(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法、及びデータ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
(21)【出願番号】P 2021569695
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000672
(87)【国際公開番号】W WO2021140652
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 笑子
(72)【発明者】
【氏名】永田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/039096(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183479(WO,A1)
【文献】特開2016-116069(JP,A)
【文献】特開2002-278658(JP,A)
【文献】中村 祐喜 他,環境および耐災害に対応したグリーン基地局における天気予報連動制御とその実証,NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル,日本,一般社団法人電気通信協会,2016年10月31日,Vol.24, No.3,第22-28頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを変換するデータ処理部と、
前記データ処理部によって変換されたデータが入力され、入力されたデータを無線でアクセスポイントに送信する無線通信部と、
を備え、
前記データ処理部は、電池から入力された残量が第1の状態である場合に、第1の設定で前記入力されたデータを変換して前記無線通信部に出力し、前記電池の残量が前記第1の状態と異なる第2の状態である場合に、前記入力されたデータを第2の設定で変換して前記無線通信部に出力し、
変換された後のデータの単位時間当たりの容量が、前記第1の設定と前記第2の設定との間で異なり、
前記第1の設定と前記第2の設定で共通のスケーラブル符号化が適用され、前記第1の設定と前記第2の設定との間では、前記無線通信部に出力される層の割り当てが異な
り、
前記電池の残量は、前記第1の状態よりも前記第2の状態の方が小さく、
変換されたデータの単位時間当たりの容量は、前記第1の設定よりも前記第2の設定の方が小さく、
前記第1の設定では、第1層と第2層とが前記無線通信部に出力され、
前記第2の設定では、前記第1層のみが前記無線通信部に出力される、
データ処理装置。
【請求項2】
前記入力されたデータは、映像データであり、
前記第1の設定と前記第2の設定との間は、フレームレート及びコーディングレートのうち少なくとも1つが異なる、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
電池の残量が第1の状態である場合に、入力されたデータを第1の設定で変換して無線通信部に出力することと、
前記電池の残量が前記第1の状態と異なる第2の状態である場合に、前記入力されたデータを第2の設定で変換して前記無線通信部に出力することと、を備え、
変換されたデータの単位時間当たりの容量は、前記第1の設定と前記第2の設定との間で異なり、
前記第1の設定と前記第2の設定で共通のスケーラブル符号化が適用され、前記第1の設定と前記第2の設定との間では、前記無線通信部に出力される層の割り当てが異な
り、
前記電池の残量は、前記第1の状態よりも前記第2の状態の方が小さく、
変換されたデータの単位時間当たりの容量は、前記第1の設定よりも前記第2の設定の方が小さく、
前記第1の設定では、第1層と第2層とが前記無線通信部に出力され、
前記第2の設定では、前記第1層のみが前記無線通信部に出力される、
データ処理方法。
【請求項4】
前記入力されたデータは、映像データであり、
前記第1の設定と前記第2の設定との間は、フレームレート及びコーディングレートのうち少なくとも1つが異なる、
請求項
3に記載のデータ処理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
電池の残量が第1の状態である場合に、入力されたデータを第1の設定で変換して無線通信部に出力することと、
前記電池の残量が前記第1の状態と異なる第2の状態である場合に、前記入力されたデータを第2の設定で変換して前記無線通信部に出力することと、
を実行させるためのプログラムであって、
変換されたデータの単位時間当たりの容量が、前記第1の設定と前記第2の設定との間で異なり、
前記第1の設定と前記第2の設定で共通のスケーラブル符号化が適用され、前記第1の設定と前記第2の設定との間では、前記無線通信部に出力される層の割り当てが異な
り、
前記電池の残量は、前記第1の状態よりも前記第2の状態の方が小さく、
変換されたデータの単位時間当たりの容量は、前記第1の設定よりも前記第2の設定の方が小さく、
前記第1の設定では、第1層と第2層とが前記無線通信部に出力され、
前記第2の設定では、前記第1層のみが前記無線通信部に出力される、
データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、データ処理装置、データ処理方法、及びデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と端末との間を無線で接続する無線システムとして、無線LAN(Local Area Network)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】スマイルエナジー社,“太陽光発電の監視カメラ”,[Online][令和1年11月11日検索],インターネット<URL:https://www.eco-megane.jp/partner/om/detail/8>
【文献】トーカイセキュリティ株式会社,“ソーラー防犯カメラ KSP-75A-CAM 施工案”,[Online],[令和1年11月11日検索],インターネット<URL:http://www.tokaisecurity.net/html/solarcamera-downloadpage.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題は、監視システムの稼働時間を長くすること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のデータ処理装置は、データ処理部と無線通信部とを含む。データ処理部は、入力されたデータを変換する。無線通信部は、データ処理部によって変換されたデータが入力され、入力されたデータを無線でアクセスポイントに送信する。データ処理部は、電池から入力された残量が第1の状態である場合に、第1の設定で前記入力されたデータを変換して無線通信部に出力する。データ処理部は、電池の残量が第1の状態と異なる第2の状態である場合に、入力されたデータを第2の設定で変換して無線通信部に出力する。変換された後のデータの単位時間当たりの容量が、第1の設定と第2の設定との間で異なる。
【発明の効果】
【0006】
実施形態のデータ処理方法は、監視システムの稼働時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る無線システムの全体構成の一例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る無線システムの備える監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る無線システムの備える基地局の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る無線システムの備える監視システムの機能の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る無線システムの備える監視システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る無線システムの備える監視システムの動作の具体例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る無線システムの備える監視システムの動作の具体例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例に係る無線システムの備える監視システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は、模式的又は概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0009】
<1>無線システム1の構成
以下に、実施形態に係る無線システム1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る無線システム1の全体構成の一例を示している。
図1に示すように、無線システム1は、監視システム10、基地局20、及びサーバ30を備えている。
【0010】
監視システム10は、基地局20から離れた場所に設置され、設置箇所の近傍における状況を監視する。監視システム10は、例えば、発電及び蓄電が可能な装置と、映像を記録することが可能な装置と、無線信号を送信することが可能な装置とを含む。監視システム10は、無線通信によって基地局20と接続され、基地局20を介してネットワークNW上のサーバ30と通信し得る。
【0011】
基地局20は、ネットワークNWに接続され、無線LANのアクセスポイントとして使用される。基地局20は、監視システム10によって送信された無線信号を受信する。そして、基地局20は、監視システム10から受信した無線信号に基づく監視データを、ネットワークNW上のサーバ30に転送する。基地局20と監視システム10との間の通信は、例えばIEEE802.11規格に基づいている。
【0012】
サーバ30は、様々な情報を保持することができる。サーバ30は、ネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して基地局20と通信可能に構成される。例えば、サーバ30は、基地局20からネットワークNWを介して転送された監視データを記憶する。尚、サーバ30と基地局20との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。サーバ30は、少なくとも基地局20と通信可能であればよい。
【0013】
<1-1>監視システム10の構成
図2は、実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10の構成の一例を示している。
図2に示すように、監視システム10は、発電モジュール11、蓄電池12、撮影モジュール13、及びデータ処理装置14を備えている。
【0014】
発電モジュール11は、自然エネルギーを利用して電力を生成する。発電モジュール11としては、例えば太陽光エネルギーを電力に変換する太陽光パネルが使用される。尚、発電モジュール11は、少なくとも自然エネルギーを利用して発電していればよく、熱や風力等を利用してもよい。
【0015】
蓄電池12は、発電モジュール11によって生成された電力を蓄える。また、蓄電池12は、データ処理装置14の電源として使用される。例えば、蓄電池12は、内部に蓄えた電力、又は発電モジュール11が発電した電力を、データ処理装置14に供給する。
【0016】
撮影モジュール13は、監視システム10の監視対象の映像を電子データで記録する。そして、撮影モジュール13は、記録した映像データ(監視データ)をデータ処理装置14に出力する。撮影モジュール13の電源は、蓄電池12から供給されてもよいし、その他の独立した電源から供給されてもよい。
【0017】
データ処理装置14は、撮影モジュール13から入力された映像データを圧縮データに変換する機能と、変換した映像データ(圧縮データ)を無線信号で送信する機能とを有する。なお、データ処理装置14におけるデータ圧縮とは、入力された映像データのデータ量を削減する処理であればよく、たとえば映像データを構成するフレームを間引く、フレーム内のデータ量を削減する、その他の一般的に用いられるデータ量の削減方法を含む。また、データ処理装置14は、CPU(Central Processing Unit)15、ROM(Read Only Memory)16、RAM(Random Access Memory)17、及び無線通信モジュール18を含んでいる。
【0018】
CPU15は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、データ処理装置14の全体の動作を制御する。ROM16は、不揮発性の半導体メモリであり、データ処理装置14を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM17は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU15の作業領域として使用される。無線通信モジュール18は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。
【0019】
<1-2>基地局20の構成
図3は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局20の構成の一例を示している。
図3に示すように、基地局20は、CPU21、ROM22、RAM23、無線通信モジュール24、及び有線通信モジュール25を備えている。
【0020】
CPU21は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、基地局20の全体の動作を制御する。ROM22は、不揮発性の半導体メモリであり、基地局20を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM23は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU21の作業領域として使用される。無線通信モジュール24は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。有線通信モジュール25は、有線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、ネットワークNWに接続される。
【0021】
<2>動作
実施形態に係る無線システム1において、監視システム10は、蓄電池12の残量に応じて、基地局20に送信する監視データの単位時間当たりの容量を変更する。以下に、実施形態に係る無線システム1における監視システム10の動作について説明する。尚、以下の説明では、監視システム10が、基地局20に帰属しているものと仮定する。
【0022】
図4は、監視システム10の動作時における機能の一例を示している。
図4に示すように、監視システム10は、例えば発電部101、配電部102、蓄電部103、無線通信部104、データ処理部105、及び撮影部106として機能し得る。
【0023】
発電部101は、発電モジュール11に対応する機能である。発電部101は、自然エネルギーを電力に変換する。例えば、発電部101は、発電モジュール11に照射された太陽光のエネルギーを利用して電力を生成し、生成した電力を配電部102に供給する。
【0024】
配電部102は、蓄電池12に対応する機能である。配電部102は、発電部101及び蓄電部103の少なくとも一方から供給された電力を、無線通信部104及びデータ処理部105に供給する。また、配電部102は、蓄電池12の残量に関する情報(以下では、残量情報と呼ぶ)をデータ処理部105に出力する。尚、残量情報は、蓄電部103によって逐次通知され、配電部102介してデータ処理部105に転送されてもよい。
【0025】
蓄電部103は、蓄電池12に対応する機能である。蓄電部103は、発電部101が配電部102に供給している電力がデータ処理装置14の動作に必要な電力よりも多い場合(電力余剰時)に、電力の余剰分を蓄える。一方で、蓄電部103は、発電部101が配電部102に供給している電力がデータ処理装置14の動作に必要な電力よりも少ない場合(電力不足時)に、電力の不足分を配電部102に供給する。尚、蓄電部103は、発電部101によって発電された全ての電力を蓄えてから、データ処理装置14に電力を供給してもよい。この場合、データ処理装置14の動作に必要な電力の全ては、蓄電部103から配電部102を介して供給される。
【0026】
無線通信部104は、データ処理装置14の無線通信モジュール18に対応する機能である。無線通信部104は、例えばデータ処理部105によって入力されたデータを無線信号に変換して、当該無線信号をアンテナを介して送信する。そして、送信された無線信号は、例えば基地局20によって受信される。
【0027】
データ処理部105は、データ処理装置14のCPU15等に対応する機能である。データ処理部105は、例えば、撮影部106によって入力された映像等のデータを、所定のデータ形式に変換(圧縮)する。データ処理部105は、映像データの変換において、コーディングレートやフレームレート等を変更することができる。また、データ処理部105は、配電部102から入力された残量情報に基づいて、映像データの変換に使用する設定を変更し得る。
【0028】
撮影部106は、撮影モジュール13に対応する機能である。撮影部106は、撮影した映像等のデータを、データ処理部105に入力する。例えば、撮影部106に適用される撮影のパラメータは、ユーザによって予め設定される。
【0029】
図5は、実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10の動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図5を参照して、実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10の動作の流れの一例について説明する。
【0030】
まず、撮影部106が、撮影した映像データをデータ処理部105に出力する(ステップS10)。この映像データは、例えば撮影モジュール13の生データに対応している。
【0031】
次に、データ処理部105が、蓄電部103の残量情報を取得する(ステップS11)。具体的には、配電部102が、蓄電部103の残量に基づいて残量情報を生成し、生成された残量情報が、データ処理部105によって参照される。このとき、データ処理部105は、配電部102から供給される電力の電圧値に基づいて、蓄電部103の残量を把握してもよい。
【0032】
そして、データ処理部105が、蓄電部103の残量情報と、予め設定された残量の閾値とを比較する。具体的には、データ処理部105が、蓄電部103の残量が閾値を超えているかどうかを確認する(ステップS12)。この閾値は、ユーザによって設定されてもよいし、データ処理装置14の出荷時点でプリセットされていてもよい。
【0033】
残量が閾値を超えていた場合(ステップS12、YES)、データ処理部105が、第1の設定で映像データを変換(圧縮)する(ステップS13)。一方で、残量が閾値を超えていなかった場合(ステップS12、NO)、データ処理部105が、第1の設定と異なる第2の設定で映像データを変換(圧縮)する(ステップS14)。
【0034】
ステップS13又はS14の処理が実行された後に、データ処理部105が、変換後の映像データを無線通信部104に出力する(ステップS15)。そして、無線通信部104が、入力された映像データを無線信号に変換して、変換した無線信号をアンテナを介して基地局20に送信する(ステップS16)。
【0035】
以上のように、監視システム10は、撮影した映像データを基地局20に送信する。送信された無線信号は、基地局20によって復号される。そして、基地局20は、復号によって得られた映像データを、ネットワークNWを介してサーバ30に転送する。それから、サーバ30は、転送された映像データを、内蔵しているストレージに記憶させる。
【0036】
例えば、監視システム10は、第1の設定が適用された場合、すなわち蓄電部103の残量が閾値を超えている場合に、映像データ量を削減せずに出力する。一方で、監視システム10は、第2の設定が適用された場合、すなわち蓄電部103の残量が閾値よりも小さい場合に、映像データ量を削減して出力する。
【0037】
尚、各設定が適用された場合に、いずれの場合も映像データ量が削減されてもよく、映像データの削減率が、第1の設定よりも第2の設定の方が高くなるように設定されてもよい。映像データの削減率を高くする方法としては、例えば映像データの圧縮率を高くすること等が挙げられる。また、第1の設定と第2の設定で、共通のスケーラブル符号化を用いた圧縮が適用されてもよい。この場合、例えば送信されるデータ量として、第2の設定では基底層のみが送信され、第1の設定では基底層と拡張層とが送信される設定が適用されてもよい。
【0038】
図6及び
図7のそれぞれは、実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10の動作の具体例を示している。
図6は、映像データの変換に第1の設定が適用される場合の動作の一例に対応している。
図7は、映像データの変換に第2の設定が適用される場合の動作の一例に対応している。
【0039】
図6に示すように、蓄電部103の残量が大きい場合に、第1の設定が映像データの変換に適用される。第1の設定において、データ処理部105は、例えば高画質設定で映像データを変換する。高画質設定では、例えば、高いコーディングレートが適用され、入力された映像データのフレームレートが維持される。高画質設定の映像データは、単位時間当たりのデータ量が大きい。このため、第1の設定が適用された場合、無線通信部104の消費電力は、送信するデータ量が大きいことに伴い大きくなる。
【0040】
図7に示すように、蓄電部103の残量が小さい場合に、第2の設定が映像データの変換に適用される。第2の設定において、データ処理部105は、例えば低画質設定で映像データを変換する。低画質設定では、例えば、低いコーディングレートが適用され、入力された映像データのフレームレートが下げられる。言い換えると、入力された映像データのフレームの一部が間引かれる、すなわち定期的に削除される。低画質設定の映像データは、高画質設定の映像データよりも単位時間当たりのデータ量が小さい。このため、第2の設定が適用された場合、無線通信部104の消費電力は、第1の設定の場合よりも送信するデータ量が小さいことに伴い小さくなる。
【0041】
<3>実施形態の効果
以上で説明した実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10に含まれたデータ処理装置14に依れば、監視システム10の稼働時間を長くすることができる。以下に、実施形態におけるデータ処理装置14の詳細な効果について説明する。
【0042】
監視環境を構築するためのシステムとして、低消費電力且つ長距離の通信が可能な無線LANを利用した監視システムが考えられている。具体的には、監視システムが、ビデオカメラ等の撮影モジュールにより取得した監視データを、無線でアクセスポイントに送信する。そして、アクセスポイントが、受信した監視データをサーバに転送して、サーバが、監視データを蓄積する。
【0043】
これにより、ユーザは、サーバに蓄積された監視データに基づいて、監視サービス等を提供することができる。また、ユーザは、監視システムとアクセスポイントとを準備するだけで、広範囲の監視環境を簡便に構築することができる。このような監視システムは、発電モジュールと蓄電池との組み合わせを電源として利用することによって、自律した状態で稼働することが好ましい。
【0044】
しかしながら、自然エネルギーを利用した発電モジュールは、蓄電池に対して安定的に電力を供給することが困難である。例えば、太陽光エネルギーを利用した太陽光パネルを発電モジュールとして用いた場合、監視システムの付近の天気に応じて、発電モジュールによる電力の生成量が変化する。
【0045】
例えば、電力の生成が困難である期間が長くなると、監視システムは、蓄電池の電力のみを用いて稼働する状態になる。この状態では、監視システムの残りの稼働時間が、蓄電池の残量に応じて決定される。そして、蓄電池の残量が無くなると、監視システムは、監視を継続することが出来なくなる。監視データの継続的な記録が途切れることは、監視サービスやセキュリティの品質の低下に繋がり得る。
【0046】
そこで、実施形態における監視システム10は、アクセスポイントに送信するデータ量を、蓄電池12の残量に応じて変更する。簡潔に述べると、監視システム10に含まれたデータ処理装置14が、撮影モジュール13によって取得された映像の生データの変換に適用する設定を、蓄電池12の残量情報に基づいて変更する。
【0047】
例えば、データ処理装置14は、蓄電池12の残量が大きい場合に高画質設定で生データを変換し、蓄電池12の残量が小さい場合に低画質設定で生データを変換する。単位時間当たりのデータ容量は、高画質設定よりも低画質設定の方が小さくなる。また、無線通信モジュール18の消費電力は、送信するデータの容量に応じて変化する。つまり、実施形態におけるデータ処理装置14は、蓄電池12の残量が小さくなったことに応じて、無線通信モジュール14の消費電力を小さくすることができる。
【0048】
その結果、実施形態におけるデータ処理装置14は、蓄電池12のみで動作する状況下において、監視データの送信が停止するまでの時間を長くすることができる。言い換えると、実施形態におけるデータ処理装置14は、蓄電池12の電力のみを用いた場合における監視システム10の稼働時間を長くすることができる。従って、実施形態におけるデータ処理装置14は、監視データの記録が途切れる可能性を下げることが出来、監視システム10を用いた監視サービスやセキュリティの品質の低下を抑制することができる。
【0049】
また、実施形態では、蓄電池12の残量に応じてデータ処理装置14の消費電力を抑制する設定が使用される場合について例示したが、これに限定されない。例えば、データ処理装置14は、蓄電池12の残量が所定の閾値を超えており、且つ発電モジュール11による電力の供給が十分である場合に、監視データをより高品質の映像データに変換してもよい。データ処理装置14は、少なくとも供給される電力の状態に応じて、監視データの変換に使用する設定を変更していればよい。
【0050】
例えば、データ処理装置14は、日中等のエネルギーが十分に使える時間帯において、可能な範囲で高精細な画像を送信し、夜間等のエネルギーが不足する時間帯において、継続性を重視して送信するデータ量を抑制する。これにより、データ処理装置14は、エネルギーが十分に使える時間帯における監視データの画像分析の材料としての効果を高めることができる。このように、ユーザは、監視サービスを状況に応じて高品質にすることができる。尚、データ処理部14が監視データを高品質の映像データに変換する条件は、その他の条件であっても良い。この条件は、監視システム10が使用される環境や発電モジュール11の種類に応じて、適宜変更され得る。
【0051】
<4>実施形態の変形例
実施形態では、データ処理部105が蓄電部103の残量情報に応じて第1の設定と第2の設定とを使い分ける場合について例示したが、これに限定されない。例えば、データ処理部105は、蓄電部103の残量情報に応じて3つ以上の設定を使い分けてもよい。
【0052】
図8は、実施形態の変形例に係る無線システム1の備える監視システム10の動作の一例を示すフローチャートであり、3つの設定が使い分けられる場合の動作の一例を示している。以下に、
図8を参照して、実施形態に係る無線システム1の備える監視システム10の動作の流れの一例について説明する。
【0053】
まず、ステップS10及びS11の処理が順に実行される。簡潔に述べると、データ処理部105が、撮影部106によって生成された生データと、蓄電部103の残量情報とを取得する。次に、データ処理部105が、蓄電部103の残量が第1の閾値を超えているかどうかを確認する(ステップS20)。
【0054】
残量が第1の閾値を超えていた場合(ステップS20、YES)、データ処理部105が、第1の設定で映像データを変換する(ステップS21)。一方で、残量が第1の閾値を超えていなかった場合(ステップS20、NO)、データ処理部105が、蓄電部103の残量が第2の閾値を超えているかどうかを確認する(ステップS22)。第2の閾値は、第1の閾値よりも小さく設定される。
【0055】
残量が第2の閾値を超えていた場合(ステップS22、YES)、データ処理部105が、第1の設定と異なる第2の設定で映像データを変換する(ステップS23)。一方で、残量が第2の閾値を超えていなかった場合(ステップS22、NO)、データ処理部105が、第1の設定と第2の設定とのそれぞれと異なる第3の設定で映像データを変換する(ステップS24)。
【0056】
そして、ステップS21~S23のいずれかの処理が実行された後に、ステップS15及びS16の処理が順に実行される。簡潔に述べると、変換された映像データが、無線信号で基地局20に送信される。
【0057】
以上のように、実施形態の変形例では、例えば2つの閾値(第1及び第2の閾値)が使用される。そして、実施形態の変形例では、例えば、第1の設定が高画質設定に対応し、第2の設定が中画質設定に対応し、第3の設定が低画質設定に対応する。中画質設定の映像データの単位時間当たりのデータ量は、高画質設定と低画質設定との間に設定される。また、共通のスケーラブル符号化を用いた圧縮が使用される場合、例えば、第1の設定では基底層のみが送信され、第2の設定では基底層と拡張層(空間)とが送信され、第3の設定では基底層と拡張層(空間+時間)とが送信される。
【0058】
これにより、実施形態の変形例では、データ処理装置14の消費電力が、第1の設定、第2の設定、第3の設定の順に小さくなる。その結果、実施形態の変形例におけるデータ処理装置14は、監視データの品質とデータ処理装置14の稼働時間とのバランスを、実施形態よりも細かく制御することができる。
【0059】
<5>その他の変形例等
各実施形態における監視システム10の動作は、種々の変形が可能である。例えば、残量が閾値を下回っている場合に、データ処理部105が、無線通信部104のスリープ制御に同期して映像データを出力してもよい。無線通信部104は、基地局20からのビーコン信号の受信周期に合わせてスリープ制御を行うことで、省電力動作をすることができる。この場合、データ処理部105が、無線通信部104からスリープの周期(すなわち、基地局20からビーコン信号を受信する周期)に合わせて映像データを出力する。これにより、無線通信部104がウェイクアップしたにも関わらず送信するデータがないという状況を回避し、省電力効果を改善することができる。基地局20が定期的に各無線通信部104に送信機会を割当てる場合に、各無線通信部104が当該割当タイミングに合わせて映像データを出力してもよい。
【0060】
実施形態では、監視システム10が取り扱うデータが映像データである場合について例示したが、これに限定されない。例えば、監視システム10は、音声データのみを取り扱ってもよい。監視システム10が取り扱うデータが音声データのみである場合には、撮影部106は、音声データをデータ処理部105に入力する。そして、データ処理部105は、実施形態と同様に、蓄電部103の残量情報に応じて、音声データの圧縮設定を変更する。また、監視システム10は、映像データを取り扱う設定と、音声データのみを取り扱う設定とを、蓄電部103の残量情報に応じて使い分けてもよい。
【0061】
実施形態では、撮影部106がデータ処理部105に生データを入力する場合について例示したが、撮影部106によって圧縮されたデータがデータ処理部105に入力されてもよい。共通のスケーラブル符号化を用いた圧縮が適用される場合に、データ処理部105は、例えばどの階層まで基地局20に送信するかを選択する。データ処理部105は、少なくとも撮影部106から入力されたデータに対する変換処理において、電源の状態に応じて複数種類の設定を使い分けていればよい。そして、複数種類の設定の使い分けによって、無線通信部104から送信される監視データの単位時間当たりの容量が調整されていればよい。例えば、データ処理部105は、撮影部106から入力された無圧縮のデータに対して間引き処理を実行するだけでもよい。この場合、例えばサーバ30が、撮影モジュール13の生データを現像する機能を有する必要がある。また、データ処理装置14は、撮影部106から入力された無圧縮のデータの変換に、可逆圧縮を適用してもよい。
【0062】
実施形態では、データ処理装置14の電源が、発電モジュール11及び蓄電池12の組によって供給される場合について例示したが、これに限定されない。例えば、データ処理装置14の電源は、着脱可能な一次電池や二次電池であってもよい。この場合にも、データ処理装置14は、実施形態で説明された効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
実施形態に係る無線システム1の構成はあくまで一例であり、その他の構成であってもよい。例えば、監視システム10において、発電モジュール11、蓄電池12、及び撮影モジュール13のそれぞれは、データ処理装置14に内蔵されてもよいし、外部接続されてもよい。また、データ処理装置14は、ストレージを含んでいてもよい。データ処理装置14に含まれたストレージは、例えば圧縮された映像データや、生データ等を記憶し得る。そして、監視システム10は、蓄電池12の残量が回復した場合に、当該ストレージに記憶されたデータを基地局20に送信してもよい。この場合に、データを受信するサーバ30は、受信したデータの差し替えや結合等を実行しても良い。
【0064】
実施形態に係る無線システム1における監視システム10の機能構成は、あくまで一例である。監視システム10の機能構成は、実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の名称及びグループ分けであってもよい。
【0065】
実施形態に係る無線システム1において、基地局20及びデータ処理装置14に含まれたCPUは、その他の回路であってもよい。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されてもよい。また、実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。実施形態に係る無線システム1は、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。
【0066】
本明細書において“接続”は、データの通信が可能である状態に対応している。“監視システム10が基地局20に帰属していること”は、監視システム10のデータ処理装置14と基地局20との間でアソシエーション及び認証が完了していることを示している。“アソシエーション”及び“認証”のそれぞれは、データ処理装置14を基地局20に帰属させるための処理に対応している。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…無線システム
10…監視システム
11…発電モジュール
12…蓄電池
13…撮影モジュール
14…データ処理装置
15…CPU
16…ROM
17…RAM
18…無線通信モジュール
20…基地局
21…CPU
22…ROM
23…RAM
24…無線通信モジュール
25…有線通信モジュール
30…サーバ
101…発電部
102…配電部
103…蓄電部
104…無線通信部
105…データ処理部
106…撮影部