「保存後の光漏れの評価」を行った。結果を表5に示す。
【0209】
【表5】
【0210】
(実施例D1)
下記のように、「輸液バッグの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは非該当であった(Wが小さくて、下記式1を満たさなかった)。
W=[0.46×(100-H)+0.04]×(E/25)・・・式1
<輸液バッグの作製>
製造例5で得られた組成物1を用いて、厚さを200μmにした以外は実施例A1と同様にシートを作製した。得られたシートを15cm×15cmのサイズに切り出し、切り出したシートを2枚重ねて3辺をヒートシールすることにより、輸液バッグを作製した。
この輸液バッグ10個を、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)製袋(縦35×横25cm、厚さ0.05mm)に入れて、ヒートシールして密封した。このように密封した輸液バッグを更にまとめて、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)製袋(45リットル)にて包装して、ダンボール箱に複数梱包した。ダンボール箱に梱包したままガンマ線照射(線量25kGy、コーガアイソープ社)による滅菌処理を行った。
<強度の精度の評価>
滅菌処理した輸液バッグに水100gを入れた後に残り1辺をヒートシールしたものを5個準備し、JIS Z 2020を参考に、高さ1mから直立姿勢で落下させ、水漏れが発生していない場合は、水漏れするまで繰り返し、水漏れが発生するまでの落下回数の平均値と標準偏差から変動係数(標準偏差/平均値×100)を求めることにより、強度の精度を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:10%以下
○:10%超、20%以下
△:20%超、30%以下
×:30%超
<溶出の評価>
ガンマ線照射前と後で、輸液バッグから長さ60mm、幅10mmの試験片を切り出し、第十六改正日本薬局方「プラスチック製医薬品容器試験法」に従った溶出物試験を行い、pH差の評価を行うことにより、溶出を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:±0.6以内
○:±0.6超、±0.8以内
△:±0.8超、±1.0以内
×:±1.0超
<ブリードアウトの評価>
上記の作製し輸液バッグの表面を、目視による観察およびATR法(減衰全反射法)により輸液バッグの壁内部のIRスペクトルと、経時での輸液バッグ表面のIRスペクトルをそれぞれ測定した。成形から30日後の輸液バッグのIRスペクトルで、表面と内部の酸化防止剤に由来する吸収帯の強度の比率(表面の強度/内部の強度)で、ブリードアウトを評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:1.2倍以内
○:1.2倍超、1.3倍以内
△:1.3倍超、1.5倍以内
×:1.5倍超
【0211】
(実施例D2)
下記のように、「バイアルの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは非該当であった(Wが小さくて、上記式1を満たさなかった)。
<バイアルの作製>
製造例6で得られた組成物2を、射出ブロー成形機(日精エーエスビー機械社製、製品名「ASB-50MB」)を用いて、先ず、シリンダー温度240℃、射出金型温度60℃で射出成形してプリフォームを作製し、次いで、プリフォームの加熱ポット温度150℃、ブロー圧0.5MPa、ブロー金型温度60℃でブロー成形して、直径50mm×高さ90mm、側壁厚み1mmの単層のバイアルを作製した。
このバイアル10本を、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)製袋(縦35×横25cm、厚さ0.05mm)に入れて、ヒートシールして密封した。このように密封したバイアルを更にまとめて、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)製袋(45リットル)にて包装して、ダンボール箱に複数梱包した。ダンボール箱に梱包したままガンマ線照射(線量25kGy、コーガアイソープ社)による滅菌処理を行った。
<強度の精度の評価>
滅菌処理したバイアルに水100gを入れた後にゴム栓で封をしたものを5個準備し、実施例D1と同様にして、強度の精度を評価した。
<溶出の評価>
ガンマ線照射前と後で、バイアルの側面から長さ60mm、幅10mmの試験片を切り出し、実施例D1と同様に溶出を評価した。
<ブリードアウトの評価>
上記の射出ブロー成形したバイアルの表面を、実施例D1と同様に、ブリードアウトを評価した。
【0212】
(実施例D3)
実施例D2において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例17で得られた組成物13を用いたこと以外は、実施例D2と同様にして、「バイアルの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは該当であった(上記式1を満たした)。
【0213】
(実施例D4)
実施例D2において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例18で得られた組成物14を用いたこと以外は、実施例D2と同様にして、「バイアルの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは非該当であった(Wが大きくて、上記式1を満たさなかった)。
【0214】
(実施例D5)
実施例D2において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例22で得られた組成物18を用いたこと以外は、実施例D2と同様にして、「バイアルの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは該当であった(上記式1を満たした)。
【0215】
(比較例D1)
実施例D1において、製造例5で得られた組成物1を用いる代わりに、製造例7で得られた組成物3を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、「輸液バッグの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは非該当であった(Wが小さくて、上記式1を満たさなかった)。
【0216】
(比較例D2)
実施例D2において、製造例6で得られた組成物2を用いる代わりに、製造例8で得られた組成物4を用いたこと以外は、実施例D2と同様にして、「バイアルの作製」、「強度の精度の評価」、「溶出の評価」および「ブリードアウトの評価」を行った。結果を表6に示す。なお、酸化防止量パラメータは非該当であった(Wが小さくて、上記式1を満たさなかった)。
【0217】
【表6】
【0218】
(実施例E1)
下記のように、「接着剤の作製」、「保存後の接着力の評価」および「誘電率の評価」を行った。結果を表7に示す。
<接着剤の作製>
製造例10で得られた組成物6(100部)を、トルエン(沸点110℃)300部に溶解させた後、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越シリコーン社製)1部を添加して、均一に混合することにより、接着剤溶液を作製した。
<保存後の接着力の評価>
銅箔(厚み10~50μm)の片面に、部分的に接着剤を塗布しない箇所を残し、溶剤を除去させた後の接着剤層の厚みが15μmになるように接着剤溶液を塗布し、イナ-トオーブン中で溶剤を蒸発除去させた。
接着剤を塗布した銅箔を、接着剤を塗布していない箇所を含み、接着剤の塗布面が幅15mm×長さ150mmの大きさになるように切断して試験片とした。次に、この試験片とポリイミド樹脂フィルム(厚み50μm)とを対向させて重ね合わせ、所定の条件で加熱加圧して接着して剥離強度測定用の試験片を作製した。
その後、作製した剥離強度測定用の試験片を高温高湿環境下(85℃、湿度85%)に1000時間保管した後に、銅箔の接着剤を塗布していない部分を引張り試験機(製品名「AGS-10KNX」、島津製作所社製)に固定し、剥離速度100mm/分で、JIS K 6854-3に準じてT形剥離試験を行い、保存後の接着力を評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:15N/cm以上
○:10N/cm超、15N/cm未満
△:4N/cm超、10N/cm未満
×:4N/cm未満
<誘電率の評価>
離形性PETフィルム(厚さ100μm)上に、接着剤層の厚みが20~30μmになるように接着剤溶液を塗布し、イナ-トオーブン中で溶剤を蒸発除去させた。離形性PETフィルムから接着剤層を剥がし、接着剤層を多数重ねて、140℃で真空プレス成形して、厚み700~760μmの接着剤シートを成形した。得られた接着剤シートを、イナ-トオーブン中で、150℃で1時間加熱処理して揮発成分を除去させ、誘電率を評価する試料とした。この接着剤シートから、縦80mm、横1.5mmの試験片を作製し、空洞共振器摂動法(ASTM D2520)より、5GHzでの比誘電率を測定して評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:2.5以下
○:2.5超、3.0以下
△:3.0超、4.0以下
×:4.0超
【0219】
(実施例E2)
下記のように「接着剤の作製」を行ったこと以外は、実施例E1と同様にして「保存後の接着力の評価」および「誘電率の評価」を行った。結果を表7に示す。
<接着剤の作製>
製造例11で得られた組成物7(100部)を、トルエン(沸点110℃)(300部)に溶解させた後、シランカップリング剤としての3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、信越シリコーン社製)(1部)、架橋助剤としてのトリアリルイソシアヌレート(製品名「TAIC(登録商標)」、日本化成社製)(2部)、および有機過酸化物としての2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)(0.2部)を添加して、均一に混合することにより、接着剤を作製した。
【0220】
(実施例E3)
実施例E2において、製造例11で得られた組成物7を用いる代わりに、製造例20で得られた組成物16を用いたこと以外は、実施例E2と同様にして、「接着剤の作製」、「保存後の接着力の評価」および「誘電率の評価」を行った。結果を表7に示す。
【0221】
(比較例E1)
実施例E1において、製造例10で得られた組成物6を用いる代わりに、製造例15で得られた組成物11を用いたこと以外は、実施例E1と同様にして、「接着剤の作製」、「保存後の接着力の評価」および「誘電率の評価」を行った。結果を表7に示す。
【0222】
【表7】
【0223】
(実施例F1)
下記のように、「接合体の作製」および「保存後の接着力の評価」を行った。結果を表8に示す。
<接合体の作製>
製造例10で得られた組成物6を、幅400mmのTダイを備えた二軸押出し機(東芝機械社製、製品名「TEM-37B」)および梨地パターンのエンボスロールを備えたシート引取機を使用し、シリンダー温度200℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて押出して、厚さ330μmのシート(F1)を作製した。
ポリカーボネート樹脂シート(S1)(帝人化成社製、製品名「パンラインシート」、PC-2151、厚み0.2mm)から、縦300mm、横200mmの試験片を作製し、片面を、コロナ表面処理装置(ウェッジ社製、A3SW-LW)を使用して、出力60Wで、電極とサンプル間の距離10mm、処理速度1m/minの条件でコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理を行ったポリカーボネート樹脂シート(S1c)の処理面と、上記の作製したシート(F1)から切り出した、縦300mm、横200mmの試験片を、縦端部の50mmには離形フィルムを挟み、対向させて重ねた。
このシート(F1)と樹脂シート(S1c)の積層物を、NY/接着層/PPの層構成を有する厚み75μmの樹脂製の袋に入れた。袋の開口部の中央部を200mm幅残して両側をヒートシーラーでヒートシールした後、密封パック器(パナソニック社製、BH-951)で使用して、袋内を脱気しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。その後、密封包装しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、温度140℃、圧力0.80MPaで30分間加熱し、接合体(F1/S1c)を製造した。
<保存後の接着力の評価>
製造した接合体(F1/S1c)を高温高湿環境下(85℃、湿度85%)1000時間保管した後に、接合体(F1/S1c)の幅方向中央部から1cm幅でT形はく離試験片を5本切り出し、シート(F1)と樹脂シート(S1c)の界面の剥離強度を測定し、平均値と標準偏差を求めた。平均値を保存後の接着力として、変動係数(標準偏差/平均値×100)を保存後の接着力精度として評価した。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<接着力の評価基準>>
◎:12N/cm以上
○:8N/cm以上、12N/cm未満
△:4N/cm以上、8N/cm未満
×:4N/cm未満
<<精度の評価基準>>
◎:2%以下
○:2%超、5%以下
△:5%超、10%以下
×:10%超
【0224】
(実施例F2)
実施例F1において、製造例10で得られた組成物6を用いる代わりに、製造例11で得られた組成物7を用いたこと以外は、実施例F1と同様にして、「接合体の作製」および「保存後の接着力の評価」を行った。結果を表8に示す。
【0225】
(実施例F3)
実施例F1において、製造例10で得られた組成物6を用いる代わりに、製造例13で得られた組成物9を用いたこと以外は、実施例F1と同様にして、「接合体の作製」および「保存後の接着力の評価」を行った。結果を表8に示す。
【0226】
(実施例F4)
実施例F1において、製造例10で得られた組成物6を用いる代わりに、製造例21で得られた組成物17を用いたこと以外は、実施例F1と同様にして、「接合体の作製」および「保存後の接着力の評価」を行った。結果を表8に示す。
【0227】
(比較例F1)
実施例F1において、製造例10で得られた組成物6を用いる代わりに、製造例14で得られた組成物10を用いたこと以外は、実施例F1と同様にして、「接合体の作製」および「保存後の接着力の評価」を行った。結果を表8に示す。
【0228】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明によれば、金型転写性を向上させることができると共に、フィルム成形における膜厚ムラを抑制することができる共重合体水素化物、該共重合体水素化物を含有する共重合体水素化物含有組成物、および該共重合体水素化物を製造する方法、該共重合体水素化物の変性体を含む合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の2層以上が積層されてなる合わせガラス用中間膜積層体、該共重合体水素化物を含む封止材、該共重合体水素化物の変性体を含む封止材、該共重合体水素化物を含む光学フィルム、該共重合体水素化物含有組成物から形成されてなる医療用成形体、該医療用成形体を製造する製造方法、該共重合体水素化物の変性体を含む接着剤、該接着剤を含む接着剤シートと熱可塑性樹脂シートが積層されてなる接合体、および該接合体を製造する製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0230】
30 HSIS層
40 Si-HSIS層
50 酸無水物基変性HSIS層
300 ガラス用中間膜積層体
310 ガラス用中間膜積層体
320 ガラス用中間膜積層体
330 ガラス用中間膜積層体
340 ガラス用中間膜積層体
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E