(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器、保管装置、及び保管方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231121BHJP
C30B 35/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C30B29/06 Z
C30B35/00
(21)【出願番号】P 2021009878
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祥史
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535512(JP,A)
【文献】特開2018-90427(JP,A)
【文献】特開平5-105576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する保管容器であって、
蓋と容器本体とを含む金属製容器と、
該金属製容器の、前記洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材と
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管容器。
【請求項2】
前記石英部材が石英板であることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコン原料の保管容器。
【請求項3】
前記保管容器は、前記蓋を前記容器本体に固定するクランプバンドを更に具備するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコン原料の保管容器。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の多結晶シリコン原料の保管容器と、
前記保管容器内を真空状態にする真空ポンプと、
前記保管容器内に窒素を供給して、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧するボンベと
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管装置。
【請求項5】
洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、請求項1~3の何れか1項に記載の多結晶シリコン原料の保管容器の前記容器本体に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、該洗浄後の多結晶シリコン原料を前記保管容器内に前記蓋をした状態で保管することを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法。
【請求項6】
洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、
請求項4に記載の多結晶シリコン原料の保管装置を用い、
前記保管容器内に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容した後、前記真空ポンプと前記ボンベとを用いて、前記保管容器内を窒素により置換し、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持して前記洗浄後の多結晶シリコン原料の保管を行うことを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンの製造に用いられる多結晶シリコン原料の保管容器、多結晶シリコン原料の保管装置、及び多結晶シリコン原料の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンは主にチョクラルスキー法(以下、CZ法)やフローティングゾーン法(FZ法)によって製造されており、単結晶の純度を高めるためには使用する原料として高純度の多結晶シリコンが求められる。しかし、CZ法に用いられる破砕された多結晶シリコンは表面に自然酸化膜や不純物が付着している。そのため、CZ法による単結晶シリコンの製造に用いられる破砕させた多結晶シリコン原料は、使用前に予め表面の自然酸化膜や表面に付着した不純物を除去する必要がある。
【0003】
従来、多結晶シリコン原料の洗浄方法としては、フッ酸、硝酸、塩酸、過酸化水素、あるいはこれらの混合液を洗浄液として用い、洗浄槽を有した洗浄装置にて行われる。多結晶シリコン原料の洗浄工程及び保管工程を含むフロー図を
図3に示す。まず、多結晶シリコン原料を樹脂製の専用容器に充填し、洗浄装置内に搬送する。多結晶シリコン原料が充填された容器は、純水、あるいは超純水で水洗され、その後、酸溶液によりエッチング(洗浄)される。洗浄液でエッチングされた多結晶シリコン原料は、洗浄液の除去のため、再度、純水あるいは超純水にて水洗(リンス)される。その後、多結晶シリコン原料の乾燥などが行われた後、多結晶シリコン原料は容器から取り出され、ポリエチレンなどの袋に包装される(例えば特許文献1)。多結晶シリコン原料は、包装袋に入れられた状態で保管され、その後、これを使用する装置に搬送されて、使用される。
【0004】
多結晶シリコン原料塊は、粉砕などの加工に伴い、多結晶シリコン原料の破砕面の端部や角部が破面や鋭利な形状になることが多く、多結晶シリコン原料を洗浄した後にポリエチレン袋などに包装すると、包装時にポリエチレン袋を損傷させ、袋の剥離片が多結晶シリコン原料の表面に付着する。これを原料として用いて単結晶製造を行うことで新たな汚染の要因にもつながる。また、包装後の保管や移動時などで、袋は変形しやすく、内容物である多結晶シリコン原料も動くため、包装袋を損傷・剥離しやすく、外部からの異物の混入の恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-210637号公報
【文献】特開平5-4811号公報
【文献】特表2015-535512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多結晶シリコン原料の洗浄工程を行った洗浄後の多結晶シリコンの保管に関する容器、装置及び方法である。
【0007】
具体的には、本発明は、従来の洗浄後の多結晶シリコン原料を包装、保管、移動する際の包装材料による有機物汚染を防止することを目的としている。
【0008】
そして、本発明は、洗浄後の多結晶シリコン原料を長期保管する際に空気との接触を防止し、大気中の汚染物質との接触を防止することを目的としている。
【0009】
すなわち、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができる保管容器、保管装置及び保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する保管容器であって、
蓋と容器本体とを含む金属製容器と、
該金属製容器の、前記洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材と
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管容器を提供する。
【0011】
このような本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器であれば、洗浄後の多結晶シリコン原料と保管容器との接側面が石英部材であるため、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができる。
【0012】
また、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器であれば、強度の高い金属製容器を具備するため、保管中又は保管容器の搬送中に容器が損傷するのを防ぐことができ、更には蓋をした状態で保管を行うことができるため、洗浄後の多結晶シリコン原料と大気中の汚染物質との接触を防ぐことができる。
【0013】
前記石英部材は石英板であってもよい。
【0014】
石英板は、金属製容器の内面に容易に敷き詰めることができる。また、石英板であれば、交換が容易である。
【0015】
前記保管容器は、前記蓋を前記容器本体に固定するクランプバンドを更に具備することができる。
【0016】
このようなクランプバンドを具備するものであれば、容易に加圧することができる。
【0017】
また、本発明では、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器と、
前記保管容器内を真空状態にする真空ポンプと、
前記保管容器内に窒素を供給して、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧するボンベと
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管装置を提供する。
【0018】
このような本発明の多結晶シリコン原料の保管装置であれば、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器を具備するので、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができ、且つ大気中の汚染物質による汚染を防止することができる。
【0019】
また、本発明では、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器の前記容器本体に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、該洗浄後の多結晶シリコン原料を前記保管容器内に前記蓋をした状態で保管することを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法を提供する。
【0020】
本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法であれば、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができ、且つ洗浄後の多結晶シリコン原料と大気中の汚染物質との接触を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明では、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、
本発明の多結晶シリコン原料の保管装置を用い、
前記保管容器内に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容した後、前記真空ポンプと前記ボンベとを用いて、前記保管容器内を窒素により置換し、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持して前記洗浄後の多結晶シリコン原料の保管を行うことを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法が提供される。
【0022】
このような本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法では、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができ、且つ大気中の汚染物質による汚染を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器であれば、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができる。
【0024】
また、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管装置であれば、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができる。
【0025】
そして、本発明の洗浄後の多結晶シリコンの保管方法であれば、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法の一例を含む、多結晶シリコン原料の洗浄、保管及び使用のフロー図である。
【
図3】従来の多結晶シリコン原料の洗浄、保管及び使用のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができる、洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器、保管装置及び保管方法の開発が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、蓋及び容器本体を含む金属製容器と、この金属製容器の洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材とを具備する多結晶シリコン原料の保管容器であれば、洗浄後の多結晶シリコン原料への包装材料による有機物汚染及び大気中の汚染物質による汚染を防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する保管容器であって、
蓋と容器本体とを含む金属製容器と、
該金属製容器の、前記洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材と
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管容器である。
【0030】
また、本発明は、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器と、
前記保管容器内を真空状態にする真空ポンプと、
前記保管容器内に窒素を供給して、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧するボンベと
を具備するものであることを特徴とする多結晶シリコン原料の保管装置である。
【0031】
また、本発明は、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器の前記容器本体に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、該洗浄後の多結晶シリコン原料を前記保管容器内に前記蓋をした状態で保管することを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法である。
【0032】
また、本発明は、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、
本発明の多結晶シリコン原料の保管装置を用い、
前記保管容器内に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容した後、前記真空ポンプと前記ボンベとを用いて、前記保管容器内を窒素により置換し、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持して前記洗浄後の多結晶シリコン原料の保管を行うことを特徴とする多結晶シリコン原料の保管方法である。
【0033】
なお、特許文献2では、多結晶シリコン原料の洗浄方法を開示しているが、二次汚染を防止するための洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法は開示していない。
【0034】
また、特許文献3には、多結晶シリコンが金属容器と接触するのを防ぐため金属容器の表面に微孔質エラストマーポリウレタンを設けることが記載されている。しかし、特許文献3には、本発明のような、洗浄後の多結晶シリコン原料を内面に石英部材を取り付けた金属製容器に収容することを開示しておらず、保管容器内を大気圧より高い窒素雰囲気に置換して保管する方法も開示していない。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器)
本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する保管容器は、
蓋と容器本体とを含む金属製容器と、
該金属製容器の、前記洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材と
を具備するものであることを特徴とする。
【0037】
本発明によると、以下の洗浄後の多結晶シリコン原料を収容して保管する保管容器が提供される。本発明の保管容器は、洗浄後の多結晶シリコン原料の移し替えを行う、洗浄後の多結晶シリコンの保管専用である。金属製容器の材質はSUSが好ましいがその限りではない。洗浄後の多結晶シリコン原料を収容する金属製容器の洗浄後の多結晶シリコン原料に接触し得る内面(例えば壁面、底面、蓋裏面)に石英部材(例えば、石英板)を取り付けることのできる保管容器である。金属製容器の内部空間の形状は特に限定されない。
【0038】
石英部材としては、例えば石英板を用いることができる。石英板は金属製容器の内面を完全に覆うことができ、且つ交換可能なものとすることが好ましい。石英板は、合成石英で厚みは5mm程度以上が好ましいが、保管容器内への洗浄後の多結晶シリコン原料の収容作業を慎重に行うことにより、石英板の厚さを5mmより薄くすることも可能である。また石英板は定期的に新品に交換を行うか、又は表面状態が所定の基準以下となった場合に新品に交換することが好ましい。なお、石英部材は、交換可能な石英板に限られず、例えば金属製容器と一体となっているものであっても良い。
【0039】
保管容器の大きさが例えばW=400mm、D=700mm、H=350mmの場合では洗浄後の多結晶シリコン原料を30~40kg収容できる。保管容器に洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、蓋をすることで、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管容器内に蓋をした状態で保管することができる。蓋をした後、窒素により内部の空気を置換し、さらに加圧して、大気を完全に遮断することができる容器であることが好ましい。例えば、保管容器が金属製容器の蓋を容器本体に固定するクランプバンドを更に具備している場合、保管容器内の加圧を容易に行うことができる。
【0040】
本発明では、保管容器に洗浄後の多結晶シリコン原料を収容した後、蓋をして保管するだけであっても、洗浄後の多結晶シリコン原料と保管容器との接触面が石英部材であるため、ポリエチレンなどの袋に包装する場合より、汚染、特に有機物汚染を防止することが可能である。
【0041】
また、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器であれば、強度の高い金属製容器を具備するため、保管中又は保管容器の搬送中に容器が損傷するのを防ぐことができ、更には蓋をした状態で洗浄後の多結晶シリコン原料を保管できるので、洗浄後の多結晶シリコン原料と大気中の汚染物質との接触を防ぐことができる。
【0042】
(多結晶シリコン原料の保管装置)
本発明の多結晶シリコン原料の保管装置は、
本発明の多結晶シリコン原料の保管容器と、
前記保管容器内を真空状態にする真空ポンプと、
前記保管容器内に窒素を供給して、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧するボンベと
を具備するものであることを特徴とする。
【0043】
このような本発明の多結晶シリコン原料の保管装置であれば、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器を具備するので、洗浄後の多結晶シリコン原料と保管容器との接触面を石英部材とすることができる。それにより、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができる。
【0044】
加えて、保管容器内を真空状態にする真空ポンプと、保管容器内に窒素を供給して、保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧するボンベとを具備することにより、保管容器内を窒素により置換し、更に保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持することができる。保管容器内の圧力を大気圧よりも高い圧力に加圧することで、大気との接触を防止でき、空気中の微小な汚染物質から、洗浄後の多結晶シリコン原料を遮断できる。また、加圧することにより、クリーンルーム以外に保管しても汚染物質が容器内に入ることを防止することができる。その結果、外部からの汚染を確実に防止することができる。
【0045】
以下、
図1を参照しながら、本発明の多結晶シリコン原料の保管装置の一例を説明する。
【0046】
図1に示す保管装置200は、保管容器100と、真空ポンプ7と、窒素ボンベ6とを具備する洗浄後の多結晶シリコン原料の保管装置である。
【0047】
保管容器100は、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管容器の一例であり、洗浄後の多結晶シリコン原料3を保管するものである。保管容器100は、蓋22と容器本体21とを含む金属製容器2と、この金属製容器2の、洗浄後の多結晶シリコン原料3に接触し得る内面に取り付けられた石英部材としての石英板1とを具備している。
図1に示す保管容器100では、石英板1が、容器本体21の内面全体、及び蓋22の主面のうち容器本体21に対向する面(裏面)に、石英板1が取り付けられている。この場合、保管容器100は多結晶シリコン原料3に接触し得る内面の全てが石英部材で覆われているのが好ましい。
【0048】
保管容器100は、蓋22を容器本体21に固定するクランプバンド5を更に具備している。また、保管容器100には、保管容器100内の圧力を測定する圧力計4が取り付けられていてもよい。
【0049】
真空ポンプ7は、蓋に取り付けた排気ポートに接続されている。真空ポンプ7は、保管容器100内を真空状態にすることができる。
【0050】
窒素ボンベ6は、保管容器100内に窒素を供給して、保管容器100内を大気圧より高い圧力に加圧することができるボンベである。
【0051】
(洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法)
本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法は、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器の前記容器本体に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、該洗浄後の多結晶シリコン原料を前記保管容器内に前記蓋をした状態で保管することを特徴とする。
【0052】
本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法であれば、本発明の多結晶シリコン原料の保管容器の容器本体に洗浄後の多結晶シリコン原料を収容し、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管容器内に蓋をした状態で保管するので、洗浄後の多結晶シリコン原料と保管容器との接触面を石英部材とすることができる。その結果、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができる。
【0053】
加えて、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法であれば、強度の高い金属製容器を具備する本発明の保管容器を用いるため、保管中に容器が損傷するのを防ぐことができ、更には蓋をした状態で洗浄後の多結晶シリコン原料を保管容器内に保管するので、洗浄後の多結晶シリコン原料と大気中の汚染物質との接触を防ぐことができる。
【0054】
また、好ましい態様の本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法は、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管する方法であって、
本発明の多結晶シリコン原料の保管装置を用い、
前記保管容器内に前記洗浄後の多結晶シリコン原料を収容した後、前記真空ポンプと前記ボンベとを用いて、前記保管容器内を窒素により置換し、前記保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持して前記洗浄後の多結晶シリコン原料の保管を行うことを特徴とする。
【0055】
このような好ましい態様の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法では、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管装置を用い、この保管装置が具備する本発明の保管容器内に洗浄後の多結晶シリコン原料を収容するので、洗浄後の多結晶シリコン原料と保管容器との接触面を石英部材とすることができる。その結果、保管容器から洗浄後の多結晶シリコン原料への有機物汚染を防止することができる。
【0056】
加えて、このような本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法では、真空ポンプとボンベとを用いて、保管容器内を窒素により置換し、保管容器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧し、その状態を維持して洗浄後の多結晶シリコン原料の保管を行うことにより、洗浄後の多結晶シリコン原料と大気との接触を防止でき、例えば、空気中の微小な汚染物質から洗浄後の多結晶シリコン原料を遮断できる。また、加圧することにより、クリーンルーム以外に保管しても汚染物質が容器内に入ることを防止することができる。その結果、外部からの汚染を確実に防止することができる。
【0057】
以下、
図1を再び参照すると共に、
図2を参照しながら、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法の一例をより詳細に説明する。
【0058】
図2は、本発明の洗浄後の多結晶シリコン原料の保管方法の一例を含む、洗浄後の多結晶シリコン原料の洗浄、保管及び使用のフロー図である。
【0059】
この例では、樹脂製の専用容器への多結晶シリコン原料の充填、エッチング前水洗、エッチング(酸洗浄)、水洗(リンス)及び乾燥までは、従来と同様に行う。次いで、洗浄後の多結晶シリコン原料を
図1に示した保管容器100への移し替えを行って、保管容器100の容器本体21に洗浄後の多結晶シリコン原料3を収容する。
【0060】
洗浄後の多結晶シリコン原料3を収容した後、容器本体21に蓋22をし、クランプバンド5にて蓋22を容器本体21に固定する。固定後、蓋22に取り付けた排気ポートに真空ポンプ7を接続し、この真空ポンプ7を用いて保管容器100内を真空状態にし、次いで、窒素ボンベ6を用いて、保管容器100内に窒素を供給(窒素置換)し、更に、保管容器100内を例えば50Pa程度まで加圧し、その状態を維持して保管する。
【0061】
このとき保管容器100内の圧力は大気圧より高ければよく、クランプバンド5で保持できる圧力以下とする(例えば、3×105Pa以下)。このようにすることで外部からの汚染を確実に防止することができる。
【0062】
本発明にて保管した多結晶シリコン3を使用する際は、保管容器100の例えば蓋22に取り付けた不図示の圧抜き弁を開放し、保管容器100内が常圧になった後、クランプバンド5を取り外し、蓋22を開放する。
【0063】
以上では、保管容器100の容器本体21への洗浄後のシリコン単結晶3の収容の後に窒素置換及び加圧を行った例を示したが、保管容器100の容器本体21に洗浄後の多結晶シリコン原料3を収容した後、蓋22をして保管するだけであっても、洗浄後の多結晶シリコン原料3と保管容器100との接触面が石英板1であるため、ポリエチレンなどの袋に包装する場合より、汚染、特に有機物汚染を防止することが可能である。
【0064】
また、保管容器100の容器本体21に洗浄後の多結晶シリコン原料3を収容した後、蓋22をして保管するだけであっても、保管容器100は、強度の高い金属製容器2を具備するため、保管中又は保管容器の搬送中に保管容器100が損傷するのを防ぐことができ、更には蓋22をした状態で洗浄後の多結晶シリコン原料3を保管できるので、洗浄後の多結晶シリコン原料3と大気中の汚染物質との接触を防ぐことができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1及び2)
実施例では、洗浄後の多結晶シリコン原料を収容する保管容器として、
図1のような、金属製容器(SUS製)と、この金属製容器の、洗浄後のシリコン原料に接触し得る内面に取り付けられた石英部材としての厚さ5mmの石英板とを具備し、W=400mm、H=350mm、D=700mmの大きさのものを用いた。
【0067】
保管容器への洗浄後の多結晶シリコン原料の充填量は30~40kgとし、保管容器の80%程度の高さまで充填した。その後、実施例1では保管容器に蓋をした状態で洗浄後の多結晶シリコン原料を保管した。また、実施例2では、蓋をし、窒素により保管容器内部を置換した後で1.5×105Paに加圧した状態で、洗浄後の多結晶シリコン原料を保管した。
【0068】
(比較例)
比較例では、洗浄後の多結晶シリコン原料を、5kg毎にポリエチレンの袋に包装して保管した。
【0069】
洗浄後の多結晶シリコン原料を、上記の従来技術の比較例、並びに本発明の実施例1及び2に示した方法で、3ヶ月間クリーン度を管理しない場所にて保管した。保管後に多結晶シリコン原料の表層分析を行った結果、実施例1における本発明の保管容器に収容し、蓋をして保管をしたものは、比較例に比べて炭素濃度不良の発生割合を5%削減できた。さらに、実施例2における、蓋をし、窒素置換、及び加圧を行ったものでは、比較例に比べて、炭素濃度不良の発生割合は10%改善した。
【0070】
従来技術の比較例では、洗浄後の多結晶シリコン原料をポリエチレンの袋に包装し、有機物との接触があり、有機物汚染の可能性があった。しかし、実施例1及び2では洗浄後の多結晶シリコン原料を収容する保管容器の接触面は石英であるため、容器からの有機物汚染を防止することができた。
【0071】
また、実施例1及び2で用いた保管容器は、比較例で用いたポリエチレンの袋よりも強度が高い金属製容器を具備するため、容器の破損を防ぐことができた。このような強度の高い保管容器内に蓋をした状態で洗浄後の多結晶シリコン原料を保管した実施例1及び2では、洗浄後の多結晶シリコン原料と大気中の汚染物質との接触も防ぐことができた。
【0072】
特に実施例2では収容後に窒素により内部の空気を置換し、加圧をすることで大気との接触を更に防止でき、空気中の微小な汚染物質とも遮断することができた。さらに、保管容器を加圧しているため、クリーンルーム以外に保管しても汚染物質が容器内に入ることを更に防止することができた。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
1…石英部材(石英板)、 2…金属製容器、 3…洗浄後の多結晶シリコン原料、 4…圧力計、 5…クランプバンド、 6…窒素ボンベ、 7…真空ポンプ、 21…容器本体、 22…蓋、 100…保管容器、 200…保管装置。